1 : 名無しさ... - 2016/06/23 04:53:22 FhF 1/91※キャラ崩壊あり。
※【デレマスSS】モバP「森久保が家出した」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1458548834/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/2135270.html
の続きです。
※ちょっと長め
※【デレマスSS】モバP「ただいまー」まゆ「お帰りなさい。Pさん」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1459359717/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/2257893.html
【デレマスSS】乃々「もりくぼ、Pさんに騙されたいみたいなんです」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1460499710/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/13994910.html
あたりとも関係あり。
元スレ
【デレマスSS】乃々「最近Pさんがひどいんです」奈緒「はぁ……」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1466625202/
2 : 名無しさ... - 2016/06/23 04:53:51 FhF 2/91
とあるコーヒーショップにて
森久保乃々「あ、注文しておいた品がきましたね。今回、相談に乗ってもらうお礼みたいなものなんですけど……」
神谷奈緒「あ、これあたしがもらっていいのか? えっと……ハンバーガー? てかデカくね?」
乃々「地方から進出してきたお店なんですけど、サイドメニューのボリュームが売りの一つらしいです……」
奈緒「それにしても某ビッグマッ◯の2倍くらいないか?」
乃々「名物味噌カツサンドらしいです。厳密にはハンバーガーじゃなくて、サンドイッチだと思うんですけど……」
奈緒「こんなにも食えねーよ……。まぁ、カットされてるみたいだしちょっとずつ貰うけどさ」
乃々「どうぞお納め下さい」
奈緒「おう。もぐもぐ。ん。ちょっと甘いんだな。けど悪くない。ていうか美味い。今度加蓮、連れてきてやろうかな」
乃々「気に入っていただけたようで幸いです……。ところでさっき言いかけてた相談なんですけど……」
奈緒「ん? ああ、Pさんが酷いって話だっけ? なんだ? また例の辞めたいのに辞めさせてもらえないとかそういう話か?」
乃々「いえ、その……それはもう最近は……あまり……」
奈緒「だよな。はたから見てても最近の乃々は少し前向きっつーか、なんつーか、……少なくとも昔ほど辞めたい辞めたいとは言ってない感じだもんな」
乃々「は、はい。やっぱりまだ……人前で歌ったり踊ったりするのは苦手ですし……魂がすり切れそうではあるんですが……その……頑張ったら……褒めてもらえますし……」
奈緒「ああ……うん。まぁ、わかるよ。しかし、仕事関係じゃないとするならあとは……」
乃々「に、人間関係……と言いますか、なんと言いますか……その……」
奈緒「……恋愛関係?」
乃々「!!」////
奈緒「あー、そっかー。そっちかー……」
(なんかちょっと前にも乃々と同じ位の歳の子に同じ様な相談をされたな。……あのロリコンめ)
奈緒「ということは、あれか。乃々も最近はPさんに構ってもらえてなくて寂しい思いをしてる、とかそんなところか」
乃々「乃々『も』っていうのが少し気になりますが……。いえ、むしろ逆なんです……」
奈緒「逆?」
乃々「最近のPさん、物凄く優しくて、ことあるごとに私を構ってくれるんです……!!」
奈緒「ん?」
乃々「もりくぼがお仕事が嫌だと駄々をこねても前みたいに担いだり引きずったりするんじゃなく、王子様みたいに手を差し出して、そのまま私の手を引いてくれるようになりましたし。私がそれも拒んだ時はお姫様抱っこで車まで運んでくれました」
奈緒「ん? んん?」
乃々「包容力もあるんです。 もりくぼがお仕事で失敗しても、優しく頭を撫でて、ちゃんと叱った上で許して、慰めてくれるんです! もりくぼが共演者の方や偉い人に怒られそうになった時はいつも身を呈して庇ってくれますし、へこんでたら励ましてもくれます」
奈緒「お、おう」
乃々「この間、勇気を出して夕食に誘ってみたら、即答でOKしてくれた上に、それ以降、お仕事の後は必ず食事に連れて行ってくれるようになりました」
奈緒「なぁ、これ相談じゃなくて、ノロケじゃね?」
乃々「オフの日にデートに誘った時も」
奈緒「帰ってもいいかな?」
乃々「ダメです」
奈緒「えーっ……。何が悲しくてPさんとのノロケ話を聞かされなきゃならねーんだよ」
乃々「本題はここから先なんです。今ここでもりくぼを置いて帰ろうとしたら泣きますよ。全力で子どものように泣いて叫んで『捨てないで下さいっ!』って縋り付きますよ?」
奈緒「脅しじゃねーか! 公共の場でそんなことされたらとんでもない噂が立つわ!!」
乃々「そんなわけで、お話の続きですが」
奈緒「あー、はいはい。あ、店員さん、アイスコーヒーひとつ下さい」
乃々「デートに誘った時も二つ返事でオーケーしてくれて、遊園地とか夜景の綺麗なレストランとか、色々と素敵なところに連れて行ってくれました」
奈緒「ふーん」
乃々「あと、この前の総選挙の前に一方的に約束したんです。『5位以内に入ったら正式なお付き合いと同棲を』って」
奈緒「……えっ?」
乃々「結果、何の間違いか、総合4位とかいうとんでもない順位だったので、もりくぼは、これ幸いとお付き合いと同棲をせまりました」
奈緒「乃々ってそこまで積極的な子だったか? けど、まぁ、なんとなく話は見えてきたぞ。要するに、優しくするだけしておいて、その要求は断られたわけだな。確かに酷いといえば酷いけど、仕方なくないか?」
乃々「いえ、それも少し違います。正直駄目元だったんですが、Pさん、『仕方ないなぁ』って約束の半分だけを受け入れてくれました」
奈緒「マジでっ!? 受け入れちゃったのかよ!? 」
乃々「その証拠がこの合い鍵なんですけど」チャラ
奈緒「しかもそっち!? それ実質、両方とも要求通ってないか?」
乃々「Pさんのお家はいいですよ。お仕事のあと、好きなだけ甘えたりイチャイチャしたりできます」
奈緒「へぇー……」
乃々「奈緒さん、鍵を見る目が怖いんですけど。獲物を狩る者の目なんですけど」
奈緒「いやいや。そんなことないぞ。別に興味ないし。あいつの家の鍵とかぜってーいらねーし」
乃々「ですよね。今回の相談役に奈緒さんを選んで正解でした。最近、美優さんは私を見る目が何だか、まゆさんっぽいですし、まゆさんはまゆさんですし、凛さんはプライベートの時、人語を解さないですし……」
奈緒「ウチのリーダーは今どうなってるんだ!?」
乃々「やはり普段から、別にPさんのことなんて何とも思ってねーよ!って公言して憚らない奈緒さんが適任でしたね。頼りになります」
奈緒「…………」
乃々「そんなわけで今度こそ本題です」
奈緒「…………おう」
乃々「ぶっちゃけると、なんだか物足りないんです」
奈緒「…………おう?」
乃々「具体的に言うと、最近、優し過ぎであんまり、いぢめてくれないんですけど」
奈緒「い、イジめてくれない?」
乃々「前々から、Pさんにはお願いしてたんです。1日最低1回はもりくぼのことをいぢめて下さいって」
奈緒「えーっと…………」
乃々「身体的なものでも精神的なものでもいいから、もりくぼのことをイヤラしく時にはネチっこくいぢめて下さいって。それなのにPさんは、徹頭徹尾、ダダ甘に甘やかして、紳士で、優しくて、イケメンで……」
奈緒「ちょ、ちょっと待て。待ってくれ!! 待って下さい!!」
乃々「ぼの?」
奈緒「なにそれ可愛い。……じゃなくて!! えっーと。乃々は……そのま、ま、……Mの人なのか?」
乃々「まぞくぼはマゾの人ですよ。奈緒さんと同じで好きな人に虐められたいソフトマゾの人なんですけど……」
奈緒「まぞくぼって何!? あとあたしを同類にするな!!」
乃々「失礼しました。奈緒さんはソフトじゃなくて、ドがつく方でしたか。流石です……」
奈緒「ドMでもねぇよっ!? あ、あたしは至って正常! ノーマルの人だよ!!」
乃々「けど、某所で行われた『Mっぽいアイドルといえば?』アンケートでは、みくさん、幸子さん、菜々さん、美優さん、などといったそうそうたるメンバーを抑えて堂々の一位に選ばれてたんですけど……」
奈緒「どんなアンケートだ!? 風評被害だよ!!」
乃々「それはさておき、Pさんが机の下の私を蹴ってくれないってお話でしたっけ?」
奈緒「さておくな! そしてそんな話はしてない!」
乃々「蹴って欲しくて時々ズボンを引っ張ったり、膝をこちょこちょしてみたりするんですが、覗き込んで頭を撫でたり頬を撫でたり、耳をくにくにしたりしてくれるだけで、一向に加虐行為をしてくれないんですけど……酷くないですか?」
奈緒「やっぱりノロケじゃねーか!! ていうかそりゃ流石に女の子を蹴ったりはしないだろう! あと、おねだりの仕方が微妙に可愛いな、おい!」
乃々「これまでで一番興奮したのは、他の女の子とデートしながら、もりくぼのことを壁ぐちゃしてくれた時くらいですね」
奈緒「壁ぐちゃとか初耳なんだけど!?」
乃々「あの時は目の前で繰り広げられるNTRと全身に掛けられる成人男性の体重に、気持ち良くなって、つい何度も何度も」
奈緒「言わせねぇよ!? そもそもどういう状況だよ!! そして言わせてもらうけど、お前の方がよっぽど、ドが付く人だからな!?」
乃々「いえいえ、もりくぼはそんな……おこがましいんですけど……」////
奈緒「褒めてねぇよ!?」
乃々「もりくぼなんて、まだ、好き放題身体を弄ばれた挙句ボロ雑巾のように捨てられたいとか、◯を◯◯られた状態で色々されたいとかまではあんまり思えない、ごくごく低レベルなファッションMなんですけど……」
奈緒「基準がおかしい!! あんまりって何だ!? そしてここ公共の場!! あ、アイスコーヒーありがとうございます……。すんません。その上なにより、乃々はあたしのことをそういうレベルの人間だと思って見てたのか!?」
乃々「あこがれます」
奈緒「目指してるのかよ!!」
乃々「先輩、首輪の安いお店ってどこですか?」
奈緒「知らねーよ! 先輩言うな!」
乃々「凛さん顔パスのお店を教えてもらったんですけど、私にはちょっと高くて……。ペット用のは虫除けのお薬が付いてるらしくて肌に良くないらしいんですけど……」
奈緒「だから知らねーって。あと凛! 何してんだ!? あいつ普段は結構まともだぞ!?」
乃々「鞭ってやっぱり跡が残るものなんですか? ちょっと見せてくれません?」
奈緒「ねーし、知らねーよ! だからあたしはノーマルだって! あと、話がズレてないか? 恋愛相談じゃなかったのかよ!?」
乃々「そうでした。Pさんにいぢめてもらうためにはどうしたらいいかというお話でした。ちなみに夜な夜なPさんの枕元に赤いロウソクを持って行っても、乃々は防災意識を持っていて偉いな~って褒めてくれるだけで、使ってくれませんでした」
奈緒「聞いてねーよ。そしてこれやっぱ恋愛相談じゃねーな!」
乃々「三角木馬っていくらくらいするんでしょうか?」
奈緒「それも枕元に持っていく気じゃないだろうな?」
乃々「そうなるとやっぱりセットで鞭も欲しいですよね。時子さんに良いお店紹介してもらいましょうか」
奈緒「やめて差し上げろ。美嘉ほどじゃないけどあの人意外と純で真面目なところあるから」
乃々「じゃあやっぱり奈緒さんに紹介してもらうしか……」
奈緒「お。高いけど流石コーヒーショップだけあって美味いなこれ。スーパーで売ってるボトルコーヒーの8倍美味いかって言うと微妙だけど」ポチポチ
乃々「ちょ、急速に冷めて露骨に無視しないで欲しいんですけど……。す、スマホいじらないで欲しいんですけど……」
奈緒「だって結局、ノロケと猥談じゃねーか。聞くことはできても解決はできねーって。あ、続きはもうちょっと小声で頼むな。さっきコーヒー持ってきてくれた店員さんが能面みたいな顔してたぞ」
乃々「そ、そこをなんとか。トライアドのお姉さん、346のツンデレラ、3人寄らなくても、もじゃもじゃの知恵と言われた奈緒さんの力で解決して欲しいんですけど」
奈緒「他はもう聞き流すけど最後のなんだ? 眉毛か? 眉毛のことなのか!?」
乃々「奈緒さんの眉を撫でると幸せになれるってもっぱらの噂なんですけど」
奈緒「最近、会う人会う人あたしの顔に手を伸ばしてくるのはそれが原因か!!」
乃々「Pさんが、奈緒はガードが堅い(物理)って褒めてましたよ。有香さんも素晴らしい回し受けだって絶賛です」
奈緒「護身術はアイドルの嗜みだからな、ちくしょう!」
乃々「あ、コーヒーに付いてきたその落花生のおつまみ、美味しいですよ。気に入ったらカウンターでバラ売りもしてるんですけど」
奈緒「んん?唐突だな……おお、本当だ。美味しい。袋に産地が書いてあるな……噂には聞いてたけど、あっちのお店って本当にこういうオマケが付いてくるんだな。買って帰ったら楓さんや早苗さん、菜々さんが喜ぶかもな」
乃々「人選にそこはかとなく悪意が……。ちなみに、ここってスイーツも美味しいって有名なんですよ。もりくぼもまだ食べたことないんですが……。2人で分けて食べませんか? 相談にのってもらってますし、私の奢りなんですけど」
奈緒「これまだ続ける気か……。じゃあこれ、季節限定の奴、頼む」
乃々「はい。あ。て、店員さん。追加の注文お願いしたいんですけど……」
奈緒(しかし、相談って言われてもなー。う~ん。まぁ、仕方ないか)
乃々「ふふ。楽しみですね……。へぇ……カスタードとベリーソースのデニッシュパンケーキみたいですよ……」
奈緒(こうして見るとただの可愛い女の子なんだけどな~)
※ ※ ※ ※ ※
翌日事務所にて
乃々(結局奈緒さん、昨日はなんだかんだ言いながらも、もりくぼの話を最後まで聞いてくださいました。Pさんへの不平不満、ノロケや自慢話を、スマホをいじり、スイーツを突きながらではありますが、ちゃんと聞いてくれる奈緒さんは、やはり素晴らしい先輩だと思います)
乃々「お、おはようございます……」
乃々(お陰でもりくぼもスッキリとした気分で、前向きに……いえ、前方斜め下くらいを見つめる感じでそれなりに、今日もアイドルのお勤めに臨めるんですけど……)
ちひろ「あら、おはよう。乃々ちゃん。今日はゆっくりめね」
乃々「はい。今日はレッスンだけなので……。あ、あの……?」
ちひろ「ああ、Pさんならミーティング中ですよ。もうすぐ終わると思いますが」
乃々「そうなんですか……ミーティングって何の」
ガチャ
P「じゃあ、そういうことで。これから忙しくなるけど各自よろしくな」
イヴ「はい~」 まゆ「まかせて下さい」 あやめ「心得ております」
仁奈「がんばるでごぜーます」 七海「はいれす~」 沙理奈「まぁ、程々にね」
奈緒「分かってるって……。あれ?」
P「ん? どうした? ……ああ、乃々か」
乃々「は、はい。おはようございます。皆さん。あ、あの……み、ミーティングって……」
P「あー。幾つかのユニット企画がまとめて通っちゃってな。まー。その説明っつーか打ち合わせだ。乃々には関係ないから気にしなくてもいいぞ」
奈緒「…………」
P「……あ、そうだ。けどそれに関連してっていうか、影響されてっていうか……、乃々に少し話があったんだ。今からレッスンだよな? 少し遅くなるけど、その後時間とれるか?」
乃々「は、はい。大丈夫なんですけど……」
P「じゃあ終わったらここに……いや、応接室に来てくれ。そんなに長くはならないから……さ」
乃々「はい。分かりました……?」
乃々(なんでしょう? Pさん、少し気まずそうな……。なにか目を逸らされたような気がします……)
P「よし。じゃあとりあえず今日は解散! 仕事もレッスンもない奴はあんまり居座らずに帰れよー」
一同「はーい!!」
乃々(気のせい……ですよね?)
※ ※ ※ ※ ※
応接室
乃々「し、失礼しまーす……。レッスン終わったんですけど……」
P「お。来たか。まー、座れ。アイスティーしかなかったけどいいかな?」
乃々「冷蔵庫に普通に麦茶とかもあった気がしますが、まぁ色々やぶさかではないので、いただきます」
P「分かりにくい小ネタを挟んどいて何だが、今回は少し真面目な話だ」
乃々「……そうですか」
P「さっきも少し触れたが、今度ユニット企画を合計3つも同時進行することになった。以前ヒットを飛ばしたオンザルーフの第2弾と、それとは別に新しいものを2つ、だな」
乃々「……そうなんですか」
P「大人数をプロデュースするのはいつものことなんだが、今回は色々と初めてのこと、畑違いなことも多くてな、結構手こずりそうなんだ」
乃々「…………」
P「そんなわけで、俺の能力……というか許容量の問題でな、申し訳ないが、今後しばらく乃々の担当からは外れることになった。当面は俺のアシスタントである、ちひろさんが乃々のプロデュースを受け持つことになる」
乃々「…………」
P「期間とかその後の予定は不明だが、ちひろさんには可能な範囲プロデュース計画諸々ちゃんと引き継いであるし、乃々の活動に支障はないはずだ」
乃々「…………」
P「俺としても残念だが、事情が事情だからな。急なことで、すまない。
乃々から何か希望、要望はあるか?」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「……おかしいですね」
P「……何がだ?」
乃々「……このアイスティー、飲んだのに眠くなりません。ちゃんと睡眠薬入ってるんですか?」
P「何を期待してるんだお前は」
乃々「冗談です……。そうですか……。Pさんが担当から……」
P「……乃々?」
乃々「仕方……ないですね。お仕事ですもんね……。けど、それなら私……もりくぼは……アイドルを……アイドル……を」
P「…………」
乃々「いえ……。何でもありません。何でもないです。分かりました。分かり……ました」
P「…………」
乃々「…………」
P「えーっと。形式的に担当からは外れるし、接点も減るだろうが……まぁ、同じ事務所だ。何か問題があったらいつでも相談は……してくれ」
乃々「…………」
P「だから、な。明日からもお互い頑張ろう! な!」
乃々「…………」
乃々(正直辛いです。辛いですが、仕方ありません。ワガママを言って困らせる訳にはいきませんし……何より嫌われたくありません)
乃々「はい……」
乃々(もりくぼはもりくぼなりに……前方斜め下くらいを見つめる感じで、頑張ろうと思います)
乃々(そう……)
乃々(まだ繋がりが切れてしまったわけではありませんから……)
※ ※ ※ ※ ※
乃々(それから数日、いえ十数日はすれ違いの日々が続きました。Pさんは本当に忙しいらしく、事務所の机にすらほとんど戻ってこない毎日です。Pさんがいない机は居心地が悪いくらいに広々としていて、ドラ◯もんがいなくなった時の◯び太くんの気持ちがよく分かりました)
乃々「お隣さんもいませんし……」
乃々(Pさんのお家に帰っても、最近は大体一人です。たまに他の子がどこからともなく侵入してきますが、Pさんがいないと分かると早々に帰ってしまいます。
普段なら二階で惰眠を貪っている存在自体がファンタジィなお姉さんも最近はユニット活動に忙しいようで、深夜までかえってきません。
ちなみにもりくぼは専らPさんのベッドで寝ることにしているので、ここ最近は寝床を独り占め。
Pさんが事務所に泊まり込むことなく帰ってきた時だけ、ちょっと強引に添い寝をねだります。
まぁ、やはりお疲れらしく、特に心ときめくイベントもなく、すぐに眠ってしまうのですが……)
乃々「……この位の孤独は慣れっこなんですけど……。むしろもりくぼは、ひと気のない静かな所を好むくらいですから……」
乃々(ほんとはPさんくらいはそばにいてもいい……いて欲しいんですけど……)
乃々(今日も事務所では、ちひろさんがパソコンのキーを叩く不規則な音だけが響いていました)
※ ※ ※ ※ ※
乃々「最近Pさんがひどいんです」
奈緒「はぁ……またか」
乃々「今度はノロケじゃないんですけど……。ほんとに酷くて……もう全然構ってくれないんです……」
奈緒「さらっと前回のはノロケだったと白状したな。おう」
乃々「確かに優し過ぎ、構い過ぎと言いましたが、もりくぼは別に、突き放されたり距離をとられたりするのを望んでいたわけじゃないんですけど……」
奈緒「きけよ。ていうか、めんどくさいな……。 今度は構って欲しいのかよ」
乃々「だって最近はろくに会話もしてませんし、一緒にご飯を食べたりお風呂に入ったりもできていません」
奈緒「おう。ちょっと待てや」
乃々「いぢめて欲しいとは言いましたが、ただ放置されているだけでは愛を感じられません……」
奈緒「あ。やっぱりこっちの言葉を聞く気はないんだな。よし。お姉さーん。このケーキとホットのコーヒーよろしく! どうせ乃々の奢りなら思いっきり飲み食いしてやる」
乃々「ていうか、正直危機感を覚えてるんですけど。このままじゃ捨てられてしまうんじゃないかって……。聴いてますか? メニュー熟読してないで構って下さい」
奈緒「あー。はいはい。聞いてる聞いてる。ていうか、なんでこんなに懐かれてんだろうな、あたし」
乃々「無愛想ながらも、もりくぼみたいなダメ人間の話もちゃんと聞いてくれて、時にアドバイスを、時にツッコミを、相手が傷つかないギリギリの厳しさでしてくれる、そんな所に痺れて憧れてるんですけど……」
奈緒「乃々って洗ってない犬の匂いがするよな」
乃々「くはぁ!」
奈緒「うわっ! 吐血した!? 白目剥いてるし! 冗談! 冗談だからしっかりしろっ! 目を覚ませっ!!」
乃々「な、なんて酷いことを唐突に言うんですか……魂が大根おろしみたいになりかけたんですけど……」
奈緒「いや、すまん。なんとなく魔がさした」
乃々「や、やめてくださいね。もりくぼのハートはプレパラートよりも砕けやすいんですから……」
奈緒「プレパラートってなんだっけ? いや、まぁいいや。相談進めよう。相談」
乃々「は、はい。そうしていただけると助かります」
奈緒「じゃあ、バッサリいくけど、あれだ。仕事がんばれ」
乃々「ほ、本当にバッサリ……っていうか、ざっくりですね……」
奈緒「Pさんに捨てられたくないんだろう? じゃあ真面目に働こうぜ。そうしたら、そうそう悪いようにはならないよ。うん」
乃々「なんかテキトウになってません?」
奈緒「いやいや。そんなことないって。要するにあたしは、だ。焦らず頑張れ。そうすれば結果は後からついてくる。そんな感じのことを言いたいわけだ」
乃々「結果は後から……」
奈緒「うんうん。だからさ、がんばれ。そうすれば……まぁ、同棲とかはどうかと思うけど、Pさんの仕事が落ち着いたら、収まるべき所に収まるんじゃねーの?」
乃々「そうですよね……きっと、また前みたいにラブラブしたりいちゃいちゃしたりベタベタしたり……」
奈緒「ちっ……あー、コーヒーが美味い。スイーツも美味い。おねーさーん。このビーフシチューもひとつ!」
乃々「よく食べますね……」
奈緒「食わずやってられるか」
※ ※ ※ ※ ※
翌日 応接室
P「乃々、俺に合鍵を返してくれないか」
乃々「へ?」
乃々(聞き間違いでしょうか? 急に呼び出されたかと思うと、なんかPさんに酷いことを言われたような気がするんですけど……)
P「この前渡した俺の家の鍵だよ。もう一ヶ月くらい経つしな。そろそろ満足じゃないか?」
乃々(聞き間違いじゃありませんでした。Pさんにお家の合鍵をよこせと言われています。なんと言うか……お顔が怖いです。眼が冷たい気がするんですけど……)
P「もともと期間を決めてたわけでもないがな。最近あんまり帰れてないし、乃々もそろそろ飽きたんじゃないかと思ってな。今後のことを考えたら色々とまずいだろうし、それにどこからか漏れたのか、社長にもチクチク探りを入れられてるんだ」
乃々(…………)
P「このままだと大事になりそうだし、できれば乃々に鍵を返してもらいたい。嫌か?」
乃々(…………)
カチャカチャ
乃々「あ、あれ? て、手が震えて上手く取れませんね……。ちょ、ちょっと待ってください……今、キーホルダーから……は、外します……か、からっ……!」
P「…………」
乃々「…………」
P「…………」
チャリ
乃々「は、外れ……ました。あ、あの……こ、これ……お返し……します」
P「ん」
乃々「そ、それじゃあ、用事はおしまいですね。し、失礼するんですけど……」
P「…………」
乃々「…………」
乃々(奈緒さん……結果はもう既に決まってたみたいです……)
ガチャ
P「…………」
バタン
P「…………」
P「…………」
P「出て行った……か」
※ ※ ※ ※ ※
第二女子寮
乃々「久しぶりに寮の部屋に帰って来たんですけど……」
ぼふっ。
乃々(枕に顔を埋めても、何の匂いもしません。……まぁ、自分の匂いっていうのは分からないものです)
乃々「ベッドのお布団。しばらく干してないな……」
乃々(急な要求でしたが、上手く対処できたと思います。内心すごく動揺してましたが、平静を装って鍵をお返しできました……)
乃々「あそこで嫌だとゴネてぐずっても、Pさんを困らせるだけです。当然、色々と思うところはありますが……。うん。ありますよ。ありますとも。ありますけれども……。けど……もう……もう……」
乃々(色々と……)
乃々「むぅーりぃー……」
乃々(……枕は明日洗いましょう。今日はもう寝ます。寝てしまいます)
乃々「脱水症状起こしそうなんですけど……」
※ ※ ※ ※ ※
事務所
奈緒「はよーごさいまーっす」
P「お。奈緒か……」
ちひろ「奈緒ちゃん……」
奈緒「ん? どうしたんだ。変な顔して」
P「…………」
ちひろ「…………」
奈緒「お、おい? な、なんだよ? なんか暗くないか?」
P「あー……、しばらく前、奈緒が俺にメールで教えてくれたじゃないか。最近、乃々が構われ過ぎ、甘やかされ過ぎで文句言ってたぞ、って……」
奈緒「ん? おお。コーヒーショップでのやつな。乃々の愚痴やノロケを聞きながらスマホでポチポチと……。え? それがなんかマズかったのか?」
P「いや、俺もそれを教えてもらって反省してな。ドラマの出演やらイベントの主役やら、頑張ってる乃々への純粋な労いや……なんだろう? 愛おしさみたいな? そんな感じのもので必要以上に可愛がってしまってたみたいなんだな。ワガママも可能な限り叶えてやったり……」
奈緒「…………」
P「それが逆に乃々の負担になってたなら、俺も考えを改めないといけないな、と」
奈緒「色々言いたいけど、まぁ、同棲はやりすぎ」
ちひろ「同棲!?」
P「ちょっ!? 奈緒っ! それはっ!?」
奈緒「あれ? 意外とちひろさんは知らなかったんだ。うん。じゃあ、あれだ。冗談ですよ。ちひろさん。冗談」
ちひろ「いや、さすがにそれで誤魔化されは……」
P「スタドリ650本買います」
ちひろ「では話を進めましょうか。Pさんが甘やかし過ぎを反省した辺りから」
奈緒「自浄作用ないなー。この事務所」
P「そんなわけで、俺は乃々に少し厳しく、距離をとって接していこうと考えたわけだ。もうすんごい、胃がキリキリしたけどな!」
奈緒「お、おう」
P「状況的に本当に必要だったとはいえ、担当を外れるのは辛かった! 実は普通に帰れる時も事務所に泊まり込んだりした! 人肌が恋しかった! たまに我慢しきれずに帰宅した時、甘えてくる乃々に理性は崩壊寸前だった!! 生え際が2ミリ後退した!!」
奈緒(今更だけど、これ普通に両思いじゃね?) イラッ
ちひろ「650本……代金の請求書を……。端数はサービスで四捨五入しておきますね。70000円……と」
P「それでも何故か乃々は不服そうだった。なんか元気がなかった。要求通りに暴力的なことをするのは無理だけど、できるだけ冷たく、ドライに接した。それでも乃々に笑顔は戻らなかったんだ……」
奈緒「努力の方向性があさってだな」
P「そして昨日。乃々がまた奈緒を呼び出して相談しているという噂を聞いて俺は決心した」
奈緒「う、噂? どこからPさんに伝わるんだ、そんなもん」
P「これだけは避けたかったが、最終手段だ。断腸の思いで告げた。『乃々、鍵を返してくれ』って……」
奈緒「!!?」
P「乃々は意外にもあっさり合鍵を返してくれた。俺は内心複雑だったが、自意識過剰だったのかな、とも思った」
奈緒「い、いや……昨日の相談は……」
P「しかし、今日、問題が起こった。乃々がレッスン場に姿を現さないらしい」
奈緒「!?」
P「昔はよくあったことだが、最近にしては珍しい。不安に思った俺は乃々を訪ねるため、女子寮にお邪魔した。そこで今朝寮長が乃々から預かっていたらしいこんな物を受け取った」
奈緒「…………手紙?」
P「ああ、読んでいいぞ」
奈緒「なになに……。
『拝啓
新緑の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
この度、私、もりくぼは、Pさんがまったく構ってくれなくなったので、寂しくなり、家出をしようと決意しました。
寂しいですが探さないで欲しいです。それでは失礼します。
ほんとは寂しい森久保乃々』」
P「…………」
奈緒「…………」
P「森久保が家出した」
奈緒「…………」
P「どうしよう」
奈緒「ふん!」
P「ぐはっ!?」
ちひろ「三戦(サンチン)の構えからの正拳突き。隙なく無駄のない、美しい一撃がプロデューサーさんのみぞおちに!!」
奈緒「中途半端な口出しをしたあたしも悪い!! 謝る! ごめんなさい!! けど、Pさんの対応はもっと悪い!! 倫理的なことはさておいても、なんかもう色々酷い!!」
P「…………」(白目)
奈緒「どうしよう、じゃないだろう!! 男なら仕事も何もかも放り出して追いかけろよ!! 探せよ!! 見つけてやれよ!! すれ違いがあったのかも知れないけれど、何が間違っていたのかはその置き手紙で一目瞭然だろっ!!」
P「…………」(泡を吹いている)
奈緒「……うん! ごめん! ごめんなさい! カッとなってやり過ぎた!!」
ちひろ「聞こえてませんね。普通に悶絶してます。アイドルの護身術プログラム、出来は上々……っと」
※ ※ ※ ※ ※
P「いや~。三途の川の向こう側で小梅が手招きしてましたよ」
ちひろ「小梅ちゃん、生きてますけどね」
P「危うく川を渡りそうになった所で凛が脚に噛み付いて止めてくれました」
奈緒「止め方!!」
P「昔読んだ野球マンガで、野球部の先輩達に教育的指導を受けそうになった主人公を救う為に、幼なじみのヒロインが機先を制して主人公をボコボコにするシーンを思い出しました! たまには暴力系ヒロインもいいものですね!」
奈緒「あたしそのカテゴリーなのか!?」
ちひろ「どんなシーンですか」
P「ちひろさん、奈緒、俺行くよ。乃々を探してくる。しばらくの間、ここは任せるな」
ちひろ「はい。早く迎えにいってあげて下さい。ついでに代金の80000円、銀行で下ろしてきて下さいね」
奈緒「ツッコまねーぞ」
P「念のため確認……と。うん。机の下には誰もいないな」
奈緒「そりゃいないだろ」
P「じゃあ行ってきます」
バタン
奈緒「…………」
ちひろ「……行きましたね」
奈緒「ちひろさんは協力しないんですか?」
ちひろ「妹たちに連絡してチヒロネットワークを使えば手っ取り早く見つけられるかもしれませんが、ここはプロデューサーさんが自力で探すべきでしょう」
奈緒「……そっスか」
芳乃「ほー。では、わたくしの手助けは不要でしてー? 失せもの探しはお手のものですがー」
奈緒「なんで誰もいないはずの机の下から出てくるかな」
ちひろ「そうですね。あの人にはちゃんと苦労してもらいましょう。芳乃ちゃんは乃々ちゃんの無事を祈ってあげて下さい。あとついでにPさんに程々の天罰を」
芳乃「むー」
※ ※ ※ ※ ※
路上にて
P「はぁはぁ……。女子寮にも俺の家の周りにも見当たらない。近場の本屋や文具店も回ったけどいない……」
P「ネカフェはちょっと苦手って言ってたし……図書館……は近場にはないな。もしやと思って乃々の実家にも電話をかけてみたが、なぜかご両親に結婚式の予定と挨拶に来る日取りを聞かれた……」
P(あと心当たり……乃々が行きそうなところ……他のアイドルの所……? う~ん。まゆ、輝子、飛鳥、蘭子、幸子、美玲の所は確認したんだがな……)
P(そう言えばあの手紙……以前にも似たものを貰ったな……)
P(…………)
P「ああ、あの時は確か……!」
※ ※ ※ ※ ※
某所 物置き そのダンボールの中
乃々「暗い所は落着きます……」
乃々(レッスンをサボってしまいました。無断で完全にサボったのは初めてかもしれません……。いつもはPさんや他のアイドルさん達に見つかって連れ戻されてしまいますから……。こんなに遠くまで逃げた事もありませんでしたし)
乃々(しばらくPさんの顔は見れません。顔を合わせたら泣いてしまいそうです。泣くなら1人で……ひとりぼっちで泣きたいです)
乃々(Pさんも私がこんな所に隠れているとは思わないでしょう。この先どうするかなんて考えていませんが、取り敢えず今日のところはここに籠ります。幸いここの職員の方々は私に好意的でした。守秘義務的な概念はないのか、即、もりくぼバックレ協力なうって呟こうとした警備員さんには軽くムカつきましたが……)
乃々「しかし、もりくぼハウス……もといダンボールの中っていうのは、落着きますが、長時間いるとさすがに息苦しくなってきますね……」
乃々(立ち上がるのも億劫ですが……)
乃々「少しだけ外の空気を……」↑
P「よっ!」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「…………」↓
P「戻るな戻るな。無言で戻るな。柱時計の鳩でも一声鳴くぞ」
乃々「手羽先は関係ないんですけどっ!?」
P「言ってない言ってない」
乃々「な、なななんで、ここにいるんですかっ!? ここ会社から結構離れてるんですけどっ!? ノーヒントで見つけられる場所じゃないんですけど!? 誰ですか!? 密告したのは誰ですか!? もしかしてあの森久保乃々ファンクラブ会員番号765番とかいうなんとも微妙な数字の持ち主の警備員さんですかっ!?」
P「それは微妙に自慢しにくいな。いや、自力で見つけたよ。ていうか、ノーヒントでもないしな。ほら前に同じように乃々が家出した時、俺に言ったよな。『小一時間必死で探しまわって、汗だくになりながら、ようやく二人の思い出の場所で見つけて、こんな所にいたのか……って展開を希望します』ってな。だから思い出の場所を探してみた」
乃々「一言一句!? なんですか、その記憶力!?」
P「ここ……この劇場は乃々が初めて大きな仕事を経験した、思い出の場所だな。バックダンサーなんかじゃない。メインの一人ときて選ばれ、出演したライヴの会場だ」
乃々「…………」
P「あの時も乃々は嫌がって、怯えて逃げ出して……ここ、舞台裏に置いてあったダンボールに籠って隠れてたっけ」
乃々「…………」
P「隠れてはいるんだけど、もともと中に収めていた衣装やら小道具やらを周りに放り出して、代わりに中に入ってるもんだから、散らかり具合でバレバレだったなぁ……」
乃々「…………」
P「俺やみんなに説得され、引きつった笑顔で半分泣きながら……それでも乃々は、歌い、踊り、ライヴを終えた……。お世辞にも褒められた出来ではなかったかもしれない。けれど……」
乃々「けれど……良い……ライヴでした……。いい経験……良い思い出……でじだ」
P「…………」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「…………」
P「あー……。その……なんだ。小一時間どころか3時間以上は探し回ったぞ。そして、思い出の場所で見つけた。だから、言わせてもらうな」
乃々「…………」
P「『こんな所にいたのか』」
乃々「…………」
P「お待たせ。色々間違って、意地悪なことして悪かったな。ごめん。本当にごめん」
乃々「…………」
P「帰ろう」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「だぎじめでぐだざい」
P「ん。泣かせてごめん。ごめんな」
乃々「ううううううぅぅ…………ッ」
※ ※ ※ ※ ※
乃々「つまり、わざと冷たくしようとして、距離を置いたり、怖い顔で鍵を返せって言ったりしたんですか?」
P「すまん。ていうか怖い顔は多分、自責とか葛藤とか脱毛を堪えるために無心になっていただけだと思うんだがな」
乃々「なんか変なのが混じってますが……なるほど。もりくぼもM力が足りませんが、Pさんは本格的にS力が欠如していますね。センスがないです」
P「……まぁ、もともとどちらかと言うとマゾの人だからなぁ、俺」
乃々「セクハラなんですけど」
P「ええー……?」
乃々「明日からまたPさん育成計画を立て直す必要がありますね。立派なご主人様になってもらうために」
P「別の意味のご主人になら、なってもいいんだけどなぁ」
乃々「!!」
乃々「な、なななっ……!!」////
P(乃々は可愛いなぁ)
P「冗談はさておき、いつまでもお邪魔してるわけにもいかないし、そろそろ帰るか。ほら、手を出せ。行くぞ」
乃々「ぐ。うぅ~」
P「乃々の手はちっちゃいな~」
乃々「……Pさんの手がおっきいんですよ」
P「はいはい。行くぞー」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「……ねぇ。Pさん」
P「ん? なんだ? あ、足下段差あるから気をつけろよ」
乃々「最近もりくぼ、いつものヤツ……言わなくなったと思いませんか?」
P「いつものヤツ……ああ、あれか。
『Pさん、実は大事な話があるんです。お世話になりました。もりくぼは今日でアイドル辞めたいと思います』」
乃々「また一言一句……。まぁ、覚えられるくらいは繰り返し言いましたが……」
P「確かに最近、言わなくなったな。少しはアイドル活動が楽しくなってきたか? それとも、何度言ってもどうせ辞めさせてもらえないから……とか?」
乃々「その両方あります。けど、厳密にはちょっと違うんですけど……」
P「…………」
乃々「私がそのセリフを言わなくなった理由。その一番の理由は『怖くなったから』なんです」
P「怖くなった?」
乃々「アイドルを始めて、アイドルを続けて、色んなものを得ました。友達ができました。思い出ができました。好きな人ができました」
P「…………」
乃々「それを失うのが怖くなったからなんです。
せっかく手に入れたものを無くしてしまうことが……大きな舞台で歌ったり踊ったりすることよりも、その何倍も何倍も怖くなってしまったんです」
P「…………」
乃々「Pさんに『辞めてもいいよ』って言われるのが何よりも怖くなってしまったんです」
P「俺…俺は……」
乃々「だからPさん。これからは合鍵を寄越せなんて言いません。さっきはあんな風に言いましたが、無理して踏んでくださいとか蹴って下さいとかも、もう言いません。面倒くさかったらちょっとくらい無視しても構いません。だから」
乃々「だから、これからも森久保乃々をよろしくお願いします」
P「…………」
P「あー…………」
乃々「………Pさん?」
P「乃々、これやる」
乃々「これ、って……。なんですか? お財布?」
P「おう。俺のとお揃いだ。総選挙4位のお祝いな。これからあると便利だぞ。お札や小銭だけじゃなく、名刺とか小物まで入るんだ」
乃々「へーっ……。もりくぼが持つには少しは無骨な感じもしますが……お洒落ですね」
P「ここ暫く、レッスンメインの日が続いただろう。あれ、一種の羽休めみたいなもんだから。これからはCDの収録にソロライヴに合同記念ライヴ、あとラジオの仕事や、ダンス系の仕事も考えてる。ヘレンさんがポールダンスやボイスパーカッションの指導もしてくれるそうだ」
乃々「え? ちょ……」
P「色んな所に行って色んな人に会うからな。これからは名刺必須だ。その財布、フル活用してくれ」
乃々「ちょっと待って下さい。やっぱり前言を撤回したいんですけど……」
P「むぅーりぃー」
乃々「イラっとくるんですけど!!」
P「あはは。まぁ、頑張れ! 俺も頑張る。明日からもよろしくな!!」
乃々「うう~っ……!」
P「ああ、あとな」
乃々「……なんですか?」
P「その財布、キーホルダーにもなってるんだ」
乃々「……えっ?」
P「中身、見てみ」
乃々「……えっ?」
P「…………」
乃々「これ…………」
P「明日からもよろしくな!」
※ ※ ※ ※ ※
乃々「ところでさっきからずっと気になってたんですけど」
P「なんだ?」
乃々「なんでPさん、お迎えに来た時からお顔がボコボコなんですか?」
P「なんか知らんが、乃々を迎えに来たって言ったら警備員が殴りかかってきたんだ」
乃々「…………」
(なぜでしょう? Pさんの背後に芳乃さんの影が見え隠れしたような……)
乃々「あともう一つ気になったんですけど」
P「なんだ?」
乃々「もりくぼがPさんと仲良くしてること、社長さんに何か言われたって言ってませんでしたっけ? 大丈夫なんでしょうか、色々と……」
P「ああ、あれは嘘だ」
乃々「嘘!?」
P「ウチの社長はおおらかだからな。むしろマスコミ対策に、俺の家の表札を『第3女子寮』に替えたらどうだ?って笑ってたぞ」
乃々「自浄作用ないんですけど、この事務所」
※ ※ ※ ※ ※
エピローグ
P「乃々~。準備できたか~?」
乃々「はい。準備万端です。入っていいですよ」
ガチャ
乃々「……どうですか?」
P「…………」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「なにか言って欲しいんですけど……」
P「すまん。ちょっと見惚れてた」
乃々「なっ……!」
P「他のアイドル達で見慣れて免疫できてるつもりだったんだけどなぁ。うん。似合ってる」
乃々「うう~」
P「綺麗だよ。乃々」
乃々「め、面と向かって言われるとやっぱり恥ずかしいんですけど……」
P「あはは。乃々はやっぱりそういうヒラヒラした格好がよく似合うな。お姫様みたいだ」
乃々「もうお姫様って歳じゃないんですけど……」
P「お義母さんもお義父さんも喜んでたんじゃないか?」
乃々「お父さんはちょっと引くほど泣いてました。あとついでに、まゆさんと美優さんも泣いてました」
P「お、おう」
乃々「Pさんもよく似合ってますよ」
P「ん。さんきゅ。まぁ、おっさんなりに頑張ってみたよ」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「…………」
P「…………」
乃々「……ねぇ、Pさん。実は大事な話があるんですけど」
P「……なんだ?」
乃々「今までお世話になりました。……もりくぼはアイドルを辞めたいと思います」
P「…………」
P「ああ。辞めてもいいよ。お疲れ様」
乃々「そして、これからもお世話になります。ずっとずっと私を……乃々をよろしくお願いします。幸せにして下さいね」
おしまい。
※ ※ ※ ※ ※
蛇足。
乃々「という、未来のもりくぼルートか確定したので、皆さんにはPさんの家から出て行ってもらいたいんですけど」
まゆ・あやめ・イヴ・仁奈・周子・ありす・美優・凛・紗枝・七海・忍「お断りします」
乃々「多くないですか!?」
松尾千鶴「あやめさん、表札、こんな感じでいいでしょうか?」
乃々「もう1人いたんですけど!?」
75 : 名無しさ... - 2016/06/23 05:27:08 FhF 75/91
あやめ「『第三女子寮』。うむ。素晴らしい出来です。わたくしも書道の心得はありますが、やはり千鶴殿にお任せして正解でした」
乃々「社長のアイディア、実践してるんですけど!?」
千鶴「この報酬として、今日は私がPさんの横で寝させてもらいますね」
あやめ「約束ゆえ、仕方ありません。今日だけでござるよ」
乃々「しかも千鶴さんがデレ過ぎなんですけど!? エリアボスだった時の、あの感じの悪いツンツンクールな千鶴さんはどこに行ったんですか!?」
千鶴「か、感じが悪いとか言わないで下さいっ! 自分でもあの時のことは悪かったなーって思ってるんですから! だ、だから私を変えてくれたPさんには、今夜、私の全てで恩返しを……はっ! なっ、なんでもありません!」
乃々「この人意外と危険人物なんですけど!? もうツンの欠片もないんですけど!?」
まゆ「あやめちゃん。例の物、用意できましたか?」
あやめ「はい。ここに」
まゆ「うふ。これさえあればPさんと……」
乃々「その小瓶に入った怪しげな液体は何なんですか?」
あやめ「ただの強力な麻酔や…」
まゆ「しっ! あやめちゃん、ダメです!!」
あやめ「っと、危ない危ない。にんともかんとも」
乃々「麻酔薬って言いましたよね? ほぼ言いかけましたよね?」
まゆ「気のせいですよ。……あやめちゃん、今日はまゆで、明日はあやめちゃん。そこから日替わりローテでいいですかぁ?」
あやめ「むむ。仕方ありません。ちゃんと明日は譲って下さいね」
乃々「何の企みですか!? 何をする気なんですか!?」
まゆ「なんでもありませんよぉ」
あやめ「忍の口は堅いのです。たとえ拷問されても吐きません。強いて言うなら、今晩より新忍法を試みる予定、とだけ……」
乃々「……新忍法?」
あやめ「名付けて忍法『眠りの子篭ろう(こごもろう)』!!」
乃々「最低なんですけど!? もう本当に最低なんですけど!?」
千鶴「あの? 今晩、床を共にするのは私なのでそれはちょっと困るんですが」
乃々「そのツッコミもおかしいと思うんですけど!?」
美優「睡眠◯、そういうのもあるんですね……」
乃々「なしです!」
仁奈「睡眠◯ってなんでこぜーますか? 缶詰の仲間でごぜーますか?」
乃々「ああ!もう!教育に悪いんですけど!!
皆さん、下品でふしだら過ぎます! もっと慎みをもって欲しいんですけど!」
イヴ「乃々ちゃん、今日の夜、みんなに内緒でPさんとお風呂に入るのは私と仁奈ちゃんでしたか? それとも乃々ちゃんの番でしたか~?」
乃々「ちょ、く、空気を読んで下さい。皆さんの目が、目が怖いんですけど……」
喜多見柚「遊びに来たよ~」
綾瀬穂乃香「お邪魔します」
桃井あずき「忍ちゃん奪還大作戦!!」
乃々「また増えた!?」
槙原志保「お邪魔しまーす」
乃々「誰ですか!?」
志保「あ、Pさんにスカウトされたばかりの新人アイドル、槙原志保でーす。よろしくお願いします、先輩。あと、お店でのことPさんに漏らして、すみません!」
乃々「…………? あ。コーヒーショップの店員さんなんですけどっ!? え? アイドルになったんですか?」
志保「はい。元ウェイトレス、現アイドルの卵です♪」
周子「そういえば当のPさんはどこ行ったん?」
紗枝「さっきから姿が見えへんなぁ」
乃々「Pさんなら書斎でお仕事してるはずなんですけど」
ありす「……その書斎から、何やら変な声が漏れてきている気がするんですが」
一同「!?」
??『ああっ。Pさん、気持ちいい。も、もっと強く。は、激しくしていいからっ!!』
一同「…………」
P『ここか。 ここがいいのか?』
??『す、凄い。あたし、こんなの知らないっ!! も、もっと上を』
一同「…………」
乃々「ね、年少組以外、突撃!!」
ドガッ!!
一同「何してるんですかっ!!」
P「……えっ?」
奈緒「……げっ」
一同「…………」
乃々「床にうつ伏せになった奈緒さんがPさんに踏みつけられてるんですけど」
一同「…………」
奈緒「こ、これは……ま、マッサージだから! ベタなオチで悪いけどただのマッサージだから!!」
乃々「その割には奈緒さんがアイドルがしちゃいけない顔をしてたんですけど。ていうか、私が何度踏んでって言っても踏んでくれなかったのに、ズルいんですけど」
P「いや、本当にマッサージなんだけどな。最近よく肩が凝るらしくて、ちょっと前からちょくちょく頼まれてたんだ。俺が片足で体重かけるのがちょうどいいんだと」
奈緒「そう! だからやましいことは全然ないぞ!!」
乃々「う。……ま、まぁ、そういうことなら……」
P「しかしな、奈緒」
奈緒「ん? な、なんだよ?」
P「さっき、もっと上を踏んで欲しいって言ってきたが、これ以上、上となると、頭を踏むことになってしまうんだが……」
奈緒「それがいいんだろっ!!」
P「えっ!?」
乃々「…………」
一同「…………」
奈緒「あっ……」
P「…………」
奈緒「ち、ちがっ!」
乃々「奈緒さん……」
奈緒「ぐ。乃々……こ、これはその……」
七海「関係ない一般論れすけど、少女漫画とかでもありがちれすね。恋愛相談にのってた女友達が同じ相手に惹かれてしまうパターン。泥沼、寝取られ、鬱展開一直線れす~。まぁ、関係ない一般論れすけど」
乃々「奈緒さん……」
奈緒「七海ィ!! この前、相談に乗ってやっただろう!!」
七海「記憶にないれす」
奈緒「乃々。違うんだ! 本当に最初はただのマッサージのつもりだったんだよ!」
乃々「……最初は?」
奈緒「……ああ。そのつもりだったんだが、……なんか……途中から妙に気持ちよくなってきちゃってな……」
乃々「…………」
奈緒「結果、気がついたら、肩凝りをほぐすっていうのがPさんに踏んでもらう為の、ただの建前になってたんだ……」
乃々「…………」
奈緒「この前、あたしは言ったよな、乃々」
乃々「……何をですか?」
奈緒「結果は後からついてくる、って」
乃々「台無しなんですけどっ!!」
奈緒「ちなみに木馬は手枷足枷つきで30万したぞ」
乃々「購入済み!? 色々手遅れなんですけどっ!?」
美優「次、私が踏んでもらってもいいですか?」
乃々「美優さん!?」
まゆ「まゆはお尻と頭を踏んでもらいたいです」
乃々「順番待ち!?」
凛「わん!」
乃々「せめて日本語でお願いします!」
おしまい。
90 : 名無しさ... - 2016/06/23 05:32:39 FhF 90/91スタドリの本数は乃々の相場から。
トークバトルショーの時のデフォルメ千鶴のデレ方はヤバかった。
色々失礼しました。
91 : 名無しさ... - 2016/06/23 05:34:54 FhF 91/91関連
【デレマスSS】七海「グラタン」仁奈「お子様ランチ」沙理奈「ミックスグリル」
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【デレマスSS】周子「Pさん、まだかなー」まゆ「……」ありす「……」
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【デレマスSS】美優「仁奈ちゃんがママって呼んでくれないんです」乃々「はぁ……」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1461437696/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/13995717.html