(だれも、いないのか)
劇場に到着し、扉を開けると、エントランスには誰もいなかった。
事務室へ向かうも、誰の気配も感じられなかった。
ただ、PCだけが稼働していて、モニターには画像が表示されていた。
それは。
アカネチャンダヨー! アカネチャンダヨー! アカネチャンダヨー!
画像が動いたかと思いきや、スピーカーから茜の声が大音量で鳴り出す。
茜の悪戯にしては、度が過ぎている。
(もし次に会ったら、叱っておかないと)
唐突にピタリと音が止むと、今度は見慣れない劇場が映っている。
(ドームがないのか。次は縮小して身近な劇場にする予定なのか?)
遠くから、誰かが歩いてくる。
劇場へ向かって、ではない。こちらへ向かって。
麗花「やっほー♪ プロデューサーさん、まだそんなところにいるんですか?」
P「俺に、言ってるのか?」
麗花「早くこっちに来ないと、消えちゃいますよー? 手を伸ばして下さい。捕まえちゃいますから♪」
P「何を、言ってるんだ? お前は麗花、なんだよな?」
麗花「早く早く♪」
(モニターに手を当てると、いいのか?)
麗花だとは分かっていても、何が起きているのか頭がついていかない。
(それでも、誰もいないここよりは―――)
麗花「こんにちは、プロデューサーさん。ナイス普通の判断でした♪」
P「ここは、どこなんだ?」
アイドルマスター シアターデイズ!
(何だ!? 後ろから大音響が…)
麗花「プロデューサーさん、扉の前に立ってください。始まりますよー♪」
手を引かれ、劇場の扉の前に立つと、勝手に扉が開いていった。
(なんだ。いつもと変わらないじゃないか)
お辞儀するアイドルに挨拶を返し、俺はいつものように、ライブの準備を始める。
(…いつものように?)
――――ある事務室
アカネチャンダヨー アカネチャンダヨー アカネチャ
その日、世界の全てが停止した。
プレイヤーを求めて鳴り響いていた茜の声と共に、永遠に動きを止めたのだった。
2018.3.19
7 : ◆8PvrU9Ob/. - 2018/07/16 20:35:24.27 tk8f3rsP0 7/7あとがき
書いていて、グリマスと略称していたのを思い出した