前スレ
千早「気が付けば私は、病棟の一室で眠っていた」
伊織「薄暗い病院の中で、私は彷徨っていた」
千早「私たちは、病院の中で真実を知る」
元スレ
P「俺たちは、薄暗い病院で真実を知る」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1442494457/
1 : 以下、\... - 2015/09/17 21:54:17.338 S1wT9vfB0.net 749/961[前スレ]
①千早「気が付けば私は、病棟の一室で眠っていた」
http://vipper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1442148186/l50
②伊織「薄暗い病院の中で、私は彷徨っていた」
http://vipper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1442300578/
③千早「私たちは、病院の中で真実を知る」
http://vipper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1442409045/
このスレでは、前スレ③の>>781から続きを書いています。
内容が分からない方がいれば、先に前スレの方の確認をお願いします。
P(いや……少し考えなおそう)
P「真美、少し待ってくれないか」
真美「どうしたの……?」
P(真美は俺が何を言うか待つように、真っ直ぐな瞳を向けていた)
P(そうだな……何か引っかかるところがあるんだ)
P(……!)
P「真美、お前ゲームの終盤を知ってるって言ってたよな」
真美「う、うん……。そうだけど……」
P(俺は真美に向けて――、一つの質問を投げかけた)
P「お前の見たっていうそのエンディング――それは本当に正しいエンディングだったのか?」
真美「!」
P(真美は目を開くと――すぐに自分の腕を組んだ)
真美「……そう言えば、なんか違かったきがする」
P「何が、どう違かったんだ……?」
P(真美は、何かを思い出したかのようにゆっくりと口を開いた)
真美「亜美がね……」
P「ああ」
P(亜美……? なんで亜美の話を?)
P(真美は話を続ける)
真美「亜美がやってた方のゲームがあったじゃんか……?」
P「ああ……あれはたしか――」
真美「うん、HOSPITAL:ALICEの方……」
P(真美は頷きながら、話を続ける)
真美「あれの結末なんだけどさ……」
P「ああ」
真美「なんでか、メアリー達三人がシャッター開けて入って来てたんだよ……」
P「!」
真美「でも……真美のやってた方のエンディングと違かったから……だから、亜美と話が合わなくて……」
P(……真美はそう言うと、顔を俯かせた)
P(亜美のことを思い出してしまったのだろうか……?)
P(だが、真美の話を聞いて俺はある仮説を立てることが出来た)
P(そう――俺たちはHOSPITAL:MARYに沿って行動していた)
P(そして亜美の見たと言っていた結末)
P(俺たちがメアリー側の役者なんだとすれば、最後に俺たちがシャッターを開けて現れると言うのはおかしい)
P(すると、二つの物語は――繋がっていた?)
P(そして、もう一つ)
P(真美と亜美とで見た結末の違い)
P(恐らく――真美は間違った結末を選択したに違いない)
P(いや、間違いと言うのは語弊か)
P(真美は――通常のエンディングを見てしまったんだ)
P(だから亜美とは話がかみ合わなかった)
P(……本当のエンディングは――別にあったのか?)
P(俺は二人に向き合った)
P「なあ、二人とも――」
P(俺は自らの立てた仮説を二人に話した)
P(二人は困惑するように瞳を泳がせた)
伊織「それじゃあ、またあの中に入って――シャッターを開けないとダメなの?」
P(伊織は俺にしがみつきながらそう呟いた)
P(だが……きっとそれが正解なんだろう)
P(俺は小さくうなずいた)
P「なあ、二人とも……」
P(そして、二人に向き合い気になっていたことを尋ねかけた)
P「お前たちが、一階で何を見てきたのか――俺に教えてくれないか?」
P(そう尋ねかけた途端に――真美は明らかに動揺を見せた)
P(なんだ……? 真美に何かあったのか……?)
P(だが、俺が何かを気に気にかけるよりも先に伊織が神妙な面持ちで口を開いた)
伊織「……分かったわ」
P(そして――俺は隔離部屋までの話を聞いた)
P(こいつら……そんな危険なことを……)
P(俺はぐっと拳を握りしめながら――話の続きを促した)
P「それで……『隔離部屋』には――何があったんだ?」
伊織「ええ……そこには」
真美「いおりん」
P(そのとき、伊織の言葉を真美が遮った)
P(……どうかしたのか?)
真美「……そっからは、真美が話すよ」
P(そう言うと、真美は俺にことの真相を話してくれたんだが――)
――――
――
―
真美「いおりん……?」
伊織(真美がもう一度そう尋ねかけた時――私は体の震えが止まらなかった)
伊織(なんでこの部屋に真美が?)
伊織(いえ、違う――それじゃあ一緒にいた真美は……誰なの?)
伊織(私は部屋の中を見せないように立ちふさがりながら真美の方に振り返ると、その瞳を見据えた)
伊織「真美……アンタ、私に何か隠してることない?」
真美「えっ……どうしたの急に……?」
伊織(私がじっと真美の方を見据え続けると、真美は瞳を震わした)
真美「いおりん……真美、なにかした?」
伊織「今は、私の質問に答えて」
伊織(私が強い口調でそう言うと……真美は怯えたように涙を浮かべた)
真美「何も……何もないよ……」フルフル
伊織「言い訳しないで」
伊織(私は何度も真美を問い詰めた)
伊織(だけど……結局真美は泣き出してしまった)
真美「……何も……ないよぅ……」グスッ
伊織「ま、真美……」
伊織(私はそんな真美を見て、少しだけ自分のしたことを反省した)
伊織(……私は俯くと――部屋の中の全貌を真美に見せた)
伊織「それじゃあ……あれは、なんなの?」
真美「……え? あれ……真美?」
伊織(私が部屋の中を指さすと――真美は私と同じく動揺の色を見せた)
伊織(え……? もしかして、真美はこれを知らなかった……?)
伊織(私はもう一度、部屋の中を見た)
伊織(そう――部屋の中には真美がいた)
伊織(……真美は鎖につながれたまま、顔を下に向け俯いた状態でいた)
伊織(動く気配もない)
伊織(……動く気配もない?)
伊織(普通――呼吸をしているなら、肩くらいは動かすはずじゃないの?)
伊織(そのとき――真美は部屋の中にいた自分にゆっくりと近づいていた)
真美「いおりん……」
伊織「……?」
伊織(真美はゆっくりと振り返ると――もう一人の真美を指さした)
真美「これ……真美じゃない」
伊織「ど、どういうこと……?」
伊織(私が聞き返すと、真美は――こういった)
真美「これ……人形だよ」
伊織「え……?」
伊織(私はもう一人の真美に近づくと――足を屈ませ、その顔を見た)
伊織「……本当ね」
伊織(そう、私たちが部屋の中で見たもの――それは真美によく似せて作られた『人形』だった)
伊織(部屋の奥に置かれていたために、遠目では真美に見えたけど、それはただの人形でしかなかった)
伊織「真美……さっきの」
伊織(私はすぐに言い過ぎたことに関して真美に謝った)
伊織(真美は困ったように笑うと、もう一度その人形を見据えた)
真美「でも、なんでこんなところに真美の人形が……?」
伊織「……」
伊織(真美の疑問は私も感じていた)
伊織(私たちが見てきた今までのこと、ゲームの内容、そして真美の人形――これは何か意味があるのかしら?)
真美「いおりん……人形の傍にこんなのが」
伊織(そのとき真美が私に見せてきたのは、一枚の紙切れだった)
伊織(これは――)
伊織(私はそれを読み上げた)
《メアリーの じっけんは せいこうした》
《メアリーのなかの もうひとりの じんかくを べつのにんげんに いしょくできた》
《これは せいきのだいはつめいだ》
伊織(……人格? どういうこと?)
伊織(私は続きを読み進める)
《メアリーのなかには アリスという おんなのこがいた》
《アリスは いろんなことが きらいだった》
《アリスは きらいなものが おおかった》
《アリスは メアリーも きらいだった》
《だから アリスは メアリーのことは なにも しらなかった》
伊織(アリス……そしてメアリー……)
伊織(メアリーは――二重人格を患っていたのね)
伊織(そして、メアリーの中にはアリスという少女が眠っていた)
伊織(私たちが受付で見たアリスと言う紙――あれはこのメアリーのもう一人の人格のことについて調べていたのかしら)
伊織(でもアリスはメアリーのことが嫌いだったのね……)
伊織(私は読み進める)
《アリスを うつしたのはよかったが じっけんは すこしだけ しっぱいした》
伊織(……何かを間違えたの?)
《メアリーのなかから アリスといっしょに メアリーもとびでてしまった》
伊織(メアリーは――体から飛び出た?)
《へやのなかのメアリーは いまは からっぽだ》
《うつわだけの そんざいだ》
《だから ピクリとも うごかない》
《メアリーは どこへいってしまったんだろうか》
伊織(文章はそこで終わっていた)
伊織(これは……)
伊織(私は手に取った紙から目線を上げた)
真美「これ……」
伊織(真美も同じように動揺している)
伊織(……そう、この紙に書かれていたメアリーという少女の話)
伊織(メアリーは実験台にされ、そしてアリスという人格を失った)
伊織(そのときにメアリーも一緒に飛び出てしまった、というわけね)
伊織(――そのとき、私はあることを思い出した)
伊織「ねえ……真美」
真美「……どうしたの?」
伊織「たしか真美のやったゲームのエンディングって……」
伊織(そう、真美は2階でアイツと三人でいたときにこんなことを言っていた)
真美『最後に振り返ったら、そこにはメアリーはいなかったんだ』
伊織(それは……つまり……)
真美「もしかしてゲームで一緒にいたメアリーって……」
伊織「ええ――きっと、ここから抜け出したメアリーの魂だったのよ」
伊織(私はごくりと生唾を飲み込んだ)
伊織(そう……メアリーは二人と一緒に行動を共にしていた)
伊織(そして、二人に逃げ道を教えてあげたのね)
伊織(……でも、自分は病院からは逃げることは出来ない)
伊織(だってその器が――ここにあるんだから)
伊織「……ねえ、真美」
真美「……うん」
伊織(私たちは、どこか同じ気持ちを共有していた)
伊織(そう、メアリーと言う女の子を思い浮かべていたのだ)
伊織(メアリーは、最後まで逃げることが出来ないことが分かってて、二人を逃がしてあげたのかしら)
伊織(……メアリーは、なんで二人と一緒に行動していたのかしら?)
伊織(まるで……誰かと一緒にいることを望んでいるかのような……)
伊織(私は立ち上がると、傍に置いていた真美の人形を見た)
伊織「……それじゃあ、この人形の意味は」
真美「……真美が、メアリー役だったってことを意味してたんだよね」
伊織(そう、このゲームでの主要な人物であるメアリー――それは、真美だった)
伊織(真美はメアリー役として私たちと行動していた)
伊織(だから、ここにある人形の意味――それはここにいる真美がメアリーの魂を演じていたことを意味していたはずだった)
伊織(……なんでこんなこと)
伊織(私たちはその部屋で顔を曇らせた)
伊織(私たちはその部屋で顔を曇らせた)
伊織(メアリーとアリスと言う女の子がどういう人物だったのかと言うことは、ここで分かった)
伊織(でも――結局はそれだけのこと)
伊織(……もう少し、他の場所を探さないとダメみたいね)
伊織(私たちは隔離部屋を出ると再び部屋の捜索を続けた――)
――――
――
―
真美「それから、シャッターの鍵と出入口の鍵を見つけたんだ……」
P「……」
P(俺は真美の話を聞いて、眉を寄せた)
P(隔離部屋での一件――真美の人形)
P(俺はさっき自分で考えていたことと関連付けて考えてみることにした)
P(……そうだ、恐らく――俺たちは何者かの手によってここへ連れてこられた)
P(それは……俺の記憶が正しければ、仕事の依頼だったはずだ)
P(俺たちはそいつに何かを依頼されて、こんな病院に押し込められた)
P(部屋にあった真美の人形――あれは、事前に真美のことを知っていたんだ)
P(仕事を引き受ける前に――恐らく、俺たちはその誰かと会っていた)
P(だから、向こうは真美のことも知っていた。人形も作れた)
P(くそっ……ふざけたことをしやがって)
P(だが、少し話の大枠は知ることが出来た)
伊織「……どうかしたの?」
P(伊織はしきりに俺の袖を掴んで離そうとしなかった)
P(まだ怯えているのか、俺はそんな伊織に微笑むと次にするべき行動を考えた)
P(次に俺たちは何をするべきなんだ?)
P(秘密を探る?)
P(いや、そうじゃない)
P(――そうだ、シャッターだ)
P(3階へ続くシャッター――あの先には、何が待っているんだろうか)
P(亜美の見たエンディングが正しければ……そこに何か手がかりがあるはずだが……)
P(どうする……?)
安価下3
1シャッターを見に行く
2シャッターを見に行かない
179 : 以下、\... - 2015/09/17 23:41:29.997 p73z6vgG0.net 773/9611
P(見に行くか……)
P(俺は二人に声をかけると――再び病院の中へと足を踏み込むことにした)
P(この選択が間違いでなければいいが……)
P(不安がよぎる中で、俺はゆっくりと入り口の扉を開いた)
P(俺たちは二階へと上がると、三階へ続くシャッターを眺めていた)
真美「兄ちゃん……」ギュッ
伊織「……」ギュッ
P(二人とも、心配そうに俺の服を握ってきていた)
P(……開けるしかないか)
P(俺は――三階へと続くシャッターを開いた)
P(そこには……)
千早「ぷ、プロデューサー……?」
P(千早が目を瞬かせて俺を眺めていた)
P(千早が、なんでこんなところに……)
P(そのすぐあと――誰かの声が響いた)
真「プロデューサー!」
響「ま、真美も伊織もいたのかァ――!」
あずさ「……良かった」ヘナヘナ
P(そこには千早を含め765プロのアイドル達が立っていた)
P(やっぱり――これは765プロの皆がかかわっていたみたいだな)
P(そして……声はそれだけではなかった)
春香「プロデューサー……さん」
P「春香……?」
P(そう、そこには――春香もいたのだ)
P(いや、春香だけではない)
貴音「……何も聞こえません。……何も聞こえません」ブルブル
P(貴音や――)
美希「あふぅ……あれ、プロデューサーなんでこんなところにいるの?」
P(美希――)
雪歩「うぅ……こ、怖いよお……」ブルブル
P(雪歩もいたのだ)
P(良かった――みんな無事なようだ)
千早「プロデューサー」
P(そのとき、千早から声がかかった)
P「どうした?」
千早「……私の仮説が間違っていなければ、プロデューサーの方でも――ゲームが?」
P「……そっちで何があったのか、詳しく聞かせてくれないか」
P(俺たちは、それぞれ自分たちの身に何が起きたのかを手短に話すことにした)
P(そして見えてきた真実――メアリーやアリスのこと、そしてゲームのこと)
P(やはりこのゲームはストーリーが並行して進むタイプのゲームだった)
P(そして千早たちと俺たちとで、それぞれ協力して行わなければ――現実では千早たちの脱出は不可能と言う造りになっていた)
P(そして――俺は一つの疑問を問いかける)
P「それじゃあ、春香や美希達はどうやって助けたんだ?」
千早「ええ、そうですね――」
P(そして千早は俺たちにことの顛末を話し始めた)
――――
――
―
千早(私たちはあのあと、302号室の前まで足を運んでいた)
響「ここ、最初の選択肢であった部屋だよね……?」
真「たしかあれは――」
あずさ「大切な人を、助ける……だったかしら」
千早(私は三人に頷く)
千早(そう、初めの選択肢で与えられた部屋選びの時――この302号室もそこに含まれていた)
千早(部屋のヒントは――大切な人を助ける、そう書かれていた)
千早(……この中には、いったい何が)
千早(そして――私はその扉を開いた)
千早「……」キィ
千早(そこには――やはりベッドが置かれていた)
千早「……これ」
千早(そのベッドまで足を運ぶと――そこには束になった鍵が置かれていた)
千早(これは……)
あずさ「部屋番号が、書かれているわね」
真「もしかしてこれ……」
響「自分たちの部屋番号かな?」
千早(そう、そこには鍵の束が置かれていた)
千早(そしてそこには番号が書かれており――それは私たちの部屋番号と一致していた)
千早(鍵は二種類――恐らく、部屋の鍵と……鎖を開くカギ、か)
千早(春香……ようやく)
響「ねえ……もしかして」
真「……うん」
千早(そのとき――傍にいた二人は喜びを隠せない私とは異なり、顔を曇らせていた)
千早「どうしたの……?」
千早(私がそう尋ねると、二人は重い口を開いた)
響「最初から、こっちの部屋を選んでたら……良かったんじゃないのか?」
千早「!」
千早(私は二人の発言に目を見開いた)
千早(そう……その通りよ)
千早(私は――間違えていた)
千早(正解だと思っていた選択肢は――間違えていたのだ)
千早(初めの多数決――あそこでそれを選んでおけば……あんな苦痛を味合わずにすんだ)
千早(私は……)
あずさ「……多数決で決めたことよ」
千早「あずささん……」
千早(そのとき、あずささんはみんなにそう笑いかけた)
あずさ「だから、今は何も考えない方がいいわ」
千早(私たちは頷くと、再び鍵に目を落とした)
千早(これで――春香たちを救い出せる)
千早(……私たちは急いで部屋を飛び出た)
――――
――
―
千早「それで全てです」
P「そうか……そんなことが……」
P(千早たちから聞いたこと、それはあまりにも残酷な選択だった)
P(初めの選択肢――そこで千早たちがそれを選ばなければ……)
P(いや、そうじゃない)
P(千早たちが選んだ選択肢は――ゲーム側では、きっと正解なんだ)
P(そう、千早たちのやっていたHOSPITAL:ALICEは――メアリーのことを知るためのゲームだったはずだ)
P(だとすれば……千早たちは、字のごとくゲームをプレイしたことになる)
P(だがそんな残酷なこと……俺は言うことが出来なかった)
P(そのとき、千早は俺の袖を引いた)
P(まだ何かあるのか?)
P「どうした?」
千早「実は――302号室には、この鍵も」
P(千早が見せてきた鍵――それは2階のカギだった)
P「それは……」
千早「これで、きっと亜美たちも……」
P(俺は千早から鍵を受け取ると、急いで掴まっている皆を助けに向かった)
P(――律子、亜美、やよい……無事でいてくれ)
P(俺は自分の部屋の鍵を見つけると――203号室へと向かった)
P(鍵を差し込むと、ガラリと扉は開いた)
律子「あっ……」
P(律子は、ベッドの上で眼鏡をはずしていた)
P(括った髪を解き、長い髪を垂らしていたためにすぐには律子だとは分からなかった)
P「り、律子……?」
律子「……怖くて、眼鏡……外してたんです」
P(見れば、律子はベッドの上で震えていた)
P(髪を解いていたのも、きっといつもの髪型が苦しかったためだろう)
律子「でも……良かった」
P「……?」
P(律子はベッドの上で、小さく微笑んだ)
律子「ちゃんと……助けに来てくれた」
P「……!」
P(律子の表情に俺はドギマギしながら、ゆっくりと律子にかけられた手錠を外した)
P「遅くなって、悪かった」
律子「いえ……」
P(律子は立ち上がると、俺の方に顔を寄せた)
律子「……無事で、本当によかった」
P(…………そういうのは少しだけ心臓に悪いと思った)
P(203号室でそんなことをしている内に――外でも声が響いていた)
亜美「真美――ッ!」ダキッ
真美「亜美――ッ!」ダキッ
伊織「……やよい」ウルッ
やよい「伊織ちゃん? なんで泣いてるの?」ヨシヨシ
P「どうやら……みんな無事みたいだな」
律子「ええ……良かったです」
P(俺たちはどうやら全員無事のまま何とか自由の身になることが出来たようだった)
P(……本当に良かった)
P(そして――俺たちは全員そろって病院の外へと向かった)
P(外に出ると、全員がどこかほっとしたような顔を見せていた)
P「……あそこで引き返してよかったな」
伊織「ええ……」
P(伊織たちと引き返さなければ、千早たちはあのまま取り残されることになっていた)
P(……そうだ、これが本当のエンディングだ)
P(俺は少しだけ肩の力を抜いた)
律子「それで、どうしますか?」
P(そのとき、律子から声がかかった)
P「ああ、どうやらこの森を抜けないと外へは出られないらしい」
P(俺が指さした先――そこには鬱蒼と生い茂った森があった)
律子「でも、こんな森――何の手がかりもなく歩いても迷っちゃいますよ」
P「……それもそうだな。せめてコンパスでもあればいいんだが……」
P(そのとき、誰かが俺の袖を引いた)
春香「ぷ、プロデューサーさん」
P「ん? どうした、春香」
春香「これ……ポケットの中に入ってたんですけど」
P「これは……」
P(春香が俺に見せてきたもの――それは、コンパスと一枚の紙切れだった)
P(俺は春香からそれを受け取ると、ゆっくりと紙を開いた)
P「……もしかしてこれは、地図か?」
春香「たぶん……」
P(春香が渡してきたもの――それはこの森を抜けるための地図だった)
P(なんで春香がこんなものを……)
P(俺が春香を見つめると、春香は途端に顔を真っ赤に染めた)
春香「わ、私……みんなのところに戻りますね」
P「ああ……ありがとう」
P(春香を見送ると――俺は再び律子に向き合った)
P「律子」
律子「ええ」
P(そして――俺たちはそれを頼りに森を抜けることにした)
P(無事に帰れればいいが――)
P(みんなの先頭を歩きながら、俺は心でそう呟いた)
――――
――
―
千早(森の中を歩いているときに、誰かが私の肩を叩いた)
千早(振り返ると、そこには春香がいた)
千早「春香、どうかしたの?」
春香「うん……ちょっと気になることがあって」
千早(そう言うと、春香は私を眺め始めた)
千早(……なにかしら)
春香「あっ! やっぱり!」
千早(そして、春香は何かを叫んだ)
千早「どうかしたの?」
春香「ほら千早ちゃん……ここ」
千早(春香が指さした先――そこはちょうど私の胸ポケットあたりだった)
千早(……なにかしら)
千早(私がじっと目を凝らすより先に、春香は――何かを私からとった)
千早「それ……」
春香「うん――これ、カメラだよね」
千早(春香がとったもの――それはカメラだった)
千早(小さくて見えにくかったが、カメラは私の体につけられていたのだ)
千早(でも……なぜ?)
春香「これ、耳鳴りみたいに鳴ってるから――私部屋の中ですぐに気づいたんだけど」
千早「……そう」
千早(そういえば、病院の中で私は何度か耳鳴りを聞いていた)
千早(あれは――このカメラから鳴っていたのね)
春香「盗聴器も兼ね備えてるような気もするし……。なんでこんなのがついてたんだろうね」
千早「ええそうね……」
千早(そのとき私は違和感を覚えた)
千早「……春香も、カメラがついていたの?」
春香「うん、そうだよ?」
千早(春香はそう言った)
千早(私は急いで、傍にいた我那覇さんに顔を寄せる)
千早「我那覇さん、ちょっとごめんなさい」
響「ん? どうかしたの?」
千早(私は我那覇さんの胸ポケットを見る)
千早(そこには――何もなかった)
響「ち、千早……? そんな、急に、だ、大胆だね」ワナワナ
千早「……」
千早(我那覇さんは何かを勘違いしたかのように顔を赤らめていた)
千早(私は我那覇さんに謝ると、顎に手を添えた)
千早(カメラは――私と春香につけられていた)
千早(だけど、メアリー側も含めて他の子たちには――つけられていなかった)
千早(それはなぜかしら)
千早(そのとき――、一番初めの部屋での出来事を思い出した)
千早(そうだ……私たちの部屋には『アリス』に纏わる紙が置かれていた)
千早(……つまり、私たちはアリス役をすることが決まっていた?)
千早(そして――もう一つのことに気付く)
千早(初めの――あの紙切れ、そして手錠の鍵)
千早(あれはどちらも――春香の方になかったかしら?)
千早(もしかすると……私は本来アリス役ではなかった?)
千早(そう――そうよ)
千早(春香が外に続く地図と、コンパスを持っていたのはなぜ?)
千早(……それは恐らく――本来、向こう側が想定していたアリスは春香だったのよ)
千早(いえ、もう少し考えましょう)
千早(もしかすると――アリス役はどちらでも良かった?)
千早(そう、今回のようなことが起こることも向こうは想定していたはず)
千早(あらかじめ、カメラは私と春香につけられていた)
千早(真美の時のように、メアリー役があらかじめ決められていたのなら、そんなことをしなくてもいいはず)
千早(そこで私はあることに気付く)
千早(――もしかして)
千早(私は首を振る)
千早(そんなことはあるはずない)
千早(そう信じて、私は森を抜ける道を歩き続けた)
――――
――
―
P(俺たちが森を抜け、再び事務所の中でゆったりとした時間を過ごすのにはしばらく時間がかかった)
P(そうだ、あの場所で見たこと、したこと、それらすべてを忘れるには――もう少し時間がかかる)
P(だが……)
真美「うー……このお菓子真美が食べるはずだったのに……」
P(真美も含めて、皆は少しずつ元気を取り戻し始めていた)
P(そう――あの一件の後、俺は小鳥さんや社長に連絡を入れた)
P(小鳥さんと社長の話では――俺たちはやはりTEENという会社からの仕事を引き受けたようだった)
P(社長は、まだ仕事の少ない彼女たちの次のステップアップにつながるからといろんな仕事をさせるように言っていた)
P(そこで募集のかかっていた案件――それが今回のTEENの仕事だった)
P(だが、俺が分かったのはそれだけだ)
P(結局、なぜ俺たちがあんな場所にいたのか――その真相は謎に包まれたままだった)
P(そのとき、小鳥さんが俺を呼ぶように手を招いた)
P(何かあったのかな――)
P「どうかしましたか?」
小鳥「ええ……これが今日事務所宛てに」
P「これは……」
P(それは、一通の手紙の用だった)
P(だが……それは差出人の情報はなかった)
P(ただ一つ――TEENという言葉が添えられている以外は)
P「みんなを呼んできます」
P(俺はそう言うと、皆に声をかけにいった――)
――――
――
―
千早(プロデューサーが一枚の手紙を出した時――みんなは硬直したように体を強張らせた)
千早(あのときの記憶が鮮明によみがえるような……そんな錯覚を覚えた)
P「これ……どうする?」
千早(静かに、プロデューサーは皆に語り掛けた)
千早(みんな、黙ったまま誰も声を出さなかった)
千早(もちろん……私も)
千早(……そのとき、プロデューサーが言葉をつづけた)
P「俺は……この中に全ての真相が入っていると思うんだ」
千早(……それは、私も同じ意見だった)
千早(だからこそ……嫌な予感がしていた)
P「……ここで、読んでもいいか?」
千早(プロデューサーがそう言ったとき――私は反射的にそれを止めようと口を開きかけた)
千早(だけど……どうしよう……)
安価下5多数決
1止める
2止めない
473 : 以下、\... - 2015/09/18 01:26:59.730 hQzacRsVH.net 804/961えええええええええ
2
476 : 以下、\... - 2015/09/18 01:27:03.622 Gj8SFD5R0.net 805/9612しかないっしょー
481 : 以下、\... - 2015/09/18 01:27:09.863 hakz0bpJ0.net 806/961ここで安価なのか
2
490 : 以下、\... - 2015/09/18 01:28:08.014 bbDBQqYc0.net 807/961ありゃここで見ちゃうとTRUEルートなしかと思ったんだが
どのみちこれが最後なのかな
千早(止めない……それで……本当にいいのかしら)
安価下5
1良い
2良くない
500 : 以下、\... - 2015/09/18 01:28:48.135 H6XBrw7b0.net 809/9612!!
522 : 以下、\... - 2015/09/18 01:30:50.033 eo3m6Pqc0.net 810/961念を押して来たってことはなにかあるんだろうな、きっと
千早(やっぱり――止めないと)
千早「プロデューサー!」
千早(私が大きな声を出すと、全員がこちらに顔を向けた)
千早「やめましょう、もう……何も知らなくてもいいじゃないですか」
P「千早……」
千早(私は体を震わせた)
千早「こんなの……私は……知りたくない……です」ブルブル
千早(私はおもわず涙を浮かべていた)
千早(そうだ、こんなもの――見なくてもいいじゃないの)
千早(真相なんて、知らなくていい)
千早(それで……何がダメだと言うの?)
P「……分かった」ビリビリ
千早「え?」
千早(プロデューサーは手に持っていた手紙を破り捨てた)
P「これで……いいだろ?」
千早(そう言うと、プロデューサーは……優しく微笑みかけた)
千早(途端に、みんながざわつきだす)
春香「千早ちゃん……」
千早「春香……」ギュッ
千早(私は春香にしがみついた)
千早(そう……これでよかった)
千早(私たちは――何も知らなかった)
千早(それで……良かった)
【HAPPY END】
561 : 以下、\... - 2015/09/18 01:36:28.792 SwNTYQ2r0.net 813/961プレイヤーのみなさん、お疲れ様でした。
物語はHAPPY ENDで終わることが出来ました。
千早たちもハッピーだと思います。
良かったですね。
591 : 以下、\... - 2015/09/18 01:38:49.537 SwNTYQ2r0.net 814/961でも……物語の真相が気になる人はいますか?
そうですよね、このまま終わるのはモヤモヤが残りますよね。
やっぱり――最後は真相を知りたいですよね。
どうしますか? 皆さんにお任せします。
安価下5多数決
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592 : 以下、\... - 2015/09/18 01:38:53.663 b0QvzF5b0.net 815/961true見ないと寝れんわ
594 : 以下、\... - 2015/09/18 01:38:58.629 uX9ENSSB0.net 816/9611
598 : 以下、\... - 2015/09/18 01:39:04.205 eo3m6Pqc0.net 817/9611!
607 : 以下、\... - 2015/09/18 01:39:18.583 YoMS2zuR0.net 818/961お願いします1
613 : 以下、\... - 2015/09/18 01:40:02.784 SwNTYQ2r0.net 819/961それでは……千早が止めなかったところから、物語の続きを始めたいと思います。
……もう真相はすぐそこです。
どうぞ、最後までお楽しみください。
千早(結局、私はプロデューサーを止めることは出来なかった)
千早(本当に……これでよかったのかしら)
P「いいな? 開くぞ?」
千早(プロデューサーはゆっくりと手紙の封を開くと――一枚の紙を取り出した)
P「……手紙みたいだな」
千早(みんなが緊張の視線を向ける中で――プロデューサーはゆっくりとそれを読みだした)
千早(それは……あまりにもひどい内容だった――)
《765プロのみなさん、この度は私共、『TEEN』の仕事を引き受けてくださり本当にありがとうございました》
《TEENはあの不朽の名作である『HOSPITAL』を世に売り出し、わが社に大きな功績をあげました》
《ですが……『HOSPITAL』は一部の方に人気が出ただけでした》
《どうして、この偉大なゲームを理解してくれる方が増えないのでしょうか》
《私は不思議で仕方がなかった》
《そのため今回の仕事を広告に出し、募集をつのりました》
《もちろん、仕事には多額の報酬を出すつもりでしたので、そこそこ人数は集まりました》
《しかし、この仕事には人数制限があったため、審査は難航しました》
《そのとき765プロの方々が私の元に現れたのです》
《765プロはまだ仕事が少ないアイドル事務所だと聞きました》
《審査の中で、私は一人の少女の話を聞きました》
《名前は――双海真美でしたよね》
《私は嬉しかった……彼女は既に私の作った方のゲームをプレイしてくれていたのだから》
《ああ、もう一人の少女は私の弟が作ったゲームをプレイしていましたね》
《弟は、あのゲームの中の医院長の役が決まっていたので会うことはなかったですが》
《話を戻しましょう》
《私は双海真美という女の子に興味を抱いたのです》
《今回の仕事に彼女は適任だと……そのときは感じていました》
《だが、彼女は私にこう言った》
《こんなゲームはつまらないと》
《つまらない?》
《私は激しく憤りを感じました》
《なぜ、彼女はそんなことを言うのか》
《私はそれを問い詰めた》
《すると双海真美はもう一度言った》
《おもしろくない、と》
《そのとき……私は彼女の首をその場で掴みかかりそうになった》
《しかし、私はそれをしなかった》
《私は思いとどまった》
《偉いでしょう?》
《そして、私は――765プロに……いや、この双海真美に私の仕事を与えようと決めた》
《しばらくして、私は一報を事務所に送りました》
《とある一室に私はあなた方を呼び込み――そしてゲームを始める準備を行った》
《そうだ》
《双海真美には――メアリーの役を当てた》
《彼女は私の作ったゲームを嫌いと言った》
《そんなことはない》
《きっと、それは何かの間違いだ》
《彼女はきっとわかってくれる》
《もう一度、ゲームで遊べばきっとわかってくれる》
《……そう、だから私は二人で遊ぶことにした》
《双海真美と、私とで――このゲームを》
《真美、私はアリスを使ったんだよ》
《弟の作ったHOSPITAL:ALICEで私はアリスを動かしたんだ》
《……アリスは思っていた方にはならなかったけど、でもそんなことはどうでもよかった》
《真美はどうだったかな?》
《ゲームを楽しんでくれたかな?》
《私はとても楽しかった》
《私はゲームをしたかった》
《でも遊び相手はいなかった》
《いつも二人で遊んでいた弟は、頭がおかしくなっちゃったから一緒には出来ないんだ》
《真美、君は楽しんでくれたかな?》
《私はもうこの世界に何も未練はないよ》
《ゲームがとても楽しかったからね》
《だから……ばいばい、メアリー》
千早(手紙はそこで終わっていた)
千早(誰も何も言おうとはしなかった)
千早(いや、何も言うことが出来なかった)
真美「……」
千早(真美は、肩を震わせて――ソファで亜美にしがみついていた)
千早(私たちは……真相を知ることが出来た)
千早(でも、その真相は――あまりにも狂っていた)
千早(そう……私たちはこのTEENという会社の――恐らく社長によってゲームのキャラクターを演じていた)
千早(きっとこの仕事は――社長がゲームを遊ぶためのコマになることだった)
千早(だけど……その中でも、真美は違った)
千早(真美は――メアリーとして、ゲームを遊ぶようにと考えられていた)
千早(そして……)
千早(私は――自分があの森の中で想像していた違和感をそこで確信に変えた)
千早(そうだ――アリスは私たちのどちらでもなかった)
千早(アリスは――この手紙の主だったんだ)
千早(私は、体を震わせた)
千早(これから……私たちがどうなるのかは分からない)
千早(だけど、あんな体験をしてしまったということ)
千早(そして脳裏に焼き付いた病院の光景)
千早(……私たちも、もう普通には戻れないのかもしれない)
春香「千早ちゃん……?」
千早(春香が心配そうにこちらを眺めてきた)
千早(私はそんな彼女に小さく微笑む)
千早(それはしっかりと笑えていただろうか)
千早(そんなことさえも、私には分からなかった)
千早(そう、何も分からなかった――)
【TRUE END】
722 : 以下、\... - 2015/09/18 02:02:24.874 SwNTYQ2r0.net 832/961プレイヤーのみなさん、お疲れ様でした。
これでスレは完全に終了です。
恐らく、まだ疑問点があるかと思いますので、質問受け付けます。
725 : 以下、\... - 2015/09/18 02:02:31.492 eo3m6Pqc0.net 833/961あー、やっぱり出てない情報が重要だったのか。とりあえず乙!
続き
千早「気が付けば私は、病棟の一室で眠っていた」 質問スレ