1 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 16:40:55.53 zCzERLGU0 1/151

更新遅め。
台詞地の文混合。
前作あり。
【ラブライブ】にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500978922/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/18040654.html

以上のことが大丈夫な方はぜひお付き合いください。

元スレ
【ラブライブ】凛「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510213255/

2 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 16:47:59.33 zCzERLGU0 2/151

『風と共にC/駆ける青春』

3 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 16:59:34.36 zCzERLGU0 3/151

ーーーーーー



中学校ではよく陸上の大会に出たりしてた。
まぁまぁの成績も残して、高校では陸上部に入ってまた走れたらな。
そんな風に考えてた。

でも、スクールアイドルに出逢って。
かよちんや真姫ちゃんと一緒にμ'sに入って。
そして、みんなとライブをして。



凛はスクールアイドルになった。



もちろん、今だって走るのは好き。
けど、今は歌って踊るってことがすごく楽しいんだ!
だから、陸上に未練はない。

けれど、興味がなくなった訳じゃない。
たまに、陸上関係の情報誌とかも読むし、中学時代に一緒に陸上をやってた仲間が活躍してるのを見て嬉しくもなる。



………………。



そういえば、あの頃、凛と競い合った『あの娘』は元気かな?




ーーーーーー

4 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:06:40.59 zCzERLGU0 4/151

ーーーーーー

5 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:11:23.47 zCzERLGU0 5/151

ーーーーーー



真姫「いい加減にしなさいよ」

花陽「…………はい」



「うーむ」



放課後のアイドル研究部の部室。
凛の目の前には珍しい光景が広がっていた。


それは、真姫ちゃんに説教され、正座で俯くかよちんの姿である。


珍しい。
珍しくて明日は雪でも降りそうにゃ。

……でも、まぁ。
原因はハッキリしてる。
それはーー



真姫「私、言ったわよね。危ないから『ドーパント』絡みの事件にはかかわるなって!!」

花陽「…………うぅぅ」



ということ。

6 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:20:42.64 zCzERLGU0 6/151




『ドーパント』


それは東京と隣接する風都というところに現れた化け物の通称で、強化された超人という意味の名前の通り、人間離れした力と不思議な能力をもった存在。

そして、その正体は『ガイアメモリ』というUSBメモリのようなもので変身した人間だ。

前までは、『ドーパント』は風都だけに現れていたんだけど……。
なぜかその『ガイアメモリ』が流出して、ここ最近では『ドーパント』が現れるようになっていた。



実際、1ヶ月前に凛たちもその被害に遭っている。
といっても、被害に遭ったといえるのは、この部室と襲われたかよちんくらいだろうけどね。



……にゃ?

じゃあ、なんでかよちんが『ドーパント』絡みの事件に関わろうとしてるのか?


あー。
それは……。

7 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:33:15.84 zCzERLGU0 7/151




ーー ♪ ーー



花陽「!!」



パソコンから鳴るメール着信を知らせる音。
かよちんはすぐにそれに飛びついた。



真姫「ちょっ!? 花陽! まだ話はーー」

花陽「お、おぉぉぉ……!」



真姫ちゃんの話も聞かず、変な……もとい、妙な声をあげるかよちん。
うーん。
凛はこっちのかよちんも好きだよ!



「かーよちん!」

花陽「! 凛ちゃん!」

「依頼?」

花陽「うん! まだ『ドーパント』絡みかはわからないけど」

「どれどれ~?」



かよちんが見せてくれたパソコンの画面を覗きこむ。
そこには、『怪事件解決します!』と書かれたサイトがあった。


サイトに書いてあることをまとめると、こう。

怪事件に困っている人たちからの相談を受けて、一定条件が満たされているようであれば、スタッフが派遣される。
一定条件については記載なし。
報酬は要相談。
その上、どの相談が受理されたかも分からないという本当に怪しげなサイトだった。



…………と、ここまで言ったけど。
なにを隠そう、このサイトを作ったのはかよちんである。
そして、このサイトの一員として、凛と真姫ちゃんも登録されていた。
勿論、実名は出されてないけどね。

8 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:42:17.41 zCzERLGU0 8/151


とにかく、かよちんはこのサイトを通して『ドーパント』関連の情報を集めてる。



真姫「花陽がアイドルとご飯以外でここまでこだわるなんて思ってなかったわ」

「かよちん、探偵ものとかもけっこう好きだからねぇ」



しかたないにゃ。

パソコンの画面を見ながら、ため息をつく真姫ちゃんにそう答える。
…………って。



「かよちん、これの差出人って……」

花陽「え、あっ、うん」



今回届いた相談。
本名ではなかったけれど、差出人欄に書かれていたのは、凛たちも聞いたことのある学園の名前。
凛はそこに書いてあった言葉をポツリと読み上げる。




「藤黄学園 3年生」




ーーーーーー

9 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:42:51.99 zCzERLGU0 9/151

ーーーーーー

10 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:50:56.44 zCzERLGU0 10/151

ーーーーーー



???『…………さて、今回は負けがこんだみたいだね』

「ま、待ってくれ! 必ず払うから!」

???『…………』

「必ずだ! なにをしても払う!!」

???『…………仕方がないな』

「! わ、わかってくれたのか!」




???『こういうことはしたくないんだがね』



ーー チャリン ーー




「なっ!? や、やめてくれっ! た、頼むから!!」

???『そういう命乞いをする人間は絶対に払わないんだよ』カチャッ

「や、やめーー」



ーー チャリン ーー



???『……………………』

???『…………さて』

???『下ごしらえをしなくてはね』

???『次のレースの』



ーーーーーー

11 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 17:51:25.24 zCzERLGU0 11/151

ーーーーーー

12 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:03:03.15 zCzERLGU0 12/151

ーーーーーー



「真姫ちゃん」

真姫「なによ……」

「ここは真姫ちゃんに任せるにゃ」

真姫「……イヤ」

「っ、だ、だって!!」




「ここ、お嬢様学校にゃぁぁぁ!!!」




音ノ木坂から電車で40分くらいにある私立藤黄学園。
伝統あるお嬢様学校で、芸能関係者とか政治家の娘とか、そんな偉い人たちの親族が通っていることでも知られる学園。

その校門の前で、凛は叫んだ。
場違い感の半端ない凛にはーー



「ムリにゃ!!」

真姫「知らないわよ」



真姫ちゃんに一蹴される凛。

いや。
真姫ちゃんには分かんないよ!
凛の気持ちなんて!



真姫「はぁ?」

「キッスイのお嬢様な真姫ちゃんからしたら、この雰囲気に圧倒されないんでしょう。しかし、この星空凛は違います」

真姫「…………なにそのキャラ……」



「凛の家は一般家庭なの!! こんなじょーりゅーかいきゅーっぽいところには縁がないの!!」



例えるなら、絵里ちゃんが動物園にいるようなミスマッチ感!
…………って、そんなにミスマッチでもないにゃ。

13 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:11:41.72 zCzERLGU0 13/151



真姫「いつまでもわがまま言ってないで、行くわよ」

「ぐっ……なんで真姫ちゃんは乗り気なの……」

真姫「は? 乗り気じゃないわよ。ただ……」

「ただ?」



真姫「早く帰りたいだけ」



「あ、はいにゃ」



ため息をつく真姫ちゃんにただうなずく。
スクールアイドルとしての活動もほぼ終わって、あとは受験…………。
真姫ちゃんは医大受けるらしいし、勉強とか大変だもんね。



「…………その割には部室にいるのは……」

真姫「うるさいわねっ/// 息抜きよ、息抜き!!」

「…………むふふ」ニヤニヤ

真姫「…………なによ」

「凛、知ってるよ~♪ 真姫ちゃんは凛たちと少しでも多く一緒にいたいんだよねぇ?」

真姫「っ///」プイッ

「えへへ」



そっぽを向く真姫ちゃん。
耳まで真っ赤だ。

勿論、凛も真姫ちゃんと同じ気持ちだよ。
真姫ちゃんとかよちんともっと一緒にいたい。
あと少しで終わりだもんね、音ノ木坂での生活も……。

14 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:12:40.49 zCzERLGU0 14/151






「あの、すみません」





15 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:22:25.27 zCzERLGU0 15/151



「にゃ!?」

真姫「っ」



いきなり声をかけられた。
凛も真姫ちゃんもびくりと体を跳ねさせて、振り返る。



「あ、すみません。ビックリさせちゃったかな?」



そこにいたのは、藤黄学園というロゴが入ったジャージに身を包んだ女の子だった。
髪も短くて、ザ・運動少女! って感じの女の子。



「あ、えっと」

真姫「……あ、怪しいものじゃないわ」



どもる、キョドる。
それも当然。

かたや人見知りの凛。
かたや人見知りの真姫ちゃん。
って、かよちん、この人選はどうなのかと思うんだけど……。

なんて、心のなかで、かよちんの判断を疑っていると、



「……ん? んんー??」



その女の子が、凛たちの顔をまじまじと見てくる。

え?
な、なに?
っていうか、この人お嬢様ぽくないよ!?

もしかして、コスプレしてここに入り込んだ不審者じゃないかにゃ?
そんな疑問すら浮かび上がってくる。
そのくらい、めっちゃ見てくる……。

16 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:29:53.12 zCzERLGU0 16/151


「ま、真姫ちゃん、知りあい……?」

真姫「し、知らないわよっ」

「でも、めちゃくちゃ見てくるにゃ……」

真姫「ほ、本当に知らないったら!」



こそこそと真姫ちゃんを話をする。
っていうか、あれ?
なんだか、この人、真姫ちゃんをというより、凛のことを見てるようなーー




「あーーーーっ!!!」




「にゃ!?」ビクッ

真姫「ヴぇぇぇ!?」ビクッ



大声を体がまた跳ねる。
び、ビックリした!?

なんだか、その声で吹っ切れた……というかキレたみたい!
あまりにも驚かされすぎた真姫ちゃんはその人を指差し、キレる。



真姫「あなた、ほんとに、なんなのよっ!!」ビシッ



おぉ……!
吹っ切れた真姫ちゃん、さすがにゃ。
そんな他人事のように考える凛。

たぶん真姫ちゃんがなんとかしてくれそうだなぁ。

……なんて。
そんな考えをぶち壊すように、



ーー ギュッ ーー



「…………へ?」

真姫「は?」



女の子は手をとった。
真姫ちゃんの指をすり抜けて……凛の手を握った。

17 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:40:52.95 zCzERLGU0 17/151

って!?



「な、なにーー」

「また会えた!! 会えないと思ってたのに!」



そのまま、その子はブンブンと凛の手を振る。



真姫「ちょっ!?」グイッ

「あっ……」



混乱する凛からその子を引き離してくれた真姫ちゃん。
そして、真姫ちゃんは厳しい目付きのまま、こういった。



真姫「初対面の相手に失礼じゃない! あなた、なんなの!?」

「……はっ!」



真姫ちゃんの言葉に、はっとしたような顔をして、その子はばつの悪そうな表情で、



「ごめんごめん。まさか陸上の大会じゃなくてこんなところで会うとは思ってなくて」



つい舞い上がっちゃった。
ごめんね?

そう言って、笑う。



…………。

って、ん?
陸上の大会?
……………………あ、え?



「……もしかして、風ちゃん?」

「!! 思い出してくれたみたいだね!」

真姫「……凛?」

「あ、えっと……」

「じゃあ、改めて自己紹介するよ!」




「私は斉木風!」

「藤黄学園の3年生で、陸上部のエース!!」

「『藤黄の風』とは私のことだぜ!!」




18 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:49:13.93 zCzERLGU0 18/151

その子ーー斉木風ちゃんは、あの頃と変わらない笑顔で笑った。



真姫「凛とはーー」

「凛ちゃんとは、中学時代に競い合った仲でさ! あ、勿論、陸上ね!」

真姫「えっとーー」

「高校上がって、また凛ちゃんと競い合おうと思ってたのに、なかなか会えなくて! もしかしたら、もう会えないのかなぁって思ってたから!」



テンションが上がって上がって!

そう凛のことを見ながら言う風ちゃん。
えっと……。



「凛、スクールアイドルをーー」

「知ってる!」

「え?」

「伝説のスクールアイドル! μ'sでしょ!!」

「え、あーー」

「うんうん、中学の時から確かに光るものはもってたよね。あ、私、けっこうスクールアイドルも詳しいからさ!」

「あ、そうなんーー」

「うん! 実は一時期だけだけど、私もスクールアイドルをねーー」




真姫「ちょっと!!」



び、ビックリした。
風ちゃんの言葉を遮るように、真姫ちゃんが大きな声を出した。
そして、



真姫「人の話を聞きなさいよ!」ビシッ



また指を指した。

19 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 18:58:16.01 zCzERLGU0 19/151

「あー、ごめんね? 私、話し出すと止まれないタイプで!」

真姫「…………はぁ」



悪びれず笑う風ちゃん。

うーん。
真姫ちゃんと相性悪そうだにゃ……。



「あ、それで? 凛ちゃんと……」

真姫「真姫よ」

「真姫ちゃんはなんでこの藤黄に?」



と、ここで本題。
長かったなぁ、と思いながら。



「えっとね……」ポチポチ

「?」



スマホを操作して、あのサイトを開く。



「えっと、こんなサイト見たことない?」



そして、風ちゃんに見せた。
まぁ。
たぶん知らないという反応が返ってくるとは思うけど一応ね。
それに、風ちゃんは凛ちゃんたちと同い年で今、3年生。
ということは、今回のメールの差出人に繋がるってこともーー




「あ、これ、この間メール送ったところだ!」




まきりん「「は?」」

「ん? 聞こえなかった?」

真姫「いや、えぇと……」チラッ

「……うん」コクンッ

「…………もしかして、これって」スッ



今回のメール。
それを風ちゃんに見せる。
すると、風ちゃんはコクリと頷き、こう言った。



「うん! これを送ったのは私だよ!」

「…………でも、なんで凛ちゃんがこれを持ってるの?」


20 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 19:00:23.78 zCzERLGU0 20/151

ーーーーーー




こうして。
中学から実に3年ぶりに再会したライバルからの依頼は始まったのでした。



……………………。



勿論、そのときはまだ。
凛があんなことになるなんて、思ってもいなかったけど……。




ーーーーーー

21 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 19:01:02.37 zCzERLGU0 21/151

ーーーーーー

22 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/09 19:10:43.51 zCzERLGU0 22/151

ーーーーーー




ーー コンコンッ ーー



理事長「どうぞ」

花陽「失礼します」



理事長「……花陽さん」

花陽「理事長先生、今回のメールなんですけど……」

理事長「…………はぁぁ」

花陽「?」

理事長「いえ、やっぱり止めてくれないのね」

花陽「…………はい。そうしたら、『一人』だけになっちゃいますから」

理事長「……………………はぁ、分かりました」



花陽「それで……」

理事長「ちょっと待って。そろそろ来るはずーー」




ーー コンコンッ ーー




「失礼します」

理事長「遅かったですね」ニコリ

「…………生憎、こっちも予定がいっぱいなんですよぉ♪」

花陽「ふふっ」

「…………はぁ……まぁ、他ならぬ花陽の頼みだし……どうにか来たけど」

花陽「えへへ、ありがとう」

「…………それで?」




にこ「今回はどんな事件?」

にこ「アイドル業に支障がでない程度なら動くわよ」




ーーーーーーーーー

30 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/12 19:01:47.99 rpkqkxAG0 23/151

ーーーーーー



「しゅーだんこんすい?」

「うん。そう!」



休日とはいえ、学園で話すことでもないから。
そう言われて、移動したとあるカフェで、凛は目の前に座る風ちゃんの発言を繰り返した。

うーむ?



「…………」

真姫「…………意味わかってる?」ボソッ

「……た、たぶん?」

真姫「はぁぁ……」



真姫「つまり、陸上の大会に関わる選手が次々と昏睡…………意識不明になってるってこと?」



と、横に座る真姫ちゃんが凛のことをチラッと見ながら、そう言った。
な、なるほど。
こんすいってそういう意味なんだね……。

風ちゃんもそれにうなずく。



「数週間前の話なんだけど、陸上の大会中、選手が3人倒れたらしいんだ。レース中じゃなかったから外傷はなかった……だけど……」

真姫「熱中症とかじゃないの?」

「うん。最初はみんなそう思った。だけど、意識が戻らなくて……」

「その人たちはそのままずっと……?」

「うん」



ということらしい。

普通の熱中症だったら、少し休めば体調は戻るもんね。
たしかに、変だ。



「……それだけじゃないよ」

真姫「まだなにか?」

「1週間前にもあったんだ。今度は1日置きに3人」

「その人たちも意識なかったの?」

「うん。そして、まだ意識が戻ってないんだって」

真姫「…………なるほど」

31 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/12 19:08:26.62 rpkqkxAG0 24/151

1ヶ月の間に6人。
しかも、全員が陸上関係者で、症状も同じ。



「……ねぇ、真姫ちゃん」ボソッ

真姫「……なに?」

「これって……」

真姫「…………たぶんそうでしょ」



『人』が起こせる事件にしては、不自然すぎる。

真姫ちゃんはそう続けた。
それはつまり…………。



「あの、なにかわかったの?」

りんまき「「え!?」」

「なんか心当たりありそうだから!」

「…………えーっと……」

真姫「…………」



真姫ちゃんを見る。
なんだか考えてる様子。
うー、どうするにゃ……?

少しの間。
毛先をくるくるとさせながら、考え込む真姫ちゃん。

そして、なにかを決めたみたいで、顔をあげた。



真姫「…………斉木さん」

「風でいいよ!」

真姫「……………………風」

「うん、なに?」




真姫「この事件、恐らくーー」




ーーーーーー

32 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/12 19:19:15.29 rpkqkxAG0 25/151

ーーーーーー



花陽「話しちゃったのォォ!?」

『う、うん。隠し通せることでもないでしょって……』

花陽「真姫ちゃんが?」

『うん』

花陽「それで……えっと、風ちゃん?だっけ……その娘は?」

『風ちゃんに連絡先だけ教えて、今はもう別れたにゃ』

花陽「…………そっか。分かった、ありがとう、凛ちゃん」

『ううん! 凛も久しぶりに風ちゃんに会えたから!』

花陽「ふふっ、凛ちゃん、嬉しそう」

『うん! だって、3年ぶりだもん!』

花陽「中学校のときは、結構いい勝負してたもんね」

『なぜか同じ組になることも多かったし! ライバルって感じにゃ!』

花陽「風ちゃん、花陽も会ってみたいな」

『かよちんも来れば良かったのにー! 真姫ちゃんとのからみ、おもしろかったよー』

花陽「ふふっ」

『って、ごめん! そろそろ充電切れそうにゃ!?』

花陽「わっ! じゃ、じゃあ、また明日!」

『うん!』



花陽「…………」



にこ「凛から?」

花陽「うん。相談者が中学校のとき、陸上で競ってたライバルだったみたい」

にこ「ふーん、偶然もあるものね」

33 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/12 19:28:53.50 rpkqkxAG0 26/151




理事長「それじゃあ、いいかしら?」



花陽「あっ、ご、ごめんなさい!」

理事長「謝らなくてもいいわ。それで……」

にこ「……はい」

花陽「は、はい!」



理事長「1週間後に、陸上の大会が行われます。そこにはうちの陸上部の生徒も出場する予定よ」

花陽「わたしたちは、その時に陸上部と一緒にいけばいいんですね」

理事長「えぇ。本当はアイドル研究部の活動を優先してもらいたいのだけれど……」

花陽「…………大丈夫です。3年生がいなくても、みんなしっかりしてますから」

にこ「まぁ、雪穂ちゃんもいるんでしょ?」

花陽「うん。次期部長にお任せします♪」

理事長「……ありがとう、花陽さん」



にこ「にこは花陽たちと行動すればいい……ってことですよね?」

理事長「えぇ、お願いできるかしら」

にこ「……というよりも、にこしか戦えないし、仕方ないです」

理事長「…………私も協力は惜しみません。明日にも私用の『メモリ』を用意してもらえるようですし」

花陽「え?」

にこ「あー、にこの『メモリ』は元々理事長のものなのよ。今はにこが使っていいってことになってるけど」

花陽「そうなんだ」

34 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/12 19:30:50.06 rpkqkxAG0 27/151





理事長「とにかく、これ以上被害者が増える前に!」

理事長「『連続昏睡事件』の犯人を捕まえましょう!!」



花陽「はいっ!」

にこ「……ふぅ、しょーがないわねぇ!」



ーーーーーー

38 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 19:39:39.68 ho5RRKGe0 28/151

ーーーーーー

39 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 19:51:01.03 ho5RRKGe0 29/151

ーーーーーー



「それで、どーしてこーなるにゃ……」




風ちゃんとの再会から1週間後。
凛は陸上のトラックに立っていた。



花陽「急にごめんね?」



隣にはかよちん。
苦笑いしながら謝ってくる。


今日の朝のこと。
かよちんに呼び出され、連れてこられた場所がこの陸上競技場だった。
かよちんが言うには、例の『連続こんすい事件』のことを調べるためらしいんだけど……。



「なんで凛もエントリーされてるの……」

花陽「あはは、音ノ木坂の人たちも出場はするみたいなんだけど……」



チラリとかよちんの視線の先を見る。
……って、なるほど。



「和気あいあい……」

花陽「う、うん……」



風ちゃんからの情報によると、こんすいしてるのは結構有力な選手らしい。
だから、この事件が『ドーパント』絡みの事件なら、次に襲われるのもそれなりに速い人のはずだって、かよちんが言ってた。

…………確かに、うちの陸上部あんまり成績いいわけじゃないみたいだもんね。

40 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 20:01:41.80 ho5RRKGe0 30/151


「うー、頑張るけど、期待しないでね?」

花陽「! ううん! 凛ちゃんならできるよ!!」

「えー……」

花陽「自信もって! 凛ちゃん、中学時代はあんなに速かったでしょ!」

「……いや、それ中学のときの話にゃ……」

花陽「でも、ほら! ずっとスクールアイドルやって、体力は落ちてないはずだし」

「う、うーん……」



少し興奮した様子のかよちん。
って、なんだか凛の競技がメインになってないかにゃ?



にこ「すべこべ言わず走りなさい!」

「って! にこちゃん!?」



観戦席から声をかけてきたのは、にこちゃん。
サングラスに帽子姿で……なんか浮いてるにゃ……。

凛たちは他の選手の邪魔にならないように、トラックのはしっこに移動する。
そのまま見上げた状態で、話を続けた。



にこ「とりあえず、あんたは走りなさい! で、少なくとも決勝まで残るのよ!」

「…………わかったにゃ」

にこ「そうしないと話にならないわ!」

「はぁぁ」

にこ「ん? あぁ、大丈夫よ!」



にこ「何かあっても、にこがあんたのこと守るわよ!」

「はぁ、わかったよ」



どうやら。
走るのは決定事項みたいで、凛は息を吐きながら覚悟を決めた。

こうやって走るのは久しぶりだけど…………うん。
走るのは好き。



だから、なにも考えずに走ってみるのも悪くないかな、なんて。



そう思った。
警戒してるにこちゃんたちには悪いけどね。



ーーーーーー

41 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 20:24:34.85 ho5RRKGe0 31/151

ーーーーーー



「そろそろ始まるな」

「……………………」

「あれだけ高い金払ったんだ……儲けさせてもらうぜ」スッ



ーー カチッ ーー



『コックローチ』




コックローチ「この力でなぁ……」ニヤ




ーーーーーー

42 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 20:48:21.04 ho5RRKGe0 32/151

ーーーーーー



トラック競技。
100m予選。
それが凛が出る競技だって。

中学校の頃も、走ってたのは短距離だから、きっとそれなりには走れると思う。
きっと、かよちんがそれを選んでエントリーしたんだろうなぁ……。

とにかく、一次招集も二次招集も終わって、そろそろレースも始まる頃だ。
凛は入念にストレッチをしていた。
すると、



「あ! 凛ちゃん!」



声をかけてきたのは、風ちゃん。
ユニフォームに身を包んでいる。
って、当然だよね。



「1週間ぶりにゃ!」

「うん! って、それよりもビックリしたよ! 出るんだね!」

「え、あー」

「プログラム見て驚いた! もう! 出るなら言ってくれたら良かったのにー!」

「う、うん」



凛も今日知ったからね。
なんて、言えないにゃー……。



もしかして、例の事件関係?


風ちゃんの問いに頷く。
なるほどって納得した様子の風ちゃん。
一応、相談者だし、『ドーパント』のことも少しは話してあるから、経緯を話す。

上位入賞者を狙ってるみたいだから、レースに出て……って話をざっくりとだけど。



「ふぅん、そっか」



って、あれ?
思ってたよりも、風ちゃんの反応は薄い。
えっと……?

43 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 20:56:46.46 ho5RRKGe0 33/151

首を傾げる凛。



『ただいまより、1日目の競技を開始いたします。プログラムNo.1 トラック競技100m予選ーー』



と、そこで競技の開始を知らせるアナウンスが流れた。



「凛ちゃん、何組目?」

「え? ……あっ」



風ちゃんの質問に、慌てて記憶を思い返す。
えっと、たしか……。



「4組目にゃ!」

「…………同じ組だ」

「え? そうなの?」



そっか。
ふふっ、ちょっとテンション上がってきたにゃ!

と密かにウキウキし始めた凛とは違って、風ちゃんは……。



「…………ねぇ、凛ちゃん」

「ん? なにかーー」




「負けないよ」




「っ」



ゾワリ。
背筋が凍るくらいの。
怖いくらいのプレッシャー。
中学時代とは比べ物にならないそれを感じて、鳥肌が立った。



「っ、うん」

「じゃ、行こっか!」



一転して、笑顔。
再会したときみたいな人懐っこい笑顔で、風ちゃんはトラックへ向かい、凛もそれに続いた。



ーーーーーー

44 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:06:26.37 ho5RRKGe0 34/151

ーーーーーー




「よーいーー」




ーー パァァァァァン ーー




「…………」



ピストルがなって、その10秒と少しでゴール。
前の組の様子を見てると、地区大会って言っても速い人は結構速かった。



「……当然だよね」



3年間……ううん、それ以上を陸上に費やしてるんだもんね。
………………うん。

目をつぶり、深呼吸をひとつ。



「…………ふぅ」



これでなにが変わる訳じゃないとは思うけど。
けど、今、余計なことは考えない。



『4組目ーー』



「……よしっ」



さぁ、行くにゃ。

トラックに入る。
自分のレーンに入って、ポジションの確認。
スタート台は…………よし。

準備はオーケー。



「………………」



そして、




『よーい…………』



ーー パァァァァァァァン ーー




ーーーーーー

45 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:11:16.13 ho5RRKGe0 35/151

ーーーーーー




「……………………ふはぁぁ……」



レース後。
トラックから出て、一次招集所の近くのベンチで息を吐いた。

徐々に足に乳酸が溜まってくのが分かる。
ストレッチしなきゃ……。
そう思って立ち上がったところに、



「おつかれさま! 凛ちゃん!」

「! 風ちゃん!」



風ちゃんがやって来た。
風ちゃんはストレッチも終わったようで、歩き方も自然だった。

それにしても……。



「すごいね、風ちゃん」



素直に誉める。
だって、



「予選一位通過だもん!」

「あはは、ありがとう!」



46 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:16:36.50 ho5RRKGe0 36/151

結果は凛の惨敗。
風ちゃんはぶっちぎりで一位通過したそうで……。



「でも、凛ちゃんも予選通過したじゃん!」

「うん、でも、ギリギリにゃー」



本当にギリギリ。
凛は六位通過だって。
まぁ、スクールアイドルやってたとは言っても、陸上から離れてたからね……。




「でも、羨ましいよ」ボソッ




「え?」

「…………ううん! なんでもない!」

「?」

「それじゃ、私はもうちょっと走ってくる!」



そう言って、風ちゃんは走っていった。

今、風ちゃん……。



「うらやましい……?」



そう聞こえたけど……。
気のせい、かな?

47 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:22:34.73 ho5RRKGe0 37/151





花陽「凛ちゃーーーん!!」



と、風ちゃんを見送った出口から入ってくるかよちんが見えた。



花陽「すごいよっ! さすが、凛ちゃん!」

「あ、えへへ///」



嬉しそうに駆け寄ってくるかよちん。

……うん。
そう言われると、ちょっと照れるにゃぁ///



花陽「決勝も頑張ってね!!」

「うん! ……っ、へしゅんっ」

花陽「わっ! 凛ちゃん、汗冷えちゃった?」

「んー、大丈夫、だけど……凛、着替えてくる!」

花陽「うん! じゃあ、花陽は観戦席で待ってるね」

「りょーかいにゃ!!」



かよちんに一旦別れを告げて、更衣室へ向かう。





『………………』

『……………………』

『…………………………』





ーーーーーー

48 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:28:20.35 ho5RRKGe0 38/151

ーーーーーー



「~~♪ よし!」



着替えも終わり、更衣室を出る。
汗もバッチリ拭いたし、ストレッチもかんりょー!
あとは……。



「えっと、今は…………」



プログラムと、さっき更衣室を出たときに覗いたトラックの様子からすると……。



「3000mかぁ」



たぶんそうだと思う。
時間もかかる競技だし、更衣室に人が少なかったのはそういうことだよね。

凛は苦手なんだよなぁ……。
長距離はなんか忍耐力試されてるみたいだからーー






ーー カサッ ーー



「……え?」




音。
音がした。
なにかが動く音だった。

周りをキョロキョロと見る。
けれど、影も形もーー

49 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:29:07.14 ho5RRKGe0 39/151





『一人目ぇ……』

『みぃつけたぁぁぁ』




50 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:32:33.21 ho5RRKGe0 40/151

声。
それは予想していない上から。



「っ」



そこを見て、言葉が出なくなった。
そこにいたのは、化け物。

黒光りする体。
虫そのものな足。
そして、ギョロリと凛を見る目玉。




コックローチ『こんにちはぁ、陸上少女ぉ……』




「ーーーーーーっ!!!」




生理的に受け付けないそれに、凛は声にならない叫び声をあげていた。

51 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:38:16.85 ho5RRKGe0 41/151


コックローチ『よっと……』カサッ



化け物は上から飛び降りてきて、凛の目の前に。
まるで、通路を通せんぼするみたいに立ち塞がる。



コックローチ『そんな悲鳴をあげないでくれよぉ……』

コックローチ『こっちだって傷つくんだぞ』



そう言いながらも、その声は笑っていた。



「っ」




気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。

何もかも受け入れなられないそれから、離れようと後ろを向く。




ーー カサッ ーー




コックローチ『おいおい、どこ行くんだぁ?』

「なーー」



けれど、回り込まれて。
う、うそ……!?



コックローチ『少しくらい足が速くても関係ない』

コックローチ『こっちは人間の数倍の脚力を持った生物だぜ』

コックローチ『まぁ、それ以前にーー』




コックローチ『人間が『ドーパント』から逃げられるわけないだろう』




「っ」



表情の読めないそのかおが、笑った……ような気がした。

52 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:43:38.67 ho5RRKGe0 42/151

ジリジリと後退り。
でも、そいつは一歩ずつ近づいてくる。
カサカサと音を立てて。



「い、いや……」

コックローチ『そういわれても、こっちも生活がかかってるんだよぉ』

「来ないで……っ」

コックローチ『ちゃんとゲームは思った通りにいかないとなぁ』



笑い声。
気持ちの悪い声に、さらに、気持ち悪くなる。

逃げ出したい。
だけど、体が……思ったように動かない。



「……っ」

コックローチ『さて、人が来ると面倒だ……そろそろーー』





コックローチ『始末しよーー』





もうダメっ!?
凛は目を閉じて、暗闇のなかでーー






ーーーーーー バキィィィッ ーーーーーー






ーーその音を聞いた。

53 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:51:44.68 ho5RRKGe0 43/151


「………………え」



それと同時になにかが吹き飛んだ音も聞こえた。
おそるおそる目を開ける。
そこには、



コックローチ『う、がぁぁ…………』




凛の目の前にいた化け物が、さっきいたところよりも数メートル後ろに吹き飛んでた。
あの音は……化け物が吹き飛んだ音……?

理解が追い付かない頭で、考えていると、




『…………大丈夫?』




後ろから声がした。
その声は聞きなれた声で。



「っ」

『悪かったわね。ちょっと遅れたわ』

「っ、ほんとにゃっ」



震える声でそう返す。
この声の主は、にこちゃんだ。
だけど、凛の目に写るのは、いつものにこちゃんとは違う姿だ。



真っ黒な体に真っ赤な目。
そして、頭に伸びる2本の角。
腰にはベルトが巻かれてて、バックルには赤い機械と黒い『ガイアメモリ』。



コックローチ『お、おまえぇ…………』

『ったく、人の後輩になにしようとしてんのよ』

コックローチ『まさか……』



そう。
今のにこちゃんはーー

54 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/16 21:54:20.08 ho5RRKGe0 44/151





『そ、『仮面ライダー』!』

『あんたみたいな奴らを倒すアイドーーじゃなくて、ヒーロー!』

『仮面ライダージョーカーよっ!』

『…………覚悟はいい? このゴキブリ!!』





ジョーカー『さぁ、お前の罪を数えろ!!』






59 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 22:22:06.62 YUoosnTI0 45/151


コックローチ『仮面ライダーぁぁ……なんで邪魔を……』

ジョーカー『はん! あんたが手出そうとしたのうちの後輩なのよ!』ダッ



まず、にこちゃんが仕掛けた。
一気に距離を詰めて、




ーー バキッ ーー



コックローチ『ぐっ……!?』

ジョーカー『……っ、触るのも嫌になるフォルム……ねっ!』



ーー バキッ ーー



コックローチ『が……うぅ』



仰け反るドーパント。
体勢が崩れたところにさらにもう一撃。
にこちゃんの攻撃は効いてるみたいで、さらにドーパントは二、三歩後ろに下がっていた。

60 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 22:30:58.81 YUoosnTI0 46/151


ジョーカー『凛!』

「! う、うん!」



と、ここで声をかけられる。
慌てて返事をする凛の方をチラリとだけ見たにこちゃん。

今のうちに逃げなさい。

そう言うけど……。



「……ちょっと今、腰抜けてて……」

ジョーカー『……まぁ、そりゃそうよね』



じゃあ、巻き込まれないようにだけ気を付けなさい。

そんなにこちゃんの言葉に頷き返す。



コックローチ『っ……はぁ、はぁ……』

ジョーカー『っと、放っておいて悪いわね』

コックローチ『……余裕ぶりやがって……』

ジョーカー『ゴキブリ退治は主婦にとっては日常茶飯事よ? そのくらいのことで必死になる必要もないでしょ?』

コックローチ『ぐ、アァァァッ!!!』



にこちゃんの挑発を受けて、ドーパントは雄叫びを上げた。
そしてーー




コックローチ『そんなに、余裕ならぁぁ……これをとめてみろぉぉ!!』



ーー ビュンッ ーー




ーー次の瞬間、ドーパントが消えた!

って、これ、さっき凛が回り込まれたやつ!?
にこちゃん、危ない!!

61 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 22:41:56.46 YUoosnTI0 47/151


ジョーカー『…………』

コックローチ『は、ははは、見えるわけないぃ……! このメモリは最速だぁ』



声は聞こえる。
でも、姿は見えない。
にこちゃんの周りにいるのだけは分かるけど……。



「っ、にこちゃん……」


ジョーカー『…………』



にこちゃんは動かない。
ただ、じっと前だけを見ている。



コックローチ『速さに慣れるつもりかぁ? 無駄だぁ……この速さは捕らえられない!』

ジョーカー『……ふぅ、そうみたいね』



そ、そうみたいって!?
なんで認めちゃってるにゃ!?



ジョーカー『…………見えないわ』

コックローチ『ふっ、そうだろうなぁぁ……』

ジョーカー『……えぇ』

コックローチ『流石に捕らえられないだろうよぉ、なぁ、仮面ライダー?』

ジョーカー『…………』

コックローチ『……ふっ、ふふふっ、それじゃあーー』


「っ!?」



にこちゃんの答えを待たずに、笑ったそのドーパント。
その動きが変わった。
これっ!?
攻撃来るっ!?



コックローチ『八つ裂きにーー』バッ



「にこちゃんっ!!!」


62 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 22:52:09.89 YUoosnTI0 48/151





ジョーカー『はぁぁっ!!!』グッ




ーー バキィィィッ ーー




コックローチ『がっーー!?』

「って、え……?」



凛が叫んだちょうどその時、攻撃を仕掛けたはずのドーパントが吹き飛んでいた。
にこちゃんは拳を突き出していて……。

って、え、え??



「見えなかったんじゃ……」

ジョーカー『ん? あー、そりゃあれだけ後ろがら空きにしてたのよ? それで後ろから以外攻撃してくるわけないでしょ』

「な、なるほどにゃ」



に、にこちゃんが頭いい……。
すごく違和感が……。



ジョーカー『凛』

「にゃ!?」

ジョーカー『……あんた、今、失礼なこと考えなかった?』

「……き、気のせいじゃないかにゃ~?」

ジョーカー『…………』

「~っ♪」アセアセ

ジョーカー『はぁ、まぁいいわ。とりあえずーー』チラッ



コックローチ『っ、がぁぁ……このぉぉ……』ムクッ



ジョーカー『ーーまずはこっちを終わらせるわよ!』グッ


63 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 22:57:50.90 YUoosnTI0 49/151

にこちゃんはそのままドーパントの方に向き直り、ドライバーからメモリを引き抜いた。
そして、それをドライバー横のスロットへ。




『ジョーカーマキシマムドライブ』




同時にドライバーから音が流れ、そして、エネルギーがにこちゃんの右手に集まっていく。



ジョーカー『ライダー…………』グググッ



コックローチ『っ、まだーー』ダッ

ジョーカー『っ』ダッ



逃げようとするドーパント。
その後ろから、



ジョーカー『はぁっ!!』ベキッ

コックローチ『がっ!?』



け、蹴った!?
パンチじゃなかったの!?



コックローチ『け、蹴りだとぉぉ!?』

ジョーカー『そ! けど、本命はーー』



コックローチ『しまっーー!?』





ジョーカー『ライダーパンチ!!』




64 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:02:10.48 YUoosnTI0 50/151





ーーーーーー バキィィィィィィッ ーーーーーー




エネルギーが集まった拳が、ドーパントのお腹に命中する音。
それから、




ーーー バタンッ ーーー



ーーー パリンッ ーーー



倒れる音と壊れた音。

にこちゃんとドーパント、そして、凛。
騒がしかったその戦いは、静かに終わりを告げたのだった。



ジョーカー『…………これで』ドライバートジ



にこ「事件解決、ね」




ーーーーーー

65 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:02:53.90 YUoosnTI0 51/151

ーーーーーー

66 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:13:56.77 YUoosnTI0 52/151

ーーーーーー



戦いの後。
理事長が連絡してくれて到着した警察の人に犯人を引き渡して……。




「ふぅ……疲れたにゃ」

花陽「ふふっ、お疲れ様、凛ちゃん」



凛は陸上競技場からの帰り道を歩いていた。
お隣にはかよちん。

凛がドーパントに襲われたことを聞いて、謝り続けてたかよちんも今は落ち着いたようで、凛のことを労ってくれてる。
その笑顔も自然だから……うん。
ほんとに落ち着いてくれたみたい。



「って、そういえばにこちゃんは?」

花陽「理事長先生と一緒だよ」



ガイアメモリ関係のお話してるみたい。
先帰っててって。

かよちんはそう言う。



「ふーん」



大変だなぁ。
にこちゃん、アイドルの仕事もあるのに。

そう言うと、かよちんもそれに頷く。
ちょっと苦笑いを浮かべて。



花陽「二足のわらじで大変だ~、ってこの間言ってたよ……」

「二足の……わらじ……」

花陽「?」

「……………………」

花陽「…………あっ、普通の人じゃできないようなお仕事をふたついっぺんにすることだよ?」

「……し、知ってたにゃ!」

67 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:23:26.65 YUoosnTI0 53/151

そんな、何気ないやりとり。
そのなかで、



花陽「あ! 凛ちゃん、明日だけど……」

「え? あー、うん」



かよちんが言おうとしてることが全部聞かなくてもなんとなくわかって頷く。

かよちんが言おうとしたのは、



「明日の決勝、でしょ?」

花陽「うん」



明日の決勝のこと。

本来であれば、100mの決勝は今日やるはずだった。
だけど、凛がドーパントに襲われたという事件があったせいで、延期になった。
勿論、怪物が出たなんて話ではなくて、表向きは設備のトラブルで、っていうことになってるみたいだけどね。

それで、明日の決勝……。
凛は、



「出よっかなぁ……って考えてるよ」

花陽「うん。それならよかった」



凛の答えを聞いて、かよちんは笑顔で頷く。
どこか満足げなのは、きっとかよちんも凛に走ってほしいと思ってるからだと思う。
たぶん自惚れとかじゃなくて。




花陽「じゃあ、明日も応援行くね!」

「うん! よろしくにゃ!」




明日の決勝。
ドーパント事件も解決したし、今日よりもいい走りができる。

少しずつ沈んでくお日様を遠目に見ながら、そんなことを思ったりしていた。




ーーーーーー

68 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:29:07.97 YUoosnTI0 54/151

ーーーーーー




ーー ガチャッ ーー



理事長「お待たせしたわね、にこさん」

にこ「いえ」



警察署にて。
理事長がそこに入ってから一時間。
やっと取調室から出てきた理事長は、なんだか……




にこ「事件も終わって、荷が下りた……って顔じゃないですけど」

理事長「……そう、ね」



どうやら、にこの読みは当たったようで、理事長はため息を吐きながら肯定した。
つまり、



にこ「まだなにか……あるんですね」

理事長「えぇ」




理事長「事件はまだ終わっていない」




69 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:38:35.55 YUoosnTI0 55/151

事件。
それは例の『連続昏睡事件』のことでしょうね。

幸い襲われた凛にも怪我はなくて、音ノ木坂の陸上部員にもなにもなし。
その他に襲われた選手がいたってこともないみたいだけど……。



理事長「今回、にこさんが倒した相手、大会の警備のために雇われたガードマンだったそうよ」

にこ「ガードマンがドーパントって……」

理事長「えぇ。大会運営側からしても困ったものでしょうね」



警備する側の人間が、実は大会関係者に危害を加えようとしていたとか……皮肉ね。



にこ「それで…… 」

理事長「……このガードマンは別に大会関係者に私怨があって犯行に及んだ訳じゃないらしいわ」

にこ「? じゃあ……?」

理事長「取り調べではーー」




理事長「金のため」




理事長「……そう言っていたそうよ」

にこ「お金……?」



高校生の陸上の大会とお金。
いまいち繋がりが見えないわね。

70 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/19 23:49:42.01 YUoosnTI0 56/151

誰かに襲撃を依頼された?
それとも、有力な選手を襲うことでお金が発生するような……?

……………………。

…………例えば、



にこ「…………あの、理事長、もしかして……」

理事長「…………あのガードマンはこうも言っていたらしいわ」



理事長「あんな速いやつが出たら俺の賭け分が…………って」

にこ「…………賭博……ってことですか」



にこの答えに、理事長はコクリと頷いた。

なるほど、ね。
それで、凛を襲撃したわけか。

高校生の陸上の世界では、ほぼ無名。
だけど、決勝に残る実力を見せた凛。

賭けた側としては、そんな不安要素は潰しておきたい。
そういうわけね。



理事長「そもそも、『コックローチ』のメモリには人を昏睡させられるような能力はないもの」

にこ「つまり、選手を昏睡させて、賭博をコントロールしようとしてる黒幕がいる。そして、その黒幕はーー」

理事長「十中八九、ガイアメモリを所持している。そう考えていいでしょうね」



にこ「…………はぁ」

理事長「にこさん、申し訳ないけれど……」

にこ「分かってます。凛、たぶん明日も出るわけだし」



放ってはおけない。
……けど。


…………明日の収録、間に合うかしら。




ーーーーーー

74 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 14:49:45.20 cI5XG2HO0 57/151

ーーーーーー

75 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 14:54:03.83 cI5XG2HO0 58/151

ーーーーーー



『まったく。不正をするなとは言わないが、やるなら上手くやってほしいものだね』

『まぁ、不正をして勝てるとは限らないけどねぇ』

『…………さて』

『明日のレースは…………』

『……………………』

『…………ふむ』

『この選手は厄介だな。これに賭けられてしまったらこちらは大損だ』

『…………仕方あるまい』




『私が動こうか』




ーーーーーー

76 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 14:55:18.70 cI5XG2HO0 59/151

ーーーーーー

77 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 14:59:56.90 cI5XG2HO0 60/151

ーーーーーー




「んー!! せーてんにゃ!!」



翌日。
陸上競技場の外周で、凛は大きく伸びをした。
空は真っ青で、レース日和。

本日はせーてんなり、せーてんなり!
なんてね。



「さーて……」



腕時計を見ると、針はちょうど8時を指している。
レース開始まで一時間半。
アップもかねて、ちょっと走りたい…………んだけど。



「…………」チラッ




にこ「あんまり遠く行くんじゃないわよ!」




凛の後ろにはにこちゃんがいた。
なぜかジャージ姿で腕を組んでる。

78 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 15:06:16.10 cI5XG2HO0 61/151


「…………にこちゃん」

にこ「ん? なによ?」

「暇なのかにゃ?」

にこ「違うわよ」

「業界で干されたとか……?」

にこ「ぬぅぁんでよ!?」



なんてやりとりをする。
実際のところ、



にこ「花陽に頼まれたのよ。動画を撮ってきてってね」

「……あー、かよちん、風邪だっけ」

にこ「らしいわね。タイミング悪い」ハァ



ということで、かよちんは昨日の夜、風邪でダウンしたらしい。
お家で大人しくさせるって、かよちんのお母さんから連絡があった。

…………かよちんにかっこいいとこ見せたかったのになぁ。



にこ「で? 走るんでしょ?」

「うん!」

にこ「それじゃあ…………」ゴソゴソ



にこちゃんはスマホを取り出すと、そのままカメラを起動して構える。
って、手撮りなの?



にこ「よし! それじゃあ、行くにこ♪」

「お、おー!」



79 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 15:07:20.83 cI5XG2HO0 62/151

ーーーーーー

80 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 15:13:07.94 cI5XG2HO0 63/151




「にこちゃんがいない!?」



まさか!?
どこかでドーパントに!?

…………なんてことはなくて。



「置いてっちゃったかぁ」



どうやらにこちゃんは遠く後ろにいるみたい。

うーん。
まぁ、ちょっとはアップもできたし、戻ってにこちゃんと合流しようかな。

そう考えていたときだった。




「………………」




「あれ? 風ちゃん?」



風ちゃんがいた。
遠くに見える陸上競技場をじっと見つめてるみたい。

って、そうだ!
風ちゃんに今回の事件の報告してなかった!
たぶん、かよちんもしてないよね?




「おーい! 風ちゃん!」

「…………え?」



手を振りながら、駆け寄る。
どうやら風ちゃんも凛に気付いたようで、手を振り返してくれた。



「昨日ぶりだね、凛ちゃん」

「うん!」



81 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 15:27:26.02 cI5XG2HO0 64/151



「あ、風ちゃん! 実はね!」

「?」



昨日の話をした。

たぶん知らないだろうから、大会が延期になった理由。
それからその原因となったドーパントは退治したこと。
だから、事件も終わるよって。

それを聞いて、




「…………そっか」




風ちゃんは、ただ一言だけ答えた。

上の空、って言葉がしっくりくる
依頼者なんだけど……なんだか他人事みたいな反応で……。

うーん。



「あともう少しだね、決勝!」

「うん……」



報告もしたし、話題を変えてみる。
でも、それにも生返事。




「…………考え事?」




だから、凛はそう聞いたんだ。
風ちゃんはその質問に、




「うん」




静かに頷いた。
また、陸上競技場を見つめながら。

82 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 16:14:56.06 Ev9QIuxO0 65/151





「……凛ちゃんはさ」

「進路決まってる?」




「……え、えっと?」



いきなりの話で、言い淀む。

えっと、進路?
なんでいきなり?



「一応声かかってたりはするよ」

「体育大学……予定」



そう答える。

スクールアイドルの活動を見てくれた大学の人がこの間うちに来た。
運動能力を買われてる、みたい?



「そうなんだ」



凛の答えに、ポツリと返す風ちゃん。
それから、



「…………いいなぁ」



たぶん聞こえないように呟いたんだと思う。
だけど、凛の耳にはその呟きが入ってきた。

83 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 16:25:39.93 Ev9QIuxO0 66/151




「…………えっと」



なんて答えたらいいか分からなくて。
目を逸らしていたら、風ちゃんが口を開いた。



「このレース、その体育大学の人も来てるみたいなんだ」

「え、あっ……そうなんだ」

「うん。だから、負けられない」




「負けたら、終わりだから」




「っ」ゾクッ



予選でも感じたプレッシャー。
今も感じた。
背筋が凍る。



「…………」

「…………風ちゃん」

「…………」

「…………えと」

「私、今までずっと大会で成績悪くてさ。だからーー」



このレースしかない。
風ちゃんはそう言った。

…………そっか。
風ちゃんはこのレースに懸けてるんだ。
凛とは違う。

そりゃ……速いはずだよ。

84 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 16:36:43.89 Ev9QIuxO0 67/151


「…………ふぅ」

「ごめん、ちょっと熱くなった!」



そう言うのと同時に、風ちゃんはにこっと笑う。
プレッシャーは消える。
…………じゃないか、それを隠してるだけ。



「どーも熱くなっちゃって」

「…………出来るよ、きっと」

「え?」



「風ちゃんなら出来るよ、きっと」

「…………うん!」



凛の言葉に頷いた。
今度はたぶん心からの笑顔、人懐っこい笑顔で。



ーーーーーー

85 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 16:49:05.01 Ev9QIuxO0 68/151

ーーーーーー




ジョーカー『っ、はぁぁっ!!』ブンッ




拳が空を切る。
っ、当たってない!

というか、



コックローチ1『…………』

コックローチ2『…………』

コックローチ3『…………』

コックローチ4『…………』



気持ち悪いわっ!?

にこの前には4体のコックローチドーパントがいて。
カサカサと不快な音を鳴らしながら、攻撃を避けられていた。
一匹見たら30匹はいるっていうけど……ドーパントにも言えるのね……。



ジョーカー『そこを退きなさい!!』

コックローチ1『…………』

ジョーカー『こいつら……』



反応はない。
向こうからの攻撃もしてこない。
ただ目の前を遮るように、4体は立ち塞がってくる。

たぶん、目的は仮面ライダーの足止め。
時間稼ぎ、だとしたら……。



ジョーカー『これ……まずいっ』ギリッ




ーーーーーー

86 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 16:54:47.86 Ev9QIuxO0 69/151

ーーーーーー



二人で第一招集を終えて。
トラック内へ向かう。

……それにしても、にこちゃんどこ行ったんだろう?
かよちんに動画撮ってきてって言われたはずなのに?



「うーむ」

「凛ちゃん? どうかした?」

「え、あっ、なんでもないにゃ!」



こんなことで風ちゃんの集中を乱したくない。
そう思って、凛は首を横に振った。



「そう?」

「うんっ!」

「それならいいけどさ!」




「ちょっといいかな」



「え?」

87 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 17:02:30.21 Ev9QIuxO0 70/151

声がかけられた。
役員室の方から。
そちらを向くと、



「こんにちは。星空凛さん」



白髪のおじいさんがいた。
にこやかな笑みを浮かべながら、凛の名前を呼んだ。
おじいさんと言っても、腰が曲がっているとかはなくて、元気なおじいさんって感じの人だ。



「こんにちは」



役員室から出てきたみたいだし、役員の人かな?
そう思って、風ちゃんの方をちらっと見ると、



「あっ……」

「風ちゃん?」



なにやら、風ちゃんの様子が変。
緊張してる?



「そちらは斉木風さんだね」

「は、はいっ」



「…………ねぇ、風ちゃん」

「この人誰にゃ?」



こそっと風ちゃんに尋ねる。
すると、風ちゃんも小声で答えてくれる。



「陸上協会の会長さんだよっ」

「会長さん……?」

「ほら、開会式でもあいさつされてたでしょ!」

「あー、そういえば……?」



見たことあるような、ないような?

88 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 17:11:09.04 Ev9QIuxO0 71/151



会長「……話してもよいかな?」



「あ、はい!!」

「あ、はい」



凛たちのコソコソ話を待っていてくれたみたいで、おじいさん……会長さんはそう言った。
凛たちも答える。



会長「実はね、少しお話があるんだよ」

「?」

「え、えっと、私たちに、ですか?」

会長「……いや、悪いんだが……」チラッ

「っ、あ」チラッ




会長「星空さん、少し席を外してくれるかな?」

会長「斉木さんと話したいことがあってね」



「え、わ、私……?」



驚いた様子の風ちゃん。
陸上協会の会長さんからお話って……!!



「風ちゃん!」

「っ、あ、えっと……」



焦った様子の風ちゃん。
よし!
ここは、凛が!



「あの! 会長さん!」

会長「ん? なんだね?」



「もしかして、スカウト的なやつかにゃ……じゃなくて、ですか!?」



「り、凛ちゃん!?」



なに聞いてるの!?
というか風ちゃんだけど、ここははっきりさせとかなくちゃ!



会長「うーむ」

会長「あまり、知られたくはないんだがね。実は……そういうことだよ」



「!!」

89 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 17:15:11.57 Ev9QIuxO0 72/151



「!!」

「~~っ!!」



風ちゃんの方を見る。
凛の隣で風ちゃんは、必死に我慢してた。
叫びたくなってるのを。



「っ、良かったね、風ちゃんっ!」

「…………っ、うんっ!」



見てくれてる人はちゃんと見てるんだよ。
ほんとに、よかった。



会長「それでは、星空さん?」

「あ、はい」

「凛ちゃんっ」

「うん、けんとーを祈るにゃ!」



ビシッと敬礼をして、風ちゃんを見送る。

そして、風ちゃんは役員室へ入っていった。




ーーーーーー

90 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 18:47:25.77 Ev9QIuxO0 73/151

ーーーーーー




ーー prprpr ーーー



「にゃ?」



更衣室に入るやいなや、凛のスマホが鳴った。
画面を見ると……。



「にこちゃん?」



なんだろう?
迷子になったから助けて……とか?
ぷぷぷ、それだったら面白いんだけどね。

笑いをこらえながら、電話に出る。



「もしもしー、にこちゃん? 今ーー」




『今どこ!?』




「っ」ビクッ



電話から聞こえてきたのは、にこちゃんの怒鳴り声。
驚いて耳を離す。
うー、耳いたいにゃ……。



「……にこちゃん、急に大声だしたらダメにゃ!」

『……っ、その様子だと大丈夫そうね……』

「? なにかあったの?」



電話の向こうで、大きなため息をついたのがわかった。
なにが……?



『いい? よーっく聞きなさい!』

『事件はまだ終わってないわ!!』



にこちゃんはそう言った。

91 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 18:58:14.70 Ev9QIuxO0 74/151

え?
だって、昨日にこちゃんがドーパント倒したよね!?



『コックローチのことね。確かに倒したわよ。犯人も警察に引き渡したしね』

「じゃあーー」

『今、そのコックローチを4体倒したところよ……』

「う、うそ!?」

『嘘言ってどーすんのよ』



よく聞けば、確かににこちゃんはかなり息切れしてた。
それを聞いて、ほんとに戦ったあとなんだって理解した。



「で、でも、倒したんだよね?」

『えぇ……かなり無理したけど……』

「……それじゃあ、事件は……」



『…………コックローチには人を昏睡させる能力はないのよ』



「え?」

『だから、昏睡事件の犯人は別にいるわっ』



別に、いる?
じゃあ、また……ドーパントに……っ!



『安心しなさい! 今から合流するわよ』

「え、あっ……うんっ」

『今、どこ?』

「更衣室だよ……」

『…………そこ離れて観客席に集合』

「な、なんで?」



こういうときって動かない方が安全なんじゃないの?
そんなことを聞いたことがある。
だから、にこちゃんにもそう言ったんだけど……。



『にこが倒したドーパント、全部警備員だったわ』

「え? そんなことって……」

『まず有り得ないでしょうね。理事長にも話したんだけど……言ってたわ』




『犯人は運営に関われる人間』

『しかも、他の役員からうるさく言われないようなーー』




『ーー立場が上の人間よ』




92 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 19:04:49.35 Ev9QIuxO0 75/151

ぞわり、と。

嫌な感じがした。
にこちゃんの言葉を聞いて真っ先によぎったのがーー




「ーー風、ちゃんっ」




気のせいならそれでいい。
でも、もし凛のこの嫌な予感が当たってたとしたら……。



『とにかく、役員室とかには近づかないように観客席に上がってきなさい!』

「……にこちゃん」

『なに!?』

「……凛、役員室行かなきゃ……」

『はぁぁっ!? なに言ってんのよ!? さっきまでの話聞いてたわよね!?』

「うん」

『だったらーー』




「友達が連れてかれたんだっ!!」




『!!』

「…………このレースに懸けてるって言ってたにゃ」

『っ、そ、それでも危険よ!! にこが言ってからでもーー』




ーー ブツンッ ーー




気づけば電話を切ってた。



「っ」



そして、駆け出す。
間に合えっ!!



ーーーーーー

95 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 21:15:49.64 Ev9QIuxO0 76/151

ーーーーーー



会長さんの後に続いて役員室に入る。
元々一部屋のところを簡単なしきりで二部屋に分けられているような作りの部屋だ。



会長「その椅子にかけていてくれるかな」

「あ、はい」

会長「お茶を準備してこよう」

「あ、いえ! 私はーー」

会長「いいからいいから」



会長さんは隣の部屋へ。
会長さんに気を使わせるなんて……うぅぅ、胃が痛くなってきたよぉ……。



「………………」



ポツンと、部屋に一人。
だから、かな?
さっきは実感が湧かなかったけど……。



「っ」



鳥肌。

そ、そっか。
私、やったんだ。
私の走り認めてもらえたんだ……。

高校三年間。
ううん、中学校から陸上続けて。
中学校はまだ走れたんだけど、ここ最近全然結果が出なくて。
けど、少しずつ残りの時間が無くなっていった。
だから、この高校最後の大会で!

そう思ってた。
だけど、そっか。



「えへへ、私、認めてもらえてる」



こんなに嬉しいことはない!

96 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 21:26:12.78 Ev9QIuxO0 77/151



会長「お待たせしたね」

「あ! いえ! こちらこそすみません!」



お茶を持ってきてくださった会長さんに頭を下げる。
勿論、椅子に座ってなどいられない。
飛び上がるみたいに、椅子から立った。



会長「そんなにかしこまらないで」



ほら、座りなさい。

そう言う会長さんの言葉に頷き、今度は静かに椅子に座る。
自然と会長さんと向き合う形。



会長「さて」

「!」



会長さんの言葉に体が跳ねる。
って、びびりすぎ! 私!
平常心、平常心。



会長「斉木さん、予選での君の走り見せてもらったよ」

「あ、はい! ありがとうございます!」

会長「いや、実にいい走りだった」

「っ」

会長「しかし、不思議だね。調べたところ、去年まで……言っては悪いが、決してよい成績とは言えなかったようだが」



なにかあったのかな?

会長さんに聞かれる。

……うん。
その通りで、確かに私は去年までは成績は振るわなかった。
だけど、




「努力、しました」




それだけだ。
ひたすら走って、走って、走った。
誰よりも走ったんだ。


…………一年半前。
中学時代のライバルが、違うステージで輝く姿を見た。
それを見て、私もやらなきゃってなってた。

負けたくないって思った。

97 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 21:34:06.00 Ev9QIuxO0 78/151



会長「…………なるほどね」

「はい!」

会長「…………実にーー」





会長「ーー困った」




「……え?」



今、なんて?



会長「いやぁ、君の実力は本物だ。きっとそれは余程のことでは崩れないだろうねぇ」

「あ、あの……」

会長「だから、困ってしまうねぇ。今まで無名に等しい選手が大会で優勝されたのでは、困る」



え?
え??
会長さんは……なにを言ってるの……?



会長「あぁ、すまないね。置いてきぼりにしてしまったかな」

会長「実は私はこの大会を使って、賭博をしていてねぇ」

会長「君に優勝されてしまったら大損なのだよ」

「………………え」

会長「最近派手に動きすぎて、警察もどうやら嗅ぎ回っていたようだから私自ら動くのは不本意なんだが……」





『マネー』




会長「致し方無い」




マネー『私の目的のために眠ってもらおう』ニタァァ




98 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 21:43:37.71 Ev9QIuxO0 79/151

目の前で会長さんが姿を変えた。
全身が金色の金属みたいな体。
でっぷりと太ったフォルムと、ギラギラと気味が悪いくらいに光る金色が、否が応でも目に入ってくる。

意味が、分からなかった。
目の前の怪物のことも。
私がここに呼ばれた意味も。

でも、ひとつだけわかったのは、



「私…………認めてもらえてなかったんだ……」

マネー『いやいや、認めているよ』




マネー『だから、ここで摘むんだよ』

マネー『君は私の目的には邪魔者でしかないからねぇ』



「っ」



化物がなにかを取り出した。
コイン、のようなもの。

それが、



ーー カチャッ ーー



私の額に押し当てられる。
ひんやりとした感触。
それと同時に意識が遠退いていく。

あぁ、そっか。
私、ここでーー





ーー バァァァンッ ーー



「風ちゃんっ!!!」





最後に、目に写ったのは凛ちゃんの姿。
逃げて、凛ちゃん……。
私はーー




「ダメだった……よ……」




ーーーーーー

99 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 21:50:05.73 Ev9QIuxO0 80/151

ーーーーーー




ーー バァァァンッ ーー



「風ちゃんっ!!」



役員室のドアを壊す勢いで乱暴に開け、中へ飛び込む。
そこで目にしたのは金色の怪物と、




「ダメだった……よ……」

「っ!?」




涙を流しながら、倒れる風ちゃん。



「風ちゃんっ!!」



駆け寄って、倒れる風ちゃんを抱き止める。
怪我とかはない。
けど、



「風ちゃんっ、風ちゃん!!」

「……………………」

「なんで、返事しないにゃ!? ねぇ!」




マネー『無駄だよ。もうその子供は目を覚まさない』




「っ、お前っ!! 何したっ!!」



目の前の怪物に叫ぶ。



マネー『……このライフコインで、魂を吸った』

「魂っ!?」

マネー『そう。そして……』

「な!?」



ーー ゴクンッ ーー



ライフコインと呼ばれたもの。
それを飲み込んだ。

100 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 21:59:58.80 Ev9QIuxO0 81/151


「おまえっ!!」

マネー『ふぅ、これでこの子供は用済みだ』

「っ」

マネー『おっと、まさか人間の君がドーパントに勝てるとでも?』

「そんなのーー」



関係ない!
凛がぶっ飛ばす!

そう言おうとして、



ーー グイッ ーー



「っ!?」



凛は誰かに引っ張られた。
後ろを振り返る。
そこには、




にこ「待たせたわねっ」




ゼェゼェと肩で息をするにこちゃんがいた。

101 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 22:03:33.06 Ev9QIuxO0 82/151


「にこちゃんっ!」

にこ「ったく、先走るんじゃないわよっ!」

「ごめんっ、でも…………」



風ちゃん、助けられなかった。

目の前で襲われて。
それで……。
腕の中の風ちゃんは、まるで死んでしまったみたいに動かない。



「っ」



唇を噛み締める。
きつく、きつく。
鉄の味がしても、構わない。

凛は……。



にこ「凛、離れてなさい」

「……っ、でも」

にこ「あんたがその娘を守るのよ」

「にこちゃん……っ、うんっ」




にこ「あんたの分まで…………にこが戦うから」




102 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/23 22:12:51.68 Ev9QIuxO0 83/151


にこ「………………」

マネー『さて、三文にもならないようなお涙ちょうだいの芝居は終わったかな』

にこ「……あんた、なんでこんなことしてるんよ」

マネー『んん? 金のためだが?』

にこ「そのために何人も昏睡状態にさせたのね」

マネー『…………あぁ、なにか問題があるかね』

にこ「全員が夢を追いかけて、全力で走ろうとしていたのよ」

マネー『……なにか問題が?』

にこ「…………」スッ




『ジョーカー』




にこ「いえ、ないわ」

にこ「なんの問題もなく」

にこ「あんたをぶっ倒せる!!」



にこ「変身!!」





『ジョーカー!!』




ジョーカー『さぁ、お前の罪を数えろ!!』




108 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 18:22:41.66 wr82tVGw0 84/151




ジョーカー『はぁぁっ!!』グッ

マネー『……ふむ』ヒョイッ



ーー ブンッ ーー



にこちゃんの一撃目。
ドーパントは軽くそれを避けてみせる。



ジョーカー『くっ』

マネー『ゴキブリたちとの戦いは見ているよ。君の攻撃は実に単調だね』

ジョーカー『っ、ならーー』



ーー ブンッ ーー



ぐっと力を溜めた後に跳んだ。
ほぼノーモーションの跳び蹴りだ。

けど、



ーー スカッ ーー



ジョーカー『っ!?』

マネー『だから、見えていると……言っているだろう?』グッ



ーー バキッ ーー



ジョーカー『が……っ』

「にこちゃんっ!」



今度はドーパントの拳がにこちゃんのお腹に……っ。
にこちゃんはそのまま部屋を逃げるように出る。

109 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 18:29:23.17 wr82tVGw0 85/151


マネー『…………』

「っ」



チラリと、ドーパントが凛の方を見た。
反射的に身構えて……。



マネー『……今はいい』



そのまま部屋を出ていくドーパント。

っ!
凛も……!

少し呆けていた凛は震える体を無理矢理奮い起こす。
追わなきゃ!
でも……。



「…………風、ちゃん」

「…………」



腕の中の風ちゃんは動かない。
……息は、してるけど……。



「…………凛は……」




ーー ガチャッ ーー



「っ!?」



扉の開く音。
ドーパントが出ていったその扉から入ってきた人物。
それはーー



ーーーーーー

110 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 18:35:52.11 wr82tVGw0 86/151

ーーーーーー



マネー『さぁ、追いついた』

ジョーカー『……っ』



後を追ってきたマネードーパント。
さっき、あいつにやられたお腹がジンジンと痛む。
ひどい傷ではない。
……戦える。



ジョーカー『……ふっ』



構える。



マネー『……来なさい』

ジョーカー『ーーーーっ!!』ダッ



一気に距離を詰める。
そして、



ーー ガシッ ーー



ジョーカー『捕まえたわよっ!!』

マネー『ほう』



この距離なら、かわせないでしょ!!




『ジョーカーマキシマムドライブ』




マネーを掴んだと同時に、メモリをマキシマムスロットへ差し込む。
脚にエネルギーが溜まっていくのが分かる。



ジョーカー『これで!!』



終わり。
そう言おうとして、



マネー『ほっ!』ゲシッ

ジョーカー『か、はっ……!?』


111 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 18:40:41.70 wr82tVGw0 87/151

再びお腹に衝撃が走る。
今度はかなり強い衝撃。

それが鳩尾への蹴りだって理解したのは、膝をついた後で。



ジョーカー『っ、くっ、は……』

マネー『……仮面ライダーと言えど、人間の弱点は変わらないねぇ』

ジョーカー『おま、え……』



見下すように、マネーはにこを上から見てくる。



マネー『やはり……人はこうやって見下すのが落ち着くねぇ』

マネー『特に、私に楯突く愚か者はーーねっ!!』



ーー ゲシッ ーー



ジョーカー『っ』



また、蹴り。
今度は顔を蹴られ、その衝撃で少し吹き飛ばされた。

112 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 18:45:18.19 wr82tVGw0 88/151



ジョーカー『はっ、は……』

マネー『ふっ、これが仮面ライダーか。少し拍子抜けだねぇ』

ジョーカー『っ…………』



ったく!
アイドルの顔蹴るとか、こいつほんと頭どーかしてるわ。

本当だったら、にこがぶっ飛ばしてやりたいけど……。





『ボムマキシマムドライブ』




「そこまでよ」




今回は、




理事長「観念しなさい」




見せ場は譲るわ。
理事長に、ね。

114 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 18:53:14.48 wr82tVGw0 89/151

理事長は赤色の銃をマネーの後頭部に突き付けていた。
その銃には、『ボム』のメモリ。

なるほど。
あれが理事長が渡された専用のメモリってやつなわけね。



理事長「遅くなってごめんなさい、にこさん」

ジョーカー『いえ…………助かりました』



実は、マネーを捕まえた辺りで、理事長の姿は見えていた。
だから、わざと攻撃を受けた。
……まぁ、本当はあれで決められたらベストだったんだけど。

とにかく、理事長が突き付けた銃が普通の物じゃないのは、マネーも分かってるみたいで、



マネー『…………参ったねぇ』



両手を挙げて、そう呟いた。
至近距離でマキシマムを食らったら、メモリブレイクは確実だっていうのは分かってるようね。
相手が仮面ライダーではなくても、その関係者だってことも察した様子だし。

つまり、これでーー





マネー『残念ながら、終わりではない』




ジョーカー『っ』



115 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 19:00:25.03 wr82tVGw0 90/151


マネー『そう、思っただろう?』

ジョーカー『……あんた、この状況でそんなハッタリ……』



マネー『ハッタリ、ではない』



声が、笑ってる。
こいつ、まだなにかーー



理事長「……私が引き金を引けば、あなたのメモリは壊れます。抵抗しても無駄よ」

マネー『…………引ければ、の話だ』

理事長「っ、なにを……」



マネー『今! 私を倒してしまったら』



理事長の言葉に被せるように、マネーは声をあげる。
得意気な、勝ち誇った調子の声で、やつはーー




マネー『ライフコインは戻らない!』

マネー『つまり!』




マネー『夢を追う少年少女は、永遠に夢を見続けたまま』

マネー『彼女たちの夢は、私のメモリと共に砕かれる!!』





ーーそう告げた。




ーーーーーー

116 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 19:06:06.52 wr82tVGw0 91/151

ーーーーーー




「っ、にこちゃん!!」




風ちゃんを救護室に預けて、にこちゃんたちが向かった方へ向かう。
そこには、にこちゃんと理事長がいた。



にこ「……凛」

「にこちゃん! あいつは!!」

にこ「………………」



倒したんだよね!

そう尋ねる、けど……。
にこちゃんは俯いて……え?



「逃げられたの……?」

にこ「…………逃がした」

「逃が、した……? わざと……?」

にこ「…………えぇ、そうよ」




「っ!!」グッ




気付いたら、にこちゃんの胸ぐらを掴んでいた。



「なんで、にがしたのっ!! あいつは、風ちゃんにーー!!」

にこ「っ、ごめん」

「っ、ごめんじゃないにゃっ!!」



さらに、掴む手が強くなる。
頭に血が登るのが分かる。
さっき噛んだ唇がじんわりと熱い。





理事長「凛さん、止めなさい」




117 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 19:14:18.62 wr82tVGw0 92/151

凛を止めたのは、理事長。



「っ、理事長もっ!!」



倒すって!
さっき、そう言ったのに!!

理事長を睨みながら、責める。
なんで!!

熱くなる凛に、理事長は冷静に、続けた。



理事長「……聞いてくれるかしら」

「なにをっ!」

理事長「彼をあのまま倒していたらーー」



理事長「ーー斉木さんはあのままになってしまっていた」




「…………え?」

にこ「っ、けほっ」

「あっ……」



理事長の言葉で、ふと頭が冷えた凛。
慌ててにこちゃんから手を離した。



「っ、にこちゃん、ご、ごめん……」

にこ「……ダイジョブよ……それより……」

「う、うん。あいつを倒したら、風ちゃんがあのままって……いったいどういうことなんですか……」

理事長「……えぇ、それは……」




118 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 19:20:18.43 wr82tVGw0 93/151

凛は、理事長から説明を受けた。

マネードーパントに命を吸われた状態で、メモリブレイクされたら、そのライフコインの主の意識は戻らないということ。
その真偽は分からないが、可能性があるうちはメモリブレイクできないこと。

そして、最後に、あいつが口にした言葉。



「…………私が負けだと思わない限り、負けではない」

理事長「…………そう言ったわ」

にこ「……………………」

「っ」



負け?
人の夢を踏みにじっておいて、ゲーム気分……っ。

また唇を噛む。
痛みよりもこの悔しさのほうが辛い。




にこ「…………あいつから」

「え……?」

理事長「……にこさん?」



ポツリ、と。
黙って聞いていたにこちゃんが口を開いた。




にこ「あいつからライフコインを奪うには…………」

にこ「あいつが負けだと思えばいいのよね」



「にこちゃん……?」

119 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 19:27:57.99 wr82tVGw0 94/151


理事長「…………可能性はあります。『マネー』のメモリはかなり特殊なメモリだと、禅空寺からは情報をもらっているわ」



可能性。
メモリブレイクしても被害者の意識は戻らない。
ただ使用者が敗北を感じることで、能力が解除される。



理事長「……詳しく聞いてみましょうか?」

にこ「……はい」

理事長「…………もし、その通りだとしたら、どうするつもりですか?」



にこ「………………あいつを倒すのよ」



「た、倒すって……」



それができなかったんじゃないの!

そう言おうとして、止める。
なぜなら、にこちゃんがこっちを見てたから。
じっと、凛の方を。



「にこちゃん……?」

にこ「凛、今から無茶なこと言うわ。黙って聞いて」

「……っ」





にこ「凛」

にこ「あんたがあいつを倒しなさい」

にこ「仮面ライダーの力を使わずに、あんただけで!!」




ーーーーーー

120 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/11/27 19:28:28.50 wr82tVGw0 95/151

ーーーーーー

127 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 14:30:12.41 gnF+XSpW0 96/151

ーーーーーー




ーー カツン ーー



ーー カツン ーー



選手の待機場所として開放されているはずのサブアリーナに、足音が響く。
それなりに広い観客席のある体育館なのに、誰一人いない。

…………ううん。
一人だけ、いた。
凛の目の前に……。




会長「…………君だけかな」

「……そうにゃ」



そいつの言葉に頷く。




会長「よろしい」

「…………風ちゃんのライフコインを返してくれるんでしょ」

会長「あぁ、そういう約束だからね」



128 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 14:38:55.54 gnF+XSpW0 97/151

警備員を通じて、凛に呼び出しがかかったのが、競技が始まる30分前のこと。

競技が始まった後にサブアリーナまで一人でくること。
そうすれば、斉木風のライフコインを渡そう。

そう、伝言を受けた。
だから、凛は一人で来たんだ。



会長「…………ふむ」



やつは自分の腕時計を確認した。



会長「もう決勝は始まっている……彼女を返しても構わないだろうからねぇ」

「…………」



アリーナの時計を見ると、確かにもうレース開始の時間は過ぎていた。

と、奴が懐から何かを取り出す。
コイン……ライフコインだ。



会長「……それでは、ここに」



やつはそれを自分の足元に置いた。
そして、三歩下がる。



「…………」



近付く。

一歩、二歩、三歩。

そして、




ーー チャリッ ーー




足元のコインをーー




『マネー』



「っ!!」

129 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 14:46:52.15 gnF+XSpW0 98/151




マネー『ふっ!』



ーー ヂャリンヂャリンッ ーー




ドーパントに変身したやつの手の平から放出されるコイン型のエネルギー弾。
たくさんのコインが凛に襲い掛かってくるーー




「っ」バッ



ーーのをギリギリで避けた。

けど……。



「風ちゃんっ!」



ライフコインから遠ざかる。



マネー『どうかしたかな?』

「っ、ひきょうもの!!」

マネー『卑怯で結構だよ。私はそうやって生きてきたのだからね』

「…………返す気なかったんだ!」

マネー『勿論。これは君を誘き寄せる餌にすぎない』



私がドーパントであるという目撃者には消えてもらわないとね。
マネーは笑いながら、風ちゃんのライフコインを拾いそう言った。

130 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 14:55:16.71 gnF+XSpW0 99/151


マネー『私は稼がなくてはいけないんだよ。特に、このレースは金になる』

「…………風ちゃんはこのレースに懸けてた」

マネー『……それが?』



……知ってるよ。
こいつには風ちゃんがどれだけの思いを持ってたか、なんて理解できないってこと。

人の痛みが分からない。
そんなやつには、





「……………………レースはなくなったよ」




マネー『は?』



こいつの目的を潰す。
それしかない。



マネー『なにを言っている……』

「………………レースは中止になった」

マネー『っ、なにを馬鹿なことを!?』

「嘘だと思うなら…………電話でもしてみたらいいよ」

マネー『っ』



「…………」



131 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:01:13.18 gnF+XSpW0 100/151

やつがどこかに電話をして、その事実を確認するのに5分もかからなかった。



マネー『な、な……』

「ぷぷっ」



ぷるぷると震え、手に持っていた携帯を握り潰すマネー。




マネー『なにがおかしいっ!!』




今までの紳士然とした透かしたような余裕はない。
言葉も態度も荒々しかった。

それに、笑っちゃってた。



マネー『私のレースをっ……よくもっ!!』

「私のレース……? なに言ってるにゃ」

マネー『私のレースだ!! 私が金を手にするための、大事なーー』




「違う!!」

「あのレースはーー」




「風ちゃんたちの、選手のためのレースだ!!」





132 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:10:33.85 gnF+XSpW0 101/151

叫ぶ。

あの、風ちゃんの不安そうな表情やピリピリするようなプレッシャー。
それに、人懐っこい笑顔が頭に浮かぶ。



真剣に打ち込んでるんだよ。


不安も。
緊張も。
全部抱えながら、それでも全力で走る。

凛たちにとってのスクールアイドルと同じだ。
凛も気持ちだけは分かるから。



邪魔してほしくない……よね。




「…………ふぅ」



一度、目を閉じて。
深呼吸……。
そして、もう一度、やつを見て、言う。




「凛みたいな中途半端な人も」

「お前みたいなレースを金儲けのためにしか見てないような人も」

「関わっちゃいけないんだよ」

「だからーー」



だから、部外者は部外者同士でーー





「凛がお前を倒すっ!!」





133 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:14:32.84 gnF+XSpW0 102/151


マネー『黙って……聞いていればっ!!』

マネー『お前のようなゴキブリ共に怯えていたただの小娘がっ!』

マネー『私を倒すなど!!』



マネー『身の程をわきまえろォォォ!!』



やっぱり、というか。
予想以上にキレている様子で、マネーは叫んでくる。
その声が、アリーナ中に反響してて。



「……うー、うっさいにゃぁ」

マネー『その、減らず口も、すぐにきけなくしてやるゥゥ!』



「…………ふぅ」



もうひとつ、深呼吸。

うん。
分かってるよ。
ここからが勝負、だよね。

134 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:15:58.37 gnF+XSpW0 103/151

ーーーーーー

135 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:47:10.11 gnF+XSpW0 104/151




にこ「まずは、あいつから冷静さを奪いなさい!」



凛がドーパントを倒す!?
どうやって!?

という質問の答えがにこちゃんのその言葉だった。



にこ「マネードーパント自体は大して強くないわ」

「え、でも、にこちゃん結構やられてたよね」

にこ「えぇ、それはあいつがかなり頭がいいからでしょうね」

「あー、にこちゃんよりは……」

にこ「あんたが言うな!」グニィッ

「い、いひゃいにゃーー!」


バタバタと軽く暴れると、にこちゃんは指を凛のほっぺからなはした。
って、痛いよぉ……。



にこ「それで、冷静さを奪う方法だけど……」チラッ

理事長「……? なにかしら?」

にこ「理事長、この大会自体を中止にさせるとかできませんか?」

理事長「…………それはなぜ?」

にこ「はい。それは……」



にこちゃんの考えによると。

あいつはたぶん選手や警備員を自分の金儲けの道具くらいにしか考えてない。
その代わり、金への執着が人一倍強い。

今回、風ちゃんを襲ったのだって、自分の損失が大きいと判断したから。
役員室なんて人が入ってくる可能性もある場所で風ちゃんを襲ったのも、危機感があったんだ。
このままでは損失額が……って。



「凛には、理解できないにゃ」

にこ「にこもよ。お金は確かに大事だけど、それだけのために人を食い物にしたりできる神経は理解不能よ」

136 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:54:42.75 gnF+XSpW0 105/151



理事長「とにかく……大会自体を中止にすれば、彼は平静さを失うと?」

にこ「……はい」



理事長の疑問に頷くにこちゃん。
さらに、続ける。



にこ「この大会で賭博を行っている、しかも、自分の損失額を気にするほどの賭博なら……」

にこ「もし、それを中止にできれば……」



理事長「……彼が支払う額は大きい、と?」

にこ「はい」



なるほど。
可能性はあるわね。

理事長も、なんだかにこちゃんの考えに賛成みたい。
まぁ、凛はよくわかんないけど……。

でも、ひとつだけ心配なことがある。
それは、



「ねぇ、にこちゃん」

にこ「なに?」

「大会中止になったら……風ちゃんは……」



そう。
それは風ちゃんのこと。
風ちゃんはこの大会に懸けてるんだ。
だから、助けた後、大会がなくなったって知ったら……。



にこ「そ、それは……」

「にこちゃん……凛は……」



賛成できないよ。

そう言おうとして、




理事長「残念だけど、大会自体を中止にさせることはできません」




理事長に遮られた。

137 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 15:59:40.53 gnF+XSpW0 106/151


「え?」

にこ「……っと、まぁ、そうよね」



ふぅ、と息を吐くにこちゃん。



にこ「まぁ、というわけであり得ない話だから、あんたの友達のことは気にしなくていいわよ」

「う、うん」

にこ「でも、まぁ…………他に考え付くような頭は……にこにはないわ」



勿論、凛にもない。

う、うーん?
一体どうしたら……?



理事長「にこさん?」

にこ「……なんですか? 他に案は……」




理事長「中止に出来なくても、中止に『みせる』ことはできるじゃないかしら?」



「え?」

にこ「っ!」



そう言った理事長を見ると、赤いガイアメモリを手にしていて。

138 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 16:04:38.07 gnF+XSpW0 107/151


にこ「……なるほど」

「? え、えっと?」



一体どういうこと?
そう聞いても、理事長は笑ってごまかすだけで……。



にこ「……とりあえず、あいつから冷静さを奪う作戦はOKよ。凛は気にしないでいいわ」



にこと理事長がどうにかするわ。

そんなにこちゃんの言葉に、理解が追いついてないまま頷いた。
……えっと、じゃあ……。



「あとは、凛があいつを倒せば……?」

にこ「まぁ、普通にやったんじゃ無理よ」

「……え」




にこ「だから、これ……」



ーー ガチャッ ーー




にこちゃんが取り出したもの。
それは……。




「これ、にこちゃんが使ってる……」

にこ「そ。『ロストドライバー』」



139 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 16:11:35.79 gnF+XSpW0 108/151

正確には理事長が持ってるドライバーだけどね。
にこのはここにあるわ。

そう言って、自分用のドライバーを見せるにこちゃん。

これを、凛が……って、あれ?



「仮面ライダーの力は使わないんじゃ……?」

にこ「そ。だから、これは見えないように着けときなさい」

「…………?」

にこ「着けるだけでも少しは力が上がるらしいわ」

「あ、なるほど」



服の下に着けておけば、ちょっとは戦えるってことかな?



にこ「そういうこと!」

「…………でも、倒せるかな?」

にこ「メモリブレイクまでは出来なくてもいいわ。というか無理よ」


それは、近くににこが待機してるから、にこがすればいいから。
って、それじゃあーー



「じゃあ、凛は…………」



凛の疑問に、にこちゃんは笑う。
笑って、こう言った。




にこ「あいつを一発ぶん殴りなさい!」

にこ「ただの女子高生にドーパントがぶん殴られれば、負けだと思うわよ」



141 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 17:44:55.22 KhXAIFiWO 109/151



マネー『ハァァっ!!』ブンッ

「っ」



マネーの拳をギリギリで、っ!
ちょっとかすった!

ほっぺがズキリと痛む。



マネー『ふ、ははっ!』

「やっと、当たって……嬉しそうだね」

マネー『ア?』

「『ただの人間』相手に、ぷぷっ」

マネー『アぁぁ?』

「…………」



心のなかでガッツポーズをする。

よし!
ちょーはつ成功にゃ!
これでさらに、動きやすく……



マネー『舐めるな、小娘ェェ!!』ググッ


「なっ!?」



この至近距離で、さっきのエネルギー弾!?
ヤバイにゃ!?

必死に、跳ぶ。



「っ、にゃぁぁっ!!」バッ




ーー ヂャリンヂャリンッ ーー




間一髪。
どうにか避けた、けど……。



「……はっ、はぁ……あぶな……」



ーー ズキッ ーー



「痛っ……」



いや。
避けれてなかったぽかった。
左足に鈍い痛み。
見れば、血が出ていた。

142 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 17:52:11.00 KhXAIFiWO 110/151


マネー『ふ、ははははっ、足を、捉えた!』

「うっ……」



走れない、わけじゃない。
だけど……。



マネー『さっきまでの動きは出来ないだろう?』

「……っ」



たしかに、そうだ。
手ならまだしも足に当たったのは、辛い。
でも、



「……このくらい余裕……ううん、ハンデかにゃー?」



なんて。
ハッタリもハッタリだけど。



マネー『ハッ! いくら虚勢を張ったところで!!』

マネー『この攻撃からはっ!!』ググッ




マネー『逃げられまい!!』



ーー ヂャリンヂャリンッ ーー



「ま、だっ!!」バッ



マネーのエネルギー弾が目の前に迫ってくる。
ここなら、避わせる!

143 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 17:57:57.13 KhXAIFiWO 111/151


マネー『甘いわァァ!!』ググッ

「なっ!?」




ーー ヂャリン ーー




もう一発。
凛が避けられないような、追撃。
当たる……よね。



「っ」


目を閉じ、体を丸める。
ドライバーを着けて、少しは強化された凛なら耐えられるかもしれない。

足掻くよ。


だって、凛はまだーー




「あいつを殴らなきゃ」

「風ちゃんの夢を踏みにじったあいつをーーっ」




頭の中には、涙を流しながら目の前で倒れた風ちゃんの姿が浮かぶ。
それから、凛に向かって笑みを浮かべた風ちゃんの姿も。

あぁ、やっぱり耐えなきゃ……。
凛は、




「あいつを倒したいっ!!」




体を丸めてて直接見なくても分かるエネルギー弾の光に、凛は包まれてーー

144 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 18:06:06.06 KhXAIFiWO 112/151




目の前に煙が広がる。
派手な攻撃で広がった煙だ。



マネー『ふ、ははははっ!!』



誰もいないアリーナに笑い声だけが響く。



マネー『ざまぁないねぇ!!』

マネー『結局、ただの人間であるあの小娘は死に、私は生きている』

マネー『……当たり前のことだがね』



そう。
それが普通。
人間がドーパントに勝てるはずがない。
生身で戦うとかただのバカだ。



マネー『…………あそこまでコケにされたのは初めてだったが……いや、だからこそ、死体を見ておこうか』

マネー『四肢がズタズタになった小娘の姿を見れば、少しはこのウサも晴れるだろう』

マネー『金にはならんがね』




目の前の煙が晴れていく。
目の前にはーー






「…………やっと」



ーーーー ガシッ ーーーー



マネー『なっ!?』





ーーそのドーパントの姿があった。



凛は、生きてる。



145 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 18:09:47.36 KhXAIFiWO 113/151




「やっと捕まえた……」

マネー『な、なぜ生きている!?』

「……そんなの……」



凛の方が知りたいよ。

凛に攻撃が当たる直前に、目の前でなにかが爆発する音がした。
その勢いのせいで、吹っ飛ばされたけど、結果的にはエネルギー弾は当たらなかった。

そして、




「覚悟、いいかにゃ……?」グッ




拳を握る。
思いっきり、



マネー『ぐっ、離ーー』

「ーーすわけないじゃん!!」



ぶんーー



「らぁぁぁっ!!!」




ーー バキッ ーー




ーー殴った。

146 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 18:15:21.89 KhXAIFiWO 114/151



「痛っ」

マネー『は、はは……焦って損をしたよ。それはそうなるだろう』



ドーパントを殴った凛の手から血が流れる。
いくら掴んだからって、こっちは生身なんだから、まぁ、そうなるよね。



マネー『ふっ、それで、どうするつもりかね?』

「……っ、まぁ」




そうだよね。

………………。

うん。
決まってるよ。



「にこちゃんはさ……」

マネー『……は? にこ?』

「……一発ぶん殴りなさいって言ったけど、凛は反対だった」

マネー『……それはそうだろうね。ただの人間がドーパントを殴ってはそちらが怪我をするだけだ』



殴ろうなんて考えは馬鹿の考えだ。

ドーパントはそう言った。

うん。
そうだよ、だから、凛はバカなんだ。



「凛はね、決めてたんだ」

147 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 18:16:18.03 KhXAIFiWO 115/151







「お前を100発ぶん殴るって!!」





148 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 18:19:41.12 KhXAIFiWO 116/151


マネー『は、は!? なにを!?』

「2発目!!」




ーー バキッ ーー




マネー『!?』

「っ、痛く……ない!!」グッ




ーー バキッ ーー




「っ、まだまだ!!」




ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー

ーー バキッ ーー



殴る。
殴る殴る殴る。
殴る殴る殴る殴る殴る。

殴り続ける。
勿論、ドーパントも抵抗するけど、絶対に離さない!

149 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 18:24:33.37 KhXAIFiWO 117/151


マネー『お、お前は、馬鹿なのか!?』

「そうだよ。凛は、バカだ!」



だけど、バカでもーー




「風ちゃんの思いを踏みにじったやつを殴ることはできる!」

マネー『手が裂けてるんだ……なぜーー』




「関係ない!!」

「足に怪我しても、手が裂けても」




「絶対に、凛がお前を倒すんだ!!」




マネー『な、なんなんだ、お前は…………』

「凛は、ただのっ、人間…………でもっ!」





「風ちゃんの友達だッ!!」





ーー ドクンッ ーー


150 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:11:40.12 zv/H86dj0 118/151



マネー『あ、ぐっ……』

「!?」



何発目かのパンチで、さっきまで平気そうだったドーパントが急に苦しみ出す。
驚いてつい放したけど……。



マネー『が……アぁァァ……ァァ……』



な、なに?
なにが……!?



と、



ーー チャリン ーー



「え……?」



凛の足元に現れたもの。
それは、



「……これ、ライフコイン……?」



よく見てみると、コインには名前が刻まれている。
その文字が、凛の目の前で、



「……消えた……?」



151 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:18:14.83 zv/H86dj0 119/151



マネー『や、止めろ!! 私は、私はまだ負けていないっ』



ーー チャリン ーー

ーー チャリン ーー



マネードーパントは苦しみながら、ライフコインを吐き出していく。
次々と現れるライフコイン。
その一枚一枚から、名前が消えていく。



マネー『あ、ぐ……ハァ……』

「これって!!」



ドーパントが苦しんでる隙に、さっきのライフコインの元へ駆け寄った。
刻まれた名前を確認する。
そこには『斉木風』の文字があって。



ーー スゥゥゥ ーー

ーー チャリン ーー



たった今、消えた。



「!!」

「これ、もしかして……ううん」



振り返る。
さっきまでぼってりと太っていたマネードーパントは、



マネー『はぁ……はぁ……』



やせ細っていた。
ガリガリで……見る影もない。

152 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:26:20.48 zv/H86dj0 120/151



「それが……お前の正体」

マネー『は……ぁぁ……』



ガリガリに痩せ細って、気味が悪いほどの金色の体もくすんだ銅色になってる。
肩で息をしているその姿は……。



マネー『お、まえ……』

「…………もう終わりにゃ」



そう告げる。
たぶんもう戦える状態じゃないはず。

けど、




マネー『な、舐めるなァァァァ』バンッ




ーー ジリリリリリリリリリ ーー



「っ」



耳がおかしくなるほどの音。
マネードーパントがアリーナの非常ベルを鳴らしていた。




マネー『ゴキブリ共!!』

マネー『私を守れェェェェ!!!』



「な!?」

153 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:32:40.24 zv/H86dj0 121/151

アリーナの入り口を見る。
そこには、



コックローチ1「…………」

コックローチ2「…………」

コックローチ3「…………」



3体の、コックローチ……ううん。



コックローチ4「…………」

コックローチ5「…………」



「まだ、増えるの…………?」



音を聞いて、集まってくるコックローチドーパント。
もう、入り口には7体もいる。



マネー『は、はは……そうだぁ』

マネー『私には、まだ力がある……』

マネー『このマネーのメモリの力が衰えても……金がある……!』

マネー『金があれば、ゴキブリ共は私を守る……』

マネー『は、はははっ! はははっ!!』



「っ、追いつめたのに……っ!!」



高笑いがアリーナに響く。
そして、コックローチの羽音も聞こえてくる。

ここまでかにゃ……。




マネー『そうだ、私はまだ戦えーー』




154 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:35:29.64 zv/H86dj0 122/151





『ジョーカーマキシマムドライブ』



ジョーカー『ライダーキックっ!!』




ーーーーーー バキィィィ ーーーーーー



コックローチ6『グォ……!?』

コックローチ7『……ガ!?』



ーー バリンッ ーー

ーー バリンッ ーー




「え……!?」

155 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:41:18.68 zv/H86dj0 123/151

アリーナの外から聞こえる爆発音。
そして、あの声!
間違いないにゃ!!




「っ、にこちゃん!!」



大声で叫ぶ。
凛の声に答えるように、



ジョーカー『凛!!』



声が聞こえてくる。
姿は見えない、だけど!!



「来てくれたんだねっ」

ジョーカー『ったりまえ……よっ!!』

「っ」



ゴキブリ退治は任せなさい!
ただ数が多すぎるから……。

中の成金ドーパントはあんたに任せたわ!

そう言うにこちゃん。
……ほんと。



「頼りになるにゃ」




にこちゃんには聞こえないように、ボソッと呟く。
にこちゃんの声聞いてホッとしたとか、後でバレたらからかわれそうだしね。

156 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:47:48.08 zv/H86dj0 124/151



「…………ふぅ」



息を吐く。
そして、黒い影がうごめく入り口に背中を向ける。
後ろは……大丈夫。



「…………」

マネー『う、ぁぁぁ……仮面っ、ライダーァァァァ!!』



銅色の怪物と向かい合う。

弱ってるとは言え、ドーパントはドーパント。
凛だけじゃメモリブレイクは出来ない。



マネー『おまえ、だけでも…………!!』

「っ、えぇ!?」



考えている途中で、ドーパントが向かってくる。

って!?
は、速い!?
痩せたから!?



ーー ガシッ ーー



「にゃ!?」

マネー『つか、まえたぞォォ……』



さっきとは逆。
今度は凛がドーパントに掴まれて……って!?



「ま、まずいにゃ!?」



ジタバタともがいても放してくれない。
って、このままじゃーー

思わず目をつぶる。

157 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:48:26.71 zv/H86dj0 125/151







ーーーーーー カツンッ ーーーーーー









158 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 22:54:29.37 zv/H86dj0 126/151

何かが当たる音。
…………攻撃が、来ない?

そっと目を開ける。




マネー『……っ、な、なんだ!?』



目の前の状況は変わんない。
でも、ドーパントの意識が凛から外れていた。



マネー『誰だ!!』

マネー『出てこい!!』



たぶん、何かがギャラリーから飛んできたんだろう。
ドーパントは必死にギャラリーの方を警戒していた。

!!
チャンス!!



「にゃっ!!」ベキッ

マネー『ぐっ!?』



ドーパントが少しよろめいた瞬間に、距離をとる。
脱出成功にゃ!

…………でも、なにが?

凛もキョロキョロと周りを見渡す。

あの音。
何かが当たるような音だったけど……。




「あ、あれ……?」



159 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 23:00:29.55 zv/H86dj0 127/151

そこで、凛は見つけた。
あいつの後ろ側に落ちている『それ』を。



「っ!!」ダッ



あいつの意識がギャラリーに向いている今がチャンス!
凛は、飛び付くみたいに蹴り出して、



「っ、よしっ!!」バッ



『それ』を拾った。



「…………」

「………………これって……『ガイアメモリ』……?」




そうだ。
『ガイアメモリ』だ。
しかも、ドーパントになるやつじゃない。
にこちゃんと同じ……『仮面ライダー』になるためのメモリだった。

けれど、にこちゃんとは違う色。



「みどり…………」



それで、『メモリ』の名前はーー



「C……Y…………???」

「……え、えっと……??」



160 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 23:01:20.58 zv/H86dj0 128/151








「cyclone…………」

「『サイクロン』だよ!!」









161 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 23:09:46.19 zv/H86dj0 129/151




「………………」



「……え?」

マネー『! やはりそこにいたかァ……』

「!!」



突然聞こえた声。
その声の主は、ギャラリーにいた。

凛の声でも。
にこちゃんの声でも。
理事長の声でも。
マネードーパントの声でもないその声の主。

それは聞き覚えがある声だった。



「な、なんで……!?」

「いいから! 今はそれを使って!!」

「でもっ!!」

「っ、お願い!」




「信じてっ! 凛ちゃん!!」




彼女は言った。
信じてって。

……………………うん。
分かった。

コクリと。
ギャラリーにいる彼女を見て、頷く。




「信じるよ」

「…………穂乃果ちゃん」




穂乃果「ありがとう、凛ちゃん」




162 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 23:15:37.41 zv/H86dj0 130/151


「すぅ…………はぁぁ……」

「…………よし!」カチッ




『サイクロン』




「…………変、身っ!!」





『サイクロン!!』





風が、凛の周りを包む。
他の音は何も聞こえないくらい、強い風の音。





『……………………』




やがて。
その風が止み始めて。

凛はそこに立っていた。
いや、凛じゃないよね。

今の凛はーー




マネー『おま、え…………』

『…………にこちゃんがジョーカーなら、『サイクロン』メモリで変身した凛はーー』





サイクロン『ーー仮面ライダーサイクロンだよ!』




163 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/02 23:18:09.00 zv/H86dj0 131/151




サイクロン『多くの人の夢を、頑張りを嘲笑って、踏みにじった罪』

サイクロン『凛の友達を傷つけた罪』

サイクロン『ちゃんと償ってもらうよ』





サイクロン『さぁ!』

サイクロン『お前の罪を数えろ!!』





167 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 19:52:27.52 /X5zeacB0 132/151



マネー『また、仮面ライダー……だと……』



2、3歩後退るマネー。
それを横目に見ながら、考える。
というか、



サイクロン『……なるほど』

サイクロン『こんな感じなんだね……』



頭に勝手に情報が入ってくる感じだ。

闘い方とかこのメモリの能力とか。
わーっといろんなことが来てーー



サイクロン『うっ…………酔いそう……』



思わずふらつく。

うー。
凛、ゲームとかも説明書読まないで始めるタイプだし、こんなに一気に教え込まれても……。



マネー『! はぁぁっ!!』ググッ



ーー ヂャリンヂャリン ーー



サイクロン『!』



と、情報に酔ってる凛の隙をついてくるドーパント。
エネルギー弾が迫ってくる。

…………けど!



サイクロン『っ、は!!』ブンッ




ーー ビュゥゥゥゥゥゥゥゥ ーー




風が吹く。
凛の手に合わせて吹いたその風で、エネルギー弾が消えていった。

168 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 19:56:05.55 /X5zeacB0 133/151



サイクロン『お、おぉ……!』



やった自分が一番驚いたよ。
さっきまであんなに怖かった攻撃が手で払っただけで消えちゃったから。



マネー『わ、私の攻撃が……』

サイクロン『……うん。効かないみたい!』

マネー『ぐっ!?』



ニカッと笑う。
って、見えないんだった。

まぁ、いいにゃ!



サイクロン『…………じゃあ』



じゃあ、今度は!




サイクロン『こっちの番!!』ダッ




169 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:00:14.41 /X5zeacB0 134/151

一気に距離を詰める。



マネー『な!?』



気付いたときには、もう目の前にドーパントの姿があって。



サイクロン『っ』ググッ

マネー『やめーー』




サイクロン『らぁぁぁっ!!!』



ーー バキィィィィィィッ ーー



マネー『ご、があっ!?!?』




一撃。
蹴り飛ばす。



サイクロン『って、おぉ……すごいにゃ……』



アリーナの壁に叩きつけられるドーパントを見ながらそう思う。
蹴り一発でこんな威力が……。

ガイアメモリ……おそろしーにゃ……!

170 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:05:28.63 /X5zeacB0 135/151




穂乃果「凛ちゃん!!」

サイクロン『!』



声はギャラリーの方から。
見上げると、穂乃果ちゃんが身を乗り出してこっちを見てた。



穂乃果「メモリブレイクだよ!!」

サイクロン『……あ、そっか!』



凛も仮面ライダーなんだから、できるんだよね!

えっと、たしか……。
メモリをドライバーから抜いて、それから……。



マネー『ふ、あ…………』ヨロッ

サイクロン『!』



あいつ、立ち上がった!
流石に一発じゃ倒せないよね。
でも、マキシマムドライブなら!




サイクロン『決める!』ガシャ




『サイクロンマキシマムドライブ』



ドライバーから音が鳴る。
それと同時に、風が集まってくるのが分かった。

風は、足に。
まとわりついていく。




サイクロン『これでーー』




171 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:10:36.72 /X5zeacB0 136/151




マネー『う、ゥォォオォ!!!』

サイクロン『!?』



技を決めようとした、その瞬間。
ドーパントが跳んだ。

あいつは、そのままギャラリーまで……って!!




サイクロン『穂乃果ちゃんっ!!』




172 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:12:49.94 /X5zeacB0 137/151

ーーーーーー

173 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:17:28.95 /X5zeacB0 138/151



マネー『はぁ……は……』

穂乃果「…………っ」



目の前に怪物。
凛ちゃんがマキシマムを使う直前に、ここまで上がってきたんだ……。
下からここまで、一飛びで……。

これが……ドーパントかぁ。



マネー『お前を、使えば…………あの小娘は……』



使えば……?
そっか。



穂乃果「穂乃果を人質にする気?」

マネー『あ? あ、あ……そうだ……私は負けていない、私はーー』



うわ言のように、目の前の怪物は繰り返す。

……メモリに飲まれかけてる。
ガイアメモリの副作用。
人の心の闇を増幅させる、だっけ。



穂乃果「っ」



頭をよぎる。
あの娘のこと……。

穂乃果はーー



穂乃果「………………うん」

マネー『……なにをーー』



ドーパントがさらに一歩近づいてくる。
けど、怖くない。

だって、




穂乃果「終わらせて、凛ちゃん」




サイクロン『うん!』




緑色の仮面ライダーがそこにいたから。

174 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:25:19.66 /X5zeacB0 139/151




サイクロン『ほっ!』グッ

マネー『なにを……!?』



ーー ドンッ ーー



凛ちゃんは、ドーパントを後ろから掴んで下へ突き飛ばす。
なるほどね!
これなら、逃げられない。



サイクロン『決めてくる!』グッ



それだけを言うと、凛ちゃんも一緒に飛び降りた。
そして、回る。

高飛び込み、だっけ。
あれみたいに、回ってーー




『サイクロンマキシマムドライブ』




サイクロン『はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』




ーーーーーー バキィィィィィィィィィッ ーーーーーー




マネー『ーーーーーーーーーっ!?!?』




ーーカカト落としを決めた。

175 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:27:52.06 /X5zeacB0 140/151

聞こえてきたのは、怪物の声にならない断末魔の叫びだけ。
爆発音は少しも聞こえず、その代わり、




ーー パキッ ーー




弱々しい音。
何かが壊れるような音が鳴ったような……気がした。



穂乃果「……えっと……」



ギャラリーからもう一回下を覗き込んだ時。
その時にはもう、




「……ってて……」

穂乃果「凛ちゃん!」

「!」




「ぶい! にゃ!!」




全部が終わっていた。




ーーーーーー

176 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:29:41.33 /X5zeacB0 141/151

ーーーーーー

177 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:46:24.82 /X5zeacB0 142/151

ーーーーーー



File.2
陸上部員連続昏睡事件。



『マネーメモリ』使用者による連続昏睡事件。
陸上競技の大会に出場する予定だった選手7名を『ライフコイン』を使用し、昏睡状態にさせた。


『仮面ライダーサイクロン』が撃破。
メモリも破壊した。


メモリ使用者は、陸上協会会長の男。
事件後、駆け付けた警察に現行犯逮捕され、そのメモリの出処を証言させるべく、風都署超常犯罪対策課に連行された。
また、共犯として、『コックローチメモリ』を使用し、大会関係者を襲撃した警備員計15名は『仮面ライダージョーカー』に撃破された。
同じく、逮捕、連行された。



この事件で、昏睡状態にさせられた選手は、事件後全員が意識を取り戻しており、後遺症などもないようである。
そしてーー



ーーーーーー

178 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:47:09.65 /X5zeacB0 143/151

ーーーーーー

179 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:52:15.05 /X5zeacB0 144/151

ーーーーーー





ーーーーーー パァァァァン ーーーーーー




音が競技場に響き渡る。
同時に、凛は掲示板を見ていた。

結果は!!




「っ!!」




掲示板の一番上。
そこには、凛が応援していた娘の名前があった。

や、やった!!




「~~~~~っ」




思いっきり、息を吸い込んで。
それを掴みとった彼女の名前を呼んだ。





「風ちゃんっ!!!」




それに気づいた彼女は、観客席の凛の方を見て





「ーーーーーーーーー」ニカッ




ーー笑った。

あの人懐っこい笑顔でーー。




ーーーーーー

180 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:53:40.11 /X5zeacB0 145/151

ーーーーーー

181 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 20:58:06.54 /X5zeacB0 146/151

ーーーーーー



アイドル研究部部室。
日曜日ということもあって、本来の部員はほとんどいない。

ただ、



にこ「…………」

理事長「…………」



花陽「あの、えっと……」

「ふわぁぁ……眠いにゃ……」

真姫「……凛、空気読みなさい」



凛たち1年……じゃなかったわね。
現3年生と、OGであるにこ。
理事長。

そして、




穂乃果「あ、あの~、なんだか空気が重いような……」




高坂穂乃果がいた。

182 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 21:02:37.24 /X5zeacB0 147/151



にこ「当然でしょうが!」バンッ



穂乃果の煮え切らない態度に、つい机を叩いた。



にこ「あんた、一体!」

理事長「まぁまぁ、にこさん。少し落ち着いて」

にこ「っ……」



理事長の制止で、勢いを削がれる。
って、あぁ……。


にこ「悪いわね、花陽」

花陽「う、ううん。ちょっとビックリしただけ」

にこ「……こいつが空気読まないから、ついね」

「え?」



違う違う。
凛も空気は読めてないけど、それよりも穂乃果よ。



穂乃果「あ、あはは……」



誤魔化すように笑う穂乃果に、またカチンとくる。
ったく、こいつは……!

183 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 21:07:35.40 /X5zeacB0 148/151




真姫「…………穂乃果」




にこがキレそうなのを察したのか、口火を切ったのは真姫ちゃん。

静かに。
でも、言い逃れが出来ないような雰囲気で、真姫ちゃんはこう聞いた。





真姫「あなた、一体なにをしてるのよ」



穂乃果「………………」




穂乃果は真姫ちゃんを、じっと見つめ返している。



穂乃果「……………………」

真姫「………………」

穂乃果「…………」

真姫「………………」



数秒、見つめあった後、




穂乃果「……ふぅ、そうだね」




穂乃果が息を吐く。
根負けしたみたいに。

184 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 21:12:41.39 /X5zeacB0 149/151



真姫「……ん」



ここからはにこの出番。
そう言う代わりに、穂乃果の正面をにこに譲る真姫ちゃん。

ありがと。
それだけを返して、穂乃果の前へ。

そして、尋ねる。



にこ「穂乃果」

穂乃果「うん。なに、にこちゃん?」

にこ「このドライバーはあんたから貰ったものよ」コトッ

穂乃果「うん」

にこ「ドーパントに関わる色んなこともあんたから聞いたわ」

穂乃果「……うん」

にこ「そして、今回の事件でも、あんたは凛に『メモリ』を渡した」

穂乃果「そう、だね」




にこ「ねぇ、穂乃果」

にこ「あんた、一体なにをしてるのよ……?」




今度は冷静に。
にこは穂乃果の目を見ながら、聞く。

それに、穂乃果は……。



穂乃果「うん」



ひとつ頷いてから、こう答えた。

185 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 21:15:36.54 /X5zeacB0 150/151

ーーーーーー





穂乃果「穂乃果はーー」




穂乃果「ーー海未ちゃんを止めなくちゃいけないんだ」






ーーーーーー To be continued ーーーーーー

186 : ◆6cZRMaO/G6 - 2017/12/03 21:24:51.53 /X5zeacB0 151/151

以上で
『凛「さぁ、お前の罪を数えろ!」』完結になります。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章・表現にお付き合いいただき、ありがとうございました。

以下過去作等です。
よろしければどうぞ。

前作(荒らされております。すみません)
にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500978922/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/18040654.html

過去作(百合もの)
曜「私とあの娘のアイスな関係」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1507542150/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/19764055.html
花陽「雨、絵里ちゃんと一緒の土曜日」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443178719/
http://ayame2nd.blog.jp/archives/2825415.html


続きの構想はありますので、気が向いたら書く予定でいます。
その時はまたぜひお付き合いください。

恐らく次作は百合ものとなります。
では、また。

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