雪歩「え、えええっ!?し、しっしし四条さんいきなりどうしたんですかっ!?」
貴音「雪歩」
雪歩「はっ、はい!?」
貴音「あなたは私に恨みでもあるのですか」
雪歩「えっ? な、何のことですか……?」
貴音「そのような恐ろしい写真をいきなり見せられたら、驚くに決まっているでしょう……!」
雪歩「あっ、ご、ごめんなさい……で、でもどうして急に床に倒れたりしたんですか……?」
貴音「写真を見まいととっさに倒れたのです」
雪歩「えっ」
貴音「何が右上ですか、何が影ですか!」
貴音「わたくしが今夜寝られなくなったらあなたのせいなのですよ……!」ガタガタ
元スレ
雪歩「あの……この写真の右上に影が」貴音「」バターン!!!
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1353208578/
雪歩「……? いえ、私はただ右上に人の指がかかっているからそういっただけで……ほら」ピラッ
貴音「怖い!!」グルン!! ゴキッ
雪歩「四条さん!?」
貴音「見せないでください……!見せないでください……!」ガタガタ
雪歩「べ、別に怪しい写真じゃないですよぉ!」
貴音「ううう……雪歩までもがついにわたくしにいけずな真似を……」ガタガタ
雪歩「し、四条さん、本当に変なのじゃないですから……とりあえず立ってください。汚れちゃいますよ」
貴音「……本当ですか?」
雪歩「はい。この間一緒にクレープを食べに行った時の写真ですぅ」
貴音「……でしたら」スック
雪歩「はい。どうですか?」ピラッ
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!??」
貴音「いきなり見せようとしないでください……こちらにも心の準備が要るというもの」
雪歩「心の準備ですか……だ、だからこれは撮った人の、というより私の指がかかって」
貴音「正体などどうでもいいのです。そのような怪しい写真、不用意に見ていいものではありません」
雪歩「四条さん……怖いのか冷静なのかよくわからないです……」
貴音「怖いです」
雪歩「えっ」
貴音「お化け怖い」
雪歩「し、四条さん……?」
貴音「雪歩。あなたには話しておりませんでしたね」スック
貴音「私、そういう類のものは……」
雪歩「幽霊とか?」
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!??」
貴音「いきなりゆ……などと言わないでください。あとその写真をこちらに向けないでください」
雪歩「あの……四条さん、もしかしてゆうれ」
貴音「お化けちゃん、と言ってください!!!!!!!!!!」クワッ
雪歩「ひぅっ!?」ビクッ
貴音「怖いでしょう!?幽霊なんて響きは!!」
雪歩「ごっ、ごめんなさぃぃ!!」
貴音「あなたにも分かるはずです!この気持ちが!!」
雪歩「そ、そんなこと言われても……」
貴音「例えば……犬。雪歩は犬が苦手でしょう」
雪歩「は、はい……最近は少しずつマシになってきてますけど……」
貴音「同じ犬でも、『可愛いわんちゃん』と『せんとばーなーど』では」
雪歩「」バターン!!!
貴音「雪歩!!!??」
雪歩「い、い、い、いきなりその名を口にしないでくださいぃ!!」
貴音「申し訳ありません。少々刺激が……しかし、なぜいきなり床に倒れたりしたのです」
雪歩「犬にあったら死んだふりをするように、刷り込まれちゃってるんですぅ……」
貴音「そうでしたか。それはまた難儀ですね……」
雪歩「……四条さんの言うとおりです。同じものでも、呼び方で全然怖くなくなったりしますよね」
貴音「理解していただけてうれしい限りです、雪歩」
雪歩「はい!それで……四条さんは、お化けちゃんが苦手なんですね」
貴音「…………はい」ギリギリ…
雪歩「なんだか意外です……」
貴音「見えないものには対処のしようがありませんゆえ……」ギリギリ…
雪歩「そんなに苦手なんですか?」
貴音「口にするのもはばかられます……」ギリギリ…
雪歩「(すごい歯ぎしり……)」
雪歩「すみません……そうとも知らずに、無理に写真を見せようとしちゃって……」
貴音「いえ……結局あの写真に怪しいものはないのですか?」
雪歩「も、もちろんです! 何も……見ます?」
貴音「…………」
雪歩「…………」
貴音「……いえ……いや、せっかくあなたと二人で出かけた記念に撮った写真ですものね。拝見いたします」
雪歩「えへへ……じゃあ、」ピラッ
貴音「」グルンッ!!! ゴキッ
雪歩「四条さん!!!??」
貴音「あの……できればいきなりこちらに向けるような事は……」
雪歩「く、首がすごい勢いで……」
貴音「申し訳ありません。やはり万が一……お化けちゃんがいたらと思うと」
雪歩「ど、どうすればいいですか?」
貴音「少々お待ちを……」スック
雪歩「あ、私も一度起きます」スック
貴音「…………では、裏返しの状態から少しずつ少しずつこちらに向けてください……」
雪歩「えっと……こうですか?」ジリジリ
貴音「そうです……私が『すとっぷ』と言ったら止めてくださ……ちょっと早いですもう少しゆっくり!!」
雪歩「あ、ご、ごめんなさい……」ジリ…ジリ
貴音「…………そう、そのまま……」
雪歩「…………」ジリ…ジリ
貴音「…………」
雪歩「…………」ジリ…ジリ
貴音「…………もう少し……あと少し……そこです!」
雪歩「えっ、何がです?」ジリ…ジリ
貴音「そこです!!止めるのです!!」
雪歩「えっ?」クルン
貴音「向けすぎです!!!」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!??」
貴音「心臓が飛び出るかと思いました……」グッタリ
雪歩「ご、ごめんなさい……『ストップ』じゃなかったからまだなのかなって……」
貴音「面妖な……げに恐ろしき写真……」
雪歩「ほ、ホントは何も写ってないんですけど……」
貴音「私も雪歩の言うことを信じたいのですが……恐怖が打ち勝ってしまうのです」スック
雪歩「…………」
貴音「申し訳ありません……みっともないところをお見せしてしまい」
雪歩「そ……そんなことありません!」
貴音「……雪歩…………」
雪歩「だ、誰にだって苦手なものはあります!」
雪歩「私だってまだまだ犬が怖いですし……うじうじしてるし、ひんそーでちんちくりんで……」
雪歩「でも、怖いものがあったっていいじゃないですか……! に、苦手なものがあったとしても、四条さんはとっても素敵で、完璧で……」
雪歩「今でもずっと私の憧れなんですぅ!」
貴音「…………ありがとうございます、そのように言っていただけるとは」
雪歩「だから……大事なのは、それをがんばって克服することなんです! 今は大変でも、いつかきっと四条さんも幽霊なんてへっちゃらに」
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!??」
貴音「今のがふぇいんと、というものですか……」
雪歩「ち、違うんですぅ! ごめんなさい、私そんなつもりじゃ……」
貴音「いえ。あなたの心意気、しかと受け取りました」スック
雪歩「えっ……」
貴音「雪歩。初めて会った時よりも……いえ、IUで私を負かした後もなお、あなたは強くなっているのですね」
雪歩「…………!」
貴音「……萩原雪歩殿。よろしければ……私に、お化けちゃん克服の協力をしていただけませんか」
雪歩「……あ……ありがとうございますう!わ、私なんかでよければその、喜んで……!」
貴音「……よかった……ふふっ、頼もしいぱーとなーができましたね」
雪歩「……えへ、えへへ……任せてください!私、きっと四条さんの期待に応えて」
ガチャ
響「はいさーい!今日はいぬ美を連れてきたぞー!」
雪歩「」バターン!!!
貴音「雪歩!!!??」
───こうして、四条さんのお化けちゃん(怖いので幽霊と呼べない)克服作戦が始まりました───
貴音「よろしくお願いします」
雪歩「よ、よろしくお願いします……!」ペコリ
貴音「して、私はどうすればお化けちゃんを克服できるのでしょう」
雪歩「はい……あの、私いろいろ考えてきたんですけど……」
貴音「聞かせてください」
雪歩「あの、じゃあ……四条さんは、こんな言葉を知っていますか?」
彼を知り己を知れば 百戦危うからず
彼を知り己を知らざれば 一勝一敗す
彼を知らず己を知らざれば 戦う毎に必ず敗れる
貴音「…………なるほど」
雪歩「つまり、四条さんがその、お化けちゃんを苦手なのは……お化けちゃんをよく知らないからだと思うんです」
貴音「……一理ありますね」
雪歩「というわけで……四条さんには、これからお化けちゃんとは何かをしってもらいたいと思います!」
貴音「……いったい何をすれば……」
雪歩「とりあえず、レンタルビデオ屋さんでいろいろ借りてきました」ゴソゴソ
貴音「ひぃっ……まさか……」
雪歩「『衝撃の心霊影像5時間』、『本当にあった呪いの話マジヤバSP』、『絶対に見てはいけない恐怖の瞬間ベストコレクション』……」
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!??」
雪歩「あ、あの……まだタイトルを読み上げただけなんですけど……」
貴音「いえ、DVDのジャケットに怖い顔が載っていてはいけないと思い」
雪歩「だ、大丈夫ですか……?」
貴音「せっかく用意して頂いたのです。雪歩の為にも耐えて見せます」
雪歩「……四条さん…………あの……」
貴音「何か。私はやる気まんまん、というやつですよ」
雪歩「『見ざる』の格好したまま言われても困りますぅ……」
貴音「DVDはしまいましたか? 怖い顔のジャケットもう見えませんか?」
雪歩「ホントにこれから見るんですよね!?」
貴音「映像は見ます。しかし怖い顔まで見る必要はないでしょう!!」キッパリ
雪歩「この怖い顔よりも怖いかもしれないんですよ!?」
貴音「なぜそのような恐ろしいものを借りてきたのですか……?」
雪歩「四条さんの為です! さあ、がんばりましょう!」
貴音「…………雪歩はたまに怖いのですね……」
雪歩「し、四条さんのためなら……今の私は鬼にでもなれます!」
貴音「………………」
貴音「…………覚悟は決めました。さあ、始めましょう」
雪歩「はい……じゃあ、ディスクをセットしますね」ゴソゴソ
貴音「決してジャケットをこっちに向けてはいけませんよ」
雪歩「うぅ……気を付けます……」
貴音「ちなみに聞きますが、どのようなジャケットなのでしょうか」
雪歩「えっと…………髪の長い女の人に手を引っ張られている男の人が」
貴音「なにも聞こえません!!」
雪歩「耳をふさぐくらいなら聞かないでください……」
貴音「……始まりますか?」
雪歩「はい。あの、それじゃあ私レッスンがあるので、これで……」
貴音「!?」
雪歩「が、頑張ってください」
貴音「お待ちを!雪歩!!」ガシッ
雪歩「はうっ!?し、四条さん!?」
貴音「よもや私を一人にして放っておくつもりなのですか!?」
雪歩「わ、私プロデューサーと約束が……」
貴音「私にたった一人でこのこわいDVDを見ろというのですか!」
雪歩「で、でもそうじゃないとトレーニングに……」
貴音「さすがにいきなりそれは無理な話です……!!恐怖で死んでしまいます……!」ギュゥ
雪歩「あぅ、し、四条さん……あの……」
貴音「後生ですから雪歩……!どうか私のそばにいてください……! グスッ……」
雪歩「あ、えと……その…………あの」
貴音「961プロにいた私を孤独から救ってくれたのはあなたではありませんか……!」ギュゥ
雪歩「うぅ……どうしよう、プロデューサーを待たせてるし……」
貴音「お願いです……!」
雪歩「………………」
『1998年に取られたこの一枚の写真。仲良く旅行を楽しむ家族の、父親の背中の後ろから細い指が……』
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!しっかりしてください!!!」
『牧場で元気に走り回り、羊たちを追いかける牧羊犬……』
雪歩「」バターン!!!
貴音「雪歩!気をしっかり!!」
『その奥に立つ木の陰から、こちらを覗いているかのような女の姿が……』
貴音「」バターン!!!
『お分かりいただけただろうか……少年の足元には、事故で前足をなくし死亡した飼い犬のゴールデンレトリバーの霊が……』
貴音「」バターン!!!
雪歩「」バターン!!!
──────
雪歩「………………」ゲッソリ
貴音「………………」ゲッソリ
雪歩「……結局、ちゃんと見られませんでしたね……」
貴音「…………」
雪歩「ごめんなさい……四条さんがきちんと見られるようにするのが私の役目だったのに……」
雪歩「映像の8割方が犬がらみだなんて聞いてないですぅ……グスッ……」
貴音「いえ……私の我慢が足りないのがいけないのです」
雪歩「うぅ……」
貴音「それに……犬があんなに登場しては雪歩もさぞ見づらかったでしょう」
雪歩「……はい…………」
貴音「この間のこと、響が申し訳なさそうにしていましたよ。できそこないのばく宙のような勢いで倒れこんでいたと」
雪歩「響ちゃんにも悪いことしちゃいましたね……」
貴音「お互い苦労しますね、苦手なものを持っている者同士」
雪歩「そうですね……」
貴音「ですが……頼りにしていますよ、雪歩」
雪歩「……がんばります…………」
貴音「…………ええ」
雪歩「……そうですよね。一度や二度の失敗であきらめちゃダメですよね!」
貴音「その通りです」
雪歩「四条さん。次はこっちのDVDを見ましょう」
貴音「な……!? まだあるというのですか!?」
雪歩「心配いりません、こっちは骨休めです。『キャスパー』っていう映画なんですけど……」
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!??」
──────
雪歩「四条さん。私、考えたんです」
貴音「何をです?」
雪歩「見えないお化けちゃんが怖いっていうのは、どんな姿形をしているのかわからないから不安っていうことですよね?」
貴音「確かに……そうかもしれません」
雪歩「と言うわけで……見えるお化けちゃんに会いに行きましょう!これ、どうぞ!」
貴音「…………これは、遊園地の入場券。まさか……」
雪歩「えへへ……四条さんと二人で遊園地だなんて、ちょっと緊張しちゃいますぅ」
貴音「…………まさか………!!」
貴音「いやです!!私はここで雪歩の帰りを待ちます!!」
雪歩「ここまで来てあきらめちゃダメです!」
貴音「お化け屋敷もといお化けちゃん屋敷など……!本当に死んでしまいます!お助けを!!」
貴音「うぅ……最近の雪歩は人が変わったように厳しいのですね……」
雪歩「大丈夫です!私がついてます!ほら見てください、入り口の看板が見えましたよ!」
貴音「もひぃ!!!雪歩アイガード!!」ギュゥッ
雪歩「四条さん!目をそらしてもお化けちゃん嫌いは治りませんよ!!」
貴音「うぅ……看板に怖いものはありませんか……?」
雪歩「大丈夫ですよ。『戦慄迷宮』としか書かれていませんから」
貴音「こわいお化けちゃんはいませんか?本当に?」
雪歩「大丈夫です。(特殊メイクをした)受付のお姉さんしかいませんよ」
貴音「…………それならば……」パッ
「いらっしゃいませ~……」
貴音「」ドターン!!!
雪歩「四条さん!!!??今度は前のめりに!!!」
貴音「どこを見てもお化けちゃんなのなら、私は一生匍匐前進で生きます」
雪歩「だ、大丈夫ですよぉ!ちょっと怖いだけですぐに終わりますから……」
雪歩「………いいですか、四条さん?ここは全員、本物の人間が演じてるお化け屋敷なんです」
貴音「…………」
雪歩「見えないお化けちゃんが怖いだけなら、見えるお化けちゃんはきっと怖くない。そう思って、わざわざここを選んだんです」
貴音「…………そういうものでしょうか……」
雪歩「はい! というよりも……じ、実は私の方が怖かったり……えへへ…………」
貴音「…………雪歩」
雪歩「……わ、私もこういうの、あんまり得意じゃないから……ご、ごめんなさい、頼りなくて……」
貴音「……………私の為に、わざわざ」
貴音「……ふふっ。なんだか、雪歩と一緒であれば平気なような気がしてきます……まこと、不思議ですね」
雪歩「四条さん……」
貴音「…………では、行きましょうか。私、この恐怖症を克服するために最大限努力いたします」
雪歩「…………はい……」
貴音「その代わりと言ってはなんですが……終わったら…………こーひーかっぷに乗りたいのですが」
雪歩「…………も、もちろんですぅ!一緒に乗りましょう、えへへ……」
「ノロッテヤル~」
貴音「面妖な!!!」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!!」
「でていけ~」
雪歩「キャァァァァッ………!!!」
貴音「めにょうんあ!!」バターン!!!!
雪歩「四条さん!!!!」
「ころしてやる~」
雪歩「イヤアアァァアッ…………!!」
貴音「めにょうな!!!」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!!」
雪歩「動かないとずっと出られないままですよぉ…………!!」
貴音「嫌です。お化けちゃんの出ないこの区域で死ぬまで過ごします」
雪歩「どうやってお仕事するんですかぁっ…………!!」
貴音「765プロをここへ引っ越しさせましょう」
雪歩「しっかりしてくださいぃ~……!!」
ガルルルルルル……
「犬のお化けだぞ~」
貴音「」バターン!!!
雪歩「」バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
バターン!!!
雪歩「…………ぜぇ、ぜぇ……自分が怖がる余裕すらありませんでした……」
貴音「…………ヒック……グシュッ……もぅ゛おわりでづがっ……?」
雪歩「……はい、もうすぐ出口です……四条さん、がんばって……」
貴音「…………うぅっ……すびばぜん、ゆぎほ………」
雪歩「…………ど、どうしました……?」
貴音「そのっ………腰に、力が入らないのです………ぅぇぇぇっ……ヒッグ……」
雪歩「あ、あわわわわわわわわわわわわわわわ…………四条さん、泣かないでください……」
雪歩「四条さん、ごめんなさいぃ…………私が無理やり連れてきたばっかりに……」
貴音「…………うぅぅぅぅっ………」
雪歩「…………」
貴音「雪歩のせいでは……ただ……自分が、あまりに情けなく……うぅっ……」
雪歩「…………そんな……情けなくなんかないです」
貴音「…………このような醜態をさらしても、なおあなたは優しき言葉をかけてくれるのですか……」
雪歩「だ、だって……怖くても、がんばってついてきてくれたのは四条さんじゃないですか……」
四条「…………しかし、今までに何度無理やり目をそらしてきたことか……」
雪歩「……確かに、中にいたお化けちゃんさんたちもびっくりしてましたけど……」
雪歩「…………」
貴音「…………」
雪歩「…………」ギュゥッ
貴音「……雪歩……?」
雪歩「四条さん。あともう少しです……わ、わ、わたしが、ついてますから……」
貴音「…………はい……」ギュゥッ
雪歩「立てますか? 四条さん」
貴音「はい……なんとか。ありがとうございます」
雪歩「……あの、よかったら、その…………えと、手でも、その…………」
貴音「……?」
雪歩「やっ、やっぱり何でもないです……! 行きましょう!」
貴音「……はい。ついて参ります…………雪歩」
「お疲れ様でした~。お出口こちらになります」
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!!」
──────
雪歩「……四条さん、心の準備は……?」
貴音「…………いつでもどうぞ、雪歩」
雪歩「……はい……じゃあ、いきますね…………」
貴音「………………」ゴクリ
雪歩「…………ゆっくり、ゆっくり」ジリ…ジリ
貴音「…………も、もうすこしゆっくり、すこしずつ…………」
雪歩「ゆっくり……………ゆっくり…」ジリ…ジリ
貴音「…………あぁ……見えてしまいそうです……全部……」
雪歩「とみせかけてはいどうぞ!」ピラッ
貴音「」バターン!!!
雪歩「四条さん!!!!??」
貴音「やはりだめです。怖いものは怖い。お化けちゃんは怖いです」
雪歩「……うぅ……結局効果無しだったんですね……」
貴音「そう簡単に克服できるようなものではないということなのですね……申し訳ありません」
雪歩「そ、そんな……! 悪いのは無理やりいろんなことをした私の方で……」
貴音「いえ。雪歩の心遣い、とてもうれしく思いました」
雪歩「…………」
貴音「私などの為に協力を惜しまずにいてくれたこと、まこと感謝しています」
雪歩「そ、そんな……私は何も…………」
貴音「ありがとうございました、雪歩」
雪歩「……えへへへ…………どういたしましてですぅ」
貴音「私のお化けちゃん嫌いは、もう少し時間をかけて直していきたいと思います」
雪歩「……そうですね。それがいいと思います」
貴音「ですから、そのときはまたよろしくお願いしますね」
雪歩「…………はい!」
貴音「ふふっ」
雪歩「………………あの、四条さん……」
貴音「何でしょう?」
雪歩「……こ、この前行った遊園地、また行きませんか?」
貴音「……はて、何かやり残したことが?」
雪歩「……それは、その……あの……お化けちゃん屋敷で……言ったんですけど……」
貴音「何のことやら……申し訳ありません、あの時は大変動揺していたので……はっきりと覚えておらず」
雪歩「……そ、そうなんですか…………」
貴音「よろしければ教えて頂けませんか。何の話でしょう」
雪歩「えっ……! あの……いえ、この間は……怖がってる四条さんがとっても……ゴニョゴニョ…だったのでつい言ってしまっただけで……」
雪歩「べっ、べつに……私なんかのお願い、聞いてくれなくても結構ですぅ!!」ダッ
貴音「雪歩!?何でもおっしゃってくれていいのですよ!!ほんの礼に過ぎません!」
雪歩「わ、私なんかがおこがましくも…………うぅ、穴掘って埋まってますぅ~!!」
ガチャ
響「あっ、雪歩!」
いぬ美「ワン!!」
雪歩「」バターン!!!
貴音「雪歩!!!??」
雪歩「どうかした?響ちゃん」
響「雪歩!!できそこないのバク宙みたいな倒れ方したけど大丈夫か!!??」
雪歩「私はバク宙なんてしてないし、いぬ美ちゃんも見てないよ」
響「はぁっ!?な、何を言ってるのかさっぱりなんだけど……貴音、何かあったのか?」
貴音「…………」
響「……貴音?」
貴音「…………いえ、今度は雪歩の犬嫌いを直す必要がありそうだなと」
雪歩「!」
響「えっ、雪歩犬嫌いだったのか!?じゃあいぬ美連れてきちゃだめなんだな……ごめんね」
貴音「これから直すので必要ありませんよ、響」
雪歩「ま、まさか…………!」
貴音「そうですね……まずはペットショップを訪ねてみましょうか。犬に見慣れるために」
雪歩「ぺ、ペットショップ……!!」ビクゥ
貴音「その次は動物のふれあいこーなーでしょうか」
雪歩「ふ、ふれあいだなんてそんな……!!」ビクゥ
貴音「心配いりません。私もその程度の荒療治、経験済みですので」
雪歩「…………四条さん、もしかして………」
響「何の話なんだ?ねえねえ」
雪歩「DVD見せたり、お化けちゃん屋敷に連れて行ったり……怒ってますか?」
貴音「いえ、もちろん雪歩のお気遣いには感謝しているのですよ」
貴音「ただ、それはそれ、これはこれ。と言うことです」
雪歩「」
響「ねーえ、何の話してるの?教えてよー、仲間外れはいやだぞ」
貴音「すみません、響。雪歩がどうすれば犬嫌いを克服できるか、考えていたところです」
響「なるほど。じゃあ自分も協力するぞ!」
雪歩「それはいけません!」バターン!!!
響「わぁっ!!また雪歩が倒れた!!??」
貴音「……楽しくなりそうですね。私、765プロに来られて本当に良かったと思っておりますよ」
貴音「…………あなたのおかげです、雪歩」
響「あ、貴音見てみてあの天井!!シミが人の顔みたいだぞ」
貴音「」バターン!!!
響「貴音!!!??」
おはり
118 : 以下、名... - 2012/11/18(日) 16:32:25.33 kq6paG/k0 44/44
たまには雪歩がリードするのも悪くないんじゃないかって思ったわけですよ
お付き合いありがとう