1 : 以下、名... - 2016/06/27 22:56:05.48 Xa8XZvA/0 1/103

シンデレラガールズのSSになります

ちょっとだけ、刺激の強いシーンがありますので注意

元スレ
白菊ほたる「あなたの『不幸』をプロデュースしますから…!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467035765/

2 : 以下、名... - 2016/06/27 22:56:28.93 Xa8XZvA/0 2/103

「お待たせしました、プロデューサーさん」

「あ、これが今回のお仕事の資料なんですね…」

「台本と、それから…私の名札も」

「『白菊 ほたる』」

「はい、私の名前が、ちゃんとここに」

「…良かった、今回も、名前を間違われずに済んで…」

「倒産しちゃった前の事務所だと」

「そんなの、日常茶飯事でしたから」

「…それで、オーディションすら受けられない、なんてのも」

「…」

3 : 以下、名... - 2016/06/27 22:56:59.81 Xa8XZvA/0 3/103

「そうやって、心配して、不安になって、またダメで」

「やっぱり、私は、…不幸なんだなと」

「心のどこかで、諦めちゃってましたから…」

「なんて、しんみりしている場合じゃないですね」

「せっかくのお仕事なんですから、頑張らないと…!」

「それじゃあ、行きましょうか」

「プロデューサーさ…んッ!?」

4 : 以下、名... - 2016/06/27 22:57:46.18 Xa8XZvA/0 4/103

「あ、あいたたた…」

「すみません、急に足がもつれちゃって」

「私ったら、また焦っちゃって…」

「…?」

「プロデューサーさん、どうして顔を…」

「…あッ…」

「す、す、…すみません…」

「転んだ拍子に、こんなはしたない…」

「す、すぐ立ち上がりますから…!」

「…」

「あ、あの…」

「み、…見えちゃいました?」

「…いえ、見えちゃったから、顔を背けたんですよね…」

「すみません…お見苦しいモノを」

「…」

「…え?」

「あ、ああッ、そうですね、お仕事に行かないと…!」

5 : 以下、名... - 2016/06/27 22:58:13.45 Xa8XZvA/0 5/103

「はい、…気を付けて、行ってきま…」

「い、いえ、そうでしたね」

「『不幸な時ほど、笑え』」

「プロデューサーさんが、教えてくれましたからね…」

「…はい」

「私は、…しっかり、笑えているでしょうか」

「…えへへッ」

「そ、それじゃあ、行ってきますね…!」

6 : 以下、名... - 2016/06/27 22:58:55.88 Xa8XZvA/0 6/103

 


「みなさん、お疲れ様でした…」

「今日はありがとうございました」

「あッ、プロデューサーさん!」

「お疲れ様です」

「どうにか、無事に撮影が終わりました」

「良かったです、みなさんに迷惑をかけずに済んで…」

「実は、ちょっと、ハプニングもありましたが…」

「で、でも」

「プロデューサーさんが、教えてくれた通り」

「そういう不幸な時ほど、笑えるように」

「が、…頑張りました…!」

「…えへへ」

「…あ、そうですね、まずはお着替えしなきゃ」

「もうちょっと待っててくださ…きゃッ!」

7 : 以下、名... - 2016/06/27 22:59:23.54 Xa8XZvA/0 7/103

「いたた…」

「あ、足元に機材のコードがあったなんて…」

「プロデューサーさんの方ばかり見ちゃってました」

「あ…」

「…」

「そ、その…」

「すみません、…また」

「…ッ…」

「お、お眼汚し…失礼しました」

8 : 以下、名... - 2016/06/27 22:59:53.57 Xa8XZvA/0 8/103

「…え?」

「はい…実は、撮影中のハプニングで」

「ちょっと、汚しちゃったんです…」

「不幸中の幸い、と言うのでしょうか」

「なんとか、衣装は汚さずに済みまして」

「撮影に支障は出なかったんです」

「それで、衣装はそのままで、下着だけ換えさせてもらったんです」

「だ、だから、…朝のとは違ってて」

「その、あまり汚くはないと…」

「…って、何を言ってるんでしょうね、私…!」

「プロデューサーさんに、嫌な想いをさせておきながら、こんな…」

「汚いとか、汚くないとか、…関係、ないですもんね…」

「す、すみません…」

「…すぐ、着替えてきます…」

9 : 以下、名... - 2016/06/27 23:00:21.78 Xa8XZvA/0 9/103

「あとは、事務所に戻るだけなんですね」

「…え、今日はもう私だけ…?」

「す、すみません…私なんかのために、わざわざ車を…」

「それもプロデューサーとしての仕事だから当然…?」

「そう、言っていただけると、その…」

「…」

「ありがとう、ございます…」

「あの、私…」

「プロデューサーさんのために、頑張りますから」

「み、見捨てないで…もらえると」

「…あッ、えッ、…もう、なんですか急に撫でるなんて」

「肩肘、張らなくて、良い…?」

「…もう」

「優しいんですね、プロデューサーさんは」

「…」

「…本当に、ありがとうございます」

10 : 以下、名... - 2016/06/27 23:00:53.70 Xa8XZvA/0 10/103




「も、戻ってこれましたね」

「すみません…また、私のせいで…」

「まさか、道路を黒猫さんが横切っちゃうなんて…」

「危うく事故を起こしちゃうところ、でしたね」

「すみません、私のせいでプロデューサーさんに、災難が…」

「…あ」

「そ、そうですね、プロデューサーさんとしては」

「事故に遭いかけたことより…」

「急ブレーキで体制を崩しちゃって」

「めくれちゃった、…私のスカートの方が、災難、でしたね」

「ごめんなさい…」

11 : 以下、名... - 2016/06/27 23:01:28.70 Xa8XZvA/0 11/103

「…スカートをやめたら、ですか」

「そう、ですね」

「確かに、ちょうどプロデューサーさんと居る時に」

「転んじゃったり、風が吹いたりしちゃいますからね…」

「…でも」

「以前に、他の格好をした時のこと、覚えてますか…?」

12 : 以下、名... - 2016/06/27 23:01:56.94 Xa8XZvA/0 12/103

「ズボンの時は、転んじゃった共演者さんに引っ張られて」

「ずり下げられて、みんなに晒しちゃいました」

「和服の時は、帯が切れちゃって」

「はだけて前が全開になっちゃいました」

「キグルミは、まだマシでしたけど…」

「…動いていたら、ちょうど、『そこ』だけ破けちゃって」

「結局、見られちゃったじゃ、ないですか…」

13 : 以下、名... - 2016/06/27 23:02:27.16 Xa8XZvA/0 13/103

「私は、不幸から逃れられません」

「…逃れられ、ませんから」

「どう、あがいても」

「見せちゃう結果に、…収束するんです」

「…」

「スカートだと、その」

「見えちゃったとしても、ですよ」

「裾を整えたりで、『元通り』になるんです」

「スカートだと、最初から、…見え易いものですから」

「その分、元にも戻し易いんです」

「ズボンとか、どう頑張っても見えない服装だったら」

「衣服がダメになるような、そんな結果が待ってますから」

「…って、すみません」

「私の都合ばかりで、すみません…」

「…でも、もう…」

「そんな理由で、スカート以外はもうありませんし」

「新しく買っても、…きっと、すぐに…」

14 : 以下、名... - 2016/06/27 23:02:56.87 Xa8XZvA/0 14/103

「す、すみません!」

「せっかく事務所に戻ってきたのに」

「こんな話で、引き止めてしまって…!」

「さ、早く戻りましょう、プロデューサーさん」

「ちひろさんも待ってくれてるでしょうし」

「…はい、もう、湿っぽい話はおしまい、ですね」

「ええ、私ならもう平気です」

「ありがとうございます、プロデューサーさん…!」

15 : 以下、名... - 2016/06/27 23:03:32.51 Xa8XZvA/0 15/103




「…それで」

「ここに戻るまでの階段で、また見ちゃったと」

「…ふふッ」

「さすがですね、プロデューサーさん」

「ああ、そんな焦らなくても大丈夫ですよ」

「ほたるちゃんは、もう帰しましたから」

「この話は、聴かれたりしませんよ」

「まあ、聴かれたところで」

「プロデューサーと、そのアシスタントの」

「ただの事務的なお話と、そう思うでしょう」

「…実際、そうでしかないですからね」

「ふふッ」

16 : 以下、名... - 2016/06/27 23:04:09.67 Xa8XZvA/0 16/103

「で、どうしたんです?」

「そんな深刻そうな表情をして」

「ああ、早く帰りたいんですね?」

「そうですね、お仕事でだいぶお疲れのようですし」

「それに」

「今日もまた、ほたるちゃんのを、いっぱい見ちゃって、それで」

「…いえ、なーんでもありません♪」

17 : 以下、名... - 2016/06/27 23:04:57.59 Xa8XZvA/0 17/103

「…ん?」

「もう実験はもう充分だ、…ですか?」

「いやあ、人聞きの悪いことを仰いますねえ」

「可愛い可愛いアシスタントに向かって、このプロデューサーさんは」

「…もう、ノリが悪いですねえ」

「それで、改めてどうしたんです?」

「今更、正義の感情に目覚めました?」

「今更、罪悪の感情に苛まれました?」

「今更、男女の劣情が芽生えました?」

「…ふふ、ふふふッ…」

18 : 以下、名... - 2016/06/27 23:05:26.62 Xa8XZvA/0 18/103

「…ええ、忘れちゃいませんよ?」

「不幸体質を自覚している、あの子」

「ほたるちゃんが、うちに所属となった時」

「その不幸から、守り退け助けるために」

「なんとか手段を講じようと、相談しましたね」

19 : 以下、名... - 2016/06/27 23:05:54.30 Xa8XZvA/0 19/103

「プロデューサーさんは、何より、ほたるちゃんの心を護ろうとした」

「だから、どんなに辛い目にあっても大丈夫なように」

「魔法の言葉を、彼女にかけた」

「そう」

「『不幸な時ほど、笑え』、と」

「実際、救われているようですね」

「巡り巡って、自衛のモノとはいえ」

「以前のような気弱なそれじゃなくて」

「堂々とした、そう、拠り所に裏付けられた、そんな笑顔に」

「最近は、そんな笑い方ができているように思います」

「ステキ、ですねえ」

20 : 以下、名... - 2016/06/27 23:06:37.69 Xa8XZvA/0 20/103

「…で、私ですね」

「アシスタントとして、と言うより、個人的な感情ですが」

「事象の把握は、何より優先されるべきだと」

「そう考えていますから」

「精神論だけで越えられるほど、世の中は甘くない」

「敵を知り、己を知れば、百戦とて危うからず」

「把握していればこそ、打てる手がある」

「把握できていなければ、打開策も何もない」

「だから、です」

「…それを実験とは、いささか不名誉な称し方ですが」

「まあ、この際、良いでしょう」

21 : 以下、名... - 2016/06/27 23:07:04.89 Xa8XZvA/0 21/103

「プロデューサーさんも、知ってますよね」

「私が、ほたるちゃんに、何と教えたか」

「どんな、魔法の言葉をかけたか」

「…ええ」

22 : 以下、名... - 2016/06/27 23:07:41.55 Xa8XZvA/0 22/103




「『プロデューサーさんは、女の子のパンツを見るのが』」

「『嫌いも嫌い、大ッ嫌い』、と」


 

23 : 以下、名... - 2016/06/27 23:08:24.42 Xa8XZvA/0 23/103

「結果として、私の推測は的中しました」

「ああ、プロデューサーさん的に言えば」

「『実験が成功を収めた』、ですかね?」

「まあ、それはどうでも良いでしょう」

「私が、ほたるちゃんに魔法の言葉をかけた結果」

「プロデューサーさんは」

「『ほたるちゃんのを、見てしまう』」

「そんな毎日を、送るようになった」

「違いませんよね?」

「…ふふッ…」

24 : 以下、名... - 2016/06/27 23:09:27.62 Xa8XZvA/0 24/103

「そう」

「ほたるちゃんの不幸体質とは」

「周囲にただ不幸を撒き散らす類では、決してありません」

「『ほたるちゃんが考えうる、不幸』」

「それが、周囲に降りかかる」

「己が不安を、己で具現化し、己に不幸として返ってくる」

「…不憫な娘、でした」

25 : 以下、名... - 2016/06/27 23:10:15.71 Xa8XZvA/0 25/103

「でも、今は違います」

「ほたるちゃんは、うちに来て救われました」

「プロデューサーさんに出会って、救われました」

「『不幸な時ほど、笑え』、という、魔法の言葉で、救われました」

「その結果、どうなったか」

「…もう、わかってますよね?」

「ほたるちゃんは、優しい娘です」

「自分の将来よりも、何よりも」

「救ってくれたプロデューサーさんを、意識するようになりました」

26 : 以下、名... - 2016/06/27 23:10:44.25 Xa8XZvA/0 26/103

「そうして、ほたるちゃんは考えるようになります」

「私がかけた、魔法を道標に」

「『プロデューサーさんが、不幸になったらどうしよう』」

「『プロデューサーさんの不幸って、なんだろう』」

「『そうだ、女の子のが、…見えちゃうこと』」

「まあ、やぱりその結果でしょうね」

27 : 以下、名... - 2016/06/27 23:11:42.50 Xa8XZvA/0 27/103

「いやあ、不幸ですねえ」

「で、ほぼ毎日、可愛いアイドルのを見せられて」

「ホント、不幸なプロデューサーさんですね」

「お仕事で顔を合わせば、見えて、見えて…」

「大変ですねえ」

「…え?」

「オフの日にも、見ちゃった?」

「ほたるちゃんが足元に落としたケータイがなぜか誤動作して」

「画像が送られてきた?」

「…ふふふッ…」

「あははッ!」

「いやあ、これはこれは」

「想像以上の、『不幸』、ですねえ?」

28 : 以下、名... - 2016/06/27 23:13:23.46 Xa8XZvA/0 28/103

「そういう、わけでですね」

「何よりの収穫は」

「ほたるちゃんの考える『不幸』と、当事者の『不幸』」

「そこは、必ずしも一致するわけではない」

「それが、わかったこと、ですね」

「…ねえ?」

「だって、プロデューサーさん」

「『不幸』でしたか?」

「ほたるちゃんのを見れて、『不幸』、でしたか?」

「…ですよね」

「言わずとも、その前かがみが答えです」

「…うふッ…」

29 : 以下、名... - 2016/06/27 23:14:12.16 Xa8XZvA/0 29/103

「…えッ?」

「…もう充分でしょう、とは」

「もう、充分ほたるちゃんのを堪能したッ!」

「そういう意味ですか?」

「そんな、まっさかぁ」

「あんな可愛い13歳のを」

「見飽きちゃうなんて、考えられませんよねえ?」

「…まだ、足りないくらいじゃないですか」

「ちなみに、今日は何回くらい見ました?」

「何色でした?」

「それで興奮したんですよね?」

「…うふふふッ」

30 : 以下、名... - 2016/06/27 23:14:46.04 Xa8XZvA/0 30/103

「別に、茶化したりやしていませんよ」

「ただ、充分だと言える結果には」

「まだ至っていない」

「それだけですよ」

「プロデューサーさんも、そう」

「ほたるちゃんは、トップアイドルに登り詰められる」

「そう、確信していますよね」

「…いい、返事です」

「なればこそ」

「今、真実を明かすわけにはいかないんです」

「そう、ほたるちゃんには、まだ早い」

31 : 以下、名... - 2016/06/27 23:15:18.97 Xa8XZvA/0 31/103

「…私が何を、考えているか、ですか?」

「決まっているじゃないですか」

「事務所と、プロデューサーさんと、アイドル達の」

「輝かしい将来のこと、です」

「…」

「なんだかんだ言ってますが」

「私は、ウソはつきません」

「そこは信頼していただけると」

「まあ、アシスタントを疑うプロデューサーさんなんて居ないと思いますが」

「…信じて、くださいね?」

32 : 以下、名... - 2016/06/27 23:15:52.54 Xa8XZvA/0 32/103

「なぁんて」

「ええ、言わなくともわかりますよ」

「私を疑ってないことくらいは」

「…」

「…ありがとう、ございます」

「ふふッ」

「…ええ」

「然るべき時がくれば」

「すべて、お話ししますから」

33 : 以下、名... - 2016/06/27 23:16:20.57 Xa8XZvA/0 33/103

「さあ、もう良い時間ですね」

「明日もお仕事がありますから」

「今日はもう、上がりましょう」

「ね、プロデューサーさん…?」

「ふふッ」

34 : 以下、名... - 2016/06/27 23:16:47.60 Xa8XZvA/0 34/103




「…」

「す、すみません…」

「今日もまた、いっぱい…」

「…」

「そう、ですね」

「事務所に、戻らないと…」

「あ、今日も私だけなんですね」

「何から何まで、すみません、本当に…」

「…」

35 : 以下、名... - 2016/06/27 23:17:21.75 Xa8XZvA/0 35/103

「…あの」

「プロデューサーさん」

「運転しながらで構いません」

「事務所に着くまでの間」

「少しだけ、…良いですか?」

「…ありがとうございます」

36 : 以下、名... - 2016/06/27 23:18:00.85 Xa8XZvA/0 36/103

「『不幸』って、どういう時に起こるものか」

「考えたことって、ありますか?」

「私は…」

「…」

「…こちらへ移籍させていただく、その前に」

「たくさんの人達に、お世話になりました」

「たくさんの仲間が、支えてくれました」

「たくさんの業界を、見てきました」

「…」

37 : 以下、名... - 2016/06/27 23:18:32.73 Xa8XZvA/0 37/103

「…そんな中で」

「そんな中で、良く、耳にする言葉がありました」

「『幸せ』」

「そう、何度も聞いてきました」

「…妬んでいるわけでは、ありません」

「むしろ、私の不幸から逃れられて」

「本当に良かったって、そう、思うんです」

「そう、…思って、いたんです」

38 : 以下、名... - 2016/06/27 23:19:06.13 Xa8XZvA/0 38/103

「『幸せ』を口にしたみんなは」

「…もう、幸せだと、言えない」

「そんな風に、なってしまいました」

「…」

「仲の良かった子が、ケガしちゃって、お仕事がなくなったり」

「良くしてくれた人が、事故にあって引退しちゃったり」

「そして、プロデューサーさんも、…です」

39 : 以下、名... - 2016/06/27 23:19:53.00 Xa8XZvA/0 39/103

「…前の事務所で、担当してくださったプロデューサーさんに」

「私、訊ねたことがあるんです」

「私なんかの担当で、良かったんですか、と」

「そうしたら、前のプロデューサーさんは」

「私を担当できて、『幸せ』だ、と」

「そう、笑ってくれました」

「…」

「それが、最後に見た、プロデューサーさんの笑顔でした」

「…」

「私が、私が居たばっかりに…」

40 : 以下、名... - 2016/06/27 23:20:34.65 Xa8XZvA/0 40/103

「…すみません」

「ただ、その」

「不幸は、向こうからやってくるんです」

「何に惹かれて、やってくるか」

「それは、『幸せ』なんだと、私は思うんです」

「幸せであれば、その足を引っ張ろうと」

「呼んでもない『不幸』がやってくる」

「…幸せっていうのは、他でもない」

「『不幸の前兆』だと、私は思うんです」

41 : 以下、名... - 2016/06/27 23:21:21.72 Xa8XZvA/0 41/103

「だから、その」

「プロデューサーさんが、教えてくれた」

「『不幸な時ほど、笑え』」

「その言葉が、嬉しかったんです」

「幸せになりなさい、でも、不幸を退けよう、でもなく」

「あるがままの不幸を受け入れて」

「そのうえで、笑えるようにと」

「決して、幸せにならないように」

「絶対に、不幸なままあるように」

「そして、平穏を過ごせるように」

「不幸の断頭台に続く、幸せの階段を登らなくて済むように」

「…だから、私…!」

42 : 以下、名... - 2016/06/27 23:21:50.43 Xa8XZvA/0 42/103

「…?」

「…どうして、そんな」

「そんな、哀しそうな顔を」

「どうしてプロデューサーさんが、そんな」

「辛くて泣きそうな…」

「あ…」

「やっぱり、プロデューサーさんは、優しいんですね」

「私なんかのために、泣いてくれて…」

「…違う?」

「…す、すみません」

43 : 以下、名... - 2016/06/27 23:22:21.01 Xa8XZvA/0 43/103

「…あッ」

「お話をしていたら、もう事務所ですね…」

「…」

「…すみません、空気を悪くしてしまって」

「えッ、あ…」

「…はい、プロデューサーさんに、頭を撫でてもらうの」

「…好…、その、キライじゃない…です」

「…」

「…そう、ですね」

「戻りましょう、事務所に」

44 : 以下、名... - 2016/06/27 23:23:33.82 Xa8XZvA/0 44/103




「…限界?」

「どうしたんです、プロデューサーさん」

「…心配しなくても、ほたるちゃんなら、もう帰しましたよ」

「今ここに居るのは、プロデューサーさんと」

「可愛い可愛いアシスタントの、私だけです♪」

「…」

「…ずいぶんとまあ、深刻な面持ちで」

「どうしたんです?」

「今日はほたるちゃんのを見れなかったんです?」

「…ああ、いえ、結構です」

「その前かがみが充分なほどの答えです」

「毎度、わかりやすくて助かります」

「で、一体どうしたんですか」

「見え過ぎちゃって、もうガマンできなくなっちゃいました?」

「えッ、違う?」

「…いえ、別に」

「13歳のを見て興奮するプロデューサーさんですから」

「そんなことだろうと、タカを括ってたわけじゃないですよ?」

「…ええ、ホントに」

「で、どうしたんです」

45 : 以下、名... - 2016/06/27 23:24:14.40 Xa8XZvA/0 45/103

「…」

「…なるほど」

「ほたるちゃんの価値感を知って、辛くなった、と」

「…まあ、確かに」

「この業界に身を置くとはいえ、13歳の女の子ですからね」

「そんな寂しい考え方を、してしまうような」

「そんな人生を歩んできたこと」

「そうして」

「プロデューサーさんの魔法の言葉は」

「救いになりはすれど」

「…歪んだカタチでの、救いとなってしまった」

「これは、想定外でしたね…」

「…」

46 : 以下、名... - 2016/06/27 23:24:43.59 Xa8XZvA/0 46/103

「…それで」

「プロデューサーさんは、どうお考えで」

「どうすれば、救えると?」

「…」

「ほたるちゃんに、真実を打ち明ける?」

「思ったモノが不幸になるから、安心して楽しいコトだけ考えろ」

「そう、伝える、と」

「…」

47 : 以下、名... - 2016/06/27 23:25:12.00 Xa8XZvA/0 47/103

「却下、…ですね」

「確かに、うまくいけば解決になりそうですね」

「むしろ、1度うまくいってしまえば」

「今度は、幸福が舞い込むようになるかも知れない」

「それこそ、鷹富士さんのように」

「でも、それでも」

「ほたるちゃんに、それが可能だとでも?」

「私は、そうは思えません」

「むしろ、さっきの話を聞いたからこそ」

「私は全力で阻止します」

48 : 以下、名... - 2016/06/27 23:25:59.18 Xa8XZvA/0 48/103

「13歳にして、そんな考えに至る娘です」

「そこを、矯正できるとお思いで?」

「下手に伝えて、どうなるか」

「ほたるちゃんは、きっと、こう考えるでしょう」

「『今までの不幸は、やっぱり自分が招いていた』」

「『みんなに迷惑をかけたのは、不幸を、具体的な不幸を想像した自分』」

「そうして、罪悪に押し潰されるでしょう」

「それだけに留まりません」

「きっと、ありとあらゆる『不幸』を想像するでしょう」

「今更、しちゃいけないと言って、それは無理な注文でしょう」

「その『不幸』がどこまで及ぶかは定かではありませんが」

「…うちの事務所の面々だけで済めば、御の字じゃないですかね?」

「…」

49 : 以下、名... - 2016/06/27 23:27:34.17 Xa8XZvA/0 49/103

「しかし」

「このままでは、いけませんね…」

「わかりました」

「私が、何か手立てを考えておきます」

「…私は、プロデューサーさんの、アシスタントですから」

「こういう時に、手が打てるように」

「普段から、情報把握に動いているわけですから」

「任せてください」

「私は、誰も」

「『不幸』にしない」

「そう」

「『誰も、損しない』、そんな世界にする」

「そう、誓います」

50 : 以下、名... - 2016/06/27 23:28:49.08 Xa8XZvA/0 50/103



「あ…」

「お疲れ様です、プロデューサーさん」

「はい、今日のお仕事は順調に進みました!」

「えへへッ」

「機嫌が良い、ですか?」

「そう、ですね」

「だって、最近は」

「お仕事も調子が良くて」

「特に目立った不幸もなくて…」

「あ、そうだ…」

「今朝、また、プロデューサーさんに見せちゃったんでした…」

「す、すみません…」

「プロデューサーさんばかり、不幸にしちゃって…」

「…」

「…そ、そうですね」

「立ち話もあれですし、戻りましょうか」

51 : 以下、名... - 2016/06/27 23:29:19.76 Xa8XZvA/0 51/103

「…でも、本当に」

「最近は、調子が良くて」

「…」

「…まさか」

「まさか、とは思います、が…」

「…」

「これが、『幸せ』…?」

「これが…」

「『不幸』の、前触れ…?」

「…」

「…あッ、すみません…すぐ乗ります」

「考えても仕方ないですね」

「すみません…」

「あッ、またお迎えは私だけなんですね」

「…」

52 : 以下、名... - 2016/06/27 23:29:50.47 Xa8XZvA/0 52/103




「おかえりなさい、プロデューサーさん、ほたるちゃん」

「ただいまです、ちひろさん!」

「先方からお電話をいただきましたよ、主役がほたるちゃんで良かった、と」

「そ、そんな…勿体無いお言葉ですよ」

「まあまあ、そう謙遜しないで」

「…ありがとうございます」

53 : 以下、名... - 2016/06/27 23:31:00.57 Xa8XZvA/0 53/103

「さて、それじゃあ、ほたるちゃん」

「…はい、私はお先に失礼しますね」

「帰りも気を付けてくださいね、お仕事で疲れているんですから」

「はい、ありがとうございます!」

「…ふふッ」

「プロデューサーさん、ちひろさん、お疲れ様でした…!」

54 : 以下、名... - 2016/06/27 23:31:34.86 Xa8XZvA/0 54/103

「…さて、プロデューサーさん」

「あれから何日か過ぎましたが」

「まだ、有効な手立てが、浮かびません」

「…すみません」

「…」

「それに、いつまでほたるちゃんに気付かれずに事を進められるか」

「それも懸念材料です」

「…」

「だから、プロデューサーさん」

「1つ、頼まれていただけないでしょうか」

55 : 以下、名... - 2016/06/27 23:32:02.19 Xa8XZvA/0 55/103

「…大それたことではありません」

「ほたるちゃんの心情、ご存知でしょう」

「なればこそ、です」

「仮に、もしも仮に」

「『万が一』のコトがあった際に」

「あの娘を、傷付けてしまわないように」

「責任感を、罪悪感を、絶望感を」

「未来ある13歳に、背負わせてしまわないように」

「…ただひとこと、音声として、記録して欲しいんです」

「ほたるちゃんと一緒に居られて、『幸せ』だ、と」

56 : 以下、名... - 2016/06/27 23:32:33.32 Xa8XZvA/0 56/103

「もちろん、私も」

「そして、事務所のみんなにもお願いするつもりです」

「…こんな、何か起こってからの保険からですが」

「それでも、何かできることがあるとすれば」

「手は打っておきたいんです」

「…」

「ありがとうございます、プロデューサーさん」

「はい、バッチリ記録できました」

「これで、準備が1つ整ったわけですね」

57 : 以下、名... - 2016/06/27 23:33:03.42 Xa8XZvA/0 57/103

「…それでは、私はお先に失礼します」

「プロデューサーさんは、…今日は事務所にお泊りですか」

「そうですね、明日はだいぶムチャなスケジュールですから」

「戻って出勤し直す余裕もなさそう、ですね…」

「すみません、アシスタントでありながら、こんな時に」

「それでは」

「…ええ、プロデューサーさんもお気を付けて」

58 : 以下、名... - 2016/06/27 23:33:42.26 Xa8XZvA/0 58/103




「…」

「…さて…」

「…」


 

59 : 以下、名... - 2016/06/27 23:34:23.97 Xa8XZvA/0 59/103

「…?」

「携帯が鳴ってる…」

「誰でしょう…?」

「…ッ」

「ひちろ、さん…?」

「ど、どうしましょう…」

「私、何か迷惑をかけてしまったのでしょうか…」

「…」

「め、メール…ですね」

「えっと…」

60 : 以下、名... - 2016/06/27 23:34:56.28 Xa8XZvA/0 60/103

「『今日は、お疲れ様でした』…?」

「よ、良かった…普通のメールだ」

「…?」

「あ、プロデューサーさん、今日は事務所に泊まるんだ」

「頑張って、くれてるんですね…」

「私、…いえ、事務所の、みんなのために」

「…私も、頑張らないと」

「うん」

61 : 以下、名... - 2016/06/27 23:35:33.13 Xa8XZvA/0 61/103

「…まだ、続きが」

「…ッ…」

「…プロデューサー、…さん、が…」

「お仕事を、頑張ることができるのが嬉しい、って」

「それで…わ、私と…ッ」

「『私と一緒に居られて、幸せ』って…」

「…そんな…」

62 : 以下、名... - 2016/06/27 23:36:02.10 Xa8XZvA/0 62/103

「あ、お、音声データが…」

「…」

「プロデューサーさんの、声…」

「…」

「…言ってる…」

「確かに、プロデューサーさんが、言ってる…」

「『幸せ』だ、って…」

63 : 以下、名... - 2016/06/27 23:36:42.71 Xa8XZvA/0 63/103

「…」

「…プロデューサーさん…」

「どうしよう」

「どうしようどうしようどうしよう」

「プロデューサーさんが、『幸せ』になっちゃったら…!」

「ううん、喜ばしいことなのに」

「私の、せいで」

「私のせいで、その『幸せ』は…ッ」

「『不幸の前兆』に、他ならないのにッ!」

「…」

64 : 以下、名... - 2016/06/27 23:37:12.53 Xa8XZvA/0 64/103

「どう、すれば…」

「…」

「…ッ!」

「そう、だ」

「『幸せ』が、『不幸の前兆』だったら」

「その『幸せ』を、崩し壊してしまえば、良いんだ…」

「そうすれば、プロデューサーさんは」

「『不幸』にならない」

「『幸せ』にはなれなくても、『不幸』にならずに済む…」

「…」

「でも、そんなことって…」

「…!!」

65 : 以下、名... - 2016/06/27 23:37:44.24 Xa8XZvA/0 65/103

「…今日は、プロデューサーさんは」

「事務所に、お泊り…」

「…」

「プロデューサーさん…」

「…すみません」

「…」

66 : 以下、名... - 2016/06/27 23:38:21.43 Xa8XZvA/0 66/103




「…さて」


 

67 : 以下、名... - 2016/06/27 23:38:55.35 Xa8XZvA/0 67/103




「事務所の明かりは、まだ点いてる…」

「…」

「…カギは、かかってない」

「プロデューサーさんは」

「…居ない」

「急がなきゃ、いけないのに…!」

「…」

「…どこに、行ったんだろう…」

68 : 以下、名... - 2016/06/27 23:39:37.82 Xa8XZvA/0 68/103

「いつもの仕事机には、居ない」

「いつもの応接室にも、居ない」

「いつもの事務所には、…居ない」

「どうして…」

「…」

「…遅かった?」

「私が、『幸せ』に、…間に合わなかった?」

「…プロデュー…サー…さん」

「…」

「…!」

「いや、まだだ」

「まだ、探していない部屋がある」

「お泊りって言ってたから、もしかしたら…」

「それに、もし、そうだったら」

「その方が、…きっと、都合が良い…」

「…」

「…今、行きますね」

「プロデューサーさん…!」

69 : 以下、名... - 2016/06/27 23:40:09.18 Xa8XZvA/0 69/103

「…良かった」

「やっぱり、仮眠室に居たんですね」

「…」

「…まだ起きているようですが」

「私が来たことには、気付いてないみたいですね…」

「今、仰向けで読んでいるのは」

「明日のお仕事で使う、資料でしょうか」

「…」

「…うん」

「全部、そう、全部」

「…都合が、良い」

70 : 以下、名... - 2016/06/27 23:40:50.56 Xa8XZvA/0 70/103

「こうなったら、あとは、ゆっくりと」

「期を待つ、それだけ」

「…」

「プロデューサーさんが、資料を置く」

「その瞬間が、仕掛け時…!」

「…」

「…置いた、大きなアクビをしながら…ッ!」

「今しか、ないッ!」

71 : 以下、名... - 2016/06/27 23:41:41.48 Xa8XZvA/0 71/103




「プロデューサーさんッ!」

「私が履いてるのを、見てくださいッ!」


 

72 : 以下、名... - 2016/06/27 23:42:44.89 Xa8XZvA/0 72/103

「お、落ち着いてくださいプロデューサーさん!」

「私がここに居ることなんて、どうだって良いじゃないですか」

「それよりも、ほら」

「早く、見てください…!」

「こうやって、お顔を跨いでいるのは」

「私だって、その、…恥ずかしいんですから!」

「…ッ!」

「だ、ダメです、動いちゃったら!」

「見てくれなきゃ、ダメなんです!」

「に、逃がさないですよ…!」

73 : 以下、名... - 2016/06/27 23:43:36.87 Xa8XZvA/0 73/103

「ダメです、眼を開けてください!」

「眼を開けて、しっかりと見てください!」

「じゃないと、…じゃないと!」

「…」

「これでも…」

「…見て、くれないんですね…」

「わかりました」

「だったら…!」

「…!」

74 : 以下、名... - 2016/06/27 23:44:31.16 Xa8XZvA/0 74/103

「こ、こうすれば…!」

「眼を開けて貰えないなら、こうやって」

「押し付けちゃいますから!」

「眼を背けちゃうほど、キライなのでしたら」

「こうやって、お顔に押し当てちゃえば」

「…すごく、イヤですよね?」

「すごく、すごく、…『不幸』、ですよね?」

「ね…ッ!?」

75 : 以下、名... - 2016/06/27 23:46:02.17 Xa8XZvA/0 75/103

「だ、ダメですよ…」

「どんなにもがいても、逃がしませんから…」

「このスカートの中に、逃げ場なんて、ないんですから…!」

「でも、このままじゃ…」

「…」

「ちょ、ちょっとだけ、脚でお顔を挟みますね」

「プロデューサーさんが、動かないように…!」

「もう、顔を背けられないように」

「ちょっとだけ、ぎゅぅっとします!」

「んしょッ…」

「プロデューサーさんが、『幸せ』じゃなくなるまで」

「わ、私は退きませんから…!」

76 : 以下、名... - 2016/06/27 23:46:40.50 Xa8XZvA/0 76/103

「さ、叫んじゃダメです」

「誰かが来ちゃったら…!」

「…えいッ」

「そんなことになったら、困りますから」

「お口を、塞がせてもらいます…!」

「ち、窒息しちゃわないように」

「鼻は空けておきますから」

「息は、できてますよね…?」

「苦しい、ですか…?」

「…」

「…んッ…」

「で、でも、…ごめん、なさい」

「プロデューサーさんを、助けたいんです」

「そんな苦しそうな呼吸も、もうすぐ…!」

「だから、…だからッ!」

77 : 以下、名... - 2016/06/27 23:47:52.08 Xa8XZvA/0 77/103




「どうか、早く、…『不幸』に、なってください…!」


 

78 : 以下、名... - 2016/06/27 23:48:36.17 Xa8XZvA/0 78/103




「…」

「…どれくらい、経ったのでしょう」

「頭が、ボーッとして」

「…プロデューサーさん」

「さっき、思い切り仰け反ってから」

「…動いて、くれませんね」

「…」

「すみません」

「こんな、イヤな想いをさせてしまって」

79 : 以下、名... - 2016/06/27 23:49:21.03 Xa8XZvA/0 79/103

「でも」

「プロデューサーさんを」

「…私は、プロデューサーさんを」

「『幸せ』に、したく、なかったんです」

「だって、それは、…『不幸への前兆』だから」

「だから、すみません」

「こんな仕打ちを、しちゃって…」

「顔を背けるほどの、キライなモノを」

「呼吸も絶え絶えになるほどに、押し当てつけて」

「動かなくなるまで、…ううん、動かなくなっても、まだずっと続けて…」

「…」

「…プロデューサーさん」

「『不幸』に、なって貰えました、でしょうか」

80 : 以下、名... - 2016/06/27 23:50:02.04 Xa8XZvA/0 80/103

「あ…お口、塞いだままでしたね」

「今、退きます」

「…?」

「…プロデューサーさん」

「なんで、そんな、…笑顔で」

「…」

「引きつった、笑顔、…で」

81 : 以下、名... - 2016/06/27 23:50:49.22 Xa8XZvA/0 81/103

「…あ」

「そうか、…そうです、よね」

「プロデューサーさんが、教えてくれた言葉」

「そう、ですよね」

「『不幸な時ほど、笑え』」

「こんな、時まで…」

「…ありがとう…ありがとう、ございます」

「プロデューサーさんが、笑ってくれたから…」

「はい」

「『不幸』にできたって、安心できました」

「…うふふ、ふふふふッ…」

「本当に、良かった…良かったです…ッ」

82 : 以下、名... - 2016/06/27 23:51:29.29 Xa8XZvA/0 82/103




「お疲れ様です、プロデューサーさん」

「今日のお仕事も、大成功だったようですね」

「ええ、アシスタントとして鼻が高いです」

「…」

「どうしました?」

「何を、心配することがあるんです」

「何もかも、うまくいっているじゃないですか」

83 : 以下、名... - 2016/06/27 23:52:06.03 Xa8XZvA/0 83/103

「そう、以前と変わらずに」

「ほたるちゃんの意識は、あなたに」

「プロデューサーさんに向けられています」

「自身の未来より、プロデューサーさんの未来を」

「何より、危惧しています」

「プロデューサーさんが、『不幸』に、ならないように」

84 : 以下、名... - 2016/06/27 23:52:34.06 Xa8XZvA/0 84/103

「『不幸の前兆』である、『幸せ』を無くすために」

「そのために、意図的に『不幸』にする」

「そうやって」

「『幸せ』と『不幸』の調整をする」

「あわよくば、打ち消す」

「…それが、ほたるちゃんの出した、答え」

85 : 以下、名... - 2016/06/27 23:53:10.15 Xa8XZvA/0 85/103

「優しい娘ですから」

「意図的に『不幸』にするなんて、考え付かなかったのでしょうね」

「大切な人であれば、そうあるほどに」

「そうして、あの娘は想い付いた」

「想い付いて、実行に移した」

「プロデューサーさんが、大切だから」

「プロデューサーさんを、助けるために」

「そして」

「プロデューサーさんにとって、何が『不幸』か」

「それを、知っていたから」

「なればこその、結果ですね」

「…ふふッ…」

86 : 以下、名... - 2016/06/27 23:53:45.56 Xa8XZvA/0 86/103

「そうして、ほたるちゃんの意識が」

「プロデューサーさんを、意図的に『不幸』にする」

「そこに向いている今」

「そこにしか向けられていない、今」

「私達を妨げるモノなんて、ありません」

「襲い来る『不幸』なんて、ないんです」

「…そう」

「プロデューサーさん、以外には」

87 : 以下、名... - 2016/06/27 23:54:15.46 Xa8XZvA/0 87/103

「…」

「プロデューサーさんも」

「最近は、言わなくなりましたね」

「ほたるちゃんが可愛そうだとか」

「人道に反しているだとか」

「もう、実験は充分じゃないですかー、…とか」

「…ふふッ」

88 : 以下、名... - 2016/06/27 23:55:06.77 Xa8XZvA/0 88/103

「やっぱりあれですか」

「改めて、ほたるちゃんのを見て興奮しちゃいました?」

「よりにもよって、13歳の娘ので!」

「もう、肩肘を張るだけの心が折れちゃいました?」

「あの可愛らしいお尻で、心ごと潰されちゃいました?」

「…ふ、ふ」

「あははッ!」

「…いえ、ごめんなさい」

「そうですよね」

「その前かがみが、何よりの答えですね」

「…ふふ」

「…くくッ…」

「良いじゃ、ないですか」

「『誰も、損しない』世界じゃないですか」

「…ふふふッ!」

89 : 以下、名... - 2016/06/27 23:57:05.16 Xa8XZvA/0 89/103

「え?」

「あの時、ウソの録音で、けしかけるよう仕向けた?」

「違いますよぉ」

「たまたま想い付いたんで、その手段に賭けてみたんです」

「実際、うまくいかなかった可能性だってありますから」

「その時は、お伝えした通りの使い方をしていましたよ?」

「きっと」

「…うふッ」

90 : 以下、名... - 2016/06/27 23:57:33.29 Xa8XZvA/0 90/103

「…さ、そろそろ行ってあげないと」

「待ちくたびれちゃいますよ」

「ずっと、プロデューサーさんを待っていたんですから」

「健気ですよねえ」

「ふふッ」

「さあ、私は邪魔しないように」

「空気の読める可愛いアシスタントですから」

「…もう、ノリが悪いままですね」

「もうほたるちゃん以外は見えないんですかねえ」

「13歳の、いたいけな少女しか、もう」

「…」

「なぁんて、冗談ですよ、冗談」

「うふふッ」

「それじゃあ、プロデューサーさん」

「お先に、失礼しますね」

91 : 以下、名... - 2016/06/28 00:05:05.40 LRcSd7MV0 91/103




「…」

「…あッ、プロデューサーさん」

「待って、ました」

「…えへへッ」

「私、…もう、すっかり仮眠室の主、ですね」

「えへへへへ」

「さあ、それじゃあプロデューサーさん」

「今日の出来事の、おさらいを、しましょう…!」

93 : 以下、名... - 2016/06/28 00:05:28.88 LRcSd7MV0 92/103

「今日、幸せだったこと」

「あ、紙にまとめて印刷してあるんですね」

「…わぁ、いっぱいありますねぇ…」

「えーと」

「朝の占いが1位だった」

「お弁当の卵焼きが美味しかった」

「あの3連続の信号に引っ掛からなかった」

「…」

「…まだまだ、いっぱい、…いっぱい…」

「…」

94 : 以下、名... - 2016/06/28 00:06:02.80 LRcSd7MV0 93/103

「…今日も、『幸せ』、だったんですね」

「それじゃあ」

「見合うだけの、『不幸』で、打ち消さないと」

「本当に、『不幸』になっちゃいますからね」

「これだけの『幸せ』なら…」

「『押し付け』ですね」

「ほら、こっちに来て」

「座ってください、プロデューサーさん」

95 : 以下、名... - 2016/06/28 00:06:45.23 LRcSd7MV0 94/103

「よい、しょ」

「…ふふ…」

「スカートの中に、プロデューサーさんの、お顔が」

「眼は、開いてくれてますか?」

「しっかりと見てますか?」

「ちゃんと『不幸』になってますか?」

「でも、まだです」

「まだ、足りないんです」

「…んッ…」

「ほら、ぎゅぅーっと」

「呼吸が、おかしくなっちゃうくらい」

「ぎゅっと、ぎゅうっと…」

「これくらいじゃなきゃ、『不幸』には…!」

96 : 以下、名... - 2016/06/28 00:07:28.52 LRcSd7MV0 95/103

「…」

「…ううん」

「プロデューサーさん」

「最近は、引きつった笑顔じゃなくなってきてますね」

「すごく、自然に、笑えてる風に見えます」

「…もしかして」

「この『不幸』に、耐性がついてきてませんか?」

「だとしたら、大変ですね」

「今までと同じことでは、『不幸』になりきれなくて」

「…きっと、また『幸せ』に…」

「…」

97 : 以下、名... - 2016/06/28 00:07:59.51 LRcSd7MV0 96/103

「…えいッ」

「変更です、プロデューサーさん」

「『押し付け』から、『圧し掛かり』にッ」

「こうやって、ちょっとでも、強く、長く…ッ」

「そうして、『不幸』に、ならないと…」

「…うん…」

「大人しくしてくれて、ありがとうございます」

「そう、そのまま、じっとして」

「この『不幸』を、しっかりと受け止めてください」

「…んんッ…」

「…」

98 : 以下、名... - 2016/06/28 00:08:54.21 LRcSd7MV0 97/103

「んふぅ…」

「今日は、これくらいでしょうか」

「でも、このままじゃ、やっぱり…」

「考えないと、いけませんね」

「もっと強く長く、押し付ければ良いのでしょうか」

「それとも、もっと違うのを履いた方が…」

「…いえ、いっそ履かない方が?」

「困りました…」

「…」

「あッ…」

「こんな時でも、頭を撫でてくれるんですね…」

「やっぱり、プロデューサーさんは、優しいですね」

「…えへへ」

99 : 以下、名... - 2016/06/28 00:09:29.83 LRcSd7MV0 98/103

「…はるかな昔」

「パンドラの箱なるモノがあって」

「その中には、ありとあらゆる災厄が入っていた」

「そう伝え聞いてます」

「そうして、その底には」

「『希望』が封じられている、とも」

「プロデューサーさん」

「私のスカートは、きっと、パンドラの箱なんです」

「この中には、災厄が渦巻いている」

「めくれる度に、プロデューサーさんを『不幸』にする」

「そんな災厄の詰まった、箱」

101 : 以下、名... - 2016/06/28 00:10:04.17 LRcSd7MV0 99/103

「だからこそ、ですね」

「今の体勢が、私、…好きなんです」

「だって、『不幸』しかないパンドラの箱に」

「私のスカートの中に」

「プロデューサーさんという、『希望』が」

「今、確かに入っていると」

「ハッキリと、そう感じられますから」

「っと、そんなコト言っちゃうと」

「私も、『幸せ』になっちゃいますね?」

「…ふふ…」

「…うふふッ…!」

102 : 以下、名... - 2016/06/28 00:10:43.17 LRcSd7MV0 100/103

「プロデューサーさん」

「…今はまだ、想い付かなくとも」

「いつかきっと、方法を考えますから」

「そうして、プロデューサーさんの『調整』を、私が担いますから」

「プロデューサーさんは、ここで」

「私の、スカートの中で」

「笑っていてください」

「スカートの中という、『不幸』に塗れた中で」

「『不幸な時ほど、笑え』」

「教えてくれた言葉の通りに」

「うふふ…ッ」

103 : 以下、名... - 2016/06/28 00:12:57.48 LRcSd7MV0 101/103

「大丈夫」

「プロデューサーさんは、何も心配しなくて良いんです」

「これから先」

「未来永劫」

「私が、ずっとお傍に」

「私が、一緒に、そう、ずっと一緒にいて」

「私が、プロデューサーさん、…あなたの」

104 : 以下、名... - 2016/06/28 00:13:34.19 LRcSd7MV0 102/103




「あなたの、『不幸』を、プロデュースしますから…!」


 

105 : 以下、名... - 2016/06/28 00:14:31.16 LRcSd7MV0 103/103

以上で終了です
お読みいただき、ありがとうございました

html化の依頼してきます

記事をツイートする 記事をはてブする