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響兄「アイドルになりたい?」 響「うん」【前編】

187 : 以下、名... - 2016/05/24 23:00:28.58 BqH3O6Ju0 170/397

――

「ふぁーあ……」

雪歩「だ、大丈夫ですかプロデューサー……?」

「ん?あぁ……昨日あんまし寝てなくてさ、少し睡眠不足かも……」

亜美「んっふっふ~、兄ちゃん、夜更かしはいけませんなぁ~!」

真美「さては布団の中に隠れてずっとゲームしてたな~!」

「子供か! 俺はちゃんと仕事してたの!」

亜美真美「キツいジョークだ」

「なんで!?」

雪歩「……」


188 : 以下、名... - 2016/05/24 23:04:47.01 BqH3O6Ju0 171/397

「くあ……」

雪歩「あの、お茶どうぞ……」 コト

「お、サンキュー雪歩」

雪歩「小鳥さんにも」 コト

小鳥「あら、ありがとう。雪歩ちゃんは気が利くわねぇ、将来はきっといいお嫁さんになるわ」

雪歩「そんな……私にはこれくらいしかできないので……」

「いや、人に気が利けるっていうのは大したことだ」

「それに雪歩だってだいぶん人気になってきたじゃないか。この前発売したKosmos,Cosmosなんて売れ行きがすごかったんだぞ」

雪歩「それは……プロデューサーが頑張ってくれたから……」

「俺だけが頑張ったってあそこまで売れるわけないさ」

雪歩「で、でも私……」

「雪歩、こういう時は素直に喜んでいいんだ」

「人気が出てきたのも、曲が売れたのも、間違いなく雪歩の頑張りのおかげだよ」

雪歩「!」

「これからも頑張っていこうな」

雪歩「は、はい!」


189 : 以下、名... - 2016/05/24 23:09:49.52 BqH3O6Ju0 172/397

「にしても伊織遅いですね」

「いつもなら来てる時間なのに……」

小鳥「え? 伊織ちゃんは今日は律子さんと一緒に雑誌の撮影ですけど……」

「え」

小鳥「これ、伊織ちゃんのスケジュールです」 スッ

「……ホントだ」

「……」

(マズい……)


190 : 以下、名... - 2016/05/24 23:11:35.09 BqH3O6Ju0 173/397


 プルルルル プルルルル ピッ

律子「はい……あ、プロデューサー、どうしたんですか?」

律子「え? 伊織ですか? いますけど……ちょうどそこにいるのでかわりましょうか? 分かりました」

律子「はい伊織、プロデューサーから」

伊織「? アイツから……?」


191 : 以下、名... - 2016/05/24 23:14:19.14 BqH3O6Ju0 174/397

伊織「……かわったわ、何の用?」

『なぁ伊織、今日のスケジュールって……』

伊織「私のスケジュール? 3時まで雑誌の撮影だけど……」

『だ、だよなぁ……』

伊織「まさかその確認のためだけに電話してきたわけ?」

『それがさ……』


192 : 以下、名... - 2016/05/24 23:20:03.08 BqH3O6Ju0 175/397

伊織「はぁ!? 舞台の仕事!?」

『ああ、俺のミスだ……完全にうっかりしてた……』

伊織「これで二度目よ!? うっかりで済まされるわけないでしょこのバカっ!!」

伊織「ダブルブッキングだなんて……どうするつもりなの……!?」

『…………どうしよう』

伊織「もー! 肝心なとこで役に立たないんだからっ!」

律子「伊織―、撮影始まるわよー」

伊織「あっ、ちょっと待って! あとはアンタで何とかしなさい! 分かった!?」

『えぇっ!? 俺はどうすれば……』

伊織「最悪、どうしようもないときはアンタが直に謝りに行きなさい! そのときは私も後日謝りに行くから!」

 ブツッ


193 : 以下、名... - 2016/05/24 23:26:07.39 BqH3O6Ju0 176/397

(……ど、どうしよう……何もいい案が思いつかない……)

(くそ……俺が何とかしないと……第一俺のミスなんだし……)

(でも、どうすれば……)


 つらくなったら逃げずに誰かに頼りなさい


(……)

雪歩「あの……」

「! お、おお! 雪歩、どうしたんだ?」

雪歩「真ちゃんからプロデューサーにお電話ですけど……」

「あ、ありがとう……」

(そういえば真も同じ舞台の仕事だったな)

「あー、真か?」

『プロデューサー? 事務所に伊織居ませんか?』

『電話してもつながらないし……もう舞台の立ち稽古始まっちゃいますよ』

「あー、うん、それがだな……」


194 : 以下、名... - 2016/05/24 23:31:51.60 BqH3O6Ju0 177/397

『えぇっ!? どうするんですか!?』

「いや、ホントにどうしよう……」

『ど、どうしようって……しっかりしてくださいよ!』

「す、すまん……」

『……まぁ、今日は本番じゃないですから、伊織だけ代役ってこともできますけど……』

「代役……」

『うーん……でも代役だとイメージがつかみにくいんですよね……』

『台本の読み合わせって言っても感情移入や表情の付け方なんかも大事になってきますから、代役もその役に合ってる人じゃないと気持ちも込めにくいし……』

「な、なるほど……伊織は確かヒロインの役だったよな」

『はい、そしてボクがなぜか主人公……って今はいいや』

『今日のところはボクが事情を説明して代役を立ててもらいます』

「分かった、後から俺もそっちに向かう」

『分かりました』


195 : 以下、名... - 2016/05/24 23:36:17.15 BqH3O6Ju0 178/397

「はぁ……よし、行くか」

雪歩「プロデューサー……」

「うん?」

雪歩「あの、私も連れて行ってもらえませんか……?」

雪歩「私……舞台のお仕事にも興味があって……」

「あぁ、なるほどな……うん、実際に見てみるのはいい経験になるだろうし」

「それじゃあ一緒に行こうか」

雪歩「はい」


196 : 以下、名... - 2016/05/24 23:39:58.78 BqH3O6Ju0 179/397

 ブロロ

雪歩「この物語って、最後は悲しい終わり方なんですよね」

「え? もしかして台本読んだのか」

雪歩「実は伊織ちゃんと真ちゃんが演技の練習しているときに私も他の役を手伝ったりしてたんです」

雪歩「私が劇に興味あるって言ったら二人とも練習に混ぜてくれて」

「へぇ、そんなに興味あるなんて知らなかったな」

「今度は雪歩にそういった仕事をとってこれるよう頑張るよ」

雪歩「あ、ありがとうございます」


197 : 以下、名... - 2016/05/24 23:43:47.45 BqH3O6Ju0 180/397

 「ダメだダメだ! 菊地、なんだその演技は!」

「す、すみません!」

 「一旦休憩にする。もう一回台本を読み直しておけ」

「はい!」

「…………ふぅ……」

(うーん、厳しい演出家さんだなぁ……まぁ、そのほうがやりがいはあるけどね)

雪歩「真ちゃん」

「ん?」

「えぇ!? 雪歩!? どうしてここに……!」

雪歩「プロデューサーにお願いして私も一緒に連れてきてもらったの」

「プロデューサー?……あっ」

「――はい、申し訳ありません! 今回は皆さんにご迷惑を――」

「……」

雪歩「真ちゃん?」

「え? ああ、いや何でもないよ」


198 : 以下、名... - 2016/05/24 23:50:21.78 BqH3O6Ju0 181/397

 ゴクゴク

「ふぅ……」

雪歩「やっぱり演技って難しい?」

「うん、まぁそれもあるんだけど、今日は女性の人数が足りてないからヒロインの役を別の役の人が代わりにやってくれてるんだけどね」

「相手が代役だからちょっとやりづらいっていうか……」

雪歩「そうなんだ……」

「あーあ、代役でもいいからボクもヒロイン役やってみたいなぁ」

雪歩「ふふ……真ちゃんは今の役のほうが似合ってるよ」

「う、嬉しくないよぉ……」

「雪歩はいいよね、すっごく女の子っぽいからお姫様とか似合いそうだもん」

雪歩「えぇっ!? わ、私がお姫様なんて、似合わないよぉ……」

「え~、絶対似合うと思うけどなぁ」

 ピピピッ ピピピッ

「あ、もう時間だ」

雪歩「頑張ってきてね真ちゃん」

「うん、それじゃあ行ってくるよ」


199 : 以下、名... - 2016/05/24 23:55:27.81 BqH3O6Ju0 182/397

「おっ、いたいた」

雪歩「あ、プロデューサー」

「どうだ? 実際に見てみて」

雪歩「はい、どの人も自分の役に入り込んでてすごいなぁって、ただ……」

 「ストップ、ストップ! 菊地、もっと台詞に感情をこめろ!」

「すみません……!」

「真……」

(俺のせいで……)


 つらくなったら逃げずに誰かに頼りなさい


「……」

(頼る……か……)

「……雪歩」

雪歩「? なんですか?」


200 : 以下、名... - 2016/05/24 23:58:28.53 BqH3O6Ju0 183/397

「お願いがあるんだ……」

「伊織の役……やってみてくれないか」

雪歩「え?」

「嫌ならもちろんいいんだ……ただ、ここで雪歩のことを向こうに知っておいてもらえれば後々こういう仕事がとりやすくなるかもしれないからさ」

「それに、雪歩にとってもいい経験になるだろうし……って無責任なことばっかり言ってるけど」

雪歩「……」

「俺が頼める立場じゃないのは分かってる。ある意味、俺のミスの尻拭いをさせるようなもんだからな……」

(伊織に言ったら、何都合のいいことばっか言ってんのって言われそうだ)

「頼む! 雪歩しかいないんだ!」

雪歩「……」

雪歩「私……」


201 : 以下、名... - 2016/05/25 00:02:05.32 t2sOpcIP0 184/397

 「――やっぱり代役じゃあ難しいか」

 「菊地さんすみません、私が水瀬さんの台詞を覚えられてないばっかりに……」

「いえ、そんな……兼役ですからしかたないですよ、それにいきなりだったし……」

 「しかしこのままじゃあ一向に進まないな……一度、人を変えるか」

「ちょっといいですか……?」

「あ、プロデューサー、それに雪歩も……」

 「765さん、どうかしましたか?」

雪歩「……」

雪歩「伊織ちゃんの役……私にやらせてもらえませんか?」

 「え?」

「えぇ!? ゆ、雪歩!?」


202 : 以下、名... - 2016/05/25 00:08:36.74 t2sOpcIP0 185/397

雪歩「私、舞台の仕事に憧れてて……ご迷惑でなければでいいんです」

「俺からもどうかお願いします。きっと雪歩の良い経験になると思うんです」

 「……ふむ」

雪歩「台詞は一応憶えているつもりです……」

「……」

「ボクからもお願いします」

雪歩「! 真ちゃん……」

 「…………」

 「分かった、一度試しにやってみよう」

「!」

「あ、ありがとうございます!」

「よかったね雪歩!」

雪歩「う、うん!」

 「それじゃあ一度台本を読み直してから同じとこ通すぞ!」


203 : 以下、名... - 2016/05/25 00:12:18.99 t2sOpcIP0 186/397

――――

――

雪歩「名前がなんだというのでしょう……! バラと呼ばれるあの花は、他の名前で呼ばれても甘い香りは変わらない。だからロミオも、ロミオと呼ばなくても、あの完璧な素晴らしさを失ったりしない……」

雪歩「ロミオ、その名前を捨てて……! そして私をとってください……!」

「お言葉通りにとりましょう……ただ一言、ボクを恋人と呼んでください。そうすればボクは自らの名を捨て去ることができる……もうボクはロミオではなく、貴方の恋人です」




「雪歩も真も、すごい演技だな……」

亜美「迫真の演技だったね」

真美「二人ともはまり役って感じだね」

「!?」

「亜美、真美、どうしてここに……仕事だったんじゃ……?」

亜美「残念だったなぁ」

真美「トリックだよ」


204 : 以下、名... - 2016/05/25 00:19:52.12 t2sOpcIP0 187/397

真美「なーんちって、帰りに寄っただけだよ~」

亜美「いおりんから頼まれたんだ~」

「伊織から?」

真美「うん、これを持ってくようにって」 ガサッ

「中身は何だこれ?」

亜美「んっふっふ~、知りたい? 知りたい? なんとこれは、かの有名なあのスイーツ!」

真美「今話題の人気急上昇中、売り切れ必須のゴージャスセレブプリン!」

「売り切れ必至な…………ん? 紙切れが入ってる……」

 『お詫びの品兼差し入れとして演出家さんたちに渡しなさい。』

「はは……伊織ってほんとすごいな……」


205 : 以下、名... - 2016/05/25 00:24:49.15 t2sOpcIP0 188/397

 「よかったぞ、菊池、それに萩原も、初めてとは思えない演技だった」

「はい! ありがとうございます!」

雪歩「あ、ありがとうございますぅ!」

 「もちろん改善の余地はあったが、あれだけ役に感情移入できる人間もそうそういない」

 「機会があれば今度はこちらから呼ばせてもらうよ」

雪歩「ほ、本当ですか!?」

「やったね雪歩!」

「よかったな、雪歩」

雪歩「あっ、プロデューサー!」

亜美「いよぅ、やってるな」

「あれ? 亜美に真美?」

真美「やっほー、まこちんにゆきぴょん」


206 : 以下、名... - 2016/05/25 00:27:51.51 t2sOpcIP0 189/397

「お疲れ様でした。これ、みなさんで食べてください」

 「あ、どうもすみません、ありがとうございます」

亜美「ねぇねぇ、亜美たちの分は?」

「いや、ないぞ」

真美「え~! タダ働きだなんて、ありえないっしょー!」

「しょうがないだろ、数がないんだし」

「帰りに何か買ってやるから、な?」

亜美「ほんとー!? 亜美はね、バナナクレープが食べたい!」

真美「真美はチョコ!」

「はいはい」


207 : 以下、名... - 2016/05/25 00:30:54.56 t2sOpcIP0 190/397

――

亜美「ヘイヘイ、イチゴも悪かねぇぜ」

「あー! なにボクのクレープ食べてるんだよ!」

真美「おぉーい、怒ることぁ無いだろ」


「今日はありがとな、雪歩」

雪歩「え?」

「雪歩のおかげだよ。雪歩が俺の頼みを聞いてくれたから、今日はうまくいった」

「本当に感謝しきれないくらいだ」

雪歩「そんな……私はただ言われたことをしただけです……」

「それでも、勇気を出してその決断をしてくれたのは雪歩だ」

「その勇気によって俺だけじゃなく、真や演出家さん、他大勢の人たちが助かった。今回俺のミスで来れなかった伊織の評判も下げずに済んだ」

「それに雪歩は……自分自身の力で、自分の仕事を勝ち取ったじゃないか」

雪歩「!」

「自分をもっと誇りに思っていい」


208 : 以下、名... - 2016/05/25 00:35:27.39 t2sOpcIP0 191/397

真美「いっただきー!」

「あ゛ー! 俺のカスタード!」

亜美「兄ちゃん、カッコつけてると隙だらけだよ~!」

「カッコぐらいつけさせろ!」

「あはは……亜美も真美も元気だなぁ、ボクもう疲れちゃったよ」

雪歩「私もだよ。舞台なんて初めてだったから緊張しっぱなしで……」

「え? 緊張してたの? 随分と落ち着いてたように見えたけど……」

雪歩「してたよ、ずっと足が震えてて……ヘンに見えてなかったかな……」

「心配しなくてもそんな風には見えてなかったよ」

「……なんにせよ、雪歩」

「おめでとう……っていうのはまだ早いかな……」

雪歩「ふふ……そうだね……」

「それじゃあ……これからも一緒に頑張っていこうね!」

雪歩「うん!」


209 : 以下、名... - 2016/05/25 00:38:40.63 t2sOpcIP0 192/397

 ガチャ

「ただいま戻りました」

小鳥「あ、プロデューサーさん、おかえりなさい」

「みんなを家まで送ってきたので、帰ってくるのが遅れました」

伊織「へぇ……その割には少し時間がかかりすぎじゃないかしら?」

「な、伊織!? 直帰のはずじゃ……!?」

伊織「アンタのおかげで私の評判に傷がついたんじゃないかって心配で心配で……」

伊織「さ、今日あったことをキチンと報告をしてもらおうかしら」

「え、えぇ……今からか……?」

伊織「当たり前でしょ、もとはアンタのせいなんだから」

「う、分かったよ……」


210 : 以下、名... - 2016/05/25 00:42:17.01 t2sOpcIP0 193/397

――

伊織「ふぅん、じゃあ雪歩のおかげでなんとかなったわけね」

「あぁ、ホント雪歩には感謝しきれないよ……」

伊織「ええ、私も雪歩に会ったら、ありがとうって言っとかないといけないわね」

伊織「にしても、今回もうまくいくなんて……それも前回とは比べ物にならないほどのお釣りも来て……」

「まさか……俺のミスが逆に幸運を呼び寄せている……!?」

伊織「バカ言わないで、毎回ヒヤヒヤさせられてるこっちの身にもなりなさいよね」

「すまん……」

伊織「たく……大体そんな情けない考えはやめなさい。もともとミスもなければそんな幸運必要ないんだから」

「はぁ……もしかして俺がこの事務所に来てからのほうが問題が増えたんじゃないのか?」

伊織「…………そうかもね」

「ぐへぇ……半分冗談のつもりだったのに……」

伊織「確かに、アンタのおかげで問題は増えたけど……その代わりに律子の負担はだいぶ減ったわね」


211 : 以下、名... - 2016/05/25 00:46:06.51 t2sOpcIP0 194/397

伊織「ま、今日のところはこのくらいでいいわ」

「そうか」

「今日は悪かったな」

伊織「そうねぇ……」

伊織「本当に悪かったと思ってるなら、私が寄越したゴージャスセレブプリンの代金でも支払ってもらおうかしら」

「えぇ!? ま、マジで……?」

伊織「にひひ、冗談よ」

伊織「それじゃあ、私はもう帰るから」

「あっ、なら送っていくよ」

伊織「そう? それなら、送って行ってもらおうかしら」


212 : 以下、名... - 2016/05/25 00:49:43.22 t2sOpcIP0 195/397


 ブロロロ

伊織「アンタ」

「ん? なんだ?」

伊織「フェアリーに……美希に会ったんでしょ?」

「あぁ、うん」

伊織「……そう……」

「星井さんも含めて、フェアリーは非凡な才能を持った人間が集まっている」

「ビジュアル、ボーカル、ダンス、全てが俺の見てきた中で最高のユニットだった」

伊織「……くやしいけれどその通りだと思うわ。デビューしてから間もないっていうのにあの人気、並大抵のものじゃない」

「あぁ、今の765プロじゃあ到底フェアリーを超えることはできない」

伊織「随分とハッキリ言うのね」

伊織「もしかしてアンタ、諦めるつもり?」


213 : 以下、名... - 2016/05/25 00:53:49.47 t2sOpcIP0 196/397

「まさか」

「みんな、確実に力をつけていっている」

「人気が出て、ファンも増えて、様々な仕事をこなして、休む暇もないくらいに忙しくなって……」

「今でだめでも、いつか必ず、なれる日が来るって思ってるよ」

伊織「…………そうね」

伊織「そうなるためにも、アンタも頑張るのよ?」

「あはは、それはもちろん……っと」

 キッ ガチャ

伊織「お疲れさま、ありがと」

「あぁ、ゆっくりと休むんだぞ。おやすみ」

伊織「ええ、おやすみ」

 バタン ブロロ

「……」

「休む暇もないくらいに忙しく……か……」


214 : 以下、名... - 2016/05/25 00:59:11.95 t2sOpcIP0 197/397

――

 ミーン ミーン

亜美「暑い~……」

真美「暑いよぉ……」

亜美「溶けるぅ……」

真美「公害怪獣ヘドロンになるぅ……」

律子「コラ、暑いからってダラダラしないの」

亜美「りっちゃ~ん、なんでエアコン壊れてるの~」

真美「エアコン直して~」

律子「無茶言わないでよ」

 ガチャ

春香「た、ただいまぁ……」

「ただいま戻りました」


215 : 以下、名... - 2016/05/25 01:02:32.95 t2sOpcIP0 198/397

亜美「兄ちゃ~ん、エアコン直してよ~」

真美「男の子は機械いじりが得意なんでしょ~」

「さ、さすがに限度があるだろ」

 ガチャ

小鳥「あら、プロデューサーさんに春香ちゃん」

「あ、音無さん。出てらしたんですね」

小鳥「ええ、アイス買ってきたのでみんなで食べましょう」

亜美「わ~い!」

真美「ピヨちゃん大好き!」

律子「ありがとうございます小鳥さん」


216 : 以下、名... - 2016/05/25 01:07:32.92 t2sOpcIP0 199/397

「いやぁ、ホント暑いなぁ」

真美「沖縄ってもっと暑かったんじゃないの?」

「う~ん……そうでもないよ。もちろん暑いのは変わらないけど」

「俺んちの目の前は海だったから風があって多少涼しくはあったかな」

亜美「へぇ~」

春香「海かぁ……」

真美「行きたいねぇ……」

亜美「青い空、白い雲、ああ、海が我らを呼んでいるぅ~!」


217 : 以下、名... - 2016/05/25 01:14:36.75 t2sOpcIP0 200/397

「……」

「…………行くか、海」

亜美「え!?」

真美「ホント!?」

律子「ちょ、ちょっと、プロデューサー!?」

小鳥「あら、いいんじゃないですか。慰安旅行」

小鳥「福利厚生、健康増進も大切なことですから」

律子「小鳥さんまでぇ……もう、社長に何て言われても知りませんよ?」

「よし! それじゃあみんなのスケジュールが空いている次の週末に、海に行くということで決定!」

亜美真美「やったー!」

「今ここにいない人には俺から伝えておくから」

春香「……」


218 : 以下、名... - 2016/05/25 01:17:20.85 t2sOpcIP0 201/397

――

春香「……」

 プルルルル プルルルル プルルルル ピッ

春香「もしもし、私、春香だけど……」

春香「久しぶりだね……」


225 : 以下、名... - 2016/05/25 23:09:48.30 t2sOpcIP0 202/397

――

亜美「夏だ!」

真美「海だ!」

亜美真美「ワイキキビーチだ―!」

「日本だっつーの」

あずさ「とってもキレイですね~」

「ホラ、雪歩も行こう!」

雪歩「あ、待って真ちゃん!」

律子「みんなー、あんまりはしゃいでケガしないようにねー!」

伊織「やよい、日焼け止め塗ってあげるわ」

やよい「ありがとう伊織ちゃん、後から伊織ちゃんにも塗ってあげるね」

伊織「ええ、お願いするわ」

千早(高槻さん、スクール水着なのね……とっても可愛い……)


226 : 以下、名... - 2016/05/25 23:14:35.34 t2sOpcIP0 203/397

春香「千早ちゃん?」

千早「! は、春香……何かしら……?」

春香「い、いや、鼻血……」

千早「え? あぁ、暑さのせいねきっと」 フキフキ

春香「千早ちゃんは行かないの?」

千早「私? 私はその……泳ぎはあんまり……」

春香「ふふふ、まぁまぁそう言わずに。せっかく海に来たんだから!」 バッ

千早「あっ、ちょっと春香……! もう、上着返しなさい!」

春香「ここまでおいで~!」

律子「みんな楽しそうでよかったですね」

「あぁ、みんな、たくさん楽しい思い出を作ってもらいたい」

「これから人気が出て忙しくなったら、こんな風にみんなで遊びに来るってこともできなくなるだろうからな」

律子「確かに……そうですね」


227 : 以下、名... - 2016/05/25 23:22:37.94 t2sOpcIP0 204/397

春香「う~ん……」 キョロキョロ

やよい「? どうしたんですか、春香さん?」

「何か探し物?」

春香「えっと、物っていうより……人?」

伊織「人?」

千早「知り合いでもいるの?」

春香「う~んと、私の知り合いっていうか」

春香「みんなも知ってる人だよ」




「春香ー!」


228 : 以下、名... - 2016/05/25 23:26:03.86 t2sOpcIP0 205/397

春香「あ、美希!」

伊織「!」

千早「えっ!?」

「どうして美希が!?」

美希「あはっ! みんなお久しぶりなの!」

やよい「ほ、ホントに美希さんですー!」


229 : 以下、名... - 2016/05/25 23:32:51.66 t2sOpcIP0 206/397

伊織「美希……なんでアンタがここにいんのよ……」

美希「デコちゃん……」

春香「私が呼んだの」

千早「春香が?」

伊織「……どうして……」

伊織「どうして呼んだのよこんなやつ……!」

「ちょっ、ちょっと伊織……」

伊織「美希っ! アンタよくも私たちの前にノコノコと顔を出せたわね!」

伊織「アンタが私たちを捨てたおかげで、どれだけ大変だったかわかってるの!?」

美希「……」


230 : 以下、名... - 2016/05/25 23:36:56.10 t2sOpcIP0 207/397

伊織「それに……!」

律子「伊織」

伊織「っ!…………律子……」

美希「律子……さん」

律子「久しぶりね、美希」

伊織「……」

伊織「……ふん」

やよい「あ、待って伊織ちゃん!えっと……美希さん、あとからお話ししましょうね!」

美希「うん、やよいもまたあとでね」


231 : 以下、名... - 2016/05/25 23:40:44.61 t2sOpcIP0 208/397

律子「……」

美希「……えっと」

律子「……」

律子「美希」

律子「元気そうでよかった」

美希「! う、うん! 律子、さんも」

律子「伊織のことは許してあげて……美希ならわかるでしょ?」

美希「うん、わかってる……大丈夫なの」


232 : 以下、名... - 2016/05/25 23:46:45.71 t2sOpcIP0 209/397

「にしても驚いたよ、ボクたちも知ってる人って言ってたから誰だろうって思ったけど、まさか美希だったなんてね」

春香「海に行くって決まった日、家に帰ってから美希に電話したんだ」

春香「美希たちも一緒にどうかなって」

千早「たち……?」

美希「うん、実はミキだけじゃなくって他の二人も来てるの」

千早「そ、それって大丈夫なのかしら……」

「人だかりができそうだね……」

律子「で、その二人はどこなの?」

美希「え? えっと……あれ?」

美希「どこだろ」


233 : 以下、名... - 2016/05/25 23:52:04.74 t2sOpcIP0 210/397

――

雪歩「うぅ……と、トイレ……トイレはどこ……?」

 「おっ! キミキミ!」

雪歩「はいぃ?!」

雪歩(お、男の人……!)

 「キミ可愛いねぇ!」

 「名前なんて言うの?」

 「歳いくつ?」

雪歩「え……えっと……その……」

 「まぁいいよ、とりあえずこっち来て遊ぼうよ!」 ガシッ

雪歩「ひぃっ……!」




「もし……」


234 : 以下、名... - 2016/05/26 00:00:16.07 GNvwV6We0 211/397

雪歩「!」

 「え?」

 「す、スゲェ! フェアリーの四条貴音ちゃんだ!」

 「ほ、ホントだ! 有名人じゃん!」

貴音「海の家なる建物を探しているのですが……どこかご存じありませんか?」

 「海の家? 知ってる知ってる!」

 「俺たちが案内するよ!」

貴音「感謝いたします。それでは参りましょう」 スッ

雪歩「え……? は、はい……」

雪歩(わ、私も……?)


235 : 以下、名... - 2016/05/26 00:08:50.71 GNvwV6We0 212/397

 「ここだよ!」

貴音「ここですか……食欲のそそられる良い匂いがします」

 「もしかして貴音ちゃん、お腹すいてるの?」

 「そうだ! せっかく海の家に来たんだからさ、俺たちと一緒にお茶でもしない?」

 「でさでさ、なんか食べた後どっか遊びに行こうよ!」

貴音「ふふ、それもいいやもしれませんね……」

 「ま、マジ!?」

貴音「ええ……ただ、条件があります」

貴音「あちらにある、らぁめんで決めましょう」

 「ラーメン?」

 「あの『大盛りラーメン、20分で食べられたら無料』ってやつのこと?」

 「なんであんなとこにラーメン屋の屋台が……」

貴音「あのらぁめんを誰よりも先に食べ終えた方のみに、本日を供にすることに致します」

貴音「誰よりも先に、ですのでもちろん私よりも先に食べ終えねばなりません」

貴音「では、早速皆で注文しに行くとしましょう」

 「よ、よーし、やってやるぜ!」

 「おい! お前ら手ぇ抜けよ!」

 「バカ! 一位になって貴音ちゃんと遊ぶのは俺だ!」



雪歩(あ、あれ……私、一人になっちゃったけど、もう行っていいのかな……)

雪歩(あっ、あそこにトイレが……!)

 コソコソ


236 : 以下、名... - 2016/05/26 00:13:30.63 GNvwV6We0 213/397

雪歩「ふぅ……なんとか間に合ってよかったぁ……」

 ザワザワザワ

雪歩「? なんだろう……」

 「スゲーぞあの銀髪のねぇちゃん!」

 「あの大盛りのラーメンをたった5分たらずで間食しちまったぞ……たまげたなぁ……」

雪歩「!」

貴音「ふふ、まこと、美味でした」

 「う、嘘だろ……?」

 「俺なんてまだ10分の1も減ってないのに……」

 「貴音ちゃん、食べるの早スギィ!」

貴音「では、私はこれで失礼いたします」

 「えぇーっ! ちょっ、ちょっと待ってくれよ!」

 「お客さん、早食いを諦めるんならラーメン代の五千円を払ってもらいますよ」

 「ちっ、ちくしょー!」 ズルズル


237 : 以下、名... - 2016/05/26 00:18:04.34 GNvwV6We0 214/397

雪歩「あ、あの!」

貴音「おや、貴方は確か……」

雪歩「ふぇ、フェアリーの四条貴音さん……ですよね?」

雪歩「えっと……その、さっきはありがとうございました!」

貴音「? はて……私は何もしておりませんが……」

雪歩「……え?」

貴音「私はただ、海の家の近くに美味しいらぁめん屋の屋台が来ていると耳にしたので、海の家の場所を尋ねただけです」

貴音「それが偶然にも、貴方を救う形になったのでしょうね」

雪歩「そ、そうだったんですか……」


238 : 以下、名... - 2016/05/26 00:23:51.78 GNvwV6We0 215/397

――

あずさ「あらあら~、ここはどこかしら~」

あずさ「おかしいわ~、さっきまでプロデューサーさんと一緒だったのに」

「おーい! ハム蔵ー! どこ行ったんだよー!」

あずさ「あら? あの子は……」

あずさ「響ちゃん!」

「あれ? あなたは確か……あずささん……?」

あずさ「まぁ! 憶えててくれたのね~、嬉しいわ~」

「あずささん、ハム蔵を見てないか? 実はまたいなくなっちゃって……」

あずさ「あの時のハムスターちゃん?」

「うん、今日は別に脱走したとかそういうんじゃないんだけどね」

「ハム蔵を頭にのせたまま海に潜ってたら、いつの間にかいなくなっちゃって……」

あずさ(そ、それは大丈夫なのかしら……)

あずさ「分かったわ、私も手伝うから一緒に探しましょう?」

「ほ、ホント!? ありがとう! もう一時間近く探しててさ……」

あずさ(ほ、本当に大丈夫かしら~……)

239 : 以下、名... - 2016/05/26 00:30:00.73 GNvwV6We0 216/397

「あれ? あずささんがいない……さっきまで近くにいたのに……」

(人が多くて探しづらいなぁ……)

亜美「兄ちゃん、兄ちゃん!」

真美「クラゲ捕まえたよ~!」

「そうか、よかったな」

亜美「ちょっと~! 反応が薄すぎるよ~!」

「クラゲなんてそこら中ぷかぷかしてるし、大して珍しくもないだろ」

真美「じゃあ何だったら驚くの?」

亜美「ネッシーとか?」

「ネス湖でもないのにネッシーがいたらそりゃあ驚くだろうな」

亜美「よーし! 目指せネッシー!」

真美「じゃあ真美はシーサーペント!」

「おう、頑張れよ~」


240 : 以下、名... - 2016/05/26 00:35:49.67 GNvwV6We0 217/397

(う~ん、あずささんを探しに行きたいところだが……荷物の見張りをしとかなきゃならんしなぁ)

 ストン

「?」

伊織「……」

「どうしたんだ伊織?」

伊織「少し疲れたから休んでるだけよ。文句ある?」

「いや別に……オレンジジュースでも飲む?」

伊織「……そうね、いただくわ」

「はいよ」

伊織「……」 コク

「……」

伊織「……」

「伊織」


241 : 以下、名... - 2016/05/26 00:40:07.81 GNvwV6We0 218/397

伊織「なに?」

「悩んでるときには、人に話すのがいいらしいぞ」

伊織「……私が悩んでるって言いたいわけ?」

「違うのか?」

伊織「……」

「別に話したくないならいいんだ」

「俺も前に、ある人に話を聞いてもらったら少しだけすっきりしたよ」

「聞いてもらうっていうか……ほとんど俺が独り言を話し続けるだけだったんだけどね」

伊織「……そう……」

伊織「……」

伊織「じゃあ、今から私が話すのもただの独り言……」


242 : 以下、名... - 2016/05/26 00:45:31.25 GNvwV6We0 219/397

伊織「自分で言うのも変だけど、私はプライドが高い」

伊織「子供扱いされるのは絶対嫌だし、なんでも自分でこなそうとしてた」

伊織「私は、私自身の力で人よりも上の存在でありたかった」

伊織「そうすれば、人は私に惹かれ、信頼を得ることができると思ったから」

伊織「だから、私は努力した。人から頼られるために、誰にも頼らず自分自身の力に磨きをかけた」

伊織「でも、越えられない壁があった」


243 : 以下、名... - 2016/05/26 00:53:56.90 GNvwV6We0 220/397

伊織「天才、なんでしょうね。恵まれたビジュアル、完璧な運動神経、美しい歌声、そして、人を惹きつけるカリスマ性」

伊織「完敗だったわ。どれにおいても敵うものがなかった」

伊織「あいつの何倍の努力をしても、何倍もレッスンを積み重ねても、何倍も汗水をたらしても、一向に手は届かなかった」

伊織「それは、明確な数字としても表れた」

伊織「ファンの数、仕事の量、CDの売り上げ……」

伊織「敵いっこなかった、だってみんなあいつのことを見てるんだもの」

伊織「敵わないと分かっていながら、惨めにも私は追いかけ続けた……けど」

伊織「あいつならなんだってこなせる、ミスがあってもあいつがなんとかしてくれる」

伊織「みんなの信頼のまなざしが、あいつだけを指していた」



244 : 以下、名... - 2016/05/26 01:01:18.23 GNvwV6We0 221/397

伊織「だから、私は諦めたの」

伊織「みんなと同じ、あいつを頼りにした」

伊織「自分の、もはや意味もなさないプライドも全て捨てて、負けを認めたの」

伊織「あいつのおまけになっていれば、あいつがいつか私を有名にしてくれる」

伊織「あいつについていけば、私も人気になれるって……思ってた」

伊織「でもあいつは裏切った。みんなを捨てて出ていった」

伊織「みんな信じてたのに、みんなが頼りにしていたのに、あいつは自分だけ上のステージに向かっていった」

伊織「腹が立った。あれだけ人を惹きつけておいて、注目の的のままに消えていったあいつに」

伊織「でも一番腹が立ったのは、あいつに負けを認め、自分で勝手に信頼を置いて、無様に捨てられた情けない私が……そんな私がっ!」

伊織「一番……腹が立つわ……」

「……」

伊織「……どう? みっともないでしょ」

伊織「こんな自業自得の、子供みたいな理由で、私は今もどうしようかと悩んでる……」

「……」


245 : 以下、名... - 2016/05/26 01:11:37.79 GNvwV6We0 222/397

「そんなもんだよ、みんな」

「人間は、最後は結局、子供みたいに感情でしか動けないんだ」

「その感情が、すれ違いを生んだり」


 『バカ言うんじゃない! お前も現実を見ろ! 俺は絶対に認めないからな!』


「争いを生んだり」


 『別に、兄貴に認めてもらわなくたって、黒井社長のもとで絶対にトップアイドルになってみせる!』


「俺たちが抱えてる、悩みを生むんだ」

「でも、だからといってこのままにしておくことはできない。前に進まなきゃいけない」

「俺たちは考えることができる、話すことができる、選択できる。だから、一生懸命考えて、言葉にして、相手の感情を知って、自分の感情を伝えて、そして選ぶんだ」

「自分たちが前に進むことのできる道を」

伊織「……」

「……」

伊織「前から思ってたけどアンタってちょっとイタいわよね」

「頼むからせめてカッコつけてるって言ってくれ」

246 : 以下、名... - 2016/05/26 01:18:44.97 GNvwV6We0 223/397

伊織「ふぅ……でも、少し楽になったかも……」

「そりゃあよかった」

「どうだ、前に進めそうか?」

伊織「そうね、子供みたいにいつまでも意地張ってるわけにもいかないし」

「そっか、伊織はすごいな」

伊織「アンタがこのままにはしとけないって言ったんじゃない」

「いやまぁ、そうなんだけど」

「…………俺も――」

亜美「兄ちゃ~ん!」

真美「すごいの発見した~!」


247 : 以下、名... - 2016/05/26 01:23:19.89 GNvwV6We0 224/397

真美「あれ? いおりん?」

亜美「どうしてここに?」

伊織「少し休憩してただけよ。それで、アンタたちもどうしたの?」

亜美「あっ、そうそう! シーハムスターですよ! シーハムスター!」

「ハムスター?」

真美「海の中を泳いでたんだよ! ホラ!」

 「ヂュ……」

伊織「あら、ホントにハムスターね。随分とぐったりしてるみたいだけど」

「……ちょっと見せてくれるか」

真美「うん、いいよ」

亜美「どう? どう? もしかして亜美たち、新種生物発見しちゃった?」

「……いや、普通のハムスターだな」

(……まさか……いや、でも……)

真美「名前はハムナプトラにしようよ!」

亜美「え~! ハムラビ法典のほうがいいよ!」

伊織「どっちもどっちな気がするけど……」

「……」

「……ハム蔵……?」


248 : 以下、名... - 2016/05/26 01:27:48.75 GNvwV6We0 225/397

 「おーい! ハム蔵ー!」

「!」

亜美「? 兄ちゃん、どうしたの?」

伊織「ん? あれ、あずさじゃない? 誰かと一緒にいるみたいだけど……」

真美「お~い、あずさお姉ちゃ~ん!」

あずさ「! あら~、みんなここにいたのね~」

真美「おやおや~、あずさお姉ちゃんの後ろにいるのはまさか!」

「え……」

亜美「現在人気爆発中のアイドルユニット、フェアリーの我那覇響ちゃんではありませんか~!」


249 : 以下、名... - 2016/05/26 01:33:54.41 GNvwV6We0 226/397

「765プロ……」

「美希から急に海に誘われたと思ったら……そういうことだったのか」

亜美「え!? ミキミキも来てるの!?」

真美「ホント!?」

伊織「美希に誘われて……ということはもう一人もここに来てるのね」

「そうだぞ」

「四条さんもか……フェアリー全員だなんて、よく黒井社長が許したな」

「自分も最初はだめだろうと思ってたんだけど……」

「これからさらに人気が出れば、それだけ休む暇もなくなるし、プライベートで外出するのも難しくなってくる。人生は一度きりだから、仕事だけじゃなくて他の思い出もちゃんと作っておくように、って」

あずさ「あらあら~」

「意外だな」

亜美「前に見かけたときはもっと厳し~カンジだったけど、優しいとこもあるんだね~」

真美「ツンデレでセレブ……いおりんと一緒だね!」

伊織「あんなまっくろくろすけと一緒にすんじゃないわよ!」


250 : 以下、名... - 2016/05/26 01:38:34.61 GNvwV6We0 227/397

「あ、そういえば」

「響」

「な、なんだよ、765のプロデューサー」

「こいつ、探してたんだろ」

 「ヂュ」

「あっ! ハム蔵!?」

亜美「え? ひびきんのハムスターだったの?」

「ひ、ひびきん……? えっと、あずささんにも手伝ってもらいながら探してたんだ」

 「ヂュイ」

「心配したんだぞハム蔵。勝手にいなくなったら駄目じゃないか」

あずさ(今回はハム蔵ちゃんの意思は関係なかったと思うのだけど……)

「……」

「……見つかってよかったな」

「! う、うん……」


251 : 以下、名... - 2016/05/26 01:41:24.39 GNvwV6We0 228/397

貴音「おや……」

雪歩「みんな!」

真美「ゆきぴょん!」

「貴音ぇ!」

貴音「ここにいたのですね、響」

「貴音はどこにいたんだ? もしかしてあの変な三人組の言ってたラーメンを食べに行ってたんじゃ……」

貴音「えぇ、まこと美味でした」

「やっぱり……」

貴音「らぁめんを食した後は、こちらの萩原雪歩と共に海の家で宇治金時かき氷を頂いていました」

「さらに食べたのか」

雪歩「甘くてとっても美味しかったですぅ!」

亜美「い~な~! 亜美も食べたい!」

あずさ「私も……いえ、今はダイエット中……あぁ、でも……」

252 : 以下、名... - 2016/05/26 01:46:02.97 GNvwV6We0 229/397

春香「お~い、みんな~!」

美希「あっ、響に貴音! ここにいたの!」

律子「あずささんもここにいたんですね。よかったぁ」 ボイン

あずさ「はい~、途中からは響ちゃんと一緒にいたので戻ってこれました~」 ドタプ~ン

美希「響も貴音も、急にいなくなったらびっくりするの」 ボイン

「ご、ごめん。海で少しテンション上がっちゃって……」 ボイン

貴音「申し訳ありません、ですがらぁめんが私を呼んでいたのです……」 ボイ~ン

千早「くっ……」

雪歩「真ちゃん、さっき海の家で宇治金時食べたんだよ!」

「へぇ! おいしそうだね! 後から食べに行こうかな」

亜美「亜美も行く!」

真美「真美も!」

やよい「伊織ちゃん……!」

伊織「ごめんねやよい、心配かけて……もう、大丈夫よ」


253 : 以下、名... - 2016/05/26 01:49:45.61 GNvwV6We0 230/397

伊織「美希……」

美希「……デコちゃん」

春香「……」

伊織「その……ごめんなさい……私……」

美希「大丈夫……」

美希「ミキ、デコちゃんのことはちゃんと分かってるつもりだから」

伊織「!」

伊織「…………そう……」

伊織「…………ありがと……」

春香「……ふふっ、よかったね伊織、美希」

伊織「な、なによ春香。ニヤニヤして、気持ち悪いわね……」

美希「気持ち悪いの」

春香「え~、ひど~い、二人だって笑ってるじゃ~ん」

 アハハハハ


258 : 以下、名... - 2016/05/26 23:26:03.68 GNvwV6We0 231/397

――――

――

「おーい、みんなもう行くぞー」

律子「忘れ物が無いようにねー」

真美「あれ? はるるんとミキミキは?」

「二人とも後から来るだってさ」

伊織「……」




春香「今日はみんなで遊べて楽しかったねぇ~」

美希「あふぅ、疲れちゃったの」

春香「あはは、美希は相変わらずだね」

美希「ん、でも今日は来てよかったの」

美希「みんなに会えたし……色々もやもやも消えたの」

美希「電話してくれてありがと、春香」

春香「ふふ、どういたしまして。でも、ちゃんと美希につながるかちょっと心配だったよ」

春香「出て行ってすぐのときにはみ~んな美希に繋がらなかったから」

美希「だって、みんなすごい量かけてくるんだもん」

春香「あはは、ごめんね。みんな美希のこと頼りにしてたから……」

美希「……こっちこそごめんなの。勝手に出ていっちゃって……」

春香「いいよ、美希にも考えがあったんでしょ?」

美希「うん……みんなには迷惑かけちゃったけど、ミキはこれでよかったって思ってる」

美希「だってみんな、前とは比べ物にならないくらい……すっごくキラキラしてるの」

259 : 以下、名... - 2016/05/26 23:30:03.33 GNvwV6We0 232/397

春香「……」

春香「確かに、そうかもね」

春香「で~も!」

美希「?」

春香「あんまり心配かけちゃだめだよ?」

春香「みんなもそうだけど、律子さんなんか特に心配してたよ」

美希「律子、さんが?」

春香「美希が出ていってから少しの間は律子さん、まさに心ここにあらずって感じで美希の名前をつぶやいてて、仕事に手が付けられないくらいだったんだから」

美希「……そうだったんだ……」

春香「後からちゃんと謝っとかないとね?」

美希「わかったの」

春香「……さて、私たちもそろそろ行こうか。あんまり遅くなるといけないし」

美希「うん」


260 : 以下、名... - 2016/05/26 23:34:58.62 GNvwV6We0 233/397

亜美「畳だ―!」 ゴロゴロ

真美「いえーい!」 ゴロゴロ

雪歩「畳のいいにおい……」

「意外と広いねー」

律子「はいはーい、貴重品はここに集めてね」

「バーベキューの準備ができたら呼びに来るから、それまでに食材なんかもまとめといてくれ」

律子「分かりました」

春香「ただいま戻りましたー!」

千早「おかえり、春香」

春香「ただいま千早ちゃん、ホテルに荷物置いたら美希たちも来るって」

千早「そう、食材と飲み物多めに買っといてよかったわね」


261 : 以下、名... - 2016/05/26 23:37:58.35 GNvwV6We0 234/397


 ジュー

やよい「わぁ~! おいしいです~!」

「まだまだあるから、遠慮しないで食えよー」

亜美「兄ちゃ~ん! お肉頂戴!」

真美「ソーセージも!」

あずさ「あらあら、野菜もちゃんと食べなきゃだめよ~?」

美希「おまたせなの~!」

律子「あっ、美希たちも来たみたいね」

貴音「ふふ、とても良い匂いがしますね」

「一応、自分たちも食材買ってきたぞー」

美希「おにぎりもたくさんあるの!」


262 : 以下、名... - 2016/05/26 23:42:10.34 GNvwV6We0 235/397

あずさ「プロデューサーさん、私もう食べましたから焼くの交代しましょうか?」

「あ、すみません。じゃあ少しだけ代わってもらってもいいですか?」

あずさ「はい。焼けてるの取りますから、お皿出してくださいね~」

千早「プロデューサー、飲み物は何がいいですか?」 ガサッ

「ん? そうだな、じゃあ麦茶を貰おうかな」

貴音「面妖な……面妖な……」 バクバク モグモグ

やよい「おいしいです! おいしいです!」 モゴモゴ

伊織「やよい、そんなに慌てて食べなくてもたくさんあるから大丈夫よ」

美希「律子、さん! はい、あ~ん……」

律子「ちょっ、ちょっと、急にどうしたのよ美希!」

亜美「おやおや~? りっちゃん照れてますな~?」

真美「りっちゃんはミキミキのこと大好きですからな~」

律子「こ、コラ! からかわないの!」


263 : 以下、名... - 2016/05/26 23:46:47.07 GNvwV6We0 236/397

「モグモグ、ん? ハム蔵もトウモロコシ食べるか?」

 「ヂュイ!」

「へぇ~、よく懐いてるね」

「そりゃあ家族だからな!」

雪歩「家族?」

「うん。ハム蔵のほかにもヘビのへび香、シマリスのシマ男、オウムのオウ助、ウサギのうさ江、猫のねこ吉、ワニのワニ子、豚のブタ太、犬のいぬ美、モモンガのモモ次郎、そして沖縄の実家にはニワトリのコケ麿がいるぞ」

「す、すごいたくさんいるね……」

春香「そういえば響ちゃんも沖縄出身だったね」

「えっ? もしかして春香もなのか?」

春香「ううん、私じゃなくって、プロデューサーさんが」

「765のプロデューサーが……?」

「……」

 「ヂュヂュイ」

「いや……そんなはずないよ……だって……」

春香「響ちゃん……?」

「え? あ、いや……なんでもないぞ」


貴音「……」


264 : 以下、名... - 2016/05/26 23:50:08.84 GNvwV6We0 237/397

――

雪歩「あぁ~、気持ちぃ~」

「露天風呂なんてボク久しぶりだよ」

亜美「うあうあ~、しみる~!」

真美「体が焼けるようにいたい~!」

やよい「えぇ!? 大丈夫!?」

伊織「ちゃんと日焼け止め塗らなかったからでしょ」

春香「美希たちも一緒に入ればよかったのにね~」

千早「私たちはお金を払って利用させてもらってるんだし、さすがにそれは無理じゃないかしら……」

律子「確か美希たちは隣のホテルに泊まるんだったわね」

あずさ「後から遊びに来るって言ってましたから、楽しみですね」


265 : 以下、名... - 2016/05/26 23:54:07.76 GNvwV6We0 238/397

――

「あ~、さっぱりした」

やよい「ごくごく……」

春香「ゴクゴク……ぷはぁっ、あ、プロデューサーさん」

「コーヒー牛乳か、うまそうだな。俺も買おうっと」

あずさ「あぁ~、気持ちいいわぁ~」 ブルブルブル

亜美「トラップ発動! ブレイク・スルー・スキル!」

真美「うあうあ~! 苦労して出したアーミタイルが~!」

「真、卓球しよーよ!」

「よーし! 負けないぞ!」

雪歩「二人とも頑張ってー」

美希「zzz……」

伊織「こいつはこっちに来ても寝てんのね……」

(そういえば、四条さんは来てないのか……) ゴクゴク


「…………あれ……?」


266 : 以下、名... - 2016/05/26 23:57:19.93 GNvwV6We0 239/397

――

 ザザーン

「はぁー……どこやったかなぁ……」

(まさかケータイを忘れてたなんて……海水で濡れてなきゃいいけど……)

「うーん……とりあえず仕事に使ってるやつでかけてみるか」 ピッ

 ♪~レディトライアルダンス~

「おっ、意外と近くにあったな……」

「ん?」

貴音「……」

「あれ、四条さん? 何してるんだこんなところで……」

貴音「おや、あなた様……」

「えっ? あ、あなた様ぁ……!?」

貴音「私は月を眺めておりました……今宵はとてもキレイな月です」

「え……? 月? …………あ、ホントだ……」

貴音「……」

「……」


267 : 以下、名... - 2016/05/27 00:03:58.72 2KrkvX+z0 240/397

「……」

貴音「……」

「……」

貴音「……」

「……えーと」

「月がきれいなのはわかるけど、ずっと眺めてると体壊すよ?」

「あんまり潮風に当たると体も冷えるし……」

貴音「……ふふ、優しいのですね……」

「?」

貴音「先ほど響もやってきて同じことを言っていました」

「え……響が……?」

貴音「あなた様と響はよく似ています……」

貴音「やはり……」

貴音「……血のつながりがあるから、でしょうか?」


268 : 以下、名... - 2016/05/27 00:08:53.29 2KrkvX+z0 241/397

「!!!」

「…………な……なんでそのことを……!?」

貴音「トップシークレット、です」

「……はぁ……まいったな……」

「…………響は知っているのか……?」

貴音「いいえ、このことを知っているのは私だけ……黒井殿も知りません……」

(……響は知らないのか……よかった……)

「四条さんがどうやってこのことを知ったのかは知らないが、頼むから誰にも言わないでくれ」

「特に……響だけには……」

貴音「えぇ、もちろん誰にも話すつもりはありません」

「そうか……それならいいんだ……」

貴音「……」

貴音「申し訳ありません……」

貴音「野暮な詮索でした……興味本位で人の事情に土足で踏み入るような真似を……」

「いや、いいよ……」

269 : 以下、名... - 2016/05/27 00:14:01.43 2KrkvX+z0 242/397

「でも詮索ってことは……」

貴音「はい。先ほど私が鎌掛けをしたときのあなた様の反応を見て、そう確信したのです」

「はぁ……そういうことね……」

貴音「ハム蔵殿はあなた様が響の兄上であると分かっていたようです、響は否定していましたが……」

貴音「そのほかにもあなた様が響と同じ沖縄を故郷としていること……そして……」

貴音「あなた様の携帯の着信音が、響の歌であること……などでしょうか」

「……あぁ……」

貴音「響は……幸せ者ですね……」

「……」

貴音「私はもう少し月を眺めていきます」

「そ、そっか……」

「じゃあ、あんまり遅くならないうちにね。おやすみ」

貴音「はい、おやすみなさい……」

 ザッザッザッ……

貴音「……」



270 : 以下、名... - 2016/05/27 00:20:02.51 2KrkvX+z0 243/397

――

春香「今日はホント楽しかったねぇ」

「ボクももうクタクタだよ……ふぁ……」

やよい「スヤスヤ……」

亜美「ムニャ……えぇ……はるるんは……」

真美「……水をかけると増えるんですか……ムニャムニャ……」

春香「い、一体どういう夢を見てるんだろう……」

千早「私たちも早めに寝ましょう。明日からまた頑張らないと……」

伊織「そうね……また明日からは……」

伊織(美希たちとは……頂点を目指す敵同士、いや……)

「……なれるかなぁ、トップアイドル……」

千早「……」

伊織「……」

春香「なれるよ……きっと……」

271 : 以下、名... - 2016/05/27 00:25:42.93 2KrkvX+z0 244/397

――――

――


亜美「たっだいま~!」

「あっ、エアコンが直ってる!」

雪歩「涼しぃ~」

小鳥「あら、みんなおかえりなさい。美希ちゃんと久しぶりに会えたんでしょう?」

あずさ「あら~、知ってたんですか?」

小鳥「ええ、美希ちゃんがメールと一緒に写真を送ってくれたんです」

真美「ピヨちゃん一人で寂しくなかった?」

小鳥「実を言うと少しだけ……」

律子「すみません、小鳥さん一人に留守番を頼んで……」

小鳥「いえいえ、大丈夫ですよ……それよりも!」

小鳥「律子さん、社長が例の企画が通ったって言ってましたよ!」

律子「えっ! 本当ですか!」

「ふぃ~、ただいま戻りました~って、おお! エアコン直ったんだな!」

高木「おっほん!」

272 : 以下、名... - 2016/05/27 00:31:50.15 2KrkvX+z0 245/397

「! しゃ、社長……!」

高木「いやぁ、確か慰安旅行だったねかね? 楽しめたかい?」

「は、はい……それはもう……あはは……」

高木「おほん、まぁそれは置いといて」

高木「あー、帰ってきて早速だが、みんなに伝えたいことがある」

伊織「伝えたいこと?」

高木「律子君!」

律子「はい!」

高木「キミが進めてくれていた新ユニット企画『竜宮小町』の始動が正式に決定したよ、おめでとう!」

あずさ「竜宮……」

亜美「小町……?」

伊織「新ユニットって……!」

高木「うむ! この企画は我ら765プロの一大プロジェクト」

高木「961プロのフェアリーに対抗しうるカギだ!」

――――

――


273 : 以下、名... - 2016/05/27 00:38:13.99 2KrkvX+z0 246/397

水瀬伊織を筆頭に、双海亜美、三浦あずさの三人で構成される765プロの新アイドルユニット『竜宮小町』。
始動後、もともと比較的高かった彼女たちの人気はさらに、爆発的に上がった。
竜宮以外の765プロアイドルたちもそれぞれの長所を活かし、流れは好調だった。
勢いを増して成長する765プロ。
一方の961プロ『フェアリー』も以前にも増して人気を博し、今やトップアイドルに最も近い存在となっていた。

――


「あー……」 コキッ

小鳥「大丈夫ですか? だいぶお疲れのようですけど……それに目の下に隈が……」

「あはは……実はちょっと寝不足でして……」

小鳥「最近はみんな人気が出て、暇がないですからねぇ」

「嬉しい悲鳴ではあるんですけどね」

小鳥「でも少しは休まれたほうが……」

「いえ、まだ仕事が残ってますから。律子や音無さんだって頑張ってるのに、俺だけ休むなんてできないですよ」

小鳥「ならコーヒーでも淹れてきましょうか? ちょうど私も飲もうと思ってたので」

「すみません、お願いします」

小鳥「分かりました、プロデューサーさんはブラックでしたよね?」

「はい、それが一番目が覚めますし」

274 : 以下、名... - 2016/05/27 00:50:42.76 2KrkvX+z0 247/397

春香「ただいま~」

「おぉ、春香。おかえり」

小鳥「春香ちゃん、おかえりなさい。」

春香「うわっ、プロデューサーさん! 隈が!」

「あぁ、ちょっと寝不足なんだ。今、音無さんにコーヒー淹れてもらってるとこだよ」

春香「大丈夫ですか? ……あっ、そうだ!」 ガサゴソ

春香「え~と……はい、プロデューサーさん! 春香さんの手作りドーナッツです!」

「ドーナッツ?」

春香「はい! 疲れた時には甘いものが一番です!」


275 : 以下、名... - 2016/05/27 00:55:53.31 2KrkvX+z0 248/397

「へぇ、どれどれ……あむ」

春香「どうですか?」

「うん、うまいぞ! 春香はホントお菓子作るのがうまいなぁ」

春香「えへへ」

小鳥「プロデューサーさん、コーヒーです」 コト

「ありがとうございます」

春香「あ、ドーナッツを作ってきたので小鳥さんもどうぞ!」

小鳥「あら、おいしそう! じゃあ私も一つ……はむっ」

小鳥「うまい!」 テーレッテレー

春香「あはは、よかったぁ」

「……」


 『にぃにぃ、これ食べてみて!』

 『ん? サーターアンダギーか。もしかして響が作ったのか?』

 『うん! あんまーに作り方を教えてもらったんだ!』

 『へぇ、…………うん、うまいよ』

 『よかったぁ!』

 『大したもんだ。響は何でもできてすごいな』

 『な、なんでもはできないよぅ』

 『いや、響は運動神経だっていいし、頭もいいし、可愛いし、俺の自慢の妹だ。』

 『ほ、ホント!?』

 『あぁ』

 『え、えへへ!』


276 : 以下、名... - 2016/05/27 00:58:49.62 2KrkvX+z0 249/397

「……」

春香「プロデューサーさん?」

「! あ……春香、どうしたんだ?」

春香「いえ、なんだかぼーっとしてたので……」

「あ、あはは……すまん、寝不足のせいかな……」

小鳥「プロデューサーさん、やっぱり少し休んだほうが……」

「そう……ですね……」

「じゃあ、少しだけ仮眠を……」

小鳥「分かりました、じゃあ私は仮眠用のタオル持ってきますね」

「ありがとうございます……」

「…………」

277 : 以下、名... - 2016/05/27 01:01:23.03 2KrkvX+z0 250/397

「zzz……」

春香「すぐに寝ちゃいましたね……」

小鳥「相当疲れてたのね……プロデューサーさん、夜遅くまで残って仕事してたから……」

小鳥「……さて、私ももう少し頑張らなくっちゃ」

「zzz」

春香「ふふ……」

春香「……」

春香「あっ、そうだ」


278 : 以下、名... - 2016/05/27 01:11:01.02 2KrkvX+z0 251/397

――――

――


亜美「たっだいま~!」

小鳥「しー……みんな、おかえりなさい……」

伊織「どうしたの……?」

小鳥「プロデューサーさんと春香ちゃんが眠ってるの……」

春香「すぅ……すぅ……」

「zzz……」

あずさ「あらあら~……」

律子「最近はプロデューサー、ろくに休んでませんでしたからね……」

亜美「いいなぁ兄ちゃん、はるるんに膝枕してもらってる~……」

小鳥「春香ちゃんもつられて眠っちゃったみたいね……」

伊織「…………ふんっ、なぁにだらしない顔して眠ってんのかしら……」

亜美「あれ? もしかして、いおりんヤキモチ妬いてるの?」

伊織「や、ヤキモチなんて妬くわけないでしょっ!」

律子「い、伊織、しーっ!」

279 : 以下、名... - 2016/05/27 01:15:43.84 2KrkvX+z0 252/397

「う……うーん……」

あずさ「あ、あらあら~……」

「ふぁ~あ…………ん? みんな、帰ってたのか…………って、春香っ!?」

春香「……むにゃ…………あれ? みんな、どうして……ってえぇぇぇっ!?」

「よ、よう、春香……」

春香「ぷ、プロデューサーさん、起きてたんですかぁ!?」

亜美「違うよ~、いおりんがおっきな声出して今起こしたとこだよ」

伊織「あ、アンタのせいでしょっ!」

春香「え、えぇっとですね……! こ、これはその……!」

春香「こ、これは膝枕っていうか、そのぉ、あ、ある種の実験っていうか……!」

「お、落ち着け春香!」

280 : 以下、名... - 2016/05/27 01:19:03.99 2KrkvX+z0 253/397

――

「落ち着いたか……」

春香「はい……」

小鳥(膝枕のところからバッチリ! いいもの撮らせてもらったわ……)

春香「でも大丈夫ですか? プロデューサーさん、まだ30分くらいしか寝てませんけど……」

「大丈夫、少し休憩を入れるだけでもだいぶ楽になったよ」

「これも春香の膝枕のおかげかな?」

春香「あ、あんまりからかわないでくださいよぉ」

「あははは、すまんすまん。春香の反応がが可愛くってさ」

春香「も、もぅ! プロデューサーさんったら」


あずさ「……」

亜美「……な~んか……亜美たち茶屋の外ってカンジ……」

律子「それを言うなら蚊帳の外」

伊織「…………ふん!」


281 : 以下、名... - 2016/05/27 01:23:42.16 2KrkvX+z0 254/397

伊織「まったく、バカやってんじゃないわよ」

伊織「アンタ、最近またボーっとしてることが多い気がするわ。これからが大事な時期だっていうのに……そんな気が抜けた状態じゃあ本番なんて望めないわよ」

「え? 本番?」

伊織「アンタ忘れたの? 目指すはトップアイドル。こんなとこでアンタにへばってもらっちゃあ困るのよ」

「あぁ、それはもちろん忘れてないさ。でも、トップアイドルったってそうすぐになれるもんじゃあないんだろ?」

「焦らなくたって必ずなれるさ。いや、ならせてみせる」

伊織「あと二か月もないわよ、そろそろ準備していくべきでしょ」

「二か月? 何が?」

春香「プロデューサーさん、IMAですよ! IMA!」

「アイエムエー?」

伊織「…………アンタ、まさか知らないの……?」


282 : オリ設定が出てくるのは私の責任だ。だが私は謝らない - 2016/05/27 01:26:21.35 2KrkvX+z0 255/397

伊織「アイドル・マスター・アーツ、略してIMA。年に一度開催されるアイドルの頂点を決める祭典よ」

伊織「出場できるのは出場希望の中から選ばれた30組。出場可能な一つの組の人数は最大で15名まで」

伊織「二日間に分けられていて、一日目は30組すべてがそれぞれ100点満点中で審査される」

伊織「二日目は決勝戦。一日目の審査の中で最も点数の高かった2組だけが審査されるわ」

伊織「決勝戦は一日目の点数にまた100点満点中で点数が加算される。さらに、そのどちらかの組からか最優秀者が一人決定されて、その組の点数に15点が加算される」

伊織「200点満点中に15点が加算されて合計獲得点数の多かった組が優勝、その年のトップアイドルよ」

「トップアイドルってそういう風に決まるのか……」

伊織「まず30組の中に選ばれるためにも人気を集めておかなきゃならないのよ」

「な、なるほど……」

律子「ホントに知らなかったんですか?」

「うん、全然」

伊織「あきれた……アンタ、この仕事に就いてどれだけ経ったと思ってるの?」

「え、え~と……大体八か月くらい……?」

伊織「八か月間アイドルに携わってきて知らなかったのね……」

春香「あ、あはは……」

283 : 以下、名... - 2016/05/27 01:30:22.29 2KrkvX+z0 256/397

「そのIMAってので日本一のアイドルが決まるってことは、フェアリーも当然参加するんだよな?」

伊織「まぁ、そりゃあそうよ」

律子「フェアリーは間違いなく優勝候補の一つでしょうね」

あずさ「美希ちゃんたち、すごいですもんね~」

亜美「亜美たちも負けてられないね!」

伊織「去年は美希の移籍でIMAどころじゃなかったからね。今年こそトップアイドルを目指すわよ」

「そういえば前に黒井社長が言ってたな……フェアリーを倒すことはトップアイドルになることと同義語、とかなんとか……このIMAのことだったのか?」

伊織「まるでフェアリーは決勝に進むのが決まっているみたいな言い方ね」

小鳥「あはは……いかにも黒井社長が言いそう……」

284 : 以下、名... - 2016/05/27 01:34:18.10 2KrkvX+z0 257/397

「まぁこれで目標も明確になったわけだ! まずは30組に選ばれるよう頑張ろうな!」

伊織「そんなの当たり前でしょ…………ただ……」

「ん?」

伊織「全員で出場するのか、それとも、竜宮で出場するのか……よ」

「なんで? 全員のほうが……」

伊織「そうね、私たちにとってはそっちのほうが望ましい」

伊織「けど、やたらに人数が増えるよりも、今人気もあり名前も売れている竜宮で出たほうが出場できる可能性は高い」

伊織「それに人数が少ないほうが練習もはかどる。人数が多いとたった一人のミスで時間をとられてしまうかもしれない」

「そ、それって……」

伊織「ハッキリ言うと、足手まといは少ないほうがいい」

律子「……」

「っ! お前っ……!」

伊織「本当のことだもの。これはただの仕事とは違う、戦いよ」

伊織「力の出し切れない9人より、出し切れる3人のほうが断然いい」


285 : 以下、名... - 2016/05/27 01:39:58.71 2KrkvX+z0 258/397

「…………」

亜美「兄ちゃん……」

あずさ「プロデューサーさん……」

律子「……」

「俺は……」

「俺は、この765プロに足手まといなんていないと思う……」

「全員にそれぞれの良さがあって、ダメなとこもあって、お互いに助け合って、補い合ってる」

「春香も、千早も、やよいも、真も、雪歩も、伊織も、亜美も、真美も、あずささんも、律子も」

「それだけじゃない、音無さん、社長、そして俺」

「誰一人欠けちゃいけない、俺たち全員で765プロなんだ」

春香「!」

「俺はみんなを信じてる」

伊織「……」

286 : 以下、名... - 2016/05/27 01:45:19.97 2KrkvX+z0 259/397

伊織「……理屈になってないわね…………」

伊織「けど、安心したわ」

「! い、伊織!」

伊織「もしもアンタが、みんなじゃ無理そうだから竜宮で出場しようなんて言ってたらぶん殴ってたとこよ」

亜美「さっすがいおり~ん! 亜美は信じてたよ~!」

「ははは……」

伊織「まぁ大変なのは本当だから、それだけ頑張らないと」

「もちろんだ! 俺もしっかりとみんなをサポートしていくぞ!」

伊織「……さっきの台詞といい、アンタなんだか春香じみてきたわね」

春香「えぇ!? 私?」

小鳥「確かに、いかにも春香ちゃんが言いそうな言葉でしたね」

(そっか、そういえば前に春香が言った言葉なんだっけ……)

(まぁ、なんにせよ俺がみんなでやろうって言ったんだ)

(俺が、絶対に成功させてやらないと……)

287 : 以下、名... - 2016/05/27 01:51:59.74 2KrkvX+z0 260/397

――――

――

律子「はい、じゃあ一度休憩ね。15分経ったらまた再開するから」

雪歩「ハァ……ハァ……」

やよい「……ふぅ……ふぅ……」

 ガチャ

「よ、みんな調子はどうだ?」

春香「あっ、プロデューサーさん!」

「はい、これ、みんなの飲み物買ってきたから」

千早「歌もダンスもまだ時間がかかりそうです」

律子「一日目も二日目もどちらも新曲で挑みますからね。もう少し調整がいります」

「二つとも新曲か。まぁ、今までこのメンバー全員での歌はなかったからな」

「ま、とりあえずそれは置いといてだ。律子、今日の練習は早めに切り上げてくれ」

律子「いいですけど、どうかしたんですか?」

「いや、注文してたみんなの衣装が届いたんだ」

律子「えっ、ホントですか!?。分かりました、早めに終わりますね」


288 : 以下、名... - 2016/05/27 01:58:37.54 2KrkvX+z0 261/397

「うわぁ~! これが新しい衣装かぁ!」

小鳥「みんな似合ってて可愛いわ!」

あずさ「この衣装、それぞれみんなのイメージカラーになっているんですね~」

雪歩「あっ、ほんとだぁ」

亜美「亜美と真美は色おんなじだね」

真美「でも模様が左右逆になってるんだね」

春香「あれ? やよい、ブーツの色が私と一緒だ」

やよい「はい、春香さんと一緒ですね」

律子「あらホント……サイズはやよいの足にピッタリだけど、色が間違ってる」

「うそ、マジで?」

「うわぁ……ごめんな、俺の発注ミスだ……」

やよい「いえいえ、大丈夫ですよー!」

伊織「アンタが最近ボーッとしてるからじゃないの?」

「うっ……」

(た、確かに……最近気が付くといつも昔のことを思い出してるような……)

小鳥「とりあえずやよいちゃんのブーツはオレンジ色で新しく発注しなおしておきますね」

「はい、お願いします」

289 : 以下、名... - 2016/05/27 02:01:31.05 2KrkvX+z0 262/397

――

「ふぅ……」

高木「おや、まだ残っていたんだね」 ガチャ

「あれ? 社長、いらっしゃったんですか?」

高木「うん、まぁ少し用事があったからね。ところでキミ、みんなの調子はどうだい?」

「えぇ、みんなやる気を出して頑張ってくれています。今回は二つとも新曲ですから、気合いが入ってますよ」

高木「そうか、それはよかった」

高木「IMA、これで今年のトップアイドルが決まる……」

高木「……」

高木「先の話にはなるが、キミはこのIMAを終えた後どうするつもりだい?」

「IMAを、終えた後……ですか?」

高木「うむ、IMAでアイドルの頂点が決まるとしても、それが一体誰なのかはわからない」

高木「765プロの彼女たちかもしれないし、我々の知らないアイドルかもしれないし」

高木「キミに妹さん、我那覇響くんのいる、フェアリーかもしれない」

「……」


290 : 以下、名... - 2016/05/27 02:07:52.78 2KrkvX+z0 263/397

高木「もし、765プロが無事トップアイドルになったとき、キミは彼女たちのプロデューサーを続けてくれるのかい?」

高木「もし、765プロが優勝できなかったとき、今迄通り、キミは彼女たちを支えてやってくれるのかい?」

高木「もしフェアリーがトップアイドルになったとき、キミは……765プロの彼女たちと共に再びトップを目指してくれるのかい? ……それとも……」

(……そうか)

(俺は、響が心配でこっちにやってきた)

(こちらで生活するために、この765プロのプロデューサーになった)

(じゃあもし響がトップアイドルになって、沖縄へ帰ると言ったら?)

(いやそれ以前に、もはや俺は必要ではないんじゃないか?)

(母さんが言っていたように、ただの過保護だったのかも)

(響は一人でやっていける……もう、俺に頼る必要もない)

(なら俺は? 俺がここにいる意味は……?)

「……」

高木「……まぁ、まだ少し先の話だ。よく考えてから結論をだしたまえ」

「はい……」

高木「私はキミを雇ってよかったと思っている」

高木「たとえキミがこれからどのような道を進もうと、私はキミを応援しているよ」

「……ありがとうございます」


297 : 以下、名... - 2016/05/27 23:24:46.88 2KrkvX+z0 264/397

なんとか二つの新曲を完成させ、出場枠の30組の中にも入ることができて、流れは好調。
IMA開催会場は事務所からは遠いため、全員で会場近くのホテルに宿泊している。
みんなも最終調整を終え、明日はもう本番という所まで来た。
しかし、この数週間考えても結局、社長から問われた質問の答えはまだ出せていなかった。

――


 『歩くの疲れたよぉ、にぃにぃおんぶして~』

 『にぃにぃ見て見て、ワンちゃん拾ったよ! 名前付けようよ!』

 『はい、響特製シチューだぞ! へ? キノコが入ってるって? そんくらい我慢して食べろー!』

 『うぎゃーっ! 兄貴! なに勝手に入ってきてるんだよーっ! 変態兄貴ー!』

 『ねぇ、どうだった!? 中々上手かったでしょ? ま、自分にかかれば歌やダンスなんて楽勝さー!』


(……)

(眠れない……)

(最近よく昔のことを思い出す……。それも響との思い出……)

(俺は一体どうしたんだ……IMAはもう明日だっていうのに…………まさか……)

(寂しいのか……?)

(……いや、まさかな……こんな歳にもなって……)

 ♪~レディトライアルダンス~

「こんな時間に電話…………誰からだ……?」

「! ……響……?」

「……」


298 : 以下、名... - 2016/05/27 23:30:30.56 2KrkvX+z0 265/397


 ピッ

「……」

『……』

「……響か……?」

『……うん』

「随分と久しぶりだな……どうした、こんな時間に……」

「もしかして、沖縄に帰ってくる気になったか?」

『……』

『……兄貴は、知らないの……?』

「…………フェアリーだっけ? 知ってるよ。冗談で言っただけだ」

『! ……そ、そっか……! ふふっ』

『あのさ……』

『兄貴は……自分に、沖縄に帰ってきてほしい……?』

『それとも……帰ってきてほしくない……の?』

「……」

「……知り合いが言ってたが、人に答えを要求するのは卑怯だそうだぞ」

「沖縄に帰ってくるかどうかぐらいは、俺がどうこうよりも自分で決めろ」

『……わ、わかった……』

299 : 以下、名... - 2016/05/27 23:36:23.50 2KrkvX+z0 266/397

『……』

『兄貴……まだ、怒ってる?』

「何の話だ?」

『自分が……家を出て、黒井社長についていったこと……』

「……いや」

「響が家を出ていったとき、子供がなにをバカなことをって思ってた」

「一人じゃどうせ何もできない……どうせすぐに諦めて泣きついてくるだろうと思った」

『……』

「けど、お前は本当にアイドルになった」

「いつまでも子供だと思ってたけど、お前はちゃんと成長してたんだな」

『あ、当り前だぞ』

「ははは、悪い」

「俺はもう誰に頼らなくても一人でやってけるなんて思ってたけど、そんなことなかった」

「俺はいろんな人に頼らないといけなかった。現実ってのは俺の思ってたより厳しいもんだった」

「お前よりも、俺のほうがよっぽど子供だったよ 」


300 : 以下、名... - 2016/05/27 23:41:10.83 2KrkvX+z0 267/397

『そ、そんなことないぞ。自分だって黒井社長や、美希や貴音……フェアリーの仲間に支えられてたからやってこれたんだ』

『それに……』

『寂しくなって……こうやって今、兄貴に電話してる……』

「……」

『寂しかったんだ……こっちに来て新しい友達も増えたけど……』

『今迄ずっと一緒だった人がいなくなって……なんていうか、心にポッカリ穴が開いたみたいな……』

『気が付けばいっつも、昔のことばっかり思い出してた……』

「……響……」

『……』

『実はね……明日はトップアイドルを決める大切な日なんだ……』

「!」

『もちろん自分たちも出場するんだけど……トップアイドルになれるのは、優勝した一組だけ……』

『だから……だからね……』

『兄貴は自分のこと、応援してくれるよね……?』


301 : 以下、名... - 2016/05/27 23:48:13.74 2KrkvX+z0 268/397

(俺は……)


 『夢はみんなまとめてトップアイドル! よろしくお願いします!』


 『頼りにしてるわよ? プロデューサー』


 『みんなで絶対、トップアイドルになりましょうね!』


「…………」

「頑張れよ」

『!』

「俺もしっかり見ておくから」

『う、うん! 自分、めいっぱい頑張るぞ!』

「あぁ、お前はそれでいい」

「さ、明日はその本番なんだろ? 明日、全力を発揮できるように早めに寝ておけ」

『わかった、そうする』

『……あの……今日は久しぶりに話せて嬉しかった……』

「あぁ、俺もだよ。おやすみ、響」

「うん、おやすみ」


302 : 以下、名... - 2016/05/27 23:52:36.43 2KrkvX+z0 269/397

(響の夢がかなうこと……それは俺の望みでもある……)

(けど約束したんだ、みんなでトップアイドルになるって)

(響に頑張れといったのは本心だ……だけど)

(結局俺は、どっちなんだ……)

「……」

「もう寝よう……」

303 : 以下、名... - 2016/05/27 23:59:38.29 2KrkvX+z0 270/397

――

春香「うわぁ! 見てください、プロデューサーさん!」

「あぁ、ものすごい観客の数だな」

伊織「そりゃあそうよ、なんたってこれで日本一のアイドルが決まるんだから」

小鳥「それに、日本の総アイドルの中から選ばれた最高の30組ですからね。ファンの人もたくさんいますよ」

雪歩「うぅ……緊張してきちゃったぁ……」

「さすがにこの数はね……」

千早「前にライブをしたときも相当大きな会場だったけど、ここまではさすがになかったわね」

やよい「とーってもひろいです!」

律子「みんな、眺めるのはそこまでにして、私たちも準備に取り掛かるわよ」


304 : 以下、名... - 2016/05/28 00:03:36.10 uNQkhbg90 271/397

「ステージの後方にでっかいスクリーンがあるんだな」

伊織「あれは演出用のスクリーンね。あそこに点数も表示されるのよ」

「へぇ」

律子「点数が表示されるって言っても、30組すべてが終わってからですけどね」

「まぁ、じゃないとモチベーションの上がり下がりとかありそうだもんな」

「そういや、百点満点中で採点されるって言ってたけど、平均は何点ぐらいなんだ?」

伊織「平均は70後半ぐらいかしら。大体決勝に進むのは85から90前半ぐらいね」

伊織「80前半で決勝に進むこともあるけど、二日目はその点数がそのまま加算されるから、相手の点数によっては勝負にならないときもあるわ」

「平均が70点台って中々厳しいな」

伊織「そうね、私は毎年見てきたけど、今まで90後半を見たことないもの」



305 : 以下、名... - 2016/05/28 00:07:45.39 uNQkhbg90 272/397

律子「さ、みんな着替え終わった?」

亜美「もちろんです、プロですから」

真美「カッコイイとこ見せましょ」

やよい「うっうー! 私もみんなとお揃いですー!」

伊織「今度はちゃんとオレンジ色のブーツね。良かったわねやよい」

春香「あ、あれ……」


306 : 以下、名... - 2016/05/28 00:14:32.58 uNQkhbg90 273/397

千早「春香、どうかしたの?」

春香「な、なんかこのブーツ、きついような……」

あずさ「でも春香ちゃん、前に履いたときはサイズピッタリだったわよね?」

春香「はい……あ、あれぇ?」

律子「あら、春香?」

春香「あ、律子さん」

千早「律子、春香のブーツのサイズが合わないみたいなのよ」

律子「えぇ? そんなはずは……」

「うん? 春香、そのブーツ、よく見せてくれないか?」

春香「は、はい」

「……!」

(こ、これって……!)


307 : 以下、名... - 2016/05/28 00:20:33.05 uNQkhbg90 274/397

「すまない! きっと俺が間違えて発注ミスしたブーツを持ってきてしまったんだ……!」

「えぇっ! そんな……!」

雪歩「ど、どうしましょう……」

伊織「衣装とブーツは色が統一してあるから、代わりになるものがないわね……」

亜美「一人だけブーツじゃなかったら逆に目立っちゃうし……」

真美「逆にみんなブーツをやめればいいんじゃない?」

律子「それだと今度は別の履くものを探さないといけないわよ……」

「……」

「……小鳥さん、765プロの出番は何番目ですか?」

小鳥「えぇっと……25番目ですね」

「25……一組を5分で考えたら約2時間か……よし」

「俺が車で事務所まで行って取ってくる」

律子「時間……間に合いますかね……」

「事務所から泊まってたホテルまでは約1時間だった。往復で2時間と考えればなんとか間に合うはずだ」


308 : 以下、名... - 2016/05/28 00:39:06.71 uNQkhbg90 275/397

亜美「兄ちゃん、行っちゃたね……」

真美「間に合うかなぁ」

伊織「私たちに手伝えることはないわ。私たちは目の前のことに集中しましょう」

 『皆様こんにちは。今年も始まりました、アイドルの日本一を決める祭典、アイドル・マスター・アーツ――』

「あっ、始まったみたいだ……」

春香(プロデューサーさん……)



――――

――

 ブオォーン!

「よし、案外道はすいてる……」

(また俺のせいだ……。また俺がみんなに迷惑をかけてしまっている……)

 『――今年はどのアイドルたちが日本一となるのか、必見です』

「くそっ、もう始まったか!」

「間に合ってくれよ……!」


309 : 以下、名... - 2016/05/28 00:43:24.79 uNQkhbg90 276/397

 「次は、エントリー番号6番、―――」


高木「うん?」

黒井「ふん、貴様か」

高木「やぁ黒井。キミもか」

黒井「当り前だ。我が961プロのフェアリーが出ないはずがない」

黒井「まぁ、こんなことをせずともフェアリーの優勝は決まっているがな」

高木「ほぉ、えらく自信満々じゃないか」

黒井「ふっ、見ろ。今、ステージにいる小娘どもを」

高木「ん? 可愛い子たちじゃないか」

黒井「あの程度の実力でフェアリーと同じ舞台に立とうなどと、おこがましい……」

黒井「所詮そこらのアイドルなど、トップアイドルという灯火にわらわらと集まってくる醜い虫」

黒井「実に哀れだよ、炎に向かう蛾のようだ」


310 : 以下、名... - 2016/05/28 00:52:14.86 uNQkhbg90 277/397

黒井「蝶は蝶として生まれたから蝶であり、蛾は蛾として生まれたから蛾なのだ」

黒井「蝶は光の中を生き、蛾は光を求め彷徨い続ける。蛾は決して蝶にはなれん」

黒井「光の中で舞うことができるのは、王者たるフェアリーのみ」

高木「アイドルを虫扱いかね」

黒井「もちろん貴様ら765プロも蛾だ」

高木「はは、ひどいなぁ」

黒井「ふん、せいぜいフェアリーがトップアイドルになるところを這いつくばって見ているんだな」


311 : 以下、名... - 2016/05/28 00:56:04.69 uNQkhbg90 278/397


 バタン ガチャ ブロロン

「ブーツがすぐ見つかってよかった……」

「経過時間は……58分……会場の状況は……」

 『――次は、エントリー番号12番――』

「12番か……よしっ!」

「この調子ならなんとか間に合うはずだ!」


312 : 以下、名... - 2016/05/28 01:01:24.06 uNQkhbg90 279/397

――

 『ワ―! ワ―!』

律子「……今、21番が終わったわね……」

律子(時間はもうあと20分もない……)

あずさ「遅いですね、プロデューサーさん……」

亜美「……もし、兄ちゃんが間に合わなかったらどうしよう……」

真美「そ、そのときは普通のブーツを赤いペンキで塗装して……」

雪歩「そ、それって乾かないんじゃ……」

伊織「……最悪の場合、春香は今あるブーツで本番に臨んでもらうしかないわね」

春香「!」

千早「春香……」

「春香、できそう……?」

春香「……」

春香「大丈夫、少しサイズが小さいだけだから……」

春香「私……踊れるよ」


313 : 以下、名... - 2016/05/28 01:08:10.52 uNQkhbg90 280/397


 ブオォーン!

「あと少し……あと少しだ……!」

 『――エントリー番号23番、961プロダクション、フェアリーによります、KisSです』

「! フェアリー!」

 『♪~絡まる吐息、交わる視線――』

(確かに黒井社長があれだけ言うのも頷けるな……)

(澄んだ歌声、ダンスのキレのある動き……)

(響……)



 プアァーッ!


「はっ!」

「しまっ――!」


 キキーッ!       ガシャァッ!!!


314 : 以下、名... - 2016/05/28 01:12:08.85 uNQkhbg90 281/397

――

やよい「プロデューサー……」

律子「……限界ね」

律子「春香、行けるわね……?」

春香「はい……!」

伊織「春香……」

春香「大丈夫!」

春香「みんなには迷惑かけちゃうかもだけど、私はみんなを信頼してる」

春香「たとえどんな状況だろうと、今の全力を尽くそう!」

春香「いくよ! 765プロ! ファイトー!」

 「オー!」


315 : 以下、名... - 2016/05/28 01:16:52.72 uNQkhbg90 282/397

 「次はエントリー番号25番、765プロダクションによります、L・O・B・Mです」

ワアァァァァ!

 ♪~アッ! とね言わせてみたい いっぱい愛があふれる ウットリするような世界創ろう


律子(ちゃんと実力が出せてる。今までで一番いい調子だと思う……だけど……)

律子(春香、あのブーツで踊るのは相当痛みがあるはず……)

律子(それに、勝ち残った場合明日もある。明日はちゃんとしたブーツがあるだろうけど……)

律子(今日、足を痛めでもしたら、明日に響く可能性は高い……)

 ♪~アイコンタクトをしようよ それで伝わることがあるハズさ


小鳥「り、律子さん……!」

律子「小鳥さん? どうしました?」

小鳥「プロデューサーさんが……!」


316 : 以下、名... - 2016/05/28 01:21:09.67 uNQkhbg90 283/397

 ♪~みんなこの世界の中で いがみ合わずにいたいよ

 ズキッ

春香(っ!)

 ぐらっ

春香(あっ……)

 バタッ

 ザワ…

千早(春香!) ガシ グイッ

春香(千早ちゃん……! 真……!)

 ♪~そしたら もっと優しくなれるよ ねっ!



317 : 以下、名... - 2016/05/28 01:26:53.69 uNQkhbg90 284/397

――――

――

ワアァァァァァァァ!

春香「ハァ……ハァ……」

伊織「春香……」

雪歩「大丈夫……?」

春香「だ、大丈夫だよ……でも……」

春香「ごめんね……途中で転んじゃった……」

真美「はるるん……」

やよい「春香さん……」

春香「……千早ちゃんと真、ありがとう……転んだときに、引っ張って起こしてくれて……」

「へへ、それくらい当り前だよ」

千早「そう、私たちは仲間なんだから、もっと頼っていいのよ?」

春香「うん……」

律子「みんな、お疲れさま」


318 : 以下、名... - 2016/05/28 01:35:53.08 uNQkhbg90 285/397

春香「律子さん……」

律子「今日の歌、ダンス、どちらもとても素晴らしかった。どのアイドルたちよりも輝いて見えたわ」

律子「それに真と千早……二人とも、とっさの判断で手を貸したのは良かった」

律子「春香も、そのブーツでよく最後まで踊りきってくれたわ」

律子「この後の予定は結果次第になるから、準備だけはしておいてね」

みんな「はい!」

律子「……あとそれと…………みんなに一つ伝えておくことがあるの」

伊織「伝えておくこと……?」

律子「実は……」

律子「プロデューサーが、事故にあったの……」


319 : 以下、名... - 2016/05/28 01:44:18.73 uNQkhbg90 286/397

春香「えっ!」

亜美「に、兄ちゃんが!?」

律子「えぇ、警察から連絡があったのよ。トラックと事故にあったって」

千早「!」

雪歩「そんな……! プロデューサーは無事なんですか……!?」

律子「大丈夫、プロデューサーにケガはないわ」

律子「プロデューサーのとっさの急ハンドルでなんとか正面との衝突はなかったみたい」

やよい「よ、よかったです……」

律子「あとにプロデューサーから連絡が来ると思うから」

律子「とりあえず今、私たちにできることは明日に向けて体調を万全に整えることよ」

律子「とりあえず春香はブーツを脱いで」

春香「分かりました」

小鳥「みんなも衣装のほつれなんかがないか確認しておいてね」

春香「っ……」 スポッ

律子「これは……足にマメができてるわね……」

律子「とりあえず水で洗って冷やしてから、絆創膏を貼りましょう」


320 : 以下、名... - 2016/05/28 01:48:31.24 uNQkhbg90 287/397

小鳥「はい、出来たわ春香ちゃん」

春香「ありがとうございます、小鳥さん」

小鳥「普通、こんな状況じゃあ運動なんかしちゃいけないんだけど……」

春香「そうもいきませんから……」

律子「ごめんね春香、無理させてしまって……」

春香「いえいえ、大丈夫ですよ!」

 ワァアアアア!

伊織「……どうやら、30番まで終わったみたいね」


 『――さて、30組すべてのアイドルたちのパフォーマンスが終わりました。歌にダンス、どれも素晴らしかったですね』

 『今後の予定としては、これから点数発表となります。読み上げられていく点数が正面のスクリーンに表示され、その中から最も点数の高かった2組のみが、明日の決勝戦へと望むことができます』


321 : 以下、名... - 2016/05/28 01:53:24.83 uNQkhbg90 288/397

 「ただいまより、結果発表を行います。番号と点数が読み上げられます」

 「1番、――プロダクション、76点。2番、――――」

亜美「……」

真美「……」

春香(……もし……もし、ダメだったら……)

春香(それはきっと私のせいだ……私が転んだから……)

春香(私は……どうすれば……)

千早「……春香」

春香「! な、なに?」

千早「大丈夫よ春香」

千早「あなたは一人じゃない。私たちは今までずっと、みんなで頑張ってきたんだから」

千早「きっと、大丈夫……」

春香「! 千早ちゃん……」

春香「…………ありがとう……」


322 : 以下、名... - 2016/05/28 01:58:38.38 uNQkhbg90 289/397

 「23番、961プロダクション、フェアリー、98点」

 ワァアアアアアア!

伊織「きゅ、98!?」

律子「か、過去最高記録じゃないかしら……」

千早「これでフェアリーが決勝戦に進むのはほぼ確定したわね……」

「これを超えなきゃトップアイドルにはなれないのか……」

雪歩「今、98点をのぞいたら81点が最高点だから……」

真美「82以上を取らなきゃ決勝にも出られないんだね」

 「24番、――――――、79点」

春香(お願いです……どうか、どうか……!)

 「25番、765プロダクション―――」

春香(お願い……!)




 「――――82点」


323 : 以下、名... - 2016/05/28 02:05:13.15 uNQkhbg90 290/397

「や、やったぁー!」

亜美「これで亜美たちが2位だ~!」

やよい「うっうー! やりましたぁ!」

春香「よ、よかったぁ……!」

千早「やったわね、春香」

春香「うん!」

伊織「待ちなさいよあんたたち。まだ結果発表が最後まで終わってないんだから、82を超えるところがあるかもしれないのよ?」

伊織「ぬか喜びはしたくないわよ」

真美「でも嬉しいのは嬉しいんだよ、いおり~ん! いおりんも嬉しいでしょ~?」

伊織「ちょ、ちょっと、離れなさい!」


324 : 以下、名... - 2016/05/28 02:14:17.49 uNQkhbg90 291/397

 「30番、――――、80点。以上です」

「ふぅー、あとのとこには82を超えるのはありませんでしたね」

あずさ「これで一安心ね~」

高木「おっほん!」

小鳥「あら、社長?」

高木「いやぁ、みんな、決勝進出おめでとう! 私も見ていたが、実に素晴らしかったよ!」

高木「明日の決勝戦でも、今日以上に、存分に力を発揮してもらいたい!」

みんな「はい!」

高木「うむ。……それと、プロデューサー君のことなんだがね……」

律子「プロデューサーがどうかしたんですか?」

高木「実は、事故の連絡のあとから、彼の電話につながらないんだよ」

春香「え?」


325 : 以下、名... - 2016/05/28 02:19:58.50 uNQkhbg90 292/397

――

「う~ん、ダメだ……ボクも全然つながらない……」

雪歩「私もダメみたいですぅ……」

伊織「もうっ! 何で出ないのよ!」

千早「出ないんじゃなくて、出ることができないのかもしれないわ」

亜美「でも、兄ちゃんケガはないって言ってたよね?」

真美「またさらに、何かに巻き込まれたとか?」

やよい「えぇーっ!? た、大変です!」

あずさ「大丈夫、きっとプロデューサーさん、電話に気づいていないんだと思うわ」

春香「……」

 ガチャッ


326 : 以下、名... - 2016/05/28 02:26:05.38 uNQkhbg90 293/397

美希「みんなー!」

「はいさーい!」

貴音「こんにちは」

亜美「あ、ミキミキだー!」

真美「それにひびきんとお姫ちんも!」

律子「美希、決勝進出おめでとう」

美希「あはっ、それは律子さんたちもだって思うな」

「98点だなんて、ホントビックリしたよ!」

「まぁ、自分たちにかかればざっとこんなもんさー!」

雪歩「とってもカッコよかったですぅ!」

貴音「ふふ、ありがとうございます。ですが、あなた方の姿もとても輝いていましたよ」


327 : 以下、名... - 2016/05/28 02:30:34.11 uNQkhbg90 294/397

美希「そーいえば、765のプロデューサー、今日はいないの?」

「あれ? ホントだ……」

真美「実は兄ちゃん、事故っちゃってさ」

亜美「兄ちゃんにはケガはないらしいんだけどね。今どこにいるかはわからないんだ」

美希「どういうこと?」

律子「事故の連絡のあとから、新しい連絡もないし、こっちから電話をかけても繋がらないのよ……」

「でもそれって変だな。連絡がないにしても、電話に出ないなんて……」

伊織「まったく、アイツはどこほっつき歩いてるのかしら」

貴音「……?」


春香「……」

貴音「……どうかしたのですか、天海春香」


328 : 以下、名... - 2016/05/28 02:34:44.00 uNQkhbg90 295/397

春香「えっ? あ、貴音さん……」

貴音「なにやら神妙な面持ちでしたが」

春香「え、えっと……」

貴音「プロデューサーについてですか?」

春香「! は、はい」

春香「その、プロデューサーさんは、もしかしたら勘違いをしてるんじゃないかなって」

貴音「勘違い……」

春香「全部私の勝手な推測ですけど、もしもプロデューサーさんが事故のせいで結果を知らないんなら、自分のミスで私たちが決勝へは進めなかったと思ってるんじゃあないかと思うんです」

貴音「ふむ……」

春香「……ま、まぁ、全部想像ですから!」

伊織「いや、可能性はゼロじゃないわね」

春香「い、伊織……!?」

貴音「というと……?」

伊織「前にもアイツ、ミスをしたときに765プロをやめて逃げようとしたことがあったのよ」

春香「えぇ! そうだったの!?」

伊織「そのときは私が止めたからよかったんだけどね……」

貴音「……」


329 : 以下、名... - 2016/05/28 02:40:11.72 uNQkhbg90 296/397

――

美希「じゃあ美希たちはもう行くの、みんな頑張ってね~」

やよい「私たちも頑張りますから、美希さんたちも頑張ってくださいねー!」

伊織「見てらっしゃい美希! 明日は必ず私たちが勝つんだから!」

「みんな随分と余裕そうだなぁ」

亜美「んっふっふ~、諦めない心が勝利へのカギなんだよ~」

真美「明日は真美たちの団結の力を見せてやるぜ~!」

貴音「では、失礼いたします」

あずさ「ええ、明日はお互い頑張りましょうね~」

330 : 以下、名... - 2016/05/28 02:44:46.45 uNQkhbg90 297/397

――

「もっと焦ってるかと思ったけど、全然そんな感じじゃあなかったね」

美希「うん、とってもみんなキラキラしてたの」

貴音「ふふ、明日が楽しみですね」

美希「あふぅ、なんだか眠くなってきちゃったの。ミキ、一足先にホテルに帰ってるね~」

「あ、美希! ……ってもう行っちゃったぞ……」

貴音「響」

「ん? なんだ貴音?」

貴音「実は携帯電話を忘れてきてしまって……少しだけ貸していただけませんか?」

「いいけど、どっかに電話でも掛けるのか?」

貴音「えぇ、すぐに終わります」

「わかったぞ、じゃあ自分そこの自販機で飲み物買ってくるね。はい」

貴音「ありがとうございます、響」




貴音(申し訳ありません……)

331 : 以下、名... - 2016/05/28 02:47:47.69 uNQkhbg90 298/397

――

春香「ふぅ……いたた……」

春香(決勝に出られるのはうれしいけど……マメは痛いなぁ……)

千早「春香、大丈夫?」

春香「大丈夫、平気だよ。そろそろ晩ご飯食べに行こうか?」

千早「そうね、2階にバイキング式の食堂があったから、みんなそこにいるんじゃないかしら」

春香「うん、行こう、千早ちゃん」





「あ、春香に千早」

春香「あはは、やっぱりみんなここにいたんだね」

亜美「お肉山盛り~!」

真美「デザートも山盛り~!」

伊織「あんたたち、そんなに取って食べきれるの?」

あずさ「いくらでも食べていいって言われると、つい取りすぎちゃうのよね~」

やよい「え~!? これっていくらでも食べていいんですか!?」

雪歩「お肉がとってもおいしぃ……」

千早「私たちも食べ物とりましょうか」

春香「そうだね」


332 : 以下、名... - 2016/05/28 02:51:19.38 uNQkhbg90 299/397


春香「そういえば律子さんたちはどこだろう?」 モグモグ

千早「確かにいないわね」

真美「社長とピヨちゃんもいないよ」 モグモグ

律子「あっ、みんな。ここにいたのね」

伊織「遅かったわね、どうしたの?」

律子「ちょっと……プロデューサーのことでね……」

亜美「兄ちゃんのこと?」

伊織「まさか、まだ連絡取れてないんじゃあ……」

律子「えぇ、そのまさかよ。どうやら事故の件はプロデューサーが一人で済ませたみたいだけど……」

「これだけ時間が経っても連絡一つないなんて、なおさら変だよね」

雪歩「心配ですぅ……」

春香「……」


333 : 以下、名... - 2016/05/28 02:54:42.70 uNQkhbg90 300/397

――

千早「春香、お風呂行きましょう?」

春香「うん……」

千早「……春香…………?」

春香「……ごめんね千早ちゃん、ちょっと疲れただけだよ」

春香「私、まだ用意できてないから、先に浴場へ行っててもらってもいいかな?」

千早「……わかったわ、じゃあ先に行ってるわね」

春香「うん」

千早(……春香……)







春香「すぅ……すぅ………………んぅ?」

春香「ふぁ……私、いつの間に寝ちゃってたみたい……」

春香「どれくらい寝たんだろう……」

 コンコンッ

春香(あれ、もしかして千早ちゃんがもうお風呂から上がって帰ってきちゃったのかな)

春香「はーい、今開けまーす」

 ガチャッ


334 : 以下、名... - 2016/05/28 02:58:10.13 uNQkhbg90 301/397

春香「ごめんねー千早ちゃ……って貴音さん!?」

貴音「こんばんは、天海春香」

春香「ど、どうしたんですか? 貴音さんたちはこのホテルじゃあなかった気が……」

貴音「実は、貴方に渡しておきたいものがあって来たのです」

春香「え、渡しておきたいもの……?」

貴音「これを……」 スッ

春香「紙切れ……? 何か書いてある……これってもしかして電話番号ですか?」

貴音「その番号はあの方へと通じています」

貴音「頼みましたよ」

春香「えぇ? ちょっ、ちょっと待って……!」

亜美「おっ、はるるんはっけ~ん!」

真美「一緒にお風呂いこ~よ!」

春香「あっ、亜美、真美……」

真美「ど~したの? 階段のほう見て」

亜美「? 誰もいないよ?」

春香「……」


335 : 以下、名... - 2016/05/28 03:00:39.09 uNQkhbg90 302/397

 ガララッ

亜美「亜美参上!」

真美「真美参上!」

伊織「コラ、私たち以外にも人はいるんだから静かにしなさい」

千早「あっ、春香」

春香「えへへ、ごめんね千早ちゃん。私いつの間にか眠っちゃってたみたいで……」

千早「もう、あんまり遅いから少し心配してたのよ」

千早「でも、少し気分がよくなったんじゃない?」

春香「え?」

千早「なんだか部屋にいたときよりも生き生きしてるわ」

春香「う~ん、確かにそうかも」


336 : 以下、名... - 2016/05/28 03:03:40.56 uNQkhbg90 303/397

春香「……」

春香「実はね、さっき貴音さんに会ったんだ」

千早「四条さんに?」

春香「それで、誰かの電話番号の書かれた紙切れを渡されてさ」

千早「誰かって……春香はその番号知らないの?」

春香「うん、初めて見る番号だった」

千早「四条さんは誰の電話番号だとかは言わなかったの?」

春香「それが……その番号はあの方へ通じていますって言ってたんだけど……」

千早「あの方……誰のことかしら……」

春香「…………私ね……」

春香「その番号……プロデューサーさんに繋がるんじゃないかって、思うんだ……」

千早「プロデューサーに?」

春香「うん……」

千早「……確かに……」

千早「あの方ってことは、春香が知っている人物だという前提の言い方……」

千早「四条さんも春香も知っている人物ってなると、プロデューサーの可能性は高いわね」

千早「ただ、何故四条さんがプロデューサーの電話番号を知っているのかって疑問は残るけど……」

春香「う~ん…………黒井社長が調べてくれたとか……」

千早「ありえるかしら……?」

春香「さ、さぁ……」


337 : 以下、名... - 2016/05/28 03:05:37.51 uNQkhbg90 304/397

千早「まぁ、なんにせよ……春香はその番号をどうするつもりなの?」

春香「……かけてみようか」

千早「でてくれるかしら」

春香「わかんない、けど……」

春香「このまま明日になっちゃったら、もうプロデューサーさんに会えない気がする」

千早「春香……」

春香「私たちは、みんなで765プロだから、誰一人欠けちゃいけないと思うんだ」

千早「……そうね……」


348 : 以下、名... - 2016/05/28 21:41:38.96 uNQkhbg90 305/397

――――

――

伊織「ふぅん、この番号がねぇ」

「確かに、プロデューサーは仕事用とプライベート用の二つを持ってたからね」

雪歩「この番号がプロデューサーのもう一つの電話の番号……」

やよい「でもプロデューサー、出てくれるでしょうか……?」

亜美「亜美たちの携帯でかけたら番号でわかるよね……」

真美「一応、別の電話でかけてみる?」

あずさ「ホテルにはたしか公衆電話があったと思うけど……」

春香「うぅん大丈夫です、私は自分の携帯で掛けてみます」

千早「それじゃあさっそく……掛けてみましょう」

春香「うん」

 ピポパ…
 

349 : 以下、名... - 2016/05/28 21:46:13.75 uNQkhbg90 306/397


(……)

(全部投げ出して逃げてきた)

(結局あの後会場には間に合わず、俺は起こした事故の対応をしていた)

(春香たちはきっとダメだっただろう、俺のせいだ)

(俺が彼女たちの夢を奪った。あれだけみんな努力していたのに)

(来年もあるかもしれない、けど、それでももう、みんなに合わせる顔がない)

(俺は、この事務所をやめよう……)

(正直、これだけ迷惑をかけておきながらやめるっていうのはどうかと思うが)

(もうこれ以上、ここにいる意味もない)

(ここにいれば、逆にみんなの迷惑になる)

(もう……いやだ……)








 ♪~レディトライアルダンス~

350 : 以下、名... - 2016/05/28 21:51:33.53 uNQkhbg90 307/397


「………響……」

「……?」

「響じゃ……ない……」

「この番号……なんで……どうして知ってるんだ……?」

「……」


(最後に……もう一度だけ……)

 ピッ


「……」

 『…………あれ? もしも~し、プロデューサーさんですか?』

 『どうしたの? 違う人だったの?』

 『わ、わかんない……もしもーし!』

「……春香か……」

 『あっ、プロデューサーさん! はい! 春香です!』

 『亜美たちもいるよ~!』

 『兄ちゃんどこいるの~?』

「俺か……? 今は自分のアパートにいるよ」

351 : 以下、名... - 2016/05/28 21:56:35.78 uNQkhbg90 308/397

 『え? アパート? なんで?』

「いや、もう出ていこうかなって思ってさ……荷物をまとめてたんだ……」

 『えぇ!? プロデューサー、引っ越すんですか!?』

「引っ越すんじゃなくて、実家に帰るんだ」

 『実家ってアンタ……私たちはどうなんのよ!』

「それは……」

「……」

「別に、俺がいなくたってやっていけるよ」

「ずっと思ってたんだ、俺なんかいらないって」

「前に伊織に言われたこともあったけど、やっぱり役に立たない奴はとことん役に立たないよ」

「迷惑ばっかかけるしさ」

 『…………ふ……』

 『ふざけんじゃないわよっ!』

 『役に立たないとか、迷惑だからって、何アンタが決めてんのよ!』

 『勝手に決めつけて、一人で悩んで、その挙句どっかに逃げようとするなんて!』

「だって!」

「だって俺のせいで……みんなの夢を……」


352 : 以下、名... - 2016/05/28 22:01:39.82 uNQkhbg90 309/397


 『終わってません』

「……え……」

 『まだ夢は終わってない。私たち、ちゃんと決勝戦まで勝ち残ったんです』

「う、うそだ……そんな……ほ、ホントに……?」

 『えぇ、82点を獲得して、明日決勝戦です』

 『メールを送ったんですが、やっぱり見てなかったんですね』

「えっ、本当だ……」 カチカチ

「あ、相手はフェアリー……だよな? フェアリーは何点だ……?」

 『フェアリーは98点です』

「きゅ、98……」

「…………い、いや、無理だ……それだけ点数差があるんじゃあ勝てない……」

「もし俺が、あんなつまらないミスをしなければ……可能性だってあったのに……!」

「勝てっこない……これも、全部俺のせいだ……」

 『プロデューサー! 逃げるんですか!? まだ負けてもいないのに!』

「あぁ、そうだ! 逃げるんだよ! 俺のせいだ! どちらにせよ俺のミスのせいでみんなの夢を終わらせてしまったんだ!」

 『プロデューサーさん! まだ終わってなんかいません! 目を逸らさないで! もっと、もっと私たちを信頼してください!』

 『アンタのミス一つで私たちが負けるとでも思ってるわけ? そんくらいのハンデで勝てなきゃトップアイドルなんてなれるわけないわよ!』

 『もっと私たちを信用してよ! もっと、もっと私たちを頼ってよ!』

「……!」

354 : 以下、名... - 2016/05/28 22:07:34.31 uNQkhbg90 310/397


 『今、プロデューサーはきっと、自分の悪いところが際立って見えてるだけなんですぅ……』

 『私が道に迷ったとき、いっつも迎えに来てくれて……よっぽど私のほうが迷惑かけてますよ?』

 『プロデューサー、あなたは私たちのために精いっぱい仕事をとってきたり、優しく接してくれたりしました』

 『これでもあなたは役に立っていなかったのでしょうか?』

「お、俺は……」

 『アンタの言ってたとおり、頭でわかってても、人間って最後には感情でしか動けないのよ』

 『アンタがいままで散々偉そうに言ってきたことが、アンタ自身にも当てはまってるんだからね』

 『それに、このままアンタにいなくなってもらっちゃ困るのよ』

 『春香のブーツは今アンタが持ってるんでしょ? 明日も必要なものなんだから、明日ちゃんとアンタが自分で会場まで持ってくんのよ』

 『兄ちゃんがいないと真美寂しいよ~!』

 『兄ちゃんがいないと亜美暇になっちゃうよ~!』

 『プロデューサー! みんなでご飯食べに行くって約束はどうなっちゃうんですかぁ!』

 『ボクもまだふりふりのカワイイ衣装着るような仕事、取ってきてもらってないですよ!』

「そう……か……そう、だったな……」

 『プロデューサーさん』

「春香……」

 『私……信じてますよ』

 『私たちは……みんな揃って765プロですから!』


355 : 以下、名... - 2016/05/28 22:13:20.70 uNQkhbg90 311/397

――――

――

「……」

「俺は……」

 ♪~レディトライアルダンス~

「……また電話……?」

 ピッ

「……もしもし」

『あっ、兄貴か? 自分だぞー』

「響……」

『ねぇ、ちゃんとテレビで見ててくれた? 自分たち、決勝戦に進んだんだぞ!』


357 : 以下、名... - 2016/05/28 22:17:52.76 uNQkhbg90 312/397

「……あぁ、おめでとう」

『なんだー? なんか元気ないぞ?』

「いや、そんなことないよ……」

「なんていうか、お前の声聞けて安心した」

『な、なに言ってるんだ? ガラにもないこと言って気持ち悪いぞ……』

「はは……」

『まぁいいや、明日もしっかり見ててね! 自分たちがバッチリ優勝するからな!』

「……」

『? 兄貴?』

「油断するなよ」

『油断? 大丈夫だぞ、絶対に勝ってみせるから!』

「……追い詰められたネズミはとんでもなく強いからな」

『え?』

「おやすみ響、明日楽しみにしてる」

『お、おー、おやすみ』

 ピッ

「……」

「よし……」



358 : 以下、名... - 2016/05/28 22:21:58.42 uNQkhbg90 313/397

――

律子「たくもぉ、プロデューサーと連絡がとれたならまず私たちに報告しなさいよ!」

亜美「ごめんね、りっちゃ~ん」

真美「完全に忘れてたよ~」

あずさ「大丈夫ですよ。プロデューサーさん、今日はちゃんと来てくれるはずです」

律子「そういう問題じゃあなくてですね……はぁ……」

 ガチャッ

美希「おっはようなの~」

伊織「はんっ、朝から敵陣にはいってくるなんて、随分と余裕じゃない」

美希「デコちゃんも朝から絶好調なの」

伊織「どーゆー意味よ! あとデコちゃんいうな!」

「へへーん、今日は絶対に負けないからなー!」

「ボクたちだって!」

やよい「負けませんよー!」

359 : 以下、名... - 2016/05/28 22:25:45.31 uNQkhbg90 314/397

貴音「天海春香」

春香「あっ、貴音さん!」

春香「昨日、貴音さんが教えてくれた番号のおかげで、プロデューサーさんと話すことができました!」

貴音「して、その結果は……」

春香「はい! 私たちの気持ちはちゃんと伝えましたから、きっと大丈夫です!」

貴音「そうですか」

春香「でも、貴音さんはどうやってあの番号を手に入れたんですか?」

貴音「ふふ、それはトップシークレット……あの番号ついて詮索されるのは少々困る、というのが本音です」

春香「?」



360 : 以下、名... - 2016/05/28 22:32:16.21 uNQkhbg90 315/397

「なぁ、765のプロデューサーまた来てないのか?」

春香「ん? 大丈夫だよ、プロデューサーさんはちゃんと来るから」

伊織「ていうか、アイツが春香のブーツを持ってるから、来てもらわなくちゃ困るのよね」

 ガチャッ

高木「おはようみんな! おや、フェアリーの諸君もおはよう!」

美希「あっ、社長! おはようございますなの!」

「はいさーい!」

貴音「おはようございます、高木殿」

高木「今日は決勝戦、我々にとってもキミ達にとっても大切な日だ。お互いにベストを尽くせるよう頑張ろう」

美希「はいなの!」

高木「うむ。そういえばさっき、黒井がキミたちを探していたよ」

高木「おそらく今日の確認をするつもりなんだろう」

貴音「それは急いで向かわねばなりませんね」

美希「みんな、今日は頑張ってね~」

「どっちが勝っても恨みっこなしだからなー!」

貴音「では、失礼いたします」


361 : 以下、名... - 2016/05/28 22:37:13.45 uNQkhbg90 316/397

高木「さて、今日は待ちに待った決勝戦。これで見事優勝できれば、キミ達はトップアイドルになることができる」

高木「得点はフェアリーとはだいぶ差はあるが……」

高木「……うむ、みんないい目をしている。諦めないことが勝利につながる」

高木「今まで数々の苦難を乗り越え、たくさんの努力をしてきたと思う」

高木「その経験をフルに活かし、決勝へ望んでもらいたい」

高木「では律子君、続きは頼んだよ」

律子「はい社長」

律子「さぁ、みんなも分かっているとおり今日は決勝。泣いても笑ってもこれが最後よ」

律子「絶対に悔いを残さないよう、持てる力全部を出し切りなさい!」

 「はい!!!」


362 : 以下、名... - 2016/05/28 22:42:19.00 uNQkhbg90 317/397

黒井「美希ちゃん、響ちゃん、貴音ちゃん。分かっているとは思うが」

黒井「敗北は許されん。王者にとって勝利とは絶対条件」

黒井「キミ達は光の中を舞う蝶でなければならない。光に寄って来るあのような蛾に負けるなど言語道断」

黒井「完璧に、圧倒的に勝利したまえ」

「はい!」

美希「はいなの」

貴音「……承知しました」

黒井「ん……どうかしたのかね? 貴音ちゃん」

貴音「いえ……」

貴音「確かに、光の中で舞う蝶は美しい。けれど……闇夜の中、ただ一つの灯火に集い、照らされ舞う蛾も、引けをとらず美しいもの……」

「???」

黒井「……何が言いたいんだね」

貴音「ふふっ、決勝が楽しみだと思っただけです」


363 : 以下、名... - 2016/05/28 22:46:29.03 uNQkhbg90 318/397

 『皆様こんにちは。昨日に引き続き今日も始まりました、アイドルの日本一を決める、アイドル・マスター・アーツ決勝戦』

 『昨日の30組のアイドルたちから選ばれた今年度最高の二組』

 『98点というIMAの過去最高得点をたたき出した961プロダクション、フェアリー』

 『一方、82点という点数でなんとか決勝へ進むことのできた765プロダクション』

 『この二組には点数に差はありますが、ここからどういった展開を見せてくれるのか、必見です』

あずさ「始まりましたね」

「決勝……うぅ、緊張するなぁ~」

律子「今日の順番はフェアリーからだけど……」

雪歩「プロデューサー……」

伊織「……アイツ、まだ来ないわけ? もう始まっちゃうわよ……」

春香「大丈夫だよ」

千早「春香……?」

春香「きっと、来てくれるから」




 バンッ!


364 : 以下、名... - 2016/05/28 22:50:44.69 uNQkhbg90 319/397


「はぁ……はぁ……」



亜美「あっ! に、兄ちゃん!」

真美「兄ちゃんだー!」

やよい「プロデューサー!」

あずさ「プロデューサーさん!」

「す、すみません! 遅れました!」

千早「時間ぎりぎりですね」

伊織「こんな日まで心配かけさせるんじゃないわよ!」

「すまん……昨日の事故のせいで車で来るわけにもいかなかったからさ……」

「でもプロデューサーが来てくれてホントよかった!」

雪歩「昨日電話してみてよかったね」

「あぁ、昨日は突然でびっくりしたけど、みんなありがとな」

「それに……心配かけて、ごめん」

律子「まったく、その通りですよプロデューサー!」

高木「昨日はみんな本当に心配していたんだよ」

小鳥「ただでさえ事故で心配してたのに音信不通でしたからねぇ。連絡しないにしても、電話ぐらい出てくださいね?」

「ほ、本当に申し訳ないです」


365 : 以下、名... - 2016/05/28 22:55:58.31 uNQkhbg90 320/397

春香「ね? 伊織、言ったでしょ来てくれるって」

伊織「はぁ……そうね……」

「なんだ? 伊織、俺が来ないと思ってたのか?」

伊織「ふん、一人で勝手に逃げようとしたくせにどの口が言うわけ?」

「ぐっ……」

春香「あ、あはは……」

千早「でも、これで春香のブーツも元のものが使えるわね」

春香「うん」

「あぁ、そうだな。そういえば昨日はどうやってやり過ごしたんだ?」

春香「えぇっと……あのまま小さいブーツで踊りました……」

「ええ!?」

千早「実はあのブーツで踊ったせいで春香の足にマメができてしまって」

「そんな……春香、大丈夫か?」

春香「だ、大丈夫ですよ、心配しないでください」

「ご、ごめんな……俺のせいだよな……」

伊織「あー、もう! すーぐネガティブ思考するんだから!」

亜美「なーやんでもしーかたない」

真美「兄ちゃん! ポジティブ、ポジティブ!」

「あ、あぁ、うん、そうだな……」


366 : 以下、名... - 2016/05/28 22:59:40.76 uNQkhbg90 321/397

 『本日の決勝は、得点の高かったフェアリーからの開始です』

 『圧倒的な得点を獲得しているフェアリー。このまま逃げ切ることができるのか』

 『フェアリーがどういった曲で決勝に臨むのかも気になるところです』

高木「どうやら今からフェアリーの曲が始まるみたいだね。ステージが見えるところまで移動しよう」

律子「みんな、曲が終わった後に少し時間が空くけど、トイレなんかは早めに済ませておきなさいね」


367 : 以下、名... - 2016/05/28 23:05:09.70 uNQkhbg90 322/397

――

 「――961プロダクション、フェアリーの『オーバーマスター』です」

 ~♪


 ザワザワ


伊織「オーバーマスター……?」

「なるほど、向こうも新曲で来たみたいだな……」




  優しさ欲しいと思ってる?
  やっぱアンタには 高嶺の花ね
  ここに響き渡らなくちゃ 意味がないのよ!


  Thrillのない愛なんて 興味あるわけないじゃない
  わかんないかな
  Tabooを冒せるヤツは 危険な香り纏うのよ
  覚えておけば?

  Come Again!



やよい「うわぁ……!」

雪歩「か……カッコイイ……!」

「確かに……普段のイメージからは想像もつかないくらいに……」

「…………」


368 : 以下、名... - 2016/05/28 23:11:44.13 uNQkhbg90 323/397


♪~
 牙の抜けたヤツになんて 心疼くわけないじゃない!
 ありえなくない?
 GentleよりWildに WildよりDangerous
 試してみれば?

 Good Luck To You!



ワァアアアアアアアアア!



律子「想像以上ですね……」

「あぁ、いつももさることながら、今回は特にな。非の打ち所がない」

(昨日の様子も途中までは見ていたが……確実にそれ以上だな……)

亜美「うぅ~……ひびきんたち、いつもはもっとバカっぽいのに~……」

真美「こ、これ……真美たち勝てるのかな……」

伊織「心配するだけ無駄よ。私たちは全力で決勝に臨めばいいの」

千早「そうね。今まで私たちだって頑張ってきたんだもの」


369 : 以下、名... - 2016/05/28 23:18:47.99 uNQkhbg90 324/397

「春香」

春香「はい?」

「もうすぐ本番だけど、大丈夫か?」

春香「? 何がですか?」

「えっと、心の準備とか、あと、足の具合とか……」

春香「足のほうは大丈夫です、もうなんともありません」

「でも、今日もダンスがあるし、もし失敗でもしたら……」

春香「……」

春香「実はですね。私、昨日転んじゃったんです」

「え?」

春香「でも、転んだ時にすぐに真と千早ちゃんが手を取って助けてくれたんです」

春香「終わった後に、もっと頼ってくれていいって言ってくれて……」

春香「すごく申し訳なかったんですけど、それと同時にすごく嬉しかったんです」

春香「こんな舞台だから私緊張しちゃって、全然周りが見えてなかったんですけど、いつも通り周りにはみんながいて……」

春香「だから私は、勝ちに行くっていうよりも、足のことや心配事なんか忘れて、いつも通りみんなと楽しくやりたいなぁ……なんて……」

「……」

春香「……ちょっとワガママですかね……?」

「いや……そんなことないよ」

(そうか、春香はいつも”みんな”を大切にしてきたんだな……)

(いつも通り、みんなと、楽しく……)


370 : 以下、名... - 2016/05/28 23:22:55.14 uNQkhbg90 325/397

高木「さぁ、そろそろ出番のようだね」

真美「ま、真美トイレ行ってくる!」

亜美「亜美も!」

律子「あんたたちさっきトイレ行ったばっかでしょ!」

雪歩「うぅ……穴掘って埋まってたいですぅ……」

「ゆ、雪歩、スコップは締まって……!」

やよい「き、緊張してきました……」 プルプル

千早「緊張してプルプルしてる高槻さん可愛い……!」

春香「ち、千早ちゃん、鼻血が……」

あずさ「あら~、お手洗いはどっちだったかしら~」

小鳥「あ、あずささん、そっちは逆です!」


伊織「決勝直前だっていうのにウチは相変わらずね……」

「はは、確かにな」


371 : 以下、名... - 2016/05/28 23:26:57.05 uNQkhbg90 326/397

高木「そういえば、まだキミから彼女たちへの一言をもらっていなかったね」

「えっ?」

小鳥「ホラ、プロデューサーさんもプロデューサーらしく、ビシッと一言お願いします!」

律子「そうですよプロデューサー、みんなに激励の言葉をどうぞ」

「きゅ、急に言われても…………ええっと、そうだなぁ……」

亜美「おおっと兄ちゃん選手! 一体どんな言葉を繰り出すのか!」

真美「期待が高まります!」

「や、やめてくれ……」

「……おほん、えっとだな」

「激励とは違うけど……とりあえず俺が言いたいのは、普段通りにやれ!ってことだ」

雪歩「普段、通り……?」

「決勝だからって何かを変えなきゃいけないわけじゃあないさ」

「俺たちは、俺たちの良さを、俺たちらしさを見せつければいいんだ」

千早「私たちらしさ……」

「それって……!」

「あぁ、いつもと変わらない。みんなで力を合わせてやればいい」

「楽しく歌って踊る、そうすればきっと765プロらしさが伝わるはずだ」


372 : 以下、名... - 2016/05/28 23:30:23.56 uNQkhbg90 327/397

亜美「ほうほう、つまり兄ちゃんはいつもの亜美たちを見せれば勝てると踏んでいるわけですな?」

「んー、まぁ、勝ち負けとかそんなんじゃあなくってだな」

「俺は、楽しそうに笑ってるみんなほど輝いているものはないって思ってる」

あずさ「私たちの笑顔……」

やよい「あ、改めてそう言われると少し照れちゃいます……」

「無理にフェアリーと競おうとしなくていいんだ」

「みんなの、765のやり方で決勝に臨もう」


373 : 以下、名... - 2016/05/28 23:35:40.20 uNQkhbg90 328/397

伊織「なんだかいまいちためにならなさそうなアドバイスねぇ……」

「そうか? 俺は結構大切なこと言ったつもりなんだけど」

伊織「……信用して良いわけ?」

「あぁ、もちろんだ」

伊織「……そう」

「俺も、信用していいんだろ?」

伊織「ふん、あったり前でしょ」

伊織「任せときなさい」

「はは、頼りにしてるよ」

374 : 以下、名... - 2016/05/28 23:39:46.12 uNQkhbg90 329/397

春香「プロデューサーさん!」

「ん?」

春香「しっかり見ておいてくださいね! 私たちの姿!」

「あぁ! 思いっきり楽しんで来い!」

 「はい!」

春香「みんな! いくよー!」

春香「765プロー! ファイトー!」

 「オー!!!」


375 : 以下、名... - 2016/05/28 23:43:17.35 uNQkhbg90 330/397

 「皆さま、大変長らくお待たせいたしました」

 「二曲目、765プロダクションによります、『i』です」

 ワァアアアアアアアアア!


♪~
 新しい服着替えて出かけよう 靴も鞄も買いたて下したて

 青い空には太陽眩しいな 人目気にせず歌でも口ずさもう



美希「やっぱり、みんなすっごくキラキラしてるの」

律子「美希」

小鳥「貴音ちゃんに響ちゃんも、来ていたのね」

貴音「ふふっ、皆、とてもいい表情をしていますね」

「とっても楽しそうだぞ……こっちまで嬉しくなっちゃいそうなくらい……」

「あぁ、歌やダンスももちろんだが……」

「俺も改めて分かった……これが、765プロの、みんなの良さなんだって」

「これが……」


♪~
 いつも忘れてた他事に気を取られ すごく大切な人たちの存在を

 自分一人だけ苦労した気がしてた だけどそれは違う

 今だから分かるけど



376 : 以下、名... - 2016/05/28 23:47:08.55 uNQkhbg90 331/397


 みんな楽しく笑顔で舞台に立とう


(一人悩んでる俺に、声をかけてくれた)


 歌やダンスで自分を伝えよう


(逃げ出そうとしてた俺を、追いかけてくれた)


 言葉だけでは言えない熱い気持ちを


(みんなに何度、救われたことか)


 少しだけでも届けられたならば


(母さん、響のためにどうするべきか、俺自身がどうしたいのか、やっとわかったよ……)


 幸せ!


(俺は、やっぱりここが……765プロが好きだ!)


378 : 以下、名... - 2016/05/28 23:51:43.14 uNQkhbg90 332/397

――――

――

 ワァアアアアアアアアア!!!


雪歩「ハァ……ハァ……! や、やった……!」

律子「みんな! よく頑張ったわ!」

高木「うむ! 実によく頑張ってくれた! フェアリーに負けていないくらい素晴らしい出来だった!」

あずさ「あら~! 本当ですか?」

小鳥「みんなとっても可愛かったわよ!」

亜美「ホント!?」

「へへっ、やーりぃ!」

真美「兄ちゃん! 真美たちどうだった?」

「あぁ、すごくよかったよ。観客も盛り上がって、まるで全体が一つになっているようだった」

「みんなすごく楽しそうにしてたのが、こっちにも伝わってきたからな」

やよい「うっうー! とっても楽しかったですー!」

伊織「そうね……本当に、楽しかった……!」

千早「春香……!」

春香「うん……!」

春香「私たち、やったんだね!」


379 : 以下、名... - 2016/05/28 23:55:18.31 uNQkhbg90 333/397

黒井「……」

黒井「……ふん」

美希「黒井社長……?」

黒井「ん? あぁ、美希ちゃんたち、戻ってきていたのか」

「765プロ、想像してたよりもすごかったぞ……」

貴音「えぇ、とても素晴らしいものでした」

黒井「ふんっ、フェアリーに比べれば、765プロなどお遊戯にすぎんさ」

美希「……」

黒井「それに、奴らとは得点の差もある。今更どうあがこうが無駄なこと」


380 : 以下、名... - 2016/05/28 23:59:20.80 uNQkhbg90 334/397

――――

――


 『長らくお待たせいたしました。どうやら最終得点の結果が決まったようです!』


亜美「うあうあ~! もう結果が出たって~!」

真美「どうしよ、どうしよ~!」

伊織「別にどうしようもないでしょ」

雪歩「うぅ~、緊張する……」

「た、確かに……ドキドキするね……」

「……」


381 : 以下、名... - 2016/05/29 00:02:19.18 aMjDKhX70 335/397

 『昨日に引き続き、いえ、昨日よりもはるかに素晴らしい曲を披露した二組』

 『一体どちらがトップアイドルとなるのでしょうか!』



 『ただいまより、最終結果発表を行います』

 『まず最初に両組の今回獲得した得点が発表されます』


 『961プロダクション、フェアリー、得点――――99点』


 『ワァアアアアアア!!!』


伊織「きゅ、99点!?」

「確かに昨日よりもすごかったけど……本当に超えてくるなんて……」


382 : 以下、名... - 2016/05/29 00:03:16.29 aMjDKhX70 336/397

 『961プロのフェアリー、過去最高得点である昨日の98点をさらに超えた、驚きの99点です!』

黒井「ふっ、当然だ」

「99点だって! やったぞ!」

美希「あはっ、二日連続で記録更新なの!」

貴音「ええ、そのようですね」

貴音(……しかし……)


 『次は765プロダクションの得点の発表です』


383 : 以下、名... - 2016/05/29 00:04:24.20 aMjDKhX70 337/397

やよい「はわわ!」

雪歩「き、きた……!」

あずさ「あらあら~」

千早「これで決まる……私たちの得点が……」



 『765プロダクション、得点―――――』

春香(お願い……!)







 『――――100点』


384 : 以下、名... - 2016/05/29 00:05:37.93 aMjDKhX70 338/397

小鳥「ひゃ、100点……?」

律子「う、ウソ……本当に……?」

亜美「100点……? ホントに100点……?」

真美「桁間違って10点とか……?」

亜美「それはないっしょー」

真美「だよねー」

亜美「てことは?」

真美「ホントのホントに?」

亜美真美「100点だ―!!」


385 : 以下、名... - 2016/05/29 00:07:56.82 aMjDKhX70 339/397

 『これはすごい! フェアリーの最高得点、99点をさらに超えた、満点の100点です!』


「すごい! フェアリーの得点を超えたよ! 過去最高得点だよ!」

やよい「やりましたー!」

伊織「ちょっと、まだ待ちなさい! 100点で嬉しい気持ちもわかるけど、まだ合計では超えられてないのよ!」

(その通りだ……100点という点数はまさに過去最高、そしてこれからも最高得点となり続ける得点だが)

(まだ合計が超えられていない……)

 『最後に、今回のIMA最優秀者の発表です』

 『最優秀者の所属している側の得点に15点が加算されます』

(最優秀者……これがフェアリーに対抗できる最後のチャンス……)


386 : 以下、名... - 2016/05/29 00:09:17.40 aMjDKhX70 340/397

 『最優秀者は――――』

(頼む……!)









 『765プロダクション所属、天海春香!』





春香「え?」

387 : 以下、名... - 2016/05/29 00:10:41.52 aMjDKhX70 341/397

春香「えええぇぇぇっ!?」

千早「は、春香! すごいわ!」

雪歩「おめでとう! 春香ちゃん!」

春香「う、嘘……なんで私が……? ゆ、夢じゃないよね………?」

亜美「んっふっふ~、はるるん、夢かどうか確かめてあげましょう!」

真美「うりゃ~! くすぐりの刑じゃ~!」

春香「ちょっ、亜美に真美! や、やめ、あっ、あははははは!」

あずさ「あらあら~、楽しそうね~」

やよい「やりましたね、春香さん! ハイ、ターッチ!」

春香「い、いえい! あはは! ちょっ、ちょっと、誰か止めてぇ!」

律子「こーら! そんなにはしゃがないの!」

「まぁまぁ、律子、みんな嬉しいんだよ」

律子「嬉しいのは分かるけど、もう……!」

388 : 以下、名... - 2016/05/29 00:12:30.99 aMjDKhX70 342/397

春香「ハァ……ハァ……た、助かった……」

小鳥「は、春香ちゃん、大丈夫?」

春香「なんだかとっても疲れました……」

伊織「春香、あんたも大変ね……」

春香「あはは……」

伊織「……春香」

伊織「おめでとう……」

春香「うん、ありがとう伊織! 私自身、全然現実味がないんだけどね……えへへ」

伊織「……」

春香「?」

伊織「……春香、本当にありがとう……」

春香「えっ? ど、どうしたの改まって?」

伊織「あんたには助けてもらいっぱなしだと思ってね……」


389 : 以下、名... - 2016/05/29 00:14:29.15 aMjDKhX70 343/397

春香「私が、助ける?」

伊織「ええ」

春香「そんな……私の方こそみんなに助けられてるよ」

春香「みんなの支えがあったからこそ、ここまで来れたんだもん」

伊織「……」

伊織「じゃあ……お互いさまってことで良い?」

春香「ん? うん、そうだね!」

伊織「そう……」



伊織(春香……間違いなくあんたがいたからこそここまで来れたのよ)

伊織(誰一人欠けちゃいけない、この765プロを繋ぎとめたあんたがいたから……)


390 : 以下、名... - 2016/05/29 00:16:39.68 aMjDKhX70 344/397

亜美「よぉ~し! これで我々765プロがトップアイドルだ~!」

真美「早速、トップアイドルの証のトロフィーの授与式にレッツゴー!」

律子「待ちなさい! 呼ばれるときはちゃんと放送が流れるから!」

小鳥「にしても、遅いですね。普通、すぐ呼ばれるはずですけど」


「……あれ?」


391 : 以下、名... - 2016/05/29 00:20:32.64 aMjDKhX70 345/397

「なぁ、フェアリーの合計得点っていくつだっけ?」

千早「フェアリーですか? 昨日が98で今日が99ですから、合計197ですね」

「だよな……」

やよい「う? プロデューサー、どうかしたんですか?」

「765プロの合計得点は?」

あずさ「えっと……82点に100点で182点、それに春香ちゃんが選ばれて15点が増えて……」

律子「あっ……」

「これ……同点だな……」


392 : 以下、名... - 2016/05/29 00:26:45.92 aMjDKhX70 346/397

あずさ「あ、あら~……」

律子「100点を獲得して、そのうえ春香が最優秀者に選ばれて、完全に浮かれてましたね……」

亜美「これってどーなるの?」

真美「延長戦とか?」

「そんな、スポーツじゃあないんだから……」

伊織「今まで同点なんてなかったから……正直どうなるのかが分からないわね……」

小鳥「これどうなるんですか、社長……あら?」

小鳥「……社長どこ行ったのかしら……」


「……」

 スッ


393 : 以下、名... - 2016/05/29 00:31:07.48 aMjDKhX70 347/397

――

黒井「ば、バカな! ありえん!」

黒井「フェアリーと……我が961プロの、完璧なユニットのフェアリーと、あの765プロが同点だと……!?」

黒井「ありえん……なぜ……なぜだ……」

黒井「ありえない……あの程度の実力で……フェアリーのほうが優れているはず……!」

黒井「まさか高木め……あいつが裏で手をまわしたのか……!」

黒井「そうだ! それ以外考えられん……第一フェアリーのオーバーマスターを超えて、100点など……!」

黒井「たった一つでも……フェアリーが負けるようなことが、あってはならんのだ……!」


394 : 以下、名... - 2016/05/29 00:36:25.33 aMjDKhX70 348/397

美希「黒井社長」

黒井「なんだ……!」

美希「アイドルって、実力がすべてじゃないと思うな」

黒井「なに……?」

「み、美希?」

美希「ミキね、765プロのみんなが歌ったり、踊ったりしてるのを見たとき、すっごく楽しかったの」

美希「みんなもすっごく楽しそうで、それを見てる観客の人たちも楽しそうだった」

美希「上手いダンスとか、歌とか、もちろんそれは不必要とは言えないけど……」

美希「本当に必要なのは、どれだけ人の心を動かせるかだって思うな」

黒井「人の心を……動かすだと……?」

黒井「なら、フェアリーのダンスは、歌は、ビジュアルは、人の心を動かさなかったというのか?」

美希「ううん、そんなことないの。間違いなく、フェアリーはみんなの心を動かしたの」

黒井「ならば何故!」

美希「ただ、ミキたちよりも765プロのほうが、より人の心を動かした。それだけなの」

黒井「バカな、そんなわけが……! あんな踊りと歌で……!」

美希「黒井社長はあの笑顔を見ても、何も感じなかった?」

黒井「!」


395 : 以下、名... - 2016/05/29 00:42:27.48 aMjDKhX70 349/397

美希「みんなキラキラしてたの、今までにないくらい……」

美希「やっぱり、ミキが765を抜けて正解だったの」

美希「……黒井社長」

美希「今日までお世話になりましたなの」

「!?」

黒井「な、なにを……!」

貴音「……」

美希「ミキ、もう765に帰るの。頑張りすぎて、ちょっと疲れちゃった」

黒井「ふ、ふざけるな! 勝手なことを……!」

美希「元々、このIMAまでの契約だったはずなの」

黒井「ぐっ……それは……」

美希「それにミキ、そろそろ765プロのみんなが恋しいの」

美希「それじゃあ、響、貴音、黒井社長、またね」

 ガチャッ  バタン

黒井「ま、待て! ……くそっ」


396 : 以下、名... - 2016/05/29 00:48:05.60 aMjDKhX70 350/397

貴音「黒井殿」

黒井「!」

「貴音!? ……まさか……!」

貴音「えぇ、私も本日を以てこの961ぷろだくしょんを離れるつもりです」

貴音「この一年を満たない短い期間でしたが、アイドルという貴重な経験、そして非常に多くのことを学ぶことができました」

黒井「何故だ……! どうして辞める!?」

貴音「私も美希と似たような理由です」

黒井「なに?」

貴音「ある意味では美希も、ある人々の心を動かすために765から961へと移籍した……」

貴音「私も、ある人物の心を動かすために」

黒井「ある人物だと……? それは……」

貴音「ふふっ、トップシークレットです」


397 : 以下、名... - 2016/05/29 00:53:27.00 aMjDKhX70 351/397

貴音「黒井殿、貴方は分かっているはずです」

貴音「そう、美希に言われたこと、全てを」

黒井「……!」

貴音「楽しみにお待ちしております。いつか、相見える日を……」

黒井「……」

「た、貴音……」

貴音「さようなら、響。いずれまた会いましょう」

「貴音……」

 ガチャ  バタン


貴音(響、貴方にも現れるはずです。貴方の心を動かすものが)

貴音(それに……再開の時はそう遠くないかもしれません……)

398 : 以下、名... - 2016/05/29 00:58:00.36 aMjDKhX70 352/397

黒井「……」

「黒井社長……」

黒井「……」

「自分……」






「自分は! 黒井社長のところに残るぞ!」

黒井「!」

「黒井社長が……黒井社長が自分のことを見つけてくれたから、アイドルになれたんだ!」

「だから……! 自分、一人になっても頑張るよ! 黒井社長のやり方で勝ってみせる!」

「今度は! たった一人でも、トップアイドルになってみせるから!」

黒井「……響ちゃん……!」


399 : 以下、名... - 2016/05/29 01:02:39.61 aMjDKhX70 353/397

黒井「たった……一人でも……か……」

黒井(私の……やり方で……)


  黒井殿、貴方は分かっているはずです


黒井「……」

黒井「クックック……」

「黒井社長……?」

黒井「悪いが……」

黒井「今日をもって響ちゃん、キミはクビだ」





「え……?」


400 : 以下、名... - 2016/05/29 01:06:04.82 aMjDKhX70 354/397

黒井「分からないか? もうキミは必要ないと言っているんだ」

「な、なんで……? どうして……?」

「自分が……勝てなかったから? 自分には……才能がないから……?」

黒井「違う」

「じゃあなんで!」

黒井「それは…………そう、キミは私の求める存在ではなかった」

黒井「私の求めるイメージとは違ったのだ」


401 : 以下、名... - 2016/05/29 01:10:56.26 aMjDKhX70 355/397

黒井「響ちゃん、適材適所という言葉を知っているかい?」

「も、もちろんだぞ!」

黒井「つまりはそういうことだ。キミの適所はここではない」

「そんな……」

黒井「……」

黒井「765の貧弱プロデューサーよ、そこにいるのだろう」

「えっ?」

 ガチャッ

「……よくわかりましたね」

「あっ、765の……」

黒井「ふん……盗み聞きなど下賤なことを……」

黒井「……何の用だ」


402 : 以下、名... - 2016/05/29 01:15:14.99 aMjDKhX70 356/397

「響を引き抜きに」

「なっ!」

黒井「ふん……」

黒井「……」

黒井「いいだろう」

「えっ!?」

「そんな簡単に……いいんですか?」

黒井「……」

黒井(確かに、手放すには本当に惜しい……だが……)

黒井「……構わん、もはや私には不要だ」

「!」

「黒井社長!」

黒井「……フェアリーでなくなったキミに、利用価値などない」

「……!」

黒井「ふん、せいぜい弱小事務所で仲良しこよしで頑張るがいい」

「……」

黒井「765プロ、次はフェアリーをも超えた、究極のアイドルで貴様らを叩きのめす」

黒井「覚悟しておくことだ」

「……そうですか」

「じゃあ、俺からも最後に一言……」

「響をアイドルにしてくれて、ありがとうございました」

黒井「……」

黒井「……ふん」

黒井「では、アデュー」

 ガチャッ  バタン


403 : 以下、名... - 2016/05/29 01:21:04.60 aMjDKhX70 357/397

「なんでだよ……なんで……!」

「自分……!」

「響」

「……」

「……」

「はぁ……なーに辛気臭い顔してんだよ」

「黒井社長に感謝しろよ? きっとお前のためを思っての言葉だったんだからな」

「自分の……ため……?」

「そ、お前のために、だ」

「あの人も思うところがあったんだろう」

「……本当……?」

「あぁ。ウチにもあーいうタイプの人がいるから、分かるよ」

(なんて言ったら怒るだろうなぁ……)


404 : 以下、名... - 2016/05/29 01:26:02.97 aMjDKhX70 358/397

「そっか……」

「それなら……いいんだ……」

「……」

「そういえば……なんで765が、自分のことを引き抜こうとしたんだ……?」

「ん? いや、俺の独断」

「……はぁ?」

「俺さ、765のプロデューサーになれてよかったって思ってる」

「できることなら、このままずっと続けていきたい」

「それでさ、次は響のことをプロデュースしたいなって思ってさ」

「それで引き抜きに来たんだ」

「な、なんだそれ、意味わかんないぞ……」


405 : 以下、名... - 2016/05/29 01:31:11.30 aMjDKhX70 359/397

「あ、でも活動するのは少し先な」

「ま、まだ自分移籍するなんて一言も言ってないぞ!」

「え? でも移籍しないとアイドル続けられなくないか?」

「うっ……」

「……」

「うぅ~……!」

「……しょ、しょうがないから765プロに移ってやるぞ!」

「ほいほい、オッケー」

「う~……なんかムカつくぞ……」

406 : 以下、名... - 2016/05/29 01:34:29.08 aMjDKhX70 360/397

「でも、さっきも言った通り、活動はまだ先な」

「別に文句はないけど……なんか理由でもあるのか?」

「ん? あぁ」

「心配かけないためにも、一度実家に帰って母さんに報告しといたほうがいいだろ?」

「うん……うん?」

「ちょっと待って、それはどっちの話? プロデューサーの? それとも自分の?」

「どっちって、どっちもだろ」

「?」

「……!」

「あー、なるほど!」

「そういえばプロデューサーの実家も沖縄だって言ってたな!」

「そりゃ当り前だろ」

「兄妹なんだからさ」

「……」

「へ?」


407 : 以下、名... - 2016/05/29 01:38:22.01 aMjDKhX70 361/397

「ちょ、ちょっと待って……何が何だか……」

「えーっと、誰と誰が兄妹?」

「俺と響が」

「……はぁ?」

「い、いやいやいや……」

「そんなわけがないぞ……」

「……」

 カチャ ピポパ

 プルルルル

「? 誰に電話かけてるんだ?」

 ヴーン ヴーン

「!」 バッ

 着信:兄貴

「えーっ!?」


409 : 以下、名... - 2016/05/29 01:43:11.67 aMjDKhX70 362/397

「分かってもらえたか?」

「で、でも、髪型も違うし、それに、兄貴は眼鏡なんてかけてなかったぞ!」

「髪は切った」

「眼鏡は!」

「伊達眼鏡」 スッ

「な、なるほどぉ!」

(こいつ……)


410 : >>408 765と961は同点ですぅ - 2016/05/29 01:46:07.47 aMjDKhX70 363/397

「じゃ、じゃあ、ホントに兄貴なんだな……?」

「あぁ、そうだ」

「あ、兄貴ぃー!」

「響ー!」

「なんで今まで教えてくれ無かったんだよー!」 ドゴッ!

「ぐっ! み、鳩尾はやめろ……」

「……な、なんでって……そりゃあ、言ったらケンカになりそうだったし……」

「言わなくても結局ケンカになっただろ!」 ズンッ!

「ぐぅ……! まぁ、確かに……」

411 : >>408 765と961は同点ですぅ - 2016/05/29 01:49:23.51 aMjDKhX70 364/397

「自分……」

「自分、ずっと寂しかったんだぞ……」

「うぅ……ぐすっ……」

「……」

「……」 ギュ

「!」

「……」 ギュウゥ

「……」

「やっぱ、まだまだ子供だな……」

「今は……子供でいい……」


412 : 以下、名... - 2016/05/29 01:52:55.62 aMjDKhX70 365/397


 『皆さま、大変お待たせしました』

 『961プロダクション、及び、765プロダクションの参加者は、ステージへお集まりください』

「おっ、やっとだな」

「おい響、お呼びだぞ」

「……」

「ホラ、同点でも一位だろ? トップアイドルだぞ、もっと嬉しそうな顔しろよ」

「……兄貴は来ないの?」

「俺はプロデューサーだろ。裏方はステージには上がれないんだよ」

「さぁ、待たせちゃみんなに悪いだろ。行ってこい」

「ちゃんと見てるからさ」

「……うん!」


413 : 以下、名... - 2016/05/29 01:56:22.59 aMjDKhX70 366/397

――

「みんな!」

春香「響ちゃん!」

美希「あっ、遅いの響!」

真美「ひびきん遅刻だよ~!」

「ご、ごめん、もう始まってるかと思っちゃったぞ」

亜美「とんでもねえ、待ってたんだ」

伊織「あんたたち静かにしなさい、もう始まるわよ」


ザワザワ

 「ただいまより、IMA授賞式を行います」


 「今年度のIMA優勝は、初の同点一位」

 「961プロダクション、765プロダクション共にトップアイドルの称号、トロフィーが送られます」

 ワァアアアアアア!


414 : 以下、名... - 2016/05/29 01:59:41.40 aMjDKhX70 367/397

小鳥「よ、よかったぁ~!」

律子「これで一安心ですね」

「真美が言ってたとおり、延長戦になんてならなくてよかったな」

小鳥「あっ、プロデューサーさん」

律子「ホントにそんなことにならなくてよかったですよ……」

「みんな、ここまでよく頑張ったよ」

小鳥「えぇ、本当になれたんですね、トップアイドルに」

律子「夢みたいですよね……」

「……」

「ホントになぁ……」

(一年にも満たないこの期間、いろいろなことがあった)

(みんな、信じられないくらい成長した)

(俺も成長できたのかな……)


415 : 以下、名... - 2016/05/29 02:03:08.45 aMjDKhX70 368/397

黒井「……ん?」

高木「……」

黒井「……」

黒井「ふん」

 コツコツコツ

高木「……見ていかないのかい?」

黒井「……」

黒井「もはやあそこに私の求めるものはない」

黒井「私は、私の求める次の駒を揃えに行くだけだ」

高木「そうか……」

黒井「今、お前と語ることなどあるまい」

黒井「失礼する」

 ガチャッ バタン ブロロロ


416 : 以下、名... - 2016/05/29 02:06:21.15 aMjDKhX70 369/397

高木「黒井……」

高木「これだけの訴えを受けても……キミには届かなかったのか……」

貴音「大丈夫です」

高木「四条君……」

貴音「きっと……黒井殿にも……」

高木「そうか……」

高木「そうだと、願うばかりだ……」


417 : 以下、名... - 2016/05/29 02:10:24.98 aMjDKhX70 370/397

 「最後に、最優秀者である天海春香さんには、最優秀トロフィーが送られます」

亜美「ほらほら、はるるん!」

真美「トロフィーですよ! トロフィー!」

春香「うわっちょちょっ、押さないで!」

伊織「こら、あんまりはしゃがない!」

あずさ「あらあら~」


 「見ているこちらも楽しくなるような素晴らしい笑顔だった、本当におめでとう」

春香「わぁ! あ、ありがとうございます!」


 ワー! ハルカチャーン! オメデトー! カッカー!

 パチパチパチパチパチ!!


美希「春香ー! おめでとうなの!」

「おめでとうだぞ!」

千早「おめでとう、春香!」

春香「うんっ! みんな、本当にありがとう!」

春香「あっ」


「……」 パチパチ

春香「……」 ニコッ!

「はは……」


(そうだ……俺も、確かに前へ進めているんだ)

(だってこんなにも……頼れる仲間たちが出来た)

(ゆっくりでもいいさ……歩いていこう、これからもずっと……)

(みんなと一緒に……)






―――――――

――――

――


418 : 以下、名... - 2016/05/29 02:15:40.55 aMjDKhX70 371/397

 ピンポーン

「ん? 誰だ、こんな朝早く……」

「はーい、今開けまーす」

 ガチャッ

「はいさーい! 兄貴!」

「うおっ!? 響! それにハム蔵やいぬ美たちまで!」

ハム蔵「ヂュイ!」

いぬ美「ばうっ!」

「な、何の用だ? というかよくここが分かったな……」

「とりあえず入れてくれない? 荷物が重たくって……」

「い、いや、このアパートは確か……」

「大家さんに聞いたらペットOKって言ってたぞ」

「ぐっ…………まぁいい、入れ」

「やったー!」

「先に言っとくけど、掃除なんてしてないからな」


419 : 以下、名... - 2016/05/29 02:19:36.83 aMjDKhX70 372/397

「う、うわぁ……ちょっと汚すぎない……?」

「だから言っただろ? 嫌なら帰れ」

「まぁ、我慢するぞ」

「なにを偉そうに」

「で、なんでここに来たのか説明してもらおうか」

「あぁ、うん。それなんだけど」

「いやぁ、実はさ、961プロをやめちゃったから、住む場所がなくなっちゃったんだぞ!」

「待て」

「ん? どうかした?」

「まさかここに住む気じゃないだろうな」

「もちろんそのつもりだぞ」

「いや、いかんでしょ」


420 : 以下、名... - 2016/05/29 02:23:31.08 aMjDKhX70 373/397

「なんで?」

「いや、色々と」

「大丈夫だぞ、いくら兄貴が変態だからって、さすがに実の妹に手を出すとは思ってないぞ」

「そういう問題じゃなくてだな」

「ここ一人暮らし用の部屋だぞ?」

「うん」

「一人でも時折狭いと思うこの部屋で、2人+動物10匹」

「住めると思うか?」

「うん」

「アホだなぁ、お前」

「アホじゃないぞ!」


421 : 以下、名... - 2016/05/29 02:26:37.02 aMjDKhX70 374/397

「はぁ……まぁいいや」

「やったぞ。」

「そろそろ引っ越そうかと思ってたし、丁度いいかもしれん」

「なんだ、兄貴、引っ越すのか」

「あぁ、その前にやることがあるけどな」

「やること?」

「一度沖縄に帰るんだよ」

「お、おおぉっ!」

「もちろんお前も一緒に帰るんだぞ?」

「当り前だぞ!」

「そっかぁ、電話では話したけど、まだあんまーに直接会ってないもんな」

「そういうことだ」

422 : 以下、名... - 2016/05/29 02:31:09.48 aMjDKhX70 375/397

「いつ行くんだ? まさか今日か!?」

「なわけないだろ、行くとしてもスケジュール的に来月以降だ」

「なーんだ」

「はぁ……約一か月間、苦しい生活を迫られるのか……」

「大丈夫だぞ、なんくるないさー」

「誰のせいだと思ってんだ」

「まぁいい、とりあえず朝飯食って着替えなきゃな」

「どっか出かけるのか?」

「仕事だ仕事……ってやべ、時間が! 朝飯抜きでいいか!」

「朝ご飯はちゃんと食べなきゃだめだぞ!」

「お前が来なかったら食べれてたの!」

「むー……」


423 : 以下、名... - 2016/05/29 02:33:52.37 aMjDKhX70 376/397

「あぁ、やばい……えーっとこの書類と……これと……」

「あれ……ネクタイがない……くそ……こういう時に限って見つからないんだよな……」

「どこだ……ちくしょう……」

「これか?」

「あっ、それだ! どこにあった?」

「普通にハンガーにかかってたぞ」

「よかったよかった」

「ベルトも忘れてるぞ」

「あ、すまん」


424 : 以下、名... - 2016/05/29 02:36:40.23 aMjDKhX70 377/397

「よし! それじゃあ行ってくるな!」

「あ、待って!」

「なんだ?」

「はい、これ」

「? ラップで包んだおにぎり?」

「兄貴が準備してる間に、冷凍されたご飯を温めて作っておいたぞ」

「ま、マジか! ありがとよ!」

「ふふん、存分に感謝してくれていいぞ!」

「あ、それとネクタイ曲がってる」

「うそ、マジ?」

「んー…………ちょ、ちょっとかがんで……」

「こうか?」

「そうそう、そのままじっと……」

「お前……背ぇひっくいなぁ……」

「う、うるさいなぁ! ……よし、出来た!」

「サンキュー」

「じゃあ、行ってくる」

「うん、いってらっしゃい!」


425 : 以下、名... - 2016/05/29 02:41:12.38 aMjDKhX70 378/397

――

「おはようございます」

小鳥「おはようございます、プロデューサーさん」

春香「あ! プロデューサーさん!おはようございます!」

「ん? 春香はまだ時間あるけど、随分と早く来たんだな」

春香「はい! 今日は久しぶりにプロデューサーさんと一緒ですから、張り切ってきちゃいました!」

春香(ふふふ……あの時言えなかったことを……今日こそ……!) のヮの

「一緒って言っても送り迎えだけだぞ……」

「まぁ、時間までのんびりしててくれ」

小鳥「あら? そのおにぎり……」

「え? あぁ、これ俺の朝食です」

春香「プロデューサーさん、またコンビニのおにぎりですk……あれ? 手作り?」

「実はこれ響が作ってくれたんだ。朝、時間がなかったから」

小鳥「へぇ! 響ちゃんが…………って響ちゃん?」

「ええ、なんか朝から突然やって来て、色々あって一緒に住むことになったんです」

春香「!?」

小鳥「ど、同棲……!?」


426 : 以下、名... - 2016/05/29 02:46:19.49 aMjDKhX70 379/397

小鳥「ぷ、プロデューサーさん……血の繋がった家族に手を出したらさすがにまずいですよ!」

「そ、そんなことするわけないじゃないですか!?」

春香「……」

小鳥「禁じられた愛……いえ、だからこそ……!」

「何言ってるんだこの人は……」

春香「愛……」

春香「……」

春香「……ふ、ふふふ……」

春香「プロデューサーさん!」

「お、おう!? なんだ春香?」

春香「朝ご飯を作る時間もないなら、今度から私が作ってきてあげますね!」

「え? いや、今日が遅くなっただけで、別に朝食を作る時間ぐらいは……」

春香「私が作ってきてあげますね!」

「あ、うん」


427 : 以下、名... - 2016/05/29 02:49:34.05 aMjDKhX70 380/397

春香「そっかぁ……妹なんて、完全に盲点だったなぁ……」

春香「可能性としては伊織か雪歩あたりを予想してたけど……」

(何のことだ……?)

春香「プロデューサーさん! 私、誰にも負けないように頑張りますね!」

「お、おう、がんばれ……」

春香「ふふふ……」 のヮの

小鳥「……実の妹と担当アイドルの間で揺れるプロデューサーさん……アリね……うふふ……」 ブツブツ

(な、なんだこの空間……) モグモグ


428 : 以下、名... - 2016/05/29 02:56:06.00 aMjDKhX70 381/397

――

 ブロロロ

「いやぁ、春香たちも、もうトップアイドルかぁ……」

春香「はい」

春香「この一年、色々ありましたねぇ」

「そうだな」

春香「ここまで来れたのは、プロデューサーさんのおかげです」

「ありがとう。でも、ここまで来れたのは俺のおかげじゃあなくて、みんなのおかげだ」

春香「えぇ、もちろんみんなのおかげでもあります」

春香「でも、私たちが変わるきっかけをくれたのがプロデューサーさんなんです」

「きっかけ……」

春香「ううん、きっかけだけじゃあない。プロデューサーさんはみんなを励まして、支えてくれました」

「……そうか」

「そう言われると、照れるな」

春香「えへへ、感謝してますよ? プロデューサーさん」


429 : 以下、名... - 2016/05/29 03:00:07.99 aMjDKhX70 382/397

春香「はー、でも、トップアイドルかぁ」

春香「今じゃあ外に出るときに今みたいに変装することが多いし……」

春香「多分、一年前の私に来年の自分はトップアイドルだ、なんて言っても信じてもらえないだろうなぁ」

「あはは、かもな」

春香「一年前は丁度、美希が765を出ていったときでしたしなおさら……」

「星井さんか」

「でもよかったな、765に戻ってきてくれて」

春香「そうですね。美希もそうですけど、響ちゃんも765プロに移籍してくれてとっても嬉しいし、心強いです!」

「あとは四条さんだけ分かんないんだよなぁ」

「響や星井さんに連絡を取ってもらおうとしても繋がらないし……」

春香「謎ですね」

「まぁ、そのミステリアスさが彼女の売りなわけだが……」

「だけど……ふとしたとこで、また会える気がするよ」



430 : 以下、名... - 2016/05/29 03:03:35.54 aMjDKhX70 383/397

「そういや今度な」

春香「はい?」

「俺、沖縄に帰るんだ」





春香「えぇっ!?」

春香「どうして……! プロデューサーさん、765プロをやめちゃうんですか!?」

「あぁ、いや、心配するな。帰るって言ってもちょっとだけだ」

「響と一緒に、親に会いにな」

春香「な、なぁんだ……急に沖縄に帰るなんて言うからびっくりしちゃいましたよ!」

「言い方が悪かったな、ごめん」

「……それに、俺はもうプロデューサーをやめるなんて言ったりしないさ」

「少なくとも、春香たちがアイドルを続けてる間は」

春香「本当ですか!?」

春香「なら私、一生アイドル続けちゃいますね!」

「いや、無理だろ……」


431 : 以下、名... - 2016/05/29 03:07:21.12 aMjDKhX70 384/397

 キッ 

「さ、着いたぞ」

春香「はい、ありがとうございました!」

春香「それじゃあ、行ってきますね」

「あぁ、今日も頑張って来いよ」

 ガチャッ  バタン

  タッタッタッ

「……」

(……よし、俺も事務所に戻って仕事するかな)






 「プロデューサーさーん!!!」

「!」

 「私たちみーんな! プロデューサーさんのこと、大好きですよー!!!」

 「これからもずっとずっと、ずぅーっと、よろしくお願いしますねー!!!」


「は、春香……」

(変装中だからって、目立つようなことはしちゃダメだろ……)

「……」

(みんな……か……)




「ありがとう……春香……」



432 : 以下、名... - 2016/05/29 03:10:10.39 aMjDKhX70 385/397

――――

――

「ただいま……」

「あっ、おかえりー。随分とお疲れだな」

「あぁ………………って」

「おおっ! 部屋がスゲェきれいになってる!」

「まさか響が掃除してくれたのか!?」

「ふっふっふ、まぁねー。これくらい、自分にかかれば楽勝さー!」

「風呂、台所、トイレ、食器洗い、洗濯、ぜーんぶやっといたぞ!」

「す、すごいなお前……」

「まぁ自分完璧だからな!」 ドヤァ

(あながち間違ってないかもしれん……)


433 : 以下、名... - 2016/05/29 03:13:10.01 aMjDKhX70 386/397

「お風呂沸いてるけど、ご飯とどっちがいい?」

「いい匂いがすると思ったら、飯まで作ってくれてたのか」

「今夜は響特製クリームシチューだぞ!」

「それで、どっちがいい?」

「あ、あぁ、じゃあ先に飯にするかな……」

「わかったぞ、すぐ用意するから待ってて」

「お、おう……」


434 : 以下、名... - 2016/05/29 03:16:11.02 aMjDKhX70 387/397

――

「うめぇ……」 ズズズ

「あったり前だぞ、なんたって自分が作ったんだからな!」

「そうだな……いや、ホントにうまい……」

「言っても自分が持ってきたものとか、有り合わせの材料で作ったんだけどね」

「俺自体あんまり料理しないから手料理なんて久しぶりだ」

「だめだぞー、コンビニ弁当とかカップラーメンばっかり食べてちゃあ、体壊しちゃうぞ」

「いつもはこんな早い時間に帰ってくること自体稀だからなぁ……」

「どうしても料理する気がおきん」

「ま、これからは自分が作ってあげるから安心だな!」

「へいへい、ありがとよー」


435 : 以下、名... - 2016/05/29 03:19:58.94 aMjDKhX70 388/397

――――

――

「上がったぞー」 ホカホカ

「ほいほい、冷蔵庫にある飲み物とか適当に飲んでいいぞ」

「わかったぞ。兄貴は何かいる?」

「俺? じゃあビール取ってくれるか?」

「はーい、ビールね…………って、ビール?」

「俺、この前二十歳になりましたー」

「おおっ! そういえば! 完全に忘れてたぞ!」

「誕生日すら祝ってくれねぇ妹とは……ひっでぇ話だなぁ」

「兄貴の誕生日は絶対に祝わないって決めてたからな。はい、これでいいよね」

「おっ、サンキュ」 プシュッ

「でもなんで祝ってくれないわけ? 昔は普通に祝っててくれた気がするんだけど……」

「兄貴、憶えてないのか……」 ゴクゴク

「なにを?」

「ふん……兄貴のせいだぞ……兄貴が悪いんだからな……」

「だから何がだよ」


437 : 以下、名... - 2016/05/29 03:23:19.23 aMjDKhX70 389/397

「小さいころ、兄貴の誕生日に自分が肩を揉んであげようとしたら……」

――――

――

 『にぃにぃ、肩もんであげる!』

 『いや、いいよ。別に肩こってねぇし』 カチカチ

 『えー、いいじゃん、ちょっとだけでいいからぁ』

 『ちょっとだけってなんだよ。そんなに肩もみたいなら父さんの肩もんでくればいいだろ?』 ピコピコ

 『たーりーじゃなくてにぃにぃがいいの!』

 『んなこと言ったら父さんがかわいそうだろ』

 『たーりーはいっつもしてあげてるもん』

 『じゃあ母さんは?』

 『あ、あんまーは……えっと……』

 『なんだよ』

 『うー……だからぁ……そのぉ……』

 『はぁ……俺忙しいから後にしてくれないか?』

 『! ううぅぅー……』

 『うわああぁ~! にぃにぃのばか~!』

 『えぇ……』

――

――――

「……って……」

「あぁ……」


438 : 以下、名... - 2016/05/29 03:26:27.55 aMjDKhX70 390/397

「そんなこともありましたね……」

(あれって俺の誕生日だったのか……)

「で、でも、それくらいの理由でこの十年以上意地張り続けたのか?」

「それくらいの理由……!?」

「こっちは祝ってあげようとしたら拒否されて……すっごくショックだったんだぞ!」

「す、すまん……」

「はぁ……あの時は傷ついたぞ……」

(俺もあの後親父にゲンコツ食らって物理的に傷ついたがな……)


439 : 以下、名... - 2016/05/29 03:29:17.24 aMjDKhX70 391/397

「大体、兄貴だって自分の誕生日祝ってくれてないじゃん!」

「そ、それは……響が俺の誕生日を祝ってくれなくなったから……それに対抗して……」

「子供か!」

「お前だって子供だろうが」

「うるさーい! 元々は兄貴が悪いんだぞ!」

「わかったわかった! 次の誕生日はちゃんと祝ってやるから!」

「うー……ホントに?」

「マジマジ、ホールケーキも買ってやる」

「……」

「なら……許してあげないこともない……かも……」

(よ、よし! あと一押しだ!)


440 : 以下、名... - 2016/05/29 03:32:13.45 aMjDKhX70 392/397

「悪かったって、響」 ギュ

「……!」

「許してくれ……」 ナデナデ

「……」

「……」

(ま、マズイ……二度目は効かないか……!?)

「……」

「…………」

「………………」




「……あれ?」

「すぅ……すぅ……」

「寝てるし……」


441 : 以下、名... - 2016/05/29 03:36:14.62 aMjDKhX70 393/397

(すぐに寝ちまったけど……やっぱ疲れてたのか)

(にしても寝るの早すぎだけどな)

「ま、このまま寝かしといてやるか…………ん?」

「あ、これ……」

「……チューハイ飲んだのか、こいつ」

「ジュースと間違えたんだな……」

「……すぅ……すぅ……」

「……ん……あんまぁ……」

「はは……」

「沖縄にいたころの夢でも見てるのか?」

「……」

「沖縄……か……」


443 : 以下、名... - 2016/05/29 03:40:30.91 aMjDKhX70 394/397

(なぁ、響……)

(この歳でトップアイドルになっちまったお前は、何を感じてるんだ?)

(この若さで、様々なモノを奪われた……)

(年相応の自由も、親も、故郷も……)

(お前の夢によって、お前自身が縛られる……そんなお前は何を……)

(期待……? 不安……?)

(俺は、不安のほうが大きいよ)

(でも……だからこそ、みんなで支えあうんだ)

(だから、きっと大丈夫だよ)

(辛くなったら、支えあって生きていこう)

(俺たちはみんな、家族なんだから……)

「すぅ……にぃに……」

「……」

「……かな……さんどー……」

「…………」




「……おやすみ…………響……」


―おわり―

444 : 以下、名... - 2016/05/29 03:41:30.53 aMjDKhX70 395/397

見てくださった方々、本当にありがとうございました
途中地の文を入れることで色々(竜宮とか)省いたり、最後の方がご都合主義になってたりしましたが、今回が初ssなんで大目に見てください

最近になって某響ホラーssからアイマスを知って響にゾッコンです
響かわいいよ響。あんま出番なかったけど

445 : 以下、名... - 2016/05/29 03:45:52.08 VBT2APCVO 396/397

某響ホラーって廃村シリーズ?

響ホラーってなったらそれしか思い付かない…

446 : >>442 終わってしまって、申し訳ナイス! - 2016/05/29 03:45:54.49 aMjDKhX70 397/397

次は一応、廃村響や病棟千早を参考にした、千早が主役のssを書くつもりですので、その時はオナシャス!
(たぶんr板(?)でたてると思います)

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