1 : 以下、名... - 2015/04/30 00:10:51.08 O5k8MW0Fo 1/41


 【モバマスSS】です

 元ネタは、SF映画「サイレントランニング」


元スレ
【モバマスSS】「ロボ、アイドルによろしく」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430320241/

2 : 以下、名... - 2015/04/30 00:11:27.12 O5k8MW0Fo 2/41








 地上からアイドルは消えた。
 
 パッションな情熱など要らない。
 クールな魅力など要らない。
 キュートな仕草など要らない。

 地上にアイドルの居場所はなくなった。
 アイドルを活動させる場所などなくなった。
 
 地上から、アイドルは、消えた。




3 : 以下、名... - 2015/04/30 00:11:56.92 O5k8MW0Fo 3/41


「……」

「また、君はそれを見ているのか?」

「……ああ」

「なんだ、そりゃ」

「アイドルのライブだ」

「アイドル?」

「昔、歌や踊りで社会を楽しませていたらしい」

「歌? 踊り? 楽しいのか、そんなの?」

4 : 以下、名... - 2015/04/30 00:12:23.75 O5k8MW0Fo 4/41


「昔は、楽しかったらしい」

「おい、P。楽しいのか? それ」

「……」

「返事くらいしろよ」

「楽しいよ」

「と、いうことだ」

「……わかんね」

「……僕たちの、積み荷じゃないか」

5 : 以下、名... - 2015/04/30 00:12:51.70 O5k8MW0Fo 5/41


「それはそうだが」

「は?」

「データが積まれてる」

「知らなかったのか、B」

「へ? なに、積んでるデータって、こいつらのデータなの?」

「そうだ」

「へー、そりゃ知らなかった」

「僕も知らなかったよ」

「こんな美人さんども積んでるのかよ……」

「……」

「へへへ」

6 : 以下、名... - 2015/04/30 00:13:20.87 O5k8MW0Fo 6/41

 
 
 
 かつて……

 地上に人は溢れた。
 人は、星が養える数を遥かに超えようとしていた。

 人は思った。
 人を減らすべきだと。
 自分以外の人を減らすべきだと。

 しかし、全てを減らすことは全てを滅ぼすこと。

 ならば、減るべき人を選べ。

7 : 以下、名... - 2015/04/30 00:13:48.24 O5k8MW0Fo 7/41


 いずれ多種多様の才が必要となるときが来るだろう。
 滅ぼすわけではない。ただ眠りにつくだけ。
 
 いずれ必要となるべき時まで眠りについて待つがいい。
 その日まで、宇宙で眠ればいい。

 真摯な誘いは初めから唯の戯言だった。
 
 必要な才を保存すると誤魔化し、滅ぼすわけではないと言い訳、他者を放逐する世界。

 宇宙に眠るのは必要な才ではない。それは、地上にとって邪魔な才。

8 : 以下、名... - 2015/04/30 00:14:15.32 O5k8MW0Fo 8/41


【Pの個人日誌】

 この宇宙船に積まれているのは、昔アイドルと呼ばれていた人たちのデータだった。
 誰の仕業かはわからないけれど、アイドル達の活動している姿もデータバンクに残されていた。
 もうこんな人たちは地上にいない。
 地上にいるのは、金持ちどもと政府のご機嫌を伺う人間だけ。
 それが出来ない者はデータにされるか、僕たちのように下っ端の労働者になる。
 どちらにしろ、地上とはおさらばしているのだ。
 データにされるのは、殺されるよりはマシなのだろうか。
 データから復活した人間がもう一度アイドルになれるのか、なれないのか。
 いや、そもそもデータからもう一度産み出される機会があるのか。
 
【了】

9 : 以下、名... - 2015/04/30 00:14:42.75 O5k8MW0Fo 9/41


「……」

ロボ「……」

「ロボ、第四区画の掃除は終わったの?」

ロボ「ウサ」

「じゃあ、次は第二区画通気口のメンテナンスだ」

ロボ「ウサ」

「……君たち三人にも名前がいるか」

ロボ「ウサ」

10 : 以下、名... - 2015/04/30 00:15:09.98 O5k8MW0Fo 10/41


「ウサミンロボにしよう」

ロボ「ウサ」

「いい名前だろ?」

ロボ「ウサ」

「気に入ってくれて僕も嬉しい」

ロボ「ウサ」

「君が一号、隣の君が二号、そっちの君が三号だ」

一号「ウサ」

二号「ウサ」

三号「ウサ」

11 : 以下、名... - 2015/04/30 00:15:37.10 O5k8MW0Fo 11/41


「何やってんだ、お前。ロボと遊びやがって」

「名前、つけた方が呼びやすいと思って……」

「馬鹿か? こんなの、どれでも一緒だろ」

「待ってよ」

「あ?」

「一号は、二号より手先が器用なんだ」

「は?」

「三号は三人の中では一番力が強い」

12 : 以下、名... - 2015/04/30 00:16:04.54 O5k8MW0Fo 12/41


「何言ってんのお前?」

「ちゃんと、よく見れば違いは……」

「キモッ」

「……」

「勝手に遊んでろ、根暗野郎」

「……」

「何やってるお前ら、喧嘩じゃないだろうな」

「おお、A、聞いてくれよ」

「あ、あの、ロボに名前を付けようと」

「この馬鹿……」

13 : 以下、名... - 2015/04/30 00:16:32.55 O5k8MW0Fo 13/41


「確かに、ロボに名前を付けるのはいいアイデアだな」

「え」

「区別が付かないのは不便だろう」

「あ、ああ、俺もそう思ってたんだ、なぁ、P」

「え?」

「なぁ、P?」

「あ、う、うん」

「さあ、仕事の時間はとっくに始まってるぞ、定期巡回はロボに任せて、君たちには君たちの仕事がある」

「うぃー」

「はい」

14 : 以下、名... - 2015/04/30 00:16:58.74 O5k8MW0Fo 14/41




【Bの個人日誌】

 データの複製と実体化について、Aの許可を取ることにする
  
【了】

15 : 以下、名... - 2015/04/30 00:17:27.11 O5k8MW0Fo 15/41


「……」

二号「ウサ」

二号「ウサ」

「……どうしたの、ロボ?」

「まだこんな時間……僕の当直時間はまだだよ」

二号「ウサウサ」

「何かあったのかい? 異変があれば、コンピュータが直接通話してくるはずだけど……」

二号「ウサ」

「わかった、信じるよ、二号」

二号「ウサ」

16 : 以下、名... - 2015/04/30 00:18:08.99 O5k8MW0Fo 16/41


「Bの部屋じゃないか、こんな所に何が」

???「!!」

「今、何か聞こえた?」

二号「ウサ」

「なんだよ、これ……」

「……なんだ、Pか。何覗いてやがる」

「ドアが開いてたから見えたんだけど……なに、してるんだ?」

「見て、わかんねえのか?」

17 : 以下、名... - 2015/04/30 00:18:36.33 O5k8MW0Fo 17/41


「……わかんないよ」

「……馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、そこまで馬鹿だったか」

「僕には、君が規律違反をしているように見える」

「データの複製と実体化は別に違反じゃない」

「え」

「無断だと違反になるが、許可は取ってる。これくらいは裁量の範疇だ」

「それだけじゃ……ないだろう」

18 : 以下、名... - 2015/04/30 00:19:03.59 O5k8MW0Fo 18/41


「実体化したデータを俺がどう扱おうが俺の自由だ。それとも……」
「てめえも一緒に楽しみたいのか?」

「……泣いてるじゃないか」

「は?」

「その子を……アイドルを苛めるな」

「はぁ?」

「苛めるなぁっ!!」

「なんなんだよ、てめぇはっ!!」

19 : 以下、名... - 2015/04/30 00:19:30.10 O5k8MW0Fo 19/41

 
 
【Aの個人日誌】

 PとBの喧嘩。
 Bの個人的娯楽をPが妨害した模様。
 Pには罰として、ロボを使わずに第三区画の清掃をするように命じた。
 Pの感情不安定について本部に報告する必要があるかもしれない。
  
【了】

20 : 以下、名... - 2015/04/30 00:19:58.27 O5k8MW0Fo 20/41


三号「ウサ」

「ああ、ご飯だよ。君たちと違って、僕たちはこうやってエネルギーを補給するんだ」

三号「ウサウサ」

「うん。食べ終わったら、次は君たちの補給を始めようか」

三号「ウサ」

「……」

三号「……」

「三号、君も椅子に座れ」

三号「ウサ?」

21 : 以下、名... - 2015/04/30 00:20:24.85 O5k8MW0Fo 21/41


「足下にいるんじゃなくて、僕の対面に……そう、そこだ、その椅子に座っていてくれ」

三号「ウサ」

「ここは食堂で、働く場所じゃない。君も椅子に座って寛ぐべきだ」

三号「ウサ……」

「そうだ、それでいい。あとは、そうだな……君が世間話を出来るようになれば完璧だ」

三号「ウサウサウサ」

「あはは……ん?」

三号「……」

「あの子……」

22 : 以下、名... - 2015/04/30 00:20:50.99 O5k8MW0Fo 22/41


???「……」

「やあ、君も食事かい?」

???「!!」

「待って、落ち着いて、僕は君に危害を加える気はない。何もしない、何もしないよ」

???「……」

「そう、ただ、ちょっと、君に話しかけたかっただけだ」

???「……」

「……そうか、Bの食事を取りに来たのか……」

???「……」

「待って、それって、一人分だよね、君の分は……」

???「……」

「あ、あのさ、よかったら食べていかないか。君一人の食事くらいなら僕の信用単位でも……」

23 : 以下、名... - 2015/04/30 00:21:17.47 O5k8MW0Fo 23/41


【Pの個人日誌】

 あの子は言った。僕に迷惑がかかる、と。
 あの子はBのおこぼれを食べているだけだった。

 あの子は食事を受け取らなかった。
 だけど、あの子は笑ってくれた。
 あの子のデータを見たと言ったとき、笑ってくれた。
 あの子のライブを見たと言ったとき、笑ってくれた。

 僕に、何が出来るのか
  
【了】

24 : 以下、名... - 2015/04/30 00:21:44.02 O5k8MW0Fo 24/41


二号「ウサ」

「ありがとう、ロボ」

三号「ウサ」

「ああ、そこはもう少し右に」

「何をやっているんだ? こんなところで」

「邪魔、でしたか?」

「いや、ここは予備区画だから、今すぐに開ける必要は無いが……一体何をしてるんだ?」

「ステージです」

「ステージ?」

25 : 以下、名... - 2015/04/30 00:22:10.46 O5k8MW0Fo 25/41


「アイドルのステージですよ」

「……ああ、君もデータの複製と実体化を申請するつもりか? 残念だが、君の信用単位では……」

「いえ、申請するつもりはありません」

「どういうことかな?」

「Bが実体化させたアイドルのためです」

「無理だろうな」

「Bには僕から話します、だって、可哀想じゃ……」

「そうじゃない」

26 : 以下、名... - 2015/04/30 00:22:36.63 O5k8MW0Fo 26/41


「え?」

「昨日Bから報告があってね、あれは破棄されたよ」

「え」

「無反応になってつまらない。とBは言っていたがね。資材がもったいないとは、私も思うよ」

「……」

「だが、彼の信用単位で許される範囲の浪費だ。クレームはつけられないな」

「……」

一号「ウサ?」


27 : 以下、名... - 2015/04/30 00:23:02.70 O5k8MW0Fo 27/41


【Pの個人日誌】

 Bがあの子を殺した
 Bがあの子を殺した
 Bがあの子を殺した
 Bがあの子を殺した
 Bがあの子を殺した
 Bがあの子を殺した

 Bが殺した
 Bが殺した
 Bが殺した
 Bが殺した

 Bが
 Bが
   
【了】

28 : 以下、名... - 2015/04/30 00:23:29.29 O5k8MW0Fo 28/41

 
「いいかい、一号、しっかりと覚えるんだ」

一号「ウサ」
 
「酸素ボンベに赤いライン。これは三時間分の酸素」

一号「ウサ」

「青いラインは一時間分だ」

一号「ウサ」

「それじゃあ問題だ。僕ともう一人が船外活動中に救助を求めている」
「僕のボンベは青いライン。もう一人のボンベは赤いラインだ。いいかい?」

一号「ウサ」

29 : 以下、名... - 2015/04/30 00:23:55.30 O5k8MW0Fo 29/41


「キミはどちらを先に助けるべきだい?」

一号「ウサ」

 ウサミンロボ一号はPを指さす。

「そうだ、一号。よく出来たね。賢いぞ」

一号「ウサ~」

「青いラインは一時間、赤いラインは三時間。いいね?」

一号「ウサ、ウサ」

「いい子だ」

30 : 以下、名... - 2015/04/30 00:24:21.87 O5k8MW0Fo 30/41



【Pの個人日誌】

 仕掛けは終わった

 あとは機会を待つ
  
【了】

31 : 以下、名... - 2015/04/30 00:24:50.86 O5k8MW0Fo 31/41


「え……」

「君が一号と呼んでいたロボを破壊処理した、と言ったのだ」

「何故……」

「三日前のBの死亡事故の件だ。ロボによるミスのための事故だと結論される」

「ロボの……ミス」

「ボンベの酸素残量を何故か間違って記憶していたらしい。初期設定の手違いとも思えないからな」

「そんな」

「記憶が失われるならまだしも、記憶が間違えられているというのは大問題だ」

「で、でも、稼働一旦停止ぐらいで」

「ロボが貴重な労働力であるのはわかるが、危険が大きすぎる。事後報告になってしまったがよろしく頼むよ」

32 : 以下、名... - 2015/04/30 00:25:19.04 O5k8MW0Fo 32/41

 
【Pの個人日誌】

 僕が一号を殺した

 違う

 違う

 一号を殺したのはAだ
   
【了】

33 : 以下、名... - 2015/04/30 00:25:45.79 O5k8MW0Fo 33/41


二号「ウサ」

三号「ウサ」

「……うん。僕たち三人だけになったね」

二号「ウサ」

「データを実体化させれば賑やかになるかも知れないけれど」

三号「ウサ」

「うん。ここで生まれても、行く場所なんてない」

「いずれ、地上から連絡が来る。それまで……」

「……二号、三号……君たちの稼働限界は?」

二号「ウサ?」

34 : 以下、名... - 2015/04/30 00:26:12.05 O5k8MW0Fo 34/41


【Pの個人日誌】

 Bはウサミンロボにデータを実体化をさせていた。

 宇宙船は、ウサミンロボだけでも動かすことが出来る。

 だったら答えは、一つだ。

【了】

35 : 以下、名... - 2015/04/30 00:26:38.21 O5k8MW0Fo 35/41


「明日、地上からの定期通信が来る予定だ」

「ウサミンロボ、君たちはデータと共に行くんだ」

「もう、僕たちの星にアイドルはいない」

「君たちが、アイドルを守るんだ」

「君たちが旅立った後、僕は残ったモジュールを爆発させる」

「君たちは誰も追えない」

「人間には不可能な速度で進むんだ、いいね」

「アイドル以外の人間のデータもある。君たちならそれを読み込んで自分のものに出来るだろう」

「いろいろな知識が君たちを助けるよ」

「遠いどこかで、君たちがもう一度アイドルを……人間を、蘇らせてくれ」

「ウサミンロボ。アイドルたちによろしく」

36 : 以下、名... - 2015/04/30 00:27:04.97 O5k8MW0Fo 36/41


【Pの個人日誌】

 (データは全て破棄されている)

【了】

37 : 以下、名... - 2015/04/30 00:27:40.66 O5k8MW0Fo 37/41


 長い長い刻が過ぎました。

 ウサミンロボは、一つの星を見つけました。

 人間が生きていくことの出来る星。

 ウサミンロボは、データを実体化しました。
 
 人間たちを助け、ウサミンロボは頑張りました。

 ウサミンロボに護られた人間たちは、その星を「ウサミン星」と名付けました。

 ウサミンロボが稼働限界を迎えて眠りについた頃、人間はロボたちを星の守護神と呼んでいました。

 ロボたちは、人間たちの守り神として語り継がれていったのです。

38 : 以下、名... - 2015/04/30 00:28:06.43 O5k8MW0Fo 38/41




 やがて…………

 一人のウサミン星人が地球を訪れます。アイドルとして。

 そして、プロデューサーと出会い、アイドル仲間と出会います。

「よし、出来た。ウサミンデザインの、ウサちゃんロボだ」

「さすが晶葉ちゃんですね」

「しかし、ウサミンにこんなデザインセンスがあったとは」

「ウサミン星人なら皆知っている、ウサミン星人の守り神さまですよ」

「ふーん、こんなのが」

「こんなの、じゃないです」

39 : 以下、名... - 2015/04/30 00:28:36.92 O5k8MW0Fo 39/41


 
  
 
 
 
 
 ……ロボ、アイドルによろしく
 
 
 
 
 
 

40 : 以下、名... - 2015/04/30 00:29:03.69 O5k8MW0Fo 40/41


 知らない男の声が聞こえたような気がして、菜々と晶葉は一瞬、顔を見合わせたのでした。
 

41 : ◆NOC.S1z/i2 - 2015/04/30 00:31:23.30 O5k8MW0Fo 41/41


 以上、お粗末様でした

 初見でめちゃくちゃ泣いた「サイレントランニング」 
 大好きな映画を元ネタにしてSSやってみたかったんです

 後悔はしていない

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