1 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:40:21.65 b06GacQe0 1/13

智絵里「ね、ねぇ……芳乃ちゃん?」

芳乃「おや、智絵里殿ー。どうしましてー?」

智絵里「あのね……ちょっと相談があるんだけど――」

芳乃「ほー、相談でしてー?」

智絵里「うん……ダメ?」

芳乃「もちろん、かまいませぬー」

芳乃「わたくしの生業は元より悩みを聞き、導くことゆえー」

芳乃「いかなる悩み事でも受け止めましょー」

智絵里「いや、悩み事とはちょっと違って……」

芳乃「ほー?」

智絵里「あの……この前のクローバーを探す合宿の時に……」

芳乃「うむー」

智絵里「クローバーの声に耳を傾ければ、クローバー探しが上手くなるって……」

芳乃「ふむー……確かに言いましてー」

芳乃「すべての生命には魂がありー、意思があるゆえー」

芳乃「その声の導きに従えばー、おのずと見つかるでしょー」

智絵里「う、うん……」

智絵里「……でもね、芳乃ちゃん」

芳乃「なんでしてー?」

智絵里「……クローバーが喋ってくれないんです」

元スレ
智絵里「クローバーが喋ってくれない……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478612420/

2 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:41:40.46 b06GacQe0 2/13

芳乃「話してくれない、でしてー?」

智絵里「うん……」

智絵里「えっとね……このクローバー……クーちゃんって言うんだけど」

芳乃「ほー、名前をつけたのですねー」

智絵里「う、うん……」

智絵里「声を聞くにはまず友達にならなくちゃかな……って。裕子ちゃんも――」

裕子『私もまずはスプーンと友達になるところからはじめました!』

智絵里「――って言ってたし……」

芳乃「……なるほどー」

智絵里「……も、もしかしてダメだった……?」

芳乃「いえ、そんなことはありませぬー」

芳乃「人から好意を受ければ人に好意を向けるように、そなたがクローバーに――」

智絵里「――クーちゃんですっ」

芳乃「……クーちゃんに好意を向ければ、クーちゃんからも好意を向けるゆえー」

芳乃「人と草の仲から一歩進むには最善でしょー」

智絵里「あ、そうなんだ……よかった……」

智絵里「それでね……私、クーちゃんに毎日話しかけてたの」

芳乃「ふむー」

智絵里「おはようからおやすみまで……たくさん……」

智絵里「……でも」

智絵里「……でも、クーちゃんが私に話しかけてくれないんです……」

芳乃「ふむふむー」

3 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:43:52.59 b06GacQe0 3/13

芳乃「……なるほどー」

芳乃「そなたの悩みはしかとわかりましてー」

智絵里「どうしたらクーちゃんは喋ってくれるのかな……」

芳乃「……一度そのクローバー――」

智絵里「――クーちゃん」

芳乃「……クーちゃんを見せてもらってもー?」

智絵里「あ、うん」

智絵里「……傷つけないでね」

芳乃「もちろんでしてー」

芳乃「……」ジー

智絵里「……」ゴクッ

芳乃「……ふむー」

智絵里「な、何かわかった……?」

芳乃「わたくしがみたところー、クロ……クーちゃんにはー」

芳乃「魂が宿ってないのでしてー」

智絵里「えっ……!」

芳乃「いえ、そんなに驚かれてもー」

芳乃「さすがに押し花にしてしまえば魂は消えてしまいますー」

芳乃「生命ではなく、モノとなりましたゆえー」

智絵里「そ、そんな……!」

芳乃「そこまで気を落とさずともよろしくてー」

芳乃「そなたがクーちゃんに愛を与え続ければ、いずれ付喪神となりて新たな生を宿すでしょー」

芳乃「さすれば、神となりしクーちゃんと友人関係になることができるはずでしてー」

智絵里「あ、そうなんだ……よかった……」

智絵里「……ふふっ、これからもよろしくね、クーちゃん……!」

芳乃「一件落着でしてー」

4 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:46:06.01 b06GacQe0 4/13

智絵里「……あっ、な、なんでやねん!」ポフッ

芳乃「わふっ」

智絵里「ま、まだ私の悩み解決してません……!」

智絵里「クーちゃんは喋ってくれなくても……でも、他のクローバーとなら……」

芳乃「喋ることはできるでしょー」

智絵里「本当……!?」

芳乃「それらはすべて、生えているクローバー――生きているクローバーのみではありますがー」

智絵里「ううん、ぜんぜんいいですっ!」

智絵里「ど、どうやったら喋れるようになれるの、芳乃ちゃん……!」

芳乃「ふむー……」

芳乃「……口で説明するのは難しいゆえー、実際に行きましょうー」

智絵里「実際に……?」

芳乃「智絵里殿ー。近くにクローバーの群生地はありましてー?」

智絵里「……うん、そんなに遠くないところに」

智絵里「たくさん生えてて……あまり人もいなくて……だから、すごいリラックスできて……」

智絵里「私もよくいってるんです」

芳乃「ほー」

芳乃「そのような場所を教えてもらってもよいのでしてー?」

智絵里「うん、大丈夫」

智絵里「芳乃ちゃんはお友達だから……ふふっ」

芳乃「……えへー」

5 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:46:33.90 b06GacQe0 5/13

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


智絵里「ここだよ、芳乃ちゃん」

芳乃「ふむー、なるほどー」

芳乃「確かに人の目につかぬ場所でしてー」

智絵里「うん……」

智絵里「ここでね……こう……ゴロンってなるとね」ゴロン

智絵里「クローバーに囲まれて……気持ちいいんですっ」

芳乃「ふむー」ゴロン

芳乃「……ほー」

芳乃「これはー、なかなかー」

智絵里「ふふっ」

芳乃「ふふー」

智絵里「……」

芳乃「……」

智絵里「……気持ちいい」

芳乃「でしてー……」

智絵里「……」

芳乃「……」

智絵里「……」

芳乃「……」

智絵里「すー……」

芳乃「すー……」

6 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:49:22.38 b06GacQe0 6/13

智絵里「……はっ!」

智絵里「芳乃ちゃんに教えてもらうんだった……!」

智絵里「私寝ちゃってた……芳乃ちゃんは……?」

芳乃「……すー」

智絵里「あ……芳乃ちゃんも寝てる……」

智絵里「どうしよう……でも……」

智絵里「……」

智絵里「……芳乃ちゃん……おきて、起きて……!」

芳乃「……うむー?」ゴシゴシ

智絵里「あ……おはよう、芳乃ちゃん」

芳乃「おはようございますー……」

芳乃「……あー」

芳乃「すみませぬ智絵里殿ー、寝てしまいましてー……」

智絵里「ううん……私もさっきまでぐっすり寝てたから……」

芳乃「……」

智絵里「……」

芳乃「……こほん」

芳乃「それでは、仕切りなおしまして、そなたに草木の声を聞く術を教えましょー」

智絵里「あ、うん。お願いしますっ!」

7 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:50:33.15 b06GacQe0 7/13

芳乃「しかし、それほど難しいことはありませぬー」

智絵里「そうなの……?」

智絵里「てっきり、なにか特別な修行でもするのかと……」

芳乃「いえいえ、そんなことはありませぬー」

智絵里「でも……裕子ちゃんが――」

裕子『草木の心を読みたい……なるほど、智絵里ちゃんはサイコメトリーになりたいですね!』

裕子『それならサイキックな修行をしなければ! さあ、サイキック合宿しましょう!』

智絵里「――って」

芳乃「裕子殿とわたくしでは方法が違うのでしてー」

芳乃「裕子殿の方に修行が必要でもー、わたくしの方には必要ありませぬー」

智絵里「あ、そうなんだ……」

芳乃「それでは智絵里殿ー、草木の声を聞く術なのですがー」

智絵里「うん……」ゴクッ

芳乃「心を草木に傾けるのですー」

智絵里「……心を傾ける?」

芳乃「でしてー」

8 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:51:28.43 b06GacQe0 8/13

智絵里「えっと……?」

芳乃「今、わたくしたちの心はわたくしたちにありましてー」

智絵里「う、うん……」

芳乃「その心を、クローバーへと傾けるのですー」

智絵里「……?」

芳乃「別な言い方をすれば、寄り添わせるのですがー」

芳乃「……ふむー。実際に試してみた方が早そうでしてー」

芳乃「智絵里殿ー、目をつぶるのでしてー」

智絵里「あ、うん……」

芳乃「そうしたらー、自分を俯瞰的に見ている自分を想像しましてー」

智絵里「……」

智絵里「……できました」

芳乃「それでは、その俯瞰的に見ている自分を、声を聞きたい生命の元へと向かいましてー」

智絵里「……」

智絵里「……」

智絵里「……できました」

芳乃「あとはそのまま耳を傾けるのでしてー」

芳乃「静かに、話しかけてくれるのを待つのでしてー」

智絵里「……」

智絵里「……」

智絵里「……」

9 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:53:20.73 b06GacQe0 9/13

智絵里「……!」

智絵里「きっ、聞こえました、芳乃ちゃん……!」

芳乃「ふふー、おめでとうございましてー」

智絵里「ありがとうございますっ!」

智絵里「わぁ……本当に聞こえた……!」

智絵里「やった……やったっ!」

芳乃「どのようなことを話されましてー?」

智絵里「『こんにちは、智絵里ちゃん』って……このあたりのクローバーさんから……!」

智絵里「えへへっ、こんにちは……♪」

芳乃「……ふふー」

芳乃「教えたかいがありましてー」

智絵里「うん……教えてくれてありがとうございました、芳乃先生……!」

芳乃「先生……でしてー?」

智絵里「うん、先生ですっ……!」

芳乃「……ふふー」

芳乃「ふふふー……先生……えへー」

智絵里「ふふっ」

10 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:53:57.84 b06GacQe0 10/13

智絵里「……あれ?」

芳乃「どうしましてー?」

智絵里「声が聞こえるのはいいんですけど……」

智絵里「……でも、四葉のクローバーの場所はわからないんじゃ……」

芳乃「いえ、そんなことはありませぬー」

芳乃「そなたから尋ねればよいのでしてー」

智絵里「……尋ねる?」

芳乃「でしてー」

芳乃「そなたから問いかけた後ー、問いかけたものの声を聞けばー、答えがもらえるかとー」

智絵里「そうなんだ……」

智絵里「えっと……じゃあ……この子」

智絵里「四葉のクローバーはどこにありますか?」

智絵里「……」

智絵里「……」

智絵里「……あ、そうなんだ。ありがとうございます」

芳乃「なんとー?」

智絵里「『ここから左に3歩くらい、前にに1歩くらいのところにたくさん咲いてます』だ

そうです」

芳乃「ほー」

智絵里「じゃあ、早速……1……2……3……で、前に1……」

智絵里「このへん……」

智絵里「……あ、本当……!」

智絵里「四葉のクローバーがたくさん……!」

智絵里「わぁ……!」

11 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:56:09.02 b06GacQe0 11/13

智絵里「本当にありがとう、芳乃ちゃん……!」

芳乃「いえいえー」

芳乃「確かに術を教えたのはわたくしですがー」

芳乃「すぐに声が聞けたのはそなたがクローバーを本当に好んでいたからでしょー」

智絵里「そうかな……?」

芳乃「でしてー」

芳乃「その他のものの声を聞くには時間がかかるかもしれませぬがー、そなたなら大丈夫でしょー」

芳乃「ふふー、優秀な生徒を持って先生は嬉しいのでしてー」

智絵里「ふふっ」

智絵里「ありがとうございますっ、芳乃先生……!」

芳乃「うむー、よきにはからえー、なんてー……ふふー」

智絵里「あとはクーちゃんと喋れれば……」

芳乃「その気持ちを胸にー、常に愛で続けませー」

智絵里「うん……いつか神様が宿るまで……だよね?」

芳乃「でしてー」

智絵里「じゃあ、それまで……大切にしなきゃ……」ギュッ

芳乃「……それではー、今度こそ一件落着したゆえー」ゴロン

智絵里「どうしたの、芳乃ちゃん?」

芳乃「少々寝たりないゆえー、もう一度寝ようかとー」

智絵里「あ……起こしちゃったもんね」

芳乃「智絵里殿も一緒に寝ましてー?」

智絵里「……そうしようかな」

智絵里「えいっ」ゴロン

智絵里「ふわぁ……」

芳乃「ふふー……気持ちいいのでしてー」

智絵里「えへへっ……そうですね……」

芳乃「それではー」

智絵里「うん、おやすみ……」







おしまい

12 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:57:29.92 b06GacQe0 12/13

元ネタはドリフユニットの「クローバーをさがして」より
このユニット最高に可愛いし、きっとちえりんにはすぐクローバーの声が聞こえる。

誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。

13 : ◆6QdCQg5S.DlH - 2016/11/08 22:58:53.15 b06GacQe0 13/13

最近書いたの
乃々「まゆさんが迷子です」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478102061/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/7962740.html

茜「文香ちゃん、膝枕してもらえませんか?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477573256/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/7766729.html

まゆ「朋さんと風邪」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477319964/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/7677757.html

ありす「最近のフレデリカさんは私を甘やかしすぎです!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476441604/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/7367974.html

よかったらこちらもよろしくお願いします

記事をツイートする 記事をはてブする