1 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:33:36.42 djOkqjUe0 1/881

ご注意

キャラと中の人のクロスオーバー作品です
中、外ともにキャラ設定がイメージ先行な点があります
エッチなのは無い(はず)です
作者は日本語が苦手なので、誤字脱字が多々あると思いますが、脳内保管してやってください
乗りで書いているので辻褄が合わなくなるかもしれません
ネタ的に荒れるようなことがあれば、そこでやめときます
こちらに投稿するのは初めてなので、何かあれば言ってください

以上、それでもいいよ、読んでやるよという心の寛大な方は読んでやってください

元スレ
穂乃果「18人の女神 だよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460619216/

2 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:34:57.02 d2qQm/4y0 2/881

第0章『プロローグ』

3 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:37:11.86 d2qQm/4y0 3/881

今日はドームでのμ’sファイナルライブ

観客は満員、全国各地だけでなく世界各国でのLV中継も行われている中、楽しさ、願い、ありがとうの気持ち、少しのさみしさを含め最高のパフォーマンスを披露する9人

私もその中で、心からのありがとうを全身で観客に届ける

会場を埋め尽くすサイリウムの光、割れんばかりの大歓声

そして、夢の時間も終わりに近づき、最後の挨拶

メンバー一人一人がその思いの丈を観客に伝えていく

そして私の番、挨拶をしようとした瞬間、頭に浮かぶ違和感


あれ?私は穂乃果?だよね?あれ?みんなはμ’sだよね?


そんな疑念が頭の中を駆け巡り、私が何も言えずにいると、μ’sのみんなや観客も異変に気付きざわつき始める

私は頭の中が真っ白になって、怖くなって、寂しくなって、泣きたくなって、そして涙がこぼれ落ちる瞬間


目が覚めた

4 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:40:25.86 d2qQm/4y0 4/881

「ふぁっ…?夢か~、良かった~」

「すごいリアルな夢だったな―、ドームだっけ?すごかったな~」

寝ぼけ頭でつぶやく

「だよねー、ドームすごいよねー、観客5万人だって、5万人!すごくない?」

「5万人!すごーい!!眠気も吹き飛んだよ!っていうか誰?!」

気が付くと普段使うことの無い自分の勉強机の椅子に見慣れない女の人が座っている

「っていうか泥棒?強盗!?たすけ…むーーー」

「しーずかにーー!」

叫ぼうとした瞬間口を押さえられ体をベッドに押し付けられる

そうこうするうちに徐々に暗闇にも目が慣れてきて、相手の顔が見えるようになってきた

「……あれ?」

知ってる?この人、誰?でもわかる、私、この人知ってる

っていうかこの人、私?じゃないけど??

5 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:43:19.71 d2qQm/4y0 5/881

「少し落ち着いたかなー?」

女の人はそういうとゆっくり体を動かして私を解放してくれた

「????」

混乱する私に対して女の人は

「こうして会うのは初めてだね」
「私は高坂穂乃果」
「見た目は違うけど、私はあなた、高坂穂乃果なんだよ」

そういうと彼女、自称『高坂穂乃果』はにこりと笑った

「は?え?はぁ?」

私が意味も分からず目を白黒させていると、もう一人の『高坂穂乃果』はさらに衝撃的な追い打ちをかけてきた

6 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:47:23.76 d2qQm/4y0 6/881

「えーっとねぇ、とりあえず今から私とコンビを組んでμ’sのみんなを落としていって貰うんで、よろしくね!」
「ちなみに拒否したり失敗すると死んじゃうから、ファイトだよ!」

「…は?」

我ながら間抜けな声が出た

っていうかファイトだよ!じゃねーっつーの!!

「落とす?死ぬ?ってなんなんですか!?」

「あー、ごめんごめん、もう少し詳しく話すね」

そういうと『高坂穂乃果』はなんか色々とスピリチュアルな事を話し始めたのだった

8 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:49:35.72 d2qQm/4y0 7/881

「この世界ってどう作られたのか知ってる?」

何を言っているんだ?そのくらいは私だって知ってる

「えーっと確か恐竜とかがガーっていたけど隕石が落ちてドーンってなって猿が人間になったんでしょ?」

ふふん、Q.E.D 我ながら完璧な説明だ

海未ちゃんもことりちゃんもすごいって褒めてくれるに違いない、自信満々でいると『高坂穂乃果』はなぜか残念そうな表情で

「あ~、いやぁ~、そうだったねぇ、何かごめんね」

などとのたまう

あれ?おかしいぞ、答えは完ぺきなはずだけど、しかもなんか謝られてるし

そんな私の心の声が聞こえるわけもなく説明は続いていった

9 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:53:21.32 d2qQm/4y0 8/881

「この世はね、神様に作られた世界なんだよ」

「あなたたち一人一人は物語の登場人物として作られたんだ」

「その世界には台本があって、一人一人には演じる人がいて、作られた物語通り時間が過ぎていく」

「そこにみんなの意思なんてない、ただ淡々と物語は進んでいって、そして終わっていく」

「それが世界の全て」

はぁ?イミワカンナイ?何を言っているのかなこの人は?

私の疑問が顔に出ていたようで『高坂穂乃果』は

「そりゃ解んないよね~」


「私は高坂穂乃果を演じた役者、だから、あなたは私、私はあなた」

10 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:56:05.82 d2qQm/4y0 9/881

え?何それ

頭の中から血の気が引いていく感じがした


「それじゃあ私はなんなの?音ノ木で生まれて学校に行って皆でスクールアイドルやってラブライブ目指して頑張ってる私は一体!…」

興奮した私のセリフをさえぎるように『高坂穂乃果』は私を抱きしめた

「でもね、穂乃果ちゃん?あなたが、あなたたちが頑張ったおかげであなたたちは『本物』になれたんだよ」

「…本物?」

「そう、あなたたちの頑張りが皆の感動を呼んで、多くの人に愛された結果、あなたたちは他人が作ったキャラクターから『本人』になれたんだよ」

「この世界は本物の世界、みんな生きてる、みんな自分の意思で動いている」

「それはみんなでかなえた夢」

「それがこの世界の真実だよ」

「でもね、余りにもみんなに愛されすぎて、境界があいまいになっちゃった」

「このままではこの世界自体がおかしくなって、壊れちゃうんだよ」

「特にμ’sは影響が大きいから」

「穂乃果には皆の自我を保つ役割をしてほしいんだ」

11 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:57:14.04 d2qQm/4y0 10/881

私の頭は大混乱していた

スピリチュアルなんてもんじゃないよ、コレ!

12 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 16:59:51.96 d2qQm/4y0 11/881

「ってゆーかなんで私なの?おかしいし、死ぬの嫌だし、落とす?何それイミワカンナイ!」

「ごめんごめん、死ぬっていうのはちょっと違ったかなー?正確には世界が滅びる、かな?」

「なんかもっと悪くなってるし!」

「穂乃果ちゃん、この物語は元々はあなたが主人公だったんだよ、世界を構築するにはあなたじゃないとダメなんだよ、そしてμ’sのみんなもそう、この世界を安定させているのはあなたたちなんだよ」

「そしてμ’s、あぁこれは私たちの事なんだけど、私たちはあなたたちを愛して、あなたたちになろうと努力して、最後に1つになれたんだ」

「でも、みんなそれぞれにあなたたちの存在が大きくなりすぎて、2つの世界の境界があいまいになったタイミングもあって、この世界に干渉してしまっている」

「このままじゃあせっかく命が吹き込まれたこの世界のバランスが崩れてしまう、そうしたらこの世界がどうなるか、最悪無くなるかも知れない」

「無くなる?みんないなくなっちゃうの?ダメだよ!そんなのいやだよ!」

私は怖くなって叫んだ

「みんながいなくなっちゃう、そんなのダメだよ!ずっとみんなと一緒にいるんだ!」

「それは私たちも同じ、だから、お願いします、助けてください、穂乃果ちゃん」

13 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 17:02:07.02 d2qQm/4y0 12/881

こんな話普通信じられないけど何故かこの人の話は嘘に聞こえない

なんでだろう?他人の様な気がしないんだ

「それじゃあ、あなたは誰?」

この人は自分を高坂穂乃果と名乗った、でも私を演じているならば本当の名前があるはず

なぜかこの人のこと、とっても知りたくなった

「あなたの本当の名前をおしえて、そうしたら信じるよ」

「…私、うそつくかもしれないよ」

「あなたは私に嘘はつかない、そんな気がするんだ、だから教えて、あなたの名前」

14 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 17:04:51.42 d2qQm/4y0 13/881

少しの沈黙の後

「いやあ、まいったねぇ、さすが穂乃果」

「やっぱり穂乃果は穂乃果だね」

「私の名前は新田恵海、みんなえみつんって呼ぶよ」

優しく笑う恵海さん

うん、やっぱりこの人他人の気がしない、不思議な感じだけどしっくりくる感じ

「穂乃果とこうして話せるのは私だけ、だから私は神様にここに来られるようにお願いしたんだ」

「お願い、してみるもんだね、叶っちゃった、スピリチュアルやね!」

クスリと笑うその笑顔を見て私は決意した

「解ったよ、恵海さん、私やるよ!よろしくね!」

「…っ、ありがとう、よろしくね、穂乃果」

穂乃果って呼ばれるのがすごい気持ちいい

だってそうだよね

私と新田さんは一心同体なんだもんね

「もうひとつお願い、聞いてくれるかな?」

すると、新田さんは恥ずかしそうにこう言った

「新田さんじゃなくて、えみつんって呼んでほしいな」

ふふっ、私はなんだか嬉しくなって、笑顔満開で答えた

「うん!えみつん、よろしくね!」

15 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 17:13:47.38 d2qQm/4y0 14/881

「ところで『落とす』とか『自我』がどうとかって言ってたけどどういうこと?実際なにしたらいいいの?」

素直な疑問をぶつけるとえみつんはニヤリと笑い衝撃の答え第2段を投下した

「落とすって言ったらそりゃあれでしょ、穂乃果もわかるでしょ?天下のJKじゃん、少女漫画にもあるアレだよアレ」

アレ?おや?おかしいぞ?おそらく私の知識にある『アレ』と同意義であれば確実に、色々と、倫理的におかしなことになるぞ?

そんな疑念をよそに、えみつんはこう言い放った

16 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 17:21:11.35 d2qQm/4y0 15/881

「攻略しちゃうの!好きにさせちゃうの!チューしちゃうの!キャー!」

「キャーじゃないよ!何それ?私女だよ?μ’sのみんなも女だよ?おかしくない?」

「またまたぁ、海未ちゃんとか絵里ちゃんとかといっつもしてるんじゃないの?」

「してないし!」

なにを言ってるんだこの人は、なんでこんなに嬉しそうなんだ?

少し想像してドキドキしてしまったことは隠して私は冷静に答えた

「ごめんやっぱ無理、えみつん一人で何とかしてください、それでは今から警察を呼びますので、さようなら」

私が携帯で110と打ちこみ始めると

「嘘です、ごめんなさい、冗談です、許して下さいなんでもしますから」

何か土下座してるし

なんかやっぱり自分と似てるなあと思いつつも睨みつけると

「ごめん、落とすっていうのは抽象的な表現で、具体的に言うと自分はμ'sで良かった、穂乃果とずっと一緒にいたいって思わせるってことかなぁ」

「つまりは穂乃果という人物と共に生きていきたい、μ’sというチームが大好き、と思わせる事によってこの世界にその子を定着させるっていうこと」

「そうすれば全て元通り、ずっとこの世界は生き続けることができる」

17 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 17:23:41.17 d2qQm/4y0 16/881

そこまで言うとえみつんは深々と頭をさげ

「お願いします、この世界を、そして私たちを助けてください」

「私からμ’sを奪わないで…みんなとの思い出を守ってください」

「無茶を言っている事は解ります、とんでもない押し付けなのも解ります、それでもお願い、助けて」

18 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 17:25:41.54 d2qQm/4y0 17/881

ああ、やっぱりこの人は私だ、こんなにもμ’sを好きでいてくれる

そしてきっとこういう思いを持った人たちがいっぱいいるんだ

これってすごいことだよね

私にできるかどうかなんて関係ない

やりたい、やらなきゃ!

みんなの思い、守ってみせるよ!



私やる!やるったらやるんだ!!




第0章『プロローグ』完

20 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:01:50.46 d2qQm/4y0 18/881

第1章『うみもりん』

21 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:04:09.98 d2qQm/4y0 19/881


「うーん、私がんばるよ~」

夢と現実の間を行ったり来たり、この時の感覚ってすごい好き

至高の時間だよ、ずっとこうしていたいよ~

という私の願いは

「穂乃果!あんたいつまで寝てんの!!」

「へぁ?!」

お母さんのどなり声により、叶えられる事の無い儚い夢想と化した

時計を見ると…

「うわぇええええーーー!!!!」

「なんでこんな時間?!」

これはやばい、マジやばい、久々の完全遅刻時間だ

お母さんに大目玉をくらいながら急いで身支度を整え、我ながら素晴らしいスピードで家を飛び出す

22 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:05:32.49 d2qQm/4y0 20/881


携帯を確認すると、ことりちゃんからの着信が3件ととメールが1件


---fromことりちゃん---
雪穂ちゃんから連絡があったから先に行くね
気をつけてきてね
あと今日は海未ちゃんのご機嫌がすごくいいみたいだから、急いで来ればいいことあるかも?


遅刻はやばい、でもことりちゃんのメールで少しだけほっとする

お母さんより、先生より、もっともっと怖い海未ちゃんの機嫌がいいらしい

そういえばことりちゃんからの電話はあったけど、海未ちゃんからは無かったな~

いつもは海未ちゃんからも連絡があるのに、なんだか心がモヤモヤする

なんて考えているとスクールバッグのマスコットから呑気な声が聞こえた

23 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:07:57.07 d2qQm/4y0 21/881


「いやぁー、あれだね、寝坊したときのすっごいよく寝た感ってなんだろうね」

この呑気な居候はえみつん、私に命を吹き込んでくれた人であり私自身でもある、らしい

今現在私たちは世界を守るために活動している、らしい

らしいというのはつい先日この話を聞いたばかりで、具体的に何が起こるか誰も解らないという情けない状況だからである

この相棒は普段はディフォルメマスコットに乗り移るというスピルチュアルな事をしており、常に行動を共にしている

何かあればすぐに行動できるようにしているのだが…


現在は世界の危機よりわが身の危機である

「そんなの知らないし!なんで起こしてくれないの?!遅刻しちゃうじゃん!」

「って言われても私も起こしたけど全然起きないし、昨日あんな遅くまで起きてるからだよ」

「だってスクールアイドル特集すっごい面白かったんだもん!しょうがないじゃーん!」

「そうだねー、そりゃしょうがないよねー、うん、しょうがない、海未ちゃんから連絡なくてしょんぼりしちゃうのもしょうがないよねー、乙女だものしょうがないよねー」

24 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:10:14.12 d2qQm/4y0 22/881


はい、急ブレーキ

「はぁ?!何言ってるの?はぁ?」

何言ってんだこいつ、イミワカンナイ!

思わず抗議の声をあげる私だが、ふと周りを見ると大勢の人のすっごいかわいそうな子を見るような目が突き刺さる

そりゃそうだ、マスコットに大声で叫ぶ子なんていたらそうなる

くっ!…私は敗北感を胸に再び走り出す

今はくだらない戯言に付き合っている暇は無い、とにかく学校に一刻も早くたどり着かねば

当のえみつんといえば

「ファイトだよ!」

ムカつく~!!

「ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」

叫びを気合いに変え、学院への道をダッシュした

25 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:13:57.84 d2qQm/4y0 23/881


校門をくぐる直前、チャイムが鳴り遅刻が確定、疲労感のみを残し教室の扉を開くと

「はーい高坂遅刻なー、あとで職員室に来いよー」

うぐぅ…追加補修確定かぁ

くすくすというみんなの笑い声の中自分の席に向かうと

「穂乃果ちゃん、大丈夫?何かあったの?」

ことりちゃんがそっと聞いてくる、ううっその優しさが身にしみるよ

「いやあ、寝坊しちゃった、朝はごめんね?」

「ぜんぜん、大丈夫、なにもなくてよかったよぉ」

にこりと微笑むその姿はまさに天使、癒されるね

26 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:16:11.71 d2qQm/4y0 24/881


席に着くと隣に座る長髪大和撫子がこちらを向く

ああ、怒られる、正確には後で怒られる予約が入る

とほほ、と思いつつもとりあえずご挨拶

「おはよう、海未ちゃん、朝はごめんね?」

「くすくす、穂乃果遅刻しちゃったねぇ、残念でしたぁ、補修がんばってねぇ」

「ううっ、ヒドイよ」

私はうなだれながら授業の準備を始める

ん?あれ?なんか違和感

もう一回となりの海未ちゃんを見る

あぁっ今日もかっこかわいいよぉ…、じゃなくて

「海未ちゃん?」

「ん?なに?」

??

「い、いやぁ、なんかいい事あった?」

「ん?特には無いけど?」

「強いて言うなら穂乃果が補修確定で不幸なのが面白いかな?」

???

そこまで話して

「こらー、無駄話はそこまで、授業に入るぞー」

先生が話をさえぎる

「うへぇ、こっちも怒られちゃったじゃん、じゃあ、またあとでね」

そう言って笑った海未ちゃんの笑顔は、本物のアイドルみたいにかわいかった

27 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:19:18.97 d2qQm/4y0 25/881


「ちょっと、えみつん!何これ!なんか海未ちゃんがおかしくなってるんだけど!!」

「なんか遅刻したのに怒んないし、授業中居眠りしてても笑ってるし、ちょっと毒舌はいてるし、なんか笑顔がいつもと違うし、話し方も丁寧じゃないし!」

「なによりなんかアイドルみたいにかわいいの!!なにこれ?!」

「ちょっと待って!ちょっと待って!興奮しすぎ!!気持ちはわかるけど!ちょっと落ち着いて…」

昼休み、私は屋上でえみつんと緊急会議をおこなっていた

あの後半日一緒に過ごしたが、海未ちゃんはまるで別の人になったみたいになっていた

なのにことりちゃんも周りのみんなも全然普通に接していて、まるで穂乃果がおかしいみたいに言われる始末だし

そこで適当な理由を付けて2人だけで屋上までやってきて今に至るのだ

「それにかわいいのはいつもそうじゃないの?」

「違うよ!いつもの海未ちゃんは美人でかっこよくてやさしくてかわいいの!今日はなんかアイドルみたいなの!全然違うよ!!」

「なるほどわからん」

28 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:23:22.37 d2qQm/4y0 26/881


「これが異変なの?どうしたらいいの?世界が終っちゃうの?」

「海未ちゃんはどうなっちゃうの?うわーん!海未ちゃーーん!!いやだよー死なないで~!!」

「だーかーらー落ち着いてー!死なないからだいじょうぶだから!」

「うぅっ…、ほ、ほんとに?」

「ホントホント」

「ただ、このままでは海未ちゃんは元に戻ることは無い」

「どうしたらいいの?どうやって海未ちゃんを元に戻すの?」

混乱する私の問いかけに、えみつんは落ち着いて答えてくれた


29 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:25:19.99 d2qQm/4y0 27/881


「まず、今の状況を説明するよ」

「今海未ちゃんは人格が他の人になり変わっている」

「周りの人はそれが普通と思っている、ということは世界の法則が元あった状態からずれていってる」

「穂乃果と私はこの世界の中心点だから変更されることは無い、つまりは私たちの記憶こそが本来あるべき世界の指標」

「私たちは私たちの記憶の世界に戻していくことがこの世界を救う方法となる」

「今起こっている異常の中心は園田海未」

「海未ちゃんを元に戻すことこそが、この世界を救うということ」

「あなたの出番だよ、穂乃果、あなたにしかできない事だよ」

この言葉に私は思い出す

「私にしかできないこと…」

「そう、わたしからもお願い、この世界を救って」


そうだ、私にしかできないこと、みんなの思いを守ること、うん、私がんばるよ!!

待っててねみんな、助けてあげるよ海未ちゃん

30 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:31:58.01 d2qQm/4y0 28/881


その後教室に戻っても海未ちゃんの様子は相変わらず

でもいつもと違って海未ちゃんの周りにはすごい人だかり

元々色々と人気があるのは知ってたけど、なんかすごくなってない?

圧倒されていると、ことりちゃんが私に気が付いて声をかけてくれた

「穂乃果ちゃん、用事は終わった?」

「うん!大丈夫だよ、なんかバタバタしちゃって、一緒にお昼たべられなかったね」

するとことりちゃんは少し声を小さくして

「そうだね、でも私はいいけど、穂乃果ちゃんは残念だったね、今日は海未ちゃんご機嫌だったから一緒にご飯食べるチャンスだったのにね」

「ん?いっつも一緒に食べてるじゃん?」

「え?私たちはそうだけど海未ちゃんはいっつもどっかに行っちゃうから中々一緒に食べれないでしょ?」

「モテモテだもんねぇ海未ちゃん、穂乃果ちゃんもうかうかしてられないね!」

「でも大丈夫、海未ちゃんはなんだかんだで穂乃果ちゃんのところに戻ってくるから」

31 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:34:20.69 d2qQm/4y0 29/881


あれおかしいぞなんだこの話の流れ?

まるで私が海未ちゃんの事、その…あの…

なんて思っていると視線の片隅で、えみつんがすっごい笑い転げているのが見える

う~、おぼえてろー!

なんてことをしていると海未ちゃんがこっちにやってきた

「穂乃果~!戻ってたんならいってよ、ことりも教えてくれたらいいのに~」

「だって海未ちゃんファンのみんなに囲まれてすごかったから話しかけたら悪いかなって思って」

「別にいいのに~、ことりはいい子だね~」

むぅ…

「はいはい、穂乃果もやきもち妬いちゃだめですよ~」

「///やきもちじゃないし!!」

海未ちゃんは「わはは」と笑うと

「あのね、私すっごい画期的な決めポーズ思いついたんだけど見て!!」

『決めポーズ?』

なぜだ?嫌な予感しかしない!

っていうか、あれ?この感じなんだろう、ほんとにヤバい様な気がする?

「それじゃ、いくy『キーンコーン』…ってタイミング悪!」

ちょうど予鈴が鳴ったため、画期的な何かは中断された

「仕方ない、放課後の練習の時に披露するとしよう」

「うん!楽しみにしてるね!」

という笑顔の天使に合わせ、私も

「いやぁ、たのしみだなー」

と満面のひきつった笑顔で答え、問題の先送りに成功した

32 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:37:21.84 d2qQm/4y0 30/881


授業が終わると

「ごめーん!先行っててねー」

ダッシュで校舎裏へ移動し呑気にバッグにぶら下がっている相方に問いかける

「えみつん!穂乃果!全く!何にも!全然!どうしたらいいか解んないんだけど!って寝てるし!!」

「…はっ!すごい!穂乃果と海未ちゃんがチューして…」

「!?何の夢だよ!しないよ!っていうかなんでこんな時に寝てられんの?どうしてそんなとこばっかり似てるのさ!自分でいってて悲しいよ!!」

「あれ、ここどこ?」

などという寝起きぬいぐるみの声は無視して問いかける

「あの状況の海未ちゃんに何をどうしたらいいのか全然わかんなーい!」

そうなんだ、今の海未ちゃんはモテモテなのだ

あの後も少しでも時間があればみんなが周りに集まってゆっくり話もできない状態

会話に入るにしても、海未ちゃんのギリギリ『アウト』発言のフォローをするのでいっぱいいっぱい、なんか危なっかしくてそちらにばかり気が行ってどうこうする余裕がないのだ

まさか私が海未ちゃんのお世話をする日が来るなんて…

穂乃果の事もこういう気持ちで見てたのかな?

うう、こんなに大変なんだねぇ

海未ちゃん、ことりちゃん今までごめんねぇ、そしてこれからもよろしくね

なんてことより、

「どうしよー!!」

すると、えみつんはプリチーな見た目に反した真面目なトーンで

「それじゃあ、今の海未ちゃんの中の人をまず理解しておこうか」

と話を始めた

34 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:49:32.95 djOkqjUe0 31/881


「まず、いまの海未ちゃんの性格の元になっているのは『三森すずこ』っていう人だよ」

「はっきり言ってアイドル声優としてならトップの人気者だよ」

「トップ…!すごい!」

「見た目もすっごいかわいいし、歌もダンスも上手だし、何よりいろんな意味で『アイドル』してるから」

「色んな意味?」

「まあ、アイドルって偶像って意味だから」

これは私にも何となくわかった

「なるほど、にこちゃんみたいなもんだね!」

「正解!でも元々の性格が大雑把っぽくてそれが漏れちゃってるんだけど、それがまた人気の一つなんだよ」

「仕事に対してはすごいストイックでかっこいいんだよ」

「基本思考は脳筋ぽいのが玉にキズかなぁ」

なるほど、性格は海未ちゃんとは真反対だけど、見た目の印象と思考回路は海未ちゃんとほとんど一緒だね

35 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:51:28.11 djOkqjUe0 32/881


「えみつん、なんか詳しいね、さすがμ’sの仲間だね!」

そういうと、えみつんは懐かしそうに笑って(見た目はぬいぐるみなのでかわいいままだが、そう見えたのだ)

「デビューが一緒だったからねぇ、初めのころからの色々、酸いも甘いも一緒だったから…」

「まあ、それは置いといて、今の海未ちゃんはそういう人格になっている」

「この世界の『園田海未』という人格に私の世界の『三森すずこ』という人格が融合していってる状態」

「これは私の予想だけど、元々海未ちゃんは穂乃果への依存度が高いから、穂乃果のことを思いっきり意識させれば、園田海未を思い出して「すず」の人格を切り離せると思う」

「海未ちゃんが穂乃果に依存?反対だよそれ」

「ふふっ、そうかな?まあいいけど」

37 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 19:55:29.75 d2qQm/4y0 33/881


「いったいどうしたらいいの?」

うーん、マジで全然わかんない、するとえみつんはニヤリと嫌な笑みをうかべ

「だからぁ、言ってんじゃん、2人きりでぇ、屋上とかでぇ、いい雰囲気でぇ、チュ‐『絶っ!対っ!しないから!!』

よしわかった、こいつは敵だ、間違いない

「ふんっ!あ、そういえば、さっき海未ちゃんがなんか新ポーズ?かなんかやろうとした時、なんかこう、すっごい嫌な予感というかなんというか、変な感じがしたんだけど?」

「ん~?私には解んなかったけど、でも何かあるかもしれないし、気をつけておこうか」

「うん、気のせいだったかもしれないけど、注意しておくよ」


…こうして結局大した解決策も解らぬまま、私たちは部室へと向かった

39 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:19:27.57 d2qQm/4y0 34/881


「少し遅くなっちゃたなー」

急いで部室に向かい、ドアの前まで来ると中からかしましい声が聞こえる

「あれ?まだみんないたんだ」

ドアを開けて

「みんなごめんねー!」

と声をかけ、中に入るとみんな制服のままで何やらやっているみたい

「やるわね!海未!じゃあこれはどうかしら?」

「にっこにっこにー❤あなたのハートににこにこにー❤笑顔届ける矢澤にこにこ~❤」

「出た~!YAZAWA部長の必殺技!これにはさすがの海未ちゃんもヤバいにゃー!」

「さ、さすがです!にこちゃん!!全く恥じらいも感じさせず全開のあざとい笑顔!!スクールアイドルの域を超えてます!!」

「ハラショー!かわいいわ、にこ!」

「いや~ん、にこっちかわええよ~、わしわしした~い!」

「ちょっとそこドサクサに紛れて何言ってんのよ!」

見るとどうやら我がアイドル研究部部長であるにこちゃんとマジモンのアイドルが混じっているらしい海未ちゃんが何やらやっているらしい

40 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:22:36.59 d2qQm/4y0 35/881


「遅れてごめんねー、みんな、なにやってるの?」

「穂乃果ちゃん!あのね、今海未ちゃんとにこちゃんが、どっちがかわいいポーズができるか競争してるんだよ、二人ともとってもかわいいの!」

と、ことりちゃんが説明してくれる

すると少し離れたところで静かに本を読んでいた真姫ちゃんが

「全く、なにやってんだか…」

なんて言ってため息をつく、すると

「何言ってんの真姫ちゃん!これはライブを盛り上げるためには絶対的に必要なものなのよ!ライブの出来こそがファン獲得の重要な要素!せっかく海未がレベルの高いアオリを提案してくれているのだから、研究するのは当然よ!」

「そうだよ、真姫ちゃん!こんなレベルでのアイドルのアオリが目の前で見られるなんてまずないんだよ!曲、ダンス、かわいさ、これだけじゃライブは輝かないんだよ!盛り上げるという要素としての……」

「ヴェェェェェ…」

「凛はこういうかよちんも好きだよ」

あー、はじまっちゃった



…楽しいな、みんな笑ってる
絶対私が守ってみせるよ!




41 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:25:23.03 d2qQm/4y0 36/881


「どうしたの?穂乃果ちゃん」

「ん?なんでもないよ、大丈夫」

と笑顔で返す

ことりちゃんは少し困ったような顔をして

「なにかあったらすぐ言ってね?私はいつでも力になるから」

ことりちゃんには隠し事できないなぁ、ありがとう

「うん!困ったらすぐに相談するよ!」

決意を込めて返事をする

ことりちゃんは昔からの幼馴染、とっても優しくて穂乃果が無茶しても絶対助けてくれるの

きっと、今も穂乃果が何かやってるのも解ってるんだと思う

でも穂乃果のことを信じてくれてるんだね

こうやって昔から一緒に過ごしてきたんだ

そしてもう一人、ずっと一緒にいた大事な大事な幼馴染

海未ちゃん…


待っててね!


42 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:28:33.68 d2qQm/4y0 37/881


私が決意を固めると、タイミング良く海未ちゃんが

「じゃあ私の新必殺技でみんなびっくりさせるよー!」

ん?お昼に言ってたやつかな、とか思っていると

!?

この感じ、昼と同じだ!

えみつんも私の異常に気が付いたみたいだけど、行動を起こす前に海未ちゃんの『必殺技』は発射された

「みんなのハート!打ちぬくぞー!ラブアロー・シュートォ❤!!」

そういうと海未ちゃんは矢を射るポーズでみんなに向けて

「ばぁん❤」

うわやばいかわいいなんだこれすごい

という人として当然の感想を噛みしめる権利を行使する間も許されず、事件は発生した


43 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:32:03.63 d2qQm/4y0 38/881


「///…海未」

「///海未、ちゃん…」

「///海未、好きよ」

んんん?

「///海未、私のものになりなさい」

「///す・て・き❤」

「///にゃ~、海未ちゃ~ん」

はぁ?!

「///海未ちゃ~ん、かっこいいよぉ~」

ことりちゃんまで?

なにが起こった!?

44 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:35:24.89 djOkqjUe0 39/881


「穂乃果大丈夫?!」

えみつんが動き出す

「私は大丈夫、だけどみんなが…」

なんだこれ?みんな海未ちゃんにメロメロになってる

さっきのラブなんちゃらのせい?

「とりあえず海未ちゃんを捕まえて!」

「解った!」

えみつんの言葉に反応して私は海未ちゃんに飛びかかる、が、さすが園田流は伊達じゃない

私のことなんてするりとかわして簡単に逃げられてしまう

ん?逃げた?

なんで?

45 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:40:58.34 d2qQm/4y0 40/881


海未ちゃんを見ると満面の笑みで

「これは?すごい!私も出来たんだ!やった!」

と意味不明な事をつぶやくと部室から飛び出していこうとする

「あ!待って―!」

私が追いかけようとすると

「こらー!すずーー!!」

えみつんの大声が響く

と、海未ちゃんの動きが一瞬止まり

「え?えみつん?ヤバッ!」

と言い残し脱兎のごとく逃げていく

「追いかけよう!」

えみつんの言葉にうなずき走り出した

46 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:47:04.38 d2qQm/4y0 41/881


廊下に出るとそこは阿鼻叫喚

あちこちで生徒たちがへたり込み、乙女な表情で海未ちゃんを讃えている

「すずのやつ~、やりたい放題だな~」

「なんか学院が凄いことになってるよ~」

「でも、なんで海未ちゃんはえみつんのこと知ってたの?」

「あれね、今は完全に意識がすずになってるんだよ」

「ちょっとテンション上がっちゃってるんだろうね、気持ちはわかるけど…」

そうこうしててもどんどん海未ちゃんファンが増加していってる

「///海未さん…」

「///お姉さまぁ」

行く先々でこんな状態なので、逃走経路をたどるのは難しくない

本気で隠れる気は無いのかな?

すると、えみつんは私の考えを読んだかのようにこういった

「すずはあんまり物を深く考えないから、多分面白がってやってるんだろうなぁ、もうっ!あとでよく言っとかなきゃ」

なるほど!脳筋ってやつだね!

「学院の外に出る前に捕まえなくちゃ!」

「そうだね、外に出る前に何とかしたいけど、って何とかなりそうだね」

走っていると、海未ちゃんの後ろ姿が見てきた、そりゃあれだけ遊びながら走ってたらいくら速くても追いつくよ

そして、その姿は弓道場へと消えていった

「一気に追い詰めよう」

私たちも弓道場へ駆け込んだ


47 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:49:30.55 d2qQm/4y0 42/881


私たちが弓道場に駆け込むと

「ラブアロー・シュートー❤」

「うわわっ!!」

思いっきり待ち構えられて『必殺技』で射抜かれる

「やられた?!」

うわーっ!私もメロメロになっちゃう!キャーどうしよう!はずかしー!で、でもしょうがないよね!そういう技だもん!そう、しょうがないんだよそうだよね海未ちゃん!う、海ちゃん!私、海未ちゃんのことす、すk」

「途中から心の声だだ漏れで盛り上がってるとこ悪いんだけど、何ともなってないよ」

「うわーー!!!って、えっ?!あれ?ホントだ!」

たしかにいつもと同じだ、あれ?ひょっとして穂乃果無敵?主人公補正ってやつ?

48 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:52:22.05 d2qQm/4y0 43/881


この状況に海未ちゃんこと三森さんは

「ありゃ?不発?じゃあもう一回…」

もう一回構えを作ったところに

「こらっ!すず!!もうやめなさい!!」

えみつんが一喝

「やっぱりえみつん?なんかちっちゃくない?キャラチェン?」

「違うし!もうやめなよ!」

あんまり聞いてないっぽい、我が道を行く人なんだね

「まあまあ、でも見て!えみつん!私も同化できたの!すごい!私がんばってがんばって、やっと出来たの!海未ちゃんだよ、私!」

「もうキャラ愛がどうの~とか、やる気が何の~とか言わせないよ!だってホントにその子の事思ってなければ同化出来ないんだもん!」

49 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:55:19.46 d2qQm/4y0 44/881


「すず…」

なんか色々あるのかな、でも

「お願い、三森さん!海未ちゃんを返して!」

「返すも何も、海未は私ですが?(キリッ 」

似てるよ!すっごい似てる!!ってゆうかほぼ本人だし当然!だけど、

「違うの!私は海未ちゃんがいいの!真面目で、おこりんぼで、融通きかなくて、恥ずかしがりやで、かわいくて、かっこよくて、やさしい、私の幼馴染、とても大事な人」

「穂乃果…」

いつのまにか元の姿に戻っていたえみつんが、そっと肩を抱いてくれる

「海未ちゃん…」

だめだ、泣いちゃう

涙が眼からこぼれそうになった時


「ほ、のか」


この声、間違いない、元の海未ちゃんだ!

その瞬間、私は無我夢中で海未ちゃんのところへ駆け出し、その体を抱きしめた

50 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 20:56:53.64 d2qQm/4y0 45/881


そして

「海未ちゃん…戻ってきて」


キスをした

51 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:00:28.69 d2qQm/4y0 46/881


「!!あれ?なんで?海未ちゃんから離れちゃう!だめだめだめ!こんなことで終わっちゃダメだよ!これはみんなで起こした奇跡なのに!あんなに辛いこと全部逃げずに頑張ってきた証拠なのに!あれ?あれあれ?」

海未ちゃんの体からもう1人の女の人が出てくるのが見える

多分あれが『三森すずこ』、海未ちゃんのもう一つの姿、っていうかすっごいかわいいんだけど!

52 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:02:25.31 d2qQm/4y0 47/881


三森さんの体が海未ちゃんから完全に離れると、えみつんが三森さんに話しかけた

「…すず、もういいでしょ?解ってるから、大丈夫だよ?」

すると三森さんは

「えみつん…」

一瞬観念したみたいだったけど、すぐにダダをこね始める

「やだー!!私このまま海未ちゃんと同じ体で生きてやる!ずっと一緒なの!」

「わたし、終わるとか思ってないし!私と一緒に青春したんだから私と一緒に成長して私と一緒に人生を歩むんだ!私わがままだから!もう決めてるから!!」

「すず!!」

53 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:05:32.16 d2qQm/4y0 48/881


その時

「ありがとう、すずこ」

いつの間にか目を覚ましていた海未ちゃんが、三森さんに語りかけた

「すずこ、ありがとう、これからも心はずっと一緒ですよ」

「…でも私たちは歩いて行くって決めたんです」

「その行き先はそれぞれ違うかもしれません、だって私は海未、あなたが命をくれた園田海未なんです」

「園田海未は三森すずこの心を持って生きてける、こんなにうれしいことは有りません、なぜなら、あなたは私のこと、こんなに好きでいてくれるんですもの」

三森さんは少し寂しそうな表情で

「…くっそ―!!そんなこと言われたら…覚えときなさいよ!!いつか絶対また同化してやるんだから!!こんちくしょー!!!大好きだー!!!ありがとー!!!!」

と叫ぶと、すごい勢いで走り去って行く

54 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:07:48.32 d2qQm/4y0 49/881


「すずこ、ありがとうございます!私ももっともっと素敵な、あなたみたいにキラキラ輝ける女性になりますから、だからまた一緒にステージへ上がってくださいね!」

海未ちゃん…なんて感動的なんだ、穂乃果泣いちゃうよ、さっきとは違う気持ちのいい涙だよ

なんて感動してると、すごい勢いで三森さんが戻ってきて捨て台詞

「うわーん!なんかめっちゃかわいいポーズ考えてやるからな~!!次のライブで披露してやる!!絶対また一緒にライブしようね!!またねー!!!」

と言って踵を返してまたダッシュしていく、その後ろから

「こらー!待て―すずこーー!!!」

とすごい剣幕で、えみつんが追いかけていく

そんなドタバタ劇が終わると

「///っ、そういうのは普通でいいです」

海未ちゃんはそう言った後、クスリと笑い

「また、お逢いする時まで、お互い精進ですね」

とつぶやく横顔は、とてもとても綺麗だった


56 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:13:30.18 d2qQm/4y0 50/881


騒動の後、静まり返った弓道場で2人きり

ヤバい、マジやばいです

だってその、キ、キスしちゃった

初めて、キスしちゃったんだよ、私

しかも、海未ちゃんと、うれしじゃなくて恥ずかしい…

なんてモジモジしていると

「穂乃果」

と声をかけられる

何々?告白?それとも殴られる?どうしよ~!なんて一人で悶えていると

「あの、実は大体のあらましはすずこの記憶で理解できたんですけど、今日の出来事は全然覚えてなくて…」


ん?


「でも、穂乃果の声が聞こえて、何か暖かくて、心が満たされて、気が付いたら穂乃果に抱きかかえられていて、私が倒れないようにしてくれていたのですね、ありがとうございます」

「その直前までの記憶があいまいで、良かったら教えてくれませんか?って怒ってます?」


「海未ちゃんの…海未ちゃんのバカーー!!!」

57 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:15:02.43 djOkqjUe0 51/881



私のファーストキスは私の心の中にだけ存在するのさ、トホホ



58 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:17:54.24 d2qQm/4y0 52/881


そうしているうちにえみつんが戻ってきて、海未ちゃんに大凡のあらましを説明してくれた

ちなみに三森さんは元の世界に帰って行ったらしい(相当ダダををこねていたらしいが)

えみつんによると世界には修正がかかるため、海未ちゃんの記憶は明日には元に戻る、つまりは今日の事は忘れてしまうとのことだ

でもそれって…海未ちゃんは心配そうな私の頭を撫でながら

「大丈夫ですよ、穂乃果、私、絶対すずこの事忘れません」

「だって私は園田海未であって、三森すずこなんですもの、自分のこと、忘れる人はいないでしょう?」

と言ってやさしく笑った

59 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/14 21:18:39.89 d2qQm/4y0 53/881



第1章『うみもりん』 完


61 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:28:27.54 VC7Ajst+0 54/881


第2章「愛しのエリー」

62 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:33:13.28 VC7Ajst+0 55/881


「うわぁ~!遅刻だー!!」

今日も今日とて私は走る

「もうあれだね、テンプレだね、さすがっすね穂乃果サン、まじパねえッス」

スクールバッグの主が称賛の声を上げる

「も~!う~る~さ~い~!しょうがないじゃん、深夜にあんな面白い映画やるのが悪いんだよ!わたしのせいじゃな~い!!」

はい、そうです、今日も遅刻しそうです

海未ちゃんとことりちゃんは、もう(雪穂が)連絡しているため、先に学院に向かってもらっている

「でもあれだねぇ、そうやってパンを咥えて走ると、なんかのフラグ立てみたいでワクワクしちゃうね」

も~!呑気なもんだよ、このマスコットは!

このマスコットはえみつん、私に命を吹き込んでくれた人

今は訳あってこんな姿をしているが、れっきとした人間だ

今、私たちは世界を救うという、重大な任務に付いているんだけど…

私が遅刻しそうという目先の危機の前ではそれすらかすむよ!!

「いや、比べちゃダメなレベルじゃない?」

えみつんが人の心を読んだような発言をするが今は無視

とにかく急げ―!!!

63 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:35:49.14 VC7Ajst+0 56/881


そこの角から曲がって一気に加速、そのまま上り坂を駆け上がれば…

走行計画を頭に描き、角を曲がろうとしたところ

「えっ?きゃあ!!」

「うわっ!」

急ブレーキをかけたから大激突はしなかったけど、それでもお互いその場で転んじゃった

「ご、ごめんなさい!お怪我はありませんか?痛いところないですか?」

大変だ!急いで起き上がり相手を確認する

「あいたぁ、大丈夫、ちょっとびっくりしたけど…」

相手の女の人は大丈夫そう、良かったよ~

先に立ちあがり、手を伸ばす

「本当にごめんなさい、立てますか?手をどうぞ」

「うわ~、これ思い出すねぇ、私誘われた時のポーズじゃん」

うん?あれ?この人って??

「でも、そんなに走ったら危ないよ、ま、穂乃果だからしゃあないか」

「私、地味だし、見えなかったのも悪いかな?まあカムフラージュは万全ってことにしとこう」

地味目の上着を着込み、これまた地味目の帽子を深々とかぶったメガネ少女

うん、間違いないね

「え、絵里ちゃん…」

今回の異変は、絵里ちゃん地味化事件のようです

64 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:37:40.46 VC7Ajst+0 57/881


っとそういえば、時間がヤバい

「うわっ、もうこんな時間!絵里ちゃんも急いで!」

「マジポン?ちょっと本気で走んないとまずいかな?」

2人で学院への近道である階段を上っていると

「うわ~、ごめんもう無理、穂乃果先行ってて~」

あれ?絵里ちゃんがばててる

「どうしたの?いつもは絵里ちゃんのほうが長距離早いのに」

「えー、そんなことないじゃん、私運動っていうか体を動かす活動自体を憎んでるくらいなのに」

おい、ダンス担当!恐ろしいことを言ってくれるな

もー、なんか調子狂うな~

「もう少しだよ、がんばって!」

「つ、辛いです…」

なんやかんやで何とかギリギリセーフ、生徒会長が遅刻じゃかっこ悪いもんね

65 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:40:26.06 VC7Ajst+0 58/881


絵里ちゃんと別れて、教室に入ると親愛なる幼馴染たちにご挨拶

「おっはよー!今朝はごめんねー」

「おはよう、穂乃果ちゃん、今日はギリギリセーフだったね~」

にこにこと挨拶してくれるこちらの天使はことりちゃん

とっても優しくて、おしゃれな子

穂乃果のことを信用してくれていつも助けてくれるんだ

「全く穂乃果は、いつもいつも注意しているのに、また夜更かしですか?」

うぅ、怒られた、こちらのちょっと怖い大和撫子は海未ちゃん

怒りんぼだけど、穂乃果のことを本気で考えてくれてる、もう一人の幼馴染

そして…私のファ、ファースト…いや、なんでもない!

「?どうしたんですか、穂乃果?」

私が一人で顔を赤くしていると海未ちゃんが覗きこんでくる

「い、いやぁ、走ってきたから暑いねぇ」

我ながら下手な言い訳をすると

「明日はゆっくり歩いてこられるように、私が電話してあげますから、ちゃんと起きてくださいね」

やふーーー!海未ちゃんのモーニングコールだよ!ラッキー!!

心でガッツポーズを決める私に

「良かったね、穂乃果ちゃん、明日はいい朝になりそうだね!」

うん、ことりちゃんにはバレバレだね、さすがフェミニン・オブ・フェミニン

隠してても解っちゃうね

そんなことを考える私に対してことりちゃんは

…穂乃果ちゃん解りやすくてかわいい!…

などと考えているなんて、私は知る由もなかった

66 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:42:50.73 VC7Ajst+0 59/881


「そういえば、今日は絵里ちゃんと一緒だったんだよ、珍しいよね~」

休み時間になって、なんとなしに2人に今朝の話をする

すると海未ちゃんがため息をつきながら

「またですか、絵里にも困ったものです」

え?

「まあまあ、海未ちゃん、絵里ちゃんはやるときはやるから」

すかさずことりちゃんがフォローを入れる、えぇ??

「いや?絵里ちゃんはいっつもしっかりしてるじゃん、なんて言うか完璧超人みたいな」

私がそういうと2人とも頭の上に「?」と浮かんでいるのが見えたような気がした

「まあ、その気になった絵里はたしかにその通り、カリスマ性すら感じさせますが…」

「普段の絵里ちゃんはどっちかっていうとのんびりというか、マイペースというか、そんな感じでしょ?」

「両極端すぎるのも問題です、普段ももう少ししっかりしてもらわないと、生徒会長たる威厳が……」

「まあまあ、海未ちゃん」

お小言スイッチの入った海未ちゃんをことりちゃんがなだめる

うーん、絵里ちゃんの中の人って一体どんな人なんだ?

67 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:44:30.80 VC7Ajst+0 60/881


次の休み時間、私は屋上に出て相棒のマスコットから聞き込みを開始する

「えみつん、絵里ちゃんってやっぱり…」

「そうだね、あれは完全に同化が起こってるね」

「そうだよね、いつもの絵里ちゃんとは全然違うもん」

海未ちゃんの時もそうだったけど、周りの人は前からそうだったみたいに振舞ってる

世界が改変されているんだ

「絵里ちゃんの中の人のこと、教えて」

えみつんはコクリとうなずいて、話し始めた

68 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:47:07.26 VC7Ajst+0 61/881


「絵里ちゃんを演じていたのは『南條愛乃』さん、声優だけど歌もすっごい上手で、歌を出せばオリコンチャート上位の常連なんだ」

「うわー、すごーい!穂乃果だって知ってるよオリコン、それの上位常連ってすごいね!」

「他にもラジオとかもすごい人気があるし、尊敬する先輩だよ」

南條さんも年上なんだ

「あと、なんといってもすっごい男前!」

ん?

「あ、あのぉ、えみつん?南條さんは女の人だよね?」

「やだな~、絵里ちゃんの声聞いたら解るじゃん、女の人だよ、決まってるじゃん」

んー、そうだよね

「でも、男前って言ったような…」

「そーなのー!すっごいかっこいいんだよ!あの流し眼は危険だね!女性なら間違いなくやられるよ!」

うーん、でももてるのは絵里ちゃんに似てるかも

「性格はさばさばしてるっていうのかな、自然体っていうか、なんかこう、気張ってない感じで、そういうところも男女問わずに人気な理由かな?」

「しかも決める所は、ばっちり決める、かっこいいよ!」

えみつん、南條さんのことホントに尊敬してるんだろうな~、なんか話しててわかるよ

「でも、朝会った絵里ちゃんはなんかこう、地味っていうか、覇気がない様な感じで、もてそうな感じしなかったけどなー」

私がそういうと、えみつんは渋い顔をして

「それが、やる気ないモードのときの南條さんだよ、なんてったって引きこもりが夢とか言っちゃう人だから…」

「ホントはすっごいおしゃれなのに、あえて地味な格好するし、もったいない」

あ~、確かに、朝の絵里ちゃんはそんな感じだったな~

「こんな感じかな?あと、南條さんって呼ぶと寂しがるからみんな南ちゃんって呼ぶよ」

寂しがり屋なんだ、そこも絵里ちゃんに似てるね

69 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:49:08.06 VC7Ajst+0 62/881


「よし、南條さんの情報は大体解ったとして、次は絵里ちゃんの状況を確認しなくちゃ!」

と私が言うと

「穂乃果……」

えみつんが驚いたような表情(と言ってもぬいぐるみなのでポーズだけだが)をしてこう言った

「あなた、成長したね!さすがだよ!」

ふふん、だってひとつ事件を解決したんだから、経験値だって獲得してレベルアップしてるんだよ!

そんなふうにいい気になっている私に、えみつんはこう続けた

「さすが、オトナの階段登っちゃっただけあるね!だって海未ちゃんとちゅー『うわーーっ!!うるさーーーい!!!それはもういいのーーーー!!!!』

やっぱりこいつは敵だ!確信したよ

70 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:51:59.22 VC7Ajst+0 63/881


お昼休みになると、私は愛する昼食もそこそこに3年生のクラスへ向かった

当然、狙いは絵里ちゃん

3年の教室の近くまでやってくると見慣れた後ろ姿

「おーい!にこちゃーん!」

「うわっ!ビックリした!ちょっといきなり大声で呼ばないでよね!」

頭の上のツインテールをぴょこぴょこさせながら怒ってくる

「にこちゃん、絵里ちゃん知らない?」

「私の話は無視かい…」

「知らないわよ、違うクラスの事なんて、大方いつものところにいるんじなゃない?」

ん?いつものところ?

「もっと知ってそうな奴に聞いたら?」

もっと知ってそうといえば

「でも希ちゃんもどこにいるかわかんないよ?」

すると、にこちゃんは何故か合掌しながら

「大丈夫、厄災は向こうからやってくるものよ」

その瞬間

「いやーん!穂乃果ちゃんやーん!どうしたん、こんなとこで?ウチ、ビックリしてわしわししちゃーう!」

「うっ、キャアアアアア〜〜〜〜!!!」

私のおっぱいはすごい勢いでハラスメントされた


71 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:55:13.95 VC7Ajst+0 64/881


「うぅ…ひどいよ希ちゃん…」

「ゴメンゴメン、穂乃果ちゃんに会えてついついテンション振り切っちゃった、テヘペロ」

テヘペロじゃないよ〜、も〜

「ところでどうしたん?、3年生の教室まで来るなんて珍しいやん?」

「なんか絵里に用事あるみたいよ」

と、にこちゃん、すると希ちゃんは

「えっ?何?ひょっとして告白?海未ちゃんというものがありながら、ウチのえりちに告白するなんて!これはわしわししないと!」

「あー、こう微妙にリアル感があってツッコミにくいんだけど…」

いや、突っ込んで!色々とツッコミ入れて!そして私を助けて!

「まぁ、そんくらいにしときなさい、穂乃果泣いちゃうわよ」

「はーい」

と言って希ちゃんは動きを止める

ありがとうパイセン!ありがとう世界のYAZAWA!!

「あれ?何かディスられてるような気がするわ」

そんな事ないよ!にこちゃん!

72 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:56:44.75 VC7Ajst+0 65/881


「えりちの居場所?よーし、占ってあげるよ!」

「いや、そんな事しなくても、どうせいつものとこでしょうが」

「やーん!にこっちがウチのアイデンティティを奪おうとする〜」

「してないし!って言うかあんたのアイデンティティって占いなの?」

ワーワー、キャーキャー

あー、何か始まっちゃった

これは聞き出すのは無理だね

しょうがない、自分で探すとしようか、と言っても心当たりは少ないけどね〜

73 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 00:58:36.87 VC7Ajst+0 66/881


私はとりあえず少ない心当たりの中から、可能性が1番高そうな場所、生徒会室へとやって来た

中に人がいるとすればドアは開いてるはず

ドアに手をかけると

「開いてる」

どうやら正解みたい

「失礼しまーす」

よく考えてみたら生徒会室なんて部活の活動申請しに来た時以来だよ

あの時の絵里ちゃんはちょっと怖かったな〜

でも今はすっごい優しいし、頼りになるし最高の友達だよ!

ちょっと緊張しながら部屋に入ると、いた!けど…

74 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:01:06.54 VC7Ajst+0 67/881


「………」

絵里ちゃんは生徒会室のパソコンの前で黙々と何かやってるみたい

「…絵里ちゃん」

私が呼んでも反応なし、無視してるわけじゃなくて全然気がついてない感じ

なるほど!きっと生徒会の仕事を1人でやってるんだ!

今はすっごい集中してるから穂乃果のこと気がつがないんだね!

人の見てないところで本気出すなんて、確かにこれはカッコいいよ!

なんて穂乃果が感心していると、突然えみつんが

「穂乃果、絵里ちゃんのイヤホン外してみ?」

なんて話しかける

「えみつん!喋っちゃダメじゃん!絵里ちゃんに見られちゃうよ!」

「いや、別に見られてもいいんだけど…」

「えっそうなの?」

「別にペナルティがあるわけでもないし、言ってなかったっけ?」

「聞いてないし!穂乃果今まですっごい気にしてたのに!」

「まぁ、知られてない方が色々都合いいからこのままでいいけどね〜」

なんてやりとりをしている間も絵里ちゃんは黙々とパソコンに向かっている

「それでは…、絵里ちゃんゴメンね!」

宣言と共にイヤホンを引き抜く、と

『♪〜♪♪〜』

「おーっとビックリ!穂乃果じゃん、ビックリさせないでよ〜」

パソコンからはゲームの音楽が流れ、よく見ると絵里ちゃんの手にはゲームのコントローラーが握られていた

「えっ?え〜〜!!」

「絵里ちゃんゲームしてたの?」

すると絵里ちゃんは慌てて

「しーー!!先生にばれちゃうじゃん」

「私から、貴重なレベリングタイムを奪わないでー!」

あぁ、穂乃果知ってるよ、こういうの廃人って言うんだよね……

75 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:03:25.95 VC7Ajst+0 68/881


「いやぁ、でも朝はやばかったよねー、さすがに遅刻するかと思ったよ」

あの後すぐ、絵里ちゃんはノルマ達成したとか何とかでゲームを終わらせ私のお話相手になってくれてるの

「最近はそんな事なかったのになー」

「さすがに5時までインしてたのはやり過ぎたかなー」

「5時?!そしたら絵里ちゃんほとんど寝てないじゃん、体壊すよ!」

「なんかね、私寝なくても平気な人なんだよねー」

「ダメだよ、早死にするよ?」

「私、刹那的に生きていくからいいよ」

だめだこのひとはやくなんとかしないと…

「私、こう、太く短く生きるわ!」

この言葉に私は、なんだかとっても悲しくなっちゃって

「そんなのダメ!私たちはずっとずっと…おばあちゃんになっても…その先も…一緒にいるんだよ!!だからそんな事言わないで!そんな、そん、な……
うぇ〜〜ん!!」

あ〜、泣いてしまった

我ながら情けない、でも絵里ちゃんが悪いんだ、そんな悲しい事、言わないで

すると絵里ちゃんは、私を優しく抱きしめて

「ゴメンね、穂乃果、冗談のつもりだったんだけど…」

「穂乃果はみんなの事、すっごく大事にしてくれてるんだもんね、私がひどい事言っちゃったから、本当にゴメン」

「私も穂乃果と同じ気持ちだから、ずっと一緒にいたいから、だから、ね?もう泣かないで」

優しく声をかけてくれる、ありがとう絵里ちゃん

76 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:06:59.82 VC7Ajst+0 69/881


絵里ちゃんは私が落ち着く間ずっと抱きしめてくれた

全く、自然にこんな事しちゃうなんて、ふふっ、これはモテて当然だね

「もう落ち着いた?大丈夫?」

「うん、ゴメンね、ありがとう、もう大丈夫」

2人が離れようとした、その時

「えりちー、穂乃果ちゃんき、た、ぁ…?」

「ちょっ希、急に止まんないでよ、なんな、の…ってちょっとあんたら何してんのよ〜!!」

77 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:08:06.10 VC7Ajst+0 70/881


ふむ、ここは冷静に状況を分析しよう

生徒会室の扉を開けると、そこではモテモテ生徒会長が涙目の女の子を抱きしめていた

はは~ん、穂乃果わかっちゃったよ、これは間違いなく…

78 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:09:53.29 VC7Ajst+0 71/881


アウト!黒!どう見ても告白なシチュエーションじゃん!

「ちょっ、ちが、『ふぇ〜ん!えりちが、えりちがぁ〜』

うわっ、希ちゃん泣いちゃった!

「希!しっかりしなさい!ちょっと絵里!希泣いちゃったじゃない!」

「えっ?えっ?わ、私のせい?」

「穂乃果!あんたもねぇ!」

うわっ!こっちにも火の粉が飛んできた!

「待ってなさいよ!今、海未とことりの事呼び出すから!」

「えっ?えぇ〜〜!!」

なに?この修羅場?っていうか

「ダレカタスケテー!!」

79 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:12:58.01 VC7Ajst+0 72/881


「で、結果こうなったわけで、別に皆様が思い描いておられるような事は全くなく…」

あの後、すぐに海未ちゃんとことりちゃんも合流し、生徒会室はさらなるカオスと化したのだが、チャイムの音と騒ぎを聞きつけた先生によって一旦は解散となった

で、現在は放課後、部室で穂乃果と絵里ちゃんの弾劾裁判が行われているところだ

元々今日は練習をお休みにする予定だったけど、にこちゃん裁判長の緊急招集によりメンバー全員がここに集まっていた

ちなみにみんなの様子はというと

「うぅっ、えりちぃ、メソメソ…」

うわぁ、希ちゃんまだ泣いてる、相当ショックだったんだねぇ

「………」

これは海未ちゃん、怖い、怖いよ、般若の形相だよ!

「そんな…ほのうみが…私のほのうみがぁ」

ことりちゃんは何を言っているのかな?

「は、花園、お姉さまたちの花園ぉ…」

花陽ちゃんは少し読む本を選んだ方がいいとおもうよ

「真姫ちゃーん、終わったら一緒にラーメン食べにいこー?」

「///べっ別にいいけど!」

まじえんじぇー

ずっとそのままの2人でいてね

80 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:14:04.37 VC7Ajst+0 73/881


などと私が違う事を考えているうちに裁判は粛々?と進み、裁判長の判決は

「2名を無罪とします」

さすが絵里ちゃん、はらしょーだよ!

81 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:16:36.24 VC7Ajst+0 74/881


なんとか疑いが晴れた夜

「ちょっとランニングに行ってくるね!」

いつもの日課のランニング中、近所の公園で見知った人影

「絵里ちゃん?」

どうしたんだろう?

誰かと話してるみたいだけど…

そういえば帽子もメガネもしてないなぁ

なんとなく見ていると、

「!穂乃果?」

絵里ちゃんが私に気が付いたみたい

「ビックリしちゃった!声かけてくれればいいのに」

と絵里ちゃんは慌ててこちらに振り返る

「?誰か、いるの?」

「いやぁ、実は歌の練習をしててね、ちょっと恥ずかしいね、見られると」

「大きな声出さなくても色々方法あるかなーって」

なるほど、えみつんに聞いた南條さんの性格的に人前でがんばるのはちょっと恥ずかしいのかな?

でもやるときはやる、ふふっ、かっこいいね

「あー、でもあれだね、あんまりなれない事するもんじゃないね」

「やっぱ、私は家の中が一番、ずっと家の中で生きていきたい、そしてエ○ルゼアより愛を込めていたいよ」

前言撤回します、やっぱりだめだこの人

82 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:18:26.49 VC7Ajst+0 75/881


しかし次の日、絵里ちゃんの残念な願いが叶えれることとなる

83 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:19:43.70 VC7Ajst+0 76/881


朝の目覚めは最悪だったよ

「うぇーーー!!なんでー?今日は海未ちゃんからのモーニングコールがあるはずだったのにぃ~!!!」

「ことりちゃんからも何の連絡もないし、穂乃果ついに見捨てられちゃったのぉ~~!!!」

と、こんな感じ

今日に限ってなんか誰も起こしてくれないし、お母さんも雪穂もなんで起こしてくれなかったの!

大急ぎで身支度を整え家を飛び出す、いつもの道を全力ダッシュ!!

なんかいつもより走りやすいよ、ラッキー

学院までの近道、昨日絵里ちゃんとぶつかっちゃた角も問題なくクリアーして何とか学院まで到達!

したんだけど…

84 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:21:26.76 VC7Ajst+0 77/881


あれ?なんで?門が閉まってる

時間は?うん問題ない、完璧な遅刻の時間だ

「そっか!今日は祝日!きっとそうなんだね!」

いやぁ、穂乃果おっちょこちょいだから忘れてたんだね~、まいったまいった

自分の中で納得していると

「いや、今日平日だよ」

と、えみつんの声

「…ファイトの日とか、」

「いや、そんなバイオレンスな記念日ないから」

「…そういえば今日ここに来るまで誰にも会わなかった気がするねぇ」

「うん、そうだったね」

「と、いうことは…」

ここまで言うと、えみつんはおもむろに両手のこぶしを胸の前へ

いやぁ、やめて~、言わないで~

「異変発生だよ!穂乃果!ファイトだよ!!」

「ファイトだよ!っじゃねーつーの!!」

誰もいない町に、私の心の叫びが響いた

85 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:23:34.81 VC7Ajst+0 78/881


誰もいないところにいてもしょうがないと一旦家に戻ってみると

「お父さん、お母さんも、お店はどうしたの?」

「別に、お店開けなくても大丈夫、今はネット通販があるし、やっぱり楽なほうがいいもんね」

「………」

「お父さんもこう言ってるし、こういうのもアリかなって」

なにこれ!そうだ雪穂は?

「雪穂~!」

雪穂の部屋に飛び込んでいくと

「もー!おねーちゃんうるさい!!」

雪穂は勉強机に座って勉強中だったようで、抗議の声を私に上げる

「私受験生なんだから、静かにしてよね!」

「雪穂、学校は?」

「学校?家でやることやれば問題ないじゃん、いちいち歩いて行かなくていいし、ネットで授業だって受けられるんだよ、こっちのほうが効率的だよ?」

「でも、お友達と会えないよ?寂しいじゃん!」

「SNSでも何でもあるから平気平気!じゃあ、私勉強しなくちゃだから、邪魔しないでね」

そういうと部屋から追い出されてしまった

お友達と会えないなんて…私はいやだな

確かに画面を見たら会えるし、お話も出来るかもしれないけど、何か違うと思う

「穂乃果、元気出して」

えみつんが優しく声をかけてくれる

「やっぱり、直接声をかけてくれるのがいいね…心がポカポカしてくるよ」

ありがとう、ちょっと元気出たよ

よし!気合入れていくよ!

「さあ、絵里ちゃんのところに行こう!」

86 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:25:11.30 VC7Ajst+0 79/881


絵里ちゃんの家は、私の家からそんなに遠くないんだ

でも絵里ちゃんの家に行くまで誰もいないから、なんだかすごく遠く感じる

いつもの倍以上に感じた道のりを歩き、絵里ちゃんの家にたどり着く

「海未ちゃんの時のこともあるから気を付けよう!」

えみつんが私に声をかけてくれる

うん!やっぱり誰かと一緒だと心強いね!

「そうだね、でもどうやって絵里ちゃんに会おうか?多分、電話とかしても出てこないと思うし…」

「うーん?そうだねぇ、おぉ!私、いいアイデア閃いた!!」

えみつんはそういうと私から離れて

『ピンポーン』

インターホンを押した

87 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:26:52.77 VC7Ajst+0 80/881


「…なんで!?普通じゃん!!全然いいアイデアじゃないじゃん!!普通だよ、普通!」

「しかも、相手が何してくるか解んないって自分で言ったばかりじゃん!思いっきり正面突破じゃん!しかも無防備!ノーガード!どこぞのボクサーもビックリだよ!!どーすんのさー!!!」

私がまくしたてると、えみつんは

「実は私も脳筋でした(キリッ!!」

「そんな、宣言いらないよ!」

そんなレベルの低いやり取りをしているうちに

「はーい!」ガチャ

「うわっ!誰か出てきたよ!こうなったら!!えみつんガード!!」

「コラー!盾にするな―!!わー!!」

「仕方ないんだよ、えみつん!これはコマンド『防御』なんだよ!装備品がえみつんしかないからしょうがないんだよ!」

などと醜い争いを繰り広げていると

「穂乃果さん!こんにちは!」

中から出てきたのは、絵里ちゃんの妹で雪穂の同級生、亜里沙ちゃんだった

88 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:29:50.95 VC7Ajst+0 81/881


「お姉ちゃんはずっと部屋にいます、いつも通りですけど」

えへへ、と笑いながら、私たちを絵里ちゃんの部屋へ案内してくれる

「μ’sの皆さんはお元気ですか?亜里沙は皆さんの大ファンですから、ライブや新曲をいつも楽しみにしてるんです!」

「みんなは家の中で全部出来るっていうけど、亜里沙は出来れば直接皆さんのライブを見たいです」

「だって、やっぱり同じ空間にいるってなんか違うと思うんです」

「亜里沙はよく変わってるねって言われるから、みんなにはあんまり解ってもらえませんけど…」

亜里沙ちゃんは寂しそうにほほ笑む

「亜里沙ちゃん!穂乃果も同じだよ!」

「やっぱり直接会って、直接話して、直接肌で感じてみないと解んない事いっぱい有ると思う!」

「色んなこと解ったら、やっぱり楽しいし、そうしたらみんなすっごい笑顔になれると思うよ!」

「それって素敵なことじゃないかな?」

思いっきりの笑顔で私は答える

すると、亜里沙ちゃんもすっごいかわいい笑顔で

「はいっ!!」

うん!やっぱりそうだよね!!ありがとう、亜里沙ちゃん!!穂乃果自信が付いたよ

89 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:31:03.79 VC7Ajst+0 82/881

亜里沙ちゃんは、2階の絵里ちゃんの部屋の前まで案内してくれると、

「それじゃあ、飲み物、準備してきますね、ゆっくりしていってください」

と言って1階へ降りていった

「それじゃあ、いくよえみつん」

「今度は盾にしないでよね」

とりあえず、えみつんの抗議を無視して扉を開く

「入るよ、絵里ちゃん」

部屋には拍子抜けするほど、あっさりと入ることができた

照明は付いておらず、カーテンも閉め切っているため薄暗い部屋

当の絵里ちゃんはというと、パソコンをするでもなく、かといって寝ているわけでもなく

ただ静かに座っていた

90 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:33:55.59 VC7Ajst+0 83/881


「いらっしゃーい、穂乃果、そして、えみつん」

「待ってたよ、待ちくたびれちゃったよ、下で騒いでるのとか聞いててなんか寂しくなっちゃったよ」

「結果、色々考えてたネタも披露できずとりあえず静かに座ってラスボス感を出すという方法に落ち着いたわけですが」

絵里ちゃんはほほ笑みながらそう言った

「今のあなたは誰?絵里ちゃん?それとも…」

「あー、穂乃果とは初めましてだね、私の名前は『南條愛乃』よろしくね」

やっぱり、このおかしな世界にするときに完全に同化したんだ

「南條さん、ここまでですよ、もうやめましょう?」

今回も、いつの間にか元の姿に戻っていたえみつんが南條さんに話しかける

「それは拒否!かな?絵里は私、私は絵里なんだから無理ってもんじゃない?」

「しかもこの世界、最高っしょ、家から一歩も出ずに全てすむ世界、当然余った時間はエオ○ゼア!サイコー!イエーイ!」

イエーイじゃないよ!なんか微妙にテンション低いイエーイだし!!

「南條さん!絵里ちゃんを返して!私たちの大切なお友達なんです!」

「絵里ちゃんがいたから私は、私たちはここまで仲良くなれたんです!μ’sのみんなが繋がっているのは絵里ちゃんのおかげなんです!私たちの絵里ちゃんを返して!!」

私は自分の思いを叫ぶ

「絵里ちゃん、最初は怖い人かと思ってたけど、本当はすごく優しい人」

「いつもみんなのこと見ててくれる私たちのお姉さん、とっても美人で、とってもかわいくて、とっても優しい、絵里ちゃんを返して下さい!!」

91 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:35:36.95 VC7Ajst+0 84/881


すると少し間をおいて

「いいよ」

えっ?今、何て?

「いいよ、絵里を返してあげる」

「ホントに!ありがと『ただし!条件付き』

「条件?」

「簡単だよ、すっごい簡単」

「私にできる事なら、なんでもします、言ってください!」

「ん?なんでも?」

「よし、交渉成立!では早速、絵里にキスしてくださーい」

………え?

「えぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!」

「ちょ、ちょっと待って!そんな『なんでも!するんでしょ?』

「キス、したらすぐに絵里を返してあげる、簡単っしょ?」

92 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:38:13.33 VC7Ajst+0 85/881


そ、そんな、絵里ちゃんのことは好きだけど、それはお友達としてであって、そんな、海未ちゃんのそれとはちょっと違うというか、たしかにすっごい美人だし、優しいし、かっこいいけど、そんな……

私がオーバーヒートを起こして固まっている間にも

「じゃあ、目、つぶるから、キスする瞬間絵里から離れるからね、じゃあどうぞ!!」

絵里ちゃんが目を閉じる

これってそういう流れ?そうなの?

なんだか頭が混乱したまま絵里ちゃんの肩に手をおき、ゆっくりと近づいて

もう少しというところで

93 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:39:18.77 VC7Ajst+0 86/881


『穂乃果』

…海未ちゃん!

94 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:40:19.88 VC7Ajst+0 87/881


「ダメ―!!ごめんなさい!やっぱり無理です!穂乃果は、穂乃果は海未ちゃんのだから!だから!他の事なら、他のことでがんばるから!ごめんなさい!!」

「絵里ちゃん!ごめんなさい!!穂乃果は!穂乃果は!!」

95 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:47:25.92 VC7Ajst+0 88/881


「あら、ざーんねん」

え?

「あーーっいいとこだったのに」

んん??

「愛乃、もういいでしょう、穂乃果がかわいそうよ」

「まあ、今時珍しい純愛JKが見れたから良しとしよっか」

「南條さん、趣味悪いっすよ、乙女な穂乃果ちゃんがかわいそうじゃないですか?」

え?なにこれ?え?これってもしかして

絵里ちゃんと横に立っている人、多分、南條さん、さらにえみつんまでもが声を合わせて

『大・成・功!デッデレー』

デッデレーじゃないよ!!!

96 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:52:13.43 VC7Ajst+0 89/881


その後、亜里沙ちゃんの持ってきてくれた飲み物を飲みながら、南條さんに今回のネタばらしを聞いた

なんでも南條さんと絵里ちゃんは最初は同化していたのだが、昨日異変を起こした直後、南條さん自ら絵里ちゃんの体を離れたということだ

私が公園で絵里ちゃんを見かけたのは、その直後、南條さんと話しているところだったらしい

理由は解らないけど、多分南條さんは一歩引いた視点から『絢瀬絵里』というキャラクターを見ており、自分がなりきるというよりも娘のような感覚で絵里ちゃんを育ててきたからではないかと自分で分析していた

あとは暗がりで、自分は隠れた状態で、絵里ちゃんにアテレコしていたそうだ

「私の演技力もなかなかなもんでしょ」

まったく、完全に騙されたよ

ちなみにえみつんはこの部屋に入った段階で南條さんを見つけており、なんか面白そうだから放置していたと言っていた

あとで希ちゃんに呪いのおまじないを教えてもらおう

97 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:54:38.74 VC7Ajst+0 90/881


全てのネタばらしの後、南條さんは

「それじゃあ、帰るね」

あっさりと帰ると言い出した

三森さんがあれだけダダをこねていたから何か拍子抜けしちゃうな

「あ、でも、帰る前に絵里と2人で話がしたいな」

私とえみつんはうなずき部屋を出た

色々話したいこと、あるだろうしね

98 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:56:47.07 VC7Ajst+0 91/881


愛乃は照れ隠しの笑いを交えて絵里に話しかけた

「いやぁー、こう実際本物と会えるなんて、すごいね、世の中何があるかわかんないもんだよねー」

「…うん、すっごいかわいい、こりゃもてるわ」

絵里は微笑み返し

「ふふっ、ありがとう、あなたもとっても素敵よ、私をこんなに素敵にしてくれてありがとう」

「私のために無理までしてくれて、ごめんなさい、辛かったでしょう?」

「辛くなんてないし、だって絵里のためならなんでもできるよ、私、好きだもん絵里のこと」

「///ちょっ、もう、やっぱり女たらしなのって本当なのね」

「あれ?なんかした?私」

と、天然ジゴロを発揮するが、すぐに愛乃の表情はやさしい笑みに変わる

99 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 01:59:10.92 VC7Ajst+0 92/881


「私うれしいよ、だってここにいる絵里は本物なんだもん、私が思っていない発言しちゃうし、本当に生きてるんだって」

「μ'sっていうグループのみんなが楽しく生きて行ける世界がここにある、そのお手伝いができた、これってすごくね?」

「…だから泣かないよ…っ泣かないってだめだー!うぇーん!!」

ついに愛乃の目から涙があふれた

「ありがとう、愛乃」

「私しあわせよ、こんな素敵な人に想われて、すっごい大事に育ててくれて、愛乃みたいな人が、いっぱいいるんでしょう?それってすごい素敵な事よね、本当にありがとう」

愛乃の涙は止まらない

「うえーん、私の絵里がタラシになったー!うわーん!ありがとう、好きだー!」

「また会うときはもっともっとおしゃれさせてあげるから!もっと歌上手く歌わせてあげるから!ダンスだって頑張るから!だから、だから…」

「うん、私だってもっと素敵になって、みんなに会えるのを楽しみにしているわ、だから、またね」

そう言った絵里の目からも、同じ涙が流れていた

100 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 02:02:26.57 VC7Ajst+0 93/881


絵里ちゃんに呼ばれ部屋に戻ると南條さんはすでに帰った後だった

「2人とも、ありがとう、私、ちゃんとありがとうって言えたわ」

「この記憶も明日には無くなってしまうのでしょう?少し残念だけど、愛乃の気持ちが消えるわけではないから、寂しくはないわね」

ううっ、さすが絵里ちゃん、オトナの女って感じがするよ

絵里ちゃんはふふっと笑って

「それに穂乃果があんなに海未のこと好きだって解ったし」

「たしか、私海未ちゃんのだからーって言ってたわよね、だめよ、私たちまだ高校生なんだから、節度ある交際を心掛けないと」

ヴェェェェーーーー!!!私そんなこと言ってたの!!

「いやあああ!!!お願い忘れてええええ!!!!」

のたうちまわる私をおいて絵里ちゃんは

「新田さん、穂乃果の事、よろしくお願いします、私たちの世界を守ってください」

えみつんに頭を下げる

するとえみつんはにっこり笑って

「うん!でも大丈夫!だって穂乃果が一緒だから、何だってできるよ!」

「何かあれば私たちを頼ってください、私も愛乃も必ず助けに行きますから」

「ありがとう!絶対、やり遂げてみせるよ!18人全員でね!」


気が付けば外は夕暮れ、全てが金色に輝くとても綺麗な夕暮れだった

101 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/16 02:03:21.27 VC7Ajst+0 94/881


第2章「愛しのエリー」 完

107 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:42:07.41 MEI9Meer0 95/881


第3章「青空の下、にこやかに」

108 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:45:05.63 MEI9Meer0 96/881


……来週の朗読会の……


麗らかな陽気に爽やかな風

お昼に食べたパンの余韻


……かの暴虐な王を……


耳に聞こえてくる心地よい子守唄

はぁ、きもちいいねぇ

私、高坂穂乃果はうつらうつらとしながら、ぼぅっと外を眺めていた

校庭では、3年生の体育の授業が行われているようで、見知った顔もちらほら見える


……メロスには竹馬の……


あぁ、あの金髪さんは絵里ちゃんだ、遠くでもすっごく目立つなぁ

しかも足も速い、絶対完璧超人だよ、すごいなぁ


……国王は乱心か?………


希ちゃんだぁ、そうだ、実は希ちゃんもなんでも出来るんだよねぇ、

ほのかしってるよぉ〜


……私は命乞いなど………


あぁ、ねむい、もうげんかい〜、ねむい〜〜、にこちゃんだぁ〜、あぅぁ〜


……3日で私は帰って………
「…っていうか遅!遅すぎるよ!!」

109 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:46:32.23 MEI9Meer0 97/881


いきなり立ち上がり、非難の声をあげる私に教室の全員が注目する

「高坂…よくわからんが一応こういう話だから、まぁ我慢してくれ」

という先生も苦笑い

うぅっ、みんなの視線が痛い

ことりちゃんも困った顔で苦笑い

海未ちゃんは、大きなため息をついている

「い、いやぁ、すみません」

私は謝り着席する

もう!にこちゃんのせいで恥かいたよ!

だってそうじゃん!みんなゴールしてんのになんでまだコースの半分くらいなの!そりゃツッコミたくもなるよね!

一気に目も覚めたよ、恥ずかしいなぁ

110 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:48:06.60 MEI9Meer0 98/881


……濁流は、メロスの……


目が覚めたと思ったのも束の間、しばらくすると、また強烈な眠気が襲ってきた

こんどこそダメだ〜


……午後の灼熱の太陽……


私はなんとなしに、再び外を見る

すると今度はサッカーをしてるみたいだ

あぁ〜、のぞえりコンビはすごいなぁ、息もぴったり、えになるねぇ、


……わたしはここだ………


あっ、にこちゃんのまえにボールがきた、まわりにだれもいないしければゴールだねぇ〜

と思った瞬間

ズッテ〜ン!!

思いっきり空振りした挙句、勢いで頭からひっくり返った

「えー!!鈍臭っ!鈍臭すぎるよ!!それはないよ!!」

111 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:49:12.03 MEI9Meer0 99/881


「あー、高坂?」

「///はい…」

「感情移入してくれるのはいいが、もう少し寛大な心で見てもいいんじゃないかな?」

教室の静けさはみんなの爆笑の声へと変わった

もう!にこちゃんのバカ〜!!

112 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:50:33.76 MEI9Meer0 100/881


授業も終わり放課後

怒りんぼの海未ちゃんのお小言と、優しい天使のことりちゃんのフォローを聞きながら、部室に向かっていると、

「あれ?にこちゃん?」

にこちゃんが空き教室に入っていくのが見えた

少し迷ってから

「ゴメンね2人とも!穂乃果忘れ物しちゃった!先に部室行っててね」

と伝え、にこちゃんを追った

113 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:53:24.70 MEI9Meer0 101/881


空き教室を覗き込むと、

「あっ、にこちゃんだ…」

教室の端っこに、にこちゃんがいるのが見えた

「……ブツブツ」

ん?何か言ってるねぇ、私は耳をすませてなんとか聞き取ろうとする、すると

「私はかわいい、私はできる子、私は面白い、私はスター」

どうやらにこちゃんはいわゆる自己暗示をかけているみたい

ライブの前によくやってるやつだ、見たことあるよ

これは声をかけないほうが良いね、と思ってそっと教室を出ようとしたところ

「ヘックチ‼」

バッグのマスコットからかわいいクシャミが聞こえた

えみつんを見ると

テヘペロ❤

うわっ、ムカつく!

「穂乃果?」

にこちゃんが声をかけてきた

「いたなら言ってよ、びっくりするじゃん」

「ゴメンね、にこちゃん、邪魔する気は無かったんだけど」

「全然、大丈夫!ただネタ帳の読みこみしてたから危なかったかも」

ネタ?

「出落ちの一発ネタだから、バレたら面白くないでしょう?まぁ、そのうち見せるから、楽しみにしててね」

あれ?にこちゃんてこんなだっけ?

「ライブも近いし、今日はしっかり打合せするから、気合い入れなさい」

「う、うん、そうだね」

なんとも言えない違和感とともに私は部室へと向かった

114 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:56:11.74 MEI9Meer0 102/881


にこちゃんと一緒に部室の前まできたとき、にこちゃんが

「今日は穂乃果もいるから、いつものでいこうか?」

「え?い、いつものって?」

「基本のアレよ!いくよ!」

というとにこちゃんは扉を開け一言

「邪魔するわよ!」

私もにこちゃんに続いて入ろうとすると先に来ていた希ちゃんが

「邪魔するんやったらかえってや〜」

えっ?

「ほなまた来るわー」

と言ってまた出て行く

「えっ?な、なんで〜!?」

私が叫ぶと

…ぷっ、くっくっ、

『あっはははは』

部室内からみんなの笑い声

「やるやん!穂乃果ちゃん、タイミングばっちりだね」

「いわゆるお約束、ってやつでもキチンとやればこんなに笑いを取れるのよ!」

ドヤ顔でにこちゃんが解説する

「さっすが穂乃果ちゃん!凛も負けてられないよ!」

何故かみんなにすごい褒められてる、なんで?

「みんな揃ってるね!それじゃあ早速だけど次のライブの打合せ、いくよ」

私の混乱がどんどん酷くなっていく中、にこちゃんから最後の爆弾が投下された

「私たち、『お笑い研究部』の最高の舞台のために!!」

『おーーーっ!!』

…?え?えぇぇぇぇぇ〜〜〜!!!

なにこれ?イミワカンナイ!ダレカタスケテー!!

私は心の中で思いっきり助けを求めたが、帰ってきた答えは、とても小さな

「ファイトだよ!」

という、えみつんの声のみ

「ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」

という、私の心からの叫びは

「なに?穂乃果、シュール路線に変更?」

なんて言ってる部長の声にかき消されていった

つ、辛いです……

115 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 16:58:50.99 MEI9Meer0 103/881


「今回のライブはユニット毎になるから、ネタ合わせとかはそれぞれキチンとやっておくこと」

「ユニットはこの前組んだ通り、トリオ3組になるから」

この状況でトリオって聞くと、なんかやだな…という私の心とは裏腹に打合せは進んでいく

「それじゃあ、それぞれのトリオの名前と方向性を発表していこうか」

そうしてにこちゃん部長の司会のもと、各ユニットの発表が行われた

116 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:07:58.80 MEI9Meer0 104/881


「まず、穂乃果、ことり、花陽の3人」

えっ私?っていうかこれってprintempsだよね?

なんて私が考えていると、

「私たちのトリオ名は『ぷりんてんむす』だよ!」

と、花陽ちゃんがちょっとモジモジしながら発表した

ぷ、ぷりん?てんむす?いやーーーー!!!それって間違いネタの名前じゃんか!やめてーー!

しかし、私の心の声は誰にも聞こえるはずもなく、花陽ちゃんの説明は続く

「このユニットは元気な穂乃果ちゃんを癒し系ことりちゃんがまさかの毒舌でいじり倒し、そしてオドオドしながら私がツッコミを入れていくっていうスタイルで勝負していこうと思うんだ」

…あれ?ちょっと面白そう

「さすがね、私と同等の知識を持つ花陽がブレーンとなっているだけあるね」

花陽ちゃんは、えへへと笑う

「ことりもとっても楽しみ!穂乃果ちゃん、花陽ちゃん、頑張ろうね!」

「うんっ!」

「お、おぅ」

えっ?これ頑張らなくちゃいけないの?

117 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:10:07.67 MEI9Meer0 105/881


「さぁ次は、希、海未、凛の3人だね」

あー、LillyWhiteだね

「はーい!今度は凛が説明するにゃー!」

「凛たちのユニット名は『白百合三姉妹』にしたよ!かわいいでしょ?」

見ると海未ちゃんがちょっとドヤ顔をしてる、名付け親、海未ちゃんなんだ…

「凛たちはね、希ちゃんと凛が自由奔放にやりたい放題やるけど、天然海未ちゃんが最後は全部持ってっちゃうっていう流れなんだ!」

「もうオチも考えててね、海未ちゃんが山頂アタックです!!っていって凛たちを連れて行っちゃうんだよ!絶対面白いんだから!」

ん?あれっ?なぜか既視感が…

にこちゃん部長の評価はというと

「なるほど、希と凛のアドリブ力と海未の天然、求められるスキルはとても高いけど、ハマった時の爆発力は計り知れない」

「虎穴に入らずんばなんとやら、やってみる価値はあるね!いこう!」

「にゃー!がんばるよ!」

「カードも行けるって言ってるよ!」

「希、そのカードってラブカプラスですけど?」

「希ちゃん、ぶっ込んでくるにゃー!」

うわー、これ絶対面白いよ、残念ながら

118 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:12:12.25 MEI9Meer0 106/881


「さぁそして、最後はこの私!大銀河宇宙No.1コメディアン世界のYAZAWAにこにーとその一味の登場よ!」

「さすが、にこね」

「……クルクル」

「って雑!反応雑なんだけど!真姫ちゃんに至っては反応すらしてないし!」

穂乃果知ってるよ、これお約束ってヤツだね

「ウフフ、ゴメンねにこちゃん」

真姫ちゃんが可愛く笑って謝る

続いて絵里ちゃんが説明にはいる

「私たちは一見スタイリッシュに見せて中身はコミカルっていう感じのビビッドな笑いを目指していくわ」

「トリオ名もそこからとって『ビビッドビット』にしたの、ハラショーでしょ?」

あーっ!惜しい、惜しいよ絵里ちゃん!なんかちょっと多かったよ!

「コントの流れとしては、にこがウザい感じのボケをかますところに、私がポンコツなボケを被せる、そこに真姫の辛辣なツッコミで全てを吹き飛ばすの」

「最後のセリフは当然いつもの…」

「イミワカンナイ!」

ふふんと笑ったにこちゃんは、満足げにうなずき

「これで会場は爆笑間違いなし!私達コント集団『μ’s』の評価も大幅アップ!」

「夢の舞台『ラブコント!』だって夢じゃないわ!」

ラブコント?うわぁ、出たくない…

そんな私の思いとは裏腹にみんなのテンションは最高潮、そして

「それじゃあ、みんな!気合い入れていつものいくよ!」

いつもの?いやな予感が…

「にこにこ七拍子!せーの!!」

『にっこにっこにー❤にっこにっこにー❤にっこにっこにっこにっこにっこにっこにー❤』


もういやーーーー!!!


119 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:14:01.57 MEI9Meer0 107/881


地獄の練習時間が過ぎ、下校時のこと

今日は海未ちゃんとは別練習となったため、ことりちゃんと2人で帰宅

毒舌とガールズトークでボロボロにされた私はことりちゃんと別れた後、近くの公園で精神回復を兼ねた現状確認を行う

「えみつん、一体なんなのこれ?なんかスクール芸人とかラブコントとか、恐ろしいことになってるんだけど」

「すごいよね!ある意味すごい面白すぎるんだけど!ウケる!」

「ウケないよ!なんなのあれ!ことりちゃんとかの毒舌が心にグサグサきてヤバいんだけど!」

「覚醒したね!ことりちゃん!まるでうっちーみたいだよ」

「そんな知らない人はいいの!今はにこちゃんの中の人!もう穂乃果いや〜!」

穂乃果の心の叫びにえみつんは

「ラブコント見たいな…」

とかつぶやきつつも、答えてくれた

120 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:15:46.04 MEI9Meer0 108/881


「にこちゃんを演じているのは『徳井青空』みんなはそらまる、って呼ぶんだ」

「すっごい頑張り屋さんで、苦手なことも頑張って練習してて、もう見てる方が感動しちゃう!」

「それにね、すっごいしっかりしてるから司会進行とか、1番上手いんだよ」

「それにすっごい面白いの!もうこんなに面白い人間この世にいるんだって思うくらい」

「なんか昔の夢が漫画家かお笑い芸人って聞いた事あるし」

本人が面白いのはいいけど、こっちが付き合わされるのはちょっと…

「でもμ’s、あ、これ私達のほうね、みんな基本的にキャラが立ってて面白いからそらまるがいるとすぐに芸人って言われてたなぁ」

なるほど、確かに三森さんとか南條さんとか、それにえみつんも、なんかやたらとキャラ強いねぇ、うん、一応聞いておこうか?

「一応聞くけど、μ’sってちゃんとアイドルしてるの?大丈夫?」

少し間をおいて

「多分、大丈夫だよ!きっと」

力強く曖昧な答えが返ってきた

心配なんだけど…

まさかこっちが本当の世界とかないよね

121 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:18:00.92 MEI9Meer0 109/881


「こう、欠点とか弱点みたいのは無いのかな?」

すると、えみつんが真面目な声で

「あるよ」

なになに、この雰囲気、結構重要情報?

「そらまるの欠点、それは…」

「それは…?」

「死ぬほど運動神経が悪いんだっ!!」

「な、なんだってー!!とかならないから、何それ?」

「いやでもホントすごいんだよ、階段も普通に降りられないくらいなの!でもそれがチョーかわいいの!」

「そんだけ運動苦手なのにダンスとかすっごい頑張って、本当に上手くなって、いっつも笑顔で、本当に頑張り屋さんなの」

「そらまるの周りはいっつもみんなが笑顔なんだよ」

みんな笑顔、にこちゃんと一緒、すっごい頑張り屋さんなのも一緒だね

よし、にこちゃん!もう少しまっててね

122 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:20:24.89 MEI9Meer0 110/881


次の日の放課後、日直の仕事を終わらせ、ことりちゃんのつらいつらい毒舌ツッコミに怯えつつ1人部室へいくと、

「来たわね、穂乃果」

にこちゃんが1人で待っていた

「にこちゃん1人?みんなは?」

「ちょっと席を外してもらってるの、穂乃果とどうしてもお話がしたくって」

?なんだろう、改まって?

123 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:24:17.62 MEI9Meer0 111/881


「話は海未たちから聞いたわ…」

ん?なんの話かな?

「昨日の授業中、居眠りしながらも『走れメロス』にするどいツッコミを入れていたそうね」

え?昨日の…あぁ!いや〜寝ぼけててついつい大声で叫んじゃったやつだね

「海未ちゃんなんでそんな事言うのさ〜、恥ずかしいじゃん」

しかも叫んだ理由はにこちゃんのあまりの鈍臭さにビックリしたからだ、とは本人には言わないでおこう

「ふっ、やはりあなたは私の見込んだ通り、選ばれた人間のようね!」

えっ?私、何に選ばれたの?

「無意識に人を笑顔にしてしまう、そんな才能」

えっ?何それ?それって恥かく事が多いっていう事?

「思えば最初の講堂での漫才、あの時からあなたは違っていたのかも知れない」

えーっ、私たち漫才やったの?そりゃ誰もこないよ

「そして笑研に初めて来た時のボケ、忘れない」

私何したんだろ?

「まさかあの絵里に対してあんなツッコミをするなんて、普通殴られるよ」

殴られるほどの事ってなに?!

「初めての9人での単独ライブ、入学説明会に来た人たちにみせた、あのコント」

うわぁ、コントやっちゃったんだ

「あまりの爆笑で救急搬送7人、笑いすぎて体調を崩した人21人、なつかしいね」

大惨事だね、廃校待ったなしだよ

「私1人では成し遂げられなかった事ばかり、穂乃果には感謝してる」

出来れば成し遂げない方がイイものばかりだね

「でも、やっぱり自分が一番人に笑顔を届けたい、私の事を見てニッコリ笑顔になって欲しいの」

はい、どうぞどうぞ

「だから、お願い、勝負して欲しいの!」

なぜそうなる!

「判定はμ’sのメンバー、別に負けたからペナルティ、とかないから」

それじゃあ、今この瞬間参ったしてもイイかな?

「ただ、私の中で区切りが欲しいだけ、少しだけ、付き合って」

ここで断ったら壁突き破ってみんなでてきたりしないかな?

とか思いながらも、さすがにこの空気で断る勇気もなく

「うん、わかったよ」

と答える私であった

124 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:26:03.27 MEI9Meer0 112/881


「ちょっと!えみつん!どうしよー!」

現在、みんなを呼び出す準備兼ネタの準備の時間を利用し緊急の作戦会議を開催中である

「そらまるさんなら兎も角、私ネタとかないし」

泣きつく私に、えみつんは

「もうこうなったら最終兵器、出すしかないかな?」

「えっ?なになに?なんかいいネタあるの?」

おおっ?希望の光?と思いっていた自分を殴ってやりたいと思う事をこのぬいぐるみは発言する

「数を数えて、3の倍数になった時だけ海未ちゃんとちゅーすんの!」

「すごいな私!画期的!誰も得しかしない、まさに笑顔の錬金術!」

………

「誰も得しないよ!それどころか関係者すべてが大怪我だよ!黒歴史確定だよ!!」

こいつは敵どころじゃない!ジェノサイダーだよ!!

125 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:26:49.13 MEI9Meer0 113/881


大した解決策もないまま、時間となった

幸か不幸か私は後攻、まずにこちゃんから簡易ステージに上がり


そして事件は起こった

126 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:31:31.58 MEI9Meer0 114/881


「にことネタバトルとは、穂乃果は大丈夫でしょうか?」

「穂乃果ちゃんはどっちかというと、天然よりだからね、タイマンバトルではにこっちのほうが有利かも知れんね」

「楽しみだにゃー!」

リリホワ組は完全に観戦モード、呑気なもんだよ

「穂乃果ちゃんも、にこちゃんも、今日もかわいいよぉ、突っ込まれた時の焦った表情が特に…」

「一体どういうネタで勝負するの?にこちゃん、先攻ということは会場の空気の把握も重要、いったいどんな入りで入ってくるか、それにより……………」

Printempsは自由だなぁ、私がいてもそうだろうけど、っていうかことりちゃん…

「見てみて、真姫、今度のハッピーセットのおもちゃは歴代M-1王者のリアルフィギュアだって!ハラショー!かわいいわ」

「いや、エリー、正気を保って、これのどこにかわいいの要素がはいってるのよ?」

真姫ちゃんがんばって、絵里ちゃんのポンコツを治療してあげて!

などとそれぞれに開始を待ち構えていると

「さあ、それじゃあ行くわよ!」

にこちゃんの声により勝負は開始された

127 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:35:05.31 MEI9Meer0 115/881


開始直後、にこちゃんが渾身のあのポーズの構えをつくったとき

!?うわっ!この感じは!

でも、もう遅い!

「さあみんな!一緒に!せーの…」

『にっこにっこにー❤』

その直後

「まっきまっきまー❤」

わお!真姫ちゃんかわいい、でもどうした?

「にゃーんにゃーんにゃーん❤」

「ちゅーんちゅーんちゅーん❤」

うひゃあかわいいおやつにしたい

他のみんなも同じような状態、っていうことは海未ちゃんも!!

「うっみうっみうー❤」

ズッキューーーン!!

ふぁぁ!なにこれ?かわいいとか!ちょっとセクシーとか!そんなちゃちなもんじゃねえ!!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ!!うひょ――!!

128 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:37:05.14 MEI9Meer0 116/881


「こら!穂乃果!!なに変なテンションあげてんの!!」

えみつんの声が聞こえ我に返る

「はっ!わたしは しょうきに もどった!!」

「もういいから、とにかくこの状況何とかしなくちゃ!!」

そうだ、にこちゃんを何とかしないと!

にこちゃんを見ると

「………」

あれ?何かじっと自分の手を見てる、次にキョロキョロし始めた、あっ!こっち見た

「?穂乃果?と、μ’s?ここは部室?」

なんか、このにこちゃん、何もしてないのになんかすっごい面白いんだけど

なんて思っていると

「ってことは、同化してるの?私!おおっ凄い!」

「そらまる!」

えみつん(小)が声をかける、

「あれ?えみつん?同化するキャラまちがってるよ、それ!!」

「これはいいの!それより早くにこちゃんの体から離れて、元に戻してあげて!」

129 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:38:35.98 MEI9Meer0 117/881


「…いや」

あれ?そらまるさん

の様子が変わった?

「私と、私たちの努力の結果!こうなれたんでしょ?神様が、がんばったご褒美を私たちにくれたんだ!」

「えみつんのお願いでも、これは聞けないよ、だって私がんばったんだよ!嫌なことでも逃げたことない!みんなが喜んでくれるから、みんなの為にがんばってがんばって!」

「そしたら、にこになれて、その上お笑いも出来るなんて!最高のプレゼント!」

「ここは私の夢の世界、私はここで生きていくんだ!」

逃げる気?でも、正直運動神経がそらまるさんのままなら、穂乃果は負けないよ

でも、そらまるさんは何故か余裕の表情で、こう言った

「いつぅ~、にこがぁ~、にこだけにしかぁ~、同化してないと思った?」

いらっ、むかつく、いつものにこちゃんに似てるのが、またムカつくね

130 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:40:11.52 MEI9Meer0 118/881


でも、その言葉を聞いたえみつんは

「え?な、何を?そんな、まさか…」

あれ?ひょっとしてヤバそうな感じ?

「えみつんは、ボクの能力知ってるよね?」

「ボクの『トイズ』の力…」

ボク?あれ?なにが…

私の混乱をよそに、そらまるさんはポケットから金属のヘラ状のものを取り出した

「この部室にはパソコンもあるし、今はネットで何でもできるし、便利だよね!」

すると、えみつんがホントの姿に戻るや否や

「逃げるよ、みんなも部室から出して」

何かわかんないけど、たしかに様子がおかしい

私とえみつんは急いでみんなと共に部室を脱出、そして部室を出る瞬間

「喰らえ!ボクのトイズ!ダイレクトハック!!」

手の金属をパソコンに突き刺すのが見えた

131 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:41:48.42 MEI9Meer0 119/881


廊下に飛び出た私は、身構える

えみつんの様子からすると結構大掛かりな事が起りそうな感じ、しかもヤバいっぽいやつ

「……」

えみつんも私と同じく、周囲をキョロキョロと見まわしている

「……」

「………」

「…………」

えーっと、

「……………」

「なんにもおこんないねぇ」

私が言うと

「なんにもおこんないねぇ」

と、えみつんが返す、こだまかな?とか考えていると

「やられたー!!そらまるめーーー!!!」

そう言うとえみつんは部室に戻る

私も追いかけて中に入ると

「窓が開いてる!あそこから逃げたんだ!!」

見ると部室の窓が開いている

ここは1階だから簡単に出られるんだ

「追いかけよう、手分けして探さなきゃ!」

132 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:45:15.80 MEI9Meer0 120/881


えみつんが飛び出す

私すぐに後を追う、するとすぐに

「作戦変更、一緒に追いかけるよ!」

「なんで、見失っちゃうよ?」

「大丈夫!」

というえみつんの視線の先には…

そらまるさんがドタドタと走っているのが見えた

「おそっ!遅すぎるよ!!なんでまだそこなの!!」

「多分窓から出るのに時間かかったんじゃないかな?そらまるだし」

なんだろう、すっごい応援したくなる人だよ、ほんと、にこちゃんにそっくりだね!!

133 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:52:30.84 MEI9Meer0 121/881


追いかけっこはすぐに終わった

あの後そらまるさんが曲がり角を曲がり切れず、ひっくり返ったところを私たち2人で取り押さえ、そのまま部室へと連行したのだ

「ムスー」

あー、むくれ方もそっくりだなぁ

そんな風に思っていると

「そらまる、もういいでしょ、にこちゃんを帰してあげて」

えみつんが話しかけた

「みんなそらまるが頑張ってるの知ってるよ?そうしてがんばったから、この世界が動き出して、そらまるが大事に、大事に育てたにこちゃんは、みんなのことすっごい笑顔にして、みんなを幸せにしてるんだよ」

「それってすごい奇跡だよね」

引き継ぐように私は

「私たちはにこちゃんに大事なこと、いっぱいおしえてもらったの、今私たちがアイドルとしてここにいるのは、にこちゃんのおかげ、私たち、そしてファンのみんなが笑顔でいられるのは、にこちゃんのおかげなんです!!」

「だから、お願いします、私たちから笑顔を奪わないでください」

「笑顔…」

そらまるさんはシュンとしつつ

「でもっ、でも!ここで別れたら…!にこが遠くに、とおく、に……ぐすっうぅ…」

そっか、にこちゃんとずっと一緒にいたいんだ、私がそんなことを考えていたその時

134 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:53:17.13 MEI9Meer0 122/881



『なーに私の前で湿気た面みせてくれてんのよ!』


135 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:55:34.60 MEI9Meer0 123/881


えっ?今のって!?

見ると、えみつんもそらまるさんも私と同じようにビックリ顔

すると

「はー、もう、しかたないなぁ」

そらまるさんがため息をついたと同時に

「やっぱ、この世界にはにこがいないと、だめなんだねぇ」

というと、にこちゃんの体からもう一人の人影が離れていく

136 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:58:04.66 MEI9Meer0 124/881


にこちゃんの体からそらまるさんが完全に離れると、2人はにっこり笑って

『にっこにっこにー❤』

おおー!完璧だ!

「やるわね、さすが私の中の人ね!」

「こんにちは、にこちゃん、私、ちゃんとにこになれてたかな?」

「なるもなにもあなたは私だし、私はあなたよ、今までずっとありがとう…結構苦労したんじゃない?」

「大銀河宇宙No.1アイドルだしね、でも頑張ったよ、苦手なダンスも頑張ったよ、だってにこになりたかったから」

「みんなににこの良さを伝えたかったから、どうだったかな?」

「決まってるじゃない、あなたの頑張りがあって、認められたから私がここにいられるのよ」

「だから自信を持って!あなたも大銀河宇宙No.1なのよ!」

見るとえみつんも泣きながら「うんうん」とうなずいている

137 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 17:59:39.67 MEI9Meer0 125/881


「ううっ、うれしい」

「…っ、泣いてる暇なんてないわよ、アイドルの世界は弱肉強食、少しの隙が没落につながるの、負けてられないわ」

「これまで以上にもっともっと気合い入れないと、No.1アイドルの座を守れないわよ!」

「それでこそにこだね、そうだね、これで終わりじゃないんだからもっともっと上を目指さなくちゃ!」

「これからも頼むわよ、あなたと私で、一緒に高みを目指すんだから!ぐずぐずしてると置いて行っちゃうわよ!」

「うん、ありがとう!」

「…こちらこそ、ありがとう、あなたじゃなかったら矢澤にこは存在出来なかった、あなただから私は頑張れた」

「あなただから、これからも頑張っていける」

「こっちもそうだよ、徳井青空は矢澤にこがいたから頑張れたんだよ、そしてこれからも、ずっとずっと、矢澤にこのかわいさをみんなに伝えるために頑張っていくんだ!」

「さすがね、そらまる」

「名前で呼んでくれてありがとう、にこ」

「さあそれじゃあ、景気づけに一番かわいいの、いくわよ」

「さあこい!」


138 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 18:00:28.69 MEI9Meer0 126/881


『にっこにっこにー❤』

『大銀河宇宙 No.1!!』

「スーパーアイドル 矢澤にこ!」

「スーパーアイドル 徳井青空!」



『もっともっと、みんなを笑顔にしちゃうにこ❤』



139 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 18:01:16.06 MEI9Meer0 127/881


にこちゃんとそらまるさんの笑顔の魔法は、絶対みんなに届いてる

だって、私の心はこんなに、にこにこ気分になってるんだもん!


140 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 18:02:55.18 MEI9Meer0 128/881


そらまるさんが帰った後、私はにこちゃんと2人で部室に残っていた

「ごめんね、穂乃果、情けないとこ見せちゃったわね」

「わたしがあんたに嫉妬してたのはホント、情けないでしょ」

にこちゃんは寂しそうに笑う

「でもね、そらまるの気持ちを知って解ったの」

「私は、アイドル矢澤にこの目標は、『私』がNo.1になるんじゃなくて、『私たち』がNo.1になりたいんだって」

「私をμ'sに入れてくれてありがとう、そしてこれからもよろしくね」

「にこちゃん…うんっ!一緒に、9人じゃない、18人全員でがんばろう!」

にっこり笑顔で約束したよ!

141 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 18:03:36.80 MEI9Meer0 129/881



空に輝く一番星


でも今日はもう一つ綺麗な星が輝いて、競争するように、すごくまぶしく輝いていた



142 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/17 18:04:17.53 MEI9Meer0 130/881



第3章「青空の下、にこやかに」 完



145 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:00:46.01 aR2xS8si0 131/881



第4章「マッキー☆パイ(極甘)」


146 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:02:16.45 aR2xS8si0 132/881


今日は学校の屋上が工事という事で練習はお休み

海未ちゃんは弓道部、ことりちゃんも衣装の仕上げという事で家庭科室に行っちゃった

でも、さみしくないんだ!

実はこういう時、穂乃果には決まって行くところがあるんだよ

それはどこかというと…


ほら、聴こえてきたでしょ?

147 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:03:12.48 aR2xS8si0 133/881


〜愛してるバンザーイ ここでよかった〜


〜私たちの今が ここにある〜



148 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:05:46.85 aR2xS8si0 134/881


この歌声の主は西木野真姫ちゃん

私達μ’sの作曲担当で歌がすっごい上手なの!

しかもお嬢様で可愛い!

ちょっと素直じゃないところもあるけど、本当はとっても優しい子なんだ!

真姫ちゃんは時間があると、音楽室にやって来て、こうやってピアノを弾いてるの

真姫ちゃんはピアノがとっても上手で、聴いててとっても気持ちいいから、私大好き!

しかも今日は歌つき!

とってもラッキーだね


歌が終わると、私が拍手する、そうしたら真姫ちゃんはいっつもビックリして、私が怒られちゃうんだ

ふふっ、いつもの光景、いつもと一緒

あっ、歌が終わるよ

さぁ真姫ちゃんいつものように拍手するから、ビックリしてね!

149 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:06:41.15 aR2xS8si0 135/881



〜昨日に手を振って、ほら前向いて〜


150 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:08:38.35 aR2xS8si0 136/881


パチパチパチパチ!


「真姫ちゃん!さすがだね!」

すると真姫ちゃんは

「!穂乃果!わーっ穂乃果!聴いてくれてたの?ありがとう!」ギュー

あれ?

「真姫ちゃんね!絶対穂乃果が来てくれると思って頑張って歌ってたんだよ!上手だった?」

あれ〜?

「あれ?ひょっとしてダメだったの?」ジワッ

うわわっ?泣いちゃう!

「そ、そんな事ないよ!今日もとっても上手だったよ!真姫ちゃんの歌大好き!」

すると、真姫ちゃんの表情がパァァーっと音が聞こえるくらい変わって

「ありがとう!私も穂乃果大好き!」

うわっ、何だこれ?可愛い!

151 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:09:54.80 aR2xS8si0 137/881


その時

「失礼します、真姫、作詞の事で言い忘れ、て…?」

う、海未ちゃん?…

弓道部にいったはずでは?

「し、失礼しました!」

回れ右して出て行こうとする

「違うの海未ちゃん!これは違う」

「えっ?穂乃果、私の事キライなの!?」

「違うからそうじゃなくて!」

「海未ちゃんも待ってー!!」

また修羅場です!何で?私何もしてないのにぃ!!

ダレカタスケテー!!

152 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:11:47.50 aR2xS8si0 138/881


騒動はたまたま通りがかった、絵里ちゃんによって収束し事なきを得た

「少しびっくりしてしまって、申し訳ありませんでした」

これは海未ちゃん

あの事件以来、三森さんの影響からか、とっても笑顔がキュートになって、物腰も柔らかくなったような気がする

それでも、やっぱりこんな感じで海未ちゃんだけどね

「海未ったら、穂乃果が取られちゃうと思ったの?」

うふふ、と笑ってからかっているのは絵里ちゃん

絵里ちゃんも事件以来、考え方が柔らかくなったような感じ、そう、まるで南條さんみたい、になったと思う

ここにはいないけど、にこちゃんだって、そらまるさんの影響を受けてる

みんな、記憶はしてないけど、心の中では一緒なんだなぁ

なんて感慨深く見ていると

153 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:13:22.95 aR2xS8si0 139/881


「海未ちゃん!私ね、今回の歌詞すっごい気に入っちゃってね……」

………

「海未ちゃん!真姫ちゃんオシャレなカフェ見つけたから一緒に……」

ヌヌ……

「海未ちゃん!今度私と一緒に………」

イライラ……

真姫ちゃん、ちょっと海未ちゃんにくっ付き過ぎやしませんかねぇ?

「あらあら、真姫は相変わらず海未が大好きなのね、でも、穂乃果の前では少し我慢した方がいいんじゃない?」

「穂乃果がヤキモチ焼いてこわーい顔になってるわよ?」

「はーい!」

えっ、私そんな怖い顔してた?

でも、この真姫ちゃん、とっても素直で人懐っこい感じ

アリだね!

154 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:27:45.57 aR2xS8si0 140/881


私は、帰り道の途中、いつもの公園でえみつんから情報収集を開始する

えみつんっていうのは、私の、いわゆる中の人

今は世を忍ぶ仮の姿として、マスコットに姿を変えていて、私のバッグで揺られている

性格は、自分で言うのもなんだけど、穂乃果そっくり

でも、結構無茶ぶりとかしてくるし、なかなか、油断できない人形だよ

ちなみに、昨日私のおやつを盗み食いしたことによって、ジェノサイダーから、暴食の王にランクアップしたよ!

暴食の王は、真姫ちゃんの中の人について説明を始めた

「ちょっと、暴食の王とかやめてくれる!めっちゃ謝ったじゃん!」

「許してないもん!私のロールケーキ返して!」

「後で、ちゃんとあの店のイチゴロール買ってきてあげるから」

「ゆるした、えみつん!ずっともだよ♥」

えみつんはあからさまに「イラッ」としながらも中の人の説明を始めた

155 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:29:23.06 aR2xS8si0 141/881


「真姫ちゃんの中の人は『pile』ちゃん」

「みんなパイちゃんって呼んでるよ」

パイル?外国の人?

私が「?」となっていると、えみつんが補足説明してくれた

「pileは芸名、タオル地のフワフワなとこ、あるでしょ?そこの名前からとったんだって」

「タオルみたいに暖かく包み込むような、誰にでも愛されるアーティストになれるようにっていう意味なんだって、とっても素敵だね」

うん!とっても素敵!

「オーディションで700人の中から選ばれてデビューした、すっごい子なんだよ!」

「すごい!やっぱり、歌、上手だったもん!」

すごいね!真姫ちゃんの歌声は血統書つきだね!

156 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:31:01.62 aR2xS8si0 142/881


「でも、最初はすごい大変だったみたい」

「実は真姫ちゃんのオーディションに落ちたら、大好きな音楽を諦めようとしてたんだって」

「えっ?そんな、700人から選ばれる位なのに?」

「…まぁ、世の中色々あるから…」

「でも、真姫ちゃんに出会ってパイちゃんの音楽人生は変わった」

「今までやりたくてもできなかった事、見たくても見えなかった景色、全部一緒に見られるって、いっつも言ってるよ」

「真姫ちゃんとパイちゃんは似た者同士、真姫ちゃんは穂乃果に、パイちゃんは真姫ちゃんに、それぞれ諦めかけた夢を思い出させてもらった」

そっか、真姫ちゃんも初めはそうだったね…

「パイちゃんは真姫ちゃんに並々ならぬ感謝と愛情を注いでる」

「当然みんなもそうだけど、パイちゃんの依存度はすごいと思う」

「正直、このままでいさせたい気もする、でもそうしたらこの世界が…」

えみつんは寂しそうな顔をする

157 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:32:30.66 aR2xS8si0 143/881


でも

「大丈夫!大丈夫だよ!」

私は言い切った

「そんなに真姫ちゃんの事が好きな人だもん、真姫ちゃんが嫌がる事、絶対するわけないよ!」

「…!そうだね、そうだよね!」

えみつんは笑顔でそう言った

158 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:33:53.12 aR2xS8si0 144/881


pileさんが真姫ちゃんの事、すっごい好きなのは解った

じゃあどうやって真姫ちゃんを取り戻そうかな?

「pileさんの苦手な事とか、弱点みたいのってないの?」

「…あるよ」

えみつんはコクリと頷きこう言った

「パイちゃんは、見た目も中身も可愛くて、女子力も高い、一見パーフェクトな子」

「しかし、致命的な事が一つある、それは…」

「それは…?」

緊張がはしる

159 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:36:05.87 aR2xS8si0 145/881


「それは、残念なくらいの、ポン…コツ…」

は?

「ぽ、ポンコツ?」

「そーなんだよー!パイちゃんは一見何でも出来そうなんだけど、残念なくらいポンコツさんなの!超カワイイでしょ?」

「しかも性格もすっごい良いし、超いい子なの!」

でも話し合いとかで解決できそうだしいいかも、などと考える私に対して、えみつんは、ほぼ恒例となってきた爆弾投下を行う

「ちなみにパイちゃんは、なんかすずのことすっごい好きみたいで、いっつもベタベタしてるよ」

「さっき真姫ちゃんが海未ちゃんにベタベタしてたのも、多分海未ちゃんにすずの雰囲気を感じたからかもね〜」

「すずもパイちゃんのこと好きだからこれはアレかもね、取られちゃうかもね〜?」

なん…だと…

そ、そんな!海未ちゃんが取られる?

でも相手は真姫ちゃん?

そんな、私は一体どうすれば!?

悩む私をえみつんは生暖かい目で見つめながらこう言った

「穂乃果、ファイトだよ!」

「ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」

一体どうなるのー!!

160 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:38:09.78 aR2xS8si0 146/881


次の日の練習時間

真姫ちゃんの行動をよく観察するよ!

何か真姫ちゃんを戻すヒントがあるかもしれないしね

「あ、あの、」

でも、この真姫ちゃんはとっても人懐っこい感じ、今も1年生組で集まってるけど真姫ちゃんからのスキンシップが多いね!

「あの、穂乃果?」

でも、会話は聞こえないな、後で花陽ちゃんから聞き込みだね!

「穂乃果!聞こえてますか?」

「えっ?ゴメン!呼んだ?」

海未ちゃんが呼んでるのに気がつかなかったよ

「さっきから呼んでますよ、あの、そろそろ離していただかないと、絵里とトレーニングの打合せができないんですが…」

そう、今私は海未ちゃんの事をガッチリ捕まえて拘束している、ようにも見える体勢で観察しているんだ

別に真姫ちゃんから隠そうとしている訳ではない

たまたまそこに海未ちゃんがいたからだ

そこに

「あら?今日も穂乃果は海未にそんなにくっ付いて、本当に仲良しね」

と絵里ちゃん

えっ?私そんなにいっつもくっ付いてる?

「でも、ゴメンね、ちょっと打合せしたいから、海未のこと借りて行くわね」

しぶしぶ私が離れると、なぜか後ろからことりちゃんが

「あぁっ!そんなぁ、ご無体な!」

と言ってうなだれていた

どうしたんだろう?

161 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:40:07.14 aR2xS8si0 147/881


とにかく、今の真姫ちゃんともっとお話ししてみよう!

私は可愛い可愛い1年生たちの輪に入っていく

「やっほー!みんな何話してるの?」

すると

「にゃー!穂乃果ちゃん!あのね、真姫ちゃんがね、すっごいんだよ!」

と凛ちゃん

「凛ちゃん!それじゃ穂乃果ちゃん何が何だかわかんないよ」

すかさず花陽ちゃんがフォローを入れる

すると

「?私も何が何だかわかんない!」

『いやいやいや、真姫ちゃんの事だから』

全員から同じツッコミがはいる

「あれ?」

真姫ちゃんはまだ理解出来てないみたい、なるほどこれか!

「真姫ちゃんはアドリブに弱いからねー?」

「そ、そんな事ないよね?真姫ちゃんはキチンと考えてからしゃべるタイプだから」

「むー!私だって、こう、突然の、あの、あれの……なんだっけ?………………」





あ、フリーズした

…確かに、これは間違いなくそうだね

162 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:41:21.51 aR2xS8si0 148/881


それから少しお話ししたけど、元の真姫ちゃんとは真反対の性格なのかな?

とにかく人懐っこいって感じで、いつも誰かの側にいるね

元の真姫ちゃんはまさに『高嶺のフラワー』だったけど、今の真姫ちゃんはもっと身近な『花壇のお花』、みんなと一緒に咲いている感じかな

だけど変わらない事もいっぱいあるよ

まずは

163 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:43:49.22 aR2xS8si0 149/881


「花陽、凛、今度一緒にあの新しいショップにいこう?」

「うん!いいよ!実は行ってみたかったけど敷居が高そうで、入りにくくて」

「でも、真姫ちゃんとなら安心だね!」

「凛もいいよ!でも、凛女の子っぽい服あんまりないからなぁー」

「そしたら私が選んであげる!」

「凛は大事なお友達だから、とびっきり可愛くコーディネートしないとね!」

「恥ずかしいけど…ありがとう真姫ちゃん!」

「当然花陽もね!」

「あ、ありがとう、真姫ちゃん」

はぁっ!なにこれ?ここは天国?ここが優しい世界なんだね!

…っと、危く意識が飛びかけたよ


っていう感じで、とっても優しいところとか

164 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:44:54.17 aR2xS8si0 150/881


♪~♪♪

「さすが!真姫ちゃん上手だね!」

「うん!私も真姫ちゃんの歌も、歌ってる所も大好きだよ!」

真姫ちゃんは歌う時すっごい楽しそうに歌うんだ

だから、その歌を聞いてる周りの人も、すっごい幸せな気持ちになれるんだよ

ほら、似てるでしょ?

165 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:46:55.20 aR2xS8si0 151/881


その後も休憩時間毎に真姫ちゃんとお話ししてわかった事は、真姫ちゃんとpileさんは確かに人当たりは違うけれども心の中は同じ

とっても優しくて、とってもあったかい人だって事

pileさんは真姫ちゃんのことすっごい大好きって言ってたみたいだけど、真姫ちゃんもpileさんのこと、すっごい大好きになると思うな!

だって2人とも、こんなに似てるんだもん!

なんて考えていると

「うーちゃま!このリングすっごい可愛いの!ペアリングなんだけど一緒につけよ?」

「ま、真姫、うーちゃまは止めてください、あと、私にはそんな可愛いのリングは似合わないですよ」

「え〜?絶対似合うから、ね?」

「いや、でも…あの、薬指はちょっと…」

なんとぉー!わたしピーンチ!!

「なにおー!やっているのかなー!わたしも混ぜてほしいなー!!」


もう少し真姫ちゃんとお話しする事にしたよ

166 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:49:10.30 aR2xS8si0 152/881


次の日、今日は朝からずっと雨

これじゃあ外での練習は無理だね〜

ということは…

「今日は音楽室を借りて歌の練習をしましょう」

と、絵里ちゃん

やったね!穂乃果はダンスで体を動かすのも好きだけど、歌うのも大好き!

しかも歌の先生は

「じゃあ、わたしが伴奏するから一人一人、パートごとに練習しよっか?」

そう、真姫ちゃんだよ!

わたしも頑張って真姫ちゃんみたく上手に歌えるように頑張るんだ!

167 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:50:59.98 aR2xS8si0 153/881


「そうそう、穂乃果は声量があるから、みんなをリードしなきゃいけないの」

「でも、だからこそしっかりした基礎をやっていかないと逆に足を引っ張っちゃう」

「穂乃果ならできるから、頑張って!」

真姫ちゃんはこうやってみんなにアドバイスをくれるんだけど、絶対一言応援してくれるの!

今はpileさんと同化しているはずなのに、おんなじように励ましてくれる

ふふっ、やっぱり似てるね!

168 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:53:27.27 aR2xS8si0 154/881


練習も終わりに近づいた時、先生に呼ばれていた絵里ちゃんと希ちゃんが帰ってきた

そして開口1番

「ライブが決まったわよ」

おぉー!なんか急だけどやったね!!

「なんか突然ね、なんかあったの?」

という、にこちゃんの質問に絵里ちゃんは

「今度の学校集会で部活の活動報告があるでしょ?」

「そこで私達にミニライブをしてはどうかって学院長先生からご提案していただいてね」

「さすがことりちゃんのお母さん!」

「お母さん、ありがとう!」

ことりちゃんも嬉しそう

「ラブライブの予選も近い事だし、予行演習、とまではいかなくても、いい機会かなって」

「えりちとウチがもうOKしてきちゃった、って訳なんよ」

やったー!ライブだー!

見るとみんなも嬉しそう!だよね、ライブ、楽しいもん!

「よーし!ライブも決まったし、ガンガン練習して、最高のライブをみんなに届けよう!!」

と言うわたしの言葉に

『おー!!』

みんなのかけ声が続く

うんっ!気合入れるぞ〜!!

169 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:54:52.68 aR2xS8si0 155/881


その日の帰り道、海未ちゃんとことりちゃんはライブの準備

という訳で穂乃果は寂しく1人で下校

校門を出たところで

「穂乃果、ちょっと時間いいかな?」

真姫ちゃんが声をかけてきた

どうしたんだろう?何か相談かな?私は当然

「いいよ!」

と答える

真姫ちゃんはにっこり笑って

「ありがとう、立ち話もなんだからそこの公園のベンチで、いいかな?」

私はうん、と答えて公園へ移動した

雨があがった公園は、風が少し冷たい気がした

170 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:56:29.67 aR2xS8si0 156/881


公園に着くと開口一番

「穂乃果、ありがとう」

真姫ちゃんが、声に出した

「?」

私が呆気にとられていると

「私をμ’sに入れてくれてありがとう」

「私にもう一度、大好きな音楽をくれてありがとう」

「私が私でいられる場所をくれてありがとう」

「穂乃果のお陰で毎日がすごく輝いてる」

「こんな日が来るなんて、高校に入った頃は考えてもなかった」

171 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 18:58:32.27 aR2xS8si0 157/881


ちがう…

「私が毎日、こうして笑っていられるのはあなたのおかげ『違う!違うの!』

「えっ?」

私の声に真姫ちゃんは固まる

「違うの!真姫ちゃん!今のあなたは、もうひとり『穂乃果!!』

気がつくと私の後ろに元の姿のえみつんが立っていた

「ゴメンね、ちょっと立ち聞きしちゃって」

「赤い髪の子、真姫ちゃんだっけ?とってもいい子だね、お友達に素直にありがとうって言えるのとっても大事だよ」

「は、はい!ありがとうございます」

「そして、こっちのサイドポニーの子、穂乃果ちゃん」

「ありがとうって言われて恥ずかしかったのかな?」

「真姫ちゃんの気持ち、ちゃんと受け取ってあげないと、本当の気持ちなんだから、ね」

「うん…」

「ご、ゴメンね、真姫ちゃん、私、ちょっと照れちゃって」

「ありがとう、真姫ちゃんの気持ち、すごく嬉しいよ」

「こちらこそありがとう!」

えみつんに促され、2人は握手

「これからもよろしくね、穂乃果!」

「うん、真姫ちゃんもよろしくね!」

そう言って、2人は別れた

172 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:00:37.06 aR2xS8si0 158/881


真姫ちゃんの姿が見えなくなった時

「穂乃果、よく頑張ったね」

というえみつんの声を合図に

「うっ、ううっ、わ、わたし…うわーーん!」

私は泣いた

私は最低だ

今の真姫ちゃんは性格がいつもと違うだけで、本物の真姫ちゃんなのに

さっきの言葉をいつもの真姫ちゃんから聞きたいと思ってしまった

真姫ちゃんからの心からのありがとうを

私はニセモノみたいに思ったんだ

「穂乃果、あなたは悪くないんだよ」

声を出さずに首を振る

「あなたは優しいね、だから真姫ちゃんは救われたんだよ」

「あなたのその優しさが、真姫ちゃんっていう、飾られた、絵の中のお姫様を、1人の女の子に戻してあげたんだよ」

「だから自分を責めないで」

「あなたが自分をそんな風に責めることは、それこそ真姫ちゃんの気持ちを踏みにじる事になるんだよ」

「だから、自分を嫌いにならないで」

私は自分のこころがとろけるくらい泣いた

えみつんはずっと私のこと、抱きしめてくれて、すごく暖かかった

173 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:03:56.57 aR2xS8si0 159/881


どのくらい時間が経ったのかな?

よく涙が枯れるくらいって言うけど、涙っていくらでも出るんだ、なんて考える余裕が出てきた頃、

「もう大丈夫…」

私はそう言うと、ずっと私をぎゅっと抱きしめてくれていた、えみつんが

「うん…」

という言葉とともに私から体を離す

「えみつん、私、頑張るよ」

「みんなの心、もっともっと大切にできるように、私頑張るから!」

「だから、えみつん、私と一緒に来てくれるかな?」

私のお願いに

「ふふっ、私達は2人で1人、ずっと一緒なんだよ、知らなかった?」

そうだ、そうだよね!

私は一人じゃないんだ、えみつんやμ’sのみんなもいつも、いつまでも一緒なんだ!!

174 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:05:34.94 aR2xS8si0 160/881


あれから数日後

今日はついにライブ当日!

みんなも準備万端、気合も最高潮!

ミニライブとはいえ、全力全開!

クライマックスは真姫ちゃんのソロパート!


と、その時!

175 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:07:25.07 aR2xS8si0 161/881


?!

この感じ!まただ!と、いうことは、でも、止められない!!


〜パレードに誘われて〜


『まきちゃん!』



………は?


〜君と〜

『まきちゃん!』

〜踊る〜

『まきちゃん!』

176 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:09:22.13 aR2xS8si0 162/881


いやいやいやいや、意味わかんないから、イミワカンナイ!マジで!なにこれ?

見ると観客全員が真姫ちゃんの方を向いてただ一言

「まきちゃん!」

とだけ叫んでいる

「うわっ?すごいねコレ、これが本物の患者ってやつなんだ!初めてみた」

見ると元の姿に戻ったえみつんが、隣で興味津々に眺めている

「えみつん!これなに?」

「これはいわゆる『真っ姫患者』ってやつで、真姫ちゃんのが好きすぎて、頭の中が全て真姫ちゃんで埋め尽くされてしまった、狂信的なファンの末路だよ!」

なにそれ?どれだけ真姫ちゃんの事好きなのさー!!

当の真姫ちゃんを見ると…

すっごい嬉しそうに笑ってる、ダンスもなんか楽しそう、そして何より


あんなに楽しそうに歌ってる


心の底からの笑顔、本当に幸せそう…

私は騒動そっちのけで真姫ちゃん、いや今は多分pileさん…に心奪われて、見入っていた

177 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:11:21.53 aR2xS8si0 163/881


予定曲数を大幅に超え、ライブは終了した

えみつんはタイミングを見計らったようにpileさんに声をかける

「パイちゃん、良かったね、夢、叶ったね」

するとpileさんは

「ありがとう!えみつん!そして穂乃果!」

満面の笑みで答える

「pileさん、ライブ、凄かったです!最高でした!」

「ふふっ、トーゼンでしょ!だって私は真姫ちゃんなのよ!」

えへへ、さすがそっくりだよ

「パイちゃん、もういいかな?」

えみつんが優しく問いかける


「嫌だけど、いいよ」


pileさんが頷くと、真姫ちゃんの体からもうひとりの歌姫が現れた


178 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:13:34.41 aR2xS8si0 164/881


現れたpileさんはとっても嬉しそうに真姫ちゃんに語りかけた

「やっと…やっと会えたね!」

そして、そのまま続ける

「私、真姫ちゃんのおかげで大好きな音楽を続けてこれたよ!見たことない様な大きなステージにも立ったんだよ!いっぱいいっぱいファンのみんなの前で歌えたの、ありがとう!」

それを聞いた真姫ちゃんも素敵な笑顔で

「わたしもそうよ、私に歌を与えてくれてありがとう、私をμ'sに入れてくれてありがとう、私の歌をみんなに届けてくれてありがとう」

2人はクスリと笑いあう

179 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:16:11.52 aR2xS8si0 165/881


「あのっ、あのね、それから、それからあのね…、あのっ、ごめんね、もっともっと真姫ちゃんとお話したいのに」

「私もっと真姫ちゃんにありがとう言いたいのに、口下手で、あの…」

感情が溢れ出してなかなか上手に話せないpileさんに、真姫ちゃんは優しくこう言った

「パイちゃん」

「大丈夫、全部わかってるわ、だって私も同じだもの、私たちは一緒、知らないうちにお互い助け合って、いつの間にか2人で同じ道を歩いていたのね」

「うん…うん、そうだね」

「これからも一緒よ、大好きなみんなと、歌と、パイちゃんと同じ方向を向いて歩いて行くのよ」

「とっても素敵だね」

「そうねとっても素敵ね」

「だから、さよならは言わない」

「また逢いましょう、呼んでくれたらすぐ行くわ」

Pileさんはえへへと笑って

「さみしくてすぐ呼んじゃうかも」

真姫ちゃんもくすっと笑って

「少しは我慢してよね、私にもお勉強とかいろいろあるんだから」

2人はそう言って笑いあった

「じゃあ、次のμ'sライブまで我慢して、その間すっごい頑張って、次に真姫ちゃんにあったら、すぐにびっくりするくらいの大きなステージで歌えるようにしておくね、約束ね!」

「ふふっ、そうね、楽しみにしておくわね」


180 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:17:48.53 aR2xS8si0 166/881


ひとしきり笑った後、ふいに真姫ちゃんが

「お願い、1つ聞いてくれるかしら?」

どうしたんだろう

するとPileさんも

「私もね、お願いがあるの」

「なに?」

「真姫ちゃんから先に言っていいよ」

すると真姫ちゃんは

「いっせーので言ってみる?」

「賛成!」

二人は笑顔で

『いっせーの!』


『一緒に歌ってください!』


…ふふっ、やっぱり似てるね!

181 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:18:33.92 aR2xS8si0 167/881


二人は寄り添うようにピアノの前に座ると

真姫ちゃんのピアノの伴奏が始まる

182 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:20:33.39 aR2xS8si0 168/881


愛してるばんざーい!

ここでよかった 私たちの今がここにある

愛してるばんざーい!

始まったばかり 明日もよろしくね まだゴールじゃない


笑ってよ 悲しいなら吹きとばそうよ

笑えたら変わる景色 晴れ間がのぞく

不安でもしあわせへと繋がる道が

見えてきたよな青空


時々雨が降るけど水がなくちゃたいへん

乾いちゃだめだよ みんなの夢の木よ育て


さあ!

大好きだばんざーい!

まけないゆうき 私たちは今を楽しもう

大好きだばんざーい!

頑張れるから 昨日に手をふって ほら前向いて


183 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:21:38.01 aR2xS8si0 169/881


歌が終わり、もう一度二人は向かい合うと


「ありがとう」

「それじゃあ」




『またね』




184 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:22:23.24 aR2xS8si0 170/881



2人の約束は歌声となって、いつまでもいつまでも、響き渡っていた


185 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:24:07.86 aR2xS8si0 171/881


ライブの後、私は真姫ちゃんに音楽室に呼び出されていた

…あの時のこと、なのかな

私は少し陰鬱な気持ちで音楽室に入る

すると、真姫ちゃんはピアノ椅子に座って、私を待っていた

「…穂乃果『真姫ちゃん!ごめんなさい!』

「あの時、真姫ちゃんは私に心の底からの言葉をくれたのに!」

「私は疑うような…ひどいこと……してっ…」



「ウフフッ、穂乃果、やっぱりあなたは穂乃果ね」

えっ?

「どこまで行っても一直線、なにをやるにしても考えなし、周りをどんどん巻き込んで」

「いつの間にか私も、μ’sのみんなも巻き込まれちゃった」

「だから、もう一回言わせてもらうわね」



186 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:25:06.82 aR2xS8si0 172/881


「私をμ’sに入れてくれてありがとう」

「私にもう一度、大好きな音楽をくれてありがとう」

「私が私でいられる場所をくれてありがとう」



「穂乃果、ありがとう」



187 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:26:01.12 aR2xS8si0 173/881


「これは私と、パイちゃんからの言葉」

「私たちの、本当の気持ちなんだから、ありがたく受け取っておきなさい」


真姫ちゃん…



「うん!ありがとう!」



188 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:26:44.54 aR2xS8si0 174/881




静かな静かな音楽室で、ありがとうの歌がずっとずっと聞こえていた




189 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/19 19:27:22.20 aR2xS8si0 175/881



第4章「マッキー☆パイ(極甘)」 完


195 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:15:27.39 ousyxVWK0 176/881


第5章「陽の光の下、百合の花は輝く」

196 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:16:46.73 ousyxVWK0 177/881


皆さま、こんにちは、高坂穂乃果です


「まったく、あなたという人は………」


最近、どうですか?病気など、していませんか?


「いいですか?将来のことも………」


寒暖の差が、大きい季節ですから、気をつけてくださいね


「いつまでも子供では無いの………」


私ですか?おかげさまでとても『穂乃果ぁ!聞いてるんですか!!』

「はいぃ!!聞いております!!!」

197 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:18:12.06 ousyxVWK0 178/881


はい、今私は海未ちゃんに、すごい勢いで、怒られまくっています

全く、ちょっと遅刻しかけて、授業中に居眠りして、ちょーっと、ほんのちょーーーっとだけウエストが、こう、ふわっとしたかなー?ってだけなのに、こんなに怒んなくてもいいよね!

大体絵里ちゃんが悪いんだよ!

なんか面白いゲームがあるって渡されたんだけど、これがまた、面白くってついつい夜更かししちゃったよ!

しかも、夜食まで食べちゃったじゃん!


「………という訳です!解りましたか?」

「はい、申し訳ありませんでした」

「わかれば結構、では、以上!」

198 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:19:22.81 ousyxVWK0 179/881


ふわぁー!やっと終わったよ〜

うぅーっ、心が、心が折れかけている

全く、海未ちゃんはホントおこりんぼなんだから!

いつもは大天使のことりちゃんが助け舟を出してくれるんだけど、今日は家の用事でお休みなんだ

こうなったら、μ’sの誇るもうひとりの天使の元に行かなくちゃ

海未ちゃんによって、荒廃しきった私の心を癒してもらわなければ…!

「穂乃果!聞こえてますよ!!」

「うわわー!ごめんなさーい!!」

199 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:21:35.95 ousyxVWK0 180/881


怒れる鬼神の追跡を逃れ、ついに我がセーブポイントに到達

はやく、早くHPを回復しておくれ!

そんな想いを胸に、私は一年生の教室の扉をくぐり

「おーい!花陽ちゃーん!」

目的の天使を探す、すると

「あーっ!穂乃果ちゃーん!」

凛ちゃんが私に気付く

「やっほー!」

ということは、隣には…

「天使はっけーん!花陽ちゃーん!私を、私の傷ついた心を癒してぇ!」

私は、オアシスを見つけた旅人のように、花陽ちゃんに抱きつこうとする、と

「…ちょっと、穂乃果ちゃん、なにしてんのかな?」

「私、こういうのやってないんで、他でやってくれる?」

…あ、あれ…?


200 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:23:43.67 ousyxVWK0 181/881


「は、花陽ちゃん?」

「私、体に触られる系苦手なんで」

すると、隣にいた凛ちゃんが

「穂乃果ちゃん、かよちんのスイッチ押しちゃ駄目だにゃー」

え?な、なにが…

私が混乱していると今度は真姫ちゃんがやって来て

「穂乃果、あなた学習能力無さすぎじゃない?」

「花陽はそういうの嫌いなの、知ってるでしょ?」

こ、これは…!

「なんていうか、明るい人を見ると自分と比較しちゃう、なかなか辛いよね」

あぁっ、心が、心が痛いっ

「凛は、こんな心に深い闇を抱えたかよちんも好きだよ!」

なるほど!イエスマンならぬイエスガールだね!!

「花陽はクールね、私も見習いたいわ」

駄目だよ!騙されてるよ!これはクールじゃなくてダークだよ!!

私の貴重な無限エリクサーこと、花陽ちゃんがダークマターになっちゃったよ!

「ダレカタスケテー!!」

「ちょっと、それ、私のなんだけど」

これすらも許されないのぉ〜!!

201 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:25:44.47 ousyxVWK0 182/881


さらなる追い打ちにより、ステータス「瀕死」となった私は、這々の体で一年生の教室から脱出し、少し離れた場所から花陽ちゃんを観察してみる

なるほど、こうしてみると見た目から印象が違うのがわかるね

まず、普段の花陽ちゃんは、なんというか小動物みたいな守ってあげたい感が湧いてくる感じなんだけど…

でも、今は立ち姿から違う

姿勢がいいのかな?なんかモデルみたいにスッとした佇まい

それに加え、希ちゃんの言うところの「かなり良いもの」を持っているため、スタイルの良さが目立つようになってる

っていうか、本当にモデルさんになれるんじゃないかな?

「かよちん、今月号みたよ!すっごく可愛いかったよ!」

今月…号?

「私も見たわ、さすがね、前の時も読者投票で上位だったんでしょう?」

読者…投票?

「いや、別に大したことないから、偶々だよ」

「そんな事をないにゃー!だってかよちんは絵里ちゃんと並ぶ、μ’sのグラビア担当なんだから!」

「読者モデルなんて言わないで、本当のモデルめざしたら?」

どくしゃもでるーー?!

なんてこったい!本当にモデルさんだったよ

なるほど、人前に出るの慣れてるから、見た感じの印象が違うんだね

202 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:27:23.64 ousyxVWK0 183/881


私は、さらに観察を続ける、するともう一つの特徴が

凛ちゃんとか真姫ちゃんとはすごいにこにこしながら話してたのに、少し1人になった途端

「………」

うおぅ!すっごい私に近寄るなオーラ!

なんか小説みたいの読んでるし

それでも、今の花陽ちゃんは目立つから話しかけようとする子もいるんだけど

「あの、小泉さん!今月号みたよ!すっごい可愛かったね!」

「…ありがとうございます」

………

終わった!ぶったぎったよ!スゴイ!一刀両断!

ん?でも、

会話を諦めて帰っていく子の背中を、困り顔でチラチラ

なるほど、人見知りで恥ずかしがり屋さんなんだね!

203 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:29:25.62 ousyxVWK0 184/881


「うわーん!エミえもん!誰も私を癒してくれないよぉ~!!」

私は心のダメージを和らげるため、困った時のエミえもんに助けを求める

「誰だ!エミえもんって!」

と、抗議の声をあげる、しゃべるスピリチュアルマスコットの名はエミえもん

「じゃねーよ!にった!えみ!え!み!つ!ん!」

そうだった、余りの心のダメージにより一時的な記憶障害が起こってたよ

あれ?エミえもんが何かごそごそとしてるけど?

「あ、もしもし海未ちゃん?あのね、穂乃果、実は海未ちゃんの事、あいs『ヒャァーーーハァーーー!!!』

「海未ちゃん!!いやあの、その、愛してるばんざーいにこういうエキセントリックな掛け声とかよくない?!え?良くない?!そっかわかったじゃああとでね」

……

204 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:30:28.90 ousyxVWK0 185/881


「なにしてんの!人の電話だよ!しかもなんか恐ろしいこと言おうとしてるし!」

「いいじゃん、元気でたじゃん、結果オーライ!」

「これ元気じゃないよ!どっちかっていうとドーピングだよ!バッカスの酒だよ!!」

これが意趣返しってやつだね!穂乃果知ってるよ!この前の小テストで間違えてて海未ちゃんにすっごい怒られながら復習したばかりだからね!

ワーワー!キャーキャー!!





「…えみつん…穂乃果、疲れた…」

「…お互い、無駄な事はやめよう…」

そうだった、こんなことをしている暇なんてないのだ

205 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:31:51.64 ousyxVWK0 186/881


「えっと、今、花陽ちゃんの性格の元になっているのは『シカちゃん』って言って、」

「シカ?ちゃん?」

「あっ!ごめん、それはあだ名でホントは『久保ユリカ』ちゃん」

「最近は声優のお仕事が多いけど、ちょっと前まで雑誌モデルでグラビアアイドルの仕事も多かったんだよ」

「ぐ、ぐらびあ…」

「本人は結構前から、声のお仕事に興味があって、その中で花陽ちゃんと出会ったんだって」

「シカちゃんってね、最初はちょっと怖い感じの雰囲気だったんだよ」

なるほど、あの近づくなオーラの事だね

「でも、今ではとっても仲良し!本来はとっても明るい子だから、すっごい楽しいんだよ」

凛ちゃん達と一緒のときはすごく笑ってたもんね

「なんてったってユニットも同じ、「ぷりんたいず」の仲間だしね!」

ん?もう、えみつんてば、プランタンを言い間違えてるよ!

ドジっ子だねぇ


206 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:33:21.47 ousyxVWK0 187/881


「μ’sでは、特に南條さんと仲が良くてね、なんか昔同棲を申し込んだとか何とか?」

え?そ、それはつっこんでもいいやつなのかな?

「基本寂しがり屋だからね」

なるほど、そっちか

「あっさり断られてたけど」

南條さんっぽいね

「パイちゃんもそうだけど、シカちゃんも花陽ちゃんっていう子に出会ってから、すごく楽しいことが増えたって言ってたよ!」

「なんか、実家では花陽ちゃんは神殿に奉られているとか何とか…」

花陽ちゃん、ついに天使から女神に昇格しちゃったんだね

207 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:35:40.63 ousyxVWK0 188/881


「ところで、何で『久保ユリカ』っていう名前なのにあだ名がシカちゃんなの?」

私は疑問を口にする

するとえみつんは真面目な声色で

「…聞きたい?」

えっ?な、なに?

「シカちゃんってあだ名の理由、その深い深い、真実」

「…覚悟、あるんだね?」

ひ、ひょっとして、あの、心の闇の真実がそこに…

私が、なにも答えない事を肯定と捉えたようで、えみつんはゆっくりと語り始める

「シカちゃんってさ…」

ゴクリ…

「出身地、奈良県なんだよね…」

……は?

「奈良県ってさ、鹿、有名じゃん?」

……………

208 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:36:37.68 ousyxVWK0 189/881


「何それ!?違う方向でビックリしたよ!浅い!浅すぎるよ!その辺の水溜りよりも浅かったよ!!」

「私はまた、あの心の闇の謎とかかと思ったよ!」

「あ〜、あれはなんか、中学生の頃、モデルのオーディションに誘ってくれた子がいて、シカちゃんだけ合格しちゃったもんだから、なんか無視とかされたり、仕事でもイヤな事、半強制的にやらされたりした結果みたいだよ?怖いねー」

「怖いねー、じゃないよ!軽い!重いのにすごく軽いよ!!」

209 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:37:51.71 ousyxVWK0 190/881


「久保さんのこと、もっと優しくしてあげてもいいんじゃない?」

するとえみつんは、

「優しく?」

あ、あれっ?怒って、る?

「シカちゃんはそんなに弱い子じゃないよ」

「自分の中にやりたい事、やらなくちゃいけない事、ちゃんとしっかり持ってる子なんだよ」

「例え穂乃果でも、私の友達のこと、貶めるような事は許さない!」

「あっ、ご、こめんなさい、あのっ、そんなつもりじゃ…」

「駄目だよ!許さないから!」

210 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:39:55.74 ousyxVWK0 191/881


「罰としてこの前の数学の小テストの結果を海未ちゃんにそっとメールしたゃった、テヘ❤の刑を受けてもらうよ!」

なんだこの長い前振り!!

さっきか?さっき仕込んだのか?!

国語が見つかった時、数学はドサクサに紛れて逃げ切ったのに!

せっかく訪れた、私のナギ節がっ!

この召喚士の為に!!

なんてこったい!!

「召喚、出でよ!サムライガール!!」


……カツ…カツ…カツ


さあ


…ガチャ


地獄の


…ギィー


始まりだ!!


「穂乃果❤ファイトだよ!!」

「ファイトだよ!じゃねーっつの!!!」

211 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:54:18.61 ousyxVWK0 192/881


悪魔人形の策略により、強制負けイベントに巻き込まれてしまった私は、とりあえず部室に逃げ込むと、先客が

「おおっ!にこりんぱな発見!」

あっ、『にこりんぱな』っていうのは、にこちゃんと凛ちゃんと花陽ちゃんの1年生3人組のことで

「あんた今、失礼なこと考えてるでしょ!」

「ひたたたた!ごへんなふぁい!!」

うぅ、思いっきりほっぺたつねられたよ

冗談はさておき、「にこりんぱな」っていうのはライブ途中に挟む、いわゆるMCの中で、この3人のトークがすっごい面白いって大評判になって、ファンの中で自然に発生した呼び名なんだ

本人たちも気に入ってるし、私たちも自然とそう呼んじゃうの

212 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 18:58:40.32 ousyxVWK0 193/881


「3人ともなにしてるの?」

「私たちは次のライブのMCについて研究してるのよ!」

「競争激しいこの世界、常日頃からのこうした積み重ねが、明日への勝利につながるのよ!」

「さっすが世界のYAZAWAだにゃー!」

「にこちゃんの数少ない輝ける場所だね!」

「…もうちょっと私の事リスペクトしてもよくない?」

おぉ?これは…


213 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:00:13.27 ousyxVWK0 194/881


「大体花陽だって人もこと、言えなくない?」

「はい、そうですけど?え?なに、こう言わしたいってことでしょ?」

「なんで、逆切れなのよ!」

「うんうん、かよちんの言うとおりだよ、ところで昨日ね…」

「あれ?凛ちゃん私の扱い雑じゃない?」

「いいよいいよ、ラーメン食べに行ったのね、そしたらね……」

「私にいたっては無視かい!!!」

あれれ?これって面白さが激烈にアップしてない?

にこちゃんいじり&適切なボケ拾い、花陽ちゃんの話術&闇スイッチ、凛ちゃんの毒舌&雑な返し

これは、ついに「にこりんぱな」は完成したんだね!!

「穂乃果、あんたなにナレーションで逃げようとしてんのよ!」

「うわわ!私はいいから~!」

「穂乃果ちゃんも一緒にかよちんの闇に触れようよ!」

「いやだよ!触れずにそっとしておこうよ!」

「ほら、知ってたよ、うん、べつにいいよ、私」

「こんなとこにもスイッチが!!」

闇の波動に飲み込まれるぅ~!!!

214 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:01:25.67 ousyxVWK0 195/881


その日の練習時間

穂乃果のHPもなんとかギリギリ活動できるくらいまでは回復したよ!

よっし!頑張るよ!だって今日は

「では、予定通り、ユニット毎の練習を行います」

そう、今日はユニット練習なんだ

ことりちゃんがお休みのため、全体練習にしようか、という提案があったが

「次のライブの事もあるし、私たちはできる事するよ!」

という私の意見が無事通り、予定通り実施する事となった

ただし、悲しきかな、私の意見が通ったというより

「花陽がいるから、大丈夫でしょう」

という理由なのは秘密だよ!

でも、これで花陽ちゃんといっぱいお話しできそうだね!

215 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:02:38.08 ousyxVWK0 196/881


「穂乃果ちゃん、ことりちゃんいないけど、どうする?」

花陽ちゃんはどうやらさっきの暗黒モードではなく、通常営業となっているみたい

「いやぁ、実はあんまり深く考えてなかったんだよねぇー、どうしよっか?」

すると、花陽ちゃんは

「なんだよそれー、私も全然、全く、何にも考えないんだけど!」

ニコニコしながら抗議する

「うーん、とりあえず、ライブの曲順でも考えよっか?」

「そうだね、どうしようっか?」

こんな風に話していると、不思議と心が落ち着いてくる

なんでだろうね?花陽ちゃんとは全然違う性格のはずなのに、花陽ちゃんと同じような居心地の良さ

きっと久保さんの心の中は、花陽ちゃんと一緒

思いやりのあるところとか、寂しがりやなところとか、あとちょっと暴走しちゃうところとか、うん!一緒だね!

216 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:03:41.29 ousyxVWK0 197/881


あと、気がついた事といえば

「その時、凛ちゃんがこうガーってなって……」

「そしたら絵里ちゃん、それ持ったまんまダーッて走って……」

「昨日乗ったタクシーにゲームが……」

「にこちゃんのパソコンから……」

「真姫ちゃんてば……

「あれや……」

「これや……」

さ、さすが関西出身、だからかな?

一旦おしゃべりが始まったら止まんないね

217 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:04:41.13 ousyxVWK0 198/881


あともう一つ

「先週のお休みに海未ちゃんとことりちゃんと一緒にお買い物に出かけたんだ」

「ちょうどイベントやってたでしょ?」

「すっごい楽しかったよ!」

「花陽ちゃんはどこかいったの?」

花陽ちゃんは少し影のある笑みを浮かべ

「…うん、行ったよ、私も、そこに」

「……1人で」

げぇっ、スイッチオン!

218 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:06:01.86 ousyxVWK0 199/881


「凛ちゃんも真姫ちゃんも別の用事でいなくって、でも1人は寂しくていってみたんだけど…」

「そっか、穂乃果ちゃん達もいたんだ、楽しかったのか…」

「私には、なんか眩しすぎて、辛くなって、すぐ帰ったよ…」

ああっ!心が、心が痛い!

「家に帰ったら、お母さん達もいなくて、あまりの寂しさに耐えかねて…」

「秋葉のメイドカフェに行っちゃった…」

「な、なんで?メイドカフェ?」

私が恐る恐る質問すると

「メイドカフェって、『おかえりなさい』って言ってくれるんだよ」

「それって、すごくいいよね」

と、笑う瞳には、光がなかった…

と、こういう感じでどこにでもスイッチがあるのです

誰か、ダレカタスケテアゲテー!!

219 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:07:03.29 ousyxVWK0 200/881


こんな感じでお話してたら、何時の間にやら

「うわわっ!もうこんな時間!」

「ホントだ!なんにも練習してないんだけど!」

そうなのだ、おしゃべりが楽しすぎて気が付かない間に練習も終りの時間

花陽ちゃんの謎闇にも慣れてくるもので、おしゃべりのスパイスみたいに感じてくる

すると、後はいつもと一緒

とっても楽しい、なんか元気になってくる

やっぱり花陽ちゃんは、私の心のコテージだよ

220 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:08:53.76 ousyxVWK0 201/881


さて、家に帰ると、私は日課のランニング

さすがに今日は練習サボっちゃったし、しっかりやらないとね

いつものコースを走り、終盤の山場、神田明神様の階段登り

気合いを入れて一気に登って…

「ゴール!!」

すると

パチパチパチ

あれ?拍手?

「穂乃果ちゃん、毎日えらいね」

見ると、巫女服を着た希ちゃんだ!

「希ちゃん!今日もお手伝い?」

「そうだよ、穂乃果ちゃんはいつもきちんと自主練習して、えらいえらい」

えへへ~

「学校での練習もそれぐらいきちんとやると、もっとえらいんやけどね」

ばれてる!

「おさぼりするような悪い子には、わしわしをプレゼント…」

「お、おたすけ~」

希ちゃんはくすりと笑って

「しようと思ったけど、2人とも一生懸命やってるから、今回は勘弁してあげる」

た、たすかった~

221 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:10:48.76 ousyxVWK0 202/881


ん、今2人って

「希ちゃん?2人ってことはもう一人誰かいるの?」

「あれ?穂乃果ちゃん知らんの?もう一人の常連さん」

常連ってことはいつもいるんだ、全然気が付かなかったよ

「まあ、穂乃果ちゃんはお参りしてすぐ行っちゃうし、しょうがないね」

「こっちにおいで」

希ちゃんは明神様の反対側に案内してくれた、するとそこには

「…花陽ちゃん?」

花陽ちゃんが、そこにいた

一心不乱にダンスの振り付けを練習してる

すごい、真剣な表情

自分で動画を撮影してるんだ、何回もチェックして確認してるね

「声、かけないの?」

希ちゃんの言葉に、私は

「うん、邪魔したら悪いしね」

「花陽ちゃんはこんなにアイドル、そしてμ'sのために一生懸命」

「知ってたけど、知ってたつもりだったけど、でも!やっぱりうれしいよ!」

「リーダーとして負けてられないし!私も頑張るぞー!!」

性格が変わっても、花陽ちゃんは花陽ちゃん

一生懸命で楽しくて、ちょっぴり暴走もしちゃうけど、想いの強さはNo.1!

やっぱり花陽ちゃんは、花陽ちゃんだよ!

222 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:11:37.30 ousyxVWK0 203/881



ちなみに数日後、ちょっぴり暴走がちょっぴりじゃなくなっちゃったんだけどね…


223 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:18:09.56 ousyxVWK0 204/881


今日は珍しく早起き!

だって今日は

「ライブだ!」

そう、今日はライブの日!

とはいっても秋葉原のイベントに参加する形なんだけどね

他のスクールアイドルも参加するイベントだし、楽しみにしてたんだ!

私たちは一旦学校に集合してから会場に移動することになっているんだよ

私は海未ちゃんと、ことりちゃんが待っている、いつもの待ち合わせ場所に向かうと

「あれ?」

誰もいないねぇ

今日は早起きさんだったから、私が一番だったのかな?

周りを見渡すと…あれっ?あれは

224 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:19:41.23 ousyxVWK0 205/881


「海未ちゃん?」

よく見ると待ち合わせ場所には海未ちゃんがいる、けど、なんか様子がおかしいぞ

「海未ちゃん?」

私が声をかけると海未ちゃんは

「あ、わたしのこときらいな穂乃果!おはようございます!」

はぁっ?

「な、何言ってんの!そんな事あるわけないじゃん!」

「嘘です!だって私はいっつも穂乃果の事だけ考えて、穂乃果の為に色々言ってるのに、全部無視して…私は穂乃果に嫌われてるんです!私の本当の気持ちなんて……おーいおいおいおい!」

ど、どうしたの?


225 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:21:26.72 ousyxVWK0 206/881


この超ネガティヴ発言は一体…私が混乱していると

「おはよう、2人とも!」

「ことりちゃん!海未ちゃんが!海未ちゃんの様子が…」

!?こ、ことりちゃん?

「はぁん❤!海未ちゃんが愛する穂乃果ちゃんに蔑ろにされて、マケミちゃんに!」

「これが、これが『ほのうみ』の新境地、ス・テ・キ」

こりゃヤバイ!色々ヤバイ!何がヤバイって精神的にヤバすぎる!!

マジ地球ヤバイ!だよこれ

「えみつん!」

「わかってるよ!とりあえず花陽ちゃんを見つけよう」

そうしてる間も

「穂乃果ぁ…メソメソ」

「いゃん❤マケミちゃんかわいい!」

………あれ?ことりちゃん、普段と変わらない?

…そんな事ないよね、うん、急ごう!

226 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:23:20.54 ousyxVWK0 207/881


私とえみつんが学校に到着すると、校門に見えるのは

「絵里ちゃん!」

「あ、穂乃果!おはよう!」

「一見賢そうに見えるポンコツ生徒会長ですよ!」

な、なに言ってんのかな?

「エリチカ、そんな事ないのに!とっても賢いんだから!」

というポンコツかわいい発言を絵里ちゃんが繰り返している、その隣では

「スピリチュアル…スピリチュアルって、プププッ……はぁ」

うわぁ〜!希ちゃん!カードを折り紙にしちゃダメぇ〜〜!!

これは残りの子達も無事では済まないよ、とその時

「真姫ちゃん!」

真姫ちゃん発見、でも

「…ブツブツ…私は…彼氏いない歴、17年…デッショ〜…ブツブツ」

この状態を見たえみつんは

「真姫ちゃんはもうダメや…黒歴史が噴き出してきとる…」

真姫ちゃーーん!!待っててねーーー!!!

227 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:25:45.65 ousyxVWK0 208/881


残りは「にこりんぱな」の、3人!

私が中庭まで来た時

いた!

「あんた、そんなんだから怒られんのよ!」

「にゃーっ!にこちゃんひどくない?」

「凛ちゃん?そんな事言っちゃダメだよ?」

あれっ?

「アイドルってのは、この私みたいなウルトラ『かよちーん!お腹すいたー』って聞きなさいよ!」

「えへへっ、はい、おにぎりだよ!」

「花陽まで〜!」

「はいっ!にこちゃんの分」

「…ありがたくいただくわ、もう、花陽にはかなわないわねー」

いつもと一緒だ

いつもの3人

今までと同じ光景

なんで……?

えみつんは表情は見えないけど、ただ、じっとその光景を見つめている

私もずっと3人を見続けていた

228 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:27:13.08 ousyxVWK0 209/881


どのくらい時間が経ったのかな?

花陽ちゃんが

「…もういいよ、ありがとうね」

と言うと、他の2人は少し寂しそうな笑顔になった

「まぁいいって、長い付き合いなんでしょ?私たち」

「凛はこっちのかよちんも好きだったよ?」

そうか…

「また、会いたい時に会えるから…」

「凛だって、絶対絶対、すぐそばにいるはずだから…」

『またね!』


2人はそう言ってその場から離れていった

229 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:28:08.12 ousyxVWK0 210/881


「えみつん、ゴメンね、ありがとう」


「最後の思い出、欲しくってさ、2人に事情話したら、いいよって」


「なにも疑いもせずに、付き合ってくれたんだ」


230 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:29:27.93 ousyxVWK0 211/881


「最後じゃないよ!」

私はえみつんを遮って、花陽ちゃん、いや、久保さんに言う

「また会えるよ!だって約束したじゃん!2人ともまたねって言ったんだよ!」

「知ってるでしょ!あの2人は約束破ったりしないよ!」

「あの2人だけじゃない!μ’sのみんなも!また会えるんだ!絶対だよ!」

私は心の底から叫ぶ

頭なんかで考えていない、本当の気持ちを、久保さんにぶつける

すると

「穂乃果ちゃん、やっぱりえみつんにソックリだね」

久保さんは笑って

「リーダーにこう言われちゃ、しゃあないよね」

そう言うと、花陽ちゃんの体から、もう1人の、可憐な百合の花があらわれた

231 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:32:04.75 ousyxVWK0 212/881


「はじめまして、かな、花陽」

久保さんは優しく笑いかける

「は、はじめまして、私、小泉花陽ですって知ってるか」

「ふふふっ、うん、よく知ってるよ、だって私、花陽の1番のファンだもん」

「私は久保ユリカって言うんだよ、まあみんなシカコとかシカちゃんって呼ぶし、そう呼んでね」

微笑みかける久保さんに、花陽ちゃんはちょっと見惚れちゃってるみたい

「ふわぁ、キレイ、ほんとに私の中の人?なんか、花陽なんかでごめんね?」

「私は一番のファンっていったじゃん、花陽なんか、なんて言ったら許さないよ!」

「ごめんなさい、そうだよね、シカちゃんがくれたこの幸せ、もっと自分に自信をもっていかなくちゃ、だよね」

232 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:33:32.46 ousyxVWK0 213/881


「それじゃあ、シカちゃん、まず言わせてほしいの」

「ありがとう、あなたのおかげで私はここにいます」

「私の夢はシカちゃんやいろんな人のおかげで叶っていっています、私、どんくさいから少しずつだけど」

「でも頑張って、勇気を出したら、幸せすぎるって思うくらい、いろんなことができていって」

「でもそれはシカちゃんと一緒だから出来たんだって、今わかったんだ」

「だから、本当にありがとうございます、そしてこれからもよろしくね」

花陽ちゃんは恥ずかしそうにはにかむ

233 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:34:28.59 ousyxVWK0 214/881


すると久保さんも、少しはにかみながら

「天使!私の花陽は天使だ!うれしいよ!すごいうれしい」

「わたしもね、いろんな夢があって、なかなか叶えられなくて、でもあきらめないで頑張ってる所であなたに出会えて」

「そしたらすごい事になっていって、自分でも分かんないくらいあっという間にいろんな事が起こっていって」

「でもいつも花陽と一緒だったから、負けないでがんばったよ、1人だったら頑張れない事でも2人だからがんばれんだ」

「だから、こちらこそありがとう、そしてこれからもよろしくね!」

234 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:36:09.35 ousyxVWK0 215/881


2人は笑いあい

「ふふっ、私たち似てるのかな?」

「似てるも何も本人だしね」

そのまま自然と抱きしめ合う形となり、声を揃えて


『ありがとう』





235 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:37:20.18 ousyxVWK0 216/881


「次会う時までにはシカちゃんに少しだけでも近づけるように頑張るから、花陽のこと見ていてね」

「私ももっと素敵な花陽になれるように頑張っちゃうんだから」

「あと実家の祭壇の花陽グッズもっと充実させておくから、見に来てね!」

「サイダンニカザッテアルノオ?」


「あはは」

「えへへ」



本当にありがとうね



236 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:39:15.99 ousyxVWK0 217/881


久保さんが帰った日の夜

私は花陽ちゃんに呼び出されて、神田明神へ向かった

237 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:40:50.17 ousyxVWK0 218/881


いつも花陽ちゃんが練習している場所へ行くと

「ごめんね?呼び出したりして」

「ちょっとお話し、聞いてほしくて」

238 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:41:54.59 ousyxVWK0 219/881


花陽ちゃんはそのまま続ける

「私、自分は何も取りえがなくって、自信もなくって、あんまり自分の事、好きじゃなかったの」

「でもね、それは間違ってたって、最近思うようになって」

「なぜなら、私もμ’sの一員なんだって、自信じゃないけど、自覚を持ってきて」

「出来ないからやらないんじゃなくて、どうやったらできるのかって考えるようになったの」

「えへへ、みんなからは小さすぎる事かもしれないけど、私にとっては大きな一歩」

「きっと心の中にいる、もう一人の私が後押ししてくれたのかな?」

239 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:42:50.40 ousyxVWK0 220/881


私は笑って

「後押しされたんじゃない、花陽ちゃんと久保さんは一緒に歩いているんだよ」

「だから、その一歩は2人の一歩、これからもずっと同じ道を歩いていくの」

花陽ちゃんもにこりと笑い

「うん!」

240 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:43:48.74 ousyxVWK0 221/881



「穂乃果ちゃん!μ’sって最高だね!」


私は満面の笑顔で


「そうだよ!μ’sって最高なんだ!!」




241 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:44:32.04 ousyxVWK0 222/881



花壇に咲く百合の花は、風に揺られて寄り添うように

いつまでも、いつまでも 輝いていた


242 : ◆2wv2J1ktzo - 2016/04/22 19:45:12.21 ousyxVWK0 223/881



第5章「陽の光の下、百合の花は輝く」 完




続き
穂乃果「18人の女神 だよ!」【2】

記事をツイートする 記事をはてブする