武内P「大人の魅力、ですか」【1】
292 : 以下、名... - 2017/11/19 00:10:34.68 QhzeNBhmo 242/742高垣さんといちゃつく話を読んでみたいですね
仕事の打ち合わせが終わり、帰路につこうとした時、346プロ内にあるカフェで彼を見つけた。
いつも通りのスーツ姿に、近くに寄っては見る事が出来ない頭頂部の寝癖。
ノートパソコンを見つめる難しい顔は、見る人にとっては怖いものらしい。
私は、彼を怖いと思った事はない。
感覚がズレていると偶に……いや、よく言われるが、そんな事は無いと思う。
彼の見た目、ぴにゃこら太みたいで可愛いと思うのよね。
私と同様、仕事が恋人と公言しているだけあって、彼の仕事に対する姿勢はいつも真剣だ。
恐らく、彼がカフェで格闘中なのも、担当するアイドル達や、事務員の千川さんに「休め」と言われての事だろう。
けれど、彼はそれを良しとしない。
その事を同僚として心配もするが……――同時に安心もする。
私は、アイドルとして、階段を登っている。
彼は、プロデューサーとして、階段を上る手助けをしている。
彼は私を担当しているプロデューサーではないけれど、偶に見かけるその姿がとても頼もしく見える。
無口な彼だけれど、仕事に打ち込むその背中を見ると、
――貴女は一人ではないです。
こう、言っているように感じるから。
彼を専有している訳ではないのに、まるで戦友のような関係。
……あら、今のは中々じゃない?
彼は、まだこちらに気付かない。
思えば、偶々会った時も挨拶はいつも私からしている気がする。
アイドルに笑顔を向けられて挨拶されているのに、彼はいつもの無表情。
これは、とても不公平な話だと思うの。
「……ふふっ、いつ気付くかしら」
抜き足、差し足、忍び足。
バレないように、見つからないように。
「……」
もしかしたら、私には忍者の才能があったのかもしれない。
だって、彼ったら私に全く気付かないんですもの。
「……」
彼にとって、アイドルの私の輝きは、目の前のノートパソコンの淡い光よりも弱いのか。
確かに、今はあまり気合の入っていない私服だし?
ああ、それならバッチリメイクをして、衣装を整えてたらもう気付いてたかもしれないわ。
今から取りに行ったら……さすがに彼も休憩時間が終わってしまうわね。
彼は、まだこちらに気付かない。
「……」
静かに椅子を引いて正面に座ってみても、彼の目はノートパソコンに釘付けのまま。
きっと頭の中は、彼が担当するアイドルの事でいっぱいなのだろう。
戦友としてとても喜ばしいけれど、まるで気付かれないのはちょっぴり腹立たしい。
「……」
けれど、彼はいつ私に気付くのかしら?
ここまで気付かないのなら、逆に、どこまで気付かないか試したくなってきたわ。
「……ふふっ」
っと、いけないいけない。
気付かれないようにしようとした途端、楽しくなって笑みが零れてしまった。
あまり大きな声は出なかったけれど、気付かれてはいないかしら?
「……」
けれど、彼は、まだこちらに気付かない。
全くもう、普段から笑顔しか言わない割に、目の前のアイドルの笑顔に気づかないなんて!
そんなに担当アイドル達は魅力的?
やっぱり、若い子の方が目を惹かれますか?
「……」
なんて、貴方はそんな事は微塵も考えず、仕事の事を考えているのよね。
趣味と実益を兼ねた、とってもお似合いの仕事ですこと。
……っと、ふふっ、それは私にも言えるわね。
「……」
けれど、やっぱりちょっと疲れた顔をしてるみたい。
いつもより……そう、目がキリッとしてるもの。
そんなキリッとした目で見たら、気の弱い子は胃がキリキリしちゃうと思いますよ。
……うーん、イマイチ。
「……」
やっぱり、彼は、まだこちらに気付かない。
「……」
私が目の前に座っていると気付いたら、貴方はどんな顔をするのかしら。
そして、どんな言葉をかけてくるのかしら。
私からは挨拶しませんからね?
今回は、貴方から声をかけてくる番って決めたんですから。
「……」
……けれど、嗚呼、こんなにゆっくりしたのは久しぶりかもしれないわ。
何もせず、ただ目の前を見つめるだけ。
それだけのに、こんなにも楽しくて、こんなにもワクワクしている。
偶には、こんな時間があっても悪くない。
「……」
けれど、もうすぐこの時間も終わり。
気付いたら大分時間が経っていたし、そろそろ彼も事務所に戻るだろう。
時間切れでの幕切れは、まあ、区切れとしてはありきたりよね。
「……」
それでも、彼は、まだこちらに気付かない。
「……」
残念だけど、今回の勝負は私の負けになりそう。
だって、私から挨拶をするのはいつもの事だもの。
――そう思った時、ピウと、少し強く風が吹いた。
肌寒くなってきたこの時期の風は、細身の私には少し堪える。
もう諦めて、時間切れになる前に、私から声をかけてしまお――
「楓?」
――う……!?
「は、はいっ!?」
突然彼の口から私の名前が出たので、素っ頓狂な声をあげてしまった。
これでは、アイドル失格だ。
「っ!? た、高垣さん!?」
……はい?
「あの、い、いつからそこに!?」
彼は非常に取り乱し、今にも椅子から転げ落ちそうになっている。
これは、一体どういう事?
それに、急に名前で呼んだと思ったら、次の瞬間には『高垣さん』に戻っている。
色々と納得出来ない。
「ええと、大分前からですけど……」
「それは……申し訳ありません、まるで気付きませんでした」
だったら、名前を呼ぶ前に取り乱して然るべきだろう。
まさか、嘘を……つけるタイプじゃないわね。
直接、聞いてみるしかなさそう。
「あの、どうして、突然名前で……?」
「ああ、それは……こちらが、先程の風で運ばれてきたので……」
そう言うと、彼は大きな手の平に何かを乗せて、こちらに見せてきた。
「ふふっ、そういう事でしたか」
「……」
彼の、右手で首筋を触るいつもの癖。
その反対の手の上には、風で運ばれてきたという、真っ赤に染まった楓の葉が乗っていた。
おわり
306 : 以下、名... - 2017/11/19 02:13:51.67 ens/y4Rdo 250/742次は下品なのを書きます
おやすみなさい
書きます
非武内Pです、申し訳ない
オレP「担当アイドルが漏らしたら?」
オレP「そりゃ当然、ゴクリといきますよ」
ちひろ「はい?」
オレP「あ、大きい方でした? だったら、パクリですね」
ちひろ「うん?」
オレP「アンダスタン?」
ちひろ「……アンダスタン」
ちひろ「……」
ちひろ「ヘルプミー! 早苗さーん!!」
・ ・ ・
早苗「……で、どうしてあたしは呼ばれたの?」
オレP「聞いてくださいよ早苗さん! ちひろさんがひどいんです!」
ちひろ「聞かない方がいいです早苗さん! さっさとしょっぴいてください!」
早苗「え、ええと……!?」
オレP「ちひろさんが、オレのアイドルへの愛情をわかってくれないんです!」
ちひろ「この男、アイドルへの愛情と劣情の区別もつかないんです!」
早苗「そ、そうなの……?」
早苗「と、とにかく、落ち着いて? ね?」
オレP・ちひろ「……」
早苗「まず、事の発端は何だったの?」
オレP「いえね? アイドルが漏らしたら、飲むか食べるかするって言ったら」
早苗「はい、ストップ。逮捕」
オレP「!? キャントストップ!」
ちひろ「私、プロデューサーさんの事は一刻も早く忘れますね」
オレP「ここで終わったら、オレはちひろさんを一生忘れませんよ!」
早苗「っていうか、何なのその切り出しは!」
オレP「早苗さん、オレだってわかってるんですよ」
早苗「? 何がよ」
オレP「アイドルだって、オシッコもするしウンコもする」
早苗「……そうね」
オレP「それがね、突発的に、何の予兆もなく襲ってきた時」
早苗「……」
オレP「そんなアクシデントに対応するため、オレ達プロデューサーがいるんです」
早苗「は……はぁ」
オレP「じゃあね、仮にですよ」
早苗「仮に、何なの?」
オレP「早苗さんが漏らしたとします」
ちひろ「早苗さん、問答無用でしょっぴいて良いですよ」
早苗「抵抗する暇すら与えないわ」
オレP「仮にですってば、仮に!」
オレP「大事なライブ前、とでもしましょうか」
早苗「あたしゃ、大事なライブ前にそんな事態になるのかい」
オレP「常に最悪の事態を想定しておくことが大切なんです」
早苗「……まあ良いわ、供述を続けて」
オレP「あー、セクシー、あー、ギルティ」クネクネッ
早苗「? 何、その動き」
オレP「あたしは早苗、28歳。なんだかお腹が急にバッキュンしてきたわ」クネクネッ
早苗「ぶっとばすわよ!?」
・ ・ ・
オレP「……すみませんでした」ボロッ
早苗「今度やったら、本当にただじゃすまないからね」
オレP「……とりあえず、話を戻しますね」
ちひろ「メンタル強いですね」
オレP「褒めても何も出ませんよ」
早苗「……」
オレP「大事なライブ前、急にお腹がわっしょいしたとします」
早苗「あん?」
オレP「大事なライブ前、急にお腹が痛くなったとします」
オレP「はい、そんな時どうしますか!」
早苗「そりゃ……トイレに行くわよ」
オレP「ブッブー! そんな時間はありませーん!」
早苗「腹立つリアクションしてくれんじゃない」
オレP「腹痛い時の話をしてますよ?」
ちひろ「片腹痛いみたいな顔しないでください」
オレP「そんな早苗さんのピンチに、プロデューサーですよ」
早苗「はぁ?」
オレP「ウォシュレットのきもちになるですよ」
ちひろ「ダッシュで仁奈ちゃんに謝ってきてください!」
オレP「いやいやいや……えっ?」
早苗「そろそろ腹に据えかねるわよ?」
オレP「……すみませんでした」
オレP「いや、でもね? そうなった時を考えてみてくださいって」
早苗・ちひろ「はぁ?」
オレP「ライブ前の大事な時ですよ?」
早苗「はぁ」
オレP「アイドルの右手は、マイクを掴むためにある」
オレP「アイドルの左手は、ファンの声援に応えるためにある」
オレP「アイドルの口は、美しい歌を紡ぎ出すためにある」
早苗「……」
オレP「だったら、汚いものはオレが引き受けるしか無いじゃないですか!」
ちひろ「あ、汚いっていう認識は持ってたんですね」
オレP「当たり前でしょう? オレを何だと思ってるんですか」
早苗「でも……だったらなんで食べるって結論になるのよ」
オレP「大事なライブ前にアイドルが粗相とか、シャレにならないですから」
オレP「証拠隠滅ってやつですよ、フフ」
早苗「ドヤ顔でうまく返した感じ出さないでくれる?」
ちひろ「手を使えば良いじゃないですか」
オレP「オレの右手は、アイドルを舞台に導くためにあります」
オレP「そしてオレの左手は、アイドルのチャンスを掴むために」
オレP「……ほら、両手なんてとっくにふさがってるんですよ」ヤレヤレ
ちひろ「やっぱり両手空いてるじゃないですか!」
オレP「だったらもう、口を使うしか無いでしょう?」
オレP「オレの口がどんなに汚れたって良い」
オレP「その分、アイドル達が綺麗な歌を歌えるなら、それで良い」
早苗「狂気!」
オレP「プロデューサーなら、誰だってそう思ってます」
オレP「プロデューサーなら、誰だってゴクリといくしパクリといきます」
ちひろ「他のプロデューサーさんを巻き込まないでくださいよ!」
オレP「早苗さん」
早苗「な、何よ」
オレP「オレは、もしも貴女がライブ前にてんやわんやしたら、絶対に助けます」
早苗「安心して、その機会は絶対に来ないから」
オレP「貴女のお尻に顔をうずめ、渦の中心核をちゃんと綺麗にします」
早苗「来ないって言ってんでしょうが!」
オレP「何故なら……オレが、プロデューサーだからです」
ちひろ「全然いい話になってませんからね!?」
オレP「わかっていただけましたか? オレの、アイドルへの愛情が」
ちひろ「早苗さん、脱出不可能な牢獄に入れることは?」
早苗「難しいかもしれないけど、世のため人のため頑張るわ」
オレP「ヘイヘイ、お二人さん? 話聞いてました?」
ちひろ「ええ、聞いてましたよ」
早苗「イヤという程、君のアイドルへの愛情はわかったわ」
オレP「そいつは良かった! それで、感想は?」
ちひろ・早苗「……」
ちひろ・早苗「クソ食らえよ」
おわり
武内P「カリスマが行方不明?」
凛「ねえ、それって今更だと思うんだけど」
美嘉「ちょっと凛! 今回はマジでヤバいんだって!」
武内P「あの……仰っている意味が、よくわからないのですが」
美嘉「ほら……アタシって、カリスマJKとしてやってるワケじゃない?」
武内P「そうですね。とても魅力的だと思います」
美嘉「そ、そう?///アンタもそう思う?///」
凛「照れてないで話を進めて」
美嘉「と、とにかく! 本当に今回のはヤバいの!」
武内P「あの……私には、普段の城ヶ崎さんと変わらない様に見えますが」
凛「うん。私にもそう見える」
美嘉「ああもう! ちょっとそこで見てて!」
武内P・凛「?」
美嘉「ヤッホー! チョーイケてるってカンジ!」
武内P・凛「……」
美嘉「ほら、ヤバいでしょ!?」
武内P「あの……」
凛「どこが?」
美嘉「はぁ!? マジでわかんないの!?」
武内P「……申し訳ありません」
凛「大丈夫大丈夫、美嘉はいつもイケてるよ」
美嘉「ちょっと凛! 適当に返事しない!」
凛「……」
美嘉「いい? もう一回いくからね?」
美嘉「アタシってば、カ・リ・ス・マ!」
美嘉「……ほら! ね!?」
凛「そうだね、カリスマだね」
美嘉「凛!? 面倒臭がらないで!?」
武内P「あの……もしかしたら、なのですが」
美嘉「!」
凛「? 何か違いがわかったの?」
武内P「その……いつも言葉の中に感じられる黒い星が感じられません」
美嘉「そう! それ! まさにソレなの!」
凛「ふーん」
美嘉「おーい! もうちょっと興味持って!?」
武内P「そうですね……確かに、これは非常にまずいかもしれません」
美嘉「でしょ!? アタシからカリスマを取ったら、JKアイドルになっちゃう!」
凛「私は、あの黒い星がカリスマだったのかと思ってるよ」
武内P「JKアイドルは……はい、無数に所属していますから」
美嘉「そう、そこなんだよね……」
凛「……そんなに深刻になること?」
武内P「確かに、普通のアイドルだったら問題は無いかも知れません」
美嘉「でもほら……アタシには、妹の莉嘉がいるじゃん?」
凛「ああ、なんとなくわかったよ」
武内P「城ヶ崎莉嘉さんは、既にカリスマJCとして認識されていますからね」
美嘉「その姉のアタシがカリスマを失ったら……!」
凛「カリスマJCの姉のカリスマが無い方、って呼ばれるのかな」
美嘉「イヤアアア! そんなの耐えられない!」
武内P「じょ、城ヶ崎さん! 落ち着いてください!」
美嘉「……ゴメン、こんな事してる場合じゃないよね」
武内P「……ひとまず、白い星で代用してはどうでしょうか?」
美嘉「……ううん、今まで黒い星しか使ってこなかったからダメみたいなの」
武内P「そう……ですか」
美嘉「……」
凛「いや、あのさ」
美嘉「? 凛、どうしたの?」
凛「どうしてそこまで深刻なのかな、と思って」
武内P「……城ヶ崎さんがこのままカリスマ――黒い星を使えない場合……」
美嘉「……引退、するしかないかな、って……」
凛「……」
凛「えっ?」
凛「ま、待って!? そんなに!?」
美嘉「だから、ずっとヤバいって言ってたんだよ!」
武内P「引退とまではいかなくても、仕事量は十分の一に落ちるでしょうね……」
凛「じゅ、十分の一……!?」
武内P・美嘉「……」
凛「な、何か黒い星――カリスマの行方に心当たりはないの?」
美嘉「朝起きたら消えてたんだよ……寝る前まではあったのに」
凛「……」
美嘉「アハハ……アタシ、元々カリスマってガラじゃなかったのかもね!」
凛「み、美嘉……?」
美嘉「実はさ、アタシの黒い星――カリスマって、元からあったワケじゃないんだ」
武内P「元からあった訳ではない……?」
美嘉「……そう、小さい頃にね、星にお願いしたの」
凛「星にお願い?」
美嘉「うん……名前も知らない、北斗七星の横に光ってた星に」
武内P「……」
武内P「!?」
美嘉「アタシもね、別に星に詳しいわけじゃないんだよ」
武内P「あの……」
美嘉「だけど、北斗七星は知ってたんだ。名前、なんだかカッコイーじゃん?」
凛「それは……うん、わかる気がする」
美嘉「必死で莉嘉と一緒に探して、アタシだけ横にあった星を見つけたの」
武内P「……やはり……!?」
美嘉「その星にお願いした次の日の朝から、アタシは黒い星がつくようになってた」
凛「……なんだか素敵だね」
武内P「……」
武内P「ジェネレーションギャップで知らない……のでしょうか」ボソボソ
美嘉「……だから、もしかしたらもう黒い星はどこにも無いのかもしれない」
凛「まだ、わからないよ」
美嘉「ううん、魔法が解けて……天に還る時が来たのかも」
武内P「!?」
武内P「城ヶ崎さん!」
ガシッ!
美嘉「な、何!?」
武内P「良いですか、決して諦めてはいけません!」
美嘉「ちょ、ちょっと……痛いって……」
武内P「っ! す、すみません」
武内P「城ヶ崎さん」
美嘉「な、何?」
武内P「私は、貴女をとても素晴らしいアイドルだと思います」
美嘉「う、うん」
武内P「そして、私の知る貴女はそんなに簡単に諦める人ではありません」
武内P「……必ず探し出しましょう……カリスマ――いえ、黒い星を」
美嘉「……」
武内P「私も……微力ながらお手伝いします」
美嘉「……うん、ありがと」グスッ
凛「当然、私も手伝うよ。友達のためだもん」
美嘉「凛……えへへ、サンキュ」
・ ・ ・
凛「……まあ、とは言ってみたものの」
武内P「……何と言いますか」
美嘉「探し方すらわからないしねぇ」
武内P・凛・美嘉「……」
凛「もうさ、試しに違うのをつけてみれば?」
美嘉「違うのって……」
美嘉「こんなのとか♦イイカンジ?♠」
武内P「待ってください! それは危険すぎます!」
美嘉「そ、そう? ならやめとくけど……」
美嘉「……もう、今日は探すのやめとくよ」
武内P「城ヶ崎さん……!?」
美嘉「もー! アンタはアタシの担当じゃないんだから!」
武内P「ですが……!」
美嘉「仕事を放ってまで、アタシの黒い星探してちゃダメでしょ!」
武内P「しかし……命がかかってるかもしれませんから……」
美嘉「命って……アイドル生命の事?」
凛「大げさだよ、プロデューサー」
武内P「……」
美嘉「そっ、大げさなのよアンタは!」
武内P「城ヶ崎さん……」
美嘉「もしも黒い星が見つからなくて、カリスマがなくなったとしても、アタシはアタシ」
美嘉「……でしょ?」
凛「美嘉……」
美嘉「だから、アンタも見てなさいよ! これからのアタシを!」
武内P「……」
美嘉「元カリスマJK――城ヶ崎★美嘉の活躍を!」
武内P・凛「!?」
美嘉「? 何よ、その顔」
凛「へ、変な所に挟まってたー!?」
・ ・ ・
武内P・美嘉・凛「……」
武内P「少し……驚きすぎましたね」
美嘉「驚いた拍子にどっか飛んでったって……そんなのアリ?」
凛「ねえ、あれがカリスマだとしたら、美嘉のカリスマ剥がれやすすぎない?」
美嘉「ひどくない!?」
武内P「しかし……全く手がかりが無い状態に逆戻りですね」
美嘉・凛「……」
武内P「一刻も早く見つけなければ……」
コンコココンコン、コンコン!
凛「このノックの仕方……未央だろうね」
ガチャッ!
未央「おっはよー!☆☆★ なんだか今日は絶好調の未央ちゃんだよ!☆☆★」
武内P・美嘉・凛「!?」
未央「あれ?☆☆★ どうしたの、変な顔して?☆☆★」
美嘉「あ、あああ、アタシのカリスマ!」
武内P「いえ、その……それに加えて……!?」
凛「他の二つはどこから持ってきたの!?」
・ ・ ・
武内P「……結局、社内の遺失物係に届けるしかありませんでしたね」
凛「白い星を使うアイドルは多いから……」
美嘉「まあでも、アタシのカリスマは戻ったじゃん★」
武内P「……そうですね、本当に、良かったと思います」
美嘉「チョーイケてるっしょ★」
未央「ふーん。まあ、悪くないかな」
凛「!?」
未央「どうしたの?」
凛「ねえ……未央?」
未央「ほら、行くよ。蒼い風が、駆け抜けるように!」
凛「もう良いよ!」
おわり
武内P「三村さん、間食をやめましょう」
武内P「以前、それで問題が起こりましたが……もう限界のようです」
かな子「……」
武内P「カロリー計算云々の次元を越えてしまっている、私はそう考えます」
かな子「……」
ガサゴソ…
かな子「マシュマロ美味しい~」
武内P「話を聞いていますか、三村さん?」
武内P「マシュマロを置いてください」
かな子「……」モタモタ
武内P「名残惜しそうにしないでください」
かな子「……」
武内P「はい、ありがとうございます」
かな子「……」
スッ…
武内P「置いてすぐに取ろうとしないでください」
武内P「三村さん、私は以前カロリー計算とレッスンの内容で対応すると言いましたね」
かな子「……」コクリ
武内P「結果的にそれは成功し、一時期三村さんの体重は減っていました」
かな子「……」コクリ
武内P「しかし、減少していった体重は元に戻り、一向に減る気配が無くなりました」
かな子「……」
武内P「三村さん、こちらを御覧ください」
かな子「……」
武内P「これが今の貴女のレッスン――いえ、最早トレーニング内容です」
かな子「……」
武内P「一つお聞きしますが、今、貴女はベンチプレスで何キロを?」
かな子「120」
武内P「お菓子を食べるためにパワーキャラになるなど、聞いたことがありません」
武内P「確かに、筋肉を鍛えれば基礎代謝が上がります」
かな子「……」
武内P「ですが、どう考えても鍛えすぎです」
かな子「……」
武内P「トレーナーの皆さんが口を揃えて言っていました」
かな子「……」
武内P「『あの子の肉体には神が宿っている』と」
かな子「えへへ♪」
武内P「あまり、おかしな物を宿さないでください」
かな子「お菓子?」
武内P「違います」
武内P「見た目が変わっていないのが不思議でなりません」
かな子「……」
武内P「その……失礼ですが、二の腕を触っても宜しいでしょうか?」
かな子「はい、良いですよ」
武内P「ありがとうございます。では、失礼します」
ふにふに
かな子「……」
武内P「……少しふっくらしている、普通の腕ですね」
武内P「では、少し力を入れてみていただけますか?」
かな子「わかりました」
武内P「よろしくお願いします」
かな子「えいっ!」
メキメキィッ!
武内P「……突然、腕が丸太にすり替わったかと思いました」
かな子「お菓子作りって、結構力を使うんですよー」
武内P「お菓子どころか、色々粉々になりますよ」
武内P「……ありがとうございました」
かな子「……」
武内P「三村さん、やはり間食は控えましょう」
かな子「……」
スッ…
武内P「話の途中でマシュマロに手を伸ばさないでください」
かな子「……」
武内P「間食を控え、トレーニングをレッスンにしていきましょう」
かな子「……」
武内P「確かに、現状でも問題が無いと不満に思うかもしれません」
かな子「……」
武内P「ですが、今の三村さんはアイドルの皮を被った別の何かになろうとしています」
かな子「!?」
武内P「……お気づきいただけた様で幸いです」
武内P「事務所内にも、小さくですが波紋が広がっています」
かな子「……」
武内P「『地面に根が生えているかのように、微動だにしなかった』」
かな子「……」
武内P「これは、日野さんからの証言です」
かな子「体幹も、鍛えてます」
武内P「はい、どちらもアイドルの発言とは少し違いますね」
武内P「緒方さんからも、証言があがっています」
かな子「!?」
武内P「『一緒に四葉のクローバーを探していたら、手が緑色の汁まみれだった』」
かな子「……」
武内P「力を制御できず、葉をすりつぶしてしまっているじゃないですか」
かな子「……」
武内P「双葉さんからも、証言があがっています」
かな子「!?」
武内P「『ハイタッチしたら5m吹っ飛んだ』」
かな子「……」
スッ…
武内P「心を落ち着けるためにマシュマロを食べようとしないでください」
武内P「三村さん、もう、選択肢は二つに一つです」
かな子「……」
武内P「お菓子を我慢し、アイドルの道を進むのか」
かな子「……」
武内P「お菓子を我慢せず、力を追い求めるのか」
かな子「……」
武内P「決めましょう、三村さん」
かな子「私は……」
武内P「……」
かな子「これからも、アイドルを続けていきたいです」
武内P「……」
かな子「だけど……お菓子を我慢出来るかわからないんです」
武内P「……」
かな子「もしも私がお菓子に手を出しそうになった時、止めて貰えますか?」
スッ…
武内P「早速手が出ていますよ」
武内P「三村さん、最早それは禁断症状かと」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
武内P「!? 止まってください!」
かな子「最後にこれだけ~」
武内P「ダイエットに失敗する人の常套句じゃないですか!」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
武内P「くっ……!」
ガシッ!
かな子「マシュマロ食べた~い」
武内P「なんてパワーだ……!」
武内P「三村さん! 正気に戻ってください!」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
武内P「止まらない……!」
かな子「うふふっ♪」
武内P「くっ……!」
武内P「――ショコラ・ティアラ!ショコラ・ティアラ!」
かな子「……Ready Ready Step!」
武内P「……止まった……!」
・ ・ ・
かな子「……止めてくれて、ありがとうございました」
武内P「いえ、私は手助けをしただけです」
かな子「えっ?」
武内P「止まったのは貴女の、アイドルを続けたいという意思です」
かな子「……」
武内P「しかし、間食をやめるというのは難しそうですね」
かな子「……」
武内P「そうですね……では、今後も間食は続ける方向でいきましょう」
かな子「!」
武内P「しかし、食べるお菓子はこちらで用意した物になります」
かな子「……」
武内P「お菓子作りも、味見をする危険性が大きいので全面的に禁止に」
かな子「!?」
武内P「こちらは……そうですね、日曜大工等の、他のモノ作りで対応していきましょう」
かな子「……」
武内P「三村さん、貴女はとても魅力的なアイドルです」
かな子「……」
武内P「しかし、今の貴女はパワーオブパワー、筋肉の塊です」
かな子「……」
武内P「ですが、貴女ならばきっと昔の自分を取り戻せる」
武内P「……私は、そう確信しています」
かな子「……」
スッ…
武内P「マシュマロに手を伸ばさないでください」
・ ・ ・
武内P「今回は、私も驚きました」
かな子「プロデューサーさんのおかげで、すっかり元通りです♪」
武内P「まさか、三日足らずで元通りとは……」
かな子「うふふっ、頑張りました♪」
武内P「……」
かな子「それで……この前のマシュマロって、まだ残ってますか?」
武内P「残っていますが……あの、まさかそのために?」
かな子「マシュマロ食べた~い♪」
武内P「いえ、ですが……」
かな子「美味しいから大丈夫ですよ~」
おわり
379 : 以下、名... - 2017/11/20 21:19:02.16 Pfdjp9MCo 310/742一服したら>>354書きます
354 : 以下、名... - 2017/11/20 01:18:53.76 ar8Ow7Mqo 311/742乙
ネタふりですけど
闇落ちした楓さんがマスコミやらテレビやら、ありとあらゆる手段を使ってプロデューサーの外堀を埋め、自分と身を固めさせる話とか読んでみたいですね
私は今、怒っている。
「この度は誤解を招く行動をしてしまい、ファンの皆様や関係者の方達には、大変ご迷惑をおかけしました」
それは、パシャリパシャリと私と彼に降り注ぐシャッターの光と音にではない。
今日は休日の予定だったと言うのに、この様な記者会見の場に出なければならなくなったからでも、
ましてや、このような場でもいつもと変わらない無表情の彼にでもない。
「高垣さんとは、どういったご関係でしょうか!?」
「私は彼女が所属する事務所のプロデューサーというだけであり、特別な関係はありません」
勿論、今の彼の答えはわかっていたもので、それに関しての怒りもない。
と言うか、今の質問が私に飛んできたものだとしても、私は全く同じ答えを返すだろう。
「ですが、この写真を見る限りでは、とても親しそうに感じるのですが!?」
そう言った記者さんの手には、ここ数日世間を騒がせている週刊誌の、あるページが開かれている。
載せられている写真に写っているのは、彼の腕にしがみついている私。
ハッキリ言ってしまうと、酔っていて全然覚えてないのよね。
だから、私は今、怒っている。
「高垣さんは、その時泥酔しており、意識的にやった事ではないと言っています」
その通りなんです!
確かに、酔っていたとは言え私の行動はアイドルとして軽率だったかもしれない。
けれど、酔ってふらついた時に、異性とは言え腕にしがみつく事までダメなのかしら。
そのまま転んで怪我をすれば良かったとでも言うつもり?
「貴方は、何故その時その場に居たのでしょうか!?」
「彼女と一緒に居た同僚の方に連絡を受け、自宅まで送り届けるようにと頼まれたからです」
「泥酔した女性をというのは、問題があるのでは!?」
「はい、確かにおっしゃる通りだと思います」
強くなるフラッシュとシャッター音。
「ですが――、」
彼は言葉を少し区切り、ハッキリと、
「――私はプロデューサーであり、アイドルに手をだす事は絶対に有り得ません」
そう、告げた。
会場中が息を呑むように一瞬静まり返ったのは、彼の気迫か、はたまた容姿によるものか。
それは、私にもわからない。
だからこそ、私は今、怒っている。
「彼女の周囲の方達も、それを理解した上で、私に高垣さんを送る様に頼んだのだと思います」
信頼出来る人間に任せる、というのは正しい判断ではないか。
だからええと……うん、瑞樹さんと早苗さんが一緒に呑んでたのよね?
だから、二人は悪くないわ。
「ですが……それは私と、当人達にしかわからない事であり、軽率な行動でした」
悪かったのは、タイミングだけ。
誰も、何も悪いことなんてしてないもの!
なのに、
「なので、今回の件の釈明と、今後の反省のために……この場を設けさせて頂きました」
嗚呼、なのに!
どうして禁酒しなければいけないの!
私の怒りは、留まることを知らない。
「それでは、高垣さんに質問です!」
「はい、何でしょうか?」
少し飲みすぎて、たまたま近くに居た男性にしがみついただけなのよ。
それだけのに、大好きなお酒を禁止された上に、こんな場に引っ張り出されて。
「今回の件に関して、どうお考えでしょうか!?」
「そうですね……私も、とてもビックリしています」
週刊誌が発売されて、すぐに連絡があった。
そこからずっとお酒を飲むのを禁止されて、今までの行動を注意されて。
挙句の果てには、アイドルなんだから普段の言動にも注意しなさいだなんて!
「記憶をなくす程飲んだなんて……本当に久々でしたから」
そう言ったら、何故か会場中がどう反応したものかと静まり返った。
……どうしてかしら?
こんなに怒るのだって、本当に久々。
「だから、きっと楽しいお酒だったんでしょうね」
だからこそ、その結果がこれではあまりにもあんまりではないか。
悲しみを通り越して、怒りを覚えるのも当然の権利。
「し、しかし! 今回の行動はファンを裏切る事になるのでは!?」
「それは有り得ません」
断じて言える。
「彼も言った通り、今回の件は転ばないようにしがみついただけです」
私は、ファンを絶対に裏切らない。
「相手がどうこうの話ではなく、ただ、支えになるものに手を伸ばしただけ」
それに、
「それに、私のファンの方達は、私がお酒が大好きだと知ってくれているでしょうから」
だから、今回の件では私のファンの方達はまるで騒いでいない。
面白おかしく騒ぎたい人達の声で禁酒しなければいけないなんて、アイドルの道は厳しい。
前に怒った時は、どうだったかしら。
「……では、二人の間に特別な感情は一切無い、と?」
随分と散発的になったフラッシュとシャッター音。
会見の時間も長いものではなく、この質問が最後になるだろう。
それもそのはず。
「はい。私はプロデューサーであり、彼女はアイドルですから」
仕事人間である彼と私の間に、そんな甘い感情があるはずもないのだから。
お互いがそう思っていると、少なくとも私は信じている。
それがこんな事になってしまうだなんて、本当に怒りが込み上げて仕方ない!
「……」
――彼の、プロデュースに対する情熱を馬鹿にしないで!
――私の、アイドルに対する想いを甘く見ないで!
「うっ……ぐすっ……!」
……思い出した。
私は、怒ると泣いてしまうのだった。
まずい!
まずい、まずい、まずい、まずい!
「っ……!」
雪崩のように降り注ぐ光と音から逃げるように下を向く。
今のこの私の顔を撮られる訳にはいかない。
涙が止まったとしても、メイクを崩した表情を見せる訳にはいかない。
「うっ……ふうぅ……!」
あともう少し、ほんのちょっとで終わったのに。
皆、絶対に誤解してるわ。
この涙の正体が怒り涙だなんて、誰が信じてくれるっていうの。
けれど駄目、止まらない。
「……うぅ……っぐすっ……!」
顔をこすらないように握りしめた手は真っ白に。
会見のために用意された衣装には、怒りの雫の跡がどんどん増えていく。
まるで止まらない。
怒りも、涙も、シャッターも、何一つ。
「……っく……ひっく……!」
私の名前を呼ぶ声が、そこかしこから聞こえてくる。
アイドルとしてそれに答えなければならないのに、出来ない。
だって、今の私の表情はとても歪んでいて、見せられたものではないから。
だから、早く、早く――
「高垣さん」
「……ひぐっ……うっ……!」
とても、とても近くから彼の声が聞こえる。
顔を上げて確認は出来ない。
だけど、この低く響いてくる声は間違いなく彼のものだ。
「こちらを使ってください」
「……っく……ふぐぅ……!」
俯いた顔と、涙の跡を遮るように差し出された、青いハンカチ。
きっと彼はこれで涙を拭けと言っているのだろうけど、今の私にそれは出来ない。
だって、手が震えてしまってるんですもの。
禁酒なんてされてなければ、手が震えるなんてなかったかもしれないのに!
駄々をこねるように、私は首を横に振った。
「……」
「うぅ……ふぅっ……!」
気配で、彼がハンカチを差し出した逆の手を首筋にやったのがわかる。
きっと、彼は今とても困っているのだろう。
けれど、しょうがないじゃない! 私だって、出来ないものは出来ないの!
「高垣さん――目元、失礼します」
「う……?」
ゆっくりと、青いハンカチが顔に近づけられ、優しく、そっと目に当てられた。
それだけ……そう、本当にそれだけなのに。
「……」
「……」
私の涙は、怒りは、まるでハンカチに吸い込まれるように、嘘の様に止まった。
優しく添えられたハンカチは柔らかく、これならメイクの崩れも最小限で済むだろう。
柔軟剤、使ってるのかしら。
「……」
もう、涙は止まった。
あとは顔を上げるだけだけど、今は、それがとても怖い。
こんな会見の場で突然泣き出した女に向けられる視線はどんなものだろうか?
想像するだけで足がすくみそうになるが、逃げることは許されない。
プロデューサーの彼が涙を止めてくれたのだ。
ここからは、アイドルである、私の仕事だ。
「……」
やさしく涙を受け止めてくれていたハンカチから、彼の手から離れ顔をゆっくりあげる。
降り注ぐシャッターの光と音はすさまじかったが、まずはやることがある。
助けてくれた彼に、お礼を言わなくちゃ。
「……あびがどうございま゙ず」
「……」
その顔は何ですか?
あれだけ泣いたらね、鼻水だって出ますよ!
「……失礼します」
「……ずずっ!」
今の、呆れるような顔以上に、何か失礼な事をしようというの?
私だってね、怒る時は怒るんですからね!
……泣いちゃいますけど。
「……」
「っ!?」
彼のとった行動は、私がまるで予想していないもの。
あろう事か、この男は、ハンカチを私の鼻に当てて、
「ちーん」
こう、言った。
25歳にもなって、アイドルなのに、衆人環視の中、鼻をかませる姿を晒せと!?
「……」
「……ずずっ」
……良いですよ、覚悟してください。
アイドルだって、全部が全部綺麗なものじゃないんですから!
会場に、プピーと、私の鼻をかむ音が響き渡った。
……マイクが音を拾うなんて思ってなかったわ。
「……」
「……」
彼は、無言で私の状態をチェックしている。
泣いている私にハンカチを差し出したのも、プロデューサーとしての性だったのだろう。
けれど、今気になっているのはポケットにしまったハンカチの処遇です。
代わりのものを買ってお渡しするので捨ててください……その、流石に恥ずかしいので。
「……」
チェックが終わったのか、彼は膝立ちの状態から立ち上がり、中腰になった。
泣いてしまったのは私の自業自得だけど、鼻をかむ必要は無かったと思うの。
だから、そこに関しては文句を言っておかなくちゃ。
「……柔軟剤」
「? 高垣さん?」
私のつぶやきに、彼の動きが止まる。
「柔軟剤入りのハンカチを使う、自由なんざ要りません」
「……」
あっ、違う。
前から考えてた駄洒落を言えるタイミングだと思って、間違えちゃった。
「……」
「……ふふっ」
無表情な彼が呆気にとられているのがおかしくて。
あんなにも荒れ狂っていた私の心が穏やかで。
自然と、笑みが零れた。
「……くくっ! 何故、今それを……っくく!」
「ふふっ……だ、だって、チャンスかなと思って……ふふっ!」
ああ、おかしい!
駄洒落が会心の出来だったからか、彼も声を上げて笑っている。
こんな姿は初めて見たし、それがまたおかしくて笑いが止まらない。
「ふふっ……うふふっ」
「……」
笑い続ける私を見て、彼は一言、こう言った。
「良い、笑顔です」
降り注ぐシャッター音が、まるで拍手のように感じる。
気の所為だろうか、記者の方達も皆笑っているように見える。
だったら、それに笑顔で応えなければ。
「はい――私は、アイドルですから」
・ ・ ・
結論から言えば、私が禁酒される事は無かった。
「高垣さん、しっかり歩いてください」
「ステップの練習で~す♪」
会見の時のやり取りは、テレビや新聞だけでなく、インターネットの動画サイトにもアップされた。
その反響は、当初のものとはまるで違う、とても大きなもの。
海外のニュースでも取り上げられ、一時期は彼もその対応に追われていた程だ。
「ほら、貴方も一緒に踊りましょう?」
「……」
いつもの、右手を首筋にやる彼の癖。
そして、彼は私の手を取った。
「あら、付き合ってくれるだなんて、『王子様』は今日は酔ってるんですね?」
「……その呼び方は、ご勘弁を」
反響はとても大きかった。
それも、とても好意的にだ。
今の彼は、『鼻かみ王子』として、世間に認識されている。
「うふふっ♪ やっぱり、お酒は最高ですね♪」
「……程々にしてくださいね」
ステップからのターン。
曲も歌もない、気の向くまま、自由に。
今日のお酒は、とても楽しい。
「お二人さん! いつ結婚するんですかー!」
突然声がかけられたが、それがどこからかはわからない。
わからないから、大声で答える。
「「しませーん!」」
図らずも、彼と返事がかぶった。
それがまたおかしくて、顔を見合わせて笑い合う。
私はアイドル。
彼はプロデューサー。
他の誰が何と言おうと、私達の間にあるのは恋や愛という甘い感情ではない。
私達がそう言うと……皆口を揃えて「頑固」と言うか、閉口してしまうのだけれど。
私達の関係を一言で表すなら……ふふっ、今は飲み友達かしら♪
(ED曲:『LIVE PARTY!!』)
おわり
397 : 以下、名... - 2017/11/21 00:47:21.18 eWdqW08oo 327/742次は下品なの書きます
おやすみなさい
武内P「乳首がキノコになっていました」
武内P「星輝子さんに相談した所、一日で治るそうです」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「しかし、この様な状態では現場入りする事は難しいと判断しました」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「なので今日は、皆さんには各々行動していただく形になります」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「大変申し訳ありませんが、今日も一日よろしくお願いします」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「あの……皆さん?」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「すみません……あの、あまり見ないで頂けますか……?」ピコンッ
美波「無理です」
アイドル達「……」ウンウン
武内P「……」ピコンッ
武内P「ですが、キノコになっているとは言え、実際は乳首ですので」ピコンッ
みりあ「ねぇねぇ、プロデューサー」
武内P「はい、どうされましたか?」ピコンッ
みりあ「えへへ、ちょっと触ってみてもいい?」
武内P「!? い、いけません! アイドルが男性の乳首を服越しとは言え!」ピコンッ
みりあ「でも、今はキノコなんでしょ? ねぇねぇ、お願い!」
武内P「いえ、しかし……!」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
みりあ「お願いお願い! でないと、気になってお仕事にならないよー!」
武内P「そこまで……ですか?」ピコンッ
みりあ「うん! そうなったら、プロデューサーのせいだよ!」
武内P「それは……困りましたね」ピコピコンッ
アイドル達「……動いた……?」
武内P「? 皆さん、どうされましたか?」ピコピコピコンッ
アイドル達「……!?」
みりあ「ねぇねぇ、お願いプロデューサー!」
武内P「……仕方ありません、少しだけですよ」ピコンッ
みりあ「やったー♪」
武内P「……」ピコンッ
アイドル達「……」
みりあ「えへへ……えいっ♪」
つんっ!
武内P「うーふっ!」ピコピコピコピコンッ!
アイドル達「!?」
武内P「あ、赤城さん!?」ピコピコンッ
みりあ「えへへ、ありがとプロデューサー♪」
武内P「……お役に立てたようでしたら、幸いです」ピコンッ
みりあ「それじゃあ、お仕事頑張ってくるね―!」
武内P「はい、頑張ってください」ピコンッ
みりあ「行こっ、莉嘉ちゃん!」
莉嘉「あ、アタシも触ってみた……あっ、みりあちゃん待ってよ~!」
ガチャッ、バタンッ
武内P「……良い、笑顔です」ピコピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「……さて、それでは皆さんも……」ピコンッ
アイドル達「……」ジーッ
武内P「皆さん……?」ピコンッ
アーニャ「プロデューサー」
武内P「? どうされましたか、アナスタシアさん?」ピコンッ
アーニャ「私も、アー、ツンツンしたい、です」
武内P「!?」ピコピコンッ
美波「あ……アーニャちゃん?」
アイドル達「……」ジーッ
美波「駄目よアーニャちゃん! 今はキノコとはいえ、乳首なのよ!?」
アーニャ「……美波」
未央「でも、今はキノコだよね」
みく「みく、キノコはヘルシーで良いと思うにゃ!」
凛「ふーん。この時期のキノコ狩りも、悪くないかな」
蘭子「ふっふっふ! 今が収穫の刻!」
武内P「まさか……年が若い方達がキノコに魅入られている!?」
武内P「い、いけません皆さん! 落ち着いてください!」ピコピコンッ!
アーニャ「ウラー!」
武内P「くっ!」ピコンッ!
未央「ちょっとだけ! 先っぽだけだから!」
武内P「いけません!」ピコンッ!
凛「逃げないでよ!」
武内P「逃げますよ!」ピコピコンッ!
蘭子「闇に呑まれよ!」
ヒュッ!
武内P「傘で突いたら本当に大変な事になりますから!」ピコピコピコピコンッ!
美波「いけない……皆、我を忘れてる……!」
武内P「冷静に! どうか冷静になってください!」ピコピコンッ!
みく「――Pチャン、背中ががら空きにゃ」
武内P「っ!? しまっ――」ピコンッ!
みく「今日のみくはイタズラネコちゃんにゃあああああ!」
くにくにくにくにっ!
武内P「や、やめ、んんんぬふぅ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
美波「あれは……あの、少女漫画の背景みたいなのは何……?」
智絵里「……私も、触りたいです」フラフラッ
美波「智絵里ちゃん!? まさか、あれはキノコの胞子!?」
武内P「い、いけませんんんああ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
未央「あーっ! みくにゃんだけずるい!」
凛「独り占めは良くないよ」
蘭子「共に宴を開こうぞ!」
アーニャ「ダヴァイ♪ ダヴァイ♪」
みく「あっ、ちょっと! 皆引っ張ったら――」
武内P「くっ――!」ピコピコンッ!
みく「もう! 逃げられちゃったでしょー!」
未央「ごめんごめん! でも、また捕まえればいいじゃん!」
凛「未央にしては良い事言うね」
蘭子「我が友よ、おとなしく胸になる禁断の果実を差し出すが良い」
アーニャ「私、早くズヴィズダが触りたいです♪」
武内P「なんてことだ……!」ピコピコピコピコンッ!
美波「プロデューサーさん、早く逃げてください!」
武内P「新田さん! 貴女はまだ正気を!?」ピコンッ
美波「はい! 私が気になるのは、真ん中のキノコだけですから!」
武内P「答えがおかしい気もしますが、はい、今はとても頼もしいです……!」ピコンッ
美波「私があの子達を抑えている内に、早く!」
武内P「ありがとうございます!」ピコピコンッ!
武内P「っ――!?」ピコンッ!
智絵里「どこへ行くんですか、プロデューサーさん?」
武内P「緒方さん……そこをどいていただけますか」ピコピコンッ
智絵里「見捨てないで……くださいね?」
武内P「……!」ピコーンッ!
武内P「緒方さん……正気に戻ってください……!」ピコンッ
智絵里「見てください……ほら、四葉のクローバー」
かな子「キノコはヘルシーだから大丈夫ですよね~」
杏「それよりさ、キノコ食べたくなってこない~?」
きらり「えっ……!?」
杏「キノコ食べたい~!」
きらり「違う~! 乳首だよ~;;;;」
杏・きらり「う~~~」
杏「キノコ、キノコ、キノコ、キノコ!」
きらり「乳首、乳首、乳首、乳首!」
武内P「狂騒曲にも程がありますよ……!?」ピコピコピコピコンッ!
武内P「囲まれている……!?」ピコンッ!
智絵里「幸せの証……!」
武内P「違います! これは違いますから!」ピコンッ!
かな子「マシュマロ食べた~い」
武内P「今、マシュマロは関係ないではないですか!」ピコピコンッ!
きらり「にょわー☆」
武内P「くっ……! もうかわしきれない……!?」ピコピコピコンッ!
杏「良いぞ~! そこだ~! やれ~!」ヤンヤヤンヤ
武内P「……」ピコンッ
武内P「……四葉に見せかけた三つ葉だったようですね」ピコピコンッ
卯月「――島村卯月、頑張ります♪」
武内P「!?」ピコーンッ!
武内P「し、島村さん!? いつからそこに……!?」ピコピコンッ!
卯月「何にも無い……私だけ、何にも無い……!」
ガシッ!
武内P「は、離してください! 島村さん、手を離してください!」ピコピコピコンッ!
卯月「何にも無いが、あるんですよ?♪」ニコッ
武内P「いい笑顔ですが、恐怖しか感じません!」ピコピコンッ!
卯月「キノコっ、のっこ~のこ元気ノコ♪」
くにくにくにくにっ
武内P「んんんうううふっ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
卯月「エリーンギマイタケブナシメジ♪」
くにくにくにくにっ
武内P「や、やめてくだんんんああっ!?」ピコピコピコピコンッ!
ホワホワーン
アイドル達「……キノコっ、のっこ~のこ元気ノコ♪」
武内P「き、来ては行けませ――」ピコピ
美波「……」
武内P「に、新田さんまで……!?」コーンッ!
楓「ゆきぐ~にマイタケ、ホ・ク・ト♪」
武内P「貴女は何故居るんですか高垣さああああん!?」ピコピコピコーンッ!
武内P「んんんあああいけま、いけま、んんんふおおっ!?」ピコ――ンッ!
ホワホワーン
・ ・ ・
武内P「……」ピコンッ
ちひろ「あの……昨日は大変だったみたいですね」
武内P「はい……もう、本当に」ピコンッ
ちひろ「ええと、でも、一日で治るはずじゃ?」
武内P「腫れです」ピコンッ
ちひろ「えっ?」
武内P「……腫れ、です」ピコンッ
ちひろ「……」
武内P・ちひろ「……」
ちひろ「プロデューサーさんが大変な時に、お休みをとっててすみませんでした……」
武内P「いえ、有給休暇は当然の権利ですので、お気になさらず」ピコンッ
ちひろ「……うふふ、でも、そんなになってたら触りたくなる気持ちも少しわかります」
武内P「っ!?」ピコンッ
ガタタッ!
ちひろ「じょ、冗談です! 冗談ですよプロデューサーさん!」
武内P「す、すみません……取り乱しました」ピコンッ
武内P・ちひろ「……」
ちひろ「それで、今日は皆はお休みなんですか?」
武内P「胞子の影響で、今朝起きたら昨日の私と同じ状態になっていたそうです」ピコンッ
ちひろ「まあ……」
武内P「なので、危険を排除するために今日は全員自宅待機という形にしました」ピコンッ
ちひろ「そう、ですね。それが一番だと思います」
ちひろ「……」
ちひろ「あれ? ちょっと待ってください」
武内P「? どうか、されましたか?」ピコンッ
ちひろ「自宅から通っている子も居ますけど……女子寮の子もいますよね?」
武内P「……」ピコンッ
武内P「!?」ピコンッ
ちひろ「……あの、携帯が鳴っていますよ」
武内P「……はい、もしもし」ピコンッ
みく『助けてPチャアアアン! 皆が、皆がみくの乳首を狙ってくるにゃあああ!』
武内P「前川さん!? 襲われているのですか、前川さん!?」ピコンッ
みく『幸子ちゃんがカワイイとか今は関係なっ、やめ、やめてえええ!』
武内P「前川さん!? 前川さん!?」ピコンッ
みく『あかん! ホンマにあかんって! ホンマに――』
プツッ!
武内P「前川さん!? 返事をしてください、前川さん!?」ピコンッ
ちひろ「みくちゃん、一体どうしたんですか!?」
武内P「……前川さんはもう……もう……!」ピコンッ
ちひろ「っ……!?」
武内P「ですが……まだ、助けを求めているアイドルが居るかもしれません」ピコンッ
ちひろ「駄目ですよ! 場所は女子寮なんですよ!?」
武内P「はい、ですので」ピコンッ
ちひろ「……ん?」
武内P「お願いします、千川さん! 皆さんを助けてあげてください!」ピコンッ
ちひろ「……えっ?」
武内P「貴女なら、きっとキノコに負けることはありません!」ピコンッ
武内P「千川さんならば、この先生きのこる事が出来るはずです!」ピコンッ
ちひろ「内心では私もキノコるって思ってるじゃないですか!」
おわり
武内P「怖い体験、ですか」
未央「そうそう、プロデューサーも怖いって思うのかなー、って」
武内P「それは、はい、ありますよ」
卯月「ええっ、そうなんですか?」
武内P「意外、でしょうか?」
未央「見た目的に、怖いものなしって感じだからねー!」
卯月「も、もう! 未央ちゃん!」
武内P「……」
未央「ズバリ聞くけど、どんな怖い体験をしたの?」
武内P「あまり……思い出したくはないのですが」
未央「ありゃ、そんなに?」
武内P「……」
卯月「あの、でも……話して楽になる事ってあると思うんです」
武内P「島村さん?」
卯月「いつも助けてもらってるし、今度は私が助けになれたらなぁ、って……えへへ」
武内P「……」
未央「こらこら二人共! 未央ちゃんの事を忘れちゃいませんかね!」
卯月「わ、忘れてないですよ~!」
武内P「……しかし、そうですね。島村さんの言う通りかもしれません」
卯月「プロデューサーさん?」
武内P「聞いて、いただけますか?」
未央・卯月「……」
未央・卯月「もちろん(です)!」
武内P「……それは、貴女達ニュージェネレーションズの初ライブの後の事です」
未央「……もしかして、怖い体験って私のアレ?」
卯月「……アレ、なんですかね?」
武内P「そうですね、本田さんのあの発言には驚きましたが、その後です」
未央・卯月「……」
武内P「その……渋谷さんが全力で睨んできたのが、はい、とても怖かったですね」
未央・卯月「……」
武内P「……」
未央「えーっと……ねえ、そんなに?」
武内P「あの時の光景をハッキリと思い出すだけで――」
卯月「……プロデューサーさん?」
武内P「」
卯月「プロデューサーさん? あの、プロデューサーさん!?」
武内P「――っぶは!……はぁ……はぁ……!」
未央「な、何……!?」
武内P「この様に、心臓が一瞬止まります」
未央「説明のために気軽に心臓を止めないで!?」
卯月「あの……プロデューサーさんは凛ちゃんが怖いんですか……?」
武内P「いえ、そんな事はありません」
未央「でも、心臓が止まる程怖いんでしょ!?」
武内P「今は大丈夫なのですが、心の奥底にあの光景が恐怖として刻まれているようで……」
未央「トラウマになってるじゃん!」
卯月「でも、今の凛ちゃんは怖くないんですよね!? ねっ!?」
武内P「はい、なんとか大丈夫です」
未央「……なんとか」
卯月「……ですか」
未央「そ、それじゃあさ! 他に! 他には無いの!?」
卯月「そ、そうです! 他にはないんですか!?」
武内P「……他に、ですか」
未央・卯月「……」
武内P「そうですね……あります」
未央「……ある」
卯月「……んですね」
武内P「本田さんが事務所に来なくなり、島村さんが風邪を引いた時です」
未央「あ、もしかして!」
卯月「私まで辞めちゃうんじゃないかと怖かったんですか?」
武内P「それは……不安ではありましたが、恐怖とは違いますね」
未央・卯月「……」
武内P「その……お二人が休まれた時、渋谷さんに全力で怒鳴られたのが、怖かったですね」
未央・卯月「……」
武内P「……」
未央「えーっと……また、しぶりん?」
武内P「あの時の光景をハッキリと思い出すのは……出来ません」
卯月「もしかして……怖くて記憶が飛んでるんですか!?」
武内P「いえ、そんな事は、決して」
未央「じゃ、じゃあどうして?」
武内P「その……今は、オムツを着用していないので」
卯月「漏らすほど怖かったんですか!?」
武内P「……その時は予め着用していたので……はい、事なきを得ました」
未央・卯月「……」
卯月「あの……やっぱりプロデューサーさんは凛ちゃんが怖いんですよね……!?」
武内P「いえ、そんな事はありません」
未央「でも、怒鳴られたら漏らすんでしょ!?」
武内P「その状況にならない様、コミュニケーションは取っているつもりです」
未央・卯月「……」
未央「やばいよしまむー、めっちゃ気軽にとんでもない蓋を開けちゃったよ」
卯月「はい……数分前に戻って未央ちゃんを止めたいです」
未央「へへっ、私も♪」
卯月「……」
未央「……ごめん」
未央「で、でもさ! 二人きりになっても平気みたいじゃん!?」
卯月「は、はい! クローネの話の時も、二人だったって聞きました!」
武内P「それは……はい、そうですね」
未央「な、なーんだ! じゃあ今は大丈夫なんだね!」
卯月「は、はい! 良かったー! 安心しました!」
武内P「二人きりの時は、意識を保てる様、こう、舌を噛んで――」
未央「全然大丈夫じゃない! 全然大丈夫じゃないよねそれ!?」
卯月「安心できる要素が一つも無いじゃないですかぁ!」
武内P「……」
未央・卯月「……」
武内P「……ですが、この状況が続くのは良い事ではないと私も思っていたのです」
未央「そりゃ誰だって思うよ」
卯月「はい、未央ちゃんの言う通りです」
武内P「なので、お二人には協力して欲しいのです」
未央「もしかして――」
卯月「凛ちゃんを怖がらなくなる特訓ですか!?」
武内P「いえ、違います」
未央・卯月「へっ?」
武内P「極力渋谷さんの神経を逆撫でず、かつ、私と渋谷さんが二人きりにならないよう協力を」
未央・卯月「弱気!」
武内P「お願い……出来ますでしょうか?」
未央「そんな縋るような目で見ないで……!?」
卯月「でも……本当に、それしか方法は無いんでしょうか?」
武内P「……島村さん?」
卯月「凛ちゃんを怖がらずに、仲良くする事は出来ませんか?」
武内P「……」
卯月「私にとって、二人はどっちも大事な人なんです」
未央「しまむー……」
卯月「だから、プロデューサーさんが凛ちゃんを怖がってるのは、とても悲しいんです……」
武内P「……」
未央「――そうだよ! 諦めちゃ駄目だよ!」
武内P「……本田さん」
未央「私にアイドル辞めるのを辞めさせた位だもん、その位出来るよ!」
卯月「はい! そのとおりです!」
武内P「……島村さん」
ガチャッ
凛「おは――」
未央「しぶりんが睨んだら心臓止まるのだって、絶対なんとかなる!」
卯月「凛ちゃんが怒鳴ったら漏らしちゃうのだって、きっとなおります!」
武内P「……!?」
凛「……」
未央「睨まれたトラウマがなんだー! しぶりんがなんだー!」
卯月「そうです! 怒鳴られたからなんだー! オムツがないからなんだー!」
未央・卯月「えへへ♪」
武内P「……!……!」
凛「ふーん、楽しそうだね」
未央・卯月「……」
未央「えっへへ、心臓が止まるかと思った♪」
卯月「ふふふっ、私は漏らすかと思っちゃいまいた♪」
武内P「……!……!」
凛「……」
未央「……さて、と」
卯月「……はい」
武内P「あ、あの……!?」
未央・卯月「お仕事お仕事」
武内P「!?」
凛「私はちょっとプロデューサーに話があるから」
未央「おっけー、しぶりん」
卯月「それじゃあ、私達は行きますね」
武内P「ま、待ってください!」
未央「本田未央! 今日も元気に行ってまいりまーす!」
卯月「島村卯月、頑張ります♪」
武内P「あの、待っ――」
……バタンッ!
武内P「……!」
凛「……」
凛「睨まれたら心臓が止まるんでしょ? 睨まないよ」
武内P「……!」
凛「怒鳴られたら漏らすんでしょ? 怒鳴らないよ」
武内P「……!」
凛「ほーら、プロデューサーの好きな笑顔だよー」ニコニコ
武内P「……!」
凛「どうしたの? 何か言いなよ」ニコニコ
武内P「……良い、笑顔です。はい、確かに笑顔は好きです」
凛「ふーん?」ニコニコ
武内P「……ですが――」
武内P「――今、一番怖い体験の真っ最中です」
おわり
武内P「笑顔の練習、ですか?」
凛「うん」
武内P「ですが……渋谷さんは、とても良い笑顔をしています」
凛「私の練習じゃなくて、プロデューサーの」
武内P「私の……ですか?」
凛「そう」
武内P「……」
凛「聞いたよ。美穂、プロデューサーの顔を見て気絶したんだって?」
武内P「それは……はい」
凛「それについてどう思ってるの?」
武内P「小日向さんには……はい、大変申し訳無いことをしたと思っています」
凛「それで、その後にさ」
武内P「?」
凛「いい笑顔で笑った、って聞いた」
武内P「……」
武内P「ですが……それは意識しての事ではなかったので」
凛「だから、それを意識して出せるようにすれば良いんじゃないかな」
武内P「……」
凛「これから二期生の相手もしなきゃいけないんでしょ?」
武内P「……」
凛「また、気絶させるつもり?」
武内P「……」
武内P「ですが……」
凛「言い訳は聞きたくない」
武内P「……」
凛「良いからほら、やってみせてよ」
武内P「……」
武内P「……」ニゴォ
凛「……ひどいね」
武内P「……」
武内P「あの、やはり意識しては……」
凛「こうだよ、こう」ニコッ
武内P「……」
凛「どうかな?」ニコッ
武内P「はい、とても、いい笑顔です」ニコッ
凛「!?」
凛「っ!? 今の、何!?」
武内P「? はい? どうか、されましたか?」
凛「ちょ、ちょっともう一回」
武内P「……はぁ」
凛「こうだよ、こう」
凛「……」ニヘラッ
武内P「!? 渋谷さん!?」
凛「ん?」ニヘラッ
武内P「あの、失礼ですが……笑顔が、とても下手になっています」
凛「……えっ? 嘘っ?」
武内P「下手というか、こう、締りの無い感じに……」
凛「締まりがない!?」
武内P「はい……残念ながら」
凛「えっ……なんで……?」
武内P「……」
凛「ちょっ、ちょっともう一回見て!」
武内P「はい」ジーッ
凛「……」
武内P「……」ジーッ
凛「……」ニヘラッ
武内P「下手、ですね」
凛「……まさか、プロデューサーに笑顔が下手って言われるなんて……!」
武内P「……」
武内P「スランプ、でしょうか」
凛「……笑顔のスランプなんて聞いたことないよ」
武内P「もう一度、先程の流れをなぞってみましょう」
凛「?」
武内P「先程の、いい笑顔を思い出すためです」
凛「……なるほど」
武内P「このままでは、仕事に支障が出てしまいますから」
凛「……」
武内P「まず、私が笑顔を……」
武内P「……」ニゴォ
凛「うん、やっぱり下手だね」
武内P「……そして、渋谷さんがお手本を」
凛「こう?」ニコッ
武内P「はい……! とても、いい笑顔です」ニコッ
凛「……」ニヘラ
武内P「ああっ、惜しい!」
凛「……わざとやってる?」
武内P「……はい?」
凛「……」
武内P「あの……何か、問題でも?」
凛「そう言うんじゃないから」
武内P「……?」
凛「……ぷ、プロデューサーって私の普段の笑顔はどう思う?」
武内P「渋谷さんの普段の笑顔……ですか」
凛「うん、そう」
武内P「そうですね……凛とした外見とは裏腹な、とても朗らかで優しい笑顔だと思います」
凛「……ふーん」ニヘラ
武内P「ああっ……! また……!」
凛「ぷ、プロデューサーは見ないでいいから!」
凛「今のは、そう言うのじゃないから」
武内P「すみません、仰っている意味がよく……?」
凛「……もう、今は私の話じゃないでしょ」
武内P「いえ、ですが……!」
凛「じゃあ、プロデューサーがお手本を見せてよ」
武内P「私が笑顔の……ですか……!?」
凛「そう。担当アイドルのため、頑張ってよね」
武内P「……」
武内P「私では力不足かもしれませんが……努力させて頂きます」
凛「うん、見てるから」
武内P「……」キリッ
凛「……」ニヘラ
武内P「!」ニッゴォ
凛「ぷっ!? な、なにそれ!? ふっくくく……!」ニコニコ
武内P「! それです、その笑顔です!」ニコニコ
凛「……」ニヘラッ
武内P「ああっ!? また!?」
凛「……うん、わかった」
武内P「あの、何がでしょうか?」
凛「プロデューサーは、笑顔が下手なままで良いよ」
武内P「あの、それは……?」
凛「プロデューサーが笑顔がうまくなった方が……大変だろうから」
武内P「はぁ……?」
凛「わからなくていいよ」
武内P「……」
凛「他の子に言われても、笑顔の練習はしちゃ駄目だから」
武内P「それは……」
凛「良い? わかったらほら、返事」
武内P「……はい、わかりました」
凛「よし」ニコッ
武内P「……良い、笑顔です」ニコッ
凛「……」ニヘラッ
武内P「……あの、渋谷さん」
凛「えっ? な、何?」
武内P「笑顔の練習をしますか?」
おわり
472 : 以下、名... - 2017/11/22 21:40:23.91 VSIdtltqo 388/742武内p「エボンジュを倒したら、俺、消えっから!」
>>472
武内P「常務を倒したら、私、首になりますから!」
未央「へ?」
武内P「何と言ったら良いのでしょうか……物理的に倒したら、私、首になりますから!」
みく「Pチャン……何言ってるにゃ?」
武内P「……さよなら、という意味です!」
李衣菜「そんなぁ……」
武内P「勝手で、悪いのですが……」
凛「いい考えだと思ったのに」
武内P「どこがですか!?」
武内P「皆さん、冷静になってください!」
卯月「でも、とってもいい考えだと思ったんです」
武内P「いえいえ、待ってください!」
美波「でも、常務の強引なやり方に対抗するには……」
武内P「こんなに強引な対抗策を提示されるとは思っていませんでしたよ!」
アーニャ「プロデューサーなら、パツイチ、です♪」
武内P「そうですね、一発で逮捕されますよ!?」
みりあ「ねぇねぇ、プロデューサー、ビビってるの?」
武内P「赤城さん、どこでそんな言葉を覚えたんですか?」
莉嘉「カリスマJCのぉ、オ・ネ・ガ・イ☆」
武内P「私を反逆のカリスマにするおつもりですか?」
きらり「顎を撃ち抜けば、脳がハピハピするにぃ☆」
武内P「的確なポイント指示をありがとうございます……と、言うとでも!?」
智絵里「これ……四葉のクローバー、お守りです」
武内P「緒方さん、戦地に送り出す感じをださないでください!」
かな子「これ……マシュマロです……美味しい~♪」
武内P「そうですね! 自分で食べたら美味しいですね、三村さん!」
杏「プロデューサー……杏、果報は寝て待つタイプだよ」グッ
武内P「やめてください! 双葉さん、あの、本当に行きませんよ!?」
蘭子「我が友よ……見せて貰おうか、其の物語を!」
武内P「物語というか、逮捕劇になります!」
みく「Pチャン……これを使って欲しいにゃ」
武内P「ネコミミで殴れと? あの、凶器がネコミミで良いんですか?」
李衣菜「プロデューサー……私からはこれを」
武内P「あの……何も無いんですが」
李衣菜「熱いロックの魂と、エアギターです!」
武内P「どちらも要りませんが、どちらも物ではありませんからね!?」
菜々「みくちゃんがネコミミなら、私はウサミミを!」
武内P「自前のものも合わせて、もう耳が6つになりましたよ」
夏樹「コイツを使ってくれ……へへっ、それもロックだろ?」
武内P「ギターって……ガチの凶器になるやつじゃないですか!」
楓「私からは……これを」
武内P「柔軟剤? あの、柔軟剤でどうしろと?」
武内P「皆さんストップ! 落ち着いてください!」
アイドル達「?」
武内P「あの、確かに企画を出してくれるのは嬉しいと言いました」
アイドル達「……」
武内P「しかしですね、全員一致で物理的に常務を倒すに決まるとは思っていませんでしたよ」
アイドル達「えへへ」ニコッ
武内P「いいですねパワーオブスマイル! パワー担当は私ですか、皆さん!?」
武内P「……」
アイドル達「……」
武内P「……わかりました、行ってきます」
アイドル達「!?」
武内P「皆さんの意見を尊重するのも、プロデューサーの役目ですから」
アイドル達「……」
・ ・ ・
コンコン!
常務「……話は聞いている、入り給え」
ガチャッ!
武内P「失礼します」
常務「!? なんだ、その格好は!? 猫耳にうさ耳に……ギター……!?」
武内P「個性を尊重した、パワーオブスマイルですよ」
常務「それが……?」
武内P「ええ、どうやらそうらしいです」
武内P「アイドル達は、この格好で貴女を物理的に倒すのがベストと判断しました」
常務「!?」
武内P「このギターで顎を打ち抜き、ネコミミとウサミミでなんやかんやします」
常務「!!?」
武内P「けれど、大丈夫、四葉のクローバーのお守りがありますから」
常務「……意味がわからないな」
武内P「ええ、実は私もです」
常務「……」
武内P「……」
常務「不思議だな……まるで、君が泣いているように見える」
武内P「そうですね、これが最後になるかもしれませんから」
常務「だが、君は止まりたいと思っている」
武内P「……その通りです」
常務「そして、私は君を止めたいと思っている」
武内P「……」
常務「最後になるかもしれないのに、不思議なものだ」
武内P「ええ……平行線だった私達の意見が、初めて重なりましたね」
常務「ああ、これはまさしく――」
武内P・常務「ファイナルファンタジー、テン」
おわり
武内P「悲しい夢を見た、と」
菜々「……はい」
武内P「その、具体的にはどういった内容で?」
菜々「……孤独死」
武内P「……はい?」
菜々「……一人アパートで、ひっそりと息を引き取る夢です」
武内P「それは……また……」
菜々「……」
武内P「だから、今日はそばに居て欲しい……と?」
菜々「……はい」
武内P「あの、何故、私なのでしょうか?」
菜々「……CPのプロデューサーさんも、孤独死するタイプかなと思って」
武内P「……」
菜々「キャハッ!」
武内P「……」
菜々「……すみません」
菜々「で、でもほら! 二人だったら孤独死じゃないですから!」
武内P「孤独死が二つ並ぶだけの様な気もしますが……」
菜々「……」
武内P「……すみません」
菜々「……いえ、お気になさらず」
武内P「……」
菜々「……」
武内P「……」
菜々「あの……電話が鳴ってますよ?」
武内P「……少し、失礼します」
菜々「あ……はい」
武内P「もしもし、お待たせしました。……はい……はい……」
菜々「……」
武内P「その件に関しては……はい、そのようにお願いします……」
菜々「……」
・ ・ ・
武内P「――すみません、お待たせしました」
菜々「……」
きゅっ
武内P「あの、安部さん? 何故、私の上着を掴んでいるのでしょうか?」
菜々「危なかった! 今のは危なかったですよ!?」
武内P「は、はい!?」
菜々「私がウサミン星人じゃなく、ウサギだったら孤独死してましたよ!?」
武内P「は、はぁ……?」
菜々「あー、危なかった! にじゅ……17年生きてきて一番危なかった!」
武内P「その……申し訳ありませんでした」
菜々「いえいえ、お仕事ですから!」
武内P「それでその……手を離していただけますか?」
菜々「ピピピピピ! あっ、今! 今ウサミン星から電波を受信しました!」
武内P「……はぁ」
菜々「手を離すと死ぬそうです! ウサミン、ピーンチ!」
武内P「……」
菜々「あっ、その顔は信じてませんね!?」
武内P「いえ、あの……ですが……」
菜々「うぅ……本当に怖い夢だったんですよぉ……!」
武内P「あの……申し訳ありません」
菜々「田舎の両親には戻ってこいって言われるし、でも諦められなくて……!」
武内P「あの……」
菜々「その結果孤独死なんて夢を見たら、ウサミン星人ならこうなります!」
武内P「トイレに……行きたいのですが」
菜々「!?」
・ ・ ・
武内P「――すみません、お待たせしました」
菜々「……」
ぎゅっ
武内P「あの、安部さん? 上着の袖をそんなに強く掴まないでください」
菜々「もうギリッギリ! ギリギリですよ今のは!」
武内P「は、はい!?」
菜々「後二分、いや、一分遅かったら、男子トイレの前で死んでましたよ!?」
武内P「は、はぁ……?」
菜々「あー、危なかった! 一気に十歳老ける所でしたよ!」
武内P「その……申し訳ありませんでした」
菜々「キャハッ! ラブリーな17歳なので、大丈夫ですよ!」
武内P「しかしその……手を離していただけますか?」
菜々「ピピピピピ! あっ、また! またウサミン星から電波が!」
武内P「……はぁ」
菜々「手を離すと死ぬって言ってるでしょうが! ですって! プロデューサー、ピーンチ!」
武内P「……」
菜々「良いですか、考えてもみてくださいよ!」
武内P「……」
菜々「ナナが孤独死したら、次はプロデューサーさんですよ?」
武内P「……」
菜々「良いんですか? 皆を残して死んじゃっても良いんですか?」
武内P「……」
……ヌギヌギ
菜々「あの、どうして上着を脱いで――」
武内P「っ!」
ダッ!
菜々「ちょっ、何で逃げるんですか!?」
菜々「待って! 待ってくださいよ!」
武内P「いくら社内とは言え、限度というものがあります!」
菜々「でもでも!」
武内P「……!」
菜々「な、なんて逃げ足の早さ! こうなったらメルヘン――」
武内P「……!」
菜々「メルヘン……メルヘンダーッシュ! メルヘンダーッシュ!」
武内P「……!?」
菜々「メルヘンダーッシュ!」
・ ・ ・
武内P「……離れて、ください」
菜々「ぜぇ……はぁ……!」
がっしいっ!
武内P「あの、背中にしがみつかれると、流石に重いのですが……」
菜々「「ぜぇ……はぁ……!」
武内P「あの、胴体に回した足の力を緩めては……」
菜々「ぜぇ……はぁ……!」
武内P「……頂けないようですね」
武内P「……」
菜々「ぜぇ……はぁ……!」
がっしぃっ!
武内P「……わかりました、もう逃げませんから」
菜々「……本当に?」
武内P「……」
菜々「……」
武内P「本当です」
菜々「間が! もうね、今の間はウサミン星人じゃなくても嘘だってわかりますよ!」
武内P「……」
武内P「……」
菜々「……」
コンコン、ガチャッ
みく「おはようございま――って、何してるの!?」
菜々「あっ、おはようございます! 孤独死対策です、キャハッ!」
武内P「……だ、そうです」
みく「……意味がわからないにゃ」
武内P「ええ……私もです」
・ ・ ・
みく「……なるほど、そういう事だったんだね」
菜々「はい! わかってもらえましたか?」
みく「ナナチャン! ナナチャンは間違ってるにゃ!」
菜々「えっ!?」
みく「ナナチャンには……みく達が居るにゃ!」
菜々「……みくちゃん」
みく「ガチで孤独死しそうなのは、Pチャンだけにゃ!」
武内P「……」
武内P「えっ?」
武内P「あ、あの……前川さん?」
みく「Pチャンはきっと、10年後も、20年後もずっと笑顔ですって言ってるの」
菜々「ふむふむ……それは、ナナも想像できます」
みく「だけど、ある日突然事務所に来なくなるにゃ」
武内P「前川さん……?」
菜々「そして二日後くらいに自宅に行ったら……」
みく「息を引き取ったPチャンが……ううっ、考えただけでも泣けてくるにゃ……!」
武内P「……」
みく「だけど、ナナチャンには!」
菜々「みくちゃんが――皆がいますっ!」
みく「ミミミン♪ミミミン♪ウーサミンッ♪」
菜々「メルヘンチェーンジ! キャハッ! ラブリー17歳!」
みく「その意気にゃ!」
武内P「……」
菜々「……」
…ストンッ
菜々「ありがとうございました! もう、大丈夫です!」
武内P「……そう、ですか。それは……はい、良かったです」
みく「というわけで、ナナチャン、お昼ごはん一緒に食べない?」
菜々「あっ、良いですね! 是非、ご一緒させてください!」
みく「あっ、そうだPチャン!」
武内P「!」
みく「この上着、Pチャンの?」
武内P「……これは……はい、そうですね、ありがとうございます」
みく「もー! クリーニングに出すのは自分だからって、物を乱暴に扱っちゃ駄目にゃ!」
武内P「……はい……すみませんでした」
みく「それじゃ、みく達はもう行くね!」
菜々「それじゃあ、失礼しまーす!」
ガチャッ、バタンッ
武内P「……」
・ ・ ・
武内P「……」
ちひろ「……プロデューサーさん? 何か、考え事ですか?」
武内P「いえ……アイドルとプロデューサーは、近いようで遠いものだ、と思いまして」
ちひろ「はぁ……?」
武内P「……」
ちひろ「あの……何かあったんですか?」
武内P「……ああ、いえ」
武内P「悲しい現実を見せられたな、と」
おわり
武内P「これが今回の分のビデオですか」
小梅「うん……今回は、ちょっと大胆だったかも……」
武内P「なるほど、後で確認します」
小梅「ふふ……頑張った……」
武内P「いつも、お疲れ様です」
ありす「あれは……」
桃華「CPのプロデューサーちゃまと、小梅さん……?」
小梅「いつも……受け取ってくれてありがとう」
武内P「いえ、白坂さんも頑張っていますので、当然の事です」
小梅「今日のはね……よく、撮れてると思うんだ……」
武内P「それは、とても楽しみですね」
ありす「えっ? えっ……?」
桃華「小梅さんが、頑張って、大胆で、ビデオで……ええっ……!?」
小梅「もう……どの位になるのかな?」
武内P「そうですね……合わせると、100点は越すかもしれません」
小梅「そんなに……?」
武内P「はい。最近では、撮影する時のぎこちなさもとれてきましたね」
ありす「もしかして……」
桃華「ロ漫譚が既に100を越えている……!?」
小梅「えへへ……褒められると、恥ずかしいかも……///」
武内P「白坂さんの頑張りを考えると、当然の結果です」
小梅「でも……嬉しいな///」
武内P「良い、笑顔です」
ありす「二人は、とても仲が良いんでしょうか?」
桃華「と、言うよりも……ロリの極みかもしれませんわよ、あれは……!」
小梅「次は……こうして欲しいとか、ある……?」
武内P「そうですね……何か、動きをつけるのはどうでしょうか?」
小梅「動き……?」
武内P「はい。せっかくのビデオですので」
ありす「あれは、どういう意味でしょうか……?」
桃華「なんて事なのかしら……! 動きをつけたら倍率ドン、更にドンですわよ!?」
小梅「その方が……見てて楽しい……?」
武内P「楽しいというか……そうですね、また違った見方が出来るかと」
小梅「それじゃあ……うん、頑張ってみるね……」
武内P「はい、頑張ってください」
ありす「ビデオ……動き……頑張る……?」
桃華「恐らく合意の事とは言え……事務所転覆で煉獄、いえ、監獄行きは免れませんわ」
小梅「それで……この前のは、どうだった……?」
武内P「前回頂いたビデオの感想、ですか」
小梅「うん……自信が、あったから……///」
武内P「そうですね、とても素晴らしいもので、私も楽しめました」
ありす「まさか……えっ、そんな……?」
桃華「楽しんだ!? まさか……アームストロングカノンを使ったと……!?」
小梅「ちょっと遠くに行ったから……気合が入ってた……」
武内P「お疲れ様です」
小梅「……ありがとう///」
武内P「とても、美しかったです」
ありす「レッスンの個人指導……?」
桃華「どうしましょう……悪・即・斬するべきなのかしら……?」
小梅「今度は……一緒に撮りたいな……」
武内P「私も一緒に、ですか?」
小梅「うん……駄目、かな……?」
武内P「……」
ありす「……」
桃華「あの様子だと……まだ不犯の誓いは破られていないようですけれど……」
小梅「その方が……きっと楽しいから……」
武内P「……では、機会がありましたら、その時に」
小梅「! えへへ……嬉しい……///」
武内P「……」
ありす「お願いしてみたら……私も……」
桃華「一歩を踏み出してしまうなんて! クズ龍閃を超えるつもり!?」
小梅「上手に撮れるといいなぁ……」
武内P「白坂さんなら、きっと大丈夫です」
小梅「……そうかな」
武内P「ええ、きっと」
ありす「……私も、個人指導をお願いしようかな」
桃華「うふ、いけませんよ」キンッ
ありす「あっ……か……!? そ、そうですね」
桃華「二階堂兵法、心の一方……危なく犠牲者が増える所でしたわ」
小梅「でも……本当に迷惑じゃない……?」
武内P「そんな事はありません」
小梅「でも……」
武内P「白坂さんにはいつもお世話になっていますから」
ありす「……とても、信頼されてるように見えます」
桃華「これはもう憲兵……早苗さんを呼んで牙突して貰うしか方法が……」
小梅「じゃあ、もし良かったら……なんだけど」
武内P「はい、何でしょうか?」
小梅「ここで一緒に撮るのは……駄目、かな……・?」
武内P「ここで、ですか?」
ありす「……ちょっと、羨ましいかもです」
桃華「おろー!?……ち、違いましたわ! 駄目ー!」
小梅「……」
武内P「その……少しだけ、でしたら」
小梅「……本当?」
武内P「ええ、構いませんよ」
ありす「……私も、ああやって頼られるようになりたい」
桃華「少しだけと言って、大量の炸裂弾を使用するに違いありませんわ!」
小梅「えへへ……それじゃあ撮るね」
武内P「はい」
桃華「お待ちになって!」
ありす「あ、あの!」
小梅「? 橘さんと……」
武内P「櫻井さん……・?」
桃華「これ以上不埒な真似をなさるようでしたら……わたくし、櫻井桃華が人誅を下しますわ!」
武内P・小梅「? 不埒……?」
小梅「えっと……」
武内P「何の、話でしょうか?」
ありす「小梅さんのビデオを見て、個人指導してたんですよね?」
桃華「それも100点を越す、回転式機関砲の如き量で!」
小梅「えっと……違うよ?」
武内P「はい、白坂さんの提出されたビデオには、白坂さんは映っていませんよ」
ありす・桃華「……」
ありす・桃華「へっ?」
小梅「み、皆がお仕事をしてて楽しそうだって……『あの子』が言うから……」
武内P「白坂さんがカメラマンとなり、撮った映像を私に提出していたのです」
ありす「それじゃあ、個人指導は……?」
小梅「し、してないよ……見てもらってる、だけ……」
桃華「それでは、CPのプロデューサーの斬馬刀の活躍は……」
武内P「あの、意味がわかりません」
ありす・桃華「……」
桃華「それでは……愛の華が咲いていた訳では……」
武内P「? はい、ありませんよ」
ありす「ふふふっ! 桃華さん、どうしてさっきから焦っていたんですか?」
小梅「えへへ……ふ、不思議だね……」
桃華「お、おほほほほ! 何でもありませんわよ!」
小梅・ありす・桃華「あははは!」
桃華「――何が可笑しいッ! で、ではなく、おかしな話もあったものですわね!」
武内P「……」
・ ・ ・
武内P「……」
ちひろ「あっ、また小梅ちゃんからのビデオを見てるんですか?」
武内P「はい。今回は、山の風景ですね」
ちひろ「ロケで行った先のビデオを撮ってくるなんて……うふふ、慕われてますね」
武内P「……そうなのでしょうか」
ちひろ「はい♪」
武内P「ですが……この映像を見ていると、不思議と不安になります」
ちひろ「不安に、ですか?」
武内P「……ええ」
武内P「……所持しているだけで駄目な気がするのです」
おわり
武内P「三年目の浮気ぐらい多めにみろよ」
ちひろ「開き直る、その態度が気に入らないのよ」
武内P「……」
ちひろ「……うふふっ♪」
武内P「また……懐かしい歌ですね」
ちひろ「この間入ったお店でずっとかかってて、耳に残っちゃって」
…カタンッ
武内P・ちひろ「……?」
・ ・ ・
未央「第一回チキチキ! シンデレラプロジェクト緊急対策会議ー!」
美波「み、未央ちゃんテンション高いわね」
卯月「こいつぁ面白くなってきた、って顔してます」
未央「いやいや、私もね? 悲しい気持ちでいっぱいだよ?」
凛「微塵もそうは感じないんだけど」
未央「……いや、何と言うか……テンション上げてないと、ほら、ね?」
アイドル達「……」
みく「でも、そもそもあの二人って付き合ってたにゃ?」
李衣菜「うん、全然そんな感じしないよね」
莉嘉「あっ、ハイハーイ! アタシ、聞いたことがある!」
きらり「えっとぉ、何を聞いたのぉ?」
莉嘉「P君、ちひろさんの言う事だけは素直に聞くらしいんだよね!」
アイドル達「……」
智絵里「えっと……それは本当なの、かな?」
かな子「プロデューサーさんって、結構頑固な所があった気が……」
杏「そういえばだけど……杏、見たことあるかも」
アーニャ「何を……です、か?」
杏「残業しようとするプロデューサーを強引に帰してる所だよ」
アイドル達「……」
卯月「でも、プロデューサーさんが浮気なんてするでしょうか……?」
凛「わからないよ。ああいうタイプって、浮気してもバレなさそうだし」
未央「バレてるから口論してたんじゃないかな」
蘭子「闇に魅入られ……魔が差した」
美波「プロデューサーさんも、男の人だしね……」
アイドル達「……」
アーニャ「三年目……私達と会う前から、アー、付き合っていたんですね」
みりあ「ねぇねぇ、プロデューサーとちひろさん、別れちゃうの?」
智絵里「プロデューサーとちひろさん……見捨てられるのはどっちなんでしょうか」
かな子「まだそうと決まったわけじゃ……クッキー美味しい~♪」
きらり「うゅ……でも、理由はどうあれ二人がケンカするのは悲しいにぃ」
アイドル達「……」
杏「だけどさー、しょうがないんじゃないの?」
蘭子「あの二人は運命が定めた者達ではなかった、という事かしら」
卯月「う~ん……やっぱり誤解な気がします」
美嘉「……ヤッホー★ 今、凄い話が聞こえてきたんだけどさ」
未央「あっ、美嘉ねぇ! こっちも今、緊急会議してたんだよ!」
美嘉「……なんか、アイツとちひろさん、ひとつ屋根の下暮らしてきたらしいんだよね」
凛「……ふーん、同棲してたんだ」
李衣菜「それなのに浮気……いやー、ロックだねぇ」
みく「最悪にゃ! 最っ低にゃ! こうなったらもうストライキにゃ!」
莉嘉「えー、アタシやだよ! チョー怒られるもん!」
杏「杏も今回はパース。本人たちの問題だしね」
みりあ「でも……これからどうなっちゃうのかなぁ」
智絵里「冷え切った二人……静かなルーム……お家と一緒になっちゃう」
蘭子「!? この、また別の闇の気配は一体……!?」
アイドル達「……」
未央「でも、同棲してた本命がちひろさんだとしてさ」
凛「浮気相手って誰なんだろうね」
美波「プロデューサーさんと仲がいい人となると……」
美嘉「……今西部長とか?★」
きらり「美嘉ちゃんはぁ、ちょ~っと静かにしてようにぃ☆」
美嘉「えっ、何で!?」
アイドル達「うんうん」
美嘉「えっ、アタシの扱いってそんな感じ!?」
アーニャ「イズヴィニーチェ、今、とても大事な話をしています」
かな子「うんうん、ふざけてる場合じゃなさそう……ビスケット美味しい~♪」
みく「でも……浮気相手を見つけてどうするにゃ?」
美波「勝負……とか?」
卯月「でも……浮気相手の人の方が勝った場合……」
アイドル達「……」
杏「もう面倒だから放っておこうよー」
蘭子「我らの手に負えぬ闇に封印を!」
李衣菜「でも、関係がこじれてあの二人の関係が解散になったら?」
みく「みく達みたいに、すぐ再結成は出来るのかな……」
美波「その……二人の解散芸とは、また違う話だから」
アイドル達「……」
凛「ちひろさんが戦って、勝てそうな相手なら勝負させればいいんじゃない?」
未央「それだ! さっすがだよしぶりん!」
アーニャ「だけど、アー、相手がわかりませんよ?」
みりあ「ねぇねぇ、誰か仲の良い人っているのかな?」
美嘉「やっぱり部長だって★」
莉嘉「お姉ちゃんは黙ってて、カリスマJCのぉ、オ・ネ・ガ・イ☆」
美嘉「……」
アイドル達「……」
未央「うーん……! はやみんは愛人キャラっぽいけど、17歳には手を出さないだろうし」
凛「そう考えると、大人組の人になるかな」
卯月「……あの、仲が良い大人の人で思いついたんですけど」
美波「ええっ!? 卯月ちゃん、誰か心当たりがあるの?」
未央「……やばい、多分、私もしまむーと同じ人が思い浮かんだかも」
凛「……有り得そうで困るね」
アイドル達「……」
アーニャ「もしかして……前に、言っていた人?」
智絵里「三年目って、危ないって言うよね……」
かな子「そんな時期だと……ケーキ美味しい~♪」
杏「どっちの緑が勝つかな? 杏、ちょっとワクワクしてきたよ」
きらり「コ~ラ杏ちゃん! そういう事言っちゃメッ、だゅ」
アイドル達「……」
みく「でも、もしそうだとしたら……大スキャンダルにゃ!」
李衣菜「ロックすぎてヤバいでしょ。いや、もうロックってレベルじゃないって!」
美嘉「えっ、何々? えっ、誰の事言ってるの?」
莉嘉「アタシはあの人の方が勝つと思うな! その方が刺激的じゃん☆」
みりあ「あのねあのね、みりあはちひろさんがお似合いだと思うな~♪」
美嘉「んっ? んっ? えっ、皆わかるの?」
アイドル達「……」
蘭子「我が友の横に相応しきは、緑の悪魔か緑の女神か……」
楓「こんにちは、何の話をしてるのかしら?」
蘭子「ぴっ!?」
アイドル達「……!?」
楓「あら? 皆静かになっちゃったけど……」
アイドル達「……」
楓「?」
美嘉「ヤッホー★ 楓さん、こんな所にどうしたの?」
楓「ええ、ちょっと大事な話があって」
アイドル達「……!?」
美嘉「へー、大事な話ってアイツに?」
楓「それと、ちひろさんにも。ふふっ、今から楽しみだわ♪」
アイドル達「……!」
楓「あの二人は?」
美嘉「あっちのルームで二人で話してるよー★」
楓「ありがとう。それじゃあ、お邪魔しました」
美嘉「ハイホーイ★」
アイドル達「……」
美嘉「……ん? どうしたの、皆? 顔、チョー怖いんだケド★」
アイドル達「……」
・ ・ ・
武内P『いえ……しかし、仕事が』
ちひろ『もう、いつもそう言って!』
楓『私と仕事、どっちが大事なんですか?……ふふっ、一度言ってみたかったんです♪』
武内P『……』
未央「……意外と和やかだね」
卯月「……ちょっと安心しました」
凛「……喋らないで。よく聞こえないから」
・ ・ ・
楓「さっきは二人で、とても楽しそうでしたね」
武内P「あの、いえ、あれは……」
ちひろ「ええ、とっても楽しかったです♪」
楓「ひどい人……もう、私とは遊んでくれないんですか?」
武内P「……」
カタンッ
武内P・ちひろ・楓「?」
武内P「では……終わり次第連絡しますので」
ちひろ「よく言うわ~いつも騙してばか~りで~♪」
楓「うふふっ……私が何にも知らない~とでも思っているのね~♪」
武内P「いえ……今日は本当に仕事が……!」
ちひろ・楓「開き直~るその態度~が~気に入らないのよ~♪」
武内P「……もう、勘弁してください」
ちひろ・楓「両手をついて、謝ったって~、許してあ・げ・ない♪」
おわり
武内P「犬猫診断、ですか」
みく「そうにゃ!」
武内P「しかし……何故、そんな事を?」
みく「もしもCP皆でネコチャンイベントをやる時に、知ってたら良いかなって」
武内P「なるほど……確かに、それはあるかもしれません」
みく「だから、Pチャンに協力して欲しいの!」
武内P「わかりました。お手伝いさせて頂きます」
みく「じゃあ、まずは凛チャンからね!」
凛「私? 私は、どう考えても犬タイプだと思うんだけど」
みく「Pチャンはどう思う?」
武内P「……少し、失礼します」
凛「? 何、アゴの下なんかを触って……」
武内P「……」
凛「……ゴロゴロゴロゴロ」
武内P「渋谷さんは、意外にも猫タイプだったようですね」
みく「ちょっと待って!? 何それ!?」
武内P「いえ……犬猫診断、ですが」
凛「ゴロゴロゴロゴロ」
のしっ…
みく「Pチャンの膝の上に乗って丸く……!?」
武内P「あの、協力とは、こういった形でよろしかったでしょうか?」
凛「ファー……ゴロゴロゴロゴロ」
みく「想像の遥か上だよ! こんな事になるなんて全く思ってなかったにゃ!」
武内P「ですが、これが一番だと思いましたので……」
凛「……スピー……スピー」
みく「……寝ちゃったにゃ」
武内P「このまま、ソファーで寝かせておきましょう」
みく「……」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……!」
みく「じゃ、じゃあ次はあーにゃん!」
アーニャ「私、ですか?」
みく「あーにゃんなら、きっと猫タイプだと思うにゃ!」
武内P「……では、失礼します」
アーニャ「……ふふっ! くすぐったい、です、うふふ!」
武内P「……では、少し背中を撫でさせていただきますね」
アーニャ「背中?」
武内P「……」
アーニャ「……ハッハッハッハッ」
みく「!?」
武内P「アナスタシアさんは、犬タイプだったようですね」
アーニャ「ハッハッハッハッ」
ころんっ
みく「お腹を見せて仰向けに寝転がった!?」
武内P「さすがにお腹を撫でるのはまずいので、新田さん、お願いします」
美波「はっ、はい!」
アーニャ「ハッハッハッハッ……クゥーン」
みく「何なの!? Pチャンのその技能は一体何なの!?」
武内P「いえ、これはプロデューサーとしての技能の一部ですが……」
アーニャ「……スピー……スピー」
美波「寝ちゃいました、ね」
武内P「ソファーに運んで、寝かせておきましょう」
みく「……」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
みく「……もうこのへんにしておかない?」
武内P「? まだ、お二方しか診断は終わっていませんが」
みく「で、でも……」
李衣菜「もしかして、みくちゃん……」
みく「な、何?」
李衣菜「自分が犬タイプかもしれない、ってビビってるんじゃない?」
みく「そ、そんな事ないにゃ!」
武内P「……」
みく「みくは、皆の前であられもない姿を見せたくないだけだよ!」
凛・アーニャ「スピー……スピー……」
李衣菜「ふーん?」
みく「李衣菜ちゃんだって、ああなるのは怖いんでしょー!?」
李衣菜「わ、私はああはならないよ! 何せ、ロックな魂があるからね!」
みく「へー! じゃあ、実際にやってみればわかるにゃ!」
李衣菜「良いよ、やってやろうじゃん!」
武内P「では……次は多田さんで、よろしいですか?」
李衣菜「はい! プロデューサー、手加減なんかいりませんからね!」
・ ・ ・
李衣菜「クゥーン……キュウウーン……」
みく「いやー、見事なドッグな魂にゃ」
武内P「前川さん、お腹を撫でてあげてください」
みく「はいはい……ほーら李衣菜ちゃん、なでなでー」
李衣菜「クゥーン……スピー……スピー」
みく「寝るの早っ!?」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
美波「……それじゃあ、次は私が」
みく「美波にゃん、いいの?」
美波「アーニャちゃんだって頑張ったんだもの」
アーニャ「スピー……スピー……」
美波「それに、リーダーでお姉さんの私がここで頑張らないと、ね♪」
武内P「では……次は新田さんで、よろしいですか?」
美波「はいっ!」
アイドル達「……」
武内P「……では、失礼します」
美波「あっ……♡ やぁん♡ くすぐった……んっ♡」
武内P「……では、背中を撫でさせて頂きます」
美波「んんっ♡ 背中をそんなにっ……♡ こんなの初めてっ♡」
みく「ストップ! ストップにゃあああああ!」
美波「はぁ……♡ はぁ……♡ みくちゃん、どうしたの……?」
みく「それはこっちのセリフにゃ! す、スケベすぎるよ美波にゃん!?」
武内P「どうやら、新田さんは犬猫というより、ただのメスのようですね」
みく「担当アイドルに対して言うセリフじゃないにゃ!」
みく「犬猫だけじゃなく、そんなのまで診断されるの!?」
武内P「そうですね、この診断は年齢が若い程早く結果が出ます」
美波「でも……アレ以上続けたら、私……」
武内P「新田さんは、現状ならば診断結果に頼らず犬猫どちらのタイプも選べます」
美波「そう、なんですか?」
武内P「はい。なので、犬系、猫系を問わず、メスとして活躍出来るかと」
美波「――はいっ! 美波、いきますっ!」
武内P「良い、笑顔です」
みく「……」
武内P「次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
武内P「ご安心ください。高校卒業程度の資格がなければ、新田さんの様にはなりません」
みく「じゃ、じゃあ、美波にゃん以外は大丈夫なんだ」
美波「もう! まるで、私が大丈夫じゃなかったみたいじゃない!」
みく「あれで大丈夫だと思ってた事が驚きにゃ!」
武内P「……次は、どなたになさいますか?」
アイドル達「……」
・ ・ ・
アイドル達「スピー……スピー……」
みく「……」
武内P「さて、残るは前川さんだけですね」
みく「み、みくは診断されなくても大丈夫にゃ! 絶対ネコチャンだから!」
武内P「そう、でしょうか?」
みく「……」
武内P「診断してみた結果、意外な方が犬タイプ、猫タイプ逆のケースもありましたし」
みく「……!」
みく「で、でも……」
武内P「もしかしたら、前川さんも……」
みく「んっんー……あー……ごろごろごろごろ」
武内P「? 前川さん?」
みく「いやー、みくのネコチャンパワーが、喉の撫でられる前に溢れちゃったにゃ!」
武内P「……はぁ」
みく「これはもうネコチャンにゃ! 間違いないにゃ! にゃー!」
武内P「……」
武内P「……そこまで自信がお有りでしたら、きっと大丈夫でしょう」
みく「そうにゃ! みくは、きっとネコチャンタイプにゃ!」
武内P「……では、失礼します」
みく「ま、待って! 心の準備が!」
武内P「……」
みく「Pチャン、落ち着いて! 落ち着いて話し合うにゃ!」
武内P「……」
みく「だ、駄目……にゃ、にゃ……にゃあああああああ!?」
・ ・ ・
アイドル達「……スピー……スピー」
武内P「……」
ガチャッ
ちひろ「おはようございま……って、皆寝ちゃってるんですか?」
武内P「千川さん、おはようございます」
ちひろ「あの……一体、何が?」
武内P「いえ、犬猫診断を少々」
ちひろ「あぁ、なるほど」
アイドル達「……スピー……スピー」
ちひろ「それで、結果の方はどうだったんですか?」
武内P「予想通りの方も居ましたし、イメージとは真逆の方もいましたね」
ちひろ「実際にやってみるものですねー」
武内P「はい。今後の企画に活かせるかと」
ちひろ「ところでプロデューサーさん」
武内P「? はい、何でしょうか?」
ちひろ「私って、結構尽くすタイプなので犬タイプだと思うんですけど、どう思います?」
武内P「……」
ちひろ「もー! 返事に困らないでくださいよ!」
ちひろ「でも、プロデューサーさんは犬って感じですよね」
武内P「そう、ですね。私もそう思います」
ちひろ「あら」
武内P「……プロデューサーと言えども、サラリーマンですので」
ちひろ「……会社の犬、って事ですか?」
武内P「そう、なりますね」
ちひろ「もう! 私はそういう意味で言ったんじゃないですよ!」
武内P「? では、どういう意味でしょうか」
ちひろ「先の見えない道を歩くアイドルを導く、大型の無口で優しい盲導犬みたいだな、って♪」
おわり
ウンコが足りてないのでウンコ書きます
594 : 以下、名... - 2017/11/24 20:59:21.20 8DMPpbq5o 490/742どういうことなのだよ...
プゥッ。
今後の活動に関して、私達は話し合っていた。
黒いソファーに、ガラス製のテーブルの上に載せられた資料。
正面に座る彼女は、真剣にそれを覗き込んでいた。
そして、ふと、会話が途切れた瞬間、先の音が聞こえたのだ。
私は、プロデューサーと言えどもアイドルに幻想は抱かない。
彼女達の存在は現実であり、当然、放屁もする。
そこに人間としての違いなどあるはずもなく、仕方の無い事なのだ。
プロデューサーとして、いや、一人の大人として今取るべき態度。
注意をする、というのも正しい選択だろうが、私はそれを選ばない。
何故ならば、相手はまだ年端もいかない少女であり、
私の様な男にそれを指摘されるのは非常に気恥ずかしいものであるだろうからだ。
故に、私がとるべき行動は一つ。
何もなかった事にする、これだ。
咳払い一つせず、さも聞こえなかったかのように自然に振る舞うのがベスト。
プッ、プゥブゥッ、ブリリッ、ブプッ。
私の予定は、儚くも崩れ去った。
響き渡る音と、異臭と共に。
私は、今どんな顔をしているのだろうか。
恐らくだが、全ての感情が抜け落ちた無表情でいると思われるが、
確認のしようは無いし、その必要はないだろう。
今、目を向けるべきは私の表情などではなく、目の前の少女の危機。
広がる染みは、未だ留まる事を知らない。
「大丈夫、ですか?」
微塵も大丈夫ではない事は百も承知だ。
彼女は突然脱糞して大丈夫でいられる様な異常な神経の持ち主ではないし、
申し訳ないが、私もその様な神経のアイドルを担当したいとは思っていない。
しかし、何か声をかけなければならないのなら、まずは安否確認から。
大事故が起こっているとしても、確認を怠るものではないのだ。
「……――何が?」
何が?
彼女は、そう、言ったのか?
まさか、現実を受け入れる事が出来ないでいるのか?
私達は、無表情で見つめ合った。
こういう時にする表情を私は知らない。
異臭が鼻にまとわりついてくる。
感覚器官の一部として、嗅覚は危険を教えるためにもあると何処かで聞いたことがあったが、
目の前の危険から逃れる事は出来ないし、ただ、止まないアラームに成り下がっていた。
「……」
自然と、右手が首筋にいった。
心を落ち着けるためのルーティーンという物が一時期話題になったが、
私のこれもそうなのだろうか、よく、わからないが。
落ち着いて、現状を把握し直そう。
目の前には、脱糞し、現実を受け入れられないアイドルが一人。
駄目だ、冷静になって考えなどしたら、その瞬間に心が折れてしまう。
今の私は、人間ではないと考えるべきだ。
ただ、与えられた問題に対処するだけの、無口な車輪、それが今の私だ。
車輪ならば、道中汚物の上を走ることもあるだろう。
行こう、蒼い風が駆け抜けるように。
空調の暖房の風向は、私に向かっていた。
私は、無言でその不愉快な臭いを運んでくる風を止めた。
私は立ち上がり、ゆっくりと彼女へ向かっていった。
その間にも彼女に特筆すべき反応は一切なく、ただ、机の上の一点を見続けていた。
視線の先には、今後予定されているシンデレラプロジェクトの企画書が並んでいる。
彼女が、どの点に注目しているのかわからない。
だが、彼女は今、必死で戦っているのだ。
アイドルとしての自分を必死に頭の中に思い描き、
脱糞してしまった情けない自分と必死に戦わせているのだ。
その戦いを応援するのが私のプロデューサーとしての役目であり、
邪魔をする事など出来はしない。
――パブリュッ。
……どうやら、まだ全てを出し尽くしてしまった訳ではなかったらしい。
だが、彼女の顔には微塵の動揺も見られないし、むしろ、堂々としているとさえ言える。
これも、ひとえに彼女がアイドルだからこそ成せる業。
ステージに立つ前の彼女もこんな顔をしていただろうか。
いや、今は考えるのは辞めておこう。辞めておくべきだ。
「足元、失礼します」
未だ微動だにしない彼女の足元に跪いた。
距離が近づいた事により、異臭はより強烈なものとなって私の鼻孔を刺激、いや、大打撃してくる。
この様な状況だからか、彼女の食生活に偏りがあるからか、それはわからない。
だが、私にとってそんなものはどちらでも良かった。
臭い。
とても、すごく、臭い。
「……」
鼻をつまんで臭いを遮ってしまえば楽になれるだろう。
だが、それによって彼女はとても傷ついてしまうだろうし、今後の関係にも大きな支障が出るだろう。
それは喜ばしい事では無いし、私の望む所でもなかった。
私はプロデューサーだ。
アイドルが諦めない以上、私がそれを見捨てる事はない。
ああ、だが――
――とても……臭い。
「靴を脱がせますね」
幸い、座っていたソファーが少し沈み込んでいたため、彼女の足元は無事に済んでいた。
座り心地がとても良い、この黒い皮のソファーを私はとても気に入っていたし、
これを使用したアイドル達も、初めて座った時に少しはしゃいでいたのを覚えている。
その思い出のあるソファーが物理的に汚されてしまった事に物悲しさを感じるが、
彼は、その身を呈して被害を最小限に留めてくれているのだ。
……長い間、お疲れ様でした。ゆっくり、休んでください。
「……」
靴を脱がせるという私の言葉への反応はなく、彼女は未だ己と戦っていた。
なので、私は彼女の右の足先を左手で優しく持ち上げ、
右手で、体が揺れない様、恭しく彼女の靴を脱がせた。
おかしなものだ。
シンデレラはガラスの靴を履かせて貰う物語だと言うのに、今、私がしているのはその真逆。
それだと言うのに、今、これは彼女がアイドルとして続けていくために必要な事なのだ。
アイドルに教えられる事も沢山ある。
だが、こんな教えられ方をするとは全く思っていなかった。
・ ・ ・
「……」
無事、両方の靴を脱がせるのに成功した。
今、彼女の靴は少し離れた位置に避難させており、安全は確保されている。
だが、問題はここからだ。
「では、靴下も脱がせますね」
これは、私にも正しい判断なのかはわからなかった。
靴下を脱がせるというのは、靴を脱がせるよりも遥かに難易度が高いからだ。
脱がせる事自体は難しくはないのだが、問題は体の揺れ。
もしも、彼女が靴下を脱がせる時に体を揺らして、ソファーに体を横たえでもしたら?
……そう、大惨事に陥ってしまう。
果たして、これが正しい選択なのだろうか?
「……」
自問自答する私の目に、彼女がコクリと頷いたのが見えた。
私に、貴女を信じろというのか?
脱糞をしてしまったアイドルの貴女を?
……答えは決まっている。
アイドルを信じるのが、プロデューサーだ。
・ ・ ・
「……」
今、私の目の前には滑らかな肌の、彼女の両の素足があった。
これもひとえに、彼女の普段のレッスンの成果。
鍛え抜かれたバランス感覚は、沈み込んだソファーに座りながら、
他人に靴下を脱がされるという非常に難易度の高い行動すら乗り越えていった。
その事を褒めたい衝動に駆られたが、今はまだ、戦いの最中。
決して、今は褒めるタイミングではない。
「……」
靴も、靴下も避難させた。
これ以上、余計な被害が増える事もないだろう。
さて……
……――ここから、どうしたものか?
私は、出来るだけの事はやったつもりだ。
これ以上は、本人が動くべきではないかと思うのだが。
しかし、彼女は動かない。
そして、異臭も止まらない。
「……」
「……」
二人の間に流れる沈黙。
少し前に、この沈黙を破って彼女が脱糞したのが、今は遠い過去に感じられた。
しかし、問題は何一つ解決していなく、問題どころか、便も山盛りだ。
何故それが私にわかったかと言えば、何の事はない、少々下痢気味だっただけの事。
「……」
「……」
無言で見つめ続ける私の視線を振り払うかの様に、彼女はフルフルと、首を横に振った。
一瞬その意味が理解出来なかったが……理解したくはなかった。
彼女と、短くない期間アイドルとプロデューサーとして付き合ってきて、わかってしまった。
彼女は、この先も私の助けを必要としているのだ。
頼られている、のだろうか。
使われている、のだろうか。
そのどちらでも、私は構わない。
ただ、本当に私がやらなければならないのですか?
自分で後処理をする事は、本当に出来ないのですか?
答えてください。
お願い、シンデレラ。
・ ・ ・
「……」
アイドルとは何だろう。
プロデューサーとは何なのだろう。
自分自身に問いかけてみるが、鼻につく異臭が考えを纏めさせてはくれない。
私は、上着を脱ぎ、ネクタイを外し、ワイシャツを脱ぎ、遠方へ避難させた。
これからする事を考えれば、この判断は当然のもの。
アイドルの前で私がこの様な姿を晒すなど思ってもみなかったが、
アイドルが私の前でこの様な姿を晒すなど思ってもみなかった。
私は、これから、アイドルの汚物を処理する。
自分に言い聞かせ、心を鎮める。
そうでなければ、心が沈まる。
――彼女は、今、泣いているのだ!
――それを笑顔にさせずして、何がプロデューサーだと言うのか!
……私の心は、泣きたい気持ちでいっぱいだった。
「……」
無言で彼女の前に立った。
変わらない表情、姿勢、そして、異臭。
この状況が夢であれば良かったのにと思うが、紛れもない現実だ。
私の右手には、パンツを両断するためのハサミが握られていた。
彼女も、まさかここまで大惨事になったパンツを洗って再使用するとは思えなかったし、
脱がせる時に私に汚物がかかるかも知れず、それは避けたかった。
「パンツは切ってしまおうと思っていますが、宜しいですか?」
「……」
彼女は、無言で頷いた。
返事くらいちゃんとしなさいと言えれば良いのだろうが、
私は、生憎とそういったコミュニケーションが苦手だった。
だから、彼女がパンツを切っても良いと、首肯だけでも反応を見せた事を喜んでおこうと思う。
私の左手には、タオルと、ビニール袋が握られていた。
タオルはハンドタオルで面積は非常に心許ないし、ビニール袋もそこまで大きいものではない。
だが、今は、この二つがとても頼もしかった。
偶然にも、いや、奇跡的にも、この事態に対処するだけの道具は揃っていたのだ。
アイドルの神というのは、非常に気まぐれで、残酷かもしれないが、
希望を残してくれていただけ感謝するべきなのかもしれない。
目の前にアイドルの神が居たら、私は全力で殴り飛ばしているだろうが。
「……」
「……」
汚物の処理を始める前に、彼女には言っておかなければならない。
「……人間、誰しも過ちを犯してしまうものです」
彼女の前に膝立ちになり、彼女が見つめる一点との視線を遮り、言った。
そこで、彼女が脱糞してから、初めて私達の目が合った。
「……?」
首をかしげる彼女に向かって、私は言葉を続ける。
「今回の事は、既に起こってしまった事です」
「……」
「ですが、今回の事を反省し、次につなげる事が出来る」
「……」
「次からは、気をつけましょう」
責めているように聞こえなかっただろうか。
私は、心の底から、次はこんな事の無い様にして欲しいと思っているだけなのだが。
「っ……!」
彼女の目から、大粒の涙がポロリポロリと零れ落ちた。
そして、彼女はあろうことか、私に抱きついてきた。
鼻に広がる、シャンプーの香り。
態勢が変わった事で広がる、強烈な異臭。
私は、抱きつかれた事に動揺しながらも、
二つの香りが織りなす絶望のハーモニーに歪む表情を見られなかったのに安堵していた。
「……」
そうだ、彼女はアイドルとは言えまだ年端もいかぬ少女なのだ。
それが他人の前で脱糞した時の気持ちは、私如きに推し量れるものではなかったのだ。
表面上の冷静な姿を見て自分一人で納得していたが、違った。
彼女は戦いながらも、不安に押しつぶされそうになっていたのだ。
「うっ……ぐすっ……!」
「……」
耳元から聞こえる彼女の嗚咽。
今の、抱きつかれている状況はアイドルとプロデューサーとしての、正しい距離感とは言えない。
しかし、状況が状況だ。
今は、彼女を突き放す場面では、無い。
「大丈夫です、私に任せてください」
「ひっく……うぅ……!」
優しく、小さな子供に言い聞かせるように、言った。
ハサミをソファーに置き、彼女の背中を安心させるように軽く、ポンポンと叩いた。
プッ、プッ。
その拍子に、放屁。
「うぅ~~っ! ひっ、ぐ、ううう!」
彼女は号泣した。
やはり、慣れない事はするものではなかった。
「……」
今、私が彼女にかけられる言葉は何一つ無い。
兎に角、今は一刻も早く汚物の処理を済ませてしまおう。
彼女に抱きつかれたまま、耳元で鳴り響く彼女の泣き声をBGMに、
私は彼女のスカートに手を回し、まくりあげた。
広がる、強烈な異臭。
しかし、私は負ける訳にはいかないのだ。
舌を噛み、漏れそうになったえずきをそのまま噛み殺した。
既に私の右手は、彼女の汚物によって汚れている。
これ以上自身の手が汚れる事に、何の躊躇いがあろうか。
脇に置いていたハサミを取り、彼女の肌を傷つけないよう、
パンツと肌の間に滑り込ませた。
ハサミが冷たかったからか、これからパンツを切られるからか彼女の体がビクリと震えた。
しかし、今の私はその程度では止まらない。
ここまで来たら、もう、止まれない。
ジョキリ。
彼女のパンツの側面がハサミによって両断された。
広がる、強烈な異臭。
目に飛び込んでくる、未消化のコーン。
「……」
SAY☆いっぱい輝く
輝く星になれ
運命のドア 開けよう
今 未来だけ見上げて
輝くのは星ではなく、コーン。
残酷な運命のドアを開け、私は天を仰いだ。
「……」
そっと 鏡を覗いたの
ちょっと おまじない 自分にエール
だって リハーサル ぎこちない私
鼓動だけかがドキュンドキュン(汗)
ファンファーレみたいに
鏡を覗いたら、私は今どんな顔をしているのだろう。
ちょっと、というか、とんでもない呪いに自分を応援したくなってくる。
鼓動だけでなく、脳が、ドキュンドキュンと警鐘を鳴らしている。
ファンファーレ? ファン、ファン、ファンファンファン、ファンファンのファン♪
「……」
慣れないこのピンヒール
10cmの背伸びを
誰か魔法で 変えてください
ガラスの靴に
こんな状況に慣れたくは無い。
10cm? 被害の範囲はそんなものではない。
シンデレラへの道とは、ここまで険しいものなのか。
「……」
SAY☆いっぱい輝く
輝くSUPER ST@Rに
小さな一歩だけど キミがいるから
星(せい)いっぱい輝く
輝く星になれるよ
運命のドア 開けよう
今 未来だけ見上げて
広がる星々をビニール袋に詰めていく。
小さいどころではない、進捗状況は良好だ。
透けたビニール袋からコーンが見えるが、気にするのはよそう。
目立つ箇所の汚れも拭いた、さあ、袋の口を閉じよう。
今、未来だけ見上げて。
・ ・ ・
全ての処理が終わった。
彼女は、今はシャワー室でシャワーを浴びているだろう。
履く物がないと汚れたスカートのまま移動せねばいけないと思っていたが、
彼女のカバンの中にレッスンの時に使用するジャージが入っていたのは僥倖だった。
私はやり遂げたのだ。
誰にも彼女が脱糞した事実を知られる事なく、送り出す事が出来た。
これは奇跡と言っても過言ではないだろう。
だが、問題はまだ残っている。
「……」
この、ソファーだ。
染みは誤魔化しようのない程広がっているし、何より、臭いがついてしまっていた。
私の鼻も大分麻痺しているとは思うのだが、この臭いだけは誤魔化しようがない。
どちらにせよ買い換えなければならないが――
コン、コン。
「っ……!?」
まさか、このタイミングで、来訪者が……!?
ガチャリ。
ゆっくりと、ドアが開かれていく。
彼女を送り出した事に安堵し、鍵をかけ忘れてしまっていた私の迂闊さを呪った。
覆水盆に返らずとは正にこの状況だ。
ドアが開かれ、私の目に映ったのは、この部屋の異臭に気づき歪んだ表情だった。
ここで、対応を間違ってはいけない。
ここで間違ってしまったら、今までの努力が全て水泡に帰す。
それだけは、彼女の名誉と、私の犠牲のために、あってはならない。
「……すみません、先程まで取り込んでいまして」
今、ここで私が脱糞して誤魔化すか?
いや、それは無理だ。
それでは、部屋に入った時に感じた異臭の説明にはならない。
どうすれば良い、何と言えば良い……!?
「……」
その時だった。
私の脳裏で、悪魔が囁いたのだ。
私の中にも、こんな悪辣な考えをする悪魔が潜んでいたとは、思いもしなかった。
今の私は、強烈な異臭によって、思考までも染まってしまったというのか。
しかし、この手は既に汚れている。
ならば、まみれようではないか。
「せん――……いえ、すみません。体調が、悪かった様なので……」
悪魔の思考に。
私達は、アイドルのために存在している。
故に、共にまみれて頂きます。
明言はしなかったので、追求される事は無いでしょう、ご安心ください。
しかし……大変、申し訳ありません。
「……ははは」
思わず、乾いた笑いが零れた。
部屋には、未だ異臭が立ち込めていた。
おわり
武内P「全力で甘やかして欲しい?」
未央「うんうん、私、お兄ちゃんってのにちょっと憧れてたんだよね」
卯月「あっ、私もそれはわかる気がします」
凛「そう? 私は別にそうでもないかな」
武内P「しかし、アイドルの貴女達を甘やかすと言っても……」
未央「お願い! ちょっとだけで良いからさ!」
武内P「……」
ちひろ「良いんじゃないですか? ちょっと位なら」
武内P「……千川さん?」
ちひろ「未央ちゃんも、プロデューサーさんなら変な事はしないって思ってるのよね」
未央「その通り! さっすがちひろさん、わかってるね~!」
ちひろ「うふふ、褒めても何も出ないですよー」
武内P「……」
ちひろ「信頼してるからこそ、甘やかして欲しいって発想が出て来るんですよ」
武内P「そういう……ものでしょうか」
卯月「はい♪ ちょっと恥ずかしいですけど……えへへ」
凛「でも、プロデューサーにそんな真似出来るのかな」
武内P「……少し、練習が必要かもしれません」
未央「練習? 甘やかすのに練習が必要って……どういうこと?」
武内P「全力で、との事なので加減が難しい、私はそう判断しています」
一同「……」
未央「ちょ、ちょっと待って? そこまで甘やかすつもりなの?」
武内P「はい。私に出来る限りの事はするつもりです」
卯月「そ、そこまで……ですか?」
武内P「当然、アイドルとプロデューサーという関係以上の事はしません」
凛「ふーん。だけど、練習が必要なレベルで甘やかすんだ」
武内P「そうですね……一応、そのつもりでいます」
一同「……」
未央「じゃ、じゃあさ! 試しに私で練習してみてよ!」
卯月「み、未央ちゃん!?」
凛「何言ってるの?」
未央「だってさ、なんだか面白そうじゃん?」
武内P「いえ、それは出来ません」
未央「えっ、何で?」
武内P「本田さんはアイドルなので……練習相手にするのは、少し」
一同「……」
卯月「でも、それじゃあ……」チラリ
ちひろ「?」
凛「うん、この場に居る練習相手は一人しかいないね」チラリ
ちひろ「えっ? えっ?」
未央「お願いちひろさん! 甘やかす練習相手、やってあげて!」
ちひろ「わ、私ですか!?」
武内P「そう、ですね。千川さんならば、練習相手として問題はないかと」
ちひろ「……!?」
未央「大丈夫だって! だって、あのプロデューサーだよ?」
ちひろ「ええと……でも……」
卯月「お願いしますちひろさんっ。プロデューサーさんと仲良くなるチャンスなんです」
ちひろ「だ、だけどね?」
凛「練習だから平気だって」
ちひろ「……」チラリ
武内P「……」
ちひろ「……はぁ、わかりました。仕事もあるので、少しだけですよ」
武内P「……では、少し準備をさせて頂きます」
未央「準備って……」
武内P「……」
卯月「……移動して、ソファーに腰掛けただけですね」
武内P「千川さん、もし不快に思われたら、すぐに仰ってください」
ちひろ「は、はい」
凛「何それ?」
武内P「……」
武内P「では、いきます」
「……おいで」
プロデューサーさんが、いつもの無表情ではない、優しく、穏やかな笑みを向け、
私に向かって軽く手招きをしてきた。
彼の空気や口調が突然変わった事に驚きを覚えたが、
それ以上にこちらを招き寄せる手の動きから目が離せず、自然と彼に歩み寄っていった。
「……」
背の低い私は、背の高い彼が座っていても目線にあまり差はない。
だから、彼の慈しむような、尊ぶような目が私を捉えて離さない。
そうするのが自然だとばかりに、私は、彼の両脚の隙間にあるソファーの小さな一角に腰を下ろした。
すると、思った通り、彼は私を後ろから優しく、壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめた。
「いつも、君には助けられている。ありがとう」
包み込む様な彼の言葉に、私は彼の役に立てていたんだという実感を得、
満たされた気持ちでいっぱいになった。
体の前に回された彼の腕にそっと手を添え、目をつむり、私はこう返した。
「良いんですよ。好きで……やっている事ですから」
未央「ストップ! スト――~~ップ!!」
ちひろ「っ!? み、未央ちゃん!?」
未央「はい、未央ちゃんですよ! いやいやいやいや、ええっ!?」
武内P「……どう、でしたでしょうか?」
未央「どうもこうもないよ! 何それ! 何だそれ!?」
卯月「み、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃいました……///」
凛「ふーん。ちひろさん、楽しそうだったね」
ちひろ「お……おほほほ」ソソクサー
武内P「……」
武内P「自分では、上手く出来ていたかわからないのですが……」
未央「はい、ちひろさん。ご感想は?」
ちひろ「ええと、そうですね……定期的にお願いしちゃおうかしら?」
卯月「ちひろさん……大胆です」
武内P「何か、改善する点等ありましたら、お願いします」
ちひろ「いえいえそんな! 大満足ですよ!」
凛「頭を撫でてもらったりとか、良いんじゃないかな」
武内P「……なるほど、検討してみます」
一同「……」
未央「……さて、と」
卯月「……」
凛「それじゃあ、次は私かな」
未央「しぶりん? まるで、順番が決まってたみたいに言うね?」
卯月「り、凛ちゃんずるいです! 私も、甘やかして欲しいですよー!」
ちひろ「はーいストップ」
未央・卯月・凛「?」
ちひろ「皆は、あれをやられて平気なの?」
未央・卯月・凛「……」
武内P「……?」
未央「それはまあ……」
卯月「言われてみれば……」
凛「確かに……」
ちひろ「もうちょっとソフトに出来るよう、練習が必要だと思うの」
未央「あっ、これずるいやつだ!」
卯月「ち、ちひろさーん!」
凛「ふーん、ちひろさんもそういう事言うんだ」
ちひろ「ねっ、プロデューサーさんももっと練習が必要だと思いますよね?」
武内P「千川さんがそう仰るなら、はい、恐らくその通りなのだと思います」
ちひろ「……!」グッ!
未央・卯月・凛「……」
武内P「……では、お手数ですがもう一度お願いします」
ちひろ「はい♪」
武内P「先程よりもソフトに、頭を撫でるのを付け加える、で宜しいでしょうか?」
ちひろ「はーい♪」
未央「ちひろさん、めっちゃ楽しそう」
卯月「うぅ~! 早く練習終わらないかなぁ」
凛「……」
武内P「……」
ちひろ「……」
武内P「では、いきます」
・ ・ ・
武内P「……どう、だったでしょうか?」
未央「うん、完璧かも!」
卯月「ちひろさん良いなぁ……私も、はやく甘やかして欲しいです」
凛「ふーん。まあ、悪くないかな」
ちひろ「……」
武内P「? 千川さん? 如何されましたか?」
ちひろ「あっ、いえ……その、実際に頭をナデナデされて甘やかされたんですよ?」
武内P「はい、そうですね」
ちひろ「だけどこう、何と言うか……ソフトと言うか、むしろ表現が無かったというか……」
武内P「すみません、仰っている意味が、よく……」
ちひろ「……いえ、何でもありません」
武内P「では、もう練習は終わりでも大丈夫でしょうか」
未央「えっと……最初と二回目の中間位で甘やかす、って出来る?」
武内P「中間、ですか」
卯月「はい……その、冷静と情熱の間でお願いしたいんです」
武内P「……」
凛「私は別に、最初の方でも良いけどね」
ちひろ「それは駄目です。プロデューサーとアイドルなんですから、節度は守らないと」
未央・卯月・凛「……」ジーッ
ちひろ「と、とにかく! 最初のは禁止です!」
・ ・ ・
武内P「……どう、だったでしょうか?」
未央「……うん」
卯月「……はい」
凛「……まあ」
ちひろ「皆、プロデューサーさんにナデナデしてもらって、甘やかされちゃいましたね♪」
未央「いや、そうなんだけどね!? そうなんだけど……」
卯月「三人一緒にというか、三人まとめてというか……」
凛「一気にはしょられた感じがするんだけど……」
武内P「すみません、仰っている意味が、よく……」
未央・卯月・凛「……」
未央「……やりなおし! やりなおしを要求するよ、私は!」
武内P「ほ、本田さん?」
卯月「はい! 私も、今のじゃ納得出来ないです!」
武内P「し、島村さんまで……!?」
凛「逃げないでよ! アンタ、プロデューサーでしょ!?」
武内P「し、渋谷さん……!?」
武内P「せ、千川さん……ど、どうしたら良いのでしょうか?」
ちひろ「もう、皆! あんまりプロデューサーさんを困らせちゃ駄目よ!」
未央「ちひろさん、プロデューサーに優しすぎ!」
卯月「今回は、プロデューサーさんが悪いと思うんです!」
凛「人を期待させておいてアレだよ、信じられない!」
ちひろ「大丈夫ですよ! 私は、プロデューサーさんの味方ですからね!」
武内P「せ、千川さん……!」
未央・卯月・凛「ちひろさん!」
未央・卯月・凛「プロデューサーを全力で甘やかさないで!」
おわり
続き
武内P「大人の魅力、ですか」【3】