1 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:15:02.55 W/ZtT7RRO 1/44

「ミキ…」

もう3ヶ月ほど経つだろうか?

スタジオから事務所に向かうタクシーが玉突き事故に巻き込まれ、激しく炎上した

運転手は即死だったが、美希はタクシーから這い出た

上半身を炎に包まれながら

元スレ
「ミキの顔、お化けみたいになっちゃった…」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328192102/

9 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:17:06.56 W/ZtT7RRO 2/44

病室の無機質なベッドに腰掛けた美希は、無表情で俯いた

いや、ひょっとしたらなにかしらの表情を作ろうとしたのかもしれない

しかし、それすらも分からないほど美希の顔は…

焼けただれていた…

14 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:19:37.50 W/ZtT7RRO 3/44

「みんな元気?」

「あぁ、元気だ。みんな美希のこと心配してる」

「そう…」

「お見舞いに」

「イヤ!!」

…だろうな、やっぱり

17 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:24:03.49 W/ZtT7RRO 4/44

「こんな顔、見せられない…」

「ミキ…」

ほとんど全て燃えてしまった髪の毛

左の瞼は閉じられ、二度と開くことはない
唇も、鼻も、耳も、以前と同じままのパーツは何一つ無かった

20 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:27:32.28 W/ZtT7RRO 5/44

「ホントはハニーにだって見せたく無かったの…」

「あぁ…」

「でもね、ハニーには見せなきゃダメだって思ったから」

「どういうことだ?」

顔を上げた美希が、残された右目で俺を見つめた
顔を背けたい衝動を何とかこらえた

正視するにはあまりにも辛すぎたから…

22 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:32:04.62 W/ZtT7RRO 6/44

「ミキ、ハニーのことが大好きだから」

「…あぁ」

「だから、見せなきゃダメなの!」

「そうか…」

「ハニーなら…ちゃんとミキの内面を見てくれるよね?」

その言い方に、過去の美希からは想像もできない"卑屈さ"を感じた
縋るような、媚びるような

23 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:35:31.55 W/ZtT7RRO 7/44

「俺は…」

「やっぱり…こんな顔じゃダメ…かな?」

「いや、そんなことは…」

もともと恋愛感情など無かった

と言えば良かったのだろうか?
確かにそれは事実だった

しかし…
俺は口には出せなかった

32 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:40:37.75 W/ZtT7RRO 8/44

「ミキね、小さい頃から、可愛い可愛い、って言われてきたの」

「…」

「もう、誰も言ってくれないよね…」

「きっと…」

きっと誰かが

そう言いかけて、口を閉じた

それは、"俺以外の誰か"というメッセージに他ならないから

37 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:44:51.98 W/ZtT7RRO 9/44

「ちょっと…トイレに行ってくる」

「うん」

病室から逃げ出したくて、嘘をついた

しかし、その罰はすぐに与えられた

「美希の…お父さん?」

「…あぁ。ちょっと良いかね?」

廊下はまだ明るかった

46 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:50:12.15 W/ZtT7RRO 10/44

「タバコ、吸うかね?」

「いえ。吸ってらしたんですか?」

「3ヶ月ほど前からね」

「そう…ですか」

喫煙スペースにタバコの煙が広がる

逃げ出したい気持ちは消えない

48 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:52:58.85 W/ZtT7RRO 11/44

「可哀想と思ったかね?」

「はい?」

「娘が、だよ」

「…すみません」

肯定の意を含んだ謝罪
罪悪感が胸を刺す

52 : 以下、名... - 2012/02/02(木) 23:57:09.18 W/ZtT7RRO 12/44

「事務所のことを責めるつもりはない。むしろ君らも犠牲者側だ」

「…はい」

「あの子は…美希は、太陽のような子だった」

「…はい」

過去形で語っているのは意図的なのか、それとも無意識なのか、俺には分からなかった

54 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:00:45.23 10/xpDYiO 13/44

「自慢の娘だったよ」

「…でしょうね」

「君に好意を寄せているようだね」

「えっ?」

いきなりの話題転換に驚いたが、あやふやな返答は許されそうになかった

「…えぇ、知っていました」

56 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:03:20.14 10/xpDYiO 14/44

「美希のこと、可哀想と思うんだね?」

「…はい」

「なら、君が幸せにしてやってくれよ」

「それは…」

徐々に荒くなっていく口調
しかし、俺は耐えるしかなかった

58 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:07:20.98 10/xpDYiO 15/44

「できないのかい?なぜだ?」

「お父さん、落ち着いて下さい」

「あんな顔になってしまったからか!」

「いえ、それは…」

このとき何を言えば許されたのだろう?

そうです

とでも言えば良かったのか?

64 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:12:08.10 10/xpDYiO 16/44

「…取り乱してしまった。すまない」

「いえ、大丈夫です…」

「正直に言って欲しい。美希が元のままだったら、君は美希を愛せたかね?」

「…わかりません。本当です!」

「これから美希を愛することは?」

「それも…わかりません」



68 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:14:29.80 10/xpDYiO 17/44

「私が君の立場なら、同じことを言うと思う」

「…」

「君の気持ちは、わかっているつもりだ」

「…はい」



72 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:18:24.96 10/xpDYiO 18/44

「美希は、私たち家族が幸せにする」

「お父さん…」

「君を責める気は毛頭ない。本当だ」

「だけど…」

「何かね?」

「それが美希にとって幸せなことなんでしょうか?」



74 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:21:45.62 10/xpDYiO 19/44

「堂々巡りだよ。私は『なら君が幸せにしてやってくれ』と返すだけだ」

「はい…」

「できないのだろう?」

「…」

何も言えなかったわけじゃない
何も言わなかっただけだ

例え卑怯者と罵られようとも…

77 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:25:04.09 10/xpDYiO 20/44

「このまま帰りなさい。そしてもう来ないでくれ」

「もう会わせて頂けないんですか?」

「会ってどうするのかね?」

「それは…」

病室で見た美希の顔を思い浮かべた
何を思ったかは…

言いたくない


79 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:29:07.37 10/xpDYiO 21/44

「私ももう君と会うことは無いだろう」

「…はい」

「では、失礼する」

「美希に…よろしくお伝え下さい」

形式的なだけのその言葉に対する返事は、もう返ってこなかった

81 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:35:29.80 10/xpDYiO 22/44

その後、美希がどうなったかは分からない
どこかに引っ越したという噂も聞いたが、確かめる気は起こらなかった

繰り返される自問自答

―俺は外見でしか人を愛せない人間なのか?

―いや、あの顔は誰だって無理だ


―誰かのことはどうでもいい、お前はどうなんだ?



82 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:38:20.11 10/xpDYiO 23/44

俺は…俺は…

誰か教えて欲しい
俺はどうすれば良かったのか
美希自らが"お化けみたい"と言ったその顔を、撫でてやれば良かったのか?

そして、誰か答えてほしい


あなたなら、愛せますか?



お し ま い

85 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 00:41:00.42 10/xpDYiO 24/44

おしまいなの

美希を犠牲にしたかったわけじゃなくて、テーマ上、一番書きやすかったのが美希だったんだ…

みんななら、愛せますか?

読み返してきます

136 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 01:50:23.11 10/xpDYiO 25/44

続きは…

ひたすら鬱なだけだが良いのだろうか?

145 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 01:58:44.93 10/xpDYiO 26/44

ミキはいま、どこにいるのかな?

遠い所へ引っ越したのは知ってる
そこがどこなのかも聞いた

でも、覚えてないの
ハニーがいなってことには変わりないから

146 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:01:48.14 10/xpDYiO 27/44

森に囲まれた小さなおウチ

このおウチを買うためにパパがずいぶん無理をしたってことも知ってる

部屋の窓から見える空は、前の場所で見たよりもずっと青い

でも、それだけなの

148 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:06:13.82 10/xpDYiO 28/44

気がつくと、またあの曲を口ずさんでた

大好きハニー イチゴみたいに 純情なの
ずっと見てて 絶対よ!

ミキはまだ、純情なのかなぁ?

「なんでミキなの?」

って、何回も何回も思っちゃったけど…

まだイチゴみたいに純情なのかなぁ?

151 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:09:19.39 10/xpDYiO 29/44

事務所のみんなには引っ越し先を教えなかったって、パパが言ってた
だから、手紙なんて来るハズない

前の携帯も解約させられたから、メールも来るハズない

自分から手紙を送る気には、どうしてもなれなかった

なのに待ってる
勝手だよね、ミキ

153 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:13:34.79 10/xpDYiO 30/44

夏はすぐそこまで来ていて、いまは梅雨のジメジメをやり過ごしてるところ

去年までと違うのは…

今年は、新しい水着のコトなんて考えなくてもいい、ってところかな?

こんな身体だもん、ミキ

157 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:16:56.84 10/xpDYiO 31/44

あーあ

イヤだなぁ

どんどん卑屈になっていくの

前のミキがどんな風だったか、もう思い出せなくなっちゃったなぁ



158 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:19:47.78 10/xpDYiO 32/44

何となくラジオを着けてみた

そこからは、聞いたことのある声が流れてきたの

千早さん、新曲出したんだね

おめでとうございます、なの



162 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:23:37.06 10/xpDYiO 33/44

…いいなぁ

ミキも、もっと歌いたかったなぁ

もっともっと踊りたかったなぁ

…曲が終わる前にラジオ消しちゃった

ミキ、やっぱり卑屈になってるのかなぁ?

163 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:27:06.84 10/xpDYiO 34/44

教えてハニー 未来は何色?

口ずさみながら想像してみたけど、明るい色は思い浮かばなかったの

本物のハニーなら、何て言うかな?
今度はちゃんと、ミキの顔見てくれるかな?

あのとき我慢してたの知ってるんだよ?

166 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:30:13.55 10/xpDYiO 35/44

外で車の音がした

ママが出かけたみたい
夕飯の買い出しかな?

車の音が消えるのを待って、ママの部屋に忍び込んだの

えっと…
どこかなぁ?

あ!あった!
ママのお化粧道具!

169 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:34:04.04 10/xpDYiO 36/44

鏡を見るのは久しぶりなの

うーん…
ママ、口紅の色濃すぎなの!

もっとミキに似合うの持っといてほしいの!

火傷のせいで上唇が引きつってるから、塗りにくいなぁ

172 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:38:34.65 10/xpDYiO 37/44

できたの!

アハッ

ミキ、やっぱりお化けみたいなの!

でもまぁ、いっかぁ

そうだ!
ついでに、アヒルの練習もしとこっかなぁ?

173 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:41:39.05 10/xpDYiO 38/44

いいことを 思いついたの 白いドレスを 着ている私を
早くねぇ 見たいでしょ?

ドレスじゃなくて白いワンピースだけど、仕方ないよね?

カーテンは…
開けとくの

空が見えるように

174 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:44:08.18 10/xpDYiO 39/44

一枚だけ持ってたハニーの写真を抱きしめて、ベッドに腰掛けたの

ごめんね、ハニー
こんな身体に抱きしめられたくないよね?

…っと

ミキ、また卑屈になってたの!

176 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:47:43.50 10/xpDYiO 40/44

大好きハニー 未来は二人

白いワンピースが、少しずつ赤く染まってる

ママ、ごめんなさいなの
洗濯しても落ちないよね、これじゃ

できたら、ミキと一緒に燃やしてほしいな
この写真も、ね

179 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:50:09.83 10/xpDYiO 41/44

シーツも赤くなり始めちゃったの

パパ、ごめんなさいなの
もう使えないよね、このベッド

できたら、ここに置いといてほしいの

ミキのステージとして

183 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 02:55:42.80 10/xpDYiO 42/44

カランカランって 鳴らしたいの

…ホントに聞こえてきちゃったの
カランカラン、って音

遠くのほうで、カランカラン、って

ハニーにも聞こえるよね?

うん!
ジューンブライドなの!

185 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 03:01:38.16 10/xpDYiO 43/44

ミキ、ずっとハニーのこと見てるね?

あふぅ…

ミキ、もう眠くなってきちゃったの

だから寝ちゃう前に言うね?

ハニーもミキのこと

「ずっと見てて 絶対よ!」

なの!

…あぁ
空は青いよ、ハニー



お し ま い

187 : 以下、名... - 2012/02/03(金) 03:03:55.69 10/xpDYiO 44/44

今度こそおしまい

最後まで明るいミキでいて欲しかったから、なるべく悲壮感は出さないようにした

読み返してきます

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