1 : 以下、名... - 2017/11/12 08:12:53.57 ym64EA42O 1/6

瑞樹「おはようございます。」

文香むつみ「おはようございます。」

どうやら、文学少女二人で読んだ本について語り合っていたようね。この二人なら、間違いなく冒険小説。

今日、私の予定は、鬼のベテトレさんのレッスン。・・・ちょっと憂鬱だわ。

むつみ「もう、ドキドキしっぱなしでした!」

ふふふ。相当面白かったみたいね。まぁ、文香さんのオススメなら間違いないけれど。

むつみ「やっぱりあの一言ですね!『あなたの冒険は、どこにあるの!?』って。」

!!その言葉・・・言葉は違えど、意味するものは、あの日、私に決心をさせたものと全く同じ・・・

瑞樹「・・・ねぇ、その本、私にも貸してもらえるかしら?」

文香「瑞樹さんにですか?えぇ、構いませんけど・・・」

むつみ「瑞樹先輩も、冒険に興味があるのですか?」

瑞樹「いや、冒険というわけではないのだけれど・・・」

そこにあった本は「グリックの冒険」。アニメにもなった、「冒険者たち」の続編ね。

「冒険者たち」も結構長くて、途中で断念した記憶があるわ。

瑞樹「ちょっと、今の会話で読んでみたくなったの。私がアイドルになったきっかけに似ていたから。」

文香「瑞樹さんが、アイドルになったきっかけですか?」

むつみ「知りたいです!教えていただけますか?」

瑞樹「そうね・・・たいして面白い話でもないと思うけど。」



2 : 以下、名... - 2017/11/12 08:14:31.46 ym64EA42O 2/6

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アイドルになる前、私はアナウンサーをしていたのは、知ってるわね?

レギュラー番組も貰って、時々はゲスト出演なんかもしたりして、割と売れっ子だったと思うわ。

正直、将来的なことを言うなら、間違いなく、出世コースだったと思うの。

でもね・・・

当時、私の中に、一つのわだかまりがあったの。

それは「最高の傍観者」というわだかまり。

あ、勘違いしないでね。アナウンサーという仕事に誇りも持っていたし、

どんなことも可能な限り私情をはさまず、事実のみを伝えてきたつもりよ。

けれど、私はいつも、スポットライトを当てる役割だったの。

ライトを浴びるのは、ニュースだったり、他のタレントさんだったり。

そんなある日、局の中で彼に声をかけられたの。「アイドルに、なりませんか?」って。

ホント、バカよね(笑)そんなことしたら、ヘタしたら仕事なくなるわよ。

それでも、彼はそう言ってきたの。

その時は、年齢のこともあるし、アナウンサーの仕事に誇りを持っていたから、断ったわ。

でも、その名刺はなぜか捨てられなかった。

3 : 以下、名... - 2017/11/12 08:15:25.11 ym64EA42O 3/6

それからしばらくして、仕事でちょっと嫌なことがあって、ムシャクシャしていた時、

部屋で音楽を聴きながら一人酒をしていたのね。

どれくらい飲んでいたかしら・・・少し、頭がボーっとしていた時だったわ。

力強いサウンドと、しゃがれた独特なボーカルが流れ出したの。

「This ain't a song for the broken-hearted」って。

それは、Bon Joviってアメリカのバンドの、「It’s My Life」って曲だったわ。

高校の時に付き合っていた彼氏に借りたCDに入っていたから、かなり前の曲ね。

音楽なんて、普段は軽く聞き流す位なんだけど、その時はなんか、聴き入っちゃった。

そして、その曲は、サビで、こう歌うの。

「It's my life. It's now or never. I ain't gonna live forever. I just want to live while I'm alive.」

訳すと、「これは俺の人生だ。その時は今か、永遠に来ないか。」

「永遠に生きられるわけじゃない。俺は命ある限り、生き続けたいんだ」ね。

酔いなんて、吹っ飛んじゃった。気が付けば、何回もリピートして聴いていたわ。

私は・・・私の人生を生きたい。私のステージに立って、私らしく、輝きたい!

もっともっと、挑戦してみたい!知らない世界へ、飛び出したい!!

・・・その夜のうちに、私は辞表を書いたわ。

4 : 以下、名... - 2017/11/12 08:18:03.31 ym64EA42O 4/6

そして翌日、私はそれを提出。もちろん引き留められたけど、私の気持ちが変わらないとわかってくれたわ。

そして、応援すると言ってくれた。それは他の仲間たちもそうだった。

その数日後、恋人から呼び出されたの。

話はアナウンサーを辞めることについてだったわ。

彼は青年事業家として成功を収めていて、まぁ、いわゆるエリートだったわね。

そ。そのままいけば、超人気女子アナになって、近い将来、お金持ちの青年事業家と結婚して寿退職。

晴れてセレブの仲間入りってレールが用意されていたわけ。

もちろん、それだって、自分で作ってきた道だし、自分でつかみ取ったものよ。

そのコースもなかなかに魅力的だし、自分で作って来たって自負も、もちろんあるわ。

けれど・・・私には満足できる道では、なかったのね。

正直に、自分の気持ちを話したわ。そしたら彼、なんて言ったと思う?

「それなら、今の瑞樹は、ただの無職予備軍じゃないか。」

「今まで苦労して積み上げてきたものを壊すなんて、気でも狂ったのか?」ですって。

「アイドルなんて、使い捨てのお人形じゃないか。」

「露出の多い服を着て、せいぜい愛想ふり巻きながら、へたくそな歌うたって手足バタバタ動かして」

「あとは事務所の力なり何なりで『見せかけだけの人気者』になって」

「数年経って、飽きられる前に、さようなら。」

「そんなくだらない人生を歩むのか?」

「・・・そうね。それでも私は、私として輝きたいの。」

「ほんの一瞬でもいいから、私自身の足で、ステージに立って、ライトを浴びたいの。」

そして彼、こうも言ったわ。

「そんな人とは結婚できない。俺の結婚相手は、ちゃんとした肩書のある人でなければ」って。

まぁ、つまり、彼は「川島瑞樹」ではなく、「売れっ子女子アナ」と結婚したかったのね。

当然、その場で婚約も破棄する旨を告げたわ。だって、バカにしてるじゃない。

「もういい歳なんだから、大人になれ」なんてことも言っていたけど、

「私は十分に大人よ。あなたとは違う人種のようだけど」って言ってやったわ(笑)

そして、それっきり。

局を退職して、荷物を大幅に処分して、ワンルームの小さなマンションに引っ越して・・・

当然でしょ?収入が激減することはわかりきっているんだから。

それからすぐ、Pさんに電話したわ。彼、本当に喜んでくれた。

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5 : 以下、名... - 2017/11/12 08:19:06.68 ym64EA42O 5/6

瑞樹「おしまい。ね、たいして面白くもないでしょ。」

むつみ「瑞樹さん。すべてを捨てて、アイドルになったんですね。」

瑞樹「そんなカッコイイもんじゃないわよ。ただ、バカなだけ(笑)」

瑞樹「収入は激減するし、レッスンはキツイし、Pさんは『お酒は控えろ』ってうるさいし(笑)」

文香「愚者・・・それは誰よりも先を進むものに与えられる称号です。」

文香「その称号を得られるのは、結果を恐れず、誰よりも勇気を持って、自らの足で歩んだ者だけ。」

文香「たしかに瑞樹さんに、ぴったりですね。」

瑞樹「(笑)ありがとう。さて、それじゃあ、その愚か者は鬼のレッスンに行くわね。」

瑞樹「自分で選んだ道なんだから、胸をはって、精一杯に走らなくっちゃ。」

そう、これは私の道。これが、私、「川島瑞樹」の人生よ!

6 : 以下、名... - 2017/11/12 08:20:37.83 ym64EA42O 6/6

以上です。

短いですが、ありがとうございました。

個人的には、ロックというと瑞樹さんが浮かびます。

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