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【ラブライブ】穂乃果「テニスをしよう!」ツバサ「おもしろそうね」【前編】

267 : 以下、名... - 2016/08/14 23:06:12.67 ykiitVwmO 178/347

――――――



「ねぇ、にこちゃん! 凛にも『矢澤ゾーン』教えてほしいにゃ!!」

にこ「『にこにーゾーン』だって言ってるでしょうがッ!」ゲシッ



「にゃにゃ!?」

にこ「ったく」

にこ「……そもそもあれは教えるとかそういうんじゃないわ。感覚的なものもあるし」

「えー」ブーブー

にこ「とにかくブーブー言わない」

「ニャーニャー!!」

にこ「うっさい!」ゲシッ

「いたっ!! いたいにゃー」

にこ「花陽、あとで凛にはちゃんと言っときなさい」

花陽「あ、あはは……」



花陽「そ、それよりもにこちゃん、大丈夫?」

にこ「あぁ、これ?」

花陽「う、うん」

にこ「ま、大したことはないわ。ちょっと痛むだけよ。この試合、ダブルス1の解説くらいは出来るわ」

花陽「……そ、そっか」

にこ「真姫ちゃんにも見てもらって、冷やしておけば問題ないらしいし」

花陽「それならいいんだけど……」

にこ「…………」

にこ「……ま、気持ちは受け取っておくわよ」ナデナデ

花陽「……あ、えへへ///」

268 : 以下、名... - 2016/08/14 23:13:53.46 ykiitVwmO 179/347

「むむむ!」


「にゃー!!」グイッ

花陽「ぴゃっ!? り、りんちゃん!?」アワアワ


「にこちゃん!」

にこ「? なによ?」

「……かよちんを盗っちゃダメだよ!」

花陽「り、りんちゃんっ///」

にこ「…………別に盗るつもりはないわよ」ハァァ



あんじゅ「ほほえましいわぁ」フフフ

英玲奈「…………」

あんじゅ「英玲奈、どうかしたぁ?」

英玲奈「その微笑ましい光景を壊そうとしてたのはどこの――」

あんじゅ「……や、やめて」メソラシ


269 : 以下、名... - 2016/08/14 23:21:11.74 ykiitVwmO 180/347


英玲奈「さて、あんじゅを責めるのはそろそろ止めて、次の試合の選手を紹介するとしようか」

花陽「あ! 次のダブルス1って……」

英玲奈「あぁ。君たちにも知らせてなかったゲスト二人。その二人がこちらのダブルスだ」

花陽「それは一体……」

英玲奈「そうだな。では、早速紹介しよう」

270 : 以下、名... - 2016/08/14 23:35:30.10 ykiitVwmO 181/347


「私たちがゲストって……プレッシャーが……」

「~~っ」

「って、あれ? 大丈夫?」

「~~~~っ」

「おーい?」

「~~~~~~っ、ついに!!」



「このときがきた!」ババンッ



「び、びっくりしたぁ……。ていうか、緊張してるのかと思ったけど、興奮してたんだね」

「うん、まな板のコイって感じだね!」

「……えっと、それはちょっと違う気がするけど……」

「?」

「ま、緊張してるわけじゃないからいいか」

「あ、キンチョーはしてるよ? だって、憧れの人と試合するんだもん!」

「……でも、緊張、してるようには見えないよ」

「うーん? それは安心できる人がペアたから、かな?」エヘヘ

「っ……そ、そっか」プイッ

「えへへ」

「…………///」
「楽しみだね♪」

「…………はぁ、もう!」




雪穂「行くよ! 亜里沙っ!」

亜里沙「うん、いこう! ユキホ!」



271 : 以下、名... - 2016/08/14 23:45:17.98 ykiitVwmO 182/347


「はぁぁ……」

「大丈夫……ではなさそうですね」

「えぇ。まさか亜里沙が相手なんてね……」

「まぁ、確かに相手としてはやりずらそうです」

「慕ってくれる相手だから?」

「え、あっ……その……はい///」

「ふふっ……もう1人は雪穂ちゃん、か」

「雪穂も正直戦いたくはないのですが……」


「あぁ。歳は違うけれど、雪穂ちゃんも幼馴染だものね」

「はい。ですが、試合とあっては関係ありません。相手が誰であれ全力を尽くすのが礼儀ですから」

「……それは私も分かってる。もちろん、私も全力を出すわ」

「はい。では――」




海未「――頼りにしていますよ、絵里」

絵里「……えぇ、任せて」



272 : 以下、名... - 2016/08/14 23:47:22.84 ykiitVwmO 183/347

――――――



ダブルス1



絢瀬絵里      絢瀬亜里沙
園田海未  vs   高坂雪穂



試合開始



――――――

276 : 以下、名... - 2016/08/15 21:34:18.00 yyzsxGsuO 184/347

『1セットマッチ』
『サービス 絵里』



絵里「さ、始めるわよ?」ターンターン

海未「一本集中ですよ、絵里」

絵里「えぇ」ターンターン


亜里沙「気をつけてね、ユキホ」

雪穂「うん、分かってる」グッ


絵里「……っ」スッ



絵里「――ふっ!!」パァァァァン



雪穂「っ!?」



『うみえり 15 - 0 ありゆき』



海未「流石、絵里です」スッ

絵里「えぇ」スッ



―― パシンッ ――



277 : 以下、名... - 2016/08/15 21:37:47.42 yyzsxGsuO 185/347

絵里「さ、もう一本いくわ。手加減はしないわよ?」ターンターン

亜里沙「モチロン! 受けてたつよ」

絵里「ふふっ」スッ



絵里「――はっ!!」パァァァァン



亜里沙「っ」ブンッ



『うみえり 30 - 0 ありゆき』



海未「絵里!」スッ

絵里「順調ね」スッ



―― パシンッ ――




亜里沙「…………」

雪穂「亜里沙? どう?」

亜里沙「……うん」

雪穂「そっか」

278 : 以下、名... - 2016/08/15 21:55:12.63 yyzsxGsuO 186/347

――――――



にこ「さすがに速いわね」



花陽「長身と体のバネをフルに使った『高速サーブ』」

花陽「絵里ちゃんだからこその技だよね」



「にこちゃんのとは全然違うにゃー」

にこ「そりゃそうよ。にこのはあくまでもにこの体で再現してるだけだし。本家はやっぱり別格ね」

英玲奈「あれを返せるのは、東條希だけか?」

にこ「でしょうね。といっても、前回のは絵里が疲れてたし、ベストコンディションならたぶん誰も返せないわ」

あんじゅ「あっ、そういってるあいだに……」



――――――



絵里「――もう一本!」パァァァァン



亜里沙「えいっ」ブンッ



『うみえり ① - 0 ありゆき』

279 : 以下、名... - 2016/08/15 22:06:54.13 yyzsxGsuO 187/347

絵里「まずはこれでいいかしら?」スッ

海未「はい。十分です」スッ



―― パシンッ ――



絵里「次は私、前に行くけれど」

海未「分かっています。後ろは任せてください」コクリ

絵里「ふふっ、頼もしいわね」

海未「い、いえ。そんなっ」

絵里「謙遜しなくていいわ。頼りにしてる」ナデナデ

海未「っ、はい///」

280 : 以下、名... - 2016/08/15 22:13:55.37 yyzsxGsuO 188/347




亜里沙「…………」ジィィィ



雪穂「亜里沙?」

亜里沙「…………」ジィィィ

雪穂「亜里沙ったら!」

亜里沙「え! あ、うん! おしるこだよね!」

雪穂「…………はぁぁ」

亜里沙「ごめん、ユキホ……」

雪穂「まぁ、いいけど。どうせ、海未ちゃんのこと見てたんでしょ?」

亜里沙「……うん」

雪穂「…………」

亜里沙「…………」

雪穂「……大丈夫そう?」

亜里沙「…………うん」

281 : 以下、名... - 2016/08/15 22:23:01.85 yyzsxGsuO 189/347

『チェンジサービス』
『サービス 雪穂』



雪穂「……行きますよ、絵里さん」ターンターン

絵里「いつでもいいわよ?」ニコリ

雪穂「っ!」スッ



雪穂「やっ!!」パァァァァン



絵里「穂乃果よりは強いわね。けど!!」ダッ

絵里「はあっ!!」パァァァァン

雪穂「っ」ダッ


雪穂(余裕で返されたっ! やっぱりサーブじゃ崩せないよね)

雪穂(……なら)


雪穂「はっ!」パァァァァン




「打ち頃、ですね」



―― パァァァァン ――



雪穂「っ!?」キョロキョロ


―― トンッ トンッ ――


雪穂「見えなかった……」

雪穂「これが……」ゴクリッ



海未「『疾きこと風の如く』」



海未「全力でいかせてもらいます」

海未「手加減はなし、ですよ。雪穂」ニコリ

雪穂「っ」ゾクッ



『うみえり 15 - 0 ありゆき』

282 : 以下、名... - 2016/08/15 22:31:54.16 yyzsxGsuO 190/347

雪穂「…………」ターンターン

亜里沙「きりかえて! ユキホ!」

雪穂「う、うん」ターンターン


雪穂(……やっぱり海未ちゃんも強い。たぶん私じゃ敵わない)

雪穂(だから……)チラッ


亜里沙「……」ジィィィ

雪穂「……うん」スッ



雪穂「やっ!」パァァァァン



海未「……行きますよ、雪穂」グッ

雪穂「えっ?」

海未「一射必中」シャァァァ



海未「『ラブアローシュート』!!!」パァァァァン



雪穂「なっ!?」



『うみえり 30 - 0 ありゆき』



雪穂「こんな序盤で……しかも、リターンで使ってくるなんて……」

海未「言ったでしょう? 手加減はしません、と」

雪穂「っ」



絵里「ナイスショット、海未」スッ

海未「はい!」スッ


―― パシンッ ――



283 : 以下、名... - 2016/08/15 22:47:10.16 yyzsxGsuO 191/347

――――――



英玲奈「恐ろしく強いな、彼女」

花陽「はい! どんな相手でも対応できる『風林火山』に海未ちゃんの必殺ショット『ラブアローシュート』」

花陽「たぶん海未ちゃんはμ'sの中で一番強いと思います」

英玲奈「だろうな」


にこ「…………」

あんじゅ「そんな海未さんに勝ったんだもの、にこさんってすごいわよねぇ」

にこ「ま、まぁ? にこはμ's最強だから~?」ダラダラ

「にこちゃん、汗すごいにゃ」プププ

にこ「うっさい!」



にこ「……とは言っても、まぁ、分かってる」

にこ「あれは運が良かったのよ。次やったら勝てる自信はさっぱりないわ」



英玲奈「無論、君が彼女に勝ったのは紛れもない事実だ」

にこ「そうね。まぁ、よくも悪くも海未はまっすぐだし、案外にことか希とかには弱いのかもしれないけど」

花陽「それでも、やっぱり……」



にこ「えぇ、海未は最強よ」



――――――

284 : 以下、名... - 2016/08/15 22:52:26.52 yyzsxGsuO 192/347

――――――


海未「『侵掠すること火の如く』ッ!!!」ベシィィィィィン



『うみえり ② - 0 ゆきあり』


――――――



海未「2ゲーム先取です」スッ

絵里「流石、海未ね♪」スッ



―― パシンッ ――



絵里「この調子で行きましょう」

海未「はい!」

絵里「次は海未のサーブだけど、大丈夫かしら?」

海未「任せてください。絵里は前衛に入って『ショートスネイク』で決めていただけるとありがたいです」

絵里「了解よ♪」

海未「では」

絵里「えぇ、あと2ゲーム! そして、穂乃果へ繋げましょう!」

海未「はい!!」



――――――

285 : 以下、名... - 2016/08/15 23:02:36.48 yyzsxGsuO 193/347

――――――


雪穂「亜里沙、ごめん」

亜里沙「ううん! ユキホは悪くないよ! アリサも全然動けなかったし……」

雪穂「絵里さんのサーブも海未ちゃんの技も全然止められなかった……」

雪穂「…………これじゃあ……」ウツムキ

亜里沙「…………」



亜里沙「……ダイジョウブ」



雪穂「え?」

亜里沙「心配しないで、ユキホ」



亜里沙「もう準備カンリョーだから!」ニコリ



雪穂「っ! じゃあ……っ!!」

亜里沙「うん! イメージと目の前のズレはなくなったよ」

雪穂「……絵里さんの方は?」

亜里沙「それもダイジョウブ! おねえちゃんはいつも見てるし。それよりも――」



亜里沙「……海未さんはアリサのイメージよりずっとカッコよかったよ」

亜里沙「……そのズレもなくなったから」

亜里沙「もうダイジョウブ」



亜里沙「エヘ、エヘヘヘ……」



――――――

291 : 以下、名... - 2016/08/21 20:50:55.80 +lOfWsIqO 194/347

『チェンジサービス』
『サービス 海未』



海未「……」ターンターン

雪穂「……」

絵里「さ、海未。このゲームも決めましょう」

海未「はい!」スッ



海未「はっ!!」パァァァァン



雪穂「っ」グッ

雪穂(重いっ、けどっ!)



雪穂「返せるッ」パァァァァン



「おぉ! 雪穂返した!」
「そうやね。けど、返った先は海未ちゃんやから――」

海未「申し訳ないですが、決めさせていただきます!!」グッ



海未「『侵掠すること火の如く』ッ!!!」ベシィィィィィン



絵里「……ナイスショットね、海未」スッ

海未「……ありがとうございます、絵里」スッ




亜里沙「ふふふっ」フワッ


―― トンッ ――




海未「――え?」



『うみえり 0 - 15 ありゆき』

292 : 以下、名... - 2016/08/21 20:57:11.55 +lOfWsIqO 195/347


海未「ボールがなぜ……こちらのコートにあるのですか……」

絵里「海未の『火』は確かに……」



亜里沙「エヘヘヘ」



絵里「あ、亜里沙……?」

海未「まさか、亜里沙が返したのですか……?」

亜里沙「はい! そうですよ! 海未さん!」エヘヘ

海未「ッ!?」

絵里「亜里沙が!? 亜里沙の力じゃあのショットは――」



雪穂「……早く試合の続きをしませんか?」

雪穂「海未ちゃんのサーブ、だよね」



海未「……っ」

293 : 以下、名... - 2016/08/21 21:04:49.80 +lOfWsIqO 196/347

海未「…………」ターンターン

亜里沙「……エヘヘ」ニコニコ

海未「っ」スッ



海未「はあっ!!!」パァァァァン



亜里沙「!」グッ

雪穂「……亜里沙?」


亜里沙「スゴイ……重くて……エヘヘ」ベシッ


絵里「! リターンミスよ! ここは、私が――」タッ



海未「絵里!!」



絵里「海未!?」ビクッ

海未「私が打ちますっ!!」

絵里「っ、分かったわ」

海未「今度こそ、決めますっ!!」グッ



海未「『侵掠すること火の如く』ッ!!!!」ベシィィィィィン



亜里沙「あ、また……」

雪穂「亜里沙!」

亜里沙「うん♪」



亜里沙「えいっ」フワッ

―― トンッ ――



絵里「ま、また……?」

海未「~~~~ッ!?」

294 : 以下、名... - 2016/08/21 21:27:45.45 +lOfWsIqO 197/347


雪穂「亜里沙!」

亜里沙「ユキホ! どうだった?」

雪穂「うん。完璧だったよ」

亜里沙「フフ、エヘヘヘ♪」

雪穂「…………」ナデナデ



海未「…………雪穂」

雪穂「……海未ちゃん」

海未「さっきのは、一体なんなのですか……」

雪穂「…………」

海未「なぜ、亜里沙が私のショットをああも簡単に……」



雪穂「……海未ちゃんさ、さっき亜里沙が『火』を返したのマグレだと思ったでしょ?」



海未「っ」

雪穂「図星、みたいだね」

海未「……亜里沙はなぜ私の『火』を返せるのですか」

雪穂「……簡単に言えば、亜里沙は『イメージ』したんだよ」

雪穂「テニスをする海未ちゃんを」

海未「『イメージ』? 私を?」

雪穂「そう」

295 : 以下、名... - 2016/08/21 21:29:04.99 +lOfWsIqO 198/347


雪穂「この2週間……ううん、海未ちゃんのテニスをする姿を動画で見てからずっと、亜里沙は『イメージ』してたんだ」

雪穂「『イメージ』して戦ってた」

海未「イメージトレーニング、ですか」

絵里「けれど、それだけで――」

雪穂「普通はそうですよね。それだけで海未ちゃんのショットを返すなんてありえない。けど……」



雪穂「2000試合」

雪穂「亜里沙が『イメージ』して、海未ちゃんと戦った回数ですよ」



海未「にせんっ!?」

絵里「っ」ゾワッ

雪穂「最初は1000試合は負けっぱなしだったらしいけど……」

雪穂「3日前から試合前までの結果、聞きますか?」



雪穂「35戦全勝」



雪穂「だ、そうです」

海未「っ!?」

絵里「なっ!?」


雪穂「…………話、長くなっちゃったね。海未ちゃんのサーブだよ」


296 : >>295訂正 - 2016/08/21 21:32:28.18 +lOfWsIqO 199/347


雪穂「この2週間……ううん、海未ちゃんのテニスをする姿を動画で見てからずっと、亜里沙は『イメージ』してたんだ」

雪穂「『イメージ』して戦ってた」

海未「イメージトレーニング、ですか」

絵里「けれど、それだけで――」

雪穂「普通はそうですよね。それだけで海未ちゃんのショットを返すなんてありえない。けど……」



雪穂「2000試合」

雪穂「亜里沙が『イメージ』して、海未ちゃんと戦った回数ですよ」



海未「にせんっ!?」

絵里「っ」ゾワッ

雪穂「最初は1000試合は負けっぱなしだったらしいけど……」

雪穂「3日前から試合前までの結果、聞きますか?」



雪穂「35戦全勝」



雪穂「だ、そうです」

海未「っ!?」

絵里「なっ!?」


雪穂「…………話、長くなっちゃったね。海未ちゃんのサーブだよ」



『うみえり 0 - 30 ありゆき』

297 : 以下、名... - 2016/08/21 21:50:34.96 +lOfWsIqO 200/347

海未「…………」ターンターン

海未(……35戦全勝……ですか)

海未(っ、いけません! あれはあくまでも亜里沙の『イメージ』での話です!)

海未(……確かに『火』は返されましたが)

海未(いえ! ならば、攻め方を変えるだけです!)

海未(『イメージ』など!!)


海未「関係ありません!!」パァァァァン


雪穂「……っ」グッ



雪穂「ふっ」ポーーーン



「え!? なんで雪穂ロブなんか??」
「ミス、かなぁ?」
「……ううん。さっきの今、やからね。これはたぶん」

絵里「ロブ!? まさかっ――」

海未「っ!!!」

海未(これは誘われているのですかっ!! 打ってこい、と……)


雪穂「亜里沙、来るよ」

亜里沙「うん!」


海未「っ、そんなに打ってほしいのならっ!!」グッ

「また『火』だ!!」
「海未ちゃんっ、だめぇぇ!」

絵里「海未!! ダメよ!!」



海未「――『疾きこと風の如く』」

―― パァァァァン ――




絵里「あっ……」

「案外、海未ちゃん冷静みたいやね。誘い球に乗らずちゃーんと攻め方を変えた」
「うん! それに今度は雪穂の方に打って――」




亜里沙「やっぱり『イメージ』どーり♪」タッ



海未「なっ!?」

絵里「なんで亜里沙がそこにっ!?」

雪穂「……残念だけど――」

雪穂「――これも『イメージ』通り、だって」



亜里沙「エイっ!!」パァァァァン



『うみえり 0 - 40 ありゆき』

298 : 以下、名... - 2016/08/21 22:05:05.69 +lOfWsIqO 201/347

海未「くっ……」ターンターン


海未(『火』だけではなく『風』までも……)

海未(『山』はダブルスでは真価を発揮できませんし、『林』はそもそも決めるためのものではありません)

海未(……ならば、残るは……)


絵里「海未……?」

海未「…………」

絵里「海未!」

海未「っ、あっ、はい! なんでしょうか?」

絵里「……切り替えていきましょう。冷静に」

海未「……はい」

海未「……っ」スッ



海未「はあっ!!」パァァァァン



亜里沙「っ、やっ!!」パァァン

絵里「っ」タッ

「えりちがポーチに出た!」
「ってことは!」



絵里「『ショートスネイク』!」

―― グググググ ――

―― バシィィィン ――



雪穂「すごい角度、だけどっ」ダッ

雪穂「っ、やっ!!」ポーーーン


「おぉ!? 雪穂とった!!」
「ナイスカバーやね。けど、雪穂ちゃんは体勢を崩してる」
「でも、絵里ちゃんもポーチに出たばかりだから追いつかないよっ」
「ってことは……」



絵里「海未!」

海未「はいっ!!」



雪穂「亜里沙!」

亜里沙「うん!」



海未「亜里沙! これを返してみなさいっ!!」グッ

亜里沙「! はい!」パァ


海未「一射必中」シャァァァ



海未「『ラブアローシュート』!!!」パァァァァン



「海未ちゃんの『ラブアローシュート』!!」
「これならっ」

299 : 以下、名... - 2016/08/21 22:20:40.90 +lOfWsIqO 202/347


亜里沙「エヘヘヘ」

亜里沙「やっぱり『イメージ』よりカッコイイなぁ」

亜里沙「そーぞうをぜっするカッコよさ!」

亜里沙「エヘヘヘ♪」ニコニコ

亜里沙「あ、でも、『それ』は『イメージ』と同じです」

亜里沙「亜里沙の『イメージ』どーりの強さ、回転、コース」

亜里沙「それじゃあ、その『技』も――」



亜里沙「――消しちゃいますね、海未さん」



亜里沙「『已滅無』 」フワッ

―― トンッ ――




海未「っ、そんな……」

絵里「……海未の『ラブアローシュート』も効かない、なんて……」



雪穂「ナイスショット、だったよ。亜里沙」スッ

亜里沙「ありがとう、ユキホ♪」スッ



―― パシンッ ――




『うみえり ② - ① ありゆき』

300 : 以下、名... - 2016/08/21 22:41:14.68 +lOfWsIqO 203/347

――――――



花陽「あの海未ちゃんが、あんなにあっさり……」

「す、すごすぎないかにゃ……?」

あんじゅ「海未さんのショットはどれも強力そうなのにねぇ」

英玲奈「これが園田海未との試合を2000回シュミレートした結果なのだろう」

英玲奈「相手のすべてのリアクションを『イメージ』し経験する」

英玲奈「それによって、実際に彼女の打球を見た瞬間に、その情報を掌握し、威力や回転を完全に消し去ることができる」



英玲奈「それが絢瀬亜里沙の『已滅無』」

英玲奈「『技』を殺す『技』か」



英玲奈「こうなっては『風林火山』も『ラブアローシュート』も、彼女には通用しない」

「にゃ、にゃぁ……」

花陽「……もしかして、海未ちゃんが出るのが分かってて亜里沙ちゃんを……」

にこ「……」

「……にこちゃん?」



にこ「ごめん」

にこ「にこが教えたのよ。海未がダブルス1に出ること」



りんぱな「「ええっ!?」」

にこ「にこが真姫ちゃんと当たるのと交換条件でね」

花陽「あっ……」

「っ、そんなの!!」

花陽「り、凛ちゃん、にこちゃんは……」

「え、あっ……そっか。凛とかよちんのこともあったから……それも……」

にこ「…………ごめん」

「ううん、凛の方こそごめんにゃ」

301 : 以下、名... - 2016/08/21 22:48:39.72 +lOfWsIqO 204/347

あんじゅ「ちょっとまって?」

にこ「……なに?」

あんじゅ「教えた? わたしはなにも聞いてないわよぉ?」

英玲奈「……私もだ」

にこ「……え、そうなの?」

あんじゅ「えぇ。そもそも、わたしもえれなもオーダーを知ったのはつい昨日のことだし」

英玲奈「私も同じだ」

にこ「じゃあ、にこが流した情報を知ってるのは……」



――――――



「…………さ、見せてもらおうかしら」

「自分の『技』を完全に封じられたら」



「海未さん、貴女は――」

「――どう輝くのかしらね♪」フフッ



――――――

311 : 以下、名... - 2016/08/29 21:12:43.23 srQuaSTDO 205/347

『チェンジサービス』
『サービス 亜里沙』



亜里沙「いくよ、おねえちゃん」ターンターン

絵里「ええっ」チラッ

海未「……っ」



亜里沙「やっ!」パァァァァン



絵里「っ、はっ!!」パァァァァン


絵里(……さっきのゲームでハッキリしたわ。亜里沙は海未のショットをすべて返せる)

絵里(その上、海未の動きも予測できる……)

絵里(なら、狙うのは――)


雪穂「……ま、そうなりますよね」グッ



雪穂「でも!!」パァァァァン



絵里「っ、海未の方に!?」

海未「っ」ビクッ

絵里「海未!!」

海未「わ、分かっています!」グッ



海未「『疾きこと風の如く』ッ!」

―― パァァァァン ――



亜里沙「ふふっ、もういっかい」

海未「っ」ゾクッ



亜里沙「『已滅無』」フワッ

―― トンッ ――



海未「また消されて……」

絵里「これは……」

雪穂「海未ちゃんに打たせれば、あとは亜里沙が全部決めてくれる」

海未「っ」

雪穂「考えることは一緒です。絵里さんはもう狙いませんよ。だって、私たちが狙うのは――」



雪穂「海未ちゃんだから」ニコッ

亜里沙「ハラッセォ♪」



『うみえり 0 - 15 ゆきあり』

312 : 以下、名... - 2016/08/29 21:25:09.08 srQuaSTDO 206/347

亜里沙「いきますよ! 海未さん!」ターンターン

海未「っ、はい」

亜里沙「ふぅぅ……」スッ



亜里沙「やっ!」パァァァン



絵里(亜里沙がセンターに寄ってる……これならサイドを打ち抜けば!!)

絵里「海未!」チラッ

海未「は、はい!」コクッ



海未「『ラブアロー……」グッ



亜里沙「!」ニコッ

海未「あっ……っ!!」ゾワッ


海未「……くっ!?」パァァァァン



「海未、今の……」
「技を打とうとして止めた。亜里沙ちゃんを意識し過ぎて打てなくなってるみたいやね」
「……海未ちゃん」


絵里「海未っ」

海未「……っ」

雪穂「『風林火山』を使えないなら……」グッ



雪穂「はああっ!!」パァァァァン



海未「なっ……」ダッ

―― スカッ ――

海未「くっ……」



雪穂「ふぅぅ」

亜里沙「ハラッセォ! ユキホ!」スッ

雪穂「うん」スッ



―― パシンッ ――



『うみえり 0 - 30 ありゆき』

313 : 以下、名... - 2016/08/29 21:37:14.63 srQuaSTDO 207/347

亜里沙「♪」ターンターン



海未「絵里、すみません……」

絵里「大丈夫よ。切り替えていきましょう」

海未「は、はい」

絵里「…………」



絵里(こういうときこそ冷静になりなさい、私)

絵里(今の海未は、亜里沙に返されるのを恐れて、本来の力を発揮できていないわ)

絵里(それを打破するためには……まずは流れを変えること)

絵里(……一点。まずは一点ね)



亜里沙「えい!!」パァァァァン



絵里「っ」ダッ

絵里(まずは……)



絵里「ふっ」フワッ



「ドロップショット!?」
「さすが、えりち。誰もそれを予想してない、いいタイミングや」

亜里沙「ユキホ!」

雪穂「大丈夫!」ダッ



雪穂「っ」ポーーーン



「雪穂もとった!」
「けど、これで雪穂ちゃんはすぐには動けないよ」
「そうね。これで実質2対1」


絵里「海未!」

海未「っ、私は……っ」

絵里「……任せて!」ダッ



絵里(海未はやっぱり萎縮しきってる)

絵里(ここは私がスマッシュで決めて――)


亜里沙「……っ!!」グッ


絵里(いえ、ここは――)

絵里「はああっ…………」



絵里「ふっ」フワッ




314 : 以下、名... - 2016/08/29 21:49:05.69 srQuaSTDO 208/347

「またドロップショット!?」
「これは、予想外や! しかも、雪穂ちゃんの反対側に!」
「決まるわ!」

海未「流石、絵里です!」パァァ

絵里「ふふっ、これで――」



絵里「――決まりよ!!!」




亜里沙「……ねぇ、おねえちゃん?」




絵里「…………え?」

亜里沙「アリサ、たしかに『イメージ』したよ、海未さんのこと」

絵里「なんで、あなたが――」

亜里沙「でもね? おねえちゃんのことは『イメージ』しなくてもいいんんだ。だって――」




絵里「――そこに、いるのよ……?」




亜里沙「おねえちゃんのことはずっと見てきたから」

亜里沙「ぜんぶわかっちゃうもん♪」エヘヘ




亜里沙「『已滅無』」フワッ

―― トンッ ――



絵里「…………」

海未「……まさか……私だけでなく絵里まで……? 」


『うみえり 0 - 40 ありゆき』

315 : 以下、名... - 2016/08/29 22:05:03.21 srQuaSTDO 209/347

――――――



英玲奈「……これは……」

あんじゅ「一方的、ねぇ」

「にゃぁ……」


にこ「……ただ、スコア的にはまだ絵里たちが勝ってるわ」

花陽「で、でも……」

にこ「えぇ。流れは完全に亜里沙ちゃんたちの方ね」

花陽「うん。二人とも3ゲーム目に入ってから一点も取れなくなっちゃったし……」

あんじゅ「……あら? でも、1ゲーム目と2ゲーム目は……」

にこ「…………絵里のサーブと海未の『技』で一点も落としてないわね」

「あ、そういえばそうにゃ」

にこ「…………この点数の開き」


英玲奈「……なるほどな」

英玲奈「彼女、恐ろしいことをする」

花陽「え、え?」

あんじゅ「彼女って……亜里沙さん?」

英玲奈「いや」



英玲奈「高坂雪穂だ」



「雪穂ちゃん? でも、雪穂ちゃんは特に目立ってないような……」

英玲奈「あぁ。確かに目立った技は打っていない。むしろ、絢瀬亜里沙に頼っているようにすら見える。だが……」



英玲奈「このゲームをコントロールしているのは恐らく高坂雪穂だろう」



316 : 以下、名... - 2016/08/29 22:30:01.39 srQuaSTDO 210/347

にこ「…………」

花陽「コントロール……?」

英玲奈「あぁ」



英玲奈「1ゲーム目と2ゲーム目」

英玲奈「勿論、絢瀬亜里沙が『イメージ』とのズレを修正していたのもあるだろうが、しかし、あそこまで綺麗に点を取らせた」

英玲奈「それは恐らく相手を油断させる目的もあったのだろう」

英玲奈「そして、3ゲーム目から牙を剥く」

英玲奈「ペアの実力を存分に見せつける試合展開」

英玲奈「園田海未を無力化したうえで、それを支えようと奮起する絢瀬絵里をも封じ込めた」



英玲奈「中々に凝った『演出』だ」



花陽「え、『演出』……」

「そ、そんなことできるの……?」

にこ「ペアを生かすって点では花陽と似たようなタイプね。相当毛色は違うけど」



英玲奈「…………」



あんじゅ「えれな? どうかしたのかしらぁ?」

英玲奈「……いや、彼女と練習をしたときはそんなプレイスタイルではなかった気がするんだが……」

あんじゅ「そうだったかしらぁ?」

英玲奈「……忘れてくれ。きっと気のせいだろう」

あんじゅ「そう? あ、話してるあいだに、もう……」



――――――



―― パァァァァン ――



海未「くっ……」

絵里「……っ、これで……」



亜里沙「エヘヘ、これで並んだよ、おねえちゃん! 海未さん!」

雪穂「…………よし、これで――」



『うみえり ② - ② ありゆき』

319 : 以下、名... - 2016/09/05 20:37:17.73 m9M4sRRuO 211/347

『チェンジサービス』
『サービス 絵里』



絵里「…………」ターンターン

海未「……え、えり」

絵里「大丈夫……大丈夫よ」



絵里(大丈夫。落ち着くのよ、私)

絵里(ここまでのこと……それは確かに想定外のことだわ)

絵里(海未のショットは全て封じられて、私のプレイも亜里沙には読まれている)

絵里(そのお陰で、海未は完全に萎縮していて、自分のプレイができていない)

絵里(……なるほど。大した『演出』ね)

絵里(けれどッ!!)



絵里「ふっ――」スッ

亜里沙「ユキホ!」

雪穂「分かってる!」グッ




絵里「はっ!!!」パァァァァン




雪穂「っ」ブンッ



『うみえり 15 - 0 ありゆき』



絵里「よしっ」



絵里(大丈夫。まだ終わってないわ)

絵里(私にはこのサーブがある)


320 : 以下、名... - 2016/09/05 20:42:01.63 m9M4sRRuO 212/347

絵里「……海未」ターンターン

海未「は、はい……」

絵里「まずは1ゲーム取り返すわよ」

海未「っ、はい!」


絵里「もう――」スッ

亜里沙「……」グッ



絵里「――一本!!」パァァァァン



亜里沙「――」スッ

雪穂「亜里沙!!」

亜里沙「っ」ビクッ



―― パァァァァン ――



『うみえり 30 - 0 ありゆき』



海未「流石ですっ、絵里!」スッ

絵里「えぇ」スッ



―― パシンッ ――



亜里沙「ユキホ……?」

雪穂「…………まだ」

亜里沙「う、うん」

321 : 以下、名... - 2016/09/05 20:52:43.02 m9M4sRRuO 213/347

――――――



にこ「流石に絵里の『高速サーブ』は返せないみたいね」

花陽「う、うん」

英玲奈「そのようだな」

あんじゅ「…………」

英玲奈「ん、どうかしたか? いきなり黙り込むなんて、あんじゅらしくないが……」

あんじゅ「ん~、べつになんでもないわぁ。ただ……」



あんじゅ「これも『演出』じゃないか、なんて思っちゃっただけよぉ」



英玲奈「……これも?」

花陽「そ、それって……」



あんじゅ「次の次、ありさちゃんが『高速サーブ』を返すかもしれないってこと」



「あ、『已滅無』!」

花陽「たしかに、絵里ちゃんのプレイを読んでる亜里沙ちゃんなら、サーブのコースさえ読めれば……」

にこ「でも、亜里沙ちゃんが返したとして状況は変わらないわ。このままならこのゲームは確実に絵里たちがとる」

「……えっと……次、絵里ちゃんたちのポイントで……その次、亜里沙ちゃんたちがとって……絵里ちゃんが決めて……あ、ほんとにゃ!」

英玲奈「……まぁ、気にすることはないだろう」

あんじゅ「そうねぇ」



――――――

322 : 以下、名... - 2016/09/05 21:00:56.40 m9M4sRRuO 214/347


絵里「海未、今のうちに切り替えておきましょう」

海未「はい。絵里、申し訳ありませんでした……」

絵里「ふふっ、気にすることはないわ。後輩には少しくらい頼られた方が嬉しいしね♪」

海未「先輩禁止、なのにですか?」フフッ

絵里「ふふっ、それはそれよ」



絵里(少しだけ流れが変わった。それをハッキリと感じる)

絵里(海未も余計な力が抜けたみたいで、笑顔が出てきてる)

絵里(……それに、私も)

絵里(腕が軽い。身体も軽い)

絵里(今の私のこのサーブはきっと、誰にも止められないわ!!)

323 : 以下、名... - 2016/09/05 21:05:55.88 m9M4sRRuO 215/347


雪穂「…………絵里さん」

絵里「え、あっ。ごめんなさい、すぐ再開するわ」

雪穂「はい」

絵里「…………」ターンターン



絵里(見れば雪穂ちゃんの表情は少し暗い)

絵里(流れが変わったから、かしら?)

絵里(なんにせよ、私のサーブでこの試合の流れを掴んで、次のゲームもとれば……よし)


絵里「行くわよ」

雪穂「……」グッ


絵里「一球――」スッ




絵里「――入魂!!!」パァァァァン




絵里(相手のバック側。ハラショー!)

絵里(これで決まりよ!!)

324 : 以下、名... - 2016/09/05 21:11:21.39 m9M4sRRuO 216/347



雪穂「ありがとうございます、絵里さん」

雪穂「『そっち』に、最高のサーブを打ってくれて」

雪穂「おかげで」




雪穂「『演出』し終わりました」スッ




――――――――――



―― トンッ ――



325 : 以下、名... - 2016/09/05 21:21:46.98 m9M4sRRuO 217/347



『うみえり 30 - 15 ありゆき』



亜里沙「ハラッセォ♪ さすがユキホ!!」

雪穂「……ふぅ」


海未「…………なっ」

絵里「………………え?」

海未「今のは……なぜ、ボールが私達の足元に、あるのですか……?」



雪穂「見えなかった?」



絵里「っ」

海未「雪穂……?」

雪穂「そっか。二人とも見えなかったんですね。じゃあ、私の『これ』も十分通用するんだ」

海未「……雪穂、そのショットは一体……」



雪穂「おねえちゃんと同じだよ、海未ちゃん」



海未「穂乃果と?」

雪穂「私も一点特化。バックハンドの時だけ『これ』が打てるんだ」

海未「…………それは……」




雪穂「『レーザービーム』」



――――――

327 : 以下、名... - 2016/09/05 21:32:16.55 m9M4sRRuO 218/347

――――――



英玲奈「なにかするとしても、『已滅無』を使える絢瀬亜里沙の方だと思っていた」

英玲奈「その上、高坂雪穂は『演出』するだけで『技』はないと思っていた」

英玲奈「だが、それは大きな間違いだった、というわけか」

あんじゅ「『演出』だったってわけねぇ」

にこ「……そうでしょうね」



にこ「絵里の心を折るための『演出』」



花陽「……っ」ブルッ

「で、でも! 絵里ちゃんと海未ちゃんだよ!? あの二人が組んで負けるのなんて、全然想像できないよ!!」

にこ「…………」

「海未ちゃんには『風林火山』があるし、絵里ちゃんの『高速サーブ』が……」

にこ「……どっちも返されてるわよ」

「にゃ!? ……で、でも!」

にこ「なら、見てみなさい。絵里の表情」

「え?」

にこ「絵里の心はもう――」



花陽「折れ、ちゃった……?」



――――――

328 : 以下、名... - 2016/09/05 21:35:45.19 m9M4sRRuO 219/347

――――――



亜里沙「『已滅無』」フワッ

―― トンッ ――



絵里「~~~~っ」ダッ



『うみえり 30 - 30 ありゆき』



絵里「っ、こんな……っ」ギリッ

海未「え、絵里……」

絵里「…………ごめんなさい。次は決めるわ」スッ

海未「…………絵里」

絵里「……大丈夫。大丈夫よ」

海未「………………」

329 : 以下、名... - 2016/09/05 21:42:58.15 m9M4sRRuO 220/347

絵里「…………」ターンターン



絵里(大丈夫、大丈夫よ)

絵里(まだ、私はサーブを打てる)

絵里(次は雪穂ちゃんのサーブだから、バックハンドにさえ打たなければ……)



雪穂「……」スッ



絵里「なっ!?」

海未「……あんなに端に寄って……これでは……」

絵里「バックハンド側に打つしかない……?」


絵里(っ、いえ。まだ狭いコースだけど、サイドギリギリに打てばっ!!)


絵里「ふっ!」スッ



絵里「はぁぁぁぁっ!!!」パァァァァン



―― ポスッ ――



『フォルト』



絵里「っ、今度こそ!!」スッ



絵里「はぁぁぁぁっ!!!」パァァァァン



―― ポスッ ――



『ダブルフォルト』
『うみえり 30 - 40 ありゆき』

330 : 以下、名... - 2016/09/05 21:47:34.81 m9M4sRRuO 221/347




―― ポスッ ――



『フォルト』



―― ポスッ ――




『ダブルフォルト』
『うみえり ② - ③ ありゆき』

331 : 以下、名... - 2016/09/05 21:53:34.34 m9M4sRRuO 222/347


絵里「……な、なんで……?」

海未「絵里……」スッ



絵里「っ!?」バッ



海未「あっ……」

絵里「…………っ」

海未「………………」

絵里「…………」



絵里「ご、ごめんなさい、海未……」



海未「……いえ」

絵里「……だいじょうぶ、なんて。あれだけ言ってたのに……」

海未「絵里……」

絵里「だいじょうぶ。きっと、そうやって自分に言い聞かせていただけ、だったのよ。これじゃあ……」

海未「…………」

絵里「…………」



海未「………………」



332 : 以下、名... - 2016/09/05 22:05:07.16 m9M4sRRuO 223/347

――――――



きっとこのまま終わってしまうのだと。
そう思っていました。
絵里も。
私も。


私の技は亜里沙に通じず。
絵里の心は雪穂に折られて。

だから、大丈夫なんて言えません。
そんな強がりは言えません。



私の心にあったのは、絵里をどう励ますかということ。
負けた後にどうやって励まそうかということでした。

もう絵里は十分頑張りました。
途中折れかけた私を何度も支えてくれたのですから。

……こんなところでしょうか?



あぁ、これも言わなくてはなりませんね。
絵里のここまで頑張りを讃えて。
きっと心が折れても強がろうとする彼女のために。


もう頑張らなくても――

333 : 以下、名... - 2016/09/05 22:06:05.71 m9M4sRRuO 224/347

――――――



穂乃果「海未ちゃんっ!!!」

穂乃果「絵里ちゃんっ!!!」




穂乃果「がんばって!!!」




――――――

334 : 以下、名... - 2016/09/05 22:07:09.60 m9M4sRRuO 225/347



絵里「……ほの、か?」


海未「穂乃果……」



335 : 以下、名... - 2016/09/05 22:16:48.54 m9M4sRRuO 226/347



どこからか聞こえてきた声。

幼馴染みの声。


その声は私と絵里に言いました。
頑張れ、と。


無責任な外野の声です。

私や絵里の心情も知らずに。
この辛さも知らずに。

頑張れ?
これ以上どうやって頑張れと?
分かりません。
全くもって理解不能です。



………………。



ただ、なぜでしょうか。
その無責任な声はなぜか私の心に響きます。

諦めようとした心を震わせるように。



ふと、そちらを見れば。
彼女は瞳を潤ませていました。

あぁ……。
そうでしたね。
貴女はそういう人でした。


私の幼馴染みの貴女は、無責任で無計画で。
諦めることをまるで知りません。

そして、なにも疑わずに。
根拠などなにもなくとも。
私を、私達を信じてくるのです。



…………ならば、私は――。



――――――

336 : 以下、名... - 2016/09/05 22:22:59.52 m9M4sRRuO 227/347

海未「…………絵里」

絵里「……海未?」



海未「変わることを恐れないで、突き進む勇気」



絵里「え……?」

海未「……貴女にはそれがありますか?」

絵里「それは……」

海未「もし……もし、それがあるというのなら――」




海未「絵里」

海未「貴女のテニスをすべて、捨ててもらえますか?」




――――――

342 : 以下、名... - 2016/09/07 20:14:55.78 T/4y9yjhO 228/347

『チェンジサービス』
『サービス 雪穂』



雪穂「…………」ターンターン

絵里「……」スッ

雪穂「………………」



雪穂(『演出』は終わった)

雪穂(……はずなのに)



海未「絵里、来ますよ」

絵里「……えぇ」グッ



雪穂「っ、やっ!!」パァァァァン



絵里「はあっ!」パァァァァン

雪穂「まだっ……」


雪穂(まだ二人とも折れてない……)

雪穂(……ここはもう一回っ)


「雪穂が回り込んで!!」
「えりち! 海未ちゃん!」
「来るわよ、二人とも!!」



雪穂「『レーザービーム』ッ!!」



――――――――――




海未「っ」

絵里「また……っ!?」



―― トンッ ――



『うみえり 0 - 15 ありゆき』

343 : 以下、名... - 2016/09/07 20:23:39.26 T/4y9yjhO 229/347

雪穂「……」ターンターン

海未「……」スッ



雪穂(…………まだ折れてない、かぁ)

雪穂(なら、次は……)


雪穂「亜里沙」チラッ

亜里沙「え、あっ……うんっ」コクッ



雪穂「ふっ!」パァァァァン


雪穂(もう一回、海未ちゃんを――)


海未「……行きますよ、絵里」グッ

絵里「ええ……」ジッ



海未「――『疾きこと風の如く』」パァァァァン



雪穂(やっぱり来た!)

雪穂「亜里沙!!」

亜里沙「うん!」



亜里沙「『已滅無』」フワッ



海未「くっ」

「やっぱり海未ちゃんの『風林火山』は……」
「……効かないってわけね」

「っ、まだだよ!!」


雪穂「っ!?」

亜里沙「あっ!」



海未「ええ、その通りです!!」ダッ



海未「加えて――」



海未「『疾きこと風の如く』ッ!!」パァァァァン




344 : 以下、名... - 2016/09/07 20:28:10.52 T/4y9yjhO 230/347


雪穂「また『風』!?」

亜里沙「ユキホ!」ダッ

雪穂「お願い!」



亜里沙「『已滅無』」フワッ



「また返されたわ」
「でも、海未ちゃん、またうごいてる!」

海未「まだまだです!!」グッ



海未「『疾きこと風の如く』!」パァァァァン



雪穂「なっ!?」

亜里沙「え、えぇ!?」

雪穂「っ、亜里沙もう一回!!」



亜里沙「う、うんっ……『已滅無』」フワッ



―― トンッ ――



海未「くっ……」



『うみえり 0 - 30 ありゆき』

345 : 以下、名... - 2016/09/07 20:33:11.25 T/4y9yjhO 231/347


雪穂「……ふぅ」

亜里沙「……ユキホ」

雪穂「ありがと、亜里沙」

亜里沙「うん……でも……」チラッ

雪穂「うん。海未ちゃん、なにか変……」チラッ




海未「……すみません、絵里」

絵里「いいえ。こっちこそごめんなさい、海未」

海未「いえ! これは私が言い出したことですから。それに、これくらいどうということはありません」

絵里「……ありがとう、海未」

海未「それよりも絵里は集中してください」

絵里「……えぇ」コクッ

346 : 以下、名... - 2016/09/07 20:44:42.18 T/4y9yjhO 232/347

雪穂「……」ターンターン

絵里「……」ジッ


雪穂「やっ!!」パァァァァン


絵里「はあっ!」パァァァァン

亜里沙「ユキホ、いったよ!」

雪穂「わかって、るっ!」パァァァン


雪穂(絵里さんは普通に返してきた。普通のスピードボールだ)

雪穂(だけど、海未ちゃんは……)



海未「『疾きこと風の如く』!!」パァァァァン



雪穂「また『風』……なにをっ」

亜里沙「返すよ、ユキホ!」

雪穂「お願い!」



亜里沙「『已滅無』」フワッ



絵里「海未、私が――」

海未「いいえ! 私が取ります!!」ダッ



海未「『疾きこと風の如く』!!」パァァァァン



雪穂「っ」


雪穂(絵里さんの守備範囲まで入って打ち返して……もう絵里さんには打たせないってこと?)

雪穂(……『演出』は成功……だったってことかな)

雪穂(どっちにしろ海未ちゃんじゃあ、亜里沙のことは打ち抜けない)



亜里沙「『已滅無』」フワッ



雪穂(……うん。やっぱりもう終わって――)



海未「はぁぁぁぁっ!!!」ダッ


雪穂「っ!?」ビクッ

亜里沙「っ」ビクッ

347 : 以下、名... - 2016/09/07 20:48:49.52 T/4y9yjhO 233/347


「あの構え!!」
「海未ちゃんの必殺技や!」
「しかも、ネット際でのショット。体感スピードはいつもよりもずっと速いはずよ!」


雪穂「亜里沙!!」

亜里沙「う、うん!」


海未「これで――終わりです!!」

海未「一射必中」シャァァァ



海未「『ラブアローシュート』!!!」パァァァァン




348 : 以下、名... - 2016/09/07 20:50:46.20 T/4y9yjhO 234/347


雪穂「そっか。それを狙ってたんだね、海未ちゃん」

雪穂「でも、言ったはずだよ」

雪穂「亜里沙には効かないって」




亜里沙「エイっ!」



―― フワッ ――




349 : 以下、名... - 2016/09/07 20:59:15.56 T/4y9yjhO 235/347

「そ、そんなぁ……」
「……っ、やっぱりダメなの……?」



海未「っ、まだ……ですっ……」ベシッ

―― フワッ ――



「返した!!」
「あっ、で、でも……」



雪穂「バックハンド側……」

雪穂「打てってことだよね」グッ



雪穂「『レーザービーム』」



――――――――――



雪穂「……ふぅ」

亜里沙「って、おねえちゃん!?」

雪穂「え?」


絵里「…………っ」


「あぶない! よけて!」
「絵里!!」
「えりち!!」

雪穂「ッ!?」

雪穂(力みすぎたっ!? このままじゃ絵里さんに――)




絵里「……………………」ユラッ




―― パァァァァン ――




雪穂「…………え? 避け、た……?」



『うみえり 0 - 40 ありゆき』
『マッチポイント ありゆき』

350 : 以下、名... - 2016/09/07 21:09:17.00 T/4y9yjhO 236/347

――――――



にこ「よ、避けたのね……ふぅ……」

「よかったにゃぁ……」ホッ

花陽「うぅぅぅ、心臓に悪いです……」バクバク

あんじゅ「けがなくてよかったわぁ」

にこ「えぇ」

「あっ……でも、さっきので」

花陽「う、うん。マッチポイント、だね」

あんじゅ「これじゃあ、ツバサまで回りそうにないわねぇ」



英玲奈「いや」

英玲奈「それはどうだろうな」



あんじゅ「えれな?」

花陽「えっと……?」

英玲奈「試合はまだ分からない」

にこ「……はぁ、慰めならいらないわよ」

にこ「海未の『ラブアローシュート』ですら返されてる」

にこ「『レーザービーム』を避けたとはいっても、絵里はそもそも全然打ってないし」

にこ「この状況で勝てるわけがないわ」

「…………?」

「…………あれ?」

「んんん?」

花陽「凛ちゃん?」

「………………」




「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」





351 : 以下、名... - 2016/09/07 21:21:27.55 T/4y9yjhO 237/347

花陽「ピャァァッ!? り、凛ちゃん!?」

にこ「~~っ、ウッサイ!!」ゲシッ

「にゃにゃ!?」

あんじゅ「……どうかしたのかしらぁ?」

英玲奈「どうやら、気付いたようだな」

「うん! そう! そうにゃ!!」

「まだわかんないよ! たぶんだけど!!」

にこ「ど、どういうことよ?」チラッ


英玲奈「高坂雪穂と絢瀬亜里沙ペアの決め手はなんだ?」


花陽「えっと、亜里沙ちゃんの『已滅無』?」

あんじゅ「んー、それは決め手にはならないんじゃないかしら?」

英玲奈「あぁ。あれはあくまで園田海未のショットを返すためのものだ。決め手というには威力に欠けるだろう」

花陽「それじゃあ……」



にこ「『レーザービーム』ね」



英玲奈「その通りだ」

花陽「た、たしかに、そうです。あのショットは凛ちゃんでも見えないだろうし」

「うん、さっぱりにゃ!」

英玲奈「見えないほどに速いショット。返すのはまず無理だろうな」

にこ「……それが一体――」


「にこちゃん!」


にこ「あによ?」

「頭使うにゃ!」

にこ「……けんか売ってる?」

「たぶんだけど、まだ戦えるにゃ!! だって、絵里ちゃん――」




「――『避けた』んだよ?」




――――――

357 : 以下、名... - 2016/09/15 20:21:44.77 Nz2WZ/uFO 238/347

雪穂「……」ターンターン


雪穂(気のせい、じゃない)

雪穂(確かに絵里さんは私の『レーザービーム』を避けた)

雪穂(ということは、見えてるってこと)

雪穂(…………うん)


雪穂「亜里沙! 最後まで油断しないでね」

亜里沙「わかってるよ、ユキホ!」

雪穂「よしっ」スッ

海未「…………」



雪穂「はあっ!!」パァァァァン



海未「っ!」



海未「『ラブアローシュート』!!!」パァァァァァァン



「リターンで『ラブアローシュート』!?」
「奇襲ってわけやね。でも……」


雪穂「予測済みだよ! 亜里沙!!」

亜里沙「うんっ」スッ



亜里沙「『已滅無』」フワッ



「ああっ!?」
「決まっちゃ――」

絵里「――決まらないわよ!!」ダッ



絵里「はぁぁぁぁっ!!!」パァァァァン



「絵里ちゃん、前に出た!」
「さすがえりち、読んでたんや!」





雪穂「うん。ありがとう、絵里さん」

雪穂「きっと絵里さんなら取るって信じてました」



358 : 以下、名... - 2016/09/15 20:25:47.85 Nz2WZ/uFO 239/347

「雪穂が回り込んでる!?」
「っ、これも読まれてたってわけ……?」
「だ、だめっ、雪穂ちゃんのバックハンドは――」



雪穂「そう。これで終わりです」



雪穂「『レーザービーム』」



――――――――――




359 : 以下、名... - 2016/09/15 20:34:09.68 Nz2WZ/uFO 240/347

――――――



絵里「私のテニスを捨てる?」

海未「はい」

絵里「……分かったわ」

海未「……即答、ですか」

絵里「? なにかおかしい?」

海未「い、いえ。ただもう少しなにか聞かれるかと思ったのですが……」

絵里「……そうね」




絵里「海未」

絵里「私は貴女を信じてるわ」




海未「……絵里」

絵里「それだけじゃ即答する理由としては不十分かしら?」

海未「…………いえ、十分……十分すぎます」

360 : 以下、名... - 2016/09/15 20:41:24.90 Nz2WZ/uFO 241/347


絵里「じゃあ、聞かせてもらえる? 私はなにをすればいいの?」

海未「はい。現状を打破するためには、『レーザービーム』の攻略は必須です」

絵里「雪穂ちゃんの『レーザービーム』ね」

海未「バックハンド側に打たないという方法ならあるにはありますが……」

絵里「根本的な解決にはなってない、か」

海未「はい。だから、その『レーザービーム』を真っ向から打ち破るんです」

絵里「…………一体どうやって?」



海未「絵里、貴女にはスピードボールに慣れてほしいんです」



絵里「慣れる?」

海未「……私の『風』と『ラブアローシュート』、そして、雪穂の『レーザービーム』」

海未「これから私はその2つしか打ちませんし、雪穂にも出来るだけそれを打たせるようにコースを誘導します」

絵里「…………なるほどね」

海未「そして、確実に打ち返せるタイミングを見つけてください」

絵里「…………」

海未「…………絵里?」

絵里「もし、できなかったら……?」

絵里「あと1ゲーム。私が『レーザービーム』を目で追えるようにならなかったら……」

絵里「……私達は負けるのよ?」

絵里「もし…………できなかったら――」



海未「――出来ない? ふふっ、そんなことはきっとありませんよ」



絵里「……なんで?」




海未「絵里」

海未「私は貴女を信じていますから」




――――――

361 : 以下、名... - 2016/09/15 20:43:00.76 Nz2WZ/uFO 242/347

――――――




絵里「海未! 今よ!!」




海未「はい! 信じていました!!」




――――――

362 : 以下、名... - 2016/09/15 20:54:01.59 Nz2WZ/uFO 243/347

雪穂「ここで、海未ちゃんっ!?」

雪穂「何か来る!? 亜里沙!!」

亜里沙「うん!!」ジッ

雪穂「残念だけど、海未ちゃんのプレイは亜里沙には効かないよ! 『風林火山』も『ラブアローシュート』も!!」



海未「…………」



亜里沙「あ、あれ?」

雪穂「亜里沙?」

亜里沙「ユキホ、ごめんっ、海未さんの次のショットがわかんないよっ」

雪穂「え!?」




海未「『知り難きこと陰の如し』」




雪穂「なっ!? で、でも、そこからじゃ『レーザービーム』を打ち返すことなんてできないよ!」

絵里「えぇ、そうね」

亜里沙「おねえちゃん?」

絵里「ただ、海未は返すわよ?」

363 : 以下、名... - 2016/09/15 20:55:54.39 Nz2WZ/uFO 244/347




海未「――――っ」バッ



亜里沙「え……?」

雪穂「一瞬であんなところに!?」

絵里「さぁ、見せてあげなさい。海未!!」

海未「はいッ!!」グッ


364 : 以下、名... - 2016/09/15 20:57:18.26 Nz2WZ/uFO 245/347

――――――




海未「『動くこと雷霆の如し』ッ!!!」



―― パァァァァァァァァン ――




――――――

365 : 以下、名... - 2016/09/15 21:05:12.08 Nz2WZ/uFO 246/347

雪穂「新技!?」


雪穂(でも、『風』ほどじゃない!!)

雪穂(なら!)


雪穂「亜里沙!!」

亜里沙「うんっ!!」スッ




―― グググググッ ――

――ブチッ ――


亜里沙「『已滅無』」スカッ



亜里沙「あれ……?」

亜里沙「アリサのガットに……穴あいてる? え?」

雪穂「……っ!?」



雪穂「こ、これが……」




海未「絵里」

絵里「流石海未ね」

海未「……信じていました」スッ

絵里「えぇ、私もよ」スッ



―― パシンッ ――




366 : 以下、名... - 2016/09/15 21:07:29.39 Nz2WZ/uFO 247/347

――――――



『うみえり ② - ③ ありゆき』


『試合続行不能のため』

『勝者 園田海未・絢瀬絵里』



――――――

367 : 以下、名... - 2016/09/15 21:17:03.82 Nz2WZ/uFO 248/347

――――――



にこ「まさか、ガットが焼き切れるなんてね」



亜里沙「ラケット1本しかなくてごめんね、ユキホ……」シュン

雪穂「あ、いや、しょうがないって! 普通、ガットに穴空くなんてあり得ないし!!」アセアセ

絵里「そ、そうよ! あまり落ち込んじゃダメよ、亜里沙!!」アセアセ

にこ「ほんと、あんた、化物よね」

海未「うっ、必死だったんです! 仕方ないでしょう!?」



にこ「っていうか、『陰』と『雷』だっけ?」

にこ「次のプレイを読ませない技に一瞬で移動した上物凄い回転のショットを打てる技」

にこ「あんなのあるなら、最初から使っときなさいよ」


海未「あ、あれは使えるまでに体が十分慣れないと危ないんです! 今回だって絵里が『レーザービーム』を見極めてくれたから打てたってだけで」

にこ「……結構ヤバかったってこと」

海未「結構どころではないくらいには」

にこ「ふーん」

368 : 以下、名... - 2016/09/15 21:23:15.04 Nz2WZ/uFO 249/347



英玲奈「……話をしているところ悪いんだが」


雪穂「え? あっ、はいっ!!」ビシッ

英玲奈「……そんなに恐縮しないでくれ」

雪穂「は、はい……」

英玲奈「…………」

あんじゅ「シングルス1のことでしょ?」

英玲奈「あ、あぁ」



「二勝二敗かぁ」

花陽「最後は……」チラッ

「やっぱり大将同士の試合になったなぁ」

真姫「やっぱり……? まさか希、こうなるの分かってたんじゃ……」

りんぱな「「ええっ!?」」

「ふふっどうやろね♪」


絵里「ほら、また適当なこと言わないのよ? 凛と花陽が信じちゃうでしょ?」

「ふふっ、そうやね」

にこ「……じゃ、これで最後ね」

海未「はい。それではシングルス1で戦う選手を紹介しましょう」

369 : 以下、名... - 2016/09/15 21:28:13.10 Nz2WZ/uFO 250/347


「フフッ、やっぱりこうなったわね」

「やっぱり……?」

「えぇ、なんとなくこうなる気はしてたのよ」

「…………偶然ですね。わたしもです」

「敬語」

「え?」

「いらないわ。いつもの貴女で向かってきてほしいの」

「っ、うんっ!!」

「さぁ、私達のテニスを始めましょうか」ニコリ




ツバサ「穂乃果さん♪」



穂乃果「うん! 勝負だよ!!」




370 : 以下、名... - 2016/09/15 21:30:07.13 Nz2WZ/uFO 251/347

――――――



最終戦
シングルス1



高坂穂乃果  vs  綺羅ツバサ



試合開始



――――――

381 : 以下、名... - 2016/09/25 19:04:21.57 vdIm8XCvO 252/347

『1セットマッチ』
『サービス ツバサ』



ツバサ「フフッ、行くわよ? 穂乃果さん?」ターンターン

穂乃果「うんっ!!」

ツバサ「まず、はっ――」スッ



ツバサ「はあっ!!」パァァァン



「強烈なサーブ!!」
「うん、でも、ほのかちゃんにはあれがあるよっ」

穂乃果「っ」グッ



穂乃果「やあっ!!!」


―― パァァァァン ――



『穂乃果 15 - 0 ツバサ』



穂乃果「よしっ!!」グッ

ツバサ「流石ね♪」

穂乃果「ありがとうございます!」

ツバサ「敬語になってるわよ?」

穂乃果「あっ、えへへ、ごめんね?」

ツバサ「いいえ、大丈夫よ」ニコリ

382 : 以下、名... - 2016/09/25 19:12:38.70 vdIm8XCvO 253/347


ツバサ「動画では見たけれど、その『リターン』は中々に強烈ね」ターンターン

穂乃果「それほどでも///」

ツバサ「なら――」スッ



ツバサ「はっ!!」パァァン

―― グググググッ ――



「スライスサーブです!」
「かなり変化してるにゃ!?」

「なるほど。変化をつけて『リターン』を打たせない気か」
「考えたわねぇ」

「……ふふっ」
「なにか、おかしい?」
「えぇ。ね?」


「はい。穂乃果にそんな戦法は無駄、ですよ」



穂乃果「はあああっ!!!」パァァァァァン



ツバサ「あっさりと……」



『穂乃果 30 - 0 ツバサ』



ツバサ「っと、驚いたわね」

穂乃果「?」

ツバサ「ごめんなさい。変化には弱いものかと思い込んでいたわ」

穂乃果「あー、うん。弱かったんだけどね……」

ツバサ「?」

穂乃果「むしろ、得意になっちゃったというかなんというか……」アハハ

383 : 以下、名... - 2016/09/25 19:22:36.80 vdIm8XCvO 254/347

――――――



英玲奈「無駄、とはどういうことだ?」

海未「そのままの意味ですよ。変化をつけたサーブは穂乃果に通用しないんです」

あんじゅ「それはどうしてかしらぁ?」

英玲奈「確かに彼女の『リターン』は強力だが、彼女の本質を考えると変化に強いようには思えないな」

海未「はい。事実その通りでした」

にこ「けど、今はってわけね」

海未「はい」コクリ

「凛たち、練習場所も別だったからわかんないけど、なにかすごい特訓とかしたのかにゃ?」

海未「はい。それは……」チラッ



絵里「この2週間、私と海未がピッチリ張り付いて練習したのよ♪」ウインク

海未「『風林火山』で随時プレイスタイルを変化させながら」

絵里「曲球の『スネイク』と直球の『高速サーブ』を受け続ける」

海未「その結果、穂乃果は緩急にも剛柔にも対応できるようになったのです!!」



海未「名付けて、『リーダー強化プラン』!!」



――――――

384 : 以下、名... - 2016/09/25 19:31:26.43 vdIm8XCvO 255/347

穂乃果「穂乃果は最後なのだから、強くなってもらわないと困るのです……って」

ツバサ「それは……」

穂乃果「アハハ……」トオイメ

ツバサ「大変だったわね」

穂乃果「うん……」

ツバサ「まぁ、でも、その結果、確かに強くなっているんだもの」ニコリ

穂乃果「う、うん!! そうだよねっ!」



ツバサ「じゃあ、お次は……」ターンターン



ツバサ「はあっ!!!」パァァァァァン



穂乃果「直球!!」

ツバサ「えぇ! つまらない小細工は通用しないらしいし♪」

穂乃果「っ」ニコッ



穂乃果「はあっ!!!」パァァァァァン



ツバサ「ふっ」フワッ



「ど、ドロップっ!?」
「はぁ、まったく、ツバサは。小細工しないと言ったばっかりだろう……」

ツバサ「小細工じゃないわよ? 歴とした戦術♪」

ツバサ「まぁ、でも――」



―― ダッ ――



穂乃果「やあっ!!!」パァァァァァン



『穂乃果 40 - 0 ツバサ』



ツバサ「フフッ、追いつかれるとは思わなかったわ」

ツバサ「やっぱり、凄いわね、穂乃果さん」ニコリ

穂乃果「えへへ///」

385 : 以下、名... - 2016/09/25 19:41:16.48 vdIm8XCvO 256/347

ツバサ「……それじゃあ、次はどうしようかしら」ターンターン

穂乃果「なんでも返すよっ!!」グッ

ツバサ「フフッ、それは心強い――」スッ



ツバサ「――わねっ!!」パァァァァァン



穂乃果「やっ!!」パァァァァン



ツバサ「ふっ」フワッ



「っ、またドロップぅぅ!?」ビックリニャ
「ほのかちゃん、これもよんでるよ!」

穂乃果「っ」ダッ



穂乃果「はあっ!!!」パァァァァァン



ツバサ「なら、これよ」ポーーーーン



「今度はロブだよっ」
「上手いわね。さっきより一手分攻めてるわ」
「……ふふっ」
「……これも彼女には効かないのか?」


「勿論ですよ」



穂乃果「はああああ――」バッ

ツバサ「そこからっ……跳べるのねっ!」



穂乃果「――やぁぁぁぁっ!!!」ベシィィィィィン




ツバサ「っ、これは……とれないわね」

穂乃果「っと……やったぁぁ!!」

ツバサ「凄いわ、穂乃果さん。動画で見た時とはまるで別人ね」

穂乃果「えへへ、海未ちゃんと絵里ちゃんのおかげ、かな」

ツバサ「……フフッ、そうかもしれないわ」



『穂乃果 ① - 0 ツバサ』

386 : 以下、名... - 2016/09/25 19:49:44.31 vdIm8XCvO 257/347

――――――



「1手ずつ相手に合わせて攻めるのがツバサさんのプレイスタイルなんやね」



あんじゅ「まぁ、そうねぇ」

花陽「直球のサーブからドロップショット、それからロブ」

ことり「流れるみたいにスムーズなプレイでした!」

亜里沙「ハラッセォ、です!」

絵里「ふふっ、でも――」チラッ



海未「ええ! 穂乃果の前では無意味です!」ドヤッ



真姫「…………」

雪穂「真姫さん……」

真姫「……雪穂ちゃんもそう、だったのね」

雪穂「……はい」コクリ

にこ「…………どうかした?」

雪穂「あっ……」

真姫「いえ、なんでもないわ」

にこ「……?」



雪穂「真姫さん……」

真姫「……大丈夫。穂乃果ならきっと……」

雪穂「……お姉ちゃん……」



――――――

387 : 以下、名... - 2016/09/25 20:03:51.35 vdIm8XCvO 258/347

『チェンジサービス』
『サービス 穂乃果』



穂乃果「よーしっ! この調子で行くぞぉぉ!!」ターンターン

ツバサ「私も負けないように頑張るわよ♪」

穂乃果「やっ」スッ



穂乃果「はあっ!!」パァァァン



ツバサ「……なるほど。サーブも強くなっているみたい」

穂乃果「練習したからです!」

ツバサ「えぇ、そうね」スッ



ツバサ「はっ!!」パァァァァン



「っ!! 上手いわ!」
「穂乃果ちゃんの逆サイド、しかも、ギリギリにリターンを返した!」
「す、すごいですっ!」



穂乃果「っ」ダッ

穂乃果「うっ!!」ベシッ


―― ポーーーーン ――


「にゃー!? ロブがっ!?」
「穂乃果! 気をつけなさいよっ!」

穂乃果「う、うん」グッ



ツバサ「はあっ!!」ベシィィィィン



穂乃果「足下っ!?」

「コントロール、すごすぎにゃ!?」
「穂乃果ちゃんっ」

穂乃果「っ」

388 : 以下、名... - 2016/09/25 20:04:53.91 vdIm8XCvO 259/347

ツバサ「フフッ、返してみせて?」

穂乃果「~~っ、うん!」グッ



穂乃果「はあっ!!」パァァァァン



「あの体勢から!?」
「ホノカさん、ハラッセォですっ」
「よくとりました! 穂乃果!!」



ツバサ「えぇ、流石ね」フワッ




穂乃果「えっ!?」



―― トンッ ――



『穂乃果 0 - 15 ツバサ』


穂乃果「ドロップ、ショット……」

「……相変わらず巧いな」
「えぇ、そうねぇ」



ツバサ「フフッ、とても楽しいわね、穂乃果さん♪」


389 : 以下、名... - 2016/09/25 20:12:08.23 vdIm8XCvO 260/347

穂乃果「…………よしっ!」ターンターン

ツバサ「……フフッ」

穂乃果「……ふっ」スッ



穂乃果「えいっ!」パァァァァン



ツバサ「っ、はあっ!」パァァァァン

穂乃果「っ、まだまだ!」ダッ



穂乃果「やあっ!」パァァァァァン



ツバサ「こちらもまだまだよ!」パァァァァン



穂乃果「っ」スッ



穂乃果「やっ」フワッ

ツバサ「!?」



―― トンッ ――



『穂乃果 15 - 15 ツバサ』


ツバサ「ドロップショット……」

穂乃果「えへへ!」

ツバサ「面白いわ♪」



穂乃果「次、行くよ?」ニコッ

ツバサ「ええ、いつでも」ニコリ



390 : 以下、名... - 2016/09/25 20:28:35.21 vdIm8XCvO 261/347

――――――



絵里「……凄いわね、彼女」

海未「はい……強くなった穂乃果と互角とは……想像以上です」

絵里「いえ、でも、穂乃果の方がまだ――」



にこ「親バカたちは放っといて……実際どうなのよ?」

英玲奈「……どう、とは?」

にこ「ツバサちゃ……ツバサはあれで本気なの?」

英玲奈「……さぁ」

にこ「さぁ……って、あんたねぇ……」

あんじゅ「本気ねぇ……」

にこ「……なによ?」

英玲奈「我々も知らないんだ」

にこ「は?」



英玲奈「ツバサの本気は我々も知らない」

英玲奈「本気を出さずとも大抵の相手には勝ってしまうからな」



花陽「えっ……」

にこ「……でも、親バカじゃないけど、穂乃果は結構いい感じに打ち合ってるわよ?」

「そうやね。さっきのゲームは穂乃果ちゃんがストレートでとったわけやし」

あんじゅ「あぁ、あれはあの娘の悪い癖よぉ」

「くせ?」

英玲奈「……いや、あれは癖というよりは、ツバサのプレイスタイルだと言った方がいいだろうな」

亜里沙「?」

ことり「えっと、つまり……?」



英玲奈「まぁ、詳しいことは実際に体験した人間に聞くのが一番だろうな」チラッ



真姫「…………」

雪穂「…………」



「真姫ちゃん?」

亜里沙「ユキホ?」



真姫「……あの人は――」

391 : 以下、名... - 2016/09/25 20:34:17.15 vdIm8XCvO 262/347





―― パァァァァァァン ――




『穂乃果 40 - 30 ツバサ』



穂乃果「はあっ、はあっ……」

ツバサ「ふっ、はあっ……」

穂乃果「ふぅぅ…………えっと」

ツバサ「……どうかした? 穂乃果さん?」

穂乃果「え、あっ、ううん!」



穂乃果(気のせい、だよね?)

穂乃果(あの時と似てる感じだった。ことりちゃんと組んで、花陽ちゃんと凛ちゃんと戦ったあの時と……)

穂乃果(なんとなく、だけど……『来る』って感じた)

穂乃果(あの時は風。今はツバサさんの打球が来るって分かった。そんな――)




穂乃果「――『予感』がした……?」




ツバサ「フフッ♪」

400 : 以下、名... - 2016/10/02 19:45:09.18 X/n30NyJO 263/347

――――――



真姫「……はぁっ、はっ……」

ツバサ「単身乗り込んで来た。それは評価するわ」ニコリ

真姫「っ、なによ、それ……バカにしてるわけ……」

ツバサ「いいえ。褒めているのよ?」



ツバサ「……でも、この程度なのね」ボソッ

真姫「っ」



――ジワッ ――



ツバサ「『技』も使えない。身体能力も並」

真姫「くっ」

ツバサ「前回、試合をしなかったのはいい判断だったわねこんなんじゃ貴女――」



ツバサ「ただの『お荷物』よ」フフフ



―――――― ジワッ ――――――




真姫「あ、ああぁあぁ……ぁアァ……」

真姫「あ゛あぁあ゛アァァア゛ア゛ァッ!!!」

真姫「…………」

真姫「……アハッ♪」



ツバサ「フフフ、初めまして『真姫』さん」

真姫「貴女、真っ赤に染めてアゲル♪」



――――――

401 : 以下、名... - 2016/10/02 20:01:43.16 X/n30NyJO 264/347

――――――



真姫「あの人は試合相手を『引き出す』のよ」



花陽「……引き出す?」

「どういうことかにゃ?」

「もしかして、花陽ちゃんが使った『ゾーン』に入らせる技と同じ感じ?」

真姫「……いえ。あれとは別よ。あれはあくまでも『ゾーン』に入らせるだけで、『引き出して』いるわけじゃないわ」

にこ「要領を得ないわね。つまり、どういうことよ?」

真姫「にこちゃん、試合をしてるなかで成長するってことあると思う?」

にこ「? まぁ、あるんじゃないの? にこだって今回の試合で『回転』を使えるようになったわけだし」

真姫「うん。それはにこちゃんが自分できっかけを見つけたから」

にこ「?」

真姫「ねぇ。もし、そのきっかけを――」



真姫「相手が、意図的に作り出しているとしたら?」



「……えっ?」

花陽「意図的に……って……?」

雪穂「……っ」ブルッ

亜里沙「……ユキホ?」

雪穂「大丈夫……大丈夫……」

あんじゅ「……えれな」チラッ

英玲奈「あぁ」コクン

英玲奈「……簡潔に言おう」

英玲奈「綺羅ツバサは――」



英玲奈「相手のプレイを『完成』させる」

英玲奈「そして、そのプレイを――」



――――――

402 : 以下、名... - 2016/10/02 20:18:34.41 X/n30NyJO 265/347

穂乃果「…………」ターンターン

ツバサ「……どうしたのかしら、穂乃果さん?」

穂乃果「あっ、ううん……行くよ!」スッ



穂乃果「はあっ!!」パァァァァン



ツバサ「いいサーブね」グッ

穂乃果「あっ……」



穂乃果「――――足下に……来る……」ボソッ



ツバサ「はああっ!」パァァァァン



穂乃果「っ」ダッ

「足下に!?」
「でも、見て! 穂乃果はもう前に出ているわ!」


穂乃果「っ、やっ」トンッ


ツバサ「っ、ドロップ……ねっ」ダッ

穂乃果「――――っ、今度は……ストレートを抜いてくる……?」ボソッ



ツバサ「これならどうかしら!!」パァァァァン



「上手いわ!」
「穂乃果の重心がやや左に寄ったのを見て、ストレートですか!!」
「これじゃ穂乃果は追いつけ――」



穂乃果「やああぁぁぁぁ!!!」パァァァァァァン



『穂乃果 ② - 0 ツバサ』


「追い付いた……!?」
「一体、穂乃果は……?」

穂乃果「はぁっ……はっ……」

403 : 以下、名... - 2016/10/02 20:19:44.48 X/n30NyJO 266/347




―― ドクン ――



穂乃果「…………はぁっ、はぁ……そっか」



―― ドクンドクンドクン ――



穂乃果「……あの時からおかしいなって思ってたんだ」

穂乃果「なんでか分かんないけど、ずっと風が来ることが分かってた」

穂乃果「だけど、これはそう、なんだね」



ツバサ「そうね」



穂乃果「ツバサ、さん……?」

ツバサ「貴女の考え通りよ。それは貴女の力」ニコッ

穂乃果「穂乃果の……?」

ツバサ「『一点特化』なんかよりずっと上の『能力』」

穂乃果「…………」

ツバサ「分かるでしょう? いえ、分かっているわよね、穂乃果さん」

穂乃果「…………」

ツバサ「だって、私がこれから言うことですら分かっているはずだもの」

穂乃果「…………うん」コクン

ツバサ「貴女の本当の『能力』。その名は――――」




「「『予感』」」



――――――

404 : 以下、名... - 2016/10/02 20:31:54.12 X/n30NyJO 267/347

――――――



絵里「『予感』?」

海未「簡単に言えば先読みでしょうか。相手の動きや仕草から次にどこへ打ってくるかを瞬時に予測できる……」

絵里「……予測ね。穂乃果が一番苦手そうなものだけど」

海未「……いえ、恐らく穂乃果は私と絵里の修行でその領域まで至ったのでしょう」

絵里「なるほどね」

海未「思えば、前回の試合の時にその兆候はあったのです。まるで風を読むようなプレイをしていましたから」

絵里「予測というよりは野生の勘に近いわね……」

海未「フフッ、確かにその方が穂乃果らしいですね」



エェェェェ!?
ソンナノハンソクニャ!!
ダガソレガジジツダ
ソレジャアホノカチャンハ……



絵里「……それにしても」チラッ

海未「はい。少し解説が騒がしいですね」チラッ



絵里「ちょっとみんな! 穂乃果の試合ちゃんと見てるのかしら?」

海未「穂乃果が頑張っているのです! 私達が応援をせずにどうするのですか!!」



のぞことにこりんぱな「「………………」」



絵里「……あら?」

海未「…………?」



――――――

405 : 以下、名... - 2016/10/02 20:36:19.09 X/n30NyJO 268/347

『チェンジサービス』
『サービス ツバサ』



ツバサ「……『予感』なんてすごいわね」ターンターン

穂乃果「あ、ありがとうっ!」

ツバサ「フフッ、ねぇ、穂乃果さん? 私は貴女に勝てるかしら?」

穂乃果「……それは分からないけど、全力で戦おう!!」

ツバサ「…………フフッ」スッ



ツバサ「そうね♪」パァァァァン



穂乃果「っ、コーナーギリギリ」グッ

穂乃果(……これも『予感』通り!)



穂乃果「はあっ!!」パァァァァァン



『穂乃果 15 - 0 ツバサ』



ツバサ「……フフッ♪」


406 : 以下、名... - 2016/10/02 20:43:12.56 X/n30NyJO 269/347


ツバサ「さぁ、次も行くわよ?」ターンターン

穂乃果「うん!」

ツバサ「このサーブ……」スッ



ツバサ「読んでみて!」パァァァァァン

―― グググググッ ――



「スライスサーブです!」
「1ゲーム目のものより速いわね。でも!」

穂乃果「うん! それも分かってたよ!」ダッ



穂乃果「やぁぁぁっ!!」パァァァァァン



『穂乃果 30 - 0 ツバサ』



ツバサ「角度をつけて……」

穂乃果「っ、はあっ……」

ツバサ「流石ね、穂乃果さん」ニコリ

穂乃果「えへへ」テレテレ

ツバサ「……本当に素敵だわ♪」ボソッ

407 : 以下、名... - 2016/10/02 20:49:25.31 X/n30NyJO 270/347

――――――



『穂乃果 ③ - 0 ツバサ』

『穂乃果 15 - 0 ツバサ』

『穂乃果 30 - 0 ツバサ』



――――――



海未「試合は圧倒的で」

海未「その時はすぐにやって来ました」

海未「ふふっ」

海未「穂乃果、本当に頑張りましたね。流石はリーダーです」

海未「……なんて、穂乃果の前では言えないのですけれど」

海未「ただ……そうですね」

海未「やはりこのゲームに穂乃果が勝ったならば、言うことにしましょうか」



海未「信じていました、と」フフッ



――――――



『穂乃果 40 - 0 ツバサ』
『マッチポイント 穂乃果』



――――――

408 : 以下、名... - 2016/10/02 20:57:36.91 X/n30NyJO 271/347


穂乃果「最後行くよ、ツバサさん!」ターンターン

ツバサ「えぇ♪」

穂乃果「ふっ」スッ



穂乃果「はぁっ!!」パァァァァァン



ツバサ「っ」グッ

穂乃果「――今度は、ドロップだよ!!」ダッ



ツバサ「……ふっ」フワッ



穂乃果「当たりっ!!」パァァァァァァン

ツバサ「っ、さすが、ねっ」ダッ

穂乃果「――届く、けど、ロブになる!」スッ



ツバサ「これも、読まれてるのね……」ポーーーン



穂乃果「よしっ!!」グッ

ツバサ「…………」




穂乃果「やぁぁぁっ!!!」ベシィィィィィン




「体勢を崩したところにスマッシュ!!」
「しかも、逆サイドです! これは決まりました!」




ツバサ「……本当に素敵ね、穂乃果さん」


409 : 以下、名... - 2016/10/02 21:02:42.45 X/n30NyJO 272/347

ツバサ「初めてよ、ここまで長く試合をしたいって思ったのは……フフッ♪」

穂乃果「――――えっ?」

ツバサ「そんな貴女なら、きっとこれも――」



―――――― ジワッ ――――――



穂乃果「――なん、で、ツバサさんが……?」ゾワッ




ツバサ「『予感』してくれたのヨネ♪」フフッ




穂乃果「真姫ちゃんの『赤目』を……?」

410 : 以下、名... - 2016/10/02 21:10:53.14 X/n30NyJO 273/347



ツバサ「さ、行くワヨ?」バッ

穂乃果「っ!?」


穂乃果(速い!?)

穂乃果(いや! 穂乃果には『予感』がある!)

穂乃果(これで次を読むよ!!)

穂乃果(――次は)



穂乃果「穂乃果の後ろにロブだ!!」クルッ



ツバサ「その通り」ポーーーン



穂乃果「よしっ!」ダッ

ツバサ「けど、とれないわよ?」

穂乃果「えっ!?」



―― フワッ ――



穂乃果「…………あ、れ?」キョロキョロ



―― トンッ ――



穂乃果「っ、な、なんで!?」

ツバサ「『予感』したのに、なんでとれなかったのか、そんな表情ね」フフッ

穂乃果「っ」

ツバサ「簡単よ? だって、そのロブ――」




ツバサ「穂乃果さんの『死角』に落ちたんだもの」ニコリ




穂乃果「……えっ……?」

411 : 以下、名... - 2016/10/02 21:24:52.77 X/n30NyJO 274/347

穂乃果「え? 『死角』って、えっ!? それって英玲奈さんの『技』じゃないんですか!?」

ツバサ「……フフッ、どうかしら?」

穂乃果「それに、真姫ちゃんの『赤目モード』も使ってて……まさか……」



穂乃果「『無我の境地』」

ツバサ「――ではないわ」



穂乃果「っ」

ツバサ「見た『技』をそのまま使うことができる『無我の境地』」

ツバサ「私の『それ』はそんな便利なものじゃないわ。戦った相手の『技』しか使えないのよ」

穂乃果「……じゃあ――」



ツバサ「――いいえ。穂乃果さんの言おうとしたことは間違いね」

ツバサ「相手の『技』をそのまま使える訳じゃない」



穂乃果「っ、なんで穂乃果の言おうとしたこと……っ」ゾクッ

ツバサ「あら、気付いたのね。……いいえ、『予感』したのね」ニコリ

穂乃果「……っ」




ツバサ「『完成』」

ツバサ「対戦相手の『能力』を引き出してそれを『完成』させて使うことができる」

ツバサ「それが私の『能力』」




ツバサ「ねぇ、穂乃果さん?」

穂乃果「な、なんですか……?」

ツバサ「貴女の『予感』はどのくらい先のことまでわかるのかしら?」

穂乃果「それは……」

ツバサ「……あ、答えなくていいわ」

ツバサ「2秒間ね?」

穂乃果「っ、また……っ」

ツバサ「『私の』は……そうね……」




ツバサ「10秒、といったところかしら♪」ニコリ




――――――



『穂乃果 40 - 15 ツバサ』

『マッチポイント 穂乃果』



――――――

412 : 以下、名... - 2016/10/02 21:39:10.30 X/n30NyJO 275/347

――――――



海未「こんなの、聞いていませんっ!!!」バンッ



海未「『完成』? 相手の技を『完成』させて使える!? なんなんですか!!」

英玲奈「……私たちにも詳細は分からない。ただ分かるのは、ツバサには『完成』された『技』があるということだけだ」

にこ「完全に『無我の境地』の上位互換じゃない……」

「チートにゃぁ……」



「……いっこ、確認してもええかな?」



あんじゅ「なにかしらぁ?」

「ツバサさんと戦ったことがあるのは……」


英玲奈「私が知っている限りでは、私とあんじゅ、それから……」チラッ

真姫「私と……」

雪穂「……私です」


絵里「四人……ね」

ことり「……じゃあ、ツバサさんは、まきちゃんたちの『技』をつかえるってことですか……?」

英玲奈「あぁ」



英玲奈「西木野真姫の『赤目モード』」

英玲奈「高坂雪穂の『演出』」

英玲奈「あんじゅの『イリュージョン』」

英玲奈「そして、私の『死角』」


英玲奈「ツバサはその全てを引き出し『完成』させている」



絵里「四人の技……いえ、それを超える『技』ってわけね」

亜里沙「ハラショ……」



あんじゅ「いいえ……それはちがうわぁ」



413 : 以下、名... - 2016/10/02 21:55:24.39 X/n30NyJO 276/347


花陽「ちがうって……なにが、ですか……?」

あんじゅ「4人じゃないのよ」

にこ「は? 四人でしょ? 真姫ちゃんに雪穂ちゃんに……」

真姫「…………」

雪穂「…………」

英玲奈「そちらの二人は理解しているようだな。勿論、私も……。当然か……」

「四人じゃない。なら……?」



英玲奈「50人」



英玲奈「それが、君達の動画を見て、ツバサがテニスを始めてから今日までに試合をした人数だ」

「50っ!?」

花陽「そ、それじゃあ……」

あんじゅ「えぇ」



英玲奈「ツバサは50人の技を引き出し、自らのものとして『完成』させている」

英玲奈「勿論、その50人全員に勝利している」

英玲奈「人の『能力』を開花させながら、それを超え、自らが『完成』させる」

英玲奈「神に愛されているとしか思えないその力と強さ」

英玲奈「それをその身をもって知った者は、ツバサをこう呼ぶ」




「『神の子』綺羅ツバサ」




――――――

420 : 以下、名... - 2016/10/09 21:30:40.35 jeZrGVpfO 277/347

穂乃果「……」ターンターン

ツバサ「フフッ、怖い顔よ?」

穂乃果「あっ、ご、ごめんっ」



穂乃果(『完成』……)

穂乃果(真姫ちゃんや英玲奈さん、あんじゅさん、それに雪穂の『技』も使えるってことだよね……)


穂乃果「…………」ゴクッ

ツバサ「……いつでもいいわよ」ニコリ

穂乃果「っ」スッ



穂乃果「はぁぁっ!!」パァァァン



ツバサ「さ、まずは――」グッ



――――――――――



穂乃果「え?」



―― トンッ ――



『穂乃果 40 - 30 ツバサ』


ツバサ「バックハンドに打ったらダメよ? 穂乃果さん」

ツバサ「貴女の妹さんの『技』覚えてるでしょう?」

穂乃果「っ、雪穂の……っ」

ツバサ「えぇ」



ツバサ「『レーザービーム』♪」



421 : 以下、名... - 2016/10/09 21:44:49.43 jeZrGVpfO 278/347

穂乃果「…………」ターンターン

ツバサ「……今度は何で行こうかしら」ニコッ

穂乃果「っ」スッ


穂乃果「はぁぁっ!!」パァァァン


穂乃果(だい、じょうぶ)

穂乃果(まだ穂乃果のマッチポイントだもん! たしかに『リターン』よりはポイント取りにくいけど!!)



ツバサ「はっ!」パァァン



穂乃果「――クロスに角度つけたショット!!」

穂乃果「そうだ! まだ穂乃果には『予感』がある」

穂乃果「負けないよ!!」ダッ



穂乃果「やぁぁぁぁ!!」パァァァン



ツバサ「やっぱり素敵ね、穂乃果さん♪」

ツバサ「そのお礼に私も素敵なものを見せてあげるわね?」グッ



ツバサ「――」フワッ



穂乃果「――え!? ポールに向かって打った!?」

「アウトです!」
「穂乃果!」

ツバサ「アウト? そんなわけないじゃない♪」




―― カンッ ――




穂乃果「……あ、れ?」



―― ツツツツツーッ ――



穂乃果「ボール、ネットの上を渡って……!?」



―― トンッ ――



穂乃果「…………そんな……」

ツバサ「驚いた?」

ツバサ「神奈川のスクールアイドルの娘の『技』よ。本人の『技』はここまで綺麗じゃなかったのだけれどね♪」フフッ

ツバサ「『妙技・綱渡り』」

ツバサ「素敵な『技』よね♪」



『穂乃果 40 - 40 ツバサ』

422 : 以下、名... - 2016/10/09 22:29:36.89 jeZrGVpfO 279/347

穂乃果「……つ、つよい」

ツバサ「ありがとう。嬉しいわ」ニコリ

穂乃果「っ、でも!」スッ



穂乃果「負けない!」パァァァン



ツバサ「……そう」グッ

ツバサ「なら――」



ツバサ「返してみて?」フワッ



穂乃果「――また!?」

「穂乃果ちゃんっ」
「前よ!」
「とりなさい! 穂乃果ァ!!」

穂乃果「うんっ!!」ダッ



―― カンッ ――


―― ツツツツツーッ ――



穂乃果「はあっ!」ベシッ

「取ったにゃ!!」
「でも、体勢が……」
「お姉ちゃんっ!!」

穂乃果「っ、うんっ」


穂乃果(今度はなにがくる)

穂乃果(『予感』で――――っ)

穂乃果(――見えた! あのフォームからは……)



穂乃果「ロブだ!!」バッ



「穂乃果ちゃん動いたよっ」
「流石穂乃果ね。あそこからすぐ動けてる!」



―― パァァァァァァァン ――



穂乃果(やっぱりロブだ!)

穂乃果(これならとれる!!)


423 : 以下、名... - 2016/10/09 22:37:52.10 jeZrGVpfO 280/347

ツバサ「残念ね。それはただのロブじゃないのよ」




―― シュルルルルル ――




穂乃果「この音っ、なに?」

「上よ!」
「穂乃果さんっ!!」
「ホノカチャンッ!」

穂乃果「う、え?」




―― パァァァァァァァァァァァン ――




穂乃果「っ、そんな……」


ツバサ「その打球は最高到達点から急激にスピードを上げるのよ」

ツバサ「物凄いスピードで見えないところから落ちてくるロブ。彼女の『技』はそこまでだった」

ツバサ「だから、私が『完成』させたのよ」

ツバサ「バウンドした後に大きく跳ね上がって、フェンスの外へ逃げていく『技』にね」



ツバサ「『メテオドライブ』」



ツバサ「確か、そんな名前だったわね」フフッ



『穂乃果 40 - Ad ツバサ』

424 : 以下、名... - 2016/10/09 22:55:46.24 jeZrGVpfO 281/347

ツバサ「どうかしら? 私の『技』」

穂乃果「……っ、すごいです」ターンターン

ツバサ「フフッ、ありがとう♪」

穂乃果「っ」スッ



穂乃果「はぁぁっ!!」パァァァン




穂乃果(すごい、ほんとに……)

穂乃果(でも、負けない! 負けられないよっ!)

穂乃果(穂乃果は絶対諦めな――)


ツバサ「褒めてくれたお礼、しなきゃね♪」

穂乃果「……え?」

ツバサ「見せてあげるわ」



ツバサ「穂乃果さんの到達点。貴女の『完成』を」グッ



―― パァァァァァァァン ――



―― トンッ ――



穂乃果「……あ、あれ?」

穂乃果「それ、穂乃果の……ですよね」

穂乃果「穂乃果の『リターン』……なのに……」



ツバサ「ねぇ、穂乃果さん」

ツバサ「これが貴女の『技』よ。『完成』した貴女の本当の『技』」

ツバサ「『リターン』なんて平凡なものじゃない」



ツバサ「『リターンエース』」

ツバサ「それが貴女の……いえ」




ツバサ「私の『技』よ♪」




『穂乃果 ③ - ① ツバサ』

425 : 以下、名... - 2016/10/09 23:26:09.08 jeZrGVpfO 282/347

――――――



ことり「『妙技・綱渡り』に『メテオドライブ』……」

花陽「どっちもすごく強いよ……」

絵里「……えぇ」

「ついには穂乃果ちゃんの『リターン』も『完成』させた、ってことやね」

英玲奈「一つ一つが決め技と言っても過言ではない。それほどに『完成』されている」

「……『神の子』」

「強すぎるよ……」ブルッ



真姫「…………」



426 : 以下、名... - 2016/10/09 23:32:45.88 jeZrGVpfO 283/347

――――――



真姫「真っ赤にっ、真っ赤に染まりなサイッ!!!」パァァァン



ツバサ「……っ」パァァァン

真姫「防戦一方じゃナイ♪ それでも『神の子』ナノ?」

ツバサ「…………」パァァァン

真姫「笑っちゃうワネ!!」パァァァン



ツバサ「……」ポーーーン



真姫「ここでロブ……」

真姫「アハッ♪ これは壊しちゃってもイイのよネ?」ニタァァ



真姫「『ナパーム』」バシィィィィン



ツバサ「……フフッ」

真姫「え……?」



ツバサ「ほんと、笑っちゃうワネ♪」




―― パァァァァァァン ――




――――――

427 : 以下、名... - 2016/10/09 23:44:56.69 jeZrGVpfO 284/347




真姫「同じ、だわ……」



「……真姫ちゃん?」

真姫「同じ、よっ、私の時と……っ」ブルッ

花陽「ま、まきちゃんっ!?」

ことり「どうかしたの?」

絵里「っ、真姫!?」



真姫「……っ、引き出されて、追い詰めたのに……」ガクガク

真姫「っ、あ、アァァァっ……」ガクガク



花陽「真姫ちゃんっ、真姫ちゃん!?」

「真姫ちゃんっ!」

海未「英玲奈さん!!」

英玲奈「くっ、あんじゅ!! 彼女を外へ!」

あんじゅ「わかったわっ」ダッ



――――――



英玲奈「フラッシュバック……か」

にこ「……何があったのか、考えたくもないわね」

英玲奈「……向こうはあんじゅたちに任せよう。あまり大人数いても刺激するだけだからな」

絵里「……えぇ」

雪穂「…………」

海未「……雪穂は、大丈夫ですか?」

雪穂「う、うん……っ、たぶん……」

海未「なら、いいのですが……」



雪穂「…………」ブルッ

亜里沙「ユキホ……」ギュッ

雪穂「……ありがと、亜里沙」



ことり「ほのかちゃん……は……」

「……ううん、きっとダイジョブよ」

絵里「…………」

428 : 以下、名... - 2016/10/09 23:46:25.71 jeZrGVpfO 285/347

――――――



にこ「大丈夫よ」



――――――

429 : 以下、名... - 2016/10/09 23:52:20.28 jeZrGVpfO 286/347


ことり「にこ、ちゃん……?」

「にこっち……?」

絵里「大丈夫って……なんで言い切れるの?」

にこ「……海未は分かってるでしょ?」

海未「えぇ、にこが何を根拠にそう言っているのか、それは分かっています」


にこ「……見てみなさい」

にこ「穂乃果の目」



にこ「あいつ、まだ諦めてないわ」



――――――



穂乃果「………………」



―― ドクンッ ――



穂乃果「……………………よしっ!」




――――――



にこ「……そう」

にこ「使うのね、穂乃果」



――――――

430 : 以下、名... - 2016/10/10 00:00:30.33 nrXEwjGkO 287/347

『チェンジサービス』
『サービス ツバサ』



ツバサ「さぁ、まずは1ゲームとったわよ♪」ターンターン

穂乃果「……はい」

ツバサ「フフッ♪ まだ諦めてないわね」

穂乃果「はいっ!」

ツバサ「いいわ、本当に……」スッ

ツバサ「最高よっ!!」バッ

「跳んだ!?」
「また来るわよ! 穂乃果!」

穂乃果「っ!!」グッ



ツバサ「そうこなくちゃ!!」



―― パァァァァァァァァァァン ――



穂乃果「っ」ダッ

穂乃果「『リタ――痛っ!?」グッ



―― カランッ ――



『穂乃果 0 - 15 ツバサ』



ツバサ「残念。穂乃果さんの筋力じゃ『予感』しても返せないわ」

ツバサ「これが『ビッグバン』だもの」



431 : 以下、名... - 2016/10/10 00:04:16.75 nrXEwjGkO 288/347

ツバサ「次は……」



ツバサ「これよ♪」シャッ



穂乃果「アンダーサーブ……っ」ダッ

穂乃果「――――この打球はっ」



―― スッ ――



穂乃果「っ!?」スカッ

穂乃果「消え――」



ツバサ「『バニシングカット』」

ツバサ「その打球、消えるのよ」ニコリ



『穂乃果 0 - 30 ツバサ』

432 : 以下、名... - 2016/10/10 00:08:57.69 nrXEwjGkO 289/347

ツバサ「今度はこれよ」スッ



ツバサ「はっ!!」パァァァン



穂乃果「っ、今度こそ!!」グッ



―― ギュルルルルルル ――



穂乃果「なっ!?」

穂乃果「な、なんで……弾まない……」



ツバサ「『タンホイザーサーブ』って言うのよ」

ツバサ「元々はこんなに弾まないサーブじゃなかったのだけれど……『完成』させたから♪」



『穂乃果 0 - 40 ツバサ』

433 : 以下、名... - 2016/10/10 00:13:00.61 nrXEwjGkO 290/347

――――――



絵里「にこ……」

にこ「黙ってみてなさい」

絵里「……っ」



にこ(分かってるじゃない)

にこ(ツバサの『完成』は確かに強いわ。完全に上位互換だし)

にこ(だから、重要なのはタイミング)

にこ(油断しきってるところに、叩き込みなさい! 穂乃果!)



――――――

434 : 以下、名... - 2016/10/10 00:22:47.53 nrXEwjGkO 291/347

ツバサ「さ、次は違うパターンの消えるサーブを打つわよ」ターンターン

穂乃果「……」

ツバサ「『予感』できるかしら?」フフッ

穂乃果「…………」

ツバサ「……ふっ」スッ



ツバサ「『神隠し』!」パァァァン



―― シャァァァ ――



「また消えた!」
「いえ、さっきのとは違います!」

穂乃果「――見えたよっ!」ダッ

ツバサ「さ、返してみて!!」



穂乃果「ここだぁぁぁぁ!!!」パァァァン



「『リターン』!」
「本家の『リターン』か。だが、やはり……」



穂乃果(……うん。分かってる)

穂乃果(たぶんツバサさんには、穂乃果の『技』は効かないってことも)

穂乃果(『リターン』を余裕で返してくるってことも)



ツバサ「流石穂乃果さんね♪」

ツバサ「でも、大勢が崩れてるわ。そのコース突かせてもらうわね」グッ



ツバサ「『バイキングホーン』!!」



「!? 逆手に持ち代えて……!?」
「あんなフォーム見たことない!」



穂乃果(うん。やっぱりだ)

穂乃果(…………)



穂乃果「使わせてもらうね」


穂乃果「にこちゃん」

穂乃果「海未ちゃん」




―― ドクンッ ――




435 : 以下、名... - 2016/10/10 00:24:38.70 nrXEwjGkO 292/347

――――――




穂乃果『『動くこと雷霆の如し』ッ!!』


―― パァァァァァァァァァァン ――




――――――

436 : 以下、名... - 2016/10/10 00:28:41.37 nrXEwjGkO 293/347


英玲奈「一瞬で移動した!? あれは!!」

絵里「海未の『雷』!?」

「海未ちゃんの『技』を穂乃果ちゃんが使えるってことは……!!」



にこ「そうよ!! 『無我の境地』!!」



にこ「穂乃果を特訓したのは、絵里や海未だけとは言ってないでしょ?」ニカッ

「! にこっち!」



にこ「さ、決めなさい! 穂乃果!!」

海未「穂乃果!!」


437 : 以下、名... - 2016/10/10 00:32:41.21 nrXEwjGkO 294/347

――――――



ツバサ「――そう来ると思ってたわ」

ツバサ「……いえ」

ツバサ「10秒前には、もう――」




ツバサ「――『予感』していたわ」




――――――

438 : 以下、名... - 2016/10/10 00:42:26.98 nrXEwjGkO 295/347


穂乃果『……え?』

ツバサ「返すわね」スッ



―― ギリギリギリギリ ――



―― パァァァァァァン ――

―― パァァァァァァン ――

―― パァァァァァァン ――

―― パァァァァァァン ――

―― パァァァァァァン ――



穂乃果『…………な、んで……?』


ツバサ「『雷』はガットを焼き切るほどの高回転のショット」

ツバサ「なら、ガットを使わないで返せばいい」


ツバサ「例えば、フレームでね」


ツバサ「フレームを使う『技』に『あばれ球』というものがあってね。本来はもっと増えるんだけど、今回は残念ながら五球程度にしかならなかったわね」

ツバサ「流石の威力だわ」フフッ



穂乃果『ち、ちがっ……』

ツバサ「ん? ……あぁ、『そっち』か」



ツバサ「ねぇ、穂乃果さん」

ツバサ「言ったはずよ? 私の『予感』は10秒だって」

ツバサ「つまりね?」




ツバサ「貴女のテニスは既に終わっているのよ」ニコリ




『穂乃果 ③ - ② ツバサ』

445 : 以下、名... - 2016/10/22 20:51:27.36 NB0N5iifO 296/347

――――――



2ゲーム目をとられて。
気づいたら、追いつかれてた。
そして、もう1ゲームもとられてた。


このゲームをとられたら……?

それを考えたら、すごく怖くなった。
穂乃果が負けたら全部無駄になっちゃうんだって思っちゃったから。



ここまで繋いでくれたみんなのために勝ちたい。



そう思うのに……。


…………。


なのに、ツバサさんには全部効かなかった。

『一点特化』も。
『予感』も。
にこちゃんに教えてもらった『無我の境地』だって効かなかった。

全部、全部、効かなかったんだ。



…………こわい。
こわいよ。



誰か助けて。



――――――

446 : 以下、名... - 2016/10/22 20:53:08.05 NB0N5iifO 297/347

――――――




「ほのかちゃんっ」




――――――

447 : 以下、名... - 2016/10/22 21:06:30.51 NB0N5iifO 298/347

その声は目の前から……ううん。
穂乃果の名前を呼んだその声の主は、今はもう穂乃果の腕のなかにいる。

ぴったりと。
まるで、穂乃果をなにかから守ってくれるみたいに、ぎゅっと。
その子は穂乃果を抱き締めてくれていた。




穂乃果「ことり、ちゃん……?」



ことり「~~っ、ほのかちゃんっ」




抱きついていることりちゃんの表情は見えない、けど……。
その声はいつもの優しい声じゃなくて、少しかすれた声。
……ことりちゃん?



ことり「もう、やめよ……?」

穂乃果「え?」



ことり「もう、いいよぉ……」



もういい。
ことりちゃんはそう言った。

……でも。



穂乃果「でも、穂乃果は……」



勝たなくちゃ。
その言葉は――



「……っ、穂乃果」



――後ろから回されたその腕に止められた。
ことりちゃんに負けないくらいぎゅっと抱きしめるその腕は、



海未「もう、いいですっ……」

穂乃果「海未ちゃん……」



海未ちゃんのもので。

449 : 以下、名... - 2016/10/22 21:14:52.86 NB0N5iifO 299/347


海未「もう、止めましょう……」

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「……穂乃果が勝たないといけないと思ってるのは分かります」

穂乃果「っ」



貴女が責任感が強いのは、私とことりが誰よりも分かっているつもりですから。

穂乃果をぎゅっとしたまま、海未ちゃんはそう言う。
そして、



海未「けれどっ!」

海未「貴女が、こんなに辛そうなのはっ……見て、られませんっ!」



そう続けた。

辛そう?
穂乃果が?



海未「はい。そうですよ……。だって、穂乃果」

海未「笑ってないじゃないですか……」



穂乃果「あ、れっ……?」



あ、そうだ。
穂乃果、全然笑えてない。



――――――

450 : 以下、名... - 2016/10/22 21:23:42.62 NB0N5iifO 300/347

――――――



ツバサ「ふぅ……」

ツバサ「中断、したのはいいけれど……」

ツバサ「…………」



ツバサ「穂乃果さんは戻ってこれるのかしら?」



ツバサ「…………」

ツバサ「……はぁ、結局『完成』の前では、穂乃果さんでも……」



「…………」



ツバサ「……中断したとは言え、まだ試合中よ?」

「…………」

ツバサ「試合中にコートに入るのはマナー違反だと思うけれど……」

「…………」

ツバサ「それとも、貴女が相手をしてくれるのかしら?」フフッ

「……えぇ」

ツバサ「……………………そう」

「……私が相手になるわ」

ツバサ「『また』後悔するわよ?」




ツバサ「西木野真姫さん♪」フフッ

真姫「それは、どうかしらねっ」ブルッ




真姫(頼むわよ、みんな)



――――――

451 : 以下、名... - 2016/10/22 21:35:41.53 NB0N5iifO 301/347

――――――



「穂乃果ちゃん……」

絵里「……穂乃果」



今まで気づけなかったけど、希ちゃんも絵里ちゃんも穂乃果を心配そうに見てた。



花陽「……ほのかちゃん」

亜里沙「ホノカさんっ、無理しないでください……」

「そうにゃ! 穂乃果ちゃん、もう頑張ったもん!」



そうかな?
穂乃果、頑張った……のかな?



にこ「穂乃果」

穂乃果「にこちゃん……?」

にこ「ごめん……」

穂乃果「なんであやまるの?」

にこ「にこが……『無我の境地』なんて教えたから……あんたは……」


にこちゃんはそう言って俯いちゃった。

ううん。
ちがうよ。
それはちがうんだよ、にこちゃん。

にこちゃんに教えてもらったから、穂乃果はここまで戦えたんだ。
きっと教えてもらってなかったら、もっと前に折れちゃってたはずだもん。

だから……。



穂乃果「…………」



あれ?
言葉が出ないや。

行ってくるって言いたいのに……。



海未「穂乃果」

ことり「ほのかちゃん」



そっか……。
穂乃果はもう皆に心配かけたくないんだ。
だから、言葉が出てこない。

なら――。

452 : 以下、名... - 2016/10/22 21:36:21.58 NB0N5iifO 302/347

――――――



「お姉ちゃん、いいの?」



――――――

453 : 以下、名... - 2016/10/22 21:48:05.29 NB0N5iifO 303/347


穂乃果「……雪穂?」

雪穂「…………」



雪穂は何も言わない。
ただじっと穂乃果の目を見つめてくるだけ。

目に涙を溜めながら。



雪穂「……ほんとに後悔しない?」

穂乃果「…………」

雪穂「………………」

穂乃果「…………うん」



……うん。
そうだね。

危うく後悔するとこだった。



穂乃果「~~っ!!!」バチンッ



海未「穂乃果!?」

ことり「ほのかちゃん!?」



穂乃果「よしっ!!!」



気合いを入れるため、ほっぺたを強く叩く。
うん。
これで大丈夫!

454 : 以下、名... - 2016/10/22 21:58:56.91 NB0N5iifO 304/347

立ち上がる。
そして、歩き出す。



雪穂「……無理しないでよ、お姉ちゃん」

穂乃果「約束はできない、かなぁ」

雪穂「……バカ」

穂乃果「あはは……」



絵里「穂乃果……」

「……穂乃果ちゃん」

花陽「穂乃果ちゃん……」

「ほのか、ちゃん……」

亜里沙「ホノカさん……」

にこ「…………」



穂乃果「行ってくるね!」

雪穂「いってらっしゃい」



道を開けてくれるみんなに、笑う。
そして、もう一度前を向いて……うん。

……そう、だよね。



海未「……本当に行くつもりなのですかっ」

ことり「試合、するの……?」



455 : 以下、名... - 2016/10/22 22:05:42.08 NB0N5iifO 305/347

海未ちゃんとことりちゃん。
二人の言葉に黙って頷く。



ことり「そんなのっ――」

穂乃果「無茶、だよね?」

海未「…………」

穂乃果「分かってる」

海未「なら、なぜっ――」

穂乃果「けど!」



穂乃果「ここで止めたら絶対後悔するから」



きっと後悔する。
スクールアイドルを止めたあの時みたいに。

そうだよ。
スクールアイドルだってそうだった。

最初は廃校を阻止するためで。
廃校を阻止して。
だけど、ことりちゃんの留学に気づかなくて。
それで止めた。

けど、穂乃果は本当は――。
それと、おんなじだ。



穂乃果「やりたいんだ!」

穂乃果「ツバサさんすっごく強くて!」

穂乃果「たぶん、今を逃したら二度とこんな強い人と試合できない!」

穂乃果「ここで止めたら絶対後悔する!!」

穂乃果「だから!!」

海未「…………」

ことり「…………」


穂乃果「穂乃果、最低かな?」


海未「…………最低です」

ことり「うん……」

穂乃果「あはは、やっぱり……」



海未「そんな風に言われたら、送り出すしかないではないですかっ」

ことり「うぅぅぅ、ずるいよぉ……」



456 : 以下、名... - 2016/10/22 22:07:10.62 NB0N5iifO 306/347

本当に穂乃果はずるいよね。
だって、二人とも絶対送り出してくれるって分かってたから。

たって、二人はいつだって穂乃果の味方なんだもん。



穂乃果「…………ごめんね?」



ことり「……っ、でも」

海未「っ、えぇ。穂乃果らしいです」

ことり「うんっ♪」



無理矢理笑顔を見せる二人。

ありがとうとごめんね。
2つの気持ちを込めて、穂乃果は笑う。




穂乃果「いってきます!」




――――――

457 : 以下、名... - 2016/10/22 22:11:24.65 NB0N5iifO 307/347

――――――



真姫「はあっ……はぁっ……」

ツバサ「息、あがってるわね」フフッ

真姫「うるっ……さい!」パァァァァン

ツバサ「……それはごめんなさい? それじゃあ」グッ



ツバサ「終わりにしまショウ♪」パァァァァン



真姫「っ!!」ブルッ


真姫(だめっ、やっぱり怖いっ)

真姫(足がすくんでっ!?)

真姫(だめ……当たる……)ギュッ

458 : 以下、名... - 2016/10/22 22:16:18.19 NB0N5iifO 308/347




『……ふっ』



―― フワッ ――



―― トンッ ――



真姫「え?」

『ふぅ、カンイッパツだ!』

真姫「あっ、今の……」

『うん。亜里沙ちゃんの『已滅無』だよ』

真姫「…………」

『真姫ちゃん? えっと、大丈夫?』

真姫「……っ、それはこっちの台詞よ! そっちこそ大丈夫なんでしょうね?」

『…………うん』

真姫「…………そう。なら――」



真姫「――よろしく、穂乃果」

穂乃果『うん!!』



459 : 以下、名... - 2016/10/22 22:21:42.90 NB0N5iifO 309/347


ツバサ「……そう。戻ってきたのね」

穂乃果『うん』

ツバサ「フフッ、そうこなくっちゃね♪」

穂乃果『ごめんね? 待たせちゃって』

ツバサ「いいわ。それより倒せるのかしら、この私を」

穂乃果『……分からないです』

ツバサ「わから、ない……?」

穂乃果『……うん。ツバサさんは強くて『完成』には手も足も出ないよ』

ツバサ「…………」



穂乃果『けど、やるしかない!』

穂乃果『ううん! やりたいんだ!』

穂乃果『穂乃果は穂乃果らしく、全力でぶつかるだけだよ!』



ツバサ「……フフッ、そう。それが貴女の答えなのね」

穂乃果『うん!』




穂乃果『やるったらやる!!』




――――――

460 : 以下、名... - 2016/10/22 22:22:46.65 NB0N5iifO 310/347

――――――



『穂乃果 ③ - ④ ツバサ』

『試合再開』



――――――

465 : 以下、名... - 2016/10/29 22:27:53.84 Bl2W9fHgO 311/347

『チェンジサービス』
『サービス 穂乃果』



穂乃果『…………』ターンターン

ツバサ「……フフッ」



穂乃果(みんなのおかげで、気持ちは折れないで済んだけど……)

穂乃果(やっぱりツバサさんの隙は見えないや)

穂乃果(……でも!)



穂乃果『行くよ!』スッ

ツバサ「ええっ!!」



穂乃果『はあぁっ!!!』パァァァァァァン



「絵里の『高速サーブ』!」
「けど、不完全よ!」

ツバサ「もらうわよ!」



ツバサ「『リターンエース』!」パァァァァン



「ホノカさんの『技』ッ!!」
「穂乃果!」
「お姉ちゃん!!」

穂乃果『っ、うんっ!』ダッ



穂乃果『はぁっ!!』パァァァン

―― ポスッ ――



穂乃果『ネット……』

ツバサ「それはそうよ。『リターン』ではなく『リターンエース』なのよ?」

穂乃果『………………ふぅ』



『穂乃果 0 - 15 ツバサ』

466 : 以下、名... - 2016/10/29 22:48:56.14 Bl2W9fHgO 312/347

穂乃果『……次、いきます!』ターンターン

ツバサ「えぇ。次はなにかしら?」フフッ



穂乃果『っ、ふっ!』パァァァァン

―― ギュルルルルルル ――



「あれは!?」
「ツバサの『タンホイザーサーブ』か!」
「あれなら『リターンエース』は出来ないわ!」

ツバサ「なるほど。考えたわね♪」

ツバサ「けど!!」ダッ



ツバサ「返すのなんて訳ないわ!」パァァァァン



穂乃果『うん。分かってたよ!』スッ

「穂乃果がもう前につめています!」
「『予感』でよんでたみたいやね」
「あの構えはにこちゃんの……」



穂乃果『ふっ』トンッ



―― トンッ ――


―― シュルルルルル ――



「決まったにゃ!」
「えぇ、『にこ式――」

ツバサ「フフッ♪」

467 : 以下、名... - 2016/10/29 22:50:17.57 Bl2W9fHgO 313/347

穂乃果『っ』ゾクッ

ツバサ「『にこ式ドロップ』でしょう?」

ツバサ「こちらも勿論『予感』してるわよ♪」フワッ



―― カンッ ――


―― ツツツツツーッ ――



「やっぱりツバサさんも『予感』をっ!?」
「でも、ほのかちゃん、前に出てるから『綱渡り』返せるよっ」

穂乃果『うんっ!!』グッ



穂乃果『やあっ!!』ポーーーーン


ツバサ「ただのロブ……じゃないわね」


―― シュルルルルル ――


ツバサ「この音はっ!」バッ



穂乃果『『メテオドライブ』!!』

―― パァァァァァァァァァァァン ――



ツバサ「ふふっ、いい選択ね。けれど、まだ甘いわ」グッ

ツバサ「ふっ」トンッ



穂乃果『っ、ボールは……』キョロキョロ



―― トンッ ――



穂乃果『……『死角』』



ツバサ「さぁ、あと二点ね」



『穂乃果 0 - 30 ツバサ』

468 : 以下、名... - 2016/10/29 23:15:06.03 Bl2W9fHgO 314/347

穂乃果『…………ふーっ』ターンターン

ツバサ「次は……『ビッグバン』?」

穂乃果『っ』スッ



穂乃果『はぁぁぁっ!!』パァァァァン



ツバサ「やっぱり♪」スッ

ツバサ「けど……」グッ



ツバサ「はぁっ!」パァァァァン



「あれを返した!?」
「自分の『技』だからな。恐らくだが、対処の仕方も知っているのだろう」
「けど、今がチャンスですっ」
「うん! 球威が落ちてるにゃ!!」

「穂乃果!!」



穂乃果『…………」



「ホノカちゃん……?」



穂乃果「っ、はぁっ!!』パァァァァン



「えっ!?」
「ただのドライブだと!?」
「このチャンスに穂乃果はなにを……って!」
「う、うん。もしかしたら、穂乃果ちゃん……」



ツバサ「時間切れ、かしら?」ダッ

穂乃果『…………」

ツバサ「見れば、『無我の境地』も解けかかってるわ。長時間の使用だもの。無理もないけれど……」

穂乃果『…………っ」グッ

ツバサ「……それでも戦おうとする意志」スッ

ツバサ「ホント、貴女って――」



―― ギュルルルル ――



ツバサ「――最高よッ!!!」



―― パァァァァァァァン ――



「私の『ナックルショット』!!」
「穂乃果!」
「お姉ちゃんっ、逃げてッ!?」



穂乃果「………………」



469 : 以下、名... - 2016/10/29 23:16:44.26 Bl2W9fHgO 315/347

――――――



みんなの『技』を使っても。
ツバサさんが使った『技』を穂乃果が使っても。
ツバサさんには全然効いてない。

あぁ。
やっぱり強いや。

そう思う。
敵わないなって思うんだ。


『リターン』を使った。
返された。

『予感』を使った。
超えられた。

『無我の境地』を使った。
それでも届かない。



………………。



だから、今のままじゃダメだ。
今のままじゃ……。



じゃあ、穂乃果にできることってなんだろう?

『神の子』のツバサさんには出来なくて。
『一点特化』の穂乃果に出来ること。



…………うん。
ひとつだけ、やってないことがある。

にこちゃんに教えてもらった後、ひとりで散々練習はしたけど、結局できなかったことだけど……。



……うん、やろう!
やってみよう!

後悔しないために!
全力で!!



――――――

470 : 以下、名... - 2016/10/29 23:18:37.90 Bl2W9fHgO 316/347




穂乃果『――――はぁぁぁぁ!!!』



―― ギュルルルルルルルル ――



―― パァァァァァァァァァァン ――



471 : 以下、名... - 2016/10/29 23:25:35.68 Bl2W9fHgO 317/347


ツバサ「っ!?」

「返しました!」
「しかも、同じ『ナックルショット』です!!」
「まだ『無我の境地』は維持できてるってことね!」

ツバサ「っ、まだよ!」ダッ



ツバサ(そう、まだよ!)

ツバサ(さっきは『予感』を使えなかったけれど、今度は使って確実に――)



ツバサ「――――」ゾワッ



ツバサ「――――今のは……?」

ツバサ「っ、いえ、何かの間違いよ!!」グッ



ツバサ「はぁぁぁ――」



―― カランッ ――



ツバサ「……ラケットが……?」



『穂乃果 15 - 30 ツバサ』



穂乃果『…………』ドクンッ




472 : 以下、名... - 2016/10/29 23:31:46.75 Bl2W9fHgO 318/347

穂乃果「……次、いくよ!』ターンターン

ツバサ「……ええっ」スッ



穂乃果「はぁぁぁっ!!!」パァァァァン



ツバサ「っ!!」

「今度はただのフラットサーブ!?」
「穂乃果ちゃんは一体……?」

ツバサ「はぁぁぁ……」グッ



ツバサ「これで!!」


―― パァァァァァァァン ――



「『リターンエース』!?」
「決めにかかったな。これは――」




穂乃果『やぁぁぁっ!!!』



―― パァァァァァァァァァン ――



―― トンッ ――



ツバサ「っ、また……」



『穂乃果 30 - 30 ツバサ』

473 : 以下、名... - 2016/10/29 23:36:57.45 Bl2W9fHgO 319/347


ツバサ「…………」

穂乃果「……ふぅ……よしっ」



ツバサ(……なにかおかしい)

ツバサ(穂乃果さんの体力はきっと限界に近いはず。その証拠に彼女の『無我の境地』はもう弱々しくなっているわ)

ツバサ(今だって、オーラが少しも出ていないもの)

ツバサ(けれど、さっきも今もポイントをとられた)

ツバサ(一本目は『ナックルショット』。二本目は『リターンエース』)

ツバサ(…………)



ツバサ「……まさか……?」



穂乃果「…………うん』ドクンッ



474 : 以下、名... - 2016/10/29 23:45:49.15 Bl2W9fHgO 320/347

穂乃果「ツバサさん!」ターンターン

ツバサ「……ええ!」

穂乃果「ふっ」スッ



穂乃果「やあっ!」パァァァァン



ツバサ「また普通のサーブ……なら!」



ツバサ「ふっ」ポーーーーン



「ここでロブ!?」
「いや。ただのロブではない。あれは――」



―― シュルルルルル ――



ツバサ「『メテオドライブ』!」



―― パァァァァァァァァァァァン ――



ツバサ「さぁ、返してみせて!」

穂乃果「……はいっ!!』グッ




穂乃果『やあぁぁっ!!!』パァァァァン




―― シュルルルルルルルル ――




―― パァァァァァァァァァァァン ――




ツバサ「っ、これ――」


―― カランッ ――



『穂乃果 40 - 30 ツバサ』

475 : 以下、名... - 2016/10/29 23:57:55.10 Bl2W9fHgO 321/347

――――――



英玲奈「何が起こっている……? ツバサのショットが悉く返されているのは……」

海未「分かりません。穂乃果に一体何が……」

「にこっちなら、なにか知ってるんとちゃうん?」

にこ「……残念だけど知らないわよ。『無我の境地』を教えたのは、たしかににこだけどね」



「あれ?」



花陽「どうかした? 凛ちゃん?」

「うん。かよちん、穂乃果ちゃんの周り見て?」

花陽「う、うん? えっと……」

絵里「凛が気になっているのは、『無我の境地』のオーラ……かしら?」

「そうにゃ!」

真姫「……前半よりもオーラは淡くなって……え?」

絵里「あっ!」



海未「『無我の境地』の光が!!」

ことり「ほのかちゃんの右腕に集まってるの……?」



「光が淡くなってるのは、そのせいみたいやね」

花陽「……でも、あれって?」



にこ「…………っ、まさか!!」



――――――

476 : 以下、名... - 2016/10/30 00:07:09.12 6KPbK++pO 322/347


ツバサ「……なるほど、ね。それが貴女の答え」

穂乃果「……はい』コクリ

ツバサ「『無我の境地』。それから『一点特化』ね」

穂乃果「うん』



穂乃果「穂乃果に出来るのはそれだけだから』

穂乃果「『無我の境地』だけじゃダメだし、『一点特化』も今のままじゃ効かないから』

穂乃果「だから、全部右手に集めたんだ』




穂乃果「『無我の境地』の『一点特化』』




ツバサ「『無我の境地』の爆発的な力を右腕だけに集める」

ツバサ「そうすることで、爆発的なな力を生む」

ツバサ「なるほどね。球威、スピード、回転までも倍返しになっていたのはそういう理由だったわけね」

穂乃果「うん』

穂乃果『これが、穂乃果の答え』




穂乃果『『百錬自得の極み』だよ!!』




481 : 以下、名... - 2016/11/03 16:11:21.27 xexf1MhyO 323/347

穂乃果「……すぅ、ふぅ」ターンターン

ツバサ「……」スッ

穂乃果「――っ!!』スッ


穂乃果「やあっ!!』パァァァァン


ツバサ「っ、はぁっ!!」パァァァァン


「ただのショット……?」
「ツバサ、『技』を使わないつもりか!」

ツバサ(その通りよ、英玲奈)

ツバサ(ただ……)チラッ



穂乃果「はあっ!!』パァァァァァァァン



ツバサ「っ、ただのショットでもこの威力……」グッ

ツバサ「はあっ!!」パァァァァン



「ツバサが力負けしている……」
「ただのショットでもこの威力ですか。確かに『技』を使わないのが賢明でしょう」



ツバサ「…………そうね」

ツバサ「『百錬自得の極み』」

ツバサ「全ての打球を倍返しにするその『技』は確かに強いわ」

ツバサ「けれど――」グッ



――――――――――



「ユキホのっ――」
「『レーザービーム』!!」


ツバサ「見えなければ、倍返しもないでしょう!!」




――――――――――



―― トンッ ――




ツバサ「なっ!?」

穂乃果「見えてるよ。目ではわかんないけど」

ツバサ「……な、なんで……」

穂乃果「目には見えてないよ。けど、2秒後の未来は見えるから!」

ツバサ「! 『予感』ね……」



穂乃果「追いついたよ……ツバサさん!!』



『穂乃果 ④ - ④ ツバサ』

482 : 以下、名... - 2016/11/03 16:20:55.94 xexf1MhyO 324/347

『タイブレーク突入』
『サービス ツバサ』



ツバサ「まさかあそこから追いつかれるなんてね」ターンターン

穂乃果「……まだ」

ツバサ「……え?」

穂乃果「追い越すよ!」ニコッ

ツバサ「フフッ、やってみて!!」スッ



ツバサ「はっ!!」パァァァァン



穂乃果「っ』スッ


穂乃果「はぁぁぁっ!!』パァァァァァァァン


ツバサ「……倍返し……馬鹿に出来ないわね」グッ

ツバサ「フフッ、こっちも全力でいくわよ!!」

穂乃果「! はいっ!」

ツバサ「はぁぁぁっ――」



ツバサ「――ふっ」フワッ



穂乃果「!?」

「なっ!? ここでドロップですって!?」
「大胆すぎにゃ!!」
「穂乃果! とれるわっ!」

穂乃果「っ、うんっ」ダッ



穂乃果「えいっ」ベチッ



「とったぁ!」
「だが、『百錬自得の極み』が崩れている」

ツバサ「フフッ♪」



ツバサ「はぁぁぁっ!!」パァァァァン



穂乃果「っ!」

ツバサ「……言ったでしょ? 全力って」ニコッ

穂乃果「うん!」ニコッ



『穂乃果 0 - 1 ツバサ』

483 : 以下、名... - 2016/11/03 16:32:40.18 xexf1MhyO 325/347

――――――



『穂乃果 1 - 1 ツバサ』

『穂乃果 2 - 1 ツバサ』

『穂乃果 2 - 2 ツバサ』

『穂乃果 3 - 2 ツバサ』



――――――



にこ「差が開かないわね」

英玲奈「実力は互角と言ったところか」

「でも、さっきまで穂乃果ちゃん、『百錬自得の極み』でリードしてたのに……?」

にこ「まぁ、スタミナ切れもあるでしょうけど……」チラッ

英玲奈「あぁ」コクリ



英玲奈「ツバサが対応し始めているんだ」



「対応って……『百錬自得の極み』に?」

英玲奈「あぁ」

亜里沙「でも、どうやって……ですか? どんなショットも倍返しできるなら……」

にこ「…………なんとなくツバサの球種で多くなってるものがあるの気付かない?」

りんゆき「「?」」

にこ「花陽は?」

花陽「えっ? あ、えっと……」



花陽「ドロップショット?」



にこ「そ。それよ」

「? でも、それって……」

絵里「凛? ドロップショットを『百錬自得の極み』で打ち返したらどうなるかしら?」

「えっと、倍返しに……あっ!!」

「そういうこと、やね」



絵里「ドロップショットを倍返しにしたところで、その球威は大して脅威ではないわ」



「それで隙を狙って……ってことね」

絵里「えぇ」

亜里沙「ハラショ……」

「すごいにゃぁ……」

英玲奈「まぁ、ツバサも伊達に『神の子』と呼ばれているわけではないさ」

484 : 以下、名... - 2016/11/03 16:42:23.24 xexf1MhyO 326/347


花陽「じゃあ、『百錬自得の極み』は攻略されちゃったってことですか……?」

海未「……いえ。そうとも言い切れませんよ」

花陽「えっ?」

海未「穂乃果の『百錬自得の極み』が完全に消えない限り、ツバサさんはパワーやスピードのある『技』は打てませんから」

花陽「あ、そっか」

絵里「牽制、ってことね」

海未「はい。……ただ……」

ことり「海未ちゃん……」

海未「えぇ、ただ1つ気がかりなのは……」



――――――



―― トンッ ――



穂乃果「っ、これって……』

ツバサ「……ふぅ、やっとね♪」

穂乃果「…………」

ツバサ「ごめんなさい、穂乃果さん。私も勝ちたいの」

ツバサ「だから、これからは――」




ツバサ「――貴女の『死角』にしか打たないようにするわ♪」ニコリ




『穂乃果 3 - 5 ツバサ』



――――――



海未「くっ、恐れていたことを……」

ことり「ほのかちゃん……」



「均衡が崩れた、ね」



――――――

485 : 以下、名... - 2016/11/03 16:49:37.16 xexf1MhyO 327/347

ツバサ「フフッ♪」ターンターン

穂乃果「っ、いつでも――」グッ

ツバサ「えぇ」スッ



ツバサ「はぁっ!!」パァァァァン




穂乃果「……っ!? また!?」バッ

穂乃果「ボールは……!?」キョロキョロ



―― トンッ ――



『穂乃果 3 - 6 ツバサ』



穂乃果「っ、そんなっ!」

ツバサ「……終わりね」

穂乃果「う、ううんっ! まだだよ!!」

ツバサ「いいえ。終わりよ。『死角』は『百錬自得の極み』では破れないわ」

穂乃果「…………っ、まだっ……穂乃果は……」

ツバサ「………………」



ツバサ「貴女の『予感』なら……」ボソッ



穂乃果「……え?」

ツバサ「あらかじめどこに落ちるか分かっていれば、打ち返せないことはないわ」

ツバサ「2秒先しか分からないんじゃ、意味ないわね」

穂乃果「…………」

ツバサ「…………」



穂乃果「ツバサさん……?」



――――――

486 : 以下、名... - 2016/11/03 16:50:38.47 xexf1MhyO 328/347

――――――

487 : 以下、名... - 2016/11/03 16:53:50.51 xexf1MhyO 329/347

――――――



なんで、だろう?
なんでツバサさんは穂乃果にあんなことを言ったんだろう?


穂乃果の『予感』なら……って。


……よくわかんない。
よくわかんないけど、なぜだかツバサさんが助けを求めてるような気がした。



助けて。
誰か私を倒して。



そんな風に聞こえた。



………………。



穂乃果の思い違いかもしれない。
ただの勘違いかもしれないけど。



穂乃果は――。




――――――

488 : 以下、名... - 2016/11/03 16:54:27.43 xexf1MhyO 330/347

――――――




―― ドクンッ ――




――――――

489 : 以下、名... - 2016/11/03 17:02:40.24 xexf1MhyO 331/347

『チェンジサービス』
『サービス 穂乃果』



穂乃果『………………』

ツバサ「……」スッ

穂乃果『………………』

ツバサ「……穂乃果さん?」

穂乃果『………………』




穂乃果『……【4球目】』ボソッ




穂乃果『っ!』スッ

ツバサ「っ!?」



穂乃果『やあっ!!』パァァァァン



ツバサ「……ただのフラットサーブ?」

ツバサ「こんな打球じゃあ!」グッ



ツバサ「終わりよ」パァァァァン



「マッチポイントまで、『死角』にっ!!」
「ツバサ……」
「穂乃果ちゃん!!」

「取りなさい! なにがなんでも!!」

「穂乃果ぁぁぁぁ!!!」




穂乃果『うん!』


穂乃果『やぁぁっ!!』パァァァァン




ツバサ「なっ、まさか!?」

「ツバサ!」
「はしるのよっ!」

ツバサ「分かってるわっ!!」バッ



ツバサ「今度こそ、終わりよ!」パァァァァン




―― ポスッ ――



ツバサ「っ、ネットに……」



『穂乃果 4 - 6 ツバサ』
『マッチポイント ツバサ』

490 : 以下、名... - 2016/11/03 17:39:12.68 xexf1MhyO 332/347

穂乃果『………………』

ツバサ「……穂乃果さん、一体どうやって……」

穂乃果『………………』

ツバサ「……また……?」



穂乃果『【5球目】』ボソッ



穂乃果『ふっ』スッ

ツバサ「来なさい!」グッ


穂乃果『やっ!』パァァァァン


ツバサ「……もう一回……」グッ



ツバサ「ふっ……!」フワッ



「ドロップショット!」
「いや、ただのドロップではない! また『死角』をついている!」
「抜け目ないわぁ」
「……でも、穂乃果ちゃん」

「動いてるよ?」




穂乃果『やぁぁっ!!』パァァァァン



ツバサ「っ、やっぱり……」


ツバサ(はっきりしたわ)

ツバサ(どうやってるかは知らないけれど、穂乃果さんは既に『死角』を克服してる)

ツバサ(『予感』? いえ、穂乃果さんは2秒程度しか保たないはず)

ツバサ(若干打ち合いの中で成長したとしても……)

ツバサ(……いえ、考えるのは止めよ! ここはこれで決めるわ!!)

491 : 以下、名... - 2016/11/03 17:39:54.77 xexf1MhyO 333/347


ツバサ「『予感』したところでこれは返せない」スッ


―― ギリギリギリギリ ――



ツバサ「『あばれ球』!!!」



―― パァァァァン ―― パァァァァン ――

―― パァァァァン ―― パァァァァン ――

―― パァァァァン ―― パァァァァン ――

―― パァァァァン ―― パァァァァン ――

―― パァァァァン ―― パァァァァン ――



「なっ!?」
「さっきとは全然違うにゃ!?」
「っ、1、2、3……10!?」




ツバサ「そう、10球よ! 全部返して見せて!!」




穂乃果『うん!』




―― トンッ ――




『穂乃果 5 - 6 ツバサ』
『マッチポイント ツバサ』



ツバサ「――え?」



492 : 以下、名... - 2016/11/03 17:54:14.67 xexf1MhyO 334/347

――――――



花陽「一振り、でした」

真姫「……えぇ。まるで最初からそれだと分かっていたような……」

あんじゅ「……まさか?」

英玲奈「見極めた、のか? あのクセ球を……」

にこ「…………」

「にこっち? どうかしたん?」

にこ「希、気付かなかった?」

「……?」

にこ「海未と花陽は?」

花陽「え? うーん? なんのこと、かな?」

海未「……いえ。私もにこが何を言いたいのか分かりません」



にこ「【5球目】よ」



花陽「え……あっ!!!」

海未「…………っ!?」

にこ「……気付いたのね。その様子だと他のみんなも」

亜里沙「あ、あの……なにが、ですか?」


雪穂「……亜里沙? お姉ちゃんがサーブの前に言った【5球目】って呟き聞こえた?」

亜里沙「え? あ、うん! 聞こえたよ!」

雪穂「じゃあ、今のプレー何球目で決まった?」

亜里沙「? えづと、ホノカさんのサーブが1で、レシーブが2…………」



亜里沙「あっ!!!」



絵里「そういうことね」

「うん。実際に決まったのも【5球目】で、さっきも【4球目】に決まってた」

海未「『始めから予言していた……というわけですか」


にこ「予言……じゃないわ」


真姫「……にこちゃん、なにか知ってるの?」

にこ「まぁね」



にこ「あれは『絶対予告』」

にこ「『百錬自得の極み』とは別の『無我の境地』の到達点」

にこ「『無我の境地』の力をシミュレーションに注ぎ込んだ形よ。その名は――」




「――『才気渙発の極み』」




――――――

493 : 以下、名... - 2016/11/03 19:35:22.35 xexf1MhyO 335/347

『チェンジサービス』
『サービス ツバサ』



ツバサ「……『絶対予告』ですって?」ターンターン

穂乃果『……うん』

ツバサ「フフッ、面白いわ!」スッ



ツバサ「はっ!!」パァァァァン



穂乃果『……あと』スッ


穂乃果『【3球】』パァァァァン


ツバサ「上等っ!!」グッ

「バックハンド、ということは……」
「『レーザービーム』!!」

穂乃果『っ』バッ

ツバサ「動いたわね!!」



ツバサ「ふっ!!」シャァァァ


―― パァァァァン ――



「『レーザービーム』じゃない!?」
「スライスショットですっ」

ツバサ「ただのスライスじゃないわ。高速で急激に落ちる――」



「『『かまいたち』!!』」



穂乃果『……だよね?』

ツバサ「まさか、これも……っ!?」

穂乃果『うん! 分かってたよ!』




穂乃果『やあっ!!』パァァァァン




『穂乃果 6 - 6 ツバサ』



ツバサ「……見せたことのないショットですら……」

穂乃果『これで追いついた! そして――』



穂乃果『穂乃果が勝つよ!』ニコッ




494 : 以下、名... - 2016/11/03 19:53:52.46 xexf1MhyO 336/347

――――――

495 : 以下、名... - 2016/11/03 20:10:42.45 xexf1MhyO 337/347

――――――



μ'sに負けて。
私は考えた。



私になにが足りなかったのか。



勝つための練習?
勝利を求める気持ち?
それとも……?

それが一体何なのか、その答えが出る前に、今回の話が飛び込んできた。


μ'sとテニスの試合をしないか。
そんな話。
勿論私はその誘いにすぐさま飛びついた。


それからずっと練習を続けた。
勝つために。

幸い私には非凡な才能があったようで、テニスの技術はどんどん伸びていった。
これならきっとμ'sに勝てる。
そう思って、沢山の人達を打ち倒してきた。


…………。


たしかあれは、対戦相手が10人を越えた辺りのことだった。
静岡のスクールアイドルを倒した後、偶然そこで出会った女の子と戦った。

技術もろくになく、ただ粘り強いだけのテニス。
そのフィジカルですらこちらに通じなかったのだけれど。

……けれど、私に完敗した彼女は言った。



「楽しかったです!」



……と。
私には理解できなかった。

それから、何十人と戦って。
けれど、結局彼女のあの言葉を理解することはできなかった。
それに……。



「いや……もう……」

「わたしなんかじゃ、ツバサ様の相手なんて……」

「勝てるわけなかったのに……」



私の周りには、楽しかったと言ってくれる人間はいなくなっていたから。



私は一人になった。



――――――

496 : 以下、名... - 2016/11/03 20:19:47.65 xexf1MhyO 338/347

――――――



ツバサ「はぁっ!」パァァァァン


穂乃果『……ふっ』トンッ

ツバサ「っ、まだよっ!!」ダッ



ツバサ「はぁぁぁっ!!」パァァァァン



穂乃果「まだまだぁ!!』パァァァァン



――――――



けれど、今は違う。
一人じゃない。


目の前には、彼女がいる。


私と互角に……ううん、それ以上に打ち合っていて。
彼女は笑ってる。
とっても楽しそうに……。



……あれ?
え?
もしかして、私も…………笑ってる?



――――――



―― パァァァァァァァン ――



穂乃果「ふっ……はぁ、はぁ……」

ツバサ「はっ、はぁ……」

穂乃果「……っ、ね、ツバサさん?」

ツバサ「なに、かしらっ……?」



穂乃果「楽しいねっ」



ツバサ「…………」

ツバサ「フフッ」



ツバサ「えぇ、楽しいわ♪」




『穂乃果 7 - 6 ツバサ』
『マッチポイント 穂乃果』

497 : 以下、名... - 2016/11/03 20:24:32.78 xexf1MhyO 339/347

『チェンジサービス』
『サービス 穂乃果』



穂乃果『………………』

ツバサ「『絶対予告』?」

穂乃果『……うん』

ツバサ「最後は何球?」



穂乃果『【1球】』ターンターン



ツバサ「……そう」スッ

穂乃果『…………ほんとはもっと長く続けてたいんだけど……』

ツバサ「いいわ。全力、で戦ってくれるんでしょ?」フフッ

穂乃果『うん!』

ツバサ「それじゃあ、終わりにしましょうか♪」

穂乃果『……』スッ




ツバサ「さぁ! 来なさい!!」



穂乃果『はぁぁぁ――』



498 : 以下、名... - 2016/11/03 20:25:20.15 xexf1MhyO 340/347

――――――




―― パァァァァァァァン ――




――――――

499 : 以下、名... - 2016/11/03 20:29:50.31 xexf1MhyO 341/347

――――――



ねぇ、穂乃果さん?



なに?
ツバサさん?



もし、もう一度テニスする時があったら。
また遊んでくれる?



もちろんだよ!
……ううん!
もう一度なんて言わないで、何回でも遊ぼう!!



……うん。
ありがとう。



――――――




やっと。
やっと負けられた。




――――――

500 : 以下、名... - 2016/11/03 20:30:52.96 xexf1MhyO 342/347

――――――



『穂乃果 ⑤ - ④ ツバサ』


『勝者 高坂穂乃果』



――――――

501 : 以下、名... - 2016/11/03 20:31:46.55 xexf1MhyO 343/347

――――――

502 : 以下、名... - 2016/11/03 20:44:51.40 xexf1MhyO 344/347

――――――



数日後。
穂乃果は秋葉原駅前にいました。

時計はちょうど約束の時間を指してます。


穂乃果「うーむ……おかしいなぁ」


首をひねる。

うーん?
穂乃果より遅いなんてあり得るのかな?
時間は正しいはずだし……。

はっ!
まさか穂乃果が日にちをまちがえた!?



「……だーれだ?」



と、突然誰かに目をふさがれました。


穂乃果「わわっ!? だ、だれ?」


なんて、驚いたフリ。
その声には聞き覚えがあるもんね!
ただ、少し遅れた罰としてからかってあげようかなって!

ふふふ!
慌てるがいい。


「………………」

穂乃果「……あれ?」


あわてて、ない?
むしろ、


「ごめんなさい……人違いだったわ……」


落ち込んでる!?
って!


穂乃果「うそ! うそだよ! 分かってるってば!」

「……フフッ♪」

穂乃果「…………あれ? も、もしかして……穂乃果、騙されてる?」

「その通り♪」


クスクスと笑いながら。
彼女は、だーれだを止めて。
向き直った穂乃果の顔を見て、また笑った。

もうっ!
穂乃果も少しだけ怒ったフリをして。
目の前で笑う彼女の名前を呼んだ。




穂乃果「ツバサさんっ!!」


ツバサ「フフッ、ごめんなさい? 穂乃果さん♪」


503 : 以下、名... - 2016/11/03 20:58:27.19 xexf1MhyO 345/347

今回は罰ゲームはなしのつもりだったんだけど……。

どうしても、って言って。
試合に勝った穂乃果に罰ゲームをリクエストしたツバサさん。

全然考えられなかった穂乃果は1日一緒に遊ぶことを提案したんだ。
なぜかことりちゃんや海未ちゃんからは反対されたんだけどね。

結局、二人には、遊ぶ日の日にちを教えるからってことで、納得してもらった。


……まぁ、嘘ついたけど。


だって、絶対着いてくるつもりだったし!
二人は穂乃果のお母さんかっ!!


そんなわけで、今日はツバサさんと二人でお出掛けなんです!



ツバサ「どうかした?」

穂乃果「え?」

ツバサ「なんだか表情がコロコロ変わってたから」



面白いわ。
そう言って、ツバサさんは笑う。

うーむ?
そんなに表情に出てたかなぁ?



ツバサ「フフッ、分かりやすい」

穂乃果「うっ……」

ツバサ「でも、そんなところも素敵よ♪」

穂乃果「うっ///」



さ、さすがにツバサさんみたいなすごい人にそう言われると……。
流石の穂乃果でも照れます……。


穂乃果「そ、そうだ! どこに行こっか?」


誤魔化すように話題を反らして。



ツバサ「穂乃果さんの行きたいところならどこへでも♪」

穂乃果「うぅぅぅ……///」


そんなツバサさんの答えにまた照れる。
アクジュンカンだぁぁ!



ツバサ「……ところで、美味しいケーキ屋さんを見つけたのだけど」

穂乃果「行きます!!」

ツバサ「フフッ、じゃあ、行きましょうか♪」

穂乃果「うんっ!」



――――――

504 : 以下、名... - 2016/11/03 21:02:48.76 xexf1MhyO 346/347

――――――



後日、穂乃果たちのテニス動画がものすごい再生数を記録するのも。
海未ちゃんとことりちゃんからツバサさんと一緒に逃げ回るのも。
とあるスクールアイドルグループがテニスをしだすのも。



これまた別のお話。




え?
結局、今回のお話がどんな話だったかって?

うーん?
……そうだ!




穂乃果に友達が一人増えたってお話!





―――――― fin ――――――

505 : 以下、名... - 2016/11/03 21:11:10.20 xexf1MhyO 347/347

以上で
『穂乃果「テニスをしよう!」ツバサ「おもしろそうね」』完結になります。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章・表現にお付き合いいただき、また、更新遅い中でも読んでいただき、ありがとうございました。

以下、前作及び過去作です。
よろしければどうぞ。

前作
穂乃果「テニスをしよう!」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/2825914.html

過去作
海未「花陽と歩く帰り道」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/2825940.html
にこ「海未のお姉ちゃん」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/2825564.html

そろそろサンシャインにも手を出そうと思います。
百合ものを予定してます。
もしよろしければまた読んでいただければ幸いです。
では、また。

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