1 : 名無しさ... - 2017/09/25 22:50:46 pEf 1/11

芳乃「神通力、まじない、魔法、異能、超能力………。呼称は様々でありますが、通常―これらの存在は科学の進歩によって淘汰され、もはや目にするのはフィクションの世界でのみでしょー」

芳乃「しかしー、この世には依然として人には推し測れぬ摩訶不思議な出来事が確かにありましてー。私もそれに携わる者なのですー。常識では因果を明らかにすること出来ない力を振るい、世の憂いを晴らしておりますー」

芳乃「私は万物の声を聞く者―。時に迷える者の声に耳を傾けその者を導きー、時に天や人ならざるものの声を感じー失せ物を探すのでしてー。他にも私、魔を祓う力など様々な力を身に宿しておりますー」

芳乃「これらの事柄、やすやすと巡り合えないでしょうー。神如き力とは、人の世では秘められるべきであるからですー。つまりは神秘なのでして-」

元スレ
【デレマス】依田芳乃「エスパー裕子解体新書でしてー」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1506347446/

2 : 名無しさ... - 2017/09/25 22:51:56 pEf 2/11

芳乃「そしてー、人の物差しで限界を定められれば、その神秘は見定められる範囲に押し込まれてしまうのでして―。限界を位置づけられた神秘はもはや人々の理解を超えた力としては機能しなくなってしまいますー。ようは、人の上にあった神秘が人には従属してしまうのでしてー」

芳乃「神秘とは、人々の信仰を基にした力。信仰とは、己では制することの敵わない摩訶不思議に対する恐れからくる敬い。ならばー、底を晒して敬いを失った神秘は神秘であらずー」

芳乃「しかしー、神秘とて、存在を人々からまるっきり忘れられてしまえば神秘はないに等しいのですー」

芳乃「神秘が神秘で在り続けるならば、存在を示しながら隠匿する他にないのでしてー。現しながらも隠す。矛盾しているようですが、それは神秘故―」

芳乃「どうやらー神秘は存在を護る手段を持っているのでしてー」

芳乃「私、天や人ならざるものの声を感じることがありますがー、その声はいかようにして生じるのかー。そのきっかけを作る者がいてもおかしくはないでしょー。波紋が広がるには水面に石が落ちなければいけなのですからー」

芳乃「そして、石である彼女の者の名は―――」

3 : 名無しさ... - 2017/09/25 22:52:10 pEf 3/11

………
……

4 : 名無しさ... - 2017/09/25 22:52:28 pEf 4/11

~事務所~

ほたる「……私がいけないんです。私が欲をはったばっかりに……劇に関わっている皆さんに迷惑をかけてしまったんです。こうなることはもう分かっていたはずなのに……なのに……」

芳乃「ほたる。そなたはお稽古の現場で要求に答えー、さらにそこからより質を高めようとしたのですねー?」

ほたる「……はい。私なんかでも皆さんのためになれた。でも、もっと……温かく接してくれる皆さんと……素晴らしい物にしていきたい……って。自分は不幸なんだから、図々しい真似をしてはいけないって……いい加減学んでもよさそうなのに、また過ちを犯してしまいました」

芳乃「さぞかしお辛いでしょうー。自らの不幸を嘆くー、きっとそなたはずっと、それは私では考えも及ばないくらい繰り返していたのでしょうからー」

ほたる「芳乃さん……」

芳乃「……あちらをごらんなさいー」チラッ

ほたる「あれは、裕子さん?」チラッ

裕子「テレポーテーション! ー! む~ん……むむむ~ん……。むんっ! テレポーテーション! テレポート! ……私の体よ家まで飛んでいけ! ……調子が悪いのかな? でも、私は諦めない。だって、私はユッコ! エスパーユッコー!」

ほたる「ちょ、マジックの練習? 裕子さん……お仕事で披露されたりしてますよね。でも、あれが……?」

芳乃「裕子が成し遂げようと取り組んでいることはー、途方もないことであるのかもしれませんー。そなたも境遇を苛まれることはあるでしょうが、裕子がそうであるように自らの意志ないがしろにしてはいけませぬー」

ほたる「で、でも……」

芳乃「そなたにとって不幸とはなんなのでしょうー?」

ほたる「頑張ったのに失敗したり……周囲の人を落胆させてしまったりすることでしょうか」

5 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:52:57 pEf 5/11

芳乃「では、常に不幸なのでしょうかー?」

ほたる「……あっ! 私は自分が……不運な星回りだから、比較的に災難に遭う機会が多いかもしれません。でも、それだけじゃない。以前はうまくいかなかったことが……少し、少しずつですけど。今回だって」

芳乃「時間は大丈夫でしてー」

ほたる「本当だ。……そろそろお稽古に行かないと。芳乃さん、ありがとうございました」

芳乃「劇の成功切に祈っておりますー」

ほたる「はい」テクテク

6 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:53:40 pEf 6/11

数時間後

裕子「超能力ですね。いいですよ。この前、約束しましたしね」

仁奈「はい! ユッコおねーさん! ちょーのーりょく、見せてくだせー。ありすちゃんも一緒にどうですか?」

ありす「私は企画書を目に通すのに忙しくって……。企画書を読みながらでもなら。裕子さん、それでもよろしいですか?」

裕子「ええ! ありすちゃん! あまりの衝撃に目移りしてしまいますから」ウンウン

仁奈「やったー」

裕子「お二人はそこに掛けてください。……、はい。えー、テレポーテーションをお見せするつもりだったのですが、残念ながら隣の部屋が会議で使用中なので……」

ありす「……(別に移動先を隣室に限定することではないのでは)」

裕子「予定を変更して(本日の服装は)」チラッ

仁奈「?」

裕子「……(ウサギをモチーフにしたパーカーか)エスパーユッコが超能力で心を読みましょう。では、仁奈ちゃん! 今のきもちを頭の中に思い浮かべてください。きもちですよ」

仁奈「きもち、ですか? きもち……」

裕子「思い浮かべましたか?」

仁奈「いいですよ!」ピョンピョン

裕子「では、当てて見せましょう。仁奈ちゃんは今……」

仁奈「……」ワクワク

裕子「ズバリ! ウサギのきもちでしょう! 当っていますか?」

7 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:54:02 pEf 7/11

仁奈「うわぁ! ユッコおねーさんはすげーですね!」

裕子「ユッコにかかればこの程度造作もありませんよ。ありすちゃんもどうでしたか?」

ありす「は、はい(超能力というより誘導尋問では……)」

8 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:55:00 pEf 8/11

翌日
~事務所~

芳乃「加蓮、暗い顔をされてどうされたのですかー?」

加蓮「芳乃。あのさ、私のピアス見なかった? こんなやつなんだけど」

芳乃「いえ」

加蓮「だよね。ハァー……」

芳乃「なるほどー。片方のピアスをどこかに落としてしまったのですねー。それもそなたにとって貴重な」

加蓮「そうなの。凛と奈緒から誕生日にプレゼントしてもらった物なのにさ。最悪」

芳乃「ほー」

9 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:55:16 pEf 9/11

加蓮「それで、ここに探しにきたの。昨日の流れを振り返るとピアス失くすタイミングって、ダンスレッスンの時ぐらいなはずだから多分、レッスンルームにあると思うんだけど……もし、踏まれて壊れてたりしたらどうしよう。って私の不注意が悪いんだけど、二人に何て謝ったら……」

芳乃「……はっ(ふむー、あれはそうことなのですねー)」

加蓮「ん? どうかした?」

芳乃「失せ物探しならばー私十八番でしてー」テクテク

加蓮「手伝ってくれるの? でも、なんでデスクの下なんかに手を伸ばして……あるのはレッスンルームって。私、鍵の貸出と返却ぐらいで昨日ほとんどここにいなかったよ」

芳乃「これでしてー?」スッ

加蓮「あっ、それ! よかったー。えっ、でも……あれ? 私の記憶違いだったかな」

芳乃「縁が繋がれた者と物は惹かれ合う運命なのですー」

加蓮「芳乃、アンタってやっぱり、どこか現実離れしたところあるよね。捉えどころがないっていうか神秘的っていうか」

芳乃「私、こういったことを生業しておりますのでー。困り事があれば、またお声かけをー」

10 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:55:27 pEf 10/11

………
……

11 : 名無しさ... - 2017/09/25 23:56:18 pEf 11/11

芳乃「―――堀裕子。彼女こそー水面に落ちた石なのでしてー。ですが、彼女自身にそれを知る術はほぼありませぬ。神秘とは存在を秘匿されればこそ、その力を十二分に発揮できるのですからー」

芳乃「私も、当初は彼女が特異な存在であると察知出来なかったのですー。それすなわちー彼女の力が同等かより高位の域にあるという証左」

「この度、起こった出来事は些細ではありましたが、もしや、私ですら声を感じられぬ世界のものと裕子は無意識のうちに関わっているのかもしれませぬー」

おわり

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