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【ラブライブ】梨子「ロストソング」【前編】
ーーー
果南「ルビィせんせー、これさ何回くらい勝ち抜けばいいの?」キョシュ
ルビィ「参加組数にもよりますけど、本戦出場の為にルビィ達は最低でも県予選、県大会、地区予選の3回勝ち抜く必要があります」
鞠莉「なかなかに高い壁ね」
ルビィ「はい、例年通りならまず県予選はブロック毎に行われて約20組が県大会へ行きます、ちなみに去年の静岡県大会予選の出場組数は101組です」
善子「5分の1か……」
ルビィ「現段階のAqoursは静岡県内のランクで見れば27番目なので正直厳しいけど、可能性はあると思います」
曜「はーい」キョシュ
ルビィ「はい、曜ちゃん」
曜「県大会に行けたら?」
ルビィ「予選を勝ち抜いた約20組で県大会本戦が行われ上位5組に地区予選への出場権が与えられます」
千歌「それも勝ち抜いたら?」
ルビィ「Aqoursの場合は静岡、岐阜、愛知、三重の4県からそれぞれ勝ち進んだ計20組で地区予選が行われます」
花丸「地区予選からは何組が本戦に行けるズラ?」
ルビィ「ラブライブ本戦に行けるのは上位3組だけ」
花丸「まさに狭き門だね……」
ルビィ「そして全国15地区をそれぞれ勝ち抜いた計40組により2日間かけて本戦が行われます」
果南「ん?もしかして地区毎に本戦行ける組数が違う?」
ルビィ「うん、特に東京大会は参加組数がかなり多いから実質地区予選扱いで5組選出されるの」
千歌「ずるくない!?」
ルビィ「ううん、去年の東海地区の総参加は約400組だったんだけど、東京大会だけで約500組いたの」
鞠莉「ワーオ……」
ルビィ「他にも兵庫と大阪の阪神地区も5組で、東海、北海道、南関東、北九州が3組だったかな、後の地区は2組ずつ」
梨子「随分偏るのね……」
ルビィ「うん、都道府県毎に高校の数が何倍も違ったりするし、東京や阪神地区なんかは一校で2グループ以上参加したりするから」
ダイヤ「……ルビィってスクールアイドルに関する話をする時はいつもこんなに饒舌なんですか?」ヒソヒソ
曜「うん、凄いよね」
ルビィ「単純計算でも本戦に行けるのは100分の1以下、年々スクールアイドルは増えてるから実際はもっと少ないと考えてください」
善子「無理ゲーじゃないの」
ルビィ「正直なところ、ランク800代後半のAqoursが本戦に出れる確率は0に等しいです」
果南「ズバリ言っちゃうねー」
ルビィ「ただ一つ勝ち抜く方法があるとすれば……」
曜「あるとすれば……?」
ルビィ「夏まつりで更にブーストをかけた上での一般投票」
千歌「なにそれ?」
ルビィ「予選、本戦のすべてで行われるんだけど、審査員による技術面での採点とは別に一般観覧者による投票があるの」
ダイヤ「でも、それは学校関係者による集団投票でかなりの差が出るのでは?」
ルビィ「さすがお姉ちゃん、一つ一つ説明すると長くなるから省くけどそこはちゃんと色々対策がされてるから安心していいと思う」
ダイヤ「なるほど」
ルビィ「一般投票は総投票数から得票率を出してそれを元に加点されるの、だからそれで大きく加点することが出来ればチャンスがあると思う」
千歌「……?」
鞠莉「言わば魅力点ってところかしら」
ルビィ「うん、ラブライブ本戦出場が難しいのはそこ、どれだけ歌やダンスが上手くてもファンの心を掴めなきゃいけない、逆に言えば歌やダンスが多少拙くてもファンの支持を得られれば勝ち抜ける可能性があるの」
梨子「その指標がランキングなのね……」
果南「……そろそろ頭がパンクしそう」
善子「なるほどねー……」
花丸「より心動かされるアイドルになる必要があるってことだね」
ルビィ「うん、もちろんそれだけで全てが決まるわけじゃないし、冬は冬でまた少し違った採点基準があるんだけどそれはまたその時に話すね、というわけでルビィのラブライブ講座は以上でした」ペコリ
千歌「ルビィちゃんありがとう」
曜「なかなか骨が折れそうだねー」
ダイヤ「そうですわね」
千歌「でもやることは変わらないんじゃないかな」
善子「結局のところ、人気あるグループが勝てると」
ルビィ「乱暴な言い方になっちゃうけどそういうことだね……」
果南「私達が加入して人気落ちたりしない?」
花丸「果南さん、いつもより後ろ向きズラ」
果南「そりゃぁ、後から入るわけだし、今までみんながやって来たことを台無しにしちゃったらどうしよう、とか思うじゃん?」
ダイヤ「それについては私も果南さんと同じですわ」
千歌「大丈夫!」
果南「なんでそんなこと言い切れるの?」
千歌「今まで何とかなったから!」
曜「私達だって別に誰彼構わず加入させてるつもりはないよ」
ダイヤ「他にも加わりたいという方が?」
梨子「そういう訳じゃないですけど、でもなんとなくこのメンバーなら大丈夫かなって私も思います」
千歌「だからもうそういうネガティブな考え方無し!前だけ向いてー!」
曜「全速前進ヨーソロー!」ビシッ
善子「意味不明なんだけど」
果南「あはは♪」
ダイヤ「全く、敵いませんわ」クスクス
ーーー
曜「なんじゃこりゃー!」
花丸「おっきい画面がいっぱいズラ~!」
梨子「まさか……これ全部に映し出されるってこと?」
鞠莉「そういうことみたいね」
千歌「ほんとにプロのアーティストみたい!」
ルビィ「あわわわ……どうしよう、どうしよう、こんなところでライブするの!?」オロオロ
果南「めちゃくちゃお金かかってるねー」
ダイヤ「まさにスペシャルステージですわね……」
善子「ぅぇ……緊張で吐き気がしてきた……」
ルビィ「こんなフェスみたいな環境でほんとにやるの!?」
曜「何回確認するの、ルビィちゃん……」
ダイヤ「いきなりこんなところに立たされるなんて思いもしませんでしたわ……」
鞠莉「千歌っち、ルビィちゃん、代表の人が呼んでるから行くわよー」
千歌「あ、はーい」
ルビィ「うう、頭が回らない……」トボトボ
花丸「ルビィちゃん、頑張れ!」
果南「……」
ダイヤ「打ち合わせはいつもあの三人が?」
梨子「はい、千歌さんはリーダーで、ルビィちゃんはアイドルとか詳しいし、鞠莉さんも最年長ということで」
ダイヤ「そうでしたか……」
曜「うーん、これだけ広いとフォーメーションも少し直さなきゃダメだね」
善子「そうね、ここを直接見る人もいるわけだし、あんまり小さくまとまるような動きは無い方がいいかも」
花丸「ちょっと踊ってみる?」
曜「そだね、今のうちに動きは見た方がいいかも、とりあえずいつもの立ち位置に並んでみよっか」
梨子「こんな感じ?」
花丸「やっぱりいつもより広いね」
善子「んじゃ、半歩ずつ広がってみて?」
果南「こんな感じ?」
梨子「さっきよりは大きく見えるんじゃないかな?」
曜「これ以上広がっちゃうと踊りにくいかもだし、これで調整しよっか」
ダイヤ「分かりましたわ」
ーーー
ガヤガヤガヤ
梨子「いくら夏休みだからって……何この人だかり……」
曜「ぁぁ……もう酔ってきた……」ゲンナリ
果南「相変わらず曜は人混み苦手なんだね」
善子「そういや東京でも同じこと言ってたわね」
千歌「あー!浴衣着たかったー!」
ルビィ「仕方ないよ、ライブしなきゃダメなんだし」
花丸「浴衣は明日にお預けズラ」
ダイヤ「あんまりはしゃぎすぎて時間に遅れないようにお願いしますよ?」
鞠莉「それじゃ一時解散よー♪」
ーーー
ダイヤ「遅いですわ」
果南「まぁまぁ、まだ30分以上あるし」
ダイヤ「そういう気の緩みが後々に大事になるんです」
鞠莉「もぅだからってそんなにぷりぷり怒ることないじゃない」
ダイヤ「ダメです」
ルビィ「あ、お姉ちゃーん」
花丸「さすがダイヤさん、早いズラ」
善子「リリー達はまだなの?」
ダイヤ「まだですわ、全く……リーダーの自覚はあるんでしょうか……」
善子「……あんまり無いと思うわ」
果南「無さそうだねー……」
ダイヤ「はぁ……」
花丸「あ、あれ、千歌ちゃん達じゃないかな?」
鞠莉「あ、ほんとね、おーい♪」
曜「ほら千歌ちゃん!早くっ!」
梨子「遅くなってごめんなさい……!」
千歌「もごもご!」
ルビィ「千歌ちゃんハムスターみたいになってる……」
千歌「んくっ……いやぁ焼きそばの屋台が混んでて」アハハ
果南「あーなら仕方ないね」
ダイヤ「仕方なくありません、他のグループはもう来てるんですから、私達も挨拶して準備しますわよ」
曜「はーい」
鞠莉「梨子っち」
梨子「はい?」
鞠莉「口、ソース付いてるわよ」クスッ
梨子「っ……!」ゴシゴシ
ーーー
鞠莉「それじゃ、出番までゆっくりしてましょうか」
千歌「やっぱり外に出ちゃだめー?」
梨子「ダメって言われたでしょ?」
果南「えー」
千歌「えー」
曜「えー」
梨子「人酔いするのになんで曜さんも出たがるの……」
曜「じっとしてるの苦手だし!」
善子「そもそもトリなんか引き当てるからこんな待ち時間長いんじゃない……」
千歌「いやぁ、私そんなにくじ運強い方じゃないんだけどねぇ♪」
ダイヤ「お陰で私と果南さんの出番が締めの1曲になってしまいましたわ」
花丸「多分今日一番の注目を浴びるズラ……」
果南「荷が重い……」
ルビィ「わぁぁ♪」
鞠莉「やっぱりこうして見るとみんなハイレベルねー」
梨子「負けてられないよね」
曜「なんか……前から思ってたんだけど、梨子ちゃんって結構負けず嫌いなとこあるよね」
梨子「えっ!?そ、そうかな……」
ダイヤ「そういえば、私達に勝負しろなんて持ちかけたのも桜内さんでしたわね」
梨子「いや……あれは……」
ルビィ「いつも頼りになるお姉さんって感じ♪」
善子「まぁ、普段忘れてるけど本当はリリーも三年生のはずだしね、なんだかんだ頼りになるわよね」
梨子「年齢だけで言えばそうだけど……」
曜「私は!?」キョシュ
善子「賑やかし」
曜「この団子引きちぎるぞこのやろー!」ガシッ
善子「ぎゃー!やめなさいよー!」
ダイヤ「貴女達、あんまり騒がない!」
鞠莉「始まる前から体力使ってどうするのよ、もー」
梨子「あはは……」
ーーー
千歌「曜ちゃん、リボン曲がってるよ」
曜「ほんと?こう?」
花丸「スゥー……ハァー……スゥー……ハァー」
ルビィ「こう?こっち?」
善子「さっきの方がいいかも」
果南「なんかやっぱり恥ずかしいなぁ……」
千歌「果南ちゃんってフリフリな服全然着ないもんねー」
果南「変じゃない?大丈夫?」
鞠莉「とっても似合ってるわよー♪ベリープリティー♪」
果南「余計恥ずかしくなってくるからやめてよ……」
ダイヤ「もう少し締めてもらって大丈夫ですわ」
梨子「じゃあこれくらいですか?」
ダイヤ「はい、ありがとうございます」
千歌「よーし、じゃーいつもやろう!」
果南「いつもの?」
花丸「円陣組んで番号を言っていくの」
ダイヤ「掛け声みたいなのもあるんですか?」
ルビィ「千歌ちゃんがアクアーって言ったらサンシャイーンってみんなで言うの」
ダイヤ「……なんでサンシャインなんですか?」
果南「どうせ、千歌が適当に決めたんでしょ」
千歌「グサァッ!バレてる!?と、とりあえずやるよ!」
ルビィ「はぁい♪」
千歌「みんな、いくよ!1っ!」
曜「2っ!」
ルビィ「3っ!」
鞠莉「4っ♪」
善子「5っ!」
梨子「6!」
花丸「7っ!」
果南「じゃあ8っ!」
ダイヤ「9っ!」
千歌「アクアー!」
9人「サンシャイーン!」
曜「じゃあ先に行ってまいります!」ビシッ
ルビィ「頑張ってくるね!」
善子「しっかり盛り上げておくわ」
果南「いってらっしゃい」
ダイヤ「……」
果南「……」
ダイヤ「頼もしい背中ですわね」
果南「うん、ちょっと寂しいね」
ダイヤ「ええ、ですがその分、追いかける楽しみが出来ましたわ」
果南「だね!」
バーン
ようちか「善子ちゃん!」
善子「うわっ!?ちょっといきなり大声で入ってこないでよ」
ルビィ「あれ?今日、練習休みだよね?」
梨子「気になって気になって仕方ないみたい」
ダイヤ「桜内さんもですか?」
梨子「いえ、私は二人に引っ張り出されて……」
ダイヤ「あぁ、なるほど」
善子「ダメ、明日までおあずけ、私だって昨日夜にアップしてから見てないんだから」
曜「先輩の権限で見せてよっ」
善子「ダメなもんはダメよ、ネット周りは私が一任されてるんだから私の指示に従ってもらうわ」
千歌「じゃあリーダー命令で!」ビシッ
善子「却下」
千歌「なんでなのだー!」ガーン
梨子「だから明日みんなで見ればいいじゃない」
千歌「梨子ちゃんは気にならないの!?」
梨子「気にはなるけど……」
千歌「でしょ!?」
善子「そもそも今日、予選用に衣装直しに来てるだけでノーパソ持ってきてないし」
曜「えっ!?」
梨子「残念でした、帰るよ二人とも」ガシッ
千歌「あーん……気になって宿題に身が入らないよー」ズルズル
曜「上の空になっちゃうよー」ズルズル
梨子「日頃の宿題も出来てないのに何言ってるの……」
ルビィ「ば、バイバーイ……」
善子「先輩としてどうなのよあれ……」
ダイヤ「昔からあんな感じですわ……」
ーーー
鞠莉「おっまたせー♪」
千歌「遅いっ!」ビシッ
果南「ごめんごめん」
善子「んじゃ、揃ったし見ましょうか」カチカチッ
ルビィ「何位くらいになってるかな」
梨子「多分、他のグループも上がってるだろうけど……」
ダイヤ「この結果次第で夏のラブライブへの活路が開けるかどうか決まるのですね」
善子「……」カチ…
花丸「……善子ちゃん?」
曜「ど、どう?」
善子「……ん」スッ
ルビィ「ランク……471位!?」
果南「結構いいの?」
善子「いいなんてもんじゃないわ、上位10%くらいまでくい込んできたのよ」
梨子「始めてまだ半年も経ってないのにもうこんなところまで来ちゃった……」
千歌「これなら……ラブライブだってほんとに夢じゃないかも!」
曜「私達って実は凄いのかな!?」
鞠莉「イエース!勝利の女神が微笑んでくれてるのかも♪」
ルビィ「……」
ダイヤ「……ルビィ?嬉しくないの?」
ルビィ「嬉しいけど……」
花丸「けど?」
ルビィ「本当に大変なのはここからだから」
善子「……あー、そっか」
曜「どういうこと?」
善子「ほら、私達これまで上がる時は一気に上がってたでしょ?」
千歌「うん」
善子「特にみとしーライブの時、どのくらいランク上がったか覚えてる?」
鞠莉「……あっ、そういう事ね……」
花丸「2500位くらいから900位くらいまで上がってたような……」
梨子「あっ……それで上昇率で全国4位になったんだ……」
ルビィ「うん……上昇率って実はランクが低い方がずっと取り上げられやすいの」
果南「そうなの?」
ルビィ「だいたい二週間毎に集計されるんだけど、その期間で特にランクを大きく上げたグループがピックアップされるのが上昇率ランキングなの」
ダイヤ「なるほど……」
善子「極端な話、2位のグループが1万票獲得して1位になった場合と4000位のグループが千票獲得して3000位になった場合じゃ、単純に1000ランク上がった後者が急上昇と扱われる、と」
果南「それじゃ……」
ルビィ「うん、もちろん他にも色んな特集とかあるけど、やっぱり注目を浴びる事は今までよりずっと少なくなってくるから、ここから先はランクを一つ上げるだけでも難しいと思う」
千歌「……」
ルビィ「特にこのくらいのランクになってくると他のグループは3年目だったりするから固定のファンも多くいるし……」
鞠莉「動画を一つ上げるだけでも1度に多くのポイントが動く訳ね」
ルビィ「うん……もしかしたら今のランクで身動きが取れなくなるかもしれない……」
千歌「でも……だからって止まるわけにはいかないよね」
鞠莉「ふふっ♪そうね♪」
善子「まぁ、まぐれだったとしても間違いなくここまで来れたわけだし」
花丸「チャンスはあるズラ!」
曜「一つだけ、確実に更に上位に食い込める方法があるよね」
ダイヤ「果たしてランクを上げるのと、その方法を実現するのはどちらが難しいのでしょうか……」
梨子「でも、やることは結局同じですよね」
ルビィ「……うんっ!」
果南「んじゃ、のんびりしてないで練習しなきゃね」
千歌「……絶対行こう!ラブライブに!」
ーーー
梨子「予選なのに結構人が来てるね」
鞠莉「私達のブロックは周りの市からも出場してるからその応援でしょうね」
「みんなー!」
千歌「あっ!」
むつ「良かったー!始まる前に会えた!」
いつき「応援に来たよ」
曜「ありがとう!」
よしみ「とはいっても、抽選外れちゃったから中で応援してあげられないけど……」
千歌「来てくれただけで充分だよ!」
むつ「頑張ってね!本戦は絶対会場で見るから!」
曜「うんっ!私達も絶対本戦に行くから!」
梨子「あれ?そういえばルビィちゃん達は……」キョロキョロ
ダイヤ「あちらで果南さんと一緒にファンに囲まれてますわ」
千歌「ファン!?」
ファン「Aqoursの黒澤ルビィちゃんですよね!?可愛い~♡」
ルビィ「あわわ……あ、ありがとうございます……」
ファン「私っ、国木田さんの歌すっごく好きなんです!」
花丸「そ、そんな、マルは全然……」
ファン「つ、津島さん……あ、握手してください!」
善子「握手っ!?え、ええ、いいわよ」ギュッ
ファン「松浦さんって普段どんな事してそのスタイル保ってるんですか!?」
果南「私、ダイビングしてるからそれのせいかな~」
鞠莉「すっかり人気者ねー♪」
千歌「むむっ……羨ましい……」
曜「千歌ちゃん千歌ちゃん」トントン
千歌「ん?」
ファン「あのっ!Aqoursの皆さんですよね!?」
梨子「えっ?あ、そうですけど……」
ファン「私達みとしーのライブ見に行ったんです!」
千歌「あ、ありがとうございます!」
ファン「もちろん夏まつりも見に行きました!あの日の中で一番凄かったと思います!」
ダイヤ「そう言ってもらえると嬉しいですわ」
ファン「良かったら写真一緒に撮ってもらっていいですか!?」
鞠莉「OK♪じゃあみんなで撮りましょう♪」
むつ「じゃあ私が撮ってあげるよ」
よしみ「みんなー、はいチーズ♪」
カシャッ
ファン「ありがとうございます!あのっ!今日も応援してるんで頑張ってください!」
曜「ありがとう!またライブにも来てねー♪」フリフリ
千歌「……」ポカーン
鞠莉「千歌っち、口開いてるわよ?」
千歌「私達にも、ちゃんとファンがいたんだね」
梨子「こうして直接応援してもらえると嬉しいね」
曜「ますます負けられないね!」
千歌「うんっ!」
ダイヤ「さ、そろそろ中に入りましょうか」
千歌「おーい!果南ちゃーん、みんなー入るよー!」
ルビィ「あっ、ま、待ってー」アワアワ
ーーー
千歌「夏まつりとブロック予選を終えて今更ですが!夏休みと言えば!」
ようかな「海ー!」
梨子「毎日見てるのに?」
果南「はぁ……梨子ちゃん、分かってないなぁ」ポンポン
曜「夏の海は夏の海という特別なものなんだよ!」
梨子「そ、そうなの?」
花丸「オラは肝試しもしたいズラ~」
梨子「肝試し?」
花丸「夜に怖いところに行ったりするズラぁ」ズイッ
梨子「こ、怖いのは遠慮しておこうかな……」
善子「クーラーの効いた部屋で一日中ゴロゴロしてるだけでいいわ……」グデェ
ダイヤ「あまりだらけていると身体壊しますわよ?」
鞠莉「ウチのホテルでバカンス気分を味わうのはどう?♪」
千歌「いいねっ!」ビシッ
ルビィ「もぉ!みんな遊んでる暇ないよぉ!」
千歌「ルビィ先生!」
曜「そこをなんとか!」
ルビィ「ダメですっ!次の土曜日には県大会なんだよ!ブロック予選突破したからって浮かれてる場合じゃありませんっ!」フンス
善子「具体的に何すればいいのよ」グデェ
曜「あっ!合宿とか!」
千歌「合宿!なんかいい響き!」
梨子「合宿?」
果南「みんなで同じところで寝泊まりして何日も常に一緒で練習したりするの」
梨子「へぇ……ちょっと楽しそう」
ダイヤ「では、県大会本戦までに合宿ということで?」
花丸「はーい」
果南「でもどこでやる?」
善子「マリーの家でいいんじゃない?広いし」
鞠莉「それは無理ねー、パパの仕事関係者も出入りするから」
ダイヤ「私達の家も同様に無理ですわね」
ルビィ「花丸ちゃんの家は?おっきいお寺だし……」
花丸「夏休みは子供向けの学習合宿とかで開放するから難しいズラ……」
善子「ウチは近くに練習出来る所なんかないし、そもそもマンションだから9人も無理」
果南「私の家も泊まるとこないなぁ」
曜「ウチも泊まれないかなぁ……」
梨子「私のところも……」
8人「……」チラッ
千歌「えっ、と……き、聞いてみないと分かんないかなぁ……」オロオロ
果南「鞠莉んところのホテルは?」
鞠莉「練習で敷地を使うくらいならまだしも、泊りがけってのはねー……」
果南「となるとやっぱり十千万だね」
千歌「……あ、もしもし?志満ねぇ?その……来週四、五日くらい予約入ってない部屋とかない?」
曜「でも近場で合宿ってのも変な感じだね」
ダイヤ「私達ではあまり遠出するお金もありませんし」
ルビィ「や、やっぱり衣装代のせいかな……」
善子「それは必要経費だから気にしなくていいんじゃない?」
ダイヤ「ええ、それに大会直前ですから下手に環境を大きく変えて調子を乱してもいけませんし」
鞠莉「練習場所があるのに別の場所に行く必要もあんまりないしねー」
ダイヤ「ええ、時間は気にせず練習を出来るだけでも十分だと思いますわ」
千歌「……うん、分かった、ちょっと相談してみる、ありがとね、はーい」ピッ
花丸「どうだったズラ?」
千歌「流石にこの時期じゃ何日も空いてる部屋はないって、満室の時もあるから部屋を入れ替えるのも無理って」
梨子「それじゃ、合宿出来ないんじゃ……」
千歌「でも宴会場なら使えるって、朝はお客さんの朝食時に使うから早く出なきゃだし、夜も宴会後になるから結構遅くなっちゃうけど……」
果南「どうする?」
善子「まぁ、それしか合宿出来るところないんだし、やるならありがたく使わせてもらうしかないでしょ」
千歌「ただその……」
梨子「……?」
ーーー
美渡「はい、じゃあとりあえず片付けよろしく!あんまりちんたらしてたら寝る時間なくなるんだし頑張れー」ケラケラ
千歌「じゃあ、一年生は座布団を全部あっちに集めてから、食器を下げる!」
ルビまる「はいっ」
善子「何でこんなことに……」ゲンナリ
千歌「三年生は厨房からワゴン持ってきて、その後に銘々膳を下げて!」
ダイヤ「二人共、行きましょうか」
かなまり「はーい」
千歌「私達はまずゴミをまとめよう、固形燃料とか竹箸とか、残り物は厨房で処分するからそのままで!」
曜「了解であります!」
梨子「はーい」
ーーー
志満「じゃあそろそろ脱衣場の方掃除するから三人来てくれる?」
曜「私いきまーす!」
果南「じゃあ私も行ってくるよ」
ダイヤ「私も行きますわ」
千歌「はーい」
美渡「千歌ー、お父さんが厨房に二人くらい寄越せってー」
千歌「分かったー!洗い物とかくらいだと思うから梨子ちゃんと鞠莉先輩行ってきてもらえます?」
梨子「分かったわ」
鞠莉「レッツゴー♪」
千歌「私達はここを早く掃除しちゃって早く寝られるようにしなきゃね」
ルビィ「はいっ!」
善子「練習よりきつい……」
花丸「ほーら善子ちゃん頑張るズラ!」
ーーー
善子「っ……はぁぁ……露天風呂最高……」
ダイヤ「流石に一日練習して旅館のお手伝いは疲れますわね……」
果南「店と接客の仕方が違うから、変な疲れが来ちゃった」
梨子「いつもこんなことしてるの?」
千歌「いつもは繁忙期だけ近所の人がお手伝いしてくれるんだけどね、今回は私達がいるから他の人は昼間だけ」
曜「そういえば十千万でアルバイトとか見たことないね、厨房は何人もいるのに」
千歌「普段からそんな沢山泊まりに来るわけじゃないからねー、厨房の人達も掛け持ちとかしてるみたいだし」
鞠莉「色々大変なのねー」
果南「淡島にホテル建ったからじゃないの?」
鞠莉「oh……」ブクブクブク
千歌「それもあるかもしれないけど……やっぱり内浦に来る人は昔より減っちゃってるみたい」
ルビィ「でも、私達が頑張ったから去年より人は来てるって夏まつりの人達も言ってたよ!」
花丸「うんっ!ちょっとずつでも内浦に興味持ってくれる人は増えてる!」
善子「とはいえ、それもいつまで続くかでしょ、マリー達が卒業したらAqoursも終わるんだし」
ルビィ「ぁぅ……」
花丸「それもそうだけど……」
善子「あっ……」
果南「……」
千歌「そういえば……そうなんだよね……」
ダイヤ「……」
曜「……」
善子「……変なこと言ってごめんなさい……」
梨子「……私達の名前」
曜「ん?」
梨子「Aqoursの名前を決めた時の事覚えてる?」
花丸「……?」
鞠莉「ファイブマーメイド?」
梨子「そ、そっちは忘れてっ!」バシャバシャ
ルビィ「……A・Q・Ours」
果南「……?」
千歌「ぶくぶく湧き出して……絶対に割れない永久の泡……」
ダイヤ「泡……?」
梨子「一つ一つの泡はちっちゃくて誰にも気付いてもらえないかもしれないけど……それが沢山集まったら」
善子「……」
曜「……誰かが、気付いてくれる!」
ルビィ「私達、ここにいるんだよって!」
鞠莉「この先もずっと残り続ける泡……」
梨子「……もちろんラブライブで優勝したりできたら凄い事だし、きっと沢山の人にも見てもらえる……でもそれだけが私達のしたい事じゃないんじゃないかな」
ダイヤ「……」
梨子「千歌さんがスクールアイドルを始めたのは、ラブライブに勝つためでも、内浦を救うためでもないよね?」
千歌「そうだったね……最近私なんかいろんな事が思った以上に上手くいって……浮かれて迷子になってたかも」
果南「千歌……」
千歌「私……ここにいるよって……私達はここにいるんだよって……ただそれを伝えたかったんだ」
花丸「……」
千歌「町を離れた人や……まだ知らない人や……とにかくいろんな人に伝えたい!」ザバァッ
ダイヤ「……千歌さん?」
千歌「私達はここだよぉぉっ!!」
善子「いっ!?ちょっと、いきなり叫ばないでよ」
曜「でもやっぱりそのための一番の近道は?」
ルビィ「ラブライブ!」
鞠莉「出場するためにはー?♪」
花丸「大会で入賞する!」
梨子「入賞するために私達がすることは?」
千歌「明日も練習だっ!」
ガラッ
美渡「千歌!アンタこんな時間に何考えてんの!寝てるお客様もいるんだよ!」
千歌「あっ!?……ご、ごめんなさい……」ブクブクブク
ーーー
曜「柔軟終わり!このまま浦の星まで走るよー!」
善子「ぅぇ……マジで……?」
千歌「じゃあいってきまーす!」
志満「頑張ってねー♪」フリフリ
しいたけ「ワウッ」
ルビィ「ひっ!?い、いってきまーす!」ダッ
志満「あ、鞠莉ちゃん、だったかしら?」
鞠莉「はい?」
志満「みとしーのライブ、この町の為に頑張ってくれてありがとうね」
鞠莉「えっ?」
志満「ふふっ、うちもそれなりに古いから少しくらいはそういう話も耳に入るのよ」
鞠莉「そうでしたか……その節はお騒がせしてすいませんでした」ペコリ
志満「いいのよ、それにライブするためにあんなに夜遅くまで一人で交渉してるの見ちゃったら、ね♪」
鞠莉「……えっ!?」
志満「ふふっ♪千歌ちゃん達には内緒にしてあるから安心して♪それじゃ練習頑張ってね♪」
鞠莉「……」ポカーン
花丸「小原せんぱーい!置いてっちゃうよー!」
鞠莉「あっ、す、すぐ行くわー!」
ーーー
千歌「曜ちゃん、銘々膳おねがーい」
曜「了解であります!」
果南「空き瓶はこれだけ?」
善子「空き瓶まだあるー?」
梨子「ないよー」
果南「んじゃ持っていっちゃうね、よいしょ」
美渡「千歌ー、みんなもちょっと」
千歌「なにー?」
美渡「明日早く帰ってこれる?」
千歌「何かあるの?」
美渡「お客様のリクエスト」
千歌「リクエスト?」
美渡「Aqoursのステージ見たいってさ、そこで踊れる?」
千歌「えっ!?」
ルビィ「お客さんが!?」
美渡「明日ここ使うお客様の一組がね、お昼食べに戻って来たアンタ達に気付いてさ」
千歌「本当に?」
美渡「若い人もいるグループだったからねー、で、是非見たいって、一応基本的にそういうサービスはしてないとは伝えてあるけど」
梨子「どうする?」
千歌「他のみんなにも聞いてみないと……」
美渡「じゃあ寝るまでに決めといてねー」
千歌「はーい」
果南「次何か運ぶー……ってどうかした?」
曜「なになに?」
千歌「お客様が明日ここでAqoursのステージ見たいって」
曜「ここで?」
果南「やるの?」
千歌「私は……やっても良いかなぁとは思うけど」
梨子「じゃあやろっか?」
善子「まぁ、これも練習の一環と思えば別に良いけど」
千歌「後でマルちゃんと鞠莉先輩が戻ってからまた決めよう」
ーーー
志満「みんなお疲れ様ー♪凄く良かったわー♪」
美渡「お客様喜んでたよ」
千歌「良かったぁ」
花丸「いつものライブとまた違う感じでドキドキしたズラ」
果南「でも、こういうのも悪くないね」
鞠莉「ウチのホテルでも出来ないかしら」
曜「沼津や静岡以外からの人にも覚えててもらえてるのって嬉しいね」
ルビィ「うんっ!」
美渡「で、喜んでるところ悪いけど片付けはいつも通りよろしく」
千歌「だよねー」ガクッ
志満「ごめんねみんな、一応約束だから」
曜「大丈夫でありますっ!」
千歌「よーし、ちゃちゃっと片付けて温泉入っちゃお!」
善子「はーい……」
ーーー
鞠莉「はぁ……疲れたわー」
ダイヤ「これで合宿も終わりですわね」
果南「うん、明日はゆっくり休んで明後日の県大会に備えなきゃね」
千歌「じゃあ、戻って早く片付けして最後は温泉でゆっくりしよっか」
曜「はーい」
ルビィ「梨子先輩は合宿どうでした?」
梨子「楽しかった♪」
ルビィ「えへへ、ルビィも♪」
花丸「なんだか夏休み中ずっと合宿してたいね♪」
善子「流石にそれは辛いわ……」
果南「マルー、なら私が付き合ってあげよーか?」
花丸「え゛っ……それは遠慮するズラ……」
ダイヤ「いくら何でも果南さんの個人トレーニングはハード過ぎますわ」
果南「えーそうかなぁ」
曜「なかなかいい汗かけるのにねー」
ルビィ「二人は元々運動出来るからそんなこと言えるんだよぅ……」
梨子「そんなにキツイの?」
千歌「今度朝早く起きてみて、外見たら新聞配達のバイクと一緒に走ってるから」
梨子「そんな時間に走ってるの!?」
善子「アスリートかっ」
志満「あ、帰ってきたわ、おーい」
千歌「あれ?志満ねぇどーしたの?」
志満「練習お疲れ様♪はい♪」
曜「これ……花火?」
花丸「沢山ある……」
志満「頑張ったご褒美よ♪」
果南「片付けはいいんですか?」
志満「明後日大会なんでしょ?まだ夏休み始まったばかりとはいえずっと練習漬けなんだし、ちょっとくらい遊んでも罰は当たらないわ♪」
千歌「志満ねぇ……ありがとう!」
志満「ふふっ、お礼なら誰かさんに言ってあげて♪」
ルビィ「誰かさん?」
志満「わざわざ買ってきてくれたのよ」
千歌「誰か……むっ……まさかまた何か要求されるんじゃ……」ムムッ
志満「そんなこと言わないの、みんなAqoursの事応援してるんだから」
ダイヤ「本当にいいんでしょうか?」
志満「大丈夫♪ほら、浜でゆっくり楽しんでらっしゃい♪温泉も用意しておくから♪」
千歌「うんっ!じゃあみんな浜までダッシュ!」
善子「ちょっ、また走るの!?」
梨子「ありがとうございます!千歌さん待ってー!」
志満「火には気を付けてねー♪」
志満「ふふっ♪直接渡してあげれば良かったのに」
美渡「……あんまり持ち上げたら千歌はすーぐ浮かれるからねー」
志満「もう、そんなこと言ってー」
美渡「じゃ、宴会場片付けてくるねー」
志満「もう……素直じゃないんだから♪」
ーーー
善子「あー久々の家だー」バタッ
善子「今日はもう部屋から一歩も出ないわよー……」グデェ
善子「……」
善子「……ランキングだけチェックしとこ」ノソノソ
善子「んーと……457位か……」カチカチッ
善子「ルビィの言う通りなかなか上がりにくくなってるわねー」カチカチッ
善子「まぁ……着実に見てる人は増えてるみたいだけど……」カチカチッ
善子「あ、またみとしーのコメント増えてる?……ん?」
善子「……」カチッ…
善子「……っ」
善子「……」カチカチッ
善子「何よこれ……」
ーーー
千歌「おー!やっぱりブロック予選より人多い!」
ダイヤ「ラブライブ本戦までの途中とはいえ、県内のスクールアイドルの頂点を決めるわけですからね」
曜「むっちゃん達はもう中に入ってるって」
ルビィ「今回は抽選当たったんだね!」
花丸「どんな人が出場するんだろう」
善子「チェックした限りじゃ半分以上が私達よりランク高いグループよ」
曜「やっぱりなかなか大変そうだね」
果南「私達もみっちり練習したんだし、自信持ってやれば大丈夫だよ」
鞠莉「そうね、今更こんなところで怖気付くAqoursじゃないわ!」
千歌「よしっ!地区予選目指してみんな頑張ろー!」
8人「おー!」
ーーー
美渡「たっだいまー」
志満「あ、美渡おかえりー」
美渡「……千歌は?」
志満「部屋にいるわ」
美渡「やっぱ、落ち込んでる?」
志満「美渡も結果見たの?……帰ってきた時は元気そうにしてたけど……多分」
美渡「ま、スクールアイドルもそう甘くはないって事だね、千歌にもいい勉強になったんじゃない?」ガサゴソ
志満「これで辞めるなんて言い出さなきゃいいけど……」
美渡「どうだかねー、片付ける部屋とかある?」
志満「じゃあ椿と竜胆にお布団運んでくれる?」
美渡「はーい」
志満「……もう回りくどいんだから」
『勝手に食べていいぞ by美渡お姉様』
ーーー
梨子「……」ボフッ
ルビィ『……終わっ、ちゃった……の?』
梨子「……」
鞠莉『17位……』
梨子「……」ギュッ
果南『……まだ足りなかったみたいだね……』
梨子「……」
花丸『……あんなに頑張ったのに……』
梨子「……」ズキッ
善子『……清々しいくらい、ぼろ負けね……』
梨子「……」
ダイヤ『……仕方ありませんわ……』
梨子「……」
曜『……悔しい……』
梨子「……」グスッ
千歌『……やっぱりそんなに甘くないよね』
梨子「……」
コンコン
母「……梨子?」ガチャッ
梨子「……なに?」ゴシゴシ
母「……残念だったわね」
梨子「うん……他のグループの方がずっと上だった」
母「……隣座ってもいい?」
梨子「……うん」
母「……お疲れ様」ナデナデ
梨子「……」
母「今日はゆっくり休んで、また明日から頑張りましょう?」
梨子「うん……」
母「……」
梨子「……」
母「……昔ね」
梨子「……?」
母「梨子が初めてピアノのコンクールに出た時」
梨子「……うん」
母「その時は入賞も出来なくて、梨子は昔から負けず嫌いなところあるから、すっごく泣いててね」
梨子「……」
母「お母さんもお父さんもいっぱい頑張ったねって慰めたことがあるの」
梨子「うん……」
母「でも、その時にね梨子が『私、前より一番上手に弾けたよ』って泣きながらだけど誇らしげに言ったの」
梨子「……!」
母「ただ勝ち負けに拘るんじゃなくて、自分の出来ることに自信を持てる梨子が、お母さん凄く嬉しくてね」
梨子「……出来ることへの自信……」
母「それで今日のみんなの……梨子のステージをテレビで見て思ったの」
梨子「……?」
母「誰よりも楽しそうに踊るみんなは、きっとまだまだ成長出来るって」
梨子「……」
母「梨子が中学生でピアノコンクールの最優秀賞を取れたみたいに、Aqoursももっと大きくなれるって」
梨子「……」
母「時間は沢山ある訳じゃないんだろうけど、4月から始めて、ここまで来れたんだもの」
梨子「……」
母「お母さんは今からもう冬の大会が楽しみよ♪」ナデナデ
梨子「……うん」
母「まだ思い出せなくても大丈夫、悔しい思いをしてもやって来たことを誇れる強さは梨子の心がちゃんと覚えてる」
梨子「こころ……」ギュッ
母「貴女が産まれた時からずっと見てきてるお母さんにはちゃんと分かるわ」ポンポン
梨子「……うん」
母「……♪」ナデナデ
梨子「……ありがとう、お母さん」
母「ふふっ、今日は梨子の好きなものを作ってあるから、それ食べて、また明日からみんなで頑張れ♪」
梨子「……うん!」
ーーー
梨子「流石に早すぎたかな……」ガラッ
ダイヤ「あら、随分遅かったですね」クスッ
梨子「ダイヤさん……!?」
ルビィ「あっ!梨子先輩♪おはようございます♪」
梨子「ルビィちゃんも……」
果南「ただいまー」
花丸「はぁ……はぁ……あ、朝からこんなに走ってるなんて……」
曜「やっぱり朝走ると気持ちいいなぁ♪あっ、梨子ちゃんおはよー♪」
梨子「果南さんに曜さん、マルちゃんまで……」
ガラッ
善子「ふわぁぁ……って、いっぱいいるし……」
梨子「よっちゃん……」
鞠莉「さーて、どこに隠れてようかしらー♪」ジャーン
ダイヤ「隠れるとは?」
鞠莉「oh……遅かった……」
梨子「鞠莉さん……」
善子「なによ、みんな考えること一緒じゃない」
ルビィ「そうみたいだね♪」
果南「あとは千歌だけだけど……」
ダイヤ「真っ先に来てると思ってたんですけどね」
ガタッ
鞠莉「何っ!?」
花丸「ロッカーから?」
曜「……まさか」
ガチャッ
千歌「……zzz」
ルビィ「……寝てるね」
ダイヤ「もしかして私達より先に来て隠れてたと……?」
花丸「そういう事みたい……」
梨子「……千歌さん」トントン
千歌「……zzz」
梨子「千歌さん!」
千歌「っふぇあ!?」ビクッ
果南「あーあー涎垂れてるし」クスクス
千歌「はれぇ?……みんな?」ゴシゴシ
善子「練習始めるわよ」
千歌「……えっ!?みんな来ちゃったの!?」ガタッ
ダイヤ「当たり前ですわ」ヤレヤレ
千歌「えー……せっかく驚かそうと思ったのにぃ……」
鞠莉「ちょっとチープだったわねー♪」
梨子「隠れる気満々だった鞠莉さんが言います?」
鞠莉「な、何のことかしらー」
花丸「何からする?」
ダイヤ「まずは冬のラブライブに向けてこれからどうしていくか話しましょうか」
曜「ルビィ先生の出番だね!」
ルビィ「任せてくださいっ!」フンス
千歌「……」ポカーン
鞠莉「新曲を持ってきたから後で聴いてくれる?」
花丸「分かりました!」
果南「夏休み終わった後も含めて、練習プランも練り直さないとね」
善子「あんまりハードなのはやめてよ?」
果南「えー」
千歌「……みんな」
ルビィ「ほら千歌ちゃん♪」
ダイヤ「いつまで惚けてるんですか?」
果南「夏休みもまだ半分あるしね」
曜「早く始めようよ!」
花丸「やらなきゃいけない事がいっぱいあるズラ!」
鞠莉「止まるわけにはいかない、でしょ?♪」
善子「やらないなら帰るわよー?」ニヤッ
梨子「千歌さん、お願い♪」
千歌「……うん!」
千歌「じゃあ今日も……Aqoursの練習始めるよ!」
ーーー
善子「これ何インチよ……」
鞠莉「75くらいだったかしら」
花丸「マルよりおっきいズラ~……」
果南「そろそろ始まるよー」
曜「……この感じ……ポップコーンが欲しくなる!」
ダイヤ「映画じゃないんですから……」
千歌「……」ソワソワ
梨子「本当に最初から最後まで生中継なの?」
果南「そう、書いてあるけど」
善子「断言するわ、私途中で寝る」
ルビィ「みんな静かに!」
TV『ーー8月も最終週!夏の暑さに負けない盛り上がりがやって参りました!皆様お待ちかね、第七回ラブライブ!!』
千歌「始まった……!」
TV『全国を勝ち抜いた総勢40組のスクールアイドルによる頂上決戦!』
鞠莉「……」
TV『全てのスクールアイドルの頂点に立つのは一体どのグループなのかっ!』
ダイヤ「……」
TV『日本中が注目する中、アキバドームのステージにスクールアイドルが集結します!』
ルビィ「まさにそうそうたる顔ぶれだね……」
善子「いや、分かんないし……」
『前回優勝者により、優勝旗が返還されます! 』
果南「これがν-tral?」
ルビィ「はい」
梨子「……っ」ズキッ
『第一回優勝者にして、公式サポーターでもありますA‐RISE綺羅ツバサさんより、開会の挨拶です!』
鞠莉「私達も優勝すればプロアイドルになれるのかしら?」
曜「μ'sがプロになってないし無理なんじゃない?」
ルビィ「そもそもラブライブ優勝経験のあるプロアイドルはA‐RISEだけだよ」
千歌「そうなの?」
ルビィ「うん、あとテレビに出てる人はμ'sの矢澤にこさんがマルチタレントとして出てるくらいかな……」
鞠莉「そう簡単にはいかないのね」
ルビィ「もちろんプロとしてデビューするチャンスはぐっと上がるけど、それでもプロとしてやっていくのはスクールアイドルよりもずっと難しいんだと思う」
TV『ーーエントリーナンバー1!雨にも負けず風にも負けず、三度目の本戦出場!悲願の優勝なるか!岩手県花巻市立ーー』
ーーー
曜「1、2、3、4、1、2、3、4、おっけー」
果南「チェックするよー」
千歌「どれどれ~?」
ダイヤ「果南さんは少しここの振りが大きいので、もう少しコンパクトにしてもいいのでは?」
果南「あー確かに、次ちょっと気を付けるよ」
曜「あっ、ここちょっとズレてない?」
ルビィ「あっ、ルビィがちょっと早いかも……」
千歌「後でそこだけ合わせてみよっか」
ルビィ「うんっ」
花丸「……頭痛、大丈夫?」
梨子「……うん、ごめんね」ズキッ
鞠莉「あまり酷いようなら病院行ったほうが良いんじゃない?」
梨子「うん……」
善子「明日から二学期も始まるし、ライブだって控えてるんだから、無理しないでよ?」
梨子「うん……」ズキッ
ーーー
医者「あくまで痛みを和らげる為の薬だから、あまりにも酷くて動けない時に服用してくださいね」
梨子「はい……」
医者「激しい運動よりもストレッチや軽い体操を中心にしてもらったほうが改善に繋がると思いますから、焦らずゆっくり様子を見ましょう」
梨子「はい……ありがとうございました」ペコリ
梨子「……」
梨子「……これから頑張らなきゃ駄目なのに……何してるんだろ……私……」ズキッ
ーーー
梨子「……」トボトボ
梨子「……あっ」
梨子「第七回ラブライブ特集……ν-tral、二度目の優勝……」ペラッ
梨子「……約束……守れない、のかな……」ボソッ
梨子「……」ピタッ
梨子「あれ……約束……?私何言ってるんだろ……」ズキッ
梨子「だめだめ、帰って休まなきゃ……頭痛いからってネガティブになっちゃだめよ……」トボトボ
ーーー
千歌「梨子ちゃんお疲れ様っ!今日は調子良さそうで良かった♪」
梨子「うんっ!ライブ楽しみだったから、ちゃんと整えて来たよ♪」
善子「松浦先輩とマリー、歌詞間違えてなかったー?」ニヤッ
果南「げっ、バレてた……」
鞠莉「そういうのもライブの醍醐味なんだからいいじゃない♪」
ダイヤ「完璧にしろとは言いませんが、開き直るのはどうかと」ヤレヤレ
ルビィ「善子ちゃん!この間のPVは評判どう?」
善子「えっ?あー、うん、上々よ」
花丸「ランキングはどうズラ?」
善子「えっ、まぁ、ランクはイマイチかな、見てくれる人は格段に増えてるけどね」
曜「コメントは?いっぱい来てる?」
善子「コメント……うん、まぁ、いつも通り……大丈夫……ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」
曜「……?」
ルビィ「善子ちゃん……?」
ーーー
梨子「……」
ガタッガタッバンッ
梨子「……まだ入っちゃだめー?」
ダメー!
梨子「はーい……何やってるんだろう……」
鞠莉「あれ?梨子っち、ドアの前で何してるの?」
梨子「あ、鞠莉さん……それが中に入るなって言われて」
鞠莉「……ははーん、なるほどね♪」
梨子「そういえば、その大きな箱なんですか?」
鞠莉「イッツァシークレッツ♪ちょっと通してくれる?」
梨子「あ、はい」
鞠莉「はぁい♪マリーのとうちゃーーきゃぁっ!?」
梨子「ひっ!?鞠莉さんが部室に吸い込まれちゃった!?」
オソイデスワッ
ソーリーソーリー♪
ドコオイタズラー!?
ソッチニナイノ!?
梨子「……」
梨子「……まだかなぁ」
バァンッ
梨子「っ!?」ビクッ
千歌「おまたせ!」
梨子「あ、もう入ってもーー「そいやっ!」ガバッ
梨子「きゃっ!?何っ!?何被せたの!?紙袋!?見えないよっ!?」アワアワ
千歌「外しちゃダメだよ!足元気を付けてね」
梨子「気を付けるも何も見えないんだって……」
千歌「梨子ちゃん、ここ、椅子あるから座って」
梨子「い、椅子?えっと、これ?」
千歌「じゃあ紙袋取るよー」
バッ
梨子「一体何を……」
8人「ハッピーバースデー!!」
梨子「えっ……と……」キョトン
曜「18歳のお誕生日おめでとう梨子ちゃん♪」
鞠莉「19日なのはもちろん分かってるんだけど、平日じゃない?」
梨子「え、えぇ……」
ルビィ「だからちょっと早いけど今日お祝いしちゃおって、みんなで話してたの♪」
梨子「そう、なんだ……」
果南「うーん……あんまり嬉しくなかった?」
梨子「あ、いえ……そういう訳じゃなくて……」
善子「……?」
梨子「その……自分の誕生日って実感があんまりなくて……なんて言うか、今の私に取ってはまだ2回目だから……」
ダイヤ「確かにそうですわね……すみません、私達の考えが至らないばかりに」
梨子「あっ、別にお祝いしてもらって嫌だったとかじゃないんですよ?」アワアワ
千歌「じゃあ18歳のお誕生日兼、2歳のお誕生日ってことで!」
花丸「いや、それはなんだかおかしい気がする……」
梨子「……ふふっ♪」
千歌「あっ、笑われた!?一応真面目に考えてるつもりなんだよー!?」ガーン
梨子「ごめんなさい♪」クスクス
鞠莉「まぁまぁ細かい事は気にしないで♪とにかくバースデーパーティーを楽しみましょう♪」
曜「賛成ー!」
梨子「うんっ♪みんなありがとう♪」
ーーー
千歌「沖縄と言えばー?」
曜「海ー!」
梨子「また海……?」
曜「はぁ……分かってないなぁ梨子ちゃん、沖縄の海は沖縄の海という特別なものなんだよ……」ポンポン
梨子「前にも聞いたような台詞ね……」
果南「今年は沖縄なんだ、良いなぁ、私も沖縄で泳ぎたかったなぁ」
曜「果南ちゃん、思い出話で我慢してよね」ニシシ
ダイヤ「あの二人の前世は間違いなく魚ですわね」
ルビィ「あはは……」
鞠莉「しゅーがくりょこーかー」ムスッ
花丸「あ、そっか小原先輩、留学してたから……」
鞠莉「そーなのよー……自腹でついて行っちゃおうかしら」
ダイヤ「馬鹿なこと言わないでください」
鞠莉「生徒会長権限でどうにかならないのー?」
ダイヤ「なりません、そもそも私の任期はこの間終わりました」
鞠莉「まだ出入りしてるじゃなーい」
ダイヤ「引き継ぎをしてるんです!」
善子「……」
果南「どーしたの?善子ちゃん、難しい顔して」
善子「えっ?あー、私も修学旅行、あんまりいい思い出ないなーって」
花丸「なんで?」
善子「ふふっ……ヨハネがあまりにも崇高過ぎて並び立てる人がいなかったのよ!」ギランッ
鞠莉「ぼっちだったのね」
善子「ぼっち言うなぁ!」
花丸「来年は絶対オラが一緒に回ってあげるズラ!」ギュッ
ルビィ「もちろんルビィも一緒だよっ!」ギュッ
善子「そんな不憫そうな目で見ないで……」シクシク
千歌「というわけで、数日はいないからよろしくね」
梨子「新曲の準備とか諸々任せちゃってごめんね?」
曜「次のライブも近いしね!」
ーーー
善子「混沌より出でし反逆の業ーカルマー」
花丸「却下」
善子「じゃあ、魂に刻まれし獄炎の聖痕ースティグマー」
花丸「却下」
善子「えー……じゃあ偽りの楽園に囚われた者達の解放ーリベルタスー」
花丸「さっきから意味不明ズラ……」
善子「ぬぅ……作詞って難しいわね」
果南「ここでバク転、よっ!」
鞠莉「いや……無理でしょ」
果南「そう?曜は出来たと思うけど」
鞠莉「貴女達二人くらいしか出来ないわよ」
果南「えー、あっ、じゃあこういうのは?鞠莉そこに立ってて、屈んじゃダメだよ」
鞠莉「バッドフィーリングしかないわ……」
果南「いくよー!」ダッ
鞠莉「ちょっ!?」ビクッ
果南「とうっ!」タンッ
鞠莉「怖っ!」
果南「よっと、こんな感じで跳び箱みたいに……」
鞠莉「出来るわけないでしょ!」
ダイヤ「苦戦してるわね」チクチク
ルビィ「今まで千歌ちゃん達が中心になってやってたからね」チクチク
ダイヤ「なんだかんだでいないと困るわね」
ルビィ「でも最初はルビィ達もあんな感じだったし、慣れじゃないかな?」
鞠莉「アクロバティックな動きは禁止!」
花丸「罪とか悪魔とか変な言葉禁止ズラっ!」
ダイヤ「……慣れる以前の問題な気もするけど」
ルビィ「あはは……」
ーーー
梨子「……」
善子「煉獄を突き進む翼をもがれた使者ーリトルデーモンーはやがて地上で堕天使と共に新たなるエデンの礎となる……どうよ!」
花丸「りとるでーもんズラぁ……」フラフラ
梨子「マルちゃんの心が折れてる!?しっかりしてー!」アワアワ
果南「よっ!」クルンッ
曜「ほっ!」クルンッ
果南「バッチリだねっ!」
曜「流石果南ちゃんだねっ!」
鞠莉「貴女達、とりあえずそこに正座して」
ダイヤ「……いかがですか?」
千歌「……衣装だけでも進んでることを良しとしよう!」
ルビィ「もしかしたら次のライブは既存曲でなんとかするしかないね……」
千歌「果南ちゃーん!そんなの私出来ないからー!」
ミッカアレバデキルッテー!
千歌「出来ないしっ!」
ーーー
花丸「はろうぃん?」
善子「そ、ハロウィン、秋葉原でやるんだって」
ルビィ「秋葉原!?」
曜「またあの人混みの中に……」
果南「そんなに人凄いの?」
千歌「うん、なんかイベントしてるんじゃないかってくらい人がいたよ」
鞠莉「まぁ、私達が前行った時は実際イベント前日だったんだけどね」
ルビィ「ハロウィン……秋葉原……はっ!」
ダイヤ「どうかしたの?」
ルビィ「まさか!ちょっと待って!善子ちゃん、パソコン!」
善子「持ってきてないわよ」
ルビィ「今日も?もう……えっとそのイベントは……」ケンサクケンサク
梨子「……」
ルビィ「……出た、これ!?」
善子「あー、うん、それ」
鞠莉「なーに?知ってるの?」
ルビィ「これ、μ'sやA‐RISEも過去に出演したハロウィンパレードなの!」
千歌「うそっ!?」
果南「じゃあ凄いイベントってこと?」
ルビィ「うんっ、年々規模が拡大して、今では秋葉原駅周辺を始めとするかなりの広範囲で開催されるの!去年も30組以上が出演したり、周辺のお店もほとんどがパレードに合わせてハロウィン仕様だったり!」
曜「協賛の数がとんでもない……」
花丸「これも大会ズラ?」
ルビィ「ううん、これは特に投票とかもないの、ステージも道路を通行止めにしただけ」
果南「なかなか豪快なイベントだねー」
ダイヤ「私達がそれに呼ばれた……と」
ルビィ「私達の出番は最終日!これもμ'sやA‐RISEと同じ!」
善子「なんかルビィの気合い入り過ぎじゃない?」ボソッ
曜「多分μ'sとかA‐RISEと同じっていうのがそうさせてる」ボソッ
ルビィ「やるよみんな!」ガタッ
千歌「えっ!?」
鞠莉「今日のルビィちゃんは頼もしいわね♪」
ダイヤ「暴走してるだけでは……」
梨子「……っ」ズキッ
ーーー
曜「ちょっと座らせて……」ガクッ
果南「これ、夏まつりより人多くない?」
花丸「はぐれたら二度と会えなくなりそうズラ……」
ルビィ「みみみ、μ'sと同じ場所で……」ソワソワ
善子「フッフッフ、感じる……感じるわ!この混沌渦巻く都に湧き上がる闇の力が!私に……ヨハネにその翼を広げよと呼びかけている!」ギランッ
ダイヤ「なんですの、アレ……」
千歌「凄く生き生きしてるね……」
鞠莉「まぁ、今日は堂々とあんなファッション出来る状況だからねー……」
善子「さぁ!立ち上がりなさい我が使徒、リトルデーモン達よ!間も無く黄昏の聖戦の角笛が吹き鳴らされるわ!」バサァッ
花丸「もうすぐ始まるから準備しようだって」
ダイヤ「よく分かりますわね……」
花丸「何となく慣れてしまってる自分がいるズラ……」
ダイヤ「ご苦労様ですわ……」
梨子「……」
千歌「梨子ちゃん大丈夫?」
梨子「えっ?えぇ……」
千歌「なんだかずっと顔色悪いけど……」
梨子「大丈夫、出番になるまでに落ち着くと思うから……」
千歌「……」
ーーー
オーラーイ
ユックリー
オケーイ
イイヨーアゲテー
9人「お疲れ様でしたー」
千歌「いやぁ楽しかったー♪」
曜「うーん、踊るとなんかスッキリするね♪」ノビー
ダイヤ「たまにはこういったイベントも良い刺激になりますわね」
鞠莉「普段と違って一体感みたいなのがあるからね♪」
ルビィ「はぁぁ♪ルビィはとにかくμ'sやA‐RISEの立った舞台に上がれただけで満足ぅ♪」ルンルン
花丸「オラにぱそこんの知識があれば昔の動画も観れるのになぁ……気になるズラぁ……」
善子「それくらいすぐ覚えられるわよ……」
果南「内浦でもこういうイベントやれば人集まったりしないかなぁ?」
ルビィ「うーん、こういうのは東京とかの方が豪華だったりするからどうなんだろぉ……」
曜「飾り付けとかも凄いもんねー」
善子「その分、片付けが大変そうだけどね」
ダイヤ「明日にはまた通常営業に戻られるでしょうからね」
花丸「そう簡単にはいかないよねぇ……」
ミシッ…
善子「ん……?」
ギギギ…
千歌「善子ちゃんどうかしたー?」
善子「あ、いや、なんか砂みたいなのが降ってきてーー」
ギギ…バキィッ!
梨子「っ!!」ダッ
鞠莉「梨子っち!?」
果南「善子ちゃん!!」
善子「えっーー」
梨子「ーーーー!!」
ガッシャァァン!
ナンダー!?
ゲートガクズレタゾー!
花丸「……えっ……」
ルビィ「善子ちゃん!!」
ダイヤ「ルビィ、待ちなさい!」ガシッ
ルビィ「だって善子ちゃんが!!梨子先輩がっ!!」
「君達、危ないから離れて!」
果南「あのっ!私達の友達がーー千歌っ!」
「君っ!待ちなさい!」ガシッ
千歌「嘘だっ!善子ちゃん!梨子ちゃん!」ジタバタ
「誰か手貸して!女の子がいる!救急車も!」
曜「あっ……」ゾワッ
鞠莉「……離れてましょう」グイッ
ルビィ「嫌だ……やだやだやだ……」ギュッ
ダイヤ「……っ」ギュゥッ
果南「……ダイヤ、みんなのことお願い」ダッ
花丸「か、果南さん!?」
「貴女、大丈夫?立てる?」
善子「だ、大丈夫です……ちょっと擦りむいただけで」ヨロッ
「君っ、おいっ、しっかり!聞こえてる!?」
梨子「……」グッタリ
善子「リリー……?」
「呼吸確認、脈拍……大丈夫、担架!急いで!」
「気を失ってる、頭を打ってるかも、気をつけて、1、2、3!」
梨子「……」グッタリ
善子「リリー……!リリー!」
「落ち着いて、彼女はきっと大丈夫だから、貴女も念のため病院に」
善子「は、はい……」
果南「善子ちゃん!」
善子「松浦先輩!?」
果南「善子ちゃん、大丈夫?怪我は!?」
善子「私はちょっと擦りむいただけ……でも……」
果南「……梨子ちゃんは……?」
善子「先に救急車で……気を失ってて……」グスッ
「貴女お友達?」
果南「はいっ!」
「念のためにこの子を今から病院へ送りますね」
果南「私も付き添います」
「分かりました、貴女歩ける?」
善子「は、はい、大丈夫です……」
果南「……もしもし?ダイヤ?私、今から二人の病院に付き添うから……善子ちゃんはちょっと怪我してる」
善子「……」
果南「梨子ちゃんはまだ分かんない……うん、善子ちゃんの家と梨子ちゃんの家に連絡入れてくれる?うん、ありがと、みんなは先に内浦帰ってていいから、病院の場所は後で送る」
ーーー
果南「本当に申し訳ありませんっ!」
善子「ごめんなさい……っ」
母「二人共、顔を上げて、みんなのせいじゃないんだから」
善子「でもっ、私がぼんやりしてたせいで……」グスッ
果南「私がもっと早く気付いてたら梨子さんがこんな目に合わなくて済んだんです……」
母「大丈夫、大丈夫だから、ね?そんなに自分を責めないで?」
果南「はい……」
善子「……」グスッ
父「あ、いたっ、梨子は!?」
母「お父さん、梨子はまだ……でも命に別状はないそうよ」
父「っ……そうか、良かった……君達は?」
果南「梨子さんと同じ学校の松浦果南といいます」
善子「津島善子……です」グスッ
母「彼女達と一緒にいた時に事故にあったみたいで……」
父「そうか……君達は怪我は?」
果南「私は何も……」
善子「先輩が助けてくれたから……少し擦りむいたくらいで……」
父「梨子が……助けた……?」
母「そう……みたい」
父「それじゃ、梨子は……」
母「ううん、そうじゃないみたい……」
父「……そうか……それなのにあの子は全く……人の事ばっかり考えて……」
果南「あの……すみません……一体何の話ですか……?」
父「あぁ、すまないね、こちらの話ばかりして、君達梨子の事情は?」
果南「本人から記憶喪失だという話は……」
母「あまり人に話す話ではないのだけど……実はね、あの子の記憶喪失の原因はーー」
ーーー
母「梨子!」
梨子「あ……お母さん……」
母「良かった……もう、心配したんだから」ギュッ
梨子「ごめん……なさい……」
母「ここ、どこか分かる?ちゃんと覚えてる?」
梨子「うん……さっき先生から聞いたし……なんでここにいるかも分かってる」
母「良かった……」
梨子「……みんなは?」
母「内浦で梨子の事待っててくれてるわ」
梨子「……ナナは?大丈夫だった?」
母「……えっ?」
梨子「……?」
母「梨子……今なんて……?」
梨子「ん……?あれ……違う……えっと……」ズキッ
母「梨子……?」
梨子「あ……よっちゃん……善子ちゃんだ……」
母「……津島さんなら大丈夫よ」
梨子「良かった……」
母「梨子……今日が何日か分かる?」
梨子「えっ?うん、さっき教えてもらって……えっと……12月?……違う……11月……ハロウィンのイベントだったから」ズキッ
母「梨子……」
梨子「あっ、先生が今日と明日は様子を見て、明後日には退院出来るって」
母「そう……じゃあお母さんも先生とお話ししてこなきゃね」
梨子「うん、心配かけてごめんなさい……」
母「いいのよ、貴女が無事ならそれで、じゃあ無理しないでね」ナデナデ
梨子「うん」
ガラッ
梨子「……痛っ」ズキッ
梨子「……頭が……割れ、そう……っ」ギュッ
ーーー
千歌「だめなのだ!」
梨子「えっ?」
ダイヤ「病み上がりなんですから大人しくしててください」
梨子「でも……冬のラブライブもあるし……」
曜「だからだよ、練習したい気持ちも分かるけど、まだ本調子じゃないでしょ?」
梨子「でも……」
善子「じゃあヤモリの干物食べる?」スッ
梨子「……大人しく休んでます」
花丸「なんでそんなもの持ち歩いてるズラ……」
善子「私がヨハネだからよっ!」ギランッ
ルビィ「梨子先輩♪歌の練習は一緒にしようね♪」
梨子「うん、ありがとう♪」
果南「じゃあ行ってくるね、こっそりついてきたりしたらダメだよ」
梨子「果南さんじゃあるまいし、そんなことしません」
果南「ちょっとどういう意味ー!?」
鞠莉「梨子っち分かってるー♪」
果南「鞠莉まで!」
梨子「ふふっ♪」
梨子「さて……じゃあ何してよっかな……」キョロキョロ
梨子「……先に音楽室で歌の練習でもしてよっかな」
ーーー
梨子「……」
梨子「……ピアノ」スッ…
ポロンッ…
梨子「……あ……」ゾワッ
梨子「いっ……つぅ……」ズキズキッ
梨子「はぁ……はぁ……」
梨子「……」グスッ
ーーー
千歌「おーい梨子ちゃーん」
花丸「しんどくて帰っちゃったとかかな?」
曜「それなら何か言ってくれると思うけど……」
ルビィ「……?」ピクッ
鞠莉「……ん?」キョロキョロ
果南「どうしたの二人共」
ルビィ「なんか聞こえない?」
ダイヤ「……?」
千歌「……あっ」
善子「……これ、ピアノ?」
果南「誰か弾いてるのかな?」
花丸「……っ!」ダッ
ルビィ「思い出した!START:DASH!!だよっ!」ダッ
ダイヤ「ちょっと、校舎内で走らない!」
曜「何っ!?」ダッ
鞠莉「いいから!」ダッ
千歌「……!」ダッ
果南「二人共置いてくよ♪」ダッ
善子「あっ!そういうこと!?」ダッ
ダイヤ「もう!」ダッ
ーーー
ガラッ
ルビィ「はぁ……はぁ……!」
花丸「あっ……!」
果南「……!」
~♪~♪
鞠莉「嘘っ……」
善子「まさか……」
曜「すごい……」
梨子「……♪」
ダイヤ「……優しい音」
千歌「うん……分かるよ……梨子ちゃんの音だ……」
梨子「……弾けた」
パチパチパチパチ
梨子「……!?」ガタッ
千歌「梨子ちゃぁんーーうぐぇっ!?」
果南「すぐ抱きつかないの」グイッ
鞠莉「ビューティフォー♪」
ダイヤ「素晴らしい音色でしたわ」
梨子「み、みんないつから!?」
ルビィ「少し前から♪」
花丸「うぐっ……感動的な曲じゅらぁ」ズビッ
善子「えっ、泣き過ぎでしょ!?」ビクッ
梨子「……私……私ね……」ウルッ
鞠莉「梨子っち……」
梨子「ずっと弾いてなかったから……全然指が動かなくってね……本当はもう少し上手に弾けたんだけど……」ゴシゴシ
ダイヤ「……」
梨子「頭も痛くって……集中も出来なくて……人に聴かせてあげられるような出来じゃないし……」ゴシゴシ
ルビィ「……」
梨子「でもっ……でも……」グスッ
曜「梨子ちゃん……」
梨子「私……ピアノが好きなの……」ポロポロ
善子「っ……!」
梨子「私……ちゃんと覚えてた……ぐすっ……好きなこと……少しだけど……思い出せた……!」
千歌「……梨子ちゃん」ウルッ
梨子「ぐすっ……ごめんな、さい……」ゴシゴシ
千歌「もっと聴きたいな!」
梨子「……えっ?」
千歌「もっと……もっと私達に聴かせてよ!梨子ちゃんの好きな音!」
ルビィ「ルビィも聴きたい!」
鞠莉「これで作曲家マリーは引退ねー♪」
果南「元々梨子ちゃんが書いた曲が土台でしょー」
梨子「でも……まだ全然……」
ダイヤ「上手い下手は関係ありませんわ」
善子「そうね、上手い曲が聴きたいんじゃなくて、リリーの曲が聴きたいわ」
花丸「オラも……じぇんぱいのぎょく……ひぐっ……きぎだいじゅらぁ……」スビッ
曜「マルちゃん……梨子ちゃんより泣いてる……」アハハ…
梨子「……どんなに下手でも笑わないでね……」
千歌「うん、笑わないよ」
曜「そもそも上手いとか下手とか分かんないしね」
果南「私も」
ダイヤ「心のこもったものを笑う様な人はここにはいませんわ」
梨子「……ありがとう」
鞠莉「じゃあせっかくだから今日は梨子っちの伴奏で歌のレッスンしましょうか♪」
梨子「えっ!?そ、それはちょっと……!」
花丸「ずびっ……よーし、全員整列!」ゴシゴシ
善子「諦めなさい」ニヤリ
梨子「えっ……えー……もう……」
ーーー
鞠莉「お待ちかねの新曲よー♪」
果南「あれ?作曲家マリーは引退したんじゃなかったの?」
鞠莉「ノンノン♪今回はなんと梨子っちが作ったのよー♪」
花丸「いつも桜内先輩の作った曲なんじゃ……」
鞠莉「まぁね、ただ今回のは未完成だったのを梨子っちが新しく作り直したのよ」
曜「ホントに!?」
梨子「うん……まだ技術的に不安だったから打ち込みを鞠莉さんにお願いしたけど」
千歌「聴きたーい!」
鞠莉「じゃあ流すわよー」
~♪
ルビィ「わぁ……♪」
ダイヤ「とても良いと思いますわ」
梨子「なんか、恥ずかしい……」
千歌「難しいことはよく分からないけど、梨子ちゃんらしい曲だと思う!」
曜「うん!優しくて暖かい気持ちになるね!」
梨子「気に入ってもらえたなら良かった♪」
千歌「これで冬のラブライブは必勝だ!」
果南「また、そんな大口叩いて……」
花丸「作詞するの楽しみズラ~♪」
ルビィ「善子ちゃん」
善子「ん?」
ルビィ「そろそろ冬のエントリーが始まると思うけど連絡きた?」
善子「んー、まだだったと思うけど来てたらエントリーしておくわ」
ルビィ「えっ……あ、うん」
善子「……」
ーーー
善子「ただいまー……」
善子「ふぅ……」
善子「……」カチカチッ
善子「……まただ……」
善子「……」
善子「あとは私が何とかしなきゃ……」
善子「大丈夫……私はヨハネなんだから……」
善子「……」
善子「これ以上……」
善子「……嫌な思いはさせたくないのよ……」ギリッ
ーーー
ダイヤ「寒くないんですの?」
果南「ん?んーそんなに」
鞠莉「クシュンッ……これで寒くないとかなんなのよ……」
果南「海の中の方が冷えるし」
ダイヤ「どんな理屈ですか……」
鞠莉「もうウィンターよ!北海道は雪降ってるのよ?」
果南「えー、でもここ降ってないし」
ダイヤ「……もう冬なんですよね」
鞠莉「ダイヤ……?」
ダイヤ「あと3ヵ月もすれば卒業なんですね」
鞠莉「……そうね」
ダイヤ「鞠莉さんはどこを受験するんですか?」
鞠莉「しないわよ?」
果南「えっ?」
鞠莉「だってもう大学決まってるし」
ダイヤ「どういうことですの?」
鞠莉「あれ?言ってなかった?私留学中に飛び級してるから大学受験終わってるのよ?」
ダイヤ「……聞いてませんが……」
果南「じゃあ本当に浦の星を卒業するためだけに戻ってきたの?」
鞠莉「ええ、だから卒業したらまた向こうに戻るの」
ダイヤ「そう……でしたか」
鞠莉「大学卒業したらまたこっちに戻って来るつもりだけどね♪果南は?」
果南「私はそのまま店で働くよ、お父さんも怪我してからあんまり無理出来なくなっちゃったし」
鞠莉「そう……ダイヤは?」
ダイヤ「鞠莉さんと似たようなものですわ、県外に進学してから、家を継ぐために戻って来ます」
鞠莉「そっか」
果南「二人共、ちゃんと戻ってきてよねー、私待ってるから」
ダイヤ「当然ですわ」
鞠莉「意地でも帰ってくるわ」
ーーー
千歌「そういえば梨子ちゃん」
梨子「ん?」
千歌「ν-tralの二人にはもう連絡したの?」
梨子「……ううん」
曜「なんで?せっかく記憶戻ってきてるのに」
梨子「まだ断片的にしか思い出せてないし、何か失礼な事とか言っちゃったら悪いし」
千歌「それでいいの?」
梨子「うん……まだあの二人と友達だった実感もなくて……」
曜「そっか……」
梨子「だから、もう少し今のままでいようと思って」
千歌「じゃあその時は私達の事紹介してほしいな!」
曜「そだね!」
梨子「ふふっ♪もちろん!」
ーーー
ルビィ「……」
花丸「無限の選択肢が……うーん、ちょっと言葉が堅い気がする……うーん」ブツブツ
善子「……」
ルビィ「善子ちゃん」
善子「ん?」
ルビィ「何か……ルビィ達に隠してない?」
善子「は?何の話よ」
花丸「……?」
ルビィ「……じゃあ最近どうしてパソコン持ってこないの?」
善子「慣れてきたから家で作業するだけで十分だし、なんだかんだ重いしねー」
ルビィ「……本当にそれだけ?」
花丸「……ルビィちゃん?」
善子「何が言いたいの?」
ルビィ「夏のラブライブの時はわざわざ千歌ちゃんにエントリーするように言ってたのに、今回は善子ちゃんがエントリーしちゃったよね」
善子「……あれは初めてのエントリーだから花を持たせてあげただけよ、誰がエントリーしたって結局一緒なんだからいいでしょ」
ルビィ「……みんなでランクとかコメントとか見るの楽しかったのに……」
善子「……別にそれぞれアカウント用意して見ればいいでしょそんなの」
ルビィ「……だから見たよ」
善子「……っ」
花丸「あの……何の話ズラ?」
ルビィ「……今までは出来るだけみんなで見たいと思ったから、Aqoursのページは見ないようにしてたけど……善子ちゃんが全然見せてくれないから……ルビィのアカウントで見てみた……」
善子「……あっそ」
ルビィ「……なんでコメント非表示になってるの」
善子「……」
ルビィ「……ねぇ」
善子「私あれなのよねー、あれ、画面に文字流れるの嫌いなのよ、だから」
ルビィ「……そんなの見る人が自由に出来るでしょ……」
善子「……そうだっけ、それは気付かなかったわねー」
ルビィ「……」
善子「聞きたいのはそれだけ?私が管理任されてるんだから私の好きにして何か問題ある?」イラッ
花丸「あの……二人とも……」オロオロ
ルビィ「……動画編集とか出来るからって……善子ちゃんに全部任せちゃってるのは悪いと思ってるよ……」
善子「別にいいわよ、そんなの」
ルビィ「でも、だからってルビィ達にまで見せないようにする必要ないよね……」
善子「……だから私が任されてるんだから、私がどうしようと関係ないでしょ!」
ルビィ「あるよ!」
善子「っ……」
ルビィ「ルビィ達みんなでAqoursだもん!」
善子「……」
ルビィ「……だから見せてほしい……見てる人がどんな風に思ってくれてるか、知りたいから」
善子「……いやよ」
ルビィ「なんで!」
善子「なんでも」
ルビィ「いやだっ!見せて!」
善子「しつこい!」
ルビィ「なんで見せてくれないの!」
花丸「る、ルビィちゃん落ち着いて」オロオロ
善子「あんなもの見せられるわけないでしょ!」
花丸「善子……ちゃん……?」
ルビィ「……」
善子「……チッ」
ルビィ「……やっぱり」
善子「……っ!?」
ルビィ「……ルビィはね、善子ちゃんが思ってるよりずっとスクールアイドル好きなんだよ……」
善子「……」
ルビィ「だから“そういう事”があるのも知ってる……」
善子「……っ」
ルビィ「善子ちゃん……いつもぶっきらぼうだけど本当は優しいのも知ってる……」
善子「……違う」
ルビィ「だからルビィ達の事思って、コメントを隠しちゃったんだよね?」
善子「……私は」
ルビィ「でもね、善子ちゃん1人だけで背負ってほしくないな……」
善子「……」
ルビィ「ルビィ達、9人でAqoursなんだから……嬉しいことも嫌なことも9人で感じてたいから……」
善子「っ……」
ルビィ「だから、見せてほしい」
善子「……」
善子「……わかったわ」
ルビィ「善子ちゃん……!」
善子「ただし」
花丸「……?」
善子「まだ……リリーには黙ってて」
ーーー
善子「……」
ルビィ「……」ギュッ
果南「なんなのさ……これ……」
ダイヤ「……」
曜「酷い……」
千歌「……いつから?」
善子「ブロック予選の前くらいから……」
花丸「じゃあ夏休みの初めくらいからずっと……?」
善子「うん……毎日じゃないけど……」
千歌「なんで黙ってたの……」
善子「……」
千歌「ねぇ」
果南「千歌、落ち着いて」
千歌「……ごめん」
善子「……大会前だったし……消したりしてたら……すぐに飽きて止めるだろうと思って……」
ダイヤ「それで……一人で抱え込んでいたわけですね」
善子「ごめんなさい……なんとか出来ると思って……」
ルビィ「善子ちゃんが謝る事じゃないよ……」
曜「でもこのままどうするの?」
善子「打てる手は全部打ったつもりだけど……」
千歌「……」
果南「このまま隠し通すつもり?」
花丸「……」
ダイヤ「ここまで来てしまった以上、収まるまではそのつもりでーー」
ガラッ
梨子「誰かいる……の……?」
曜「えっ……」
果南「っ……!」
千歌「梨子、ちゃん……」
梨子「……みんな揃ってなにしてるの……?」
ダイヤ「……っ」
花丸「その……これは……えっと……」
梨子「それ……動画?みんなで見てたの……?」
ルビィ「これは……」
善子「……」
梨子「……なに……こ、れ……」
『ν-tralについていけなかった落ちこぼれ』
『ダブりなのによくスクドルやれるよね』
『ラブライブ出れなかったらまたダブって転校してそう』
果南「あのね、梨子ちゃん……」
善子「ごめんなさい!」
梨子「……」
善子「私がもっと早くちゃんと対処出来てたらこんなことにはならなかったの……だから……ごめんなさい……」
梨子「……」
ダイヤ「桜内さん……」
梨子「……あっ、わ、私……忘れ物取りに来たんだった……」フラフラ
ルビィ「あのね梨子先輩!」
梨子「良かった……やっぱりここにあった……」
曜「梨子ちゃん……」
梨子「……じゃあ、私、先に帰るね……」
千歌「梨子ちゃん!」
梨子「……ごめんなさい……少し、1人になりたいから……」
千歌「ぁ……」
梨子「……っ」ダッ
ーーー
千歌「……」
曜「どう、しよう……」
鞠莉「ハッキリ言って、一番最悪な状況ね……」
ルビィ「ルビィのせいだ……」ギュッ
花丸「ルビィちゃん……何を……」
ルビィ「ルビィが善子ちゃんのこと問いただしたりしなかったら……こんなことには……」
善子「アンタのせいじゃないわよ……私がもっと上手くやれてれば……」
果南「誰の責任とかじゃないでしょ、私達全員被害者なんだから」
花丸「そうだよっ!ルビィちゃんも善子ちゃんも悪くないって」
千歌「……私の、せいだ」ボソッ
鞠莉「千歌っち……?」
千歌「私が……無理に誘わなかったらよかったんだ……」
果南「千歌!」
千歌「私が梨子ちゃんのこと何にも知らないのに無理矢理誘ったりしたから……梨子ちゃんが嫌な思いしちゃったんだ……」ギリッ
バンッ
ルビィ「ひっ……!?」ビクッ
ダイヤ「貴女達、いい加減にしなさい!」
千歌「っ……」ビクッ
ダイヤ「……津島さん、運営に通報は?」
善子「……してる……アカウント凍結とか対応してくれてるけど……余計に逆恨みされる原因になって……」
ダイヤ「少なくとも見捨てられてる訳ではないのですね」
善子「そう、かもしれないけど……」
ダイヤ「けど、けど、けど、とネガティブになるのはやめてください」
善子「そんなこと言われたって!」
ダイヤ「私達が沈んでいていれば、桜内さんは誰を頼ればいいか、分からなくなってしまいますわ!」
鞠莉「ダイヤ……」
ダイヤ「確かに私達に事を解決する力なんて無いかもしれません、ですが……せめて桜内さんを受け止めてあげることは出来るでしょう?」
曜「……」
ダイヤ「千歌さん」
千歌「……」
ダイヤ「桜内さんを誘った自分のせいだと言うのなら、その責任、最後まで背負ってください」
千歌「せき、にん……」
ダイヤ「全く……普段はヘラヘラとおバカなくせに、無理に悩んでどうするんですか」
千歌「お、おバカ!?」
ダイヤ「ええ、おバカですわ、だからクヨクヨ悩まずにいつも通り根拠もなく前向きにいて下さい」
鞠莉「褒めてるのか、貶してるのかハッキリしなさいよ……」
ダイヤ「桜内さんがどうにもならなくなった時、この部室は……私達がいる場所だけは、彼女の居場所として守ってあげるのが友達というものでしょう?」
千歌「……居場所」
果南「……そうだね」
曜「わかった!私もおバカだから悩まない!」
善子「なによそれ……」
花丸「マル達が桜内先輩を支えてあげなきゃ」
善子「……もう少し出来ることないか粘ってみる」
ルビィ「ルビィも!」
千歌「うん……うんっ!……一番苦しいのは梨子ちゃんなんだもんね!」
ダイヤ「そうですわ」
千歌「だから私が……私達が居場所になってあげなきゃ!」
ーーー
むつ「ねぇ、ちょっと」
千歌「どうしたの?」
むつ「……桜内さんと喧嘩でもしたの?」
千歌「えっ?」
いつき「桜内さん、最近授業終わったらすぐ帰ってるみたいだから……」
よしみ「なんかあったの?」
曜「そういうわけじゃないけど……」
むつ「……?」
いつき「私達にも何か出来ることない?」
千歌「ありがとう、でも今は待っててあげることしか出来ないから」
よしみ「……」
曜「でも、きっとまた元のAqoursに戻れるから、だからみんなも待っててくれないかな」
いつき「……」
むつ「……わかった、二人がそういうなら」
よしみ「うんっ!」
いつき「またライブする時は手伝うからね」
千歌「ありがとう!」
ーーー
ルビィ「善子ちゃん、これ」
善子「……不味いわね」
鞠莉「どうかしたの?」
善子「とうとうν-tralにまで飛び火しちゃってる」
果南「えっ」
ルビィ「ν-tralは元々人気も凄いから動画も画面いっぱいにコメントが出ちゃって見えなくなるって理由でコメント非表示を推奨してるんだけど……」
花丸「とんでもない理由ズラ……」
ルビィ「そこに多分私達の動画にコメントしたのと同じ人がコメントしてたらしくって……それに気付いた人達もいたみたいで」
果南「どこまでも酷い奴だね……」
ルビィ「それで昨日ν-tralのページに二人からのコメントが出てたの」
ダイヤ「……現在、一部の方よりご指摘を受けている件について……」
鞠莉「プライバシーに関わる事であるため、詳しい内容については伏せさせていただきますが……一部事実とは全く異なる内容であり、ご指摘いただいたようなトラブルは一切なく、現在に至るまで良好な関係であると認識しております……」
ダイヤ「……また今回の件につきまして、私共は一個人を狙った悪質な誹謗中傷であると判断し、このような行為が行われている事に対し、深く遺憾の意を表明します……国立音ノ木坂学院アイドル研究部所属……ν-tral、高坂雪穂、絢瀬亜里沙、及びアイドル研究部部員一同……」
果南「大事になってきちゃったね……」
善子「流石にランキング1位のグループまで巻き込まれたとなるとね……」
ダイヤ「ですが、ここまで大っぴらになれば運営も表立って動きやすくなるのでは?」
鞠莉「確かにね、それがどう転ぶかは分からないけど……」
ルビィ「……梨子先輩」
ーーー
花丸「……」グスッ
善子「……」
ガラッ
ルビィ「あっ……千歌ちゃん……」
千歌「おはよう、どうしたの?」
果南「ダイヤ……」
ダイヤ「私達が来た時に書き置きが……ご迷惑おかけしました、退部します……とだけ」
曜「そんなっ……」
千歌「……退、部」
鞠莉「……」
果南「千歌……」
曜「なんで……梨子ちゃん……」
千歌「……梨子ちゃんの家に行こう」
ダイヤ「……全員で行っては家の方にご迷惑ですわ」
千歌「私だけで行ってくる」
善子「私も行くっ!」ガタッ
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「私があんなの見せちゃったせいなんだから!」
ダイヤ「ですから、そういう話は……」
善子「分かってるわよ!分かってるけど……やっぱりちゃんと謝りたいの!」
鞠莉「……なら、ヨハネちゃんと千歌っちで行ってきて、私達はここで待ってるから」
花丸「……」グスッ
千歌「分かった、善子ちゃん行こう」
善子「絶対リリーを連れ戻してくるから!」
果南「……これからどうするの?」
ダイヤ「……どうもこうもありませんわ、届けが受理されていればそれまで」
ルビィ「お姉ちゃん……!」
ダイヤ「桜内さんの意志を私達の勝手で覆すわけにはいきませんわ……」
鞠莉「ダイヤ……バカ真面目なのはいいけど、あんまり融通利かないなら……」ギリッ
ダイヤ「一個人の私が何の融通を利かせろと?」
鞠莉「じゃあ何!?このまま黙って梨子っちを見捨てろって言うの!?」バンッ
花丸「っ……」ビクッ
ダイヤ「誰もそんなこと言ってません!」
曜「やめてよ二人とも!」
果南「マルとルビィが怖がってる」
鞠莉「っ……ごめんなさい」
ダイヤ「すみません……」
果南「……とにかく千歌と善子ちゃんが連れ戻して来るまで待ってよう」
ーーー
ピンポーン
母「はーい」
ガチャッ
母「あら……貴女達……」
千歌「朝から突然すみません!あのっ、梨子ちゃんに会わせて下さい!」
善子「どうしても話がしたいんです!」
母「……ごめんなさい」
千歌「っ……お願いですっ!少しだけでいいんです」
母「そうじゃなくて……今いないのよ」
善子「えっ……」
母「朝早くにね……出かけちゃったみたいで」
千歌「どこにですか!?」
母「……お父さんに会ってくるって書き置きがあって……」
善子「お父……さん……?」
母「今、主人が……梨子のお父さんが1人で暮らしてる家……私達が元々住んでた家に行ってるみたい」
善子「元々って……東京……」
母「ええ、だからごめんなさい……」
千歌「そう……ですか……」
善子「突然すみませんでした……」
母「力になれなくてごめんなさいね……」
千歌「あのっ!」
母「……?」
千歌「梨子ちゃんが帰ってきたら……私達ずっと待ってるからって伝えてあげてください!お願いします!」
母「……ええ……ありがとう、必ず伝えておくわ」
ーーー
梨子「……」
父「はい、梨子」コトッ
梨子「ありがとう……」
父「それにしても、突然でびっくりしたよ、連絡くれれば良かったのに」
梨子「ごめんなさい……」
父「いや、構わないんだがね、休日は庭の手入れくらいしかすることもないから」
梨子「……いつもしてるの?」
父「ああ、放っておいたら母さんに怒られるからな」
梨子「お母さん……いつも綺麗にしてたもんね」
父「……お母さんの言ってた通り、少しずつ戻ってきているんだね」
梨子「……うん、本当に少しずつだけど……」
父「良かった、本当に」
梨子「……うん」
父「……この間の怪我は大丈夫かい?」
梨子「え?あ、うん、それは大したことなかったから」
父「そうか……あの時と全く一緒だから驚いたよ」
梨子「……」
父「本当に……人の事ばかり心配して……」
梨子「……そう、だね」
父「あぁそうだ、今更だが、今日はどうしたんだ?」
梨子「……特に用があったわけじゃないんだけど……なんかお父さんに会いたくなって……」
父「……」
梨子「……」
父「そういうところも変わらないな」
梨子「……えっ?」
父「何かあるとすぐ父さんの側に来るくせに、何もないなんて誤魔化すところがね、昔から変わらない」
梨子「そう……なんだ……」
父「心の目でよく見なければものごとはよく見えない」
梨子「えっ?」
父「父さんが梨子にいつも言ってた言葉だよ」
梨子「……心の目……」
父「何に悩んでるのかは父さんには分からないし、そもそも年頃の女の子の悩みなんて、父さんがアドバイスしてあげられることはないけどね」
梨子「……」
父「いつだって答えは梨子の心にちゃんとあるはずだよ」
梨子「……私の……中に……」
父「ああ、梨子は多感な時期だ、色んな事を見て、色んな事を考えて、色んな事に迷うだろうけど、そんな時はじっと心を見つめて、心で見つめなさい、そうすれば自ずと答えは見つかるはずだ」
梨子「……こころを……」
父「さて、梨子、せっかくだからお昼でも食べていきなさい」
梨子「えっ?あ、わかった……」
父「母さんや梨子みたいに上手じゃないけどね、それなりに食べられるものは作れるようになったから」
梨子「……なんか不安になる言い方だね」クスッ
ーーー
梨子「……じゃあ私、そろそろ行くね」
父「帰るのか?」
梨子「うん、でもその前に行かなきゃいけない場所があるのを思い出せた……」
父「……そうか、気をつけてな」
梨子「うん、ありがとうお父さん」
父「父として当然のことをしただけだ」
梨子「うん」
父「梨子、父さんはいつだって梨子の味方で、梨子のファンだからな」
梨子「ふふっ……ありがとう」
父「梨子、心の目でよく見なければものごとはよく見えない」
梨子「……肝心なことはいつも目で見えないんだ、だよね」
父「……!」
梨子「お父さんと話してたらまた少しだけ思い出せた」
父「……そうか」
梨子「本当にありがとう、また来るから」
父「ああ、いつでもおいで」
梨子「それじゃ」
父「梨子」
梨子「ん?」
父「いってらっしゃい」
梨子「……うん!行ってきます!」
父「全く、変わらないようでちゃんと成長してるんだな……」
父「……ただ、反抗期が来てないような気がするんだが……うむ……」
ーー
梨子「……」キョロキョロ
梨子「多分……この辺りなんだと思うけど……」キョロキョロ
梨子「うーん……」
ワンッ
梨子「ん?」
?「えっ……」
梨子「あっ……」
ワンワンッ
梨子「ナナ……」
ナナ「梨子……なんで……」
ーーー
ナナ「……」
梨子「……あの、いきなり来て、ごめん……」
ナナ「ううん、梨子が転校しちゃって……もう会えないかと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃった」
梨子「……」
ナナ「でも、記憶が無くなったって聞いてたのに……」
梨子「少しずつだけど……戻ってきてるの」
ナナ「えっ……」
梨子「小さい頃のこととか……ナナ達と過ごした時のこととか……事故のこととか……」
ナナ「そっか……良かったね」
梨子「うん」
ナナ「……」
梨子「……」
ナナ「あの時は……本当にありがとう」
梨子「……」
ナナ「それから……ごめんなさい」
梨子「ううん……ナナは悪くないよ」
ナナ「でも……梨子は私を庇ったせいで車に撥ねられて……」
梨子「もう過ぎた事だし、見ての通り今も元気にやってるから」
ナナ「梨子……」
梨子「……ねぇナナ」
ナナ「ん?」
梨子「一つ聞いていいかな?」
ナナ「何?」
梨子「どうしてスクールアイドル辞めちゃったの?」
ナナ「……あんな事があったのに……続けてられないよ」
梨子「……」
ナナ「私が逃げ遅れたせいで梨子が入院して……記憶まで無くなって……それなのに私だけ続けるなんて出来ないよ……」
梨子「雪穂や亜里沙は?穂乃果先輩達は?」
ナナ「みんな引き留めてくれたよ……私だって最初は梨子のことを待ってようって思ってた……でもやっぱり続けられなかった」
梨子「……」
ナナ「雪穂も亜里沙も、他のみんなも今でも仲良くしてくれてるよ?……でもやっぱり自分のこと責める気持ちだけは無くならないから……結局スクールアイドルそのものから離れないと耐えられなかった……」
梨子「……」
ナナ「……ごめんね、せっかく梨子も記憶が戻ってきて良くなってるのに……こんな話して……」
梨子「……」
ナナ「……」
梨子「ナナ」
ナナ「……?」
梨子「ナナに見てほしいものがあるの」
ナナ「見てほしいもの……?」
梨子「えっと……これ」
『今日はみとしースペシャルライブに来てくれてありがとうございます!』
ナナ「これ、は……スクールアイドル……」
梨子「今、私のいる学校のスクールアイドル……Aqoursって言うの」
ナナ「……どうしてこんなのを」
梨子「いいから見てて」
ナナ「……」
梨子「……」
『実はみんなにお知らせがあります!』
『Aqoursに新しいメンバーが加わりました!国木田花丸ちゃんと!』
『桜内梨子ちゃんです!』
ナナ「えっ……」
梨子「……」
ナナ「嘘……」
梨子「不思議だよね……」
ナナ「……」
梨子「何にも覚えてないのに……何にも知らないのに……私、懲りずにまたスクールアイドル始めちゃったの」クスクス
ナナ「梨子……」
梨子「伝えに来るのが遅くなってごめんね……ナナや雪穂達とは一緒じゃなくなっちゃったけど……私は今もちゃんとスクールアイドルだよ」
ナナ「……っ」
梨子「だからもう自分を責めないで」
ナナ「り、こ……」グスッ
梨子「……私のせいで辛い思いさせてごめんね」
ナナ「梨子のせいじゃない!私……私が……うぅっ……」
梨子「ナナ……」ギュッ
ナナ「うわぁぁぁん!」ギュウッ
ーーー
ナナ「……はぁ……」ズビッ
梨子「落ち着いた?」
ナナ「……久しぶりに会えたのに……みっともないところ見せてごめん……」
梨子「そんなの気にしないよ」クスクス
ナナ「ありがと……少し楽になれた気がする……」
梨子「良かった♪」
ナナ「梨子は今、楽しい?」
梨子「えっ?」
ナナ「この新しいグループのみんなといて、楽しく過ごせてる?」
梨子「うん、どうして?」
ナナ「苛められてない?」
梨子「苛められてません」
ナナ「なら良かった」
梨子「なにそれ、もう」
ナナ「雪穂と亜里沙には言ったの?」
梨子「うーん……言ったというか……まだ記憶が戻ってない頃に一度会ってるの」
ナナ「そうなの?」
梨子「うん、まぁそれからまだ会えてないけど……」
ナナ「……」
梨子「……」
ナナ「会いたい?」
梨子「えっ?」
ナナ「今日のこの時間だと……もう少ししたら男坂で練習始まるんじゃないかな」
梨子「……」
ナナ「離れたって言っても同じクラスだし、雪穂と亜里沙とは中学から一緒だしね、どこで練習してるかくらいは分かるよ」
梨子「……」
ナナ「きっと雪穂も亜里沙も喜んでくれるよ」
梨子「……うん」
ナナ「……」
梨子「……」
ナナ「はぁ……考えてる暇があったらとりあえず動く!」
梨子「えっ?」
ナナ「凛先輩がいつも言ってたでしょ」
梨子「そう……だっけ」
ナナ「うん、だから行ってきなよ」
梨子「……わかった」
ナナ「……今日は本当にありがとうね」
梨子「ねぇ、ナナ……またみんなで会えるかな?」
ナナ「うーん、どうかな、私達はもう卒業だから」
梨子「そう……だよね」
ナナ「でも、大丈夫、今日会えたから」
梨子「……うんっ」
ーーー
「じゃあ、まず一年生から」
「はーい」
「いくよー……スタート!」
タッタッタッタッ
「しっかり足上げてー」
タッタッタッタッ
「……」
タッタッタッタッ
「はい、お疲れー、タイムは?」
「うん、ちょっとずつ短くなってるよ」
「だいぶ体力付いてきたね、じゃあ次ー」
「はーい」
梨子「……」
ーーー
亜里沙「お疲れ様、じゃあ10分休憩してから基礎ステップの練習ねー」
「はーい」
雪穂「亜里沙ー」
亜里沙「なに?」
雪穂「ブロック予選の曲なんだけどね」
亜里沙「うん……ん?」
雪穂「どうかした?」
亜里沙「……!」ダッ
雪穂「亜里沙?」
亜里沙「梨子かもしれない!」
雪穂「えっ!?ちょっと!ごめん!ちょっと後任せる!」
「えっ?分かりましたー……?」
ーーー
亜里沙「梨子!梨子ー!いるの!?」
雪穂「亜里沙、本当に梨子なの?」
亜里沙「忘れるわけないよ!あれは梨子だよっ!」
雪穂「亜里沙……」
亜里沙「梨子ー!」
雪穂「……」キョロキョロ
亜里沙「梨子ー!」
雪穂「あっ!亜里沙!あれ!」
亜里沙「あっ!やっぱり梨子だ!梨子ー!」
梨子「……」スタスタ
亜里沙「おーい!会いに来てくれたんだよね!」
梨子「……」スタスタ
雪穂「……亜里沙、ちょっと待って」
亜里沙「っ……なんで……止まってくれないの……梨子」
梨子「……」スタスタ
雪穂「……」
亜里沙「……どうしてこっち見てくれないの……」
雪穂「……亜里沙」
亜里沙「……なに?」
雪穂「私に合わせて」
亜里沙「えっ?」
雪穂「すぅ……音ノ木坂学院アイドル研究部!高坂雪穂っ!」
梨子「……」ビクッ
亜里沙「っ……同じくアイドル研究部!絢瀬亜里沙っ!」
雪穂「私達は!ν-tralとしてー!絶っ対決勝に行くからー!」
亜里沙「アキバドームで待ってるからー!」
梨子「……」
雪穂「はぁ……はぁ……」
亜里沙「……はぁ……梨子……」
梨子「……っ」
雪穂「……戻ろ」
亜里沙「でも……」
梨子「……」
梨子「……浦の星女学院!スクールアイドル部!桜内梨子っ!」
雪穂「……っ」ビクッ
亜里沙「梨子……!」
梨子「今度は……今度は必ず決勝に行くから!」
雪穂「……」
亜里沙「……」
梨子「形は違っても!約束を守るために!絶対!」
雪穂「……!」
亜里沙「それって……!」
梨子「……っ」ダッ
雪穂「……」
亜里沙「ねぇ、雪穂……」
雪穂「……思い出せたんだ……梨子……」
ーーー
梨子「はっ……はっ……はっ……」
梨子「帰らなきゃ……っ」
梨子「謝らなきゃ……っ」
梨子「みんなに……っ」
ーーー
ガシャンッ
梨子「……はぁ……はぁ……」
梨子「……門……開いてない……」
梨子「はぁ……はぁ……そうよね……もうこんな時間なんだし……」
梨子「……何か挟まってる……紙?」
梨子「……」スッ
梨子「……っ!」ダッ
『初めて会った場所で待ってます 千歌』
ーーー
梨子「……っ!」
梨子「……いたっ!」ザッ
梨子「はぁ……はぁ……はぁ……」
千歌「……」
ルビィ「梨子先輩……」
花丸「……」
鞠莉「ほんとに来たわね」
ダイヤ「……」
曜「梨子ちゃん……」
善子「り、リリー……」
果南「善子ちゃん待って」
梨子「……っ」グッ
梨子「ごめんなさいっ!」
千歌「……」
梨子「練習行かなくなったり……勝手にいなくなって……自分勝手でした!」
ルビィ「そんなこと……」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「っ……」
梨子「どうすればいいか分からなくて……みんなに迷惑かけたくなくて……」
花丸「……」
梨子「でも……お父さんに会って……ナナや雪穂達と会って……気付いたの……」
善子「……」
梨子「私……心の底からスクールアイドルが好きだって!だから記憶がなくたって、またここでスクールアイドルを始めたんだって!」
果南「梨子ちゃん……」
梨子「だからっ!だから自分勝手で滅茶苦茶で!迷惑もいっぱいかけちゃうけど!またスクールアイドル部に入れてくださいっ!!」
鞠莉「……何を馬鹿なこと言ってるの」
梨子「っ……分かってます……馬鹿で最低な事を言ってるのは……でもっ……たとえ一緒に踊れなくても……同じ部員としてーー」
千歌「梨子ちゃん、なんか勘違いしてないかな」
梨子「……えっ」
千歌「スクールアイドル部を辞めた人なんていないよ」スッ
梨子「これ……私の書いた退部届……なんで……」
ダイヤ「全く、私が回収してなければ本当に受理されてましたわよ」
果南「ダイヤが先生に掛け合って保留にしてもらったの
梨子「……どう、して……」
千歌「信じてたから」
梨子「……っ」
千歌「梨子ちゃんなら絶対戻ってくるって信じてたから」
曜「負けず嫌いな梨子ちゃんがこんなところで逃げ出したりしないって」
花丸「それでもヒヤヒヤしたズラ……」
千歌「だから、おかえり、梨子ちゃん」
梨子「っ……うん……うんっ……ただいまっ……」グスッ
ーーー
善子「……ほんとにいいの?」
梨子「うん」
ルビィ「今ならまだ止められるよ?」
梨子「これは、私なりのけじめだから」
善子「……わかったわ、じゃあ撮るわよ」
ーーー
ナナ「雪穂、亜里沙」
雪穂「どうしたの?」
ナナ「ちょっと相談と報告」
亜里沙「ん?」
ナナ「とりあえずこれ見て」
雪穂「なに?」
梨子『動画をご覧の皆様、初めまして、浦の星女学院スクールアイドル部、2年の桜内梨子です』
亜里沙「梨子!?」
梨子『まずこの度、私の事について、運営やスクールアイドル、応援してくださるファンの皆様にご迷惑をおかけしたことについてお詫び申し上げます』
雪穂「梨子が悪いわけじゃないのに……」
ナナ「私も一連のことは調べた……酷いよね……」
梨子『この件については、私に詳しい事情を説明する責任があると思い、このような形で皆様にお伝えすることにいたしました』
亜里沙「……」
梨子『まず、私がかつて音ノ木坂学院の生徒であったこと、本来なら3年生であることについては、紛れもない事実です』
ナナ「……」
梨子『ただ、私が今の状態になった理由については、一部で囁かれているような事は無く、二年前の12月……私がまだ音ノ木坂の一年生だった時、交通事故にあったからです』
雪穂「……」
梨子『交通事故により、私は全生活史健忘、いわゆる記憶喪失に陥りました、怪我と記憶喪失によるリハビリを余儀なくされ、一年の休学、そして家族が私の精神的負担を考慮しーー』
ーーー
ガラッ
善子「さぁ、リトルデーモンのみんな!」バァン
花丸「どうかしたズラ?」
ルビィ「マルちゃん、普通に返事しちゃうんだ……」
善子「とんでもない事になったわよー」
果南「またー?」
梨子「私の動画……やっぱり荒れちゃったりしてるの?」
善子「ええ、そりゃもう大荒れに大荒れ、大波乱に大混乱よ!」ギランッ
ダイヤ「意味が分かりませんわ」
善子「じゃーん!なんとランキングが46位よー!」バッ
ルビィ「え?」
梨子「ん?」
鞠莉「……ワッツ!?」ガタッ
千歌「46!?」ガタッ
ルビィ「えぇぇ!?460の間違いじゃないの!?」アワアワ
曜「一気に50位以内まで上がっちゃったの!?」ガタッ
花丸「またとんでもない事になったズラぁ!?」ガーン
善子「まぁスクールアイドルとしてどうかとは思うけど
、リリーの動画を見た人から、感動したとか色々コメントくれててね」
梨子「そんな……」
善子「これまでアップした動画も鰻登り!獲得ポイントも桁が上がる快進撃よ!」
果南「善子ちゃんのテンションまでおかしい……」
ダイヤ「まぁここまで上位に来てしまったわけですから、4月からずっとやってきた鞠莉さん達にしてみれば、盛り上がるのも当然でしょう」
千歌「梨子ちゃん、絶対ラブライブ出よう!」
梨子「うんっ!」
ーーー
鞠莉「クシュンッ……寒い……」
曜「今日は一段と寒いねー……」ブルッ
千歌「雪降るかな!」
ダイヤ「降水確率は0ですわ」
千歌「がーん……」
花丸「こんなに寒いのに人はいっぱいいるズラ」
曜「そういえば梨子ちゃん達は?」
ダイヤ「……あちらでファンにもみくちゃにされてますわ」
千歌「凄い人だかり……」
曜「あ、出てきた」
善子「さ、流石にこんなにたくさんのリトルデーモン相手にしてたら、魔力がいくらあっても足りないわ……」ボロッ
果南「大丈夫、ルビィ?」
ルビィ「ひぃぃ……」フラフラ
梨子「と、とりあえず中に入りましょう……」ヨロヨロ
鞠莉「まだブロック予選なのにとんでもない盛り上がりねー」
ダイヤ「まぁ私達、県内1位になってしまいましたからね……」
ーーー
『スクールアイドル部、Aqours、ブロック予選突破!』
ルビィ「これは……恥ずかしい……」
花丸「おっきい垂れ幕ズラぁ……」
善子「まだブロック予選突破しただけなのに……」
花丸「でもみんな応援してくれてるんだよね」
善子「まぁ、そうなんだろうけど……」
キャーキャー
ルビィ「すごい窓から手を振られてる……帰りたい……」フリフリ
ーーー
千歌「あーあ……地区予選行けたら冬休みの宿題免除とかしてもらえないかなぁ」ベチャァ
ダイヤ「何を馬鹿なことを言ってるんですか……」ヤレヤレ
鞠莉「ーー!ーー!」
善子「さっきからマリーは何怒ってるの?」
果南「私達、かなり有名になってきたでしょ?だから鞠莉のお父さんがAqoursをホテルのCMに出したいんだって」
善子「なんというか商魂たくましいお父さんね……」
梨子「なんというか……私のせいでごめんなさい」ガクッ
曜「もぉ、前向きに行こうヨーソロー!」ビシッ
花丸「ヨーソローの使い方おかしい気が……」
曜「気にしない!」
鞠莉「もう、勝手なんだから!」プンプン
ダイヤ「終わりましたか?」
鞠莉「CMがダメならパンフはどうかだって!何なのよもう!」
ルビィ「あはは……」
善子「随分食い下がるのね……」
千歌「じゃあそろそろ練習始めよっか」
曜「おっけー♪」
鞠莉「待たせちゃってごめんなさいね」
ーーー
志満「千歌ちゃんおめでとう♪」
千歌「うんっ!ありがとう志満ねぇ!」
美渡「ほれ」ドサッ
千歌「えっ?何この大量のみかん……しかも高いやつ!」
美渡「お姉様は約束を守る人だからねー」ニシシ
千歌「約束?」
美渡「忘れてんのかっ、じゃあ没収ー」
千歌「えぇぇ!?」
志満「もう美渡、意地悪しないの」
美渡「冗談だってば、何かの大会で入賞で出来たらなんかあげるって言ってたでしょ」
千歌「えっ!あれ本気だったの!?」
美渡「アンタねぇ……せっかく県大会優勝したアンタの為に買ってきてあげたのに」
千歌「美渡ねぇ……ありがとう!」
美渡「そうそう、素直に感謝してればよろしい」
志満「ふふっ♪Aqoursのみんなにも分けてあげてね♪」
千歌「わかった♪」
ーーー
果南「うわ……なにこれ」
ルビィ「すごい料理いっぱい……」
鞠莉「クリスマスパーティーするならってパパが県大会優勝のお祝いも兼ねてくれて……」ガクッ
善子「絶対食べきれないでしょ……」
千歌「こんなにおっきいケーキ初めて見たよ!?」
曜「あ、後でお金請求されたりしないよねっ!?」
鞠莉「それは大丈夫」
ダイヤ「これでは、どこぞの企業の祝賀会ではないですか……」
梨子「見たことない料理ばっかり……」
千歌「せっかくだし他の子も呼ぶ?」
花丸「いきなり呼んで来れるかなぁ?」
鞠莉「ダメ元で呼んでみましょうか」
曜「はーい」
ルビィ「誰か来てくれるかなぁ」
善子「刺身とかあるわね……」
果南「誰か来るにしても、待ってたら傷んじゃうから先に食べよっか」
梨子「そうね」
ーーー
千歌「遂に来たね」
曜「名古屋も人多いなぁ……」
鞠莉「ラブライブ本戦への出場を決める大事な大会だからねー」
ルビィ「東海4県の猛者達がここに集まってくるんだぁ♪」キラキラ
善子「いや、私達もその内の1組なんだけど……」
果南「勝ち目は?」
ダイヤ「出場グループのランキングですと3番目でしたわ」
梨子「ランキングだけ見れば可能性は大いにあるってことかな」
ルビィ「ダメだよ!その慢心が失敗に繋がるんだからっ!」フンス
花丸「そうだねルビィちゃん!」グッ
果南「全力でやらなきゃ足元すくわれるもんね」
ルビィ「そうです!今、私達よりランクが下でも本戦出場経験のあるグループも沢山います!何が起きるか分かりませんよっ!」
千歌「3番目にランクが高いなら出場決まったも同然だねっ!」
善子「ルビィの話聞いてた……?」
曜「とはいえ、あんまり気負い過ぎてもダメだよ」
梨子「そうだよね、いつも通り楽しいライブにしなきゃ」
ダイヤ「今年最後のライブですものね」
千歌「それが言いたかった!」ビシッ
鞠莉「全然違うじゃない……」
ーーー
MC『ーー皆様大変長らくお待たせいたしました』
曜「……」
MC『……この場に集まった20組の内……』
鞠莉「……」
MC『一体どのグループが本戦への切符を手に入れるのか!』
花丸「……」
MC『東海エリア地区予選!予選突破グループ上位3組の発表です!』
ルビィ「……お願いっ」
ドゥルルルル…
MC『……エントリーナンバー3!岐阜県立束濃フロンティア高等学校ーー!』
果南「……あと2枠……」
ドゥルルルル…
MC『……エントリーナンバー7!愛知県名古屋市立光陽高等学校ーー!』
善子「……っ」
ダイヤ「……」ゴクリ
ドゥルルルル…
MC『……エントリーナンバー12!静岡県私立浦の星女学院、スクールアイドル部ーーAqours!』
梨子「えっ……」
MC『以上がラブライブ本戦への出場を決めた3組ですっ!そして、素晴らしいライブを見せてくれた全ての出場グループに盛大な拍手を!』
千歌「……」ポカーン
曜「っ……千歌ちゃん!」ダキッ
果南「本戦……出場……!」
ルビィ「夢のラブライブに……」
鞠莉「出れる……!」
花丸「やったズラぁ!」
ダイヤ「やりましたわね!」
梨子「……っ」グスッ
善子「まだ泣くには早いでしょ」
梨子「……うんっ」ゴシゴシ
果南「ラブライブに……アキバドームに行けるんだ!」
ルビィ「ずっと憧れてたあの場所で歌える!」
千歌「……嘘、じゃないよね!?」
ダイヤ「そんな訳ないでしょう」
千歌「私達……ほんとにラブライブに行けるんだ……!」
ーーー
ゴーン…
花丸「みんな、あけましておめでとうございます」ペコリ
ルビィ「おめでとうございます♪」ペコリ
ダイヤ「おめでとうございます」ペコリ
千歌「おめでとう♪ダイヤさん、ルビィちゃん、マルちゃん♪」
曜「みんな、あけましておめでとう!」
ゴーン…
梨子「おめでとう……3人のその格好は……?」
花丸「これ?巫女さんズラ、本当は寺だから巫女っていうのも変なんだけど……」アハハ…
ルビィ「でも可愛いよね♪」
ダイヤ「私はあまり気が進まないのですが……ご住職の意向でしたので……」
千歌「あはは……」
花丸「しかも、巫女さんの方が受けが良さそうだから、って理由なんだよね……」ガクッ
梨子「……??」
曜「……あっ!梨子ちゃん、ここマルちゃんの家」
梨子「えっ!?」
花丸「あっ、そういえば桜内先輩ってウチに来たことなかったっけ?」
梨子「初めて内浦に来たときに、お母さんと一緒に来て住職さんに挨拶だけはしたけど……」
ダイヤ「あぁ、それでは気付きませんわね」
花丸「ウチの表札、本殿の裏の家の方にしか出てないから、あと多分その住職はオラのおじいちゃんズラ」
梨子「そうだったのね……そういえばダイヤさんとルビィちゃんはどうしてその格好を?」
ダイヤ「黒澤家も古くからお世話になってるお寺ですので、半ば親戚みたいなものですわ」
ルビィ「だからこういう人が沢山来る時はお手伝いに来てるの」
梨子「なるほど……」
鞠莉「ハーイ♪ハッピーニューイヤー♪」
曜「あ、鞠莉先輩!うわ……凄い晴れ着……」
鞠莉「あら、ほんとに誰も着てないのね」
果南「だから言ったじゃん」
鞠莉「もう!勿体ないわよ!」
梨子「果南さん、あけましておめでとうございます」ペコリ
果南「あけましておめでとう♪ルビィ、その格好可愛いね」
ルビィ「えへへ♪でしょー♪」
鞠莉「あれ?ヨハネちゃんは?」
千歌「あ、そういえば来てないね」
ーーー
善子「寝てたわ」
ようちか「勿体なーい」
善子「ヨハネは堕天使だから……聖なる除夜の鐘を聴くと魂を締め付けられるような痛みが……!」ギランッ
梨子「むしろ浄化してもらった方がいいんじゃ……」
美渡「ほら、喋ってないで働くー」
千歌「はーい」
善子「ていうか、他のみんなは?」
曜「ルビィちゃんとダイヤさんは親戚に挨拶回り」
千歌「マルちゃんは初詣のお手伝い」
梨子「鞠莉さんもお父さんの関係者なんかに新年の挨拶しなきゃって言ってたよね」
善子「松浦先輩は?」
曜「初潜りするってさ」
善子「そんなのありっ!?」ガーン
志満「みんなー、お客様が来る前に表の掃除よろしくー」
千歌「はーい」
善子「ラブライブがあるからって、親の実家に行かないで残ったのに、新年早々旅館のバイトをする羽目になるとは……」ガクッ
ーーー
母「忘れ物は大丈夫?」
梨子「えっと……うん、大丈夫」
母「もう暗くなる時間だから気を付けてね?」
梨子「うんっ」
母「お母さん会場には見に行けないけど、梨子達が出る時は絶対TVで見て応援してるから、頑張ってね!」
梨子「うん、頑張る!」
母「お父さんにもよろしくね」
梨子「うん」
母「じゃあーー」
梨子「お母さん」
母「ん?」
梨子「ありがとう、この町に連れてきてくれて」
母「急にどうしたの……」
梨子「なんか、今言いたくなったの」
母「……そう」
梨子「私、色んな物を無くしちゃったけど……その分この町で手に入れた物も沢山あったから……」
母「……」
梨子「だからありがとう!じゃあいってきます!」
母「うん、いってらっしゃい!」
ーーー
梨子「散らかってるかもしれないからごめんね」
父「酷いなぁ……一応昨日の夜ちゃんと掃除したんだよ?」
梨子「ほんとにー?ふふっ、じゃあ上がって」
曜「お邪魔しまぁす!」
ルビィ「お、お邪魔しますっ!」
花丸「ここが桜内先輩が住んでた家……」
善子「思ったよりデカい……」
果南「これで海が見えたら最高だねー」
鞠莉「果南、貴女海以外に楽しみないの?」
ダイヤ「夜分遅くに申し訳ありません、少しの間ですが、よろしくお願い致します」ペコリ
父「おぉ、これはこれはご丁寧に、こちらこそ大したもてなしも出来ずすみません」ペコリ
千歌「梨子ちゃんの部屋は?」
梨子「えっ?特に面白いものはないと思うけど……」
果南「曜」
曜「ラジャー!突撃であります!」
梨子「えっ!ちょっと!場所分かるのー!?」
曜「あっ!」
ルビィ「人の家なんだからあんまり詮索しちゃダメだよぅ……」
ダイヤ「貴女達、ご好意で泊めてもらえるんですから大人しくしなさい!」
鞠莉「すみませんお父様、キッチンをお借りしてもよろしいですか?」
父「お父様!?あ、あぁ、自由に使ってくれて構わないよ……」
鞠莉「ありがとうございます♪もしまだお済みでなければご一緒に夕食はいかがですか?」ニコッ
父「あぁ、申し訳ない……気持ちは嬉しいが、仕事終わりに済ましてきたもので」アセアセ
鞠莉「そうでしたか、では、明日の朝食は是非ご一緒に♪」
父「あぁ、そうさせてもらおうかな……り、梨子」
梨子「どうかした?」
父「なんというか……個性的な子達だね……」
梨子「あぁ……うん……」
鞠莉「梨子っちー♪レッツクッキングよー♪」
梨子「あっ、はーい」
花丸「あ、オラも手伝うズラ!」
ーーー
千歌「ふわぁ……おはよ……」
ルビィ「ぅゅ……」ゴシゴシ
梨子「二人共おはよう♪もうすぐ朝ごはん出来るから顔洗ってきて」
ルビィ「はぁい……」
鞠莉「梨子っちー何かお手伝い出来ーー」
梨子「鞠莉さんは座っててください♪」ニコッ
花丸「笑顔が怖いズラぁ……」シミジミ
鞠莉「oh……オーケー……」シュン…
善子「まぁ、これからラブライブ本番だってのに朝からあんな殺人的な料理食べたくないしね……」
ダイヤ「何故、あんなに自信満々だったのか甚だ疑問ですわ……」
果南「あんな硬いお肉初めて食べた……」
曜「うわー……こんな朝早くから人集まりすぎ……」ウヘァ…
ルビィ「わぁ♪生放送は一局だけなのにどのチャンネルもラブライブの話ばっかりだねー♪」ワクワク
花丸「出来たよー♪」
千歌「うーん……いい匂い♪」
果南「じゃあしっかり食べて、今日も全力で行こう!」
9人「いただきまーす!」
ーーー
ダイヤ「あちらの関係者用から入るそうですわ」
果南「はーい」
千歌「……ええっ!?」
花丸「なんて言ってるの?」
千歌「むっちゃん達……全校生徒連れてきたって……」
梨子「ぜ、全校生徒!?」
千歌「入れなくても外のモニターで応援するからって……」
花丸「何時間ここにいるつもりズラ……」
鞠莉「……」
曜「鞠莉先輩どうかした?」
鞠莉「……私達あそこでこてんぱんに負けちゃったのよねーって思って」
ルビィ「うん、マルちゃんと梨子先輩の2票しか入らなかったんだよね」
果南「そうだったんだ……」
曜「なんかすっごい昔の話みたいだけど半年前なんだよね」
善子「あれから色々あったもの」
千歌「……絶対勝とうね」
梨子「……うんっ!」
千歌「じゃあ入ろっか」
ダイヤ「ええ、グループ毎に控え室が用意されてるそうですわ、まずはそちらに荷物を置きましょう」
善子「専用の控え室って……お金かかってるわね……」
ルビィ「日本屈指の一大イベントだからね!」グッ
ーーー
千歌「すごい……」
果南「ステージからしておっきいねー」
鞠莉「夏まつりの時くらいあるかしら?」
ルビィ「あぁ……ルビィは今最高に幸せです……っ!」
花丸「ルビィちゃん、始まる前から満足してるズラ……」
善子「私達が待つ席ってここなのよね?」
ダイヤ「そうですわ」
善子「踊ってるの見えなくない?」
ダイヤ「まぁ、これだけスクリーンが大きければ気にならないのでは?」
梨子「……」ゴクリ…
曜「梨子ちゃん」ツンツン
梨子「ん?」
曜「梨子ちゃんにお客さんだよ」ニシシ
梨子「えっ?」
善子「んー?」
ルビィ「にゅ……ν-tral!」
千歌「梨子ちゃん、行ってきなよ」
梨子「……うん!」
ーーー
梨子「あの……どこ行くの?」
亜里沙「いいからついてきて♪」
雪穂「私達が夢見た場所」
梨子「夢見た場所って……ドームのことじゃ……」
亜里沙「そうだけど、そうじゃないでしょ」
雪穂「せめて気分だけでもね」
梨子「……?」
雪穂「ここ」ガチャッ
梨子「ここって……?」
亜里沙「ステージ裏、出番が近くなったらここに来て待機するの」
梨子「……!」
ナナ「あっ、やっと来た」
梨子「ナナ!?どうして……関係者以外入れないんじゃ……」
ナナ「雪穂と亜里沙にお願いしてね」
雪穂「ナナが急にアイドル研究部に戻れないかって」
梨子「もしかして私が行ったから……」
ナナ「まぁね、今更2人と一緒には踊れないけどさ、あの日の約束くらいは叶えなきゃって思って」
亜里沙「卒業までの期間限定マネージャーになってもらったの」
梨子「そうだったんだ……」
雪穂「……」
亜里沙「……アイドル研究部に入部した時のこと、私まだ覚えてるよ」
梨子「……」
雪穂「私も、μ'sの、お姉ちゃん達の姿をずっと見てきて……部活決める時にすぐ入部届け出しに行ったよね」
ナナ「懐かしいなぁ……私、2人に引っ張られてたなぁ」クスクス
梨子「私も思い出したよ……部室の前で入ろうか迷ってたら中にいた亜里沙に引っ張られたんだよね」
亜里沙「えっ!そんなことしたっけ!?」
雪穂「全然覚えてないじゃん」クスクス
梨子「もぅ……でも嬉しかった、友達はみんなUTXに行っちゃってたから、あんなに簡単に受け入れてもらえて凄く助かったよ」
ナナ「梨子はピアノが出来たから真姫先輩にいっつもついて回ってたよね、あとことり先輩にも」
梨子「だって、真姫先輩の曲に憧れて入った様なものだし、衣装の作り方にも興味あったから……そういうナナだって何かあるとだいたい花陽先輩に聞いてたじゃん」
ナナ「だって花陽先輩アイドルに詳しいし、私そういうの全然分かんなかったしー」
雪穂「亜里沙は部活に入る前から海未ちゃん一筋だよね」
亜里沙「変な言い方しないでよー、海未さんのファンなだけっ!」
梨子「雪穂は意外と凛先輩と仲良かったよね」
雪穂「なんか凛さんってもう一人のお姉ちゃんみたいだったから」
ナナ「確かに穂乃果先輩と凛先輩と雪穂って三姉妹みたいだったよね」
亜里沙「お姉ちゃん達が卒業して、μ'sが解散した後もみんなすごい人気だったね」
雪穂「うん、初めてライブに出た時はプレッシャー凄かったよね」
梨子「でも楽しかった」
ナナ「うん、だからみんなで絶対ラブライブに出ようって、アキバドームに行こうって思えた」
亜里沙「……懐かしいなぁ」
ナナ「あれからもう三年近く経っちゃったんだね……」
亜里沙「……随分時間かかっちゃったね」
雪穂「うん……凄く遠回りしちゃった」
梨子「……そうだね」
ナナ「あれから……こうして4人集まれるなんて思わなかった」
雪穂「……でも、やっとこの場所に……形は違っても、この4人で来れた」
梨子「……うん」
亜里沙「……」
梨子「亜里沙、雪穂」
亜里沙「ん?」
梨子「……私……私達、負けないから」
ナナ「相変わらず負けず嫌いなのね」
亜里沙「私達だって負けないよ!」
雪穂「これでも2回優勝してるんだからね」
梨子「うん」
ナナ「よっし」
梨子「ん?」
ナナ「ν-tralとAqoursの健闘を祈ってアレやろう!」
雪穂「うん!」
亜里沙「梨子は覚えてる?」
梨子「……うん、ちゃんと思い出したよ」
ナナ「すぅ……心の準備は大丈夫っ?」
雪穂「出来ることは全部やった!」
亜里沙「目一杯楽しもう!」
梨子「……行くよ!みんなっ!」
4人「ゴー……ラーイブ!!」
雪穂「……」グッ
梨子「……」ギュッ
亜里沙「……」
ナナ「三人とも後悔のないように……私ちゃんと見届けるから」
雪穂「うん、勝っても負けても恨みっこなし」
亜里沙「頑張ってね、梨子」
梨子「うん、雪穂と亜里沙も、ナナもありがとう」
ーーー
花丸「あ、おかえりなさい桜内先輩」
梨子「ただいま」
果南「もうすぐ開場するみたいだよ」
千歌「……ちゃんと話せた?」
梨子「うん、少しだけあの頃に戻れた気がした……ちゃんと約束も果たせた」
千歌「……」
梨子「だから、これで心置き無く踊れるよ!」
鞠莉「頼もしい限りねー♪」
ダイヤ「ええ、私達も何一つ後悔しないように全て出し切りましょう」
梨子「……あっ」
善子「なに?」
梨子「その……」
曜「まだ何かやり残した事が?」
梨子「ううん、そうじゃなくて……その……」
ダイヤ「ハッキリ言って頂かないと分かりませんわ?」
梨子「えっとその……絶対負けないとか言ってきちゃった……雪穂と亜里沙に」
ルビィ「えええっ!?」ガーン
花丸「2連覇の王者にそんなことを!?」ガーン
果南「あちゃー……負けず嫌いが出ちゃったかぁ」
梨子「……ナナにも同じこと言われました……」シュン…
鞠莉「ほんとに根っからなのね……」ヤレヤレ
曜「……千歌ちゃん今どんな気持ち?」
千歌「プレッシャーで押し潰されそうなのだ……」
曜「私も……」
梨子「ご、ごめんなさい……」
千歌「……でも嫌じゃない」
善子「ま、それくらいの気持ちでやらなきゃ優勝なんてそう簡単に譲ってもらえないわよねー」
ルビィ「にゅにゅ……にゅーとらるに勝つ……にゅーとらるに勝つぞっ……」ガタガタ
花丸「ルビィちゃん落ち着いて……」ナデナデ
ダイヤ「会場の方もずいぶんと賑やかになってきましたわね」
鞠莉「そろそろオープニングも始まるでしょうし、私達も行きましょうか」
千歌「うんっ!」
ーーー
MC『ご来場の皆様!大変長らくお待たせいたしましたー!新年が明けて早1週!遂にやってまいりました!』
千歌「……」
MC『身を切る寒さの中、この会場を熱気で満たしてくれる総勢40組のスクールアイドルが遂に集結!』
花丸「……」ゴクリ
MC『勝利の栄冠を手に入れるのは一体どのグループか!』
果南「……」
MC『第八回ラブライブ!ここに開幕ですっ!』
ワァァァッッ!!
鞠莉「すっごいパワーね……」
MC『まずは前回大会優勝者より、優勝旗の返還です!』
梨子「雪穂……亜里沙……」
MC『ありがとうございます、それでは公式サポーターでもありますA‐RISEの綺羅ツバサさんから開会の挨拶です』
ダイヤ「……」
ツバサ『皆様、厳しい寒さの中お集まりいただき大変ありがとうございます、今回もまた素晴らしいスクールアイドル達がこのアキバドームにやって来ましたーー』
ルビィ「わぁぁ♪生の綺羅ツバサさんだぁ♪」
善子「生って言ってもこの距離じゃ……ねぇ……」
ツバサ『ーー私も観客の皆様と共に大いに盛り上げていければと思っております、そして今日、明日とこのステージを彩る全てのスクールアイドルが心置き無く素晴らしいライブを披露してくれることを願っています、以上を開会の挨拶とさせていただきます』
パチパチパチパチ
曜「それでもオーラっていうのかな……やっぱり全然違うね」
MC『ありがとうございます、それでは改めてルールの説明をさせていただきます、まず本日と明日の二日間で計40組のライブを行い、各グループ楽曲は2曲、衣装交換は原則不可となっておりますーー』
ーーー
善子「これで大丈夫?」
曜「オッケーだよ」
果南「じゃあお昼買ってくるね」
鞠莉「いってきまーす♪」
ダイヤ「よろしくお願いしますわ」
千歌「いってらっしゃーい」
ルビィ「じゃあルビィもステージ見てくる!」
梨子「三人が帰ってきたら連絡してね」
曜「ラジャー!」
ダイヤ「音はちゃんと切っておいてくださいね」
ルビィ「うんっ!」
梨子「いってきます♪」
花丸「それにしても……まだ一時間しか経ってない……」
曜「流石にずっと見てるのも疲れるしね……ルビィちゃんも梨子ちゃんも凄いや」
ダイヤ「そもそも、夏まつりの時もそうですけど、どうしてこういう時に限ってトリを引き当てるんですの」
千歌「あはは……ごめんなさぁい……」
曜「ほんとだよねー」
花丸「プレッシャーが重過ぎて押し花丸になっちゃう」
千歌「えっ?」
ダイヤ「……」
曜「……」
花丸「……」
ダイヤ「すみません、もう一度お願いしますわ」
花丸「聞き直さなくていいズラぁ……」ウズクマリ
ーーー
果南「……やっぱりここまで来るだけあってみんな凄いね」
ルビィ「うんっ♪」
ダイヤ「ルビィ、そろそろ気持ちを切り替えなさい……」
鞠莉「リーダー、何か言う事はないの?」
千歌「えっ?えーっと……」
善子「……」
千歌「……みんなありがとう」
花丸「……」
千歌「今日、ここに来れたのは曜ちゃんや梨子ちゃん、ルビィちゃんにマルちゃん、善子ちゃんと鞠莉先輩、それから果南ちゃんにダイヤさん、あと学校のみんなや内浦の人達、私達を応援してくれたファンのみんなも」
鞠莉「……」
千歌「みーんながいてくれたから私頑張れた」
曜「それは私達も同じだよ」
ルビィ「千歌ちゃんがいてくれたからだよ♪」
千歌「うん……辛くても苦しくてもみんなで支えあってきたから来れたんだよね……」
果南「……」
千歌「最初は小さな泡だった私達だけど、やっとみんなに気付いてもらえた気がする」
梨子「うん……」
千歌「だから最後まで歌おう!私達はここにいるよって!」
MC『ーーありがとうございましたっ!さぁ!遂に本日最後のグループとなりました!』
千歌「よしっ!みんなっ!1っ!」
曜「2っ!」
ルビィ「3っ!」
MC『エントリーナンバー21!数多の苦難に立ち向かう9人のその背中はまるであの伝説のスクールアイドルのように!』
鞠莉「4っ♪」
善子「5っ!」
梨子「6!」
MC『彼女達が目指す先に勝利の女神は微笑むのか!』
花丸「7っ!」
果南「8っ!」
ダイヤ「9っ!」
MC『静岡県私立浦の星女学院!スクールアイドル部!Aqours!』
千歌「アクアー!」
9人「サンシャイーン!!」
ーーー
千歌「……」
『1位 ν-tral』
『4位 Aqours』
ルビィ「……悔しいね」
善子「……うん」
果南「完敗だね」
ダイヤ「そうですわね……」
花丸「むしろ4位になれて凄いと思う」
鞠莉「……ええ、そうね」
曜「Aqoursもこれで終わりか……」
梨子「あの……」
千歌「……ん?」
梨子「……まだ終わってないよ」
果南「どういう事?」
ダイヤ「私達は3月で卒業ですのよ?」
梨子「うん、ラブライブはこれで終わりだけど……」
ルビィ「……あっ!」
花丸「ルビィちゃん?」
ルビィ「アレがまだあるんだ……!」
雪穂「梨子、Aqoursの皆さんもお疲れ様でした」
亜里沙「お疲れ様でした!」
梨子「あ、雪穂、亜里沙、ナナ」
千歌「こ、こちらこそお疲れ様でしたっ」
ナナ「最高のステージだったよ♪」
梨子「ありがとう、でもやっぱり雪穂達には叶わなかった」
亜里沙「私は負けたかもって思っちゃったけどなぁ」
雪穂「私達は三年やってるから、それで勝てた様なものだよ」
梨子「それでも私達の負けは負けだから……」
亜里沙「もぅ、拗ねないでよー」プニプニ
梨子「ぁぅ……」
雪穂「それにラブライブは終わったけど、最後のライブがあるんだし」
梨子「アレは勝ち負けがないでしょ」
亜里沙「だからいいんだよ♪」
梨子「ふふっ♪それもそうかもね♪」
曜「あの……そのアレ?って……」
雪穂「あぁ、実は3月の末にあるんですまだ、もう一つのスクールアイドルの祭典ーー」
ルビィ「ーースクールアイドルフェスティバル!」
ーーー
ルビィ「前は見るだけだったけど……つ、遂に音ノ木坂の中に……」ゴクリ
鞠莉「ルビィちゃん……右手と右足が同時に出てるわ……」
梨子「懐かしい……そういえば鞠莉さんってアメリカの大学なんですよね?こんな時期まで残って大丈夫なんですか?」
鞠莉「ノープロブレム♪入学は8月だもの」
梨子「あ、そうなんですか」
亜里沙「梨子ー!」
梨子「亜里沙♪わざわざ出迎えてくれなくても良かったのに」
亜里沙「だって講堂の場所思い出せてないかもしれないし!お二人もよろしくお願いします♪」
ルビィ「よ、よろしくお願いしますっ!」
鞠莉「よろしくお願いするわ♪」
ーーー
「函館聖泉女子高等学院からきました、Saint Snowの鹿角聖良です」
「同じくSaint Snow鹿角理亞です」
雪穂「ーーはい、それでは皆さん忙しい中、改めてお集まりいただきありがとうございます、ご存知かと思いますが3月末の第4回スクールアイドルフェスティバルについての打ち合わせを始めたいと思います」
亜里沙「まずそれぞれ作詞作曲、衣装、振り付けに別れて話し合いをしてもらいます、ちなみに事前アンケートで募集した結果、今年のテーマは『思い出』と『勇気』の二つに決まりました」
鞠莉「きっと梨子っちのせいね」ヒソヒソ
梨子「えっ、そんな……」
雪穂「明日まで、出来れば本日中には全体の方向性を固めたいと思っています、それから現段階での中央通りの構想はこのようになってますので、こちらも参考にしてください」
ルビィ「すごい……ハロウィンの時より豪華……」
雪穂「お分かりかと思いますが、スクールアイドルフェスティバルは最も多くのスクールアイドルが一堂に会する場です、皆さんはその代表であることを忘れずにお願いいたします」
亜里沙「それではまず衣装班は三年生校舎へ、振り付け班は体育館へ移動をお願いします、作詞作曲班はここに残ってください」
雪穂「それでは、振り付け班は私についてきてください」
ナナ「衣装班は私が案内しまーす」
鞠莉「じゃ、二人共、また後でね♪」
ルビィ「が、頑張って来ます……」ガチガチ
梨子「うん♪それじゃ♪」
ーーー
ダイヤ「これはまた……豪勢な……」
曜「もしかして、ここにいるのみんなスクールアイドル?」
ルビィ「うんっ!全国から参加希望者を募って抽選が当たった500組!総勢1800人以上!」
千歌「じゃあこれよりもっと沢山のスクールアイドルがいるってことなんだよね」
梨子「ええ、あくまでここで踊るのが500組なだけだから、これから更に見に来る人の中にもスクールアイドルは沢山いると思う」
花丸「見に来る人達は踊れないの?」
鞠莉「そんなことは無いみたいよ、あくまでこの秋葉原のエリアは私達が踊るだけで実際のエリアはえっと……」
梨子「中央通りだとこの万世橋から末広町の駅までがメインエリアで、実際は上野駅までが完全に封鎖されるの、それで末広町から向こうは自由参加エリア」
善子「えっ……大通りをこんな長い距離封鎖して大丈夫なの!?」
鞠莉「……大丈夫だから封鎖するんじゃない?」
花丸「東京はとんでもないズラぁ……」
梨子「それで、衣装の型は無料公開されてるから、衣装さえ用意すればスクールアイドルなら自由参加エリアで曲を披露したりしていいの」
果南「なんか……とんでもなくお金かかってるイベントだね……」
prrr
梨子「あ、雪穂から……最終の打ち合わせするからUTXに集合だって」
ルビィ「はぁい♪」
ーーー
雪穂「それじゃ、明日はよろしくお願いします」
千歌「こちらこそよろしくお願いしますっ!」
亜里沙「明日はいっぱい楽しもうね♪」
ルビィ「はいっ!」
「雪穂ー、亜里沙ちゃーん!」
善子「ん?」
雪穂「お姉ちゃん!?」
穂乃果「いやーすごいね、これ!」
雪穂「どうしたの!?今日バイトじゃなかったの?」
ことり「激励に来たの♪」
海未「明日は雪穂達も忙しいかと思ったので」
亜里沙「海未さんっ!ことりさんも!」
海未「お久しぶりですね、亜里沙、元気にしてましたか?」
亜里沙「もちろんですっ!」
ことり「梨子ちゃん、久しぶりー♪元気そうで良かったよぉ」ギュー
穂乃果「あれからの事、色々雪穂から聞いてたけど、ホント良かった」
梨子「こ、ことり先輩くるし……穂乃果先輩も、ありがとうございます」
海未「また会えて良かったです」
梨子「私もです♪」
ルビィ「あわわ……みゅ……みゅみゅみゅ!?」
花丸「ルビィちゃん!?大丈夫ズラ!?」
千歌「ほ、本物……!?」
ダイヤ「これは……驚きましたわ……」
善子「ねぇ、この人達って……」ヒソヒソ
果南「うん……μ'sだね」ヒソヒソ
「アンタ達ねぇ、もうちょっとくらい待ちなさいよ」
「梨子ちゃーん!」ダッ
梨子「凛先輩!」
凛「久しぶりー!」
穂乃果「あはは、梨子ちゃんが来てるって聞いてたからついー」
にこ「まったく……」
絵里「亜里沙ー♪」フリフリ
亜里沙「あっ!お姉ちゃーん♪」
ルビィ「あわわわわ……」ガタガタ
花陽「梨子ちゃん、元気そうで良かったぁ♪雪穂ちゃんも亜里沙ちゃんも久しぶり♪」
希「この子が言ってた子?」
真姫「ええ、そうよ、みんな色々お疲れ様」
雪穂「皆さん、お久しぶりです」
凛「なんか雪穂ちゃん、去年より大人びてるねー♪」
雪穂「そ、そうかな?」
鞠莉「oh……」
曜「μ'sが……みんないる」
ルビィ「マルちゃん!ルビィのほっぺたつねって!」
花丸「ええっ!?」
善子「ん」ムニッ
ルビィ「い、いひゃい……夢じゃない……」
絵里「久しぶりね、梨子♪」
梨子「お久しぶりです♪ご心配おかけしました」ペコリ
希「ふむふむ、なかなか波乱万丈な星の下に生まれてるみたいやね」
ことり「希ちゃん分かるの?」
真姫「さっき色々話したから」
希「真姫ちゃん、ネタバレはあかんよー」
ルビィ「ああああ、あのっ!さささ、サインもらえませんか!?」
にこ「にこの?しょうがないわねー♪本当はオフの日は書かないんだけど特別ニコ♪」
ルビィ「あああ、ありがとうございます!!家宝にしますっ!!」
ダイヤ「ルビィ……それはお父様に怒られますわ……」
梨子「そういえば、皆さんは卒業してからは?」
花陽「みんな、それぞれ頑張ってるよ♪、ことりちゃんなんてこの今日のためにわざわざパリから帰ってきたんだよ」
ことり「えへへ~♪雪穂ちゃん達の最後のステージだし♪それに梨子ちゃんにも会えたからホントに帰って来てよかった♪」
梨子「すごい……」
真姫「一番びっくりしたのは凛が医学部に行ったことね」
凛「えっへん!」ドヤッ
梨子「えっ……凛先輩が!?」ガーン
海未「梨子の驚きはすごく良くわかります……」
凛「久しぶりにあったのに2人とも酷くない!?」ガーン
穂乃果「凛ちゃん、スポーツドクターになりたいんだって」
梨子「スポーツドクター……それで」
花陽「三年生の時なんか真姫ちゃんより勉強してたもんね♪」
絵里「にこも頑張って」ポンポン
にこ「なんで名指しなのよ!?にこもタレント業頑張ってるんだけど!?」ガーン
希「それにしてもウチらの時よりずいぶん豪華になってるよね」
凛「μ'sの時は秋葉原だけだったのにねー」
花陽「年々範囲が広くなってすごいよね」
雪穂「ここに集まってるのはみんな、μ'sやA‐RISE……あの時ここで踊ってたスクールアイドルに憧れた人達ばっかりだから」
穂乃果「私達が思い付きで始めた事がこんなことになるとは……」
ことり「なんか嬉しいよね♪」
真姫「懐かしいわね」
絵里「それじゃ、思い出話も含めて後で飲みにでも行きましょうか」
希「賛成ー♪」
穂乃果「そういえば、海未ちゃんも二十歳になったしお酒解禁だね!」
海未「私は飲みません」
ことり「えー」
にこ「えー」
海未「なんでそんなに飲ませたいんですか」
真姫「酔ったら面白そうだから」
花陽「確かに」
海未「なら尚更飲みません!」
梨子「ふふっ♪」
ーーー
海未「では明日もあるのでそろそろ行きましょうか」
穂乃果「じゃあ雪穂、明日も見に来るからねー♪」
絵里「亜里沙もね♪」
真姫「梨子、また近い内に食事でも行きましょう」
花陽「Aqoursのみんなも頑張ってね♪」
凛「みんな楽しんでねー♪」
希「ほな~♪」
ことり「素敵な曲楽しみにしてるね♪」
にこ「手抜くんじゃないわよー♪」
亜里沙「ありがとうございまーす♪」
雪穂「お姉ちゃん飲みすぎないでねー!」
梨子「ありがとうございました♪真姫先輩、絶対誘ってくださいねー!」
雪穂「はぁ、びっくりした、来るなら言ってくれれば良かったのに」
亜里沙「ホントにね♪」
梨子「会えて良かった……って、みんなどうしたの?」
千歌「……」ポカーン
鞠莉「なんというか……」
ダイヤ「あれから三年経ってるとは思えないオーラでしたわ……」
果南「なんか圧倒されちゃったね……」
ルビィ「ににに……にこさんのサイン……ルビィの名前まで……書いてもらえた……」ガタガタ
花丸「ルビィちゃん!?大丈夫!?」
善子「あれがμ's……」
曜「人生で一番緊張した時間だったかも……」
梨子「ふふっ、確かにすごい人達だよね」
雪穂「……私達も三年やってるけど、それでもお姉ちゃん達にはまだまだ敵わないと思ってる」
亜里沙「そうだね」
千歌「ν-tralのお二人でも?」
雪穂「うん、なんといっても音ノ木坂を救った英雄だから」
亜里沙「今でも音ノ木坂に入学する子の中にはμ'sに憧れて来る子が結構いるんだよ?」
梨子「私達もそうだったよね」
千歌「私も……私も最初はμ'sに憧れてスクールアイドルをしたいって思ったんだよね」
果南「私達も二年前はそうだったよ」
ダイヤ「ええ、μ'sみたいに、なんて言ってましたわね」
鞠莉「その節については大変申し訳ございませんでした……」ガクッ
果南「あ、いや、別に鞠莉のこと責めてる訳じゃないよ」
ダイヤ「そうですわ、今思えばあの時、スクールアイドルを始めていても、廃校を免れたとは思えません」
雪穂「……えっ」
亜里沙「廃校って……」
善子「浦の星って今の一年生……私達が卒業したら廃校になるんです」
花丸「もう……来年からの新入生は募集してないんです」
雪穂「……」
亜里沙「そんな……」
曜「でも、だからこそ私達ここまで頑張れたんだと思うんです」
千歌「浦の星があったこと……そこで毎日を精一杯生きてる私達がいたこと……それをみんなに知ってもらいたくて私達はAqoursを結成したんです」
雪穂「そうだったの……」
亜里沙「……」
千歌「だから……だからこそ明日は目一杯楽しみたいんです」
ダイヤ「もちろんですわ」
曜「全速前進ヨーソロー!ってね!」
善子「悔やんだって仕方ないしね」
雪穂「……うん、もちろん私達も」
亜里沙「うんっ!」
梨子「雪穂、亜里沙、改めて明日はよろしく!」
ルビィ「よろしくお願いしますっ!」
雪穂「ええ、最高のステージにしよう!」
千歌「はいっ!」
ーーー
ーーー
「皆さーん!第6回スクールアイドルフェスティバル!お疲れ様でしたー♪」
「今年も沢山の人が来てくれたわね」
「もちろんみんなも楽しめたかな?」
パチパチパチ
「良かった♪」
「ん?なに?どうしたの?」
「わっ、おっきい花束……くれるの?」
「みんな……ありがとう……」
ルビィ「……皆さん知ってのとおり、私達の学校は……浦の星女学院は3月いっぱいで廃校になります」
花丸「消えゆく私達の学校を知ってもらいたい、覚えてもらいたい一心でここまでやってきました」
善子「私達はこんなに素敵なみんなと出会えたことを忘れない……だから私達の事もほんの少しだけでも覚えていてくれたら嬉しいかな」
ルビィ「……」
花丸「……」
善子「……」
「今までありがとうございました!」
ーーー
梨子「思ったより早く着いちゃったなぁ」
梨子「ちょっと寄り道してから行こっかな」
梨子「……海かぁ」テクテク
梨子「……私にとってはここから始まったんだよね……懐かしいなぁ……」
プップー
梨子「ん?」
千歌「あー!やっぱり梨子ちゃんだ!」
梨子「千歌さん!久しぶり♪」
千歌「ほんとに久しぶりーだよー、もぉ梨子ちゃん全然内浦に帰ってこないんだもーん、ちょっと待ってね、今停めてくるし!」
梨子「ごめんなさい、なかなか時間取れなくて」
千歌「ピアノの方はどう?」
梨子「うーん、順調……かな?」
千歌「なんでそんなに自信ないのー」
梨子「それはやっぱり私より上手い人なんていっぱいいるし……」
オーイ
千歌「世界は厳しいんだねー」
梨子「大学の中の話なんだけど……」
オーイ!
梨子「千歌さんは?」
千歌「めちゃくちゃ忙しい!短大にするんじゃなかったよぉ」
「おーい!無視するなー!」
梨子「えっ!?曜さん!?」
千歌「うぇぇっ!?なんで船で来てるの!?」
果南「私が迎えに行ったから、梨子ちゃん久しぶり♪」
梨子「お久しぶりです果南さん♪」
千歌「船で迎えに行くって相変わらず無茶苦茶だなぁ……」
曜「よっと」
果南「じゃあ私これとめてくるね」
曜「ありがとー!また後でねー!」
梨子「曜さんは最近どう?」
曜「頭が破裂しそう!」
梨子「ええっ!?」
曜「勉強が難しくて難しくて、船長どころか航海士にもなれるか不安になってきたよー」
梨子「もう……らしくないよ?」クスクス
曜「もちろん諦めたりはしないよ!実習で海に出るとやっぱりやる気出てくるし!」
千歌「みんな色々大変なんだねー」
曜「……?」
梨子「どうしたの?」
曜「あの高そうな車がさっきから停めるのに手こずってるのが気になって……」
千歌「ほんとだ、ちょっと見てくる」
鞠莉「梨子っちー!曜っちー!」
ダイヤ「二人共、お久しぶりですわ」
梨子「鞠莉さん!ダイヤさん!」
曜「もしかしてあれ鞠莉先輩の車?」
鞠莉「イエース♪日本で乗る用よ♪」
ダイヤ「乗せてくださると言うのでお言葉に甘えたのですが……」
千歌「あー緊張したぁ、あんな高そうなの初めて乗ったし……というか鞠莉先輩よく免許取れたね……」
梨子「どういうこと?」
鞠莉「私駐車するのがちょっぴり苦手なの♪」
千歌「後ろボコボコになってたから、私が停めた」
曜「こわっ」
ダイヤ「えぇ非常に怖かったですわ……走ってる時は何ともなかったのですが」
鞠莉「馬の方がずっと素直で困っちゃうわ」
梨子「馬って……」
曜「ダイヤさん、ルビィちゃんは?」
ダイヤ「ルビィなら津島さんや花丸さんと一緒に学校で準備をしてますわ」
千歌「私達もそろそろ行く?」
鞠莉「果南は?」
曜「果南ちゃんならさっき船停めに帰ったから、もうちょっとしたら来るんじゃないかなぁ」
ブロロロ
ダイヤ「言ってるそばから来ましたわね」
果南「おっ、鞠莉とダイヤも来てたんだ、久しぶり」
鞠莉「久しぶり♪元気してた?」
果南「もちろん、2人は?」
ダイヤ「ええ、息災ですわ」
鞠莉「私もバイクにすれば良かったかしら」
ダイヤ「大人しく運転手でも雇ってください」
果南「何の話?」
曜「鞠莉先輩の運転が下手って話」
鞠莉「駐車が苦手なだけよっ」
千歌「じゃあ揃ったし行こっか、梨子ちゃんと曜ちゃんは私が乗っけてくし、ダイヤさんも乗る?」
ダイヤ「そうさせてもらいます」
鞠莉「ええっ!?酷いっ!」
ーーー
ダイヤ「この部室も最後ですわね」
梨子「そうですね」
ガラッ
千歌「3人ともおまたせー♪」
ルビィ「あっ、みんな!」
花丸「久しぶりー♪」
曜「みんな久しぶりー♪元気そうで良かった♪」
梨子「三人とも、改めてラブライブ優勝おめでとう♪」
果南「おー、ほんとに優勝旗置いてある」
『第一回優勝 A‐RISE』
『第二回優勝 μ's』
『第六回優勝 ν-tral』
『第七回優勝 ν-tral』
『第八回優勝 ν-tral』
『第十二回優勝 Aqours』
ダイヤ「結局六人になっても三人になってもAqoursのままでしたね」
千歌「それ以外の名前でなんて考えられなかったしね」
善子「やっぱり思い入れがあるからね、変えようなんて誰も言わなかったし」
花丸「これから先もマル達はAqoursでいたいから」
鞠莉「そうね、例え離れ離れになっても仲間であり続けたいわね」
千歌「……私達、ちゃんとやれてたかな」
善子「急になによ」
千歌「この浦の星や私達、この内浦のこと、ちゃんと誰かの心に残せたのかなって」
曜「それは誰にも分からないんじゃないかな」
ダイヤ「そうですね、でもそれでいいのでは?」
善子「なにも特別になりたいわけじゃないし」
ルビィ「うん、誰もが知ってるアイドルになりたかったわけじゃないからね」
果南「この町のこの海を見て、少し思い出してもらえればそれでいいよね」
花丸「うん、この町を大切に思う人がいるって想ってくれるだけで十分だよ」
鞠莉「そして、そういう気持ちが受け継がれていく事が大切なのよね」
梨子「うん、だから私達のしたことはきっと無駄じゃないよ」
千歌「……そうだよね!」
曜「……よしっ!私はいつか大きな船の船長になって世界中の海を渡りたい!」
花丸「えっ!?なにっ!?」ビクッ
鞠莉「ふふっ♪じゃあ、私は会社を継いで沢山の人を笑顔にしたいわ!」
ダイヤ「急になんですの……」
鞠莉「ほらダイヤも♪」
ダイヤ「えっ……こほん……えー、ゆくゆくは黒澤家当主としてこの町を支えて行きたいと思っています」
果南「ウチの店を通じて一人でも多くに海の良さを知ってもらいたいな」
千歌「私は沢山の人に泊まりに来てもらって、沢山の人の思い出を作ってあげたい」
花丸「マルはいつか小説家になって色んな人に夢を届けたい!」
ルビィ「もっと服飾の勉強して、未来のアイドルを輝かせるデザイナーになりたい」
善子「特になんにも決まってないけど……まぁ、誰かの幸せを支えてあげるような人になりたいかな」
梨子「立派なピアニストになって、小さくても誰かの希望になれるような曲を作りたいなって思ってる」
千歌「……ふふっ♪」
鞠莉「みんな素敵な夢ね♪」
善子「なんか私だけふわっとしてて恥ずかしいんだけど……」
ダイヤ「そんなことありませんわ、とても素敵な夢です」
梨子「いつか夢が叶ったら……ううん、例え叶わなくても、自分の出来ることを胸を張って言える大人になれたら……またここに来よう?」
曜「うんっ!」
果南「案外早く集まっちゃったりしてね」
鞠莉「その時はまた新しい夢でも語り合いましょうよ♪」
花丸「さんせー♪」
ルビィ「あっ、もうちょっとしたら出番だよ」
ダイヤ「そうですわね、一度リハーサルしてから向かいましょうか」
善子「みんなちゃんと練習してきたー?」
梨子「もちろん♪」
ーーー
ーー人生はいじわるだーー
千歌「これまで沢山の人がこの学校に通い卒業していきました、そして今日、この町から浦の星女学院もまた卒業します」
ーー悪いことは何もしていないのにーー
千歌「最後の日に皆さんがかけつけてくれたことで、この学校がどれだけ愛されていたのか、改めて感じることが出来ました」
ーー私達から何もかも奪っていくーー
千歌「この学校は無くなってしまいますが、この学校で学んだ事、出会えた事は皆さんの心にはきっといつまでも残り続けると思います」
ーーでもーー
千歌「だから今日は笑顔で見送りましょう!」
ーーだからこそ何かを手に入れるためにーー
千歌「そして、今日の思い出が大切な思い出になれるように、私達もAqoursのラストステージをさせていただきます!」
ーー人は頑張れるのだろうーー
ーーそしていつかーー
梨子「……」
「桜内さん、まもなく出番でーす」
梨子「分かりました」
『御来場の皆様、大変長らくお待たせいたしました』
梨子「……」カツ…カツ…
『まもなく、桜内梨子ーー』
梨子「……」ギュッ
ーーそしていつか、それが思い出となってーー
『ーーアクア記念ホール落成記念』
『ーーソロ・ピアノコンサート〝サンシャイン〟開演となります』
ーー私達を形作っていくのだろうーー
566 : ◆sHtux8fZAE - 2018/07/17 20:12:45.32 G9HrGo6hO 526/526以上で完結です
長々とお付き合いありがとうございました