1 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 01:59:29.87 5sOAncZa0 1/23



―――――事務所―――――


ガチャ
藤居朋「おはよーございまーす」

緒方智絵里「あ、朋さん、おはようございますっ」

「おはよー智絵里ちゃん、1人?」

智絵里「はいっ。まだ誰も生きてこの地に足を踏み入れた者はおりません」

「魔王の城なの?」



------------------------------

前作
智絵里「水着と!」ほたる「海と!」「LackLuck!」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/4484165.html




元スレ
智絵里「ほたるちゃんが」朋「幽霊に!?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1471625969/

2 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 01:59:56.64 5sOAncZa0 2/23


「しかし暑いわね……。溶けちゃいそう」

智絵里「はい……、クローバー探しも難しい季節になってしまいました……」

「そ、そういえば最近聞いてなかったわ……。ちなみに昨日はどれくらいかかったの?」

智絵里「9秒82」

「いつの間にそんな人類最速の男みたいなタイムに!?」

智絵里「実は、晶葉ちゃんの発明のおかげなんです!」

「ええ……? 自動で見つけてくれるの?」

智絵里「いえ、三つ葉を10枚集めると、四つ葉1枚と交換してくれるんですっ!」

「智絵里ちゃんはそれでいいの!?」

智絵里「暑いので……」

「集めるのやめたら!?」



3 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:00:48.62 5sOAncZa0 3/23


智絵里「あ、この前の写真集、サンプルが届いたみたいですよ」

「え、本当!? どこにあるの?」

智絵里「確か、あっちの棚に置いてありますっ」

「あっちの棚ね……」キョロキョロ

白菊ほたる「……」

「わあああああああ!!! ほ、ほたるちゃん!? い、いつからそこに!?」

ほたる「……」

「しかもそんな白装束に三角の頭巾なんてまるで幽霊みたいな……」

ほたる「……」

「……ほ、ほたる……ちゃん?」

智絵里「と、朋さん……」

「あ、というか智絵里ちゃん! さっき誰もいないって言ってたじゃん! ウソつかなくてもいいのに!」

智絵里「朋さん……?」

「え?」

智絵里「そこには誰もいませんよ……?」

「……はい?」



5 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:01:45.80 5sOAncZa0 4/23


「いやいやいやいや! ほら! そこに! ほたるちゃんいるでしょ!?」

智絵里「い、いませんっ! わたしの目にはまるめたソーセージを持ったおじさんしか……」

「それはそれで見えたらヤバいやつだと思うけど!?」

智絵里「と、とりあえず落ち着いてください! ひっひっふー!」

「なんでラマーズ法なのよ! 出産に苦しんだ憶えはないから!!!」

ほたる「……」ヒッヒッフー

「なんでほたるちゃんがやってるの!?」

智絵里「本棚と話してる……、怖い……」

「その目やめて!!!」



6 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:02:44.23 5sOAncZa0 5/23


ピピピピピピピピ

智絵里「あ、わたしの携帯です。失礼します……」ピッ

智絵里「もしもし……、あ、プロデューサーさん、お疲れ様です。……はい……はい……、えっ!? ほ、ほたるちゃんが!?」

「……!?」

智絵里「はい……わかりました……、失礼します……」

「ち、智絵里ちゃん! ほたるちゃんがどうしたの!?」

智絵里「お、落ち着いて聞いてください……」

「……」

智絵里「ほたるちゃんが、病院に運ばれたそうです……!」

「ええ!?!?!? どうして!? 何か事故に!?」

智絵里「いえ、そのくらいではほたるちゃんに傷はつきません」

「普通に納得できるのがイヤだけどじゃあどうして!?」

ほたる「……」ドヤッ

「ボディの強度にドヤ顔しないで!!! かわいいけども!!!」



8 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:03:33.36 5sOAncZa0 6/23


智絵里「ほたるちゃんに傷をつけるには、ほたるちゃんと同じくらいの硬さのモノが必要です」

「なんかモンスターの攻略法を練ってるみたいで嫌なんだけど」

智絵里「しかし、そんなものは存在しません」

「詰んでない?」

智絵里「いいえ、方法が1つ。ほたるちゃん自身です」

「???」

智絵里「ほたるちゃんを使えば、ほたるちゃんにダメージを与えられますっ」

「これ、何の話???」



9 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:04:17.53 5sOAncZa0 7/23


智絵里「ほたるちゃんが、自分で自分を攻撃すれば、ダメージが入るんです!」

「じ、自分で自分を!?」

智絵里「はいっ」

「ごめん全然場面が浮かばないんだけど、結局どうしてほたるちゃんは病院に……?」

智絵里「顔に止まった蚊を叩こうとして、思いっきり自分の頬を引っぱたいてしまったらしいです」

「ほたるちゃん!!!!!」

ほたる「//////」テレテレ

「いちいちかわいいなあもう!!!!!」



10 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:05:07.00 5sOAncZa0 8/23


智絵里「えっと、確認なんですが、そこにほたるちゃんはいる……んですか?」

「いるわよ! ここに!」

智絵里「ではそれは……、"生霊"かも……」

「ええ!?」

智絵里「なにか伝えたいことがあって、現れたのかもしれませんっ!」

「そ、そうなの!?」

ほたる「……」コクコク

「そ、そうみたい……!」

智絵里「今、ほたるちゃんの声を聴けるのは朋さんだけですっ! しっかり聴いてあげてください!」

「ほ、ホントに……!? ほたるちゃん、何か伝えたいことが……?」

ほたる「この幽霊がよくつけてる三角のやつ、"天冠"って呼ぶらしいです」

「なんでこのタイミングでマメ知識を!!!」



11 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:05:54.36 5sOAncZa0 9/23


「も、もっと他に! なにかあるんでしょ!?」

ほたる「もやしを漢字にすると"萌やし"らしいです」

「もう完全にムダ知識を披露する感じになってる!」

智絵里「砂漠で最も多い死因は溺死らしいですよ」

「緒方ァ!!!」

ほたる「鳥取砂丘ではそのようなことはないですよ。みなさん、ぜひ鳥取へ」

「みなさんって誰!?」

智絵里「へー、そうなんだ!」

「もう普通に会話してるじゃない!!!」



12 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:06:56.42 5sOAncZa0 10/23


「もういい! 智絵里ちゃん、ほたるちゃんの病院に行こう!」

智絵里「えっ? でも、朋さん、このあとお仕事じゃ」

「そんなの関係ないわよ! ほたるちゃんの危機なのよ!?」

智絵里「でも……」

「でももだってもない! お仕事なんかよりほたるちゃんの方が100倍大切なんだから!!!」

智絵里「朋さん……」

ほたる「……」

「ここで行かなきゃ絶対に後悔する! ここで仕事を優先するようなあたしに、ほたるちゃんの隣に立つ資格はないわ!!!」

智絵里「……!」



13 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:07:31.71 5sOAncZa0 11/23


「あたしは譲らないからね! 病院の場所教えて!」

智絵里「あ、そ、その前に、ほたるちゃんが何か言いたいみたいですよっ!」

「ええ!? またマメ知識!?」

ほたる「……う」ボソボソ

「え? なんて?」

ほたる「……り……う」ボソボソ

「ごめん、聞こえな……」

ほたる「ど……り……こう」ボソボソ

「え? もっと大きな声で……」

ほたる「ドッキリ……大成功……」

「」

智絵里「」ダダダ

「逃げたっ!?」



14 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:08:33.52 5sOAncZa0 12/23


―――――――――――――――


「もう! 2人共! ひどいじゃない!!!」プンプン

智絵里「怒ってる朋さんもかわいい!(ごめんなさい……)」

ほたる「頬を膨らませる朋さんかわいい!(少し悪ノリをしてしまいました……)」

「もう!!!」



15 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:09:35.71 5sOAncZa0 13/23


「もう2人なんて知らないんだから!」プイッ

智絵里「えっえっ」

ほたる「と、朋さん……?」

「……」プイッ

智絵里「」ガーン

ほたる「」ガーン

(……たまには反省してもらわなきゃ!)

智絵里「……」

ほたる「……」

智絵里「……ほたるちゃん、ここ、何階だっけ?」

ほたる「……7階です」

智絵里「……飛び降りよっか」
ほたる「……そうですね」

「待って待って待って!!!」



16 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:10:16.18 5sOAncZa0 14/23


「発想が極端すぎるでしょ!?」

智絵里「もう生きていけません……」

ほたる「来世では仲良くしてくださいね……」

「現世でも仲良しのつもりだけど!?」

智絵里「生まれ変わっても、わたしに生まれたいな……。もしくは石油王」

「最期で台無し」



17 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:10:53.07 5sOAncZa0 15/23


「わかった! わかったから!」

智絵里「ほたるちゃん、飛び降りの許可が出たよ……」

「わかったっていうのはそっちじゃなくて!!!」

ほたる「OK!」

「そのテンションはおかしくないかな!?」

智絵里「じゃあ、わたしが先に飛ぶねっ」ハイッ

ほたる「いえいえ、最年少ですから、私が先に……」ハイッ

「……え?」

智絵里「……」ジーッ

ほたる「……」ジーッ

「……」

「じゃあ……あたしが……」

智絵里ほたる「「どうぞどうぞ!!!」」

「もー!!!」バンバン



18 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:11:47.26 5sOAncZa0 16/23


―――――――――――――――


「というか、どうしてドッキリをしようってなったの?」

智絵里「あれは……、わたしが上京して3回目の春でした……」

「本当は?」

智絵里「今朝です」

「あら素直」


智絵里『~~♪』

ガチャ
ほたる『おはようございます……』

智絵里『あ、ほたるちゃん、おはよ……、そ、その恰好!?』

ほたる『これ、次のお仕事で使う衣装なんです。さっき衣装合わせしたんですが、似合ってますか……?』

智絵里『うんっ! とっても似合ってるよ! 火葬場まで顔パスできるように、ずっとその恰好でもいいんじゃないかなっ!』

ほたる『ありがとうございます……! ダイイングメッセージのために、智絵里さんの写真はいつも懐に入れておきますね』

2人『ふふふ……』


「ああ、胃が……」



19 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:12:25.09 5sOAncZa0 17/23


智絵里『そっか、幽霊役で……』

ほたる『はい、でも"明るい役よりはやりやすい"なんて、あまり大きな声では言えないですけどね……』

智絵里『ほたるちゃん、儚い雰囲気だから適役かもねっ』

ほたる『私もそう思います……』

智絵里『ほら、そこの棚のとこみたいな部屋の端に立ってみたら、結構雰囲気でるかもっ』

ほたる『そうですか……?』トコトコ

智絵里『おおー、朋さんが見たらビックリしちゃうかもね』フフフ

ほたる『そうかもしれませんね』フフフ

2人『……』

2人『朋さんのビックリした顔、見たい!』


「そこで急に決まったの!?」

智絵里「この5秒後に朋さんが入ってきました」

「そこからのアドリブ能力凄すぎないかな!?」



20 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:13:00.53 5sOAncZa0 18/23


「ま、まあ、何はともあれほたるちゃん、頑張ってね……?」

ほたる「はい、今回は、この世に未練があって成仏できない幽霊の役らしいんです。頑張りますね」

智絵里「未練かぁ……。ほたるちゃんは、死ぬ前にやっておきたいこととかある?」

ほたる「1度くらいはエレベーターの扉に挟まれずに乗り降りしてみたいですね」

「毎回挟まれてるの!?」

ほたる「あと、カップ焼きそばの湯切りを成功させてみたいです」

「あれ普通ミスらないけど!?」

智絵里「つまらない人生だねっ!」

「智絵里ちゃん!!!」



21 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:13:39.38 5sOAncZa0 19/23


ほたる「そういう智絵里さんは、なにかありますか?」

智絵里「ほたるちゃんがFXでお金を溶かす顔を見てみたい」

「明確すぎる敵意」

智絵里「……っていうのはもちろん冗談で」

「あたしの知ってる"もちろん"とは意味が違う気すらしてくるわね」

智絵里「トップアイドルになるまでは死ねませんっ!」

「ここでまともなセリフ!? ごめん全然予想してなかった!!!」

ほたる「智絵里さん……」キュン

「ほたるちゃん、ちょろすぎないかな?」

智絵里「雨降って地固まる。ですねっ」

「暴風雨の直後にコンクリで固めるレベルの無理やりさだけど」



22 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:14:19.99 5sOAncZa0 20/23


智絵里「朋さんはどうですか?」

「あ、あたし? うーん……」

智絵里「いつ死んでも一片の悔いなし……と」

「もうちょっと考えさせてよ! 誰がラオウだ!」

智絵里「あ、パソコンの中身ですか? 消してあげますよ?」

「別に見られて困るモノ入ってないから!」

ほたる「私がパソコンを触ると、もれなくデータがなくなるらしいです」

「それウイルスじゃないの!?」

智絵里「ほたるちゃんをウイルス扱いだなんて……酷いです……」

「もう智絵里ちゃんは黙っててくれない!?」



24 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:15:22.26 5sOAncZa0 21/23


「まあやっぱり、もっとアイドルとして活躍しないと悔しいかもね」

ほたる「私も同感です。せっかくこうしてアイドルになれたんですから」

智絵里「はいっ! もっともっとお金を稼ぎましょうねっ」

「なんでそう生々しい言い方にしちゃうのかな」

ほたる「そして、トップアイドル……ですね」

「うん! その時には、2人が隣にいてくれるといいかな……なんて」

智絵里「朋さん……」

ほたる「朋さん……」

「えへへ……」

智絵里ほたる「「もちろんですっ!」」

「ふふっ……。こういう時だけ、息ピッタリなんだから……」



27 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:16:02.50 5sOAncZa0 22/23


「そういえば、その劇の役の幽霊はどうして死んじゃったの?」

ほたる「いえ、まだ台本を見てないのでそこまでは……」

「あ、そうなんだ。……まだ仕事までは時間があるわね」

智絵里「じゃあ、この前の写真集のサンプルを見てたらどうですか?」

「そっか、それはホントに届いてるのね?」

智絵里「はいっ。そこの棚のところに……」

ほたる「あ、私が取りますね」トコトコ

「ありがとー。……その服、歩きにくそうなのにごめんね?」

ほたる「いえいえ、大丈夫で……」ヨロッ ガンッ!!!!!

智絵里「あ」

「わ! あ、足、棚にぶつけちゃった!? 大丈夫!?」

ほたる「はい…、これくらいなら……」

ヒューーーーー
バシィィィーーーーーン!!!!!!!!!!!

智絵里「棚の上にあったタライが落ちてきましたっ!」

「ほたるちゃん!!!!!!」



おわり



28 : ◆i/Ay6sgovU - 2016/08/20 02:16:31.26 5sOAncZa0 23/23





過去作


池袋晶葉「世のため人のため雪美のためライラのため」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/5128899.html

双葉杏「分解病りたーんず」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/5320564.html

神谷奈緒「夏の常務も憎めない」
http://ayame2nd.blog.jp/archives/5616177.html


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