1 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 22:57:24.57 JQ52C4d+0 1/13

まつり「と、も、か、ちゃーん」

朋花「なんですか~ まつりさん?」

真上から聞こえる声、見上げるとそこには見慣れた翠の髪ときゅーと! なお顔。 徳川まつりさんでした。

朋花「私は今読書で忙しいのですが?」

手に持った本に栞を挟み、パタンと閉じる。 ふふ、忙しいなんて口で言いましたけど、まつりさんと話すのが楽しみなんです。 素直じゃないですね~

まつりさんは聡い人ですから、私のそんな小賢しい考えなんてお見通しなのでしょう。 でもまつりさんだって小賢しい、まどろっこしい気遣いをしてくれるのだから、おあいこですよ?

まつり「向こうで星梨花ちゃんと育ちゃん達がお菓子ぱーてぃーをしているのです。 姫たちも一緒に参加するのです」

育ちゃんの名前をわざわざ挙げるなんて、本当まつりさんは回りくどくて、おせっかいな人ですね。

朋花「ふふ、いいですね~ あま~いお菓子は私も大好きですよ~」

まつり「まつりも、甘くてわんだほー! なお菓子は大好きなのです」

元スレ
天空橋朋花ちゃんの『お友だちプロジェクト』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510408644/

2 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 22:58:55.43 JQ52C4d+0 2/13

今度、私たちの事務所ではデュオ曲をメインに披露するライブが予定されていて、私のデュオ相手は765プロ最年少のアイドル、中谷育ちゃん。

しかし、ひとつ問題があります。 私、どうやら育ちゃんにあまり好かれていないようなのです。

私はそんなに育ちゃんに対して無礼をはたらいたつもりは無いのですが…… 育ちゃんは私に対してよそよそしくて、一緒に歌う『パートナー』とは言えない関係です。

何とかしなくては、とは思っているのですが、私はまつりさんのようにおしゃべりではありませんし、中々上手くいきません。

まつりさんはそんな現状を見て、お節介をしてくれているのでしょう。 まぁなんと言えばいいか……


まつり「はいほー!」

朋花「ごきげんよう」

星梨花「あっ! まつりさんに朋花さん」

まつり「星梨花ちゃんのてぃーぱーてぃーに姫たちも入れて欲しいのです」

朋花「お邪魔してもよろしいでしょうか?」

可憐「は、はい大丈夫です」

桃子「それじゃあまつりさんと朋花さんもお菓子と紅茶の準備手伝ってもらえる?」

3 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 22:59:33.35 JQ52C4d+0 3/13

さて、せっかくまつりさんが気を回してくれたのです。 育ちゃんと少しでもお話して仲良くならないと……

とは思ったのですが、あいにく育ちゃんはテーブルの向かい側に座ってしまいました。

私から話しかけるのは難しいですし、向こうから声をかけてくれることも無いでしょうし、むむむ……

可憐「あ、あの……」

朋花「なんですか?」

可憐「あっ、えっと…… そこのポッ○ー取ってもらえませんか?」

指差したのはテーブルの端に置いてあったポッ○ー・フローラルローズ味。

朋花「こちらですね」

可憐「あ、ありがとうございます」

朋花「いえ~」

そうです。 この方法を使えば何気なく育ちゃんとお話出来るはず……

4 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:00:51.18 JQ52C4d+0 4/13

よし、育ちゃんの手元に置いてあるキャ○ツ太郎お好み焼き味を貰いましょう。

朋花「育ちゃん」

「は、はいっ」

朋花「そちらのキャ○ツ太郎を取ってもらえますか?」

「ど、どうぞ」

朋花「ありがとうございます~」

…… あら?

育ちゃんからキャ○ツ太郎を貰ったはいいものの、お話をすることは出来ませんでした……

これは不味いですね~、いえ キャ○ツ太郎は美味しいのですけれど。

まつり「朋花ちゃん それひとついただきたいのです」

朋花「どうぞ」

5 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:01:44.84 JQ52C4d+0 5/13

星梨花「まつりさんの大好きなマシュマロもありますよ」

まつり「ありがとうなのです。 でも姫は普段からマシュマロを食べているから今日は遠慮しておくのです」

ふふふ、まつりさんの受け答えはとても自然です。 相変わらず演技が上手ですね~

朋花「それなら私が代わりに食べますよ」

星梨花「はいっ、どうぞ」

朋花「はむ」

ふわふわなマシュマロと甘い甘い、ロイヤルミルクティーの相性はばっちりです。

こんなおいしいものを避けているなんて、まつりさんは不思議ですね~?

まつり(ありがと。 朋花ちゃん)

朋花(いえいえ)

6 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:03:26.43 JQ52C4d+0 6/13

まつり(育ちゃんとは上手く話せそうなのです?)

朋花(難しいですね~…… 育ちゃんはずっと桃子ちゃんと話していますし)

まつり(ふふ、それなら姫に任せるのです)

まつり「育ちゃん」

「なんですか?」

まつり「前に育ちゃんと話した漫画、持ってきたのです」

「ほんとですか!?」

まつり「貸してあげるのです」

「ありがとうございます!」

7 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:04:33.20 JQ52C4d+0 7/13

桃子「何それ?」

「この前までやってたアニメの原作本でね、アニメは途中で終わっちゃってて、どーしても最後の展開が知りたくて気になってたんだけど、わたしおこづかい少ないから中々買えなくて」

「でも前にそのアニメの話まつりさんとしてたらまつりさんは全部持ってるらしくて!」

まつり「姫はアニメ化する前から大ファンだったのです!」

まつりさんがアイサインを送ってきます。 そうですね、育ちゃんとまつりさんが話してるところに上手く入り込めれば……

桃子「それどういう話なの?」

「あのね! 主人公は14歳の女の子で! アイドルを目指していつもレッスンしてて」

まつり「ある日アイドルになるために宇宙へ旅立つのです」

桃子「宇宙……?」

どんなアニメなのでしょう……?

「その後も主人公には色々な試練が待ち受けていて、アニメではドームライブ成功させたところで終わったんだけど……」

まつり「原作ではその後も新キャラに新しい敵も出てくるのです」

桃子「ふーん、桃子も少し気になったかも。 まつりさん次は桃子にも貸してもらえますか?」

まつり「どうぞ、なのです!」

8 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:05:17.53 JQ52C4d+0 8/13

ううん…… 結局会話に上手く加わることが出来ませんでした。

朋花「うーん……」

可憐「ど、どうかしました?」

朋花「いえ…… 何と言いますか、人と話すって難しいものですね」

可憐「あっ…… その気持ちわかるかも…… 私、人見知りで話すの上手じゃなくって」

朋花「可憐さんもですか?」

可憐「私…… こういうみんなでお喋りっていうの苦手で……」

可憐「みんなの輪に入れなくて、はじっこの方でジュース飲んでるだけ…… みたいな……」

朋花「少し、わかる気がします~」

9 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:06:35.08 JQ52C4d+0 9/13

可憐「そんな、朋花ちゃんはいつもみんなから慕われてて…… 会話の中心で……」

朋花「確かにその通りです。 私はこれまで慕われ崇められるばかりでした」

可憐(す、すっごい自信だなぁ……)

朋花「だからこそ、自分から誰かに話しかけて 『お友だちになる』 ことが苦手で難しいんだと思います」

可憐「そう…… なんだ……」

朋花「可憐さんはどうやってお友だちを増やしているんですか?」

可憐「わ、私!? ですか…… 私なんて友達も全然居ないし…… 教えられることなんて……」

可憐「うん…… でも…… 思いきって自分から話しかけることなのかな…… やっぱり恥ずかしくて、上手くいかなかった時のことを考えると勇気が要ることだけど……」

可憐「自分で一歩、踏み出さないときっと何も変わらない…… って思う……」

10 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:07:14.64 JQ52C4d+0 10/13

朋花「……」

自分から…… ですか……

可憐「あっ、ご、ごめんなさい…… 私何かが偉そうに、朋花ちゃんにはこんなアドバイスなんてそんな」

朋花「いえ、ありがとうございます。 早速実践してみようと思います」

可憐「じ、実践…… ?」

教えてくれた可憐さんにひとつ礼をして、私は育ちゃんの方をまっすぐ向いて、ひと呼吸。

朋花「育ちゃん」

「な、なんですか…… ?」

朋花「私のこと、怖いですか?」

「えっ……」

11 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:10:19.85 JQ52C4d+0 11/13

育ちゃんが私を避けているのなら、私の何がいけないのか素直に聞きましょう。

人に自分の嫌なところを聞くのは少し、いえとても怖いことですが、こうしなければ何も解決しないでしょう。

育ちゃんはとても困惑してるようでしたが、隣の桃子ちゃんの方を1度見た後、おずおずと口を開きました。

「えっと…… その、朋花さんいつもニコニコしてるけど、プロデューサーさんにはよく怒ってて、プロデューサーさんその度に謝ってるじゃないですか、だから怒ると怖い人なのかなって思って……」

朋花「そう…… ですか」

まつり「ふふっ」

笑いだしたのはまつりさんでした。

まつり「それは勘違いなのです。 怖いなんてそんなこと全然なくて、朋花ちゃんほど優しい人は居ないのですよ?」

「でも…… プロデューサーさんにいっつも怒ってるのは……?」

朋花「それはプロデューサーさんが私のプロデューサーとしてあまりにも不甲斐ないからですよ~」

桃子「うん、桃子もそう思うな、だいたいお兄ちゃんはいっつも変なことばっかり考えてるんだもん。 みんなお兄ちゃんのこと甘やかしてばっかりだし朋花さんとか桃子とかビシっと言ってあげる人がいないとダメになっちゃう」

「そっか…… 確かにわたしもプロデューサーさんに子ども扱いされてむっなることあるかも!」

朋花「それじゃあ今度、一緒にプロデューサーさんにお説教してあげましょうか?」

「うん…… よろしくね朋花さん!」

朋花「はい~」

12 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:11:28.30 JQ52C4d+0 12/13

* * *


朋花「今日はありがとうございました」

まつり「ほ? 何のことです」

そうですよね、まつりさんはいつだってそうやってとぼける。 ズルい人です。

朋花「私と育ちゃんのことを心配して、星梨花ちゃん達に頼んで『てぃーぱーてぃー』を開いたのでしょう?」

まつり「そんなことないのですよ。 あれは偶然星梨花ちゃん達がわんだほー! な……

まつりさんの目をじっ、と見つめるとまつりさんはおどけるのを止めてくれました。

朋花「お礼くらい言わせてください」

まつり「…… 朋花ちゃんには色々お見通しされちゃうから苦手、かな」

朋花「私はまつりさんのお節介なところ、好きですよ。 ありがとうございます」

まつり「育ちゃんとのライブ頑張るのですよ」

朋花「はい」

『今度は貴女と』

言いかけた言葉は一旦しまっておきました。 今のパートナーはまつりさんじゃなくて育ちゃんなのですから。 失礼ですよ、ね?



おわり

13 : ◆dwiL9FlWN. - 2017/11/11 23:12:23.56 JQ52C4d+0 13/13

読んでくれた人ありがとうございました。

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