【関連】
渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」【パート1】
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チャプター
北条加蓮
アタシを励ましてくれたのはアイドル活動に真剣になり始めた頃のアタシだ
あの子はやるからには期待に応えろと言った
あの子はアタシに武器を託した
たった5発の銃弾しかないけど
それすらも『少しだけ手助けしてやるからあとは自分でやれ』って背中を押されたような気がした
晶葉のロボット、ハイスペックすぎでしょ
人のために働くロボじゃなく、人を、アタシを働かせるロボだなんてね
加蓮「・・・やってやるわよ」
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と言ったものの誰とも会わない
地図がないので現在地もわからないアタシはいつの間にか随分閑散とした住宅街にいた
最初見た大きなビルは、二階建て、三階建ての家屋に取って代わられている
そんな中を右手に拳銃をぶら下げながら歩いているアタシ
女子高生アイドル!!昼下がりの住宅街で突然の発砲!!
なんてね、奈緒がやってたゲームだと人の家のタンスを漁ってアイテムをゲットするんだっけ?
仮想空間だとしても常識的な考えが先行してどうもそれには思い切りがつかない
凛だったらこういうときでもさっと頭を切り替えて、家だろうとビルだろうと土足で上がり込みそうだけどね
奈緒は、どうだろ、奈緒はゲーム好きだからねぇ・・・
・・・凛も奈緒も電車の中であって以来声も聞いてないや
!!...ぇーーー... ...っーーー!
そんなことを考えてたからかな
風の音?違う、声がアタシの耳に届いた
加蓮「!!」
首を回す、周りを見渡す
こういう時どうするかわからないけど
警戒態勢としていつでも走り出せるように腰を落とした
.......................
何も聞こえない、誰の声だったの?どこかで聞いた覚えがある、
そもそもこの仮想空間にいるのはウチのアイドルなんだから耳に覚えがあって当然か
加蓮「・・・・・・・・・・・・・・・」
親指、小指、薬指、中指の順に力を込める
最後に引き金にかかった人差し指を少しだけ力ませた
銃はある 残弾は五発のみ
だけどアタシの中の殺る気は満タンだった
........................
...オン
.......オン
?
音が変わった?
......ブオン
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンン!!!!!!
???「 オラァアアアアアア!! 喧嘩上等だコラァアアアッ!!!」
視界の端、アタシのすぐ真横から大型バイクが突っ込んできた
そこには住宅街の壁しかなかったはずなのに、
至近距離から獰猛な機械の塊が突っ込んできた
加蓮「・・・ッ!!?」
向井拓海(ボット)「特攻!、特攻!!、特攻だァッ!!!」
振り向いたけど間に合わない、
アクセルを握りこんだ右手と逆、
拓海さんの左手に握られた木刀が背中に叩き込まれた
ゲーム開始21分経過
北条加蓮VS向井拓海(ボット)
開始
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北条加蓮 90/100
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バイクの加速を上乗せされたその打撃はアタシを吹っ飛ばした
加蓮「!!いったぁ・・・い」
アスファルトの地面に投げ出され、手足をすりむいた
と思ったが、見た感じ怪我はしてないし血も出ていない
ぶたれた背中も静電気が走った時みたいにしびれているけど骨が折れたとかそんな感じじゃない
やっぱこれゲームなんだ、少し安心する
これなら殺れる
オオオオオオン
痛みに呻くこともなく、
すぐに態勢を立て直すとバイクの排気音のする方に体ごとリボルバーを向けた
なのに、
加蓮「あれ?」
そこには誰もいな
拓海(ボット)「こっちだよォ!!」
あたしが銃を向けたのとはかなりずれた角度、
右手の銃をのばした先を迂回したように拓海さんが飛び出してきた
それも、壁の中から
・・・・・・は?
いやちょっと待って
アタシは、不安定な姿勢で右手を伸ばしていて
拓海さんは壁から、そんなアタシの真正面に突っ込んできてる
木刀が馬上槍のようにこっちを向いていて____
拓海(ボット)「フっっっっっっ飛べやぁ!!」
加蓮「!!」
咄嗟に銃を追いかけるように右手側に体を飛び退かせる
ダンスのレッスンで似たようなステップがあったおかげでスムーズにできた
飛び退く瞬間、アタシの足のすぐ横を風が吹き抜けた
拓海(ボット)「チッ!!」
そのまま拓海さんはサメやイルカが海に飛び込むみたいに壁の中に潜るように消えた
もちろん壁にヒビなんて入ってないし、どこかに隠し扉があるようにも見えない
...オンオンオンオン...!!
さっきまで静かだった住宅街に排気音が響き渡る
なのに姿は見えない、
まるで深夜に、どこか遠くの高速道路で暴走族が走ってたときのよう
やたらうるさいのに姿が見えない存在
加蓮「もー!なんなのよ!バイクに乗るなら公道を走りなさいよ!!」
ブオン!!
拓海(ボット)「コレがアタシの能力なんだからしょうがねーだろ!!」
さっきと別の壁から拓海さんが飛び出す 木刀を横薙ぎに振るってきた 首を狙ってる
さっきと違って態勢は万全だったのでしゃがみつつ反対に転がり避けられた
振り向くと、壁に消えていく拓海さんの背中が見えた
つい拳銃を向けたくなるが、壁の中だと多分弾ははじかれる
そうじゃないかもしれないけど、試して失敗したら5発の弾が無駄になる
拓海(ボット)「バイクで事故る奴ってのはよォ...アタシのオリジナルの知り合いにもいたさ...」
排気音に重なって拓海さんの声が聞こえる
拓海(ボット)「知ってるのは、峠道や魔のS字カーブの攻略に失敗した奴が大抵だが・・・」
「そいつらの怪我は地面やガードレールに体をぶつけたり擦ったりしてできるもんが大概なんだ」
拓海(ボット)「だが、バイク乗り全員がそんな遊びをしてるわけじゃあねぇ...」
拓海(ボット)「バイク事故ってのは、普通に考えりゃ壁や電柱、車にぶつかってできるもんだ」
加蓮「・・・・・・・・・?」
ブオオオオオオオオオオオン!!!
タイヤだけ!?
壁から出たタイヤがアタシの頭よりずっと上から飛び込んできてる!!
違う!
加蓮「!?!?」
拓海はタイヤの前輪を高く持ち上げ、
馬が前足を天高く振り上げていななくように
排気音を撒き散らし、ウィリー状態で加蓮めがけて特攻した
拓海(ボット)「アタシの能力は『絶対にバイクで事故らねえ』 だ、」
「アタシのバイクは!!!邪魔するモノ全てをすり抜ける!!!覚えとけぇ!!!」
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
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加蓮「はぁっ・・・はぁっ・・・」
拓海(ボット)「安心しな!!アタシも一人のバイク乗りだ、バイクで人をはねるなんてマネは絶対にしねえ・・・」
拓海(ボット)「直接お前を仕留めんのはこの木刀だけだ!!」
これが、能力
アタシの体の痺れはもう消えている
でも緊張と、どこから攻撃が来るかわからない焦りで足が震えてる
ゲームのくせにこんなとこはリアルだ
加蓮「・・・・・・ふうっ!!」
ブオオオオオオオン!!
拓海(ボット)「ラァッ!!」
排気音と共に木刀が突き出される
なるべく体力を浪費しないように最小限の動きで避けることに成功した
この短時間で加蓮はダンスのステップを応用した身軽な動きを習得しようとしている
真剣になった加蓮の本気の集中力の賜物だ
加蓮「(拓海さんがどこから出てくるかはわからない。バイクの排気音でわかるはずなのに・・・)」
加蓮「(・・・たぶん、この住宅街のいろんな壁や地面に反響しているんだ、ただ突っ込むだけじゃない、拓海さんは計算して動いてる)」
加蓮「(しかも、この場から逃げようにもあっちはバイク、後ろから殴られるだけね・・・)」
この特攻、一見無謀に見えて、予測や防御を巧妙に防いでいる
加蓮「(予測は無理、でも勝目はある)」
オンオンオンオンオン・・・
加蓮がいるのは住宅街の真っ直ぐな一本道
二枚の壁が加蓮を挟むように平行にまっすぐ伸びている
加蓮「(・・・・・・・・・よしっ)」
加蓮は一度深く息を吸うと一方の壁に向き合う
その行為は同時にもう片方の壁には完全に背中を晒すことになっているにもかかわらず、だ
ブオンブオン・・・
加蓮「(確率は二分の一!!)」
加蓮「(どれだけ計算しようと、拓海さんが出てくる壁は二面だけ)」
加蓮「(だったらその一面だけに集中する!)」
加蓮「(もちろん壁一つといっても壁のどこから出てくるかはわからない・・・でも壁に真っ向から向き合っていれば、視界に入った瞬間、反射神経で対応できるはず!!)」
加蓮「(いや、反応してみせる!!)」
ブオンブオンブオンブオンブオオン!!
向井拓海との衝突は近い
加蓮は拓海が出現するのは二枚の壁の内一枚だけと言った
それは正しい
だがこれはモグラ叩きではない
拓海はモグラの穴という”点” ではなく壁という”面”で攻撃の選択肢を選ぶことができるのだ
これは壁一つからでも加蓮に向かって180度のうちの何処か一つの方向から攻め込めることを意味している
壁二枚で 180+180=360度
加蓮は二枚の壁だから二分の一と考えた。一面ならどこから来ても対応できると、
だが、その一面だけをまっすぐ見つめるという構え
それはつまり加蓮は360もある角度のうちの一つだけを選んだということ
1/2 ではなく 1/360 に全てを懸ける
残りの弾丸も賭ける
狙いはバイクではなく本体、向井拓海
ブオオオオオオオオオオオン!!
加蓮「(・・・・・・来い来い来い来い!!!)」
両手で銃を構える
伸ばした腕先の銃の、引き金に指をかけた
ブオン!!!!!!!!!!!!
タイヤが
ハンドルが
エンジンが
そして向井拓海が
加蓮の眼前、真正面に飛び込んできた
拓海(ボット)「ッはァ!?!!??なんで...」
加蓮「来た!!!!!!」
360分の1の確率は当てた
次は銃弾を当てる
パン
ビギナーズラック
初めての射撃だったが、弾はまっすぐ飛んでいった
そして
加蓮の銃弾は見事、拓海の頭部を貫いた
胴体のような大きな部分ならともかく、頭のような小さい部位、
それもバイクで高速移動中のそれに当てるなんて芸当はそう出来ることではなかっただろう
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拓海(ボット)「 」
拓海(ボット)「 」
拓海(ボット)「 バカが...」
拓海(ボット)「アタシは壁に潜ってたんだぞ?」
拓海(ボット)「・・・アタシの能力はバイクだけじゃなねぇ・・・アタシ自身にもかかってるんだよ」
アタシとバイクの走りの邪魔する奴は
壁でも電柱でも車でも落石でもたとえ銃弾だろうと
アタシにすらぶつかることは出来ねえ!!!!!!
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向井拓海+ 100/100
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北条加蓮 90/100
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ゲーム開始25分経過
北条加蓮VS向井拓海(ボット)
戦闘続行
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チャプター
神谷奈緒
あたしはハリセンを構える
正直、武器としてどうかと思ったがないよりマシかと思ってボットが遺したのを持ってきていたんだ
音葉さんは実に優雅な足取りであたしに向かって数歩進むと、道路の中ほどで止まった
奈緒「ち、近づいてくんじゃねえ!」
音葉(ボット)「恐怖、焦燥、迷い、...そして打算?」
音葉(ボット)「......どうしてそんな細長い音が入っているのでしょうか......」
奈緒「・・・・・・・・・」
音葉(ボット)「なるほど......私が近づいてくるのは恐ろしい...けれど近づけば...そのハリセンの攻撃が当て易くなる......そう考えてます...ね?」
奈緒「・・・う」
あたしは別に何も話してない。なのに音葉さん、のボットはあたしからなにか読み取ったらしい
あたしの考えが読まれていた。
本気で攻撃が効くとは思ってないけど、だから何もできないと思わせるのはまずい。
音葉(ボット)「...私の役目は...あなたの足とあなたの音を止めておくこと...」
奈緒「なんだよ役目って・・・ボットは戦うんじゃねえのかよ?」
さっきから感じていた違和感を疑問にする。音葉さんはどうにもあたしとエンカウントしたにも関わらず戦いに積極的じゃない。
晶葉が言うにはあたしたちの敵らしいが、それにしてはどうにも噛み合わない
音葉(ボット)「......疑問、不可解の...音ですか、音の色に濁りがない、純粋な疑問...ということは本当にわからないのですね......」
音葉さんは困ったような、悲しむような、よくわからない顔をした、この人はオリジナルからしてどうにも独特な性格だから感情が読みにくい・・・
音葉(ボット)「音楽と一緒です...小さな音を重ねていけば......やがて音の連なりが旋律になるように...」
音葉(ボット)「...私たちボットはプレイヤーを倒すために、...一つずつ布石を積み重ねていくのです...」
奈緒「(どういうことだ?・・・これじゃあまるで・・・)」
手の中のハリセンがさらに頼りなくなった気がする
状況が全く読めない
音葉さんはそこであたしに向けていた視線をほんの少しだけ別のものに向けた
音葉(ボット)「...一つ目の布石......ほら、もう...加蓮さんは...あなたからは...見えないところに行ってしまいましたよ?」
奈緒「はぁっ!!?」
しまった!!あたしは加蓮を呼んでるところだった!!
こうやって加蓮が離れていくまで無駄に膠着状態を長引かせるのが目的だったんだ!!
あたしは振り返る、背後にはガードレール、その向こうに仮想の街並みが広がっていた
視界中に広がる灰色の建物の群れの中から加蓮の小さいシルエットを探す
加蓮「 」
あ、いた!!
なんだ、あたしを騙そうとし
音葉(ボット)「油断しましたね...」
肩の上に手が置かれた。誰の手?
音葉さんの手に決まってんだろ
あたしが振り向いた隙に音葉さんは背後に迫っていた
なんの音も気配もなく!!
音葉(ボット)「...私の足音を...取り除きました.....」
ハリセンを振りかぶる
振り向きながら攻撃を加えてやる!!
音葉(ボット)「先ほどのあなたの声.......お返しします」
無音
だが、音葉さんが掴んでた方の肩に爆発したような衝撃が走り
あたしの攻撃は失敗した
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神谷奈緒 95/100
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______________
梅木音葉+ 100/100
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奈緒「な、な・・・!?」
音葉さんは動いていない、あたしだけが肩を思いっきり殴られたみたいに吹き飛ばされた
肩がえぐれたりはしてないが、精神の安定はガタガタだ
ガードレールの向こうに落っこちそうになったので慌てて態勢を整え、音葉さんから離れる
奈緒「ば、爆弾なんか使うのかよ?!」
音葉(ボット)「...先ほどよりも色濃い疑問の音、...いろいろ混ざりすぎて濁っています...」
音葉さんは相変わらずよくわからないことを言いながらあたしを見ている、
いや、本当にあたしを見ているのか?
さっきからあたしの音がどうとかしか言ってないぞ?
音葉(ボット)「...その濁った色は...見ていてあまり気持ちのいいものでは.....ありません...
」
奈緒「お、おう・・・」
音葉(ボット)「だから、あなたの疑問はここで晴らしておきましょう......」
そう言うと音葉さんは右の手のひらをあたしに見せつけるようにゆっくり開いた
奈緒「・・・?」
なんの変哲もない手のひらだ、白くて綺麗だとは思うけど・・・
奈緒「!?」
その手のひらから、湧き出すように煙のようなものが立ち登ってきた
よくある手品のようにモクモクと、音葉さんの顔が半分隠れた
一瞬、手のひらにタバコでも隠してたのかと思ったがそういう煙じゃない
黒と紫を混ぜたような、それをベースに赤や緑をぶちまけたような
幼児がクレヨンで適当になぞって描いた絵のような不気味な色合いだ
音葉(ボット)「これが......あなたがずっと吐いていた声の色...疑問、焦燥、恐怖、敵対.....様々な音の集合体です...」
音葉さんは手のひらをピッと横に払う。
その動きだけで、あたしの声?らしい煙は水蒸気や霧のように空中に掻き消えた
音葉(ボット)「...晶葉さんが言うには、...私の能力は『エフェクトのオブジェクト化』......」
「私には音がただの現象ではなく色や形を伴う物体として見えています...」
「そしてこの能力は、私にしか認識できないその物体を顕現させる...」
奈緒「・・・そ、それがどうした!!」
奈緒にとっては正直よくわからない話だ。
だが今起きていることがわからないということは、今から起こることもわからないということ
だから虚勢を張る。音葉にかかればすぐに看破されるということも忘れて
音葉(ボット)「...疑問の音色は薄れても、混乱は消えませんか...」
音葉(ボット)「...ここまで......彼女の旋律を...乱し続けたのに」
音葉(ボット)「(...それでも対抗心、不屈の色味が...まだ消えていない...)」
仕方ない、こうなることも予想していた
彼女だって伊達や酔狂でアイドルを続けているのではない
逆境や不遇に容易く折れるような心根ではないのは分かっていた
音葉(ボット)「奈緒さん」
奈緒「な、なんだ!!?」
音葉(ボット)「あなたの......どんなに濁って乱れても...その中で決して消えない根気強い旋律......素晴らしいです」
奈緒「お、おう・・・・・・?」
音葉(ボット)「私程度の足止めでは...きっとあなたは諦めないでしょう...」
音葉(ボット)「だから今から私は...力の限りを尽くして...あなたのスタミナを削ることにしました...」
音葉(ボット)「...まずは先ほど除いた...私の足音を...」
音葉の手の中に、鋭く尖った氷柱のようなものが突如現れる
その色は緑、切っ先は奈緒に向けられている
叫び声を爆弾に換え、
足音を鋭利な刃物に換える。
サウンドエフェクトを物理オブジェクトに変換する
予測不能にして万の用途を持つ能力が奈緒に牙を向いた
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~~~~~~~~~~~~~~~~
褒められたと思ったら、
音葉さんが殺る気になっていた
何を言ってるかわからないと思うがあたしもわからない
奈緒「おりゃああっ!!」
ハリセンを上段から振り下ろす。
弱くともダメージゼロってわけじゃないだろ!!
幸い、音葉さんの持ってる刃物?能力で生み出したらしいそれは、果物ナイフ程度の大きさしかない
あたしのハリセンは一応本格的なものだから、大きさだけは一丁前だ。リーチだけは勝ってる
パン!!
音葉さんはナイフを持つ手とは逆の手でハリセンを受ける
少しでもダメージに加算されればいいけど
あたしはハリセンで牽制しながら音葉さんから細かく動いて一定の距離を置き続ける
接近戦ではナイフにはかなわないからな
パン!!
パァン!!
一箇所にとどまらず常にバックステップやサイドステップを繰り返しているため
戦いながら大声で加蓮に叫ぶこともできない
それにもしそう出来たとしてもまたあの爆弾をぶつけられるだけだ
とにかく何か状況を動かすものを
音葉(ボット)「これがあなたの武器が奏でた音...敵意、不屈、奮起...攻撃色の音...!」
今度は音葉さんの方から距離をとった。
一足飛び、あたしからバックステップでしりぞく
同時にナイフとは逆の手でサイドスローであたしに何かを投げつける
奈緒「っ!!」
咄嗟にハリセンで打ち返そうとする
こっちに飛んできたものを見る
まるでそれは黄色いイガ栗のようだった
鋭い刺が球体の周りをぐるっと覆ったような外見のものが3つ
3つは打ち返せない、避けるしか・・・
パパパァンッッッ!!!
もし効果音があればそんな音が鳴っただろう
その3つのイガ栗は無音で爆発するといくつもの刺を炸裂させた
奈緒「うぁっ!!なんだこれぇ!!?」
反射的に腕で顔と目元を守る
あたしの体に爪楊枝のようなものが何本も刺さった感触がした
感触、だが痛みではない、そこまで効いてないのか?
音葉(ボット)「...音から”目を逸らしては”いけません...」
顔にかかった腕の隙間から音葉さんが見える
音葉さんの周りには楕円形の、平べったい板
強いて言うなら靴のサイズを調整するのに使う”中敷き”のようなモノが浮いていた
赤色のものと水色のもの二種類、数はざっと見て十ほど
音葉(ボット)「戦意と焦燥...私とあなた...二人分の足音...ハーモニーですね」
ナイフが指揮棒のように振られる
その動きを合図に、ロケットのように飛んでくる
たくさんのフリスビーを同時に投げつけられるとこんな風になるんだろうな
奈緒「って、あいててて!!いてっ!!」
フリスビーじゃねえわこれ!!
足音というだけあってまるで透明人間に連続で蹴り入れられてる気分だわ!
こんなのどうしろってんだ!?
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神谷奈緒 84/100
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梅木音葉+ 98/100
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ゲーム開始24分経過
神谷奈緒VS梅木音葉(ボット)
継続中
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現実世界
チャプター
池袋晶葉&一ノ瀬志希
一ノ瀬志希「晶葉ちゃーん、現代人が生み出した素晴らしい発明品、三つまで言える?」
晶葉「火薬、羅針盤、活版印刷だが」
志希「いやそんな古い時代のじゃなくて、げ・ん・だ・い人だよ現代人」
晶葉「さぁ、現代で考えるとなると難しいな,,,今の時代、ちょっとしたことでもメディアがまるで世紀の発見のように面白おかしく書き立ててしまうからな」
志希「じゃあ知りたい?知りたいよね?」
晶葉「・・・なんなんだ?答えがあるなら教えてくれ」
志希「んーでわでわっ!!今から!志希にゃんの!スバラスバラシランキング(現代版)、はっぴょうするよー♪」
晶葉「待て君、そのタイトルから察するにそれ君の独断じゃないか?」
志希「スバラランキング3位! なんとなんと携帯電話!みんなも納得の第3位だね!」
晶葉「なんだ、意外と普通じゃないか、ランキング入りの理由は?」
志希「携帯電話は大抵の人が一日に何度も触るから、手汗の匂いがいい感じに染み付いてるよ!以上!」
晶葉「やはりか貴様」
志希「スバランキング2位!タートルネック!」
晶葉「あ、もういい大体わかった」
志希「ただでさえ体臭の染み付きやすい衣類において、首元の匂いまでも吸収することもできるよ!ハイテクだねぇ」
晶葉「服飾メーカーの開発部に謝ってくるといい」
志希「ではいよいよ1位の発表だよー♪」
晶葉「私は今忙しいから後にしてくれないか?」
志希「スパンキング1位!!」
晶葉「それは略しすぎな上に誤解を招く単語だからやめろォ!!」
志希「むぅ・・・」
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志希「・・・で、どうなの晶葉ちゃん? あたしは画面に流れる数字を見てるだけじゃなーんにも分かんないんだけど」
そう言って志希はだらしなく着崩した制服と白衣を存分に乱しながら地面に転がった
晶葉は彼女に目もくれず目の前に並んだ画面を眺めては、時折キーボードになにかのコマンドを打ち込んでいる
彼女たちがいるのは高い天井と広い床をもつ大きな部屋
ただ壁中を太いコードやケーブルが数千匹の蛇のようにのたくり、壁の模様すら見えなくなっている
しかも明かりとなるのが晶葉の見つめる画面のみなので周りが異常に薄暗く、
加えてあちこちに置かれた機材が与える圧迫感から、その部屋はとても狭く感じられた
晶葉「こっちの仮想空間は至って順調だよ、今で丁度稼働から30分だ、何の問題も起きてない」
晶葉「仮想空間に置かれたボットもこっちが送り込んだプレイヤーと楽しくやってるよ」
晶葉「___”Chihiro”の方も問題なく動いている。」
志希「きらりちゃん風にいうなら、ばっちし☆って感じ?」
晶葉「・・・まあ、そうだな、だが君にも働いてもらうぞ」
晶葉「例え天才とよばれようと所詮私は機械の畑の住人だからな・・・人体については私は君より一段落ちる」
志希「任せてよ、私はプロデューサーといい匂いがするアイドル達のそばにいるためならなんだって出来るんだから♪」
ゴロゴロと転がっていた志希が転がりに弾みをつけて一気に起き上がるとてくてくと歩き出す
向かうは部屋の壁際、
コードとケーブルの海から顔をのぞかせるいくつもの卵型のカプセルがある場所
暗い部屋の中で近くで見ると仄かに青く光っているのがわかる。
そのカプセルの個数は全部で18
今現在、仮想現実に送られているアイドルの人数と同じ18だ
志希「・・・・・・・・・・・・」
カプセルの一つに近づくと横に取り付けられた画面に表示されるメーターを注意深く”観察”する
カプセルの蓋は厚いガラスで、薄暗くて個人の判別はできないが誰かが入っているのがわかる
その中にペンライトの光を当て、そこで眠っている人間も”観察”する
志希「ふむふむ・・・顔色はいまのとこ全員良好、と、体臭にも悪い変化はないね」
晶葉「体臭などわかるのか?私はそれをほとんど密閉式に作ったんだが」
志希「・・・ん、わかるよ?はい、オッケイ目立った悪影響は無し、後で一回精密検査するけどね」
晶葉「わかった、また頼む・・・しかしどうもこの生身の人間をデジタルに送るシステム、というのは好きになれん」
画面を飽きることなく眺めながら晶葉はつぶやいた
志希「んー?なんで?楽しそうじゃん、私はどうも適性がなかったみたいだけど」
アイドル達の健康観察を終えた志希は晶葉の隣に腰を下ろした
複数ある画面の中には見知った顔が何人も映っている
だが他のいくつかの画面に流れているのは英数字の羅列ばかりで志希にはちんぷんかんぷんだ
晶葉「深い理由はない、私は今回の企画、どちらかというとプレイヤーよりボットの方に肩入れしているというだけだ」
晶葉「基本となる思考アルゴリズムに、アイドル達の性格をインプットすることでロボットたちに千差万別の個性を与える」
「私はそういうボットたちの安住の地をイメージしてこの仮想空間をデザインしていたんだがね・・・」
「そこに外部から人間にコントロールされた存在を送り込むのがどうも、腑に落ちなくてな・・・」
志希「?・・・あたしは、ボットたちが生身の人間の思考に触れるのはいい刺激だと思うけどな?」
晶葉「まぁ、そうかもしれんな・・・」
志希「ふーーん・・・あたしは今まで興味がないことや気に入らないことは全部ほっぽってきたけど、晶葉ちゃんはそういうのないの?」
晶葉「ふん、ばか言え・・・この件は助手が私のことを信頼して任せてくれているんだ、放棄してたまるものか」
志希「にゃーん!晶葉ちゃん、かわいいーハスハス♪」
晶葉「こらっ・・・!抱きつくな匂いを嗅ぐな頬ずりするな!!」
狭くて広い部屋で二人の白衣がもぞもぞと絡まり合う
prrrrrrrrrrrrrrrr
晶葉「ん、志希、電話が鳴ってるぞ?」
志希「あたしのじゃないよ?そもそもあたしよく失踪するからケータイは携帯しないし」
晶葉「・・・助手からの連絡はどうする気だ君は・・・」
prrrrrrrrrrrrrrrr
晶葉「なんだ、私のか、この仕事用のケータイ番号を知っているのは助手だけだったな」
ピッ!
晶葉「もしもし池袋だが」
志希「ねぇねぇ、もしかしてプロデューサー?あたしも後でかわってよ」
「...・....、........。..・...・.....」
晶葉「? もしもし?助手か?」
「・・。・・・。・・。。.....」
晶葉「聞こえないぞ。それにノイズもひどい、はっきり話したまえ」
「,・・,,,・,,,,,,,”,,,,,,・。、・。」
晶葉「・・・ふざけているなら、もう切るぞ」
「・・・・・......・・・・」
「・....・。......」
「...............あきは?.............」
プツン
ツーッ ツーッ ツー
晶葉「もしもし?助手か?おい!何があった!」
志希「落ち着いて晶葉ちゃん、電話をかけ返すんだよ」
晶葉「う、うむ・・・」
なにやら不審な電話、それもおそらく自分を知っている人物から
晶葉はこっちからかけようと着信履歴を開く
だが
晶葉「うん?」
_________________________________
すべて/不在着信 編集
tfPnvsoE/ifevvszerRs490o 今日
助手 月曜日
助手 土曜日
助手 金曜日
__________________________________
晶葉「・・・なんだこれは」
志希「?」
バグった連絡先からのいたずら電話
多少の不気味さは残ったものの目の前の件をおろそかにはできない
結局、電話番号が追跡できなかったためこの出来事の対処は無視された
これが晶葉と志希にとって最大の失敗だったことを知るにはまだ時間がかかる
こうして小さな歪みはその発生を見逃された
その歪みが大きくなり
やがてアイドル、ボット、仮想と現実両方を巻き込むことになる
ゲーム開始45分経過
???? 能力獲得
~~~~~~~~~~~~~~~~
247 : ◆ecZBoTY/6E - 2014/03/08 02:11:09.11 A/lLpWklO 209/1677~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、緒方智絵里
2、諸星きらり
3、白坂小梅
次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下
4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉
<<青ざめた戦力外たちの宴>>
(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票は有効)
8、二宮飛鳥(ボット)&八神マキノ(ボット)&橘ありす(ボット)
画像コメントありがとうございました
248 : 以下、2... - 2014/03/08 02:14:59.40 91Y2FkIa0 210/1677あら……不穏な気配が
1
8
249 : 以下、2... - 2014/03/08 02:18:11.73 uSQNI+Ii0 211/16772
8
250 : 以下、2... - 2014/03/08 02:40:31.41 175is7iP0 212/16773
4
251 : 以下、2... - 2014/03/08 02:41:41.03 175is7iP0 213/1677変更
3
8
252 : 以下、2... - 2014/03/08 02:47:25.42 ibIandB+o 214/16776
8
253 : 以下、2... - 2014/03/08 04:05:00.28 hTKNtUimo 215/16772
5
8
255 : 以下、2... - 2014/03/08 10:07:49.95 G5sfXqaG0 216/1677乙 楽しみです
ごめん こういう安価って1から3でひとつ
4から7でひとつ、見たければ8で
合わせて二つもしくは三つ選ぶとかじゃ
ないの?よくわからなくて……
256 : ◆ecZBoTY/6E - 2014/03/08 10:39:26.28 gIT5gsC3O 217/1677>>255
コメント、質問ありがとうございます
見たいチャプターと、見たい戦闘シーンは別の安価なので、
1から3、4から7の数字から二つを同時に書き込んでもその片方しか採用されません
しかし+3の安価を取ったつもりが一つずれ込み+4になった場合などもあるので、
>>250のようにどちらの安価になったとしてもこちらが採用できるようにするのもありです
一応こっちの判断で安価下することもあるので
今回は
チャプター 白坂小梅
戦闘シーン VS向井拓海
舞台裏 <<青ざめた戦力外の宴>>
+α
をお送りします
数時間ごとに細かく投下していきます
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
白坂小梅
......こっちかな...
寝室の窓から外を眺める。
そこから見える景色の中に誰かがいる、ということはない
これで目に付く限りの部屋は調べたし、鍵のjかかった部屋もなかったから見落としはないはずだ
じゃあ一体これはなんだろう
白坂小梅「な、なん...だろ...?」
居間に戻る道を進む
小梅が転送されたのはどこかの屋敷
古き良き古風な家屋は、上に低くて横に広い。探検するだけでも大仕事だ
都会の中程に存在しているということは富裕層の持ち物なのだろうか
小梅は、今自分が一体何を探しているのかもわからない
小梅「どこ...?」
小梅はそれでも探し続ける
どこからか聞こえてくる声の主を
きっかけは自分のボットを倒した後だ、
自前の長袖を振り回して何度か叩いているとそれで倒せた
ちゅーとりある、というものだったらしくその弱さは仕様だったのかもしれない、と小梅は思った
倒れた自分ソックリの死体を眺めていたとき、それはどこからか聞こえた
いや、もしかしたらずっと聞こえていたのを聞き逃していたのかもしれない
それは独特のうねりをもった音、声だった。
一定のリズムを持たず、しかし常にどこからか響いている。少なくとも楽器の立てる音ではない
もしかしたら小梅のその予想は外れているかもしれないが、とにかく聞こえている
くしゃみの音いやもしかしたら深呼吸するだけでかき消されてしまうような小さな声
小梅「......気に...なる」
心霊スポットをめぐることを趣味としている小梅にすればどこからともしれず響く声などどうってことはない
気になるのはその出処だ、
どの部屋に向かっても声は近づきもせず、遠のきもしない、もしかしたら自分のすぐ後ろにいるのでは?
と思って振り向けど誰もいない
そう、誰もいない
小梅「...あの子も...い、いない...」
あの子、詳細不明の小梅の友人
小梅からすればいつもそばにいた長年のパートナーに近い存在だったため
その不在の方がかなり応えた
小梅「...仮想じゃなくて...現実の方の私のそばに...い、いるのかな...?」
あの子の安否を気にかけてはいるが、
仮想現実という剣呑の地に送り込まれている小梅も本来ならいろいろ心配されるはずの身だ
小梅「............あ、」
小梅「......また、聞こえ...た」
小梅は周りを見回す
日本家屋の廊下はシンプルでそれでいて採光なども計算されているため歩くには十分すぎる明るさだ
しかし小梅は今、昏い森の中を今にも切れそうな蜘蛛の糸をたぐり寄せながら歩いているような気分だった
そして声がまた聞こえる
??「ふふーーーーーーん!!カワイイボクが来ましたよ!!」
ガラガラガラ!!!
???「さ、さっちゃん......ちょ、ちょっとし、静かにしたほうが...」
小梅「!?」
ゲーム開始10分経過
報告事項なし
~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
北条加蓮
確かに命中していた
なのにアタシの銃弾は拓海さんを通り抜けていった
糠に釘、暖簾に腕押し、まるでホログラムに触れないように
拓海さんは銃弾なんてなかったみたいにそのままこっちに突っ込んできた
アタシの真正面から
加蓮「そん、な...!」
拓海(ボット)「おらよォ!!」
でも拓海さんはギリギリのハンドルさばきでアタシのすぐ横を通り抜けた
さっき言ってたようにバイクではねる、という攻撃手段は取らないらしい
いや、通り抜けちゃうのか
加蓮「じゃあ、どうして___}
ギャギャギャギャギャ!!
私の背中を音が叩いた気がした。
一瞬、攻撃が失敗したことに放心していたアタシは振り返る
拓海(ボット)「アブねぇだろ!!気ィつけろォ!!」
拓海さんはアタシのすぐ後ろでバイクを反転させていた
バイクから降ろした足を軸に、その場で車体をドリフトさせるように方向転換する動き
バイクの後輪が地面を削るように砂煙を上げている
ブオンブオンブオン!!
ギャリギャリギャリ!!
拓海(ボット)「うらァ!!」
加蓮「ぐっ!?」
脇腹に硬質の武器がめり込む
その場に膝をつきそうになったアタシを横目に、
拓海さんは半回転した車体を発進させ壁の中に戻っていった。
_____________
向井拓海+ 100/100
_____________
_____________
北条加蓮 83/100
_____________
~~~~~~~~~~~~~~
残弾4発
どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう
アタシの唯一の攻撃手段が通じない
ブオオオオオンンンン!!!
どの方向から聞こえてくるかわからない爆音が不安を煽る
右足がしびれてきた
頭もクラクラする、緊張しすぎで集中力が切れかけてるのかな・・・
拳銃を握る手にも力が入らない、でも手放さない
ブオン!!
一際身近に拓海さんが放つ排気音が轟いた
攻撃ができなくとも攻撃はよけられる
死角から来たであろう攻撃をオーバーな横っ飛びで避ける
背後から来たバイク相手に最小限の回避動作なんて難易度が高いからね
木刀が髪を掠めた
あれ、
さっきも少しだけ思ったけど、どうして木刀はアタシに当たるの?
ぶつかるものは透けるんじゃないの?
・・・・・・壁から出た時だけ木刀にかけた能力を解除している・・・ってことだよね
そういうふうに疑問はすぐに解けた。
何か重要なヒントを得た気になったけどそうでもなかったみたい
加蓮「(こうなったら・・・逃げる!!)」
アタシはあっさり戦闘放棄を決意する
障害物を完全無視する二輪車を相手にこの狭い道に沿ってアタシがどこまで逃げ切れるのか甚だ謎だが
加蓮「(大丈夫、逃げ切る・・・もう、病弱だったアタシじゃない、アタシのボットには悪いけど、ここは戦略的撤退だと思ってよ)」
ブオンブオオオン!!!
アタシは拓海さんが壁から出てくる前に少しでも早く駆け出そうと足を踏み出す
ピリッと右足がしびれた
加蓮「(今だっ!!!)」
スタートダッシュを踏み切る
右足のしびれだけがまだ消えない
拓海(ボット)「あん!?てめェ、逃げやがんのか!!?」
ブオンオンオオオオオオオオオオオオン!!!
拓海さんの驚いた声が聞こえ、一気にバイクの音が追いかけてきた
拓海(ボット)「待てやこらああああああああああ!!!」
加蓮「ハァ・・・ハァ・・・ま、待たなくても追いつけるでしょうが!!」
拓海(ボット)「るっせぇ!!こっちがお前を撥ね飛ばさねえようにしてるからって舐めんてじゃねぇぞ!!」
アイドルとして鍛えたといっても徒競走が早いわけじゃない。
持久力は付いたからマラソンなら出来るかもしれないけど
今やってるのは速さ比べだ、しかもこっちはまだ右足がしびれてる
後ろから迫りくるバイクに轢かれでもしたらおしまい_______
うん? あれ?
極度の緊張と急な運動で
酸素の不足した脳は
アタシにとんでもないことを考えつかせた
ゲーム開始26分経過
北条加蓮VS向井拓海(ボット)
戦闘続行?
~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
仮想空間内
チャプター
二宮飛鳥(ボット)&八神マキノ(ボット)&橘ありす(ボット)
_ゲーム開始7分経過_
ザザ_ーーザザ・・・ザー...
ボクは右手の薬指だけを少し上に向ける
ザザー・・・そ・・・あ・・・___だよ...
頭の中に響く、ノイズだらけの音になんとか判別できる音が入ってきた
ボクは左手首を15度ほど外側に回し、次は10度内側に回す
角度を小さくしながらこれを繰り返してチューニングを行う、
この能力は微調整が命だ、それ次第で武器にもお荷物にもなりうる
___仮想空間なら警察も早苗さんもいない?・・・・・・ハッ!?閃いた!!___
いまのは愛海さんの声かな?
ボットなのかプレイヤーなのか判断はつかないけど元気そうでなによりだよ
広げていた指をたたみ、握りこぶしを作った
気を取り直してさっきまでとは違う方向に手のひらを開く
ザザザザザザザザ...ザザザザザザザザザザザザザザザ
やれやれ、また最初からチューニングしなくては__
???「そこの貴方......すこし時間はあるかしら...?」
おや、どうやら来客のようだ
~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
_ゲーム開始6分経過_
......なんということでしょう
私が子供だからでしょうか。
晶葉さんは何を考えて私の能力をこのようなモノにしたのでしょう
戦うのがボットのはずです。私の能力では戦えません
この手のゲームでは私のような小さい体をフォローするような
強力な能力が与えられるのがセオリーでしょう
ゲームバランスがむちゃくちゃです、クソゲーです
腕に抱えたタブレットに目を落とす
タブレットの画面は、このままでは私がプレイヤーと遭遇してしまうことを示していた
慌てて近くの路地に身を潜めます
「...........」
気配を殺す、息を止める、あ、息はしてませんでしたね
やがて近づいてきた足音は私に気づくこともなく通り過ぎていきました
「............」
また戦えなかった。また隠れてしまった
逃げるためにしか使えない能力
これでは私は、一体何のために作られたのでしょう___
???「そう...貴方もまた戦闘向きではない能力の持ち主なのね...」
タブレットには何の反応もない
なのに確かに声がした
~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
_ゲーム開始2分経過_
度し難いな...
模擬戦闘と銘打っておいて私に与えられた能力が”これ”とは...
いえ、見ようによっては諜報活動を趣味とする私をとても良く表しているし
論理的に考えれば諜報に使うのが目的でしょう。
ただ、そうだとするならもう少し操作性と自由度がないと...
...まったくもって論理性を欠いているわ
まだいろいろ未知と不確定要素の多い能力だけど、
できることはあるはずよ。スマートに行きましょう
まずは味方を増やすところからね
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~
_ゲーム開始20分経過_
八神マキノ(ボット)「___戻ったわ」
二宮飛鳥(ボット)「やあ、お帰り ”スカウト”は順調かい?」
マキノ(ボット)「二人、声をかけることができたボットはそれだけよ」
マキノ(ボット)「他に四人ほど声をかけようとしたけれど、私が跳んだ時にはもうどこかに移動してしまったみたい」
飛鳥(ボット)「”跳ぶ”ね...面白い表現だよ。これで橘さんが残していったメモの場所は全て見たのかな」
マキノ(ボット)「ええ、そうね。橘さんが帰ってきたら彼女の能力をもう一度使ってもらいましょう」
飛鳥(ボット)「橘さんをね...」
マキノ(ボット)「ええ、橘さんをよ...」
橘ありす(ボット)「...ただいま戻りました」
飛鳥(ボット)「おかえり、ありす」
マキノ(ボット)「おかえりなさい、ありすさん」
ありす(ボット)「あの...橘って呼んでくださいと言いましたよね?」
飛鳥(ボット)「ボクの気が向いたときは、そう呼ぶのもいいかもしれないね」
マキノ(ボット)「使いどきの問題ね、四文字の『たちばな』より三文字の『ありす』の方が会話において時間短縮になるのは論理的に自明なことよ」
ありす(ボット)「......」
飛鳥(ボット)「ところで首尾はどうだった?ボクの能力、《十指回路》じゃ、傍受できる声は一人分だけだし」
「マキノさんの《0と1の蜃気楼》は追跡には向かないからね」
ありす(ボット)「ええ、問題ありませんでした」
飛鳥(ボット)「ふふ、やはり、《ドットガーデン》を持つありすに任せたのは正解だったね」
マキノ(ボット)「(今更だけど度し難いセンスね...)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす(ボット)「奈緒さんには音葉さん、加蓮さんには拓海さんに向かってもらいました。少なくともこれで二人は分断出来たでしょう」
ありす(ボット)「凛さんは今、晴さんと舞さんが見張っています。」
ありす(ボット)「今のところ凛さんはトライアドの二人からは離れた場所にいますが、だからといって別のアイドルとユニットを組む可能性もありますし、注意ですね」
ありす(ボット)「念のため、このあと私も”ダメ押し”をするために凛さんの所へ向かわせてもらいます」
飛鳥(ボット)「頼もしいね、ありすが自分の能力にコンプレックスを持っていた頃が懐かしいよ。ボクらの中じゃ一番有用なのにさ」
マキノ(ボット)「貴方こそ自分の能力を卑下してるわよ?」
マキノ(ボット)「ところでありすさん、貴方はどうやってそのダメ押しを実行するつもり?」
ありす(ボット)「この二つのアイテムを使わせてもらいます」
ありすは上着のポケットから四角い箱と丸い紙を取り出した。
箱の方は上質な素材でできているらしく、高級感のある光沢を放っている
それと対になるかのように丸い紙はシワだらけの、和紙のような薄いくて脆い外見だった
一見、妙な組み合わせの何の共通点もない二つ、実際この二つに共通点はない
一つはボットのためのアイテムで、
一つはプレイヤーのためのアイテムなのだ。
飛鳥(ボット)「なるほど、それを持ち出すのか...だが分かっているかい? もし凛さんにソレが渡るようなことがあればボクたちは一気にピンチ、全滅もありうるんだよ?」
マキノ(ボット)「大げさに言い過ぎよ、論理性を欠いている。しかしそれくらいのリスクがあるのもまた事実ね」
ありす(ボット)「だからこの二つです。私は一人では戦いません」
静寂
マキノ(ボット)「...ええ、わかったわ。あなたを仲間に加えたのは私、論理的でない言葉だけど...信頼させてもらうわ」
飛鳥(ボット)「面白くなってきたね。じゃあ、おさらいしようか。今回のボクらの行動と目的を」
飛鳥がシニカルに笑いながら重要な確認事項の復唱を促す
その両手はよく見ると細かく動いている
まるでラジオのツマミを回したりアンテナの角度を調整するように
ありす(ボット)「私は凛さんをほかのアイドルから孤立させ、そして『あの場所』から引き離します」
マキノ(ボット)「私は奈緒さんと音葉さんの戦いを監視、加蓮さんとの合流の阻止。私の能力の性質上、干渉するのは難しいけれど」
飛鳥(ボット)「ボクは見ての通り現在進行中で、拓海さんと加蓮さんの戦いを傍受しているから、それを引き続き行わせてもらうよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トライアドプリムス
三和音の第一級
渋谷凛、北条加蓮、神谷奈緒
この三人が揃ったとき何が起こるのか
ボットのボクにはわからない。
ボットのボクがオリジナルから少しだけ引き継いだ記憶
ボットの性格や能力を決める一因として晶葉さんが組み込んだもの
その中のトライアドプリムスの活躍を見る限りこのユニットは無視してはいけないのは自明だろう
マキノ(ボット)「では、行ってくるわ...」
そう言うとマキノさんは何の予備動作もなくその場から消えた
素早く動いた、というわけじゃない。
これがボクが命名した彼女の能力《0と1の蜃気楼》
簡単に言うとこの仮想空間内で、彼女が設定した地点にワープする力
ただし制約が多いのが難点だとマキノさんは零してたっけ
確か、ワープした地点からは動けないし、
モノにも触れない、次のワープのためにはワープ前の地点
(つまり今のボクらの拠点)に戻らなきゃいけないとか
だからまるで幽体離脱した気分だとか言ってたね
どれだけ遠くに跳んで行っても目が覚めると元の場所にいる、と
ありす(ボット)「それでは私も失礼します」
ありすは歩いて扉から出て行った。一人だとプレイヤーにあったとき彼女の力ではひとたまりもないだろう
だが彼女の能力《ドットガーデン》(もちろんボクが名付けた)にかかれば
ありすはタブレットを通して自分周囲数百メートルに存在するボットとプレイヤーの位置を知ることができる
だからプレイヤーとの接触を未然に防ぐことも、逆に尾行することもできるし
どこかに潜んでいるボットの位置を特定し接触、そして仲間に誘うこともできる。
まあ実際にボットのいるところまで跳ぶのはマキノさんの役目だったけど
ボクは部屋に一人になった。
だが静寂じゃあ、ない。
ザザザ......あぁ...!...なんだ...!!・・ザザ
ボクの能力《十指回路》端的に言ってこの世界で一、二を争う地味な能力かもしれない
両腕と体の一部がラジオの部品になっている。それだけの能力
確かにボクのオリジナルの趣味はラジオを聴くことだったけど
能力にこう反映するとは予想外だったよ
晶葉さんなりのジョークだと思っておいた方が良いのかな?
まぁとにかくボクの腕や指が仮想空間を飛び交う音声情報をキャッチして
ボクはそれを聴くことができる、ただ情報が錯綜しているからチューニングが大変かな
はっきり言って盗聴するだけだ
マキノさんもありすもボクも能力を用いた戦闘力はゼロに等しい
こういうのを戦力外っていうんだろ?
だけどボクらの力は戦力を集めることができた。
作戦行動を円滑に進められた。
作戦、ね。
飛鳥(ボット)「トライアドプリムス......君たちはこの仮想の中で三人が揃わないままに力を発揮できるのかな?」
ゲーム開始21分経過
『トライアドプリムス分断作戦』進行中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数時間後に「チャプター渋谷凛」投下します
~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛
私の乗ったエレベータがビルの最上階に辿り着いた
屋上直通じゃなかったけど、あとで見てみるのもいいかもしれない
凛「わあ......」
廊下のガラス越し、その遥か下にミニチュアサイズの街が広がっていた
フロアはオフィスの事務を行うところらしく、
廊下の反対側にはたくさんの広い部屋が並んでいて、そのどの部屋にも事務机が目一杯詰め込まれていた
さぞかし大企業なのだろう、あ、いや仮想空間だけどさ
凛「こんな真面目そうなとこじゃ武器なんてないかも...」
いかにも表沙汰にはできないようなことをやってそうなスジ者の消費者金融事務所みたいな建物ならドスとかチャカも出てきたりして
凛「いやだから仮想だってばここ・・・」
私は廊下の突き当たり、「第1会議室」と書かれた部屋の鉄製の重たい扉を押し開けた
鍵がかかってなかったので思ったよりも軽い力で開けられた気もする。
まず目に入るのは円卓
今まで見たのより広い部屋の真ん中にでんと居座っている。
小型車ならその上に駐車してしまえそうなサイズはむしろ非現実的で、
こんな大きな机で会議を行うなんて・・・会議に一体何人の人間を呼ぶつもりなんだろう
凛「・・・・・・・・・・・・」
凛「・・・・・・・・・よし」
私はその円卓に添えつけられた高級感あふれる椅子に足をかけると円卓の上に飛び乗った
コツ、コツ、コツ、コツ
硬い素材で出来ている円卓は私の足元でよく響く足音を立てている
天井がさっきより私の頭に近づいている
凛「・・・・・・・・・・・・」
部屋の中央を占める巨大な机の、その中心に立って周りを見渡す
机の上に乗ることなんてまぁ無い、
掃除中に蛍光灯を磨くとき脚立がわりにするくらいだろう
私が立っている机の周囲を黒革の椅子が取り囲んでいる
照明はつけていないけど、この会議室は窓が全面ガラス張りなので外からの日光で十分明るい
凛「・・・なんの映画だったっけ・・・大企業の会議室に殴り込んで、こうやって会議机の上に仁王立ちしてたよね」
残念ながら今の私を椅子から見上げるギャラリーはいないけど、というかスカートで仁王立ちはちょっと・・・
凛「ふーん・・・」
ちょっとあまり日常ではとらない非常識な行動に舞い上がった気がするけど
これでこの広い部屋全体を俯瞰的に観察できた。
会議に使うスクリーンとプロジェクター、
部屋の隅にはウォーターサーバーと観葉植物
あと壁際に付いてるのは照明のスイッチかな
部屋のサイズは規格外とはいえ、作りはシンプルだったみたいで、めぼしいものは何もなかった
奈緒に借りたゲームだと建物の最上階一番奥の部屋には強い武器があったんだけどなぁ
凛「しかたない、事務机のほうを一つ一つ虱潰しに調べていこうかな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~
結城晴(ボット)「おい、凛姉さんあっち行ったぞ、早く追いかけないと」
福山舞(ボット)「ちょ、ちょっと待ってくださいぃ・・・」
晴(ボット)「報告に行ったありすが戻ってくるまで見張っとくのが仕事だろ、急げ」
舞(ボット)「で、でもこの状態、重いよー・・・」
晴(ボット)「仕方ないだろ、下手に近づくと凛姉さんに匂いでバレそうだし」
舞(ボット)「に、匂い?」
~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
会議室のすぐ隣の部屋はやはり事務机の村だった。
机と机の間の幅が人一人通れるかなってくらい
この窮屈さは学校の教室を思いだすかな
とにかく入口近くの机から物色を開始する
凛「・・・産業スパイか会社空き巣にでもなった気分」
机の上はパソコンと何本かのペンが置かれているだけで、書類らしきものは無い
引き出しはどれも鍵がかかってなかったけど何も入ってないものばかりだった。
ひとつの机を調べたらすぐ隣の全く同じデザインの机をあさり始める
すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、すぐ隣、隣、隣、隣隣隣
全く同じデザイン、全く同じデザイン、全く同じデザイン
なんの変化もないまま同じ作業をし続けていると自分が機械になったような気がする
凛「(機械になった、といえばボットたちも機械なんだよね)」
自分はまだ自分ソックリのボットの他には会ってない、というより戦闘を避けてるため会わないようにしていた
ボットたちはどこから来たんだろう、そして倒されたボットたちは何処へ行くんだろう
バタン!!
凛「・・・ふう」
引き出しを強く押し込むと意外と大きな音がした
ただでさえなれない場所にいるんだ、こんなことばかりしていたら気が滅入ってしまう
凛は引き出しの開け閉めばかりしていた腕を気分転換がてらブンブンと回してストレッチする
仮想空間でのストレッチに意味があるのかはよくわからないが、少しすっきりした
凛「んーっ・・・ぷはっ、なんにもないや数撃ちゃ当たると思ったのに」
このまま隣の部屋も調べていったとして、そこでも何もなければ全ての階を調べなければいけないのだろうか
24階建てのビルの中で使われている全ての椅子と机の数を考えて答えなさい
まるでフェルミ推定の問題だ。
凛「先は長いね・・・それとも次のアプローチに行くべきかな」
ふと目をやると街の風景が目に入る。
この事務室も壁がそのままガラス張りになっているので非常に見晴らしがいい
ここは24階だから高所恐怖症の人からしたら最悪の職場だろうけどね
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
舞(ボット)「こ、ここ怖いよぉ・・・」
晴(ボット)「下さえ見なきゃなんとかなんだろ、我慢しろ」
舞(ボット)「で、でも・・・」
晴(ボット)「いいから見張れ、もし凛姉さんが『あの場所』に気づいたら、ぜってーヤバいことになる」
舞(ボット)「そ、そうならないようにするんだよね・・・?だったらもう行ってもいいんじゃ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~
仮想と現実の違いを見失いそうになる。
なにせここまで作りこまれた摩天楼を見せられてるんだから
窓の外は現実の風景となんら変わりない都会、ただ見慣れないデザインの建物もあるけど
凛「・・・奈緒や加蓮とも見たかったな、まだ昼だけど」
そういえばこの世界に夜はあるのだろうか。
ガラスの壁に手をつく、視界いっぱいの青い空と灰色のビル群
視線を遠くにやるにつれてビルの高さがだんだん低くなって、小さな建物が密集している部分に目が止まった
凛「でもこんなに広いのにアイドルとそのボットしかいないんだよね、アイドルがいるならプロデューサーがいてもいいと思うんだけど」
ガラスの向こうへ目を凝らす、ほかのアイドルが見えないだろうか___
バン!!!!!!!!!!!!
凛「!!!???」
私の視界は妨げられた。
”ガラスの向こう”から私の眼前に飛んできたサッカーボールによって
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
そのボールは、勿論ガラスを突き破ってこっちに来ることはなく、
ガラスの壁にはじかれると下に落ちていった
凛「な、なに!!?」
私は無傷だったけど反射的にがラスから離れていた。
しかしあまりの不可解な現象にガラスに近寄ってしまう
どんな脚力を持った人間ならビルの24階のガラスにサッカーボールをぶつけられるの?
凛「・・・・・・・・・」
壁ガラスにすり足で近寄る、充分近づいたら頭だけを突き出して下を覗き込んだ
この遥か下、地上にいる誰かを確認するために
凛姉さん、うーっす
晴(ボット)「・・・・・・」
ガラスを隔てているので聞こえなかったけど、晴のボットは多分そんなことを言っていたんだと思う
その近くにいるのは舞のボットだ。二人共よく似合う普段着だったが、あの赤いバッジだけが浮いていた
私がいるのが地上24階
晴と舞は地上23階にいた。
ビルの壁に突き刺した一輪車を足場にして
地面は二人の足元の遥か下
晴(ボット)「・・・・・・」
晴がまた何か言ってる、でもガラスで聞こえない
そして不安定な足場の上で、
それでも晴は見事、手に持ったサッカーボールをシュートした
バリィィイイイン!!!
丈夫なはずのガラスが、小さい子供が蹴ったボールの前に砕け散る
ああ、
だからここは仮想空間なんだってば
現実じゃあないし、現実的でもないことが当たり前な
ゲーム開始27分経過
渋谷凛VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)
開始
~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
走る走る
急ぐ急ぐ
タブレットのチェックは忘れずに
橘ありすは走っていた。
思った以上に早めの行動が決定してしまったのだ
ありす(ボット)「・・・こんなに早く・・・!!」
タブレットにはいくつもの丸が表示されている
これが地図上でアイドルやボットの位置をモニターしているのだ。
まるでGPSを搭載したマップのように一人一人の動きをつぶさにリアルタイムでありすに教えてくれる
その中で、いま二つの青い丸と一つの赤い丸が重なるように映されている
二つの青丸は晴と舞のボット、赤丸は間違いなく渋谷凛だろう
おそらく戦闘が始まっている。予定より早い
ありすたちの最初の計画は丸腰でビルの最上階に向かった彼女を追い詰め、倒すことだった。
ただ重要な問題があった。
『あの場所』のことである
八神マキノは自身の能力を用いて凛の踏み込んだビルの屋上にワープし、
そこから見える風景を調べ、そして確信を得た。
このビルからは『あの場所』が丸見えなのだ
『あの場所』にもしもボット以外のアイドルが入ることがあれば...
こうして対凛の当初の作戦は成功の利益よりも失敗のリスクが格段に高まることとなった
これが一度ありすが拠点に戻った理由である。
倒せなくてもいいから凛の気を引くことができれば...
凛が『あの場所』を見落しさえすれば、それで良し、
それだけで、ボットはまた一つ勝利への布石を置くことができる
??「・・・ありすちゃーん、大丈夫?」
どこからか声がする、ありすはそれが味方からの声だと知っている。
なにせ他ならぬ自分が仲間に誘ったのだから。
ありすは走る
だが、その前には時計を持った兎はいない
彼女は誰かについていくのではなく自分の意志で前に進んでいた
ゲーム開始30分経過
渋谷凛VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)
継続中
橘ありす(ボット)&?? 参戦準備中
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛
綺麗に並んだ机の列に飛び込む
その向こう側に転がり込むと同時に事務机に備え付けられたパソコンが弾き飛ばされたのが見えた
晴(ボット)「凛ねーさーん、サッカーしよーぜー」
凛「手加減してくれるならいいけ、どっ!!」
その場から助走抜きで駆けだす、近くの椅子を自分の盾みたいにするのも忘れない
その盾も爆発したみたいに跳ね上げられた。
晴(ボット)「えー、オレこれでも手加減してるんだけどな」
ギュルン!!
そんな音がしたので走りながら背後に目をやる。
サッカーボールはまるで透明人間が蹴り飛ばしたように晴の足元に戻っていった
それがさも当然のように晴は足元にボールを確保する
凛と晴の距離は3メートルと少し
晴(ボット)「能力だかなんだか知らねーけど、オレが蹴るとボールが戻ってくるんだよ」
「これじゃ一人でPKも出来やしねぇ、だから凛姉さんが蹴り返してくれよ」
ドゴンッッッッ!!!
晴の足がボールを蹴り飛ばす、子供らしい小さい足からは想像もつかない轟音をあげ、
唸りを上げて凛に来襲した
凛「(蹴ったボールが戻る?多分それだけじゃない、それだけならこのシュートの威力は絶対におかしい___)」
体を回転させる、ボールは凛の脇腹の横を通過していった
凛「今っ!!」
晴へ向けて駆け出す
凛がよけたことでボールはずっと後ろの壁まで飛んでいく
晴と凛が机の列にはさまれた一本道で一直線になっていたからだ
凛の計画通りに
これで凛がボールを避けることができればボールには障害物がない、
そのまま壁にぶつかるまで止まらない
凛は見抜いていた。
晴のボールが戻るのはボールの動きが完全に停止してからだと
パソコンの画面にめり込み、椅子を破壊し、そうして運動エネルギーを失った後にしか能力発動しない
これは当て推量だ。もしかしたら違うのかもしれない
だが現に今、晴と凛の間にあの凶弾と化したボールはない!!!!
ジャリッ!!
事務机の一つ、割れたパソコン、その破片を手に取る
材質はプラスチックだが、角は充分尖っている
彼我の距離、2メートル
晴(ボット)「!!」
舞(ボット)「あわわ、は、晴ちゃん!?逃げて!」
離れた位置で見ていた舞が慌てたように叫ぶ、
晴の武器のボールはこの部屋の反対側、ずっと向こうの壁にぶつかるまで戻ってこない
凛「ふっ!!!」
相手はボット、これはゲーム、傷つけられても傷が残ったりはしない
一度やると決めた凛に躊躇はない、ただ覚悟があるのみ
メシャ
そして
凛の背中を戻ってきたサッカーボールが撃ち抜いた
敗因は実に簡単
彼女は「ボールが晴の足元に戻る」と「異常なシュートの威力」を別々の能力と考えていた
だから「戻る」方だけにしか対処を講じず、「威力」は避ければなんとかなると思ってしまったのだ
だが晶葉が明言しなかったことだが能力はボット一人につき一つしかない
晴の能力ももちろん一つ
この二つの現象は『たった一つの能力』によって起こされている
___________
渋谷凛 93/100
___________
___________
結城晴+ 100/100
___________
___________
福山舞+ 100/100
___________
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
凛「がっ、は・・・!!??」
肺を後ろから強く押され、呼吸が止まる
凛は地面に倒れ伏した
晴(ボット)「大丈夫か凛姉さん?なんでボールじゃなくてオレの方に来るんだよ、サッカーだってば」
晴(ボット)「あーもう、オレの能力、”設定”の変え方がわかんねーんだよなー・・・」
凛「(・・・・・・・?)」
晴が凛から離れていく、そしてまた3mほど離れた位置で足を止める
舞(ボット)「晴ちゃん!今なら凛お姉ちゃん倒せるんじゃないですか!?」
晴(ボット)「あ?確か、ありすは倒すのは二の次って言ってたんじゃなかったっけ?」
晴(ボット)「それにサッカーでラフプレーはヤだぜ?そういうのは他の姉ちゃんに任せる」
よくわからないが晴から追撃の気配がない、というかこれは
凛「ハァッ、 ハァッ...私が、立つのを、待ってるんだね......」
体の芯にしびれが走っている、深呼吸ができない
凛「フェア、プレーは、・・・私も好きだ、よ」
それでも凛は立つ
凛「さぁ晴、...始めようか、二人サッカー」
次はその能力の謎、解いてみせる
ありす(ボット)「そこまでです、凛さん」
ゲーム開始33分経過
渋谷凛
VS
結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&??
開始
~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
一ノ瀬志希
晶葉ちゃんがトイレに行ってる隙に適当にキーボードを叩いてたら
仮想現実内の音声再生がオンになっちゃったよ、
志希にゃん直し方分かんなーい
にゃはっ♪
みんなの声が一斉にスピーカーから流れ出すからよく聞き取れないや、
それにどうやら録音されたメディアも同時再生されてるから
話の時間軸もバラバラだし収拾つかにゃーい
~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~
ありす(ボット)「凛さん!!??こ、ここ何階だと思ってるんですかっ!!???」
__
加蓮「____言ったよね?アンタ確かに言ったよね?」
_______
奈緒「・・・・・・・・・天使?」
_____
音葉(ボット)「_________なんて、美しい____」
_______
周子(ボット)「もしかして知らないの?...ユニットを組むことのデメリット」
____________
杏「違うから!!違うから!!もうホント違うから!!こっちがボット!!あっちが本物だから!!」
____________
晶葉「志希・・・・・・何勝手に触ってるんだ?」
ゲーム開始40分経過
一ノ瀬志希VS池袋晶葉
お説教 開始
~~~~~~~~~~~~~~
318 : ◆ecZBoTY/6E - 2014/03/09 01:15:39.76 cpv+o4lCO 275/1677
次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、佐久間まゆ
2、星輝子
3、諸星きらり
次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下
4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉
8、VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&??
画像コメントありがとうございました
321 : 以下、2... - 2014/03/09 01:40:44.57 LiWJn+BL0 276/16772
4
322 : 以下、2... - 2014/03/09 01:40:51.69 ZBbb+frwo 277/16772
8
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チャプター
星輝子
えっと...
何から話したらいいかな...フヒ
目が覚めたら、で、電車で寝てた...
あ、そこは...うめちゃんも一緒なんだね、そ、そうでした...フヒヒ
そのあと、親友から...よくわからないこと、いっぱい説明されて
わ、、私の隣にいた、さ、紗南ちゃんと裕子さんが、はしゃいでて
げ、ゲーム?とかなんとか...紗南ちゃんに詳しく解説してもらったんだけど...
そういえば、さっちゃんは...電車の中でま、まゆさんと美穂さんと一緒だったんだって...
うめちゃんは?......ほ、ほほう 亜季さんと
もう一人は......へ、へえ...な、なるほど
こ、これでぷ、ぷれいや??は...わ、私たちを含めて九人まで分かったんだね
フヒヒヒ...
そのあとは...いつの間にかこの世界にいて、
なんとかボットは倒したんだけど...
わ、私はしばらく...机の下にいたんだ
...机の隅のほうのキノコを...採ったら、変な音がしたんだよね、フヒ
え、さっちゃん、なに?...ん、能力?
で、でも慌てて机から這い出して、そのあと外...歩いてたら、さっちゃんと会って
さっちゃんに連れらて...あてずっぽに進んで
いまに、至ります、ハイ...
フヒヒ
~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
屋敷
小梅「さ、さっちゃん、しょーちゃん...あ、会いたかった...!」
星輝子「こ、こっちも...だぜ、...フヒヒう、ういやつめ...」
輿水幸子「ふふーん!もっとカワイイボクとの再会を喜んでもいいんですよ?」
三人は広い屋敷の居間で、広い仮想世界での再会の喜びを分かち合っていた
幸子「しかし、小梅さんも無用心ですね!玄関の鍵を開けておくなんて!カワイイボクと輝子さんだから良かったものの、ボットの人たちが来たらどうするんですか!」
それを言うなら模擬戦闘中でありながら輝子を連れてあちこちを丸腰で歩き回っていた幸子も相当無用心なのだが
しかし実際、彼女たちはボットにもあっていない
幸子というだけあって幸運だったのかとも思えるが、事情を知る者はそうは思わない
この段階で既にボットたちは蠢いていた
牙を研いでいた
仲間を集め、拠点を作り、...布石を置く準備を続けていた
そういうわけで奇跡的にできた間隙を縫って二人はここにいる
輝子「と、ところで、この家、屋敷?大きいけど...なにかなかったの?」
小梅「そ、そういうのは...まだ調べてない...」
声の出処を探ったりはしたけど
幸子「なるほど!では手始めにこの屋敷から調べ尽くしちゃいましょう!」
幸子「それと!あとで是非とも小梅さんにお聞かせしたい話もありますので!」
小梅「は、話?」
輝子「うん、私と幸子から.......は、話」
小梅「...?」
幸子「さあさあ!まずは手分けして屋敷探検ですよ!」
ゲーム開始7分時点
星輝子(ボット)消失
ゲーム開始13分経過
報告事項なし
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
輝子は屋敷内を探索していた。
屋敷の奥に続く細い通路をぺたぺたと裸足で歩いていく
彼女といい幸子といいコレが仮想空間であるにもかかわらず未だに玄関で靴を脱ぐ習慣が残っていた
襖を開ける中に入る、タンスを漁る、クローゼットを開ける、押入れも開ける
ついでに急須の蓋も開ける
しかし大抵はからっぽだったし急須にいたっては茶葉すらなかった
輝子「フヒゥ...」
まぁ部屋はやたらあるのだ、次の部屋に武器があるかもしれないし
輝子はのんびりと次の襖を開ける、ようやく変化らしきものが訪れた
輝子「あ、これ...?」
輝子の目の前に広がっているのはこじんまりとした和室、
畳と障子がある部屋、といえばほとんど特徴が伝わってしまうシンプルな部屋だ
ただし畳のど真ん中に黒色の銃身をテラテラと光らせた拳銃が落ちてなければの話だが
輝子「まさか...ピストルとは...」
自分で言うのも悲しいが細っこい頼りない手のひらで銃を包む
もっと重いものかと思ったら意外と軽かった。ゲームの仕様だろうか
輝子「や、やったぜ...」
今、小梅は敷地内にあった蔵?のような場所を調べ、幸子は屋敷内を自分と逆方向に調べ進んでいるはずだ
二人も既になにか見つけているかもしれない
さて、この調子でもっと見つけてやろう
自分はもうぼっちじゃない、みんなと一緒に何だってやってやろう
輝子「...フヒヒ♪ボッチジャナイコー...ホシショウコー...」
拳銃ひとつだけの発見だったが、
これが友達の助けになると思えば嬉しくもなる
星輝子はそういう少女だった
輝子「フヒヒ...ヒャッハァ!!ドンドンいくぜぇ!!」
拳銃を振り回すようにシャウトしながら次の隣の部屋に荒々しく突入する
そして
輝子「ッハァハハ?、ハアアアアアアアアア!??!?!??」
白坂小梅が死んでいた
~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
輝子「フヒっ...フヒゥ...えぐっ、ぐすっ」
幸子「よしよし...とってもビックリしたんですよね?もう大丈夫ですからね?カワイイボクがいますからね?」
小梅「あう...ご、ごめん、ね?...い、言い忘れてて...はうぅ」
ところ変わって居間に戻った三人
景気づいたところをド肝を抜かれ、涙ぐんだ輝子を幸子が慰め、小梅が謝っている
意気揚々としていた輝子を驚かせたもの
それはとある人物だった
いや
人物だったもの、だった
幸子「そもそもどうして、アレは消えてないんです?」
小梅「え?消えるもの、なの?そ、そういうもの、だと思って,,,ほ、放置してた...」
それは白坂小梅の”ボット”
彼女のボットは倒されても未だこの世界にとどまり続けていた
どうしようもなかったので小梅はそれを放置していたのだが
その死体を輝子が見しまった、というのが事の顛末だ
さっきまで一緒にいた人間が死体になって転がっていたらそれは驚く
それに小梅以外の認識としてはボットは倒れたら霧のように消える、というものだったのだ普通本物が死んでいると思うだろう
幸子「ふむ...消えない死体、ですか,,,現実なら消えた方が驚きですが、仮想では逆、まるであべこべですね」
小梅「よ、よくわからない...けど、ご、ごめんね?しょーちゃん...」
輝子「...うん、ぐすっ...うめちゃんが...い、いなくなっちゃうかと思った...」
幸子「何を言ってるんですか輝子さん!カワイイボクがいるのにそんな事させるわけないでしょう!!」
幸子「それより輝子さん、貴方には小梅さんに教えなければならないことがあるでしょう?」
場をまとめ、幸子が話を次に進めた
小梅「?さ、さっきも言ってたけど...なに?」
幸子「なんと輝子さんは!すでに能力を身につけているのです!!」
輝子「ふ、フヒ、ど、ども」
照れたように輝子が頭をかく、
ややサイズの大きく、着崩されたTシャツの中に無造作に手を入れる
そのあと中に入れていたらしきものを取り出した
それは手の中に収まるサイズのキノコ、
小梅にはその種類まではわからないがたしか事務所で輝子が飼育していたものの中に似たようなものがあった気がする
輝子「これ、触ったら、なんか能力、使えるようになった、よ?」
小梅「そ、そうなんだ...すごい...!」
幸子「輝子さんはなかなか幸先のいいスタートでしょう?」
小梅「ど、どんなことができるの?」
輝子「フヒ、こんなこと...」
輝子が手のひらを叩く
ぺちっ!
広い部屋に小さな音が鳴る
ぽとっ
叩かれた手のひらが開かれるとそこから何かが落っこちた
小梅「ち、ちっちゃい、キノコ...?」
幸子「どうです?僕には及びませんがカワイイでしょう?」
三人が見つめる先、そこに輝子の手のひらから発生したのは小さいキノコ
単三電池くらいのサイズ。
もうひとつの特徴といえばキノコでありながら根らしきものが見当たらないこと
そして
ミニキノコ「?」
チョコチョコチョコ...
小梅「!?」
ミニキノコ「!」
チョコン
ミニキノコ「fff」
その小さなキノコは小さな足のようなものを生やすといきなり走り始めた
そのあと部屋の隅に行くと満足したようにそこに座り込んでしまう
小梅「な、なにこれ?」
輝子「あ、あるくキノコ」
幸子「カワイイでしょう!」
輝子「じ、自分でジ...ジメジメしたところを探して移動する、よ?」
小梅「か、かわいい、ね...!」
幸子「まぁ、使い道はあるのかどうか微妙ですけどね」
輝子「フヒッ!?」
ぺちぺちっ!
ミニキノコ2「?」
ミニキノコ3「?」
幸子「お、怒らないでくださいよ!?本気で言いたわけじゃありませんって!」
そして新たに現れた小さなきのこ人形が部屋の隅に行き、
根が生えたようにじっとし始めたのを確認すると幸子は小梅に向き合った
幸子「で、ものは相談なんですけど小梅さん、これからの予定などありますか?」
小梅「な、ない...」
輝子「だったら、うめちゃんも、ついてこない?ほ、他に仲間、探してたんだ」
小梅「ど、どこに?」
幸子「そりゃあもちろん、輝子さんが能力発動のキーアイテムを手に入れた場所ですよ!!」
幸子「おそらくなにか収穫があるはずですからね!!」
小梅「そ、そうなの?で、でも...もしかしたら、しょーちゃんの分しかないかも...」
柳の下にいつも泥鰌はいない
たまたま輝子にとって有用なアイテムがあったからといって、
次に行った時にも良いアイテムが手に入るわけではない
むしろこの広い街の一箇所にアイテムが密集している方が不自然だろう
幸子「確かにその可能性もあります。ですが...」
小梅「...?」
輝子「フヒヒ...」
幸子は小梅に耳打ちする、
別に他に聞いている者は輝子しかいない上、
そもそもこの情報の出処は輝子なのでそんなにこっそり話す必要はないのだが
内緒話はすぐに済んだ、幸子が小梅の耳元から離れる
幸子「...と、いうわけです」
小梅「...!ほ、ほんとう...!?」
輝子「フヒヒ、ほんと、だよ」
小梅「わ、私も、行く...!」
その情報が小梅の興味を引いたらしい
小梅は乗り気になった
幸子「ええ、それでは全員揃って『あの場所』に出発しましょう!」
幸子「ボクたちは今から一蓮托生のユニットです!!!」
このあと紆余曲折の末、
拳銃以外の武器も見繕うことができた三人は屋敷を離れた
幸運にも早いうちに仲間を見つけることに成功した三人
その表情は誰もが明るいものだった
ゲーム開始22分経過
星輝子 輿水幸子 白坂小梅
ユニット結成
______________
星輝子+ 300/300
______________
______________
輿水幸子 300/300
______________
______________
白坂小梅 300/300
______________
この数分の後、
巨大な暴力が小さな三人を蹂躙する
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~
高層ビル24階
結城晴のボットとしての能力
子供の足ではありえない威力のシュート
そして蹴り飛ばしたボールが足元に戻る
晶葉は晴に与えた能力を『サッカーボールの最終到達距離を設定することができる能力』
と定義している
例えば晴のシュートによりボールが20メートル先まで飛んでいくとする
ここで晴が能力により到達距離を10メートル、と設定するとボールは同じ力で蹴ろうと10メートルで止まる
例え100メートル先まで飛ぶ力で蹴っても10メートルでピタリと止まる
しかし晴の能力の真髄は
その余った飛距離をボールの速度、威力にあてがえるところにある
本来なら20メートル飛ぶはずの威力を10メートルで留める
その代わり残りの10メートルの分、威力が上乗せされる
現実のサッカーではありえないテクニックである。
強い威力であればあるほどボールが遠くまで届くのがサッカーの現実だ
だが仮想空間内の晴にかかれば距離が短く、近いほどシュートは強さを凝縮される
飛距離100メートル分の威力を30メートルに
30メートル分の威力を20メートルに
20メートル分の威力を10メートルに
さて、
もしここで晴がボールの到達飛距離の設定値を
”限りなくゼロ”
にしたとき何が起こるのか
晶葉もそのケースについてはシュミレーションを欠かしていた
20メートルか30メートルか、晴の脚力がどの程度かはしらないが
そのシュートの威力が0メートルにどんどん圧縮されていくとき何が起こるのか
答え、
能力の飛距離制御を超えてボールが飛んでいくが最終的に0メートル近くの地点に戻る
それは例えるなら短いゴム紐で手首に結びつけられた野球ボールを強く投げたとき
ゴム紐がその限界ギリギリまで引き伸ばされたあと、一気にボールを引き戻す動きに似ている
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
晴(ボット)「・・・・・・・・・」
晴(ボット)「・・・・・・お、来たか、ありす」
舞(ボット)「あ!ありすちゃん!」
凛「・・・・・・・・・なんなの」
ありす(ボット)「・・・晴さん、舞さん、・・・お疲れ様です」
部屋の反対側、凛から離れた場所、部屋の入り口、そこにありすが立っている
胸元にはボットであることをあらわすバッジ、手にはありすとセットでよく見かけたタブレット
どれだけ急いできたのか、息を切らせているようにも見える、ボットのはずなのに
凛「(どうしてこんなにたくさんのボットが・・・尾行されてた?)」
割れたガラスのそばには晴と舞、広い部屋の唯一の出入り口にはありす
凛の包囲網が完成していた
凛「・・・ふうん、三対一なら倒せると思ってるんだ。舐められたもんだね」
晴(ボット)「・・・・・・あ?」
舞(ボット)「・・・・・・うー...」
ありす(ボット)「まさか、そんなわけ無いでしょう」
相手が子供だからと甘く見ないのは凛のアイドルとしての姿勢であるが、
その姿勢はこの空間でも遺憾なく表出している
ありすのほうもそんな凛に対し、まるで不遜な態度を崩さない
ありす(ボット)「(凛さんはこっちを見ている・・・『あの場所』に気づいた様子はありませんね)」
ありす(ボット)「(あとは外の景色を見させないように誘導しながらこの建物の外に出す)」
上着の中に意識を向ける、
四角い箱と丸い紙がちゃんとあることを確かめる
まずは箱から使う
戦闘力ゼロのボット
ありすの戦いが始まる
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~
チャプター
渋谷凛
私が取り急ぎ対処しなくちゃいけないのは晴のボール攻撃
予想とは違ったけどなにか種があるはず。
でも私には武器がない、さっきの破片もどこかに落とした
舞は不安そうにこっちを見ているだけ、なぜか一輪車に跨ったままその場に立っている、すごいバランス神経だ
ありす(ボット)「私たちは」
ありすが口を開く、何かの覚悟を決めたような表情だ
ありす(ボット)「今から全力で逃げます」
凛「?・・・私は今丸腰だから、そっちからいなくなってくれるなら歓迎だよ」
何を言うかと思ったら、わざわざ現れての逃走宣言
その意図が読めない
凛「もしかして、舞と晴をかばう気?・・・私に倒されたりしないように」
ありす(ボット)「凛さんはプレイヤーで私たちはボット。戦わないという選択肢はないはずですが」
凛「それは最終目標かな、でも私はまだ武器を調達中だよ?それでも来ないつもり?」
多分こっちが丸腰なことはバレている。
なのにこの発言、ますます読めない
ありす(ボット)「追いかけても来ないつもりですか」
凛「・・・その言葉を聞けば、ついていくこと自体が罠だってくらいは分かるよ」
ありすは確かめるように一言ずつ話していく
ありす(ボット)「そうですか」
ありす(ボット)「ではそう出来ないようにしましょう」
ありすは懐から黒い箱を取り出した。
ちょっとだけ高級感のある光沢が特徴的な____
・・・・・・う、そ・・・なんであるの・・・?
ありす(ボット)「これが何か分かりますか?」
ありすが箱の蓋を開ける
カコンッ
と小気味いい音を立てて箱は開いた
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「___お疲れ様!お前たちのおかげでイベントは大成功だったぞ」
「俺から三人にお祝いだ。まず奈緒は髪飾りだな、可愛いデザインだろ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす(ボット)「箱の外見は忘れても中身を見れば思い出すんじゃないですか?」
ありすが箱の中身をこっちに向ける
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「次に加蓮、」
「加蓮の趣味はネイルだったろ?だからはいこれ、加蓮に似合う色だと思ってな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす(ボット)「分かりますよね?」
箱の大きさの割に中に入ってるモノは小さい、
蒼色の、小石ほどの大きさの装飾品
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「最後に凛、」
「前にお前、高校入学祝いに自分で買ったやつをそろそろ替えたいって言ってたろ?」
「だから、凛にはこれだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす(ボット)「あなたのピアスです」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「新しいピアス、凛のイメージに合うデザインのはずだ」
「きっと似合うよ、プロデューサーの俺が言うんだから間違いないさ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす(ボット)「そしてあなたのキーアイテムです」
ピアス・・・私がプロデューサーにもらったのと同じ・・・!!
ピアスのブランド名が刻まれた箱が閉じられる
ありす(ボット)「さて、では私たちはこれを持って逃げますので」
ありす(ボット)「凛さんは、引き続き武器でも探してたらいいんじゃないですか?」
これは戦闘ではない
だが、ありすにとっての戦いだった
ゲーム開始34分経過
渋谷凛
VS
結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&??
ボット側の戦闘放棄により続行不可能
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
凛が駆ける、
晴への警戒も、舞への懸念もかなぐり捨てて
ただ入口近く、ありすのもとへ疾駆する
晴(ボット)「っと!!」
無防備な凛の背中に晴がシュートを放つ
凛にそれを気にかけることはできていない
サッカーボールは大砲から放たれた鉄球のような轟音をたて凛を追う
もう少しで追いつく
晴(ボット)「あ」
もう少しで凛の脊髄にクリーヒットしそうなところでボールは急停止した
晴の能力が裏目に出たのだ、
最終到達地点は、ほぼゼロメートル
凛にの背中に触れるどころか掠ることさえなくボールは役目を終えたとばかりに晴のもとへ帰還する
晴(ボット)「ぁんだよもう!!どうやったらこの能力、設定変えられんだよ!!」
凛は皮肉にも晴の能力を攻略していた。
蹴り飛ばせるが近づかなければ当たらない。
ボールという、遠距離攻撃のための道具に生じてしまった矛盾
結果的に凛はそれを突いていた
凛「・・・!!かえ、せっ!!」
__それは私がプロデューサーからもらったものだ!
凛の手がありすのもとに伸びる
ありす(ボット)「舞さん」
舞(ボット)「はーい!わかりました!」
ありすはおもむろにピアスの入った箱を天井に向けて思い切り放り投げる
軽い箱は一直線に天井に飛んで行き___
天井に張り付いていた舞がそれをキャッチした
凛「な・・・」
ありす(ボット)「晴さん、逃げますよ」
晴(ボット)「へーいへい」
舞(ボット)「わーい、私の出番だー!」
逃走という名の追いかけっこ
追いかけっこという名の罠
凛「・・・逃がさないよ」
凛は廊下を駆けていく三人を追いかける
その背後、ガラスの向こうにある『あの場所』が凛の記憶に残ることはなかった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
舞(ボット)「凛さん、ちゃんとついてきてるね!」
晴(ボット)「凛姉さんはこーゆーとき冷静だとおもったんだけどなー」
ありす(ボット)「キーアイテムがかかっているんですし、当然の反応でしょう」
福山舞の能力
『一輪車でどこへでも行ける』
彼女の一輪車は重力を無視しどこでも地面として進むことができる
天井であろうと壁であろうと彼女の一輪車はそこに垂直に張り付くことができる
晴と舞が、凛に気づかれずに窓の外にいることができたのも23階で降りた二人が、舞の能力で外壁沿いを移動できたからである
凛は一輪車が壁に刺さっているように錯覚したようだが
その舞も今は地面を走っていた、走っている二人よりもやや前を先行して、手に箱を持っている
ありす(ボット)「さて、やはり私たちの足では追いつかれるのも時間の問題ですね」
晴(ボット)「エレベーターってどこだよおい!?」
舞(ボット)「え、エレベーターは開け閉めしてるあいだに追いつかれるよぉ!?」
振り返らなくとも凛が今にも追いつきそうなのがわかる
「待てー!」とか「待ちやがれー!」といったお約束のセリフもなしに無言で追いかけてくる様は流石クールアイドルといったところか
ありす(ボット)「エレベーターはこの階で止まっているはずですが、階段を使います」
ありす(ボット)「晴さん、足止めを!」
晴(ボット)「あぁ?わかった、よ!」
晴が振り向きざまにボールを蹴り抜く
そう狭くない廊下、牽制の意味も込めたボールが背後の凛を急襲する
凛「そんなの!もう喰らわないよ!」
凛はサッカーボールに拳を向ける
そんなことすれば規格外の威力を持つボールに腕が砕かれてしまうかもしれないのに
だが凛はその手にボールペンを握っていた
舞(ボット)「あ、凛お姉ちゃん何か持ってる!?」
真正面からボールペンを突き刺す
厚くて丈夫な生地でできたボールはそれでは傷つかない
だが軌道は逸れた
凛「っぐ・・・!」
反動で凛も押し返される、
凛にずらされた球は凛の斜め後方に飛んでいく
だがこのままではボールは凛の背中目掛けて戻ってくるだろう
廊下のガラスにぶつからなければ
晴(ボット)「げ!マジかよ!」
ガラスに穴を開け、ボールが外へ飛び出した
ガラスを突き破り本来ならそのまま下に落ちていくはずのボールはしかし晴のもとへ戻る
だが、一度ガラスを突き破り外へ出たボールは一直線にしか晴を目指せない
その一直線上にはヒビの入ったガラス窓
ガッシャアアアン!!
ボールは、穴を開けて飛び出たガラス窓にUターンでもう一度穴を開けた
その破片の向かう先は
凛「___お返しだよ、晴」
ありす(ボット)「んな!?」
晴(ボット)「ちょ、」
舞(ボット)「きゃあああああ!!!」
凛に容赦はない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガラスのシャワーから逃げるように階段の昇降口に飛び込む
階段が渦巻き状に下まで続いている、
ここで一気に引き離す
ありす(ボット)「晴さん!舞さんに掴まって!!!」
晴(ボット)「わかった!」
そう指示するとありすも晴にならって舞の細い肩を掴んだ
舞(ボット)「行くよ!」
舞の一輪車は階段の手すりに張り付くとそれを飛び越えた
三人を乗せたまま宙を浮く
そのまま一つ下の階の手すりに着地した、
またそこから下に飛びおりる、
重力を一部無視しているため飛び移っているようにも見えた
凛「・・・やるね」
階段の手すりだけを足場に次々と下に飛び降りていく一輪車を
それでも凛は追いかける。
一段飛ばし二段飛ばし、階段を跳ねるように下っていく
だが場所は階段
ぐるぐると回りながら降りていくのと
ほぼ垂直に落ちるように降りていくのでは
一階に到達する早さが違いすぎる
晴(ボット)「ま、撒いたか!?」
ありす(ボット)「いえ、撒くのではダメですこちらを追いかけさせないと」
晴(ボット)「つってもよぉ、狙ってやったのかは知らねえけど凛さんヤバすぎだろ!!?ガラスとか!」
舞(ボット)「うう、怖かったよぉ・・・あと二人とも重いぃ・・・」
ありす(ボット)「一度、途中の階でおりましょう。凛さんの出方を伺わないと」
ありすはそう言うと、今も自分たちを追いかけようと、しかし少しずつ引き離されているはずの凛がいる上方を見上げる
ガンッ! ゴンッ!
ガゴンッ! ガッ!
ガンガン ゴン!ゴン
ゴキャ! ベキ!
ガンッ! ゴンッ!
ガゴンッ! ガッ!
ガンガン ゴン!ゴン
ゴキャ! ベキ!
ガンッ! ゴンッ!
ガゴンッ! ガッ!
ガンガン ゴン!ゴン
ゴキャ! ベキ!
ありす(ボット)「・・・・・・・・・え?」
晴(ボット)「おい、なんだよこの音?」
凛に容赦はない
渦巻き螺旋階段の、中心の吹き抜けを
何かが落ちてくる
階段入口に設置された非常時のための道具
真っ赤な色の筒
まさしく自由落下の速さで
落ちるように移動する三人に
いくつもの消化器が
階段の柵にぶつかり方向転換しながら襲いかかった
ありす(ボット)「舞さん!この階で降ります!晴さん!一輪車から下りますよ!」
晴(ボット)「お、おう!」
舞(ボット)「わわわ!?」
間一髪
手すりから転げ落ちた三人の後ろをけたたましい衝突音を立てながら消化器が落下していった
舞(ボット)「ひえぇ・・・」
ありす(ボット)「晴さん・・・ボールはまだ持ってますか?」
晴(ボット)「あ、ああ、あるぜ、・・・・ガラスの粉みたいなの付いてるけど」
ありす(ボット)「予定を早めます、追いつかれないギリギリの距離ではこっちの身が保たないでしょう」
舞(ボット)「ってことは私、またあれやるの?」
晴(ボット)「ヤッバ、凛姉さん追いつくぞ!」
上から聞こえるカンカンという階段板を踏み鳴らす音から逃げ出すように
三人はそのフロアの一つの部屋に飛び込んだ
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凛「・・・・・・・・・」
やりすぎたかな
いくら相手がボット、機械でも少し熱くなりすぎた
見た目と中身がほとんど身内のアイドルそっくりなだけに余計にそう思う
落ち着け、そもそも向こうは私をおびき寄せる気満々なんだ
追いかけているうちに後ろから足元を救われかねない
私はあの三人が入ったとあたりをつけた階に入る
19F
なんだ、それだけしか降りてないのか
消化器投げ込んだのは一応正解だったかな
舞(ボット)「・・・」
ありす(ボット)「・・・」
晴(ボット)「・・・」
廊下から見える位置に三人はいた
あの大きな窓ガラスに背中をつけるようにこっちを向いている
ここもやはり机が多い
ありす(ボット)「凛さん、次は何を投げてきても無駄ですよ」
わざわざその一言だけを言うために待ってたの?
やはりここでムキになってついて行くのは罠か
と思ったていたのに
晴(ボット)「オーバーヘッドシュート!」
晴が足を頭より高く振り上げるようにしてボールを自分の後方に蹴り飛ばす
三人の背後のガラスに大穴があく
その破片が降り注ぐ前に
三人はその穴から飛び降りた
ここは地上19階
凛「・・・!!」
あまりに不条理すぎる、こっちを誘導していたはずがこんな・・・
ガラスの破片を避けながら慌てて穴を覗き込む、ガラス張りのビルの外壁を見下ろす
地上までのあまりの高さに目眩がする
凛「完全に私から逃げ切る気、だね」
私がそう言って睨んだ先で、
舞の一輪車が壁に垂直に走っていた
落ちてる、という訳ではなさそう
舞の小さい体に晴とありすが必死な様子でしがみついてる
凛「たしかにこれじゃあ何を落としても無理そうだね」
その一輪車はガラスの壁を滑るようにジグザグに走っている
これじゃ何を落としても当たらないだろう
たしか舞は学校で一番一輪車に乗るのが上手なんだっけ
事務所でプロデューサーにそんなことを言っていたのを思い出す
舞が方向を変えるたび、しがみついた二人が振り落とされそうになっている、非常に危うい
凛「・・・すごい勇気だね、こんな高いとこで、」
でも、まだ詰めが甘い
年上を舐めないほうがいいよ
私は即座に次の行動に移る
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高層ビル地上15階ほどの高さ
舞(ボット)「ひええ高い重い怖いぃい・・・」
ありす(ボット)「もう少しですから、途中でガラスを割って侵入しましょう」
晴(ボット)「おいこんなとこじゃボールなんて蹴れねえぞ!?」
ありす(ボット)「さっきはそうやって入ってたじゃありませんか」
晴(ボット)「あれは壁に止まってたからだよ!!こんなフラフラな一輪車の上で立てるか!!」
カクカクとZ字をなぞるように動く舞さんの一輪車と舞さんに命綱のつもりでつかまりながら周囲に目をやる
非現実的な風景
地上の道路がはるか下方にあり、背の低い建物の屋上が見える
空を飛んでいると錯覚しそうだが、下手すれば落下してしまう
パラパラ
上階から小さな破片が自由落下し、外壁のガラスにぶつかり音を鳴らした
カラカラ
ありす(ボット)「まさかまた、なにか落としてきたのでしょうか?」
晴(ボット)「え、おいマジかよ、舞避けろ!」
事務机が
ガラスを突き破って私たちめがけて落ちてきた
太陽の逆光のせいでそのシルエットになった姿はまるで四角い隕石だ。
自由落下の方が一輪車よりも速い、このままでは___
ありす(ボット)「舞さん、落ち着いて左に曲がってください」
晴(ボット)「また落ちてくんのかよぉ!?」
舞(ボット)「は、はいい!!」
キュッと一輪車のタイヤとガラスが擦れて方向転換する
これで机は軌道を変えた私たちに掠る事もなく落ちていくはずです
階段の時と違ってここは広いのですから避けるのは舞さんには簡単でしょう
しかし凛さんにそれがわからないとは思えないのですが・・・
机が無残にも私たちの横を落下していく
凛「おまたせ」
落下してきた机、それを足場に凛さんが立っていた
リスクを顧みず机と一緒に19階から落ちてきたんだ
凛さんは自分にも容赦がなさすぎる
ゲーム開始37分経過
渋谷凛
VS
結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&??
場所 空中
延長戦開始
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383 : ◆ecZBoTY/6E - 2014/03/10 01:08:47.63 7QrDuTEgO 331/1677~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
凛Pの方々、何かすいませんでした
次回開始するチャプターを選択してください
安価+3下
1、輿水幸子
2、諸星きらり
3、堀裕子
次回、優先して閲覧したい戦闘シーンを選択してください
安価+4下
4、VS塩見周子
5、VS上条春菜
6、VS向井拓海
7、VS梅木音葉
8、VS結城晴(ボット)&福山舞(ボット)&橘ありす(ボット)&??
《しぶりんを遠まわしに愛でる会》at『あの場所』
(安価+6までに過半数の投票で閲覧可能。別の安価との同時投票も有効)
9、島村卯月(ボット)&本田未央(ボット) 他
画像コメントありがとうございました
384 : 以下、2... - 2014/03/10 01:24:17.66 ZFb4rUNw0 332/1677乙 2/8/9
385 : 以下、2... - 2014/03/10 01:27:24.44 dTWr7rcHO 333/1677289
むしろそうでもしないとポット側が有利すぎてプレイヤーがピンチだからあんな感じの思い切った行動はしてほしいね
386 : 以下、2... - 2014/03/10 01:37:04.97 QDCvK02p0 334/16772
8
9
387 : 以下、2... - 2014/03/10 02:03:22.56 Qb9sX8DYo 335/16771
6
9
388 : 以下、2... - 2014/03/10 02:05:26.94 OlzsVeGQo 336/1677更新が毎回楽しみ
乙
9
392 : 以下、2... - 2014/03/10 03:49:06.99 L5eq6RuDo 337/1677289 しぶりんPだけど大切な思い出の物のために容赦ないしぶりんかわいい。
続き
渋谷凛「アイドルサバイバルin仮想現実」【パート3】