あの漫画から。
梨子「千歌ちゃん」
千歌「なに?」
梨子「将来は何をやるとか決めてる?」
千歌「おっ、ついに踏み込んできたね。わたしが考えないようにしてきたとこ」
梨子「卒業したら何するの?」
千歌「何するってい「進学?」
千歌「いやまだそ「就職?」
千歌「そこまではま「一人暮らしとかするの?」
千歌「それに関しては「その場合また犬飼うの?」
千歌「飼えるんな「休みの日とか普段なにしてるの?」
千歌「大体なん「シャンプー何使ってるの?」
千歌「待ってよ!!」
千歌「ジャーナリズムがチカの前を歩いてるから!もうちょっと歩幅合わせてよ!」
梨子「何のために生まれてきたの?」
千歌「生命そのものの永遠のテーマだよそれ」
梨子「旅館継ぐの?」
千歌「いやそれは無いんじゃないかな。継ぐとしたら志摩姉だと思うし」
梨子「やりたい事とかはないの?」
千歌「やりたくない事はハッキリしてるよ」
梨子「何?」
千歌「アラームをかけること、満員電車に乗ること、汗をかくこととか」
梨子「じゃあ家でやる仕事ね」
千歌「小説家になろうかな」
梨子「本当にやりたいなら良いんじゃない?」
千歌「楽な感じしない?」
梨子「楽ではないと思うけど…」
千歌「歌詞担当だから話作るのもちょっと自信ついてきたし!それに、たまにストーリーも降りてくるもん」
梨子「へぇ、例えばどんな?」
千歌「主人公が旅行先の伊豆で踊り子に出会うんだけどね…」
梨子「あるよそれ」
千歌「あるの!?」
※川端康成 著『伊豆の踊子』
梨子「結構有名だよ」
千歌「やっぱりわたしが思い付く事なんて世界中の誰かが既に考えてたことなんだろうなぁ」
梨子「他には?」
千歌「岩屋の中でうっかり2年過ごしたら、体がすごく大きくなってきたサンショウウオが…」
梨子「それもあるよ」
千歌「あるの!?」
※井伏鱒二 著『山椒魚』
梨子「無意識のパクりって怖いね」
千歌「それと全然関係ないんだけど、この前星を見てて思ったんだ」
梨子「うん」
千歌「もしかして空の方じゃなくて、地球の方が動いてるんじゃないかな?」
梨子「いやそれもう既に言われてるよ」
千歌「知ってたの!?」
※ニコラウス?コペルニクス 『地動説』
梨子「周知の事実だよ、生まれてくるの遅過ぎたね千歌ちゃん」
千歌「でもホントに小説は書きたいと思ってて」
梨子「ならタイトルから考えた方が良いんじゃない?」
千歌「あぁ確かに、タイトルって大事だよね!」
梨子「なんか良い感じのタイトルないの?」
千歌「『坊っちゃん』とか」
梨子「あるよそれ」
千歌「あるの!?」
※夏目漱石 著 『坊っちゃん』
梨子「タイトルのことは1回忘れよう」
千歌「タイトルって何?」
梨子「もう忘れてる…」
梨子「小説って冒頭が大事だから、冒頭は何かないの?」
千歌「そうだねー、冒頭で読者を掴まないといけないもんね」
梨子「ちょっと即興で作ってみて」
千歌「『吾輩は猫である 名前はまだない…』」
梨子「……………」
千歌「もう何も言ってくれないじゃん!」
梨子「もう疲れちゃった」
千歌「………………」
梨子「………………」
千歌「『1年2組の斉藤は気付いていた』」
梨子「!」
千歌「『学級委員長の高槻も割と早い段階で気付いていた』」
梨子「良いじゃない!何か気になるね」
千歌「『クラスの人気者の小林も気付いていた』」
梨子「おぉ…引き込まれるね…」
千歌「『降幡も諏訪も鈴木も、そしてもちろん小宮も気付いていた』」
梨子「もう気付いてない人から挙げていこうよ」
千歌「『ロシアからの交換留学生ナンジョルノも気付いていた。そう、私だけが気付いていなかったのだ』」
梨子「勘が鈍過ぎるでしょ主人公、ナンジョルノにも先越されて」
千歌「でも先が気になるでしょ?」
梨子「確かに、何に気付いたのかなとは思うな」
梨子「ところで…」
千歌「ん?」
梨子「歌詞は出来たの?こっちはずっと待ってるんだけどなぁ」ニコニコ
千歌「…………その梨子ちゃんの怒気には」
千歌「『薄々わたしも気付いていた』」
梨子「もうそういうのはいいから!」
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千歌「それはさておき」
梨子「さておけないけど何?」
千歌「冬休みにユニバーサル?スタジオ?ジェイピー行ってきたんだけど」
梨子「なんでそこ略したの」
千歌「……………」
梨子「ジャパンを略す必要あったの?USJとかで良かったんじゃ…」
千歌「まぁどこを略そうとかはチカの勝手だからね」
梨子「まぁいいけど…、それで?USJはどうだったの?」
千歌「もう幸せハッピーだったよ」
梨子「何その戦争ウォーみたいな言い方」
梨子「じゃなくて、どう楽しかったのか詳しく言ってよ」
千歌「まず右足から靴履いて、玄関出てから靴紐を結んだんだけど」
梨子「そこは略してよ。それならいっそ生い立ちから聞きたくなるよ」
千歌「それで行きの電車凄く混んでて」
梨子「でしょうね」
千歌「そしたらなんだかんだでやっぱり帰りの電車も混んでるもんなんだね」
梨子「どこ略してるのよ。プロローグとエピローグだけ見せられて本編そっくりカットじゃない」
千歌「休日のジャパンレールウェイはホントに混むね」
梨子「そこは略してよ。JRでいいよ」
千歌「ホントはそのまま汽車に乗って曜ちゃんに会いに行きたかったんだけどね、あの子は器量が良いから」
梨子「フォークソングみたいな言い回しするわね」
千歌「サクリコはどう思う?」
梨子「なに略してるのよ。お菓子みたいな名前にしないでよ」
梨子「……そもそも私、略語ってなんか嫌なの」
千歌「略イヤなんだ」
梨子「略語ってあともうちょっと言うだけじゃない?全部言えばいいのにって思うの」
千歌「あけおめとか?」
梨子「もう最悪ねそれ、言う人全員軽蔑しそうになるわ」
千歌「そんなに!?」
梨子「一番嫌いなのは“自販機”ね。一つ飛ばしで上手いこと言った感が鼻につくの」
千歌「わたしはジドハンって言うけどね!」
梨子「何が嫌って相手も知ってて当たり前って思ってるところ」
千歌「じゃあ梨子ちゃんパソコンとかエアコンって言わないの?」
梨子「それは言うわよ」
千歌「えぇ…」
梨子「大して定着してない略語を使うのが嫌なの」
千歌「アメフトは?」
梨子「それも言うわね」
千歌「基準がわからないよ!キジュワカだよ!」
梨子「普遍的で品のある略語は言っていいけど、もうちょっとで全部言えるみたいな略語は駄目だと思う」
千歌「“つけま”とか?」
梨子「そういうのよ、最後の“つげ”くらい言えばいいじゃない?」
千歌「わかった…気をつけるよ…」
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千歌「この前おねしょして」
梨子「いきなり何カミングアウトしてるの!!?」
千歌「起きた時『ウォーター!』って叫んだもん」
梨子「ヘレン?ケラーかなんかなの?千歌ちゃん」
千歌「鳩が寝てる間に耳に水が入って、豆鉄砲食らったみたいな顔で起きたよ」
梨子「2つのことわざが交じり合って寄生虫の中に寄生虫がいるみたいなややこしさがあるよ」
千歌「いやわたしもびっくりショッキングだったよ」
梨子「なにその革命レボリューションみたいな言い方」
梨子「とは言っても、ちょっとでしょ?」
千歌「いや大体……」
千歌「しじみ300個分くらいかな」
梨子「その表現は栄養の時に使うものだよ、サイズで使わないわよ」
千歌「多いところで20mm」
梨子「雨量みたいに言うわね」
千歌「刹那の狂気に染まり行く五月雨のエデンだったよ」
梨子「善子ちゃんみたいな言い回しするわね」
千歌「まぁウチのトイレは1日に使える分が決まってるの」
梨子「…どういうこと?」
千歌「ある程度まで達したらトイレ使えないようになっちゃうんだよ」
梨子「詰まるの?」
千歌「そうなんだよ!ウチのトイレが1日10GBまでだとしたら、それを家族で分け合わないといけないんだよ」
梨子「あぁ…なるほど」
千歌「それでウチ自営業だから、日中だけで7GBくらいは使われてるんだよ」
梨子「千歌ちゃんが家に帰る頃には通信制限が掛かってるだね」
千歌「そうそう」
梨子「旅館のトイレとかは使えないの?」
千歌「最悪行くよ?高海家ではそれをWi-Fiって呼んでるんだけど」
梨子「その日は行かなかったの?」
千歌「行きたかったんだけど、睡魔に負けちゃったんだろうね」
梨子「それでどうなったの?」
千歌「おかあさんにバレちゃって、こっちはもう恥ずかしシャイガールだったよ」
梨子「なにその運命デスティニーみたいな言い方」
千歌「そういえばあの時おかあさんあんなこと言ってたなぁ……」.。oO
千歌「………………」
梨子「………………」
千歌「………………」
梨子「いやそれを発表してくれないと」
梨子「本当に想像だけで終わられちゃったらこっちの知る術がなくなっちゃうから」
千歌「でも選択してくれる布団のカバー(ありがとう)マジサンキューフォーマザーだよ」
梨子「ヒップホップみたいな言い回しするわね、途中フィーチャリングで歌姫参加してるし」
千歌「ホントわたしの人生一転び二起きだよ」
梨子「大した浮き沈みなく生きてきたのね」
千歌「寝る前は水分控えないとダメだね」
梨子「うん」
千歌「次の日顔むくむし」
梨子「いやまぁ確かに…というか気にするとこそこなんだ」
千歌「でもまた行きたいなぁ、ユニバー……」
梨子「…………………」
千歌「……サウ?ステディオウス?ジャパァン」
梨子「ネイティブな発音でしっかり言ったね」
千歌「年ピー買おうかな」
梨子「どこ略してるのよ、年間パスくらいまでは言いなさいよ」
千歌「梨子ちゃん今日はテンション高いね」
梨子「新年だからかな」
千歌「あけおめ」
梨子「ことよろ」
千歌「えぇ………」
おわり