1 : 以下、名... - 2017/07/15 22:34:03.46 iDAVZdURo 1/20


 【モバマスSS】です

 閲覧注意です

2 : 以下、名... - 2017/07/15 22:35:20.71 iDAVZdURo 2/20


 俺はアイドルのプロデューサーだ。
 俺の担当するアイドルたちのレベルは高く、したがって人気もある。
 これも俺のプロデュース力の賜物といってもいいだろう。そうだ、俺の力だ。
 だからというわけなのか、それとも俺の男としての魅力なのか、アイドルたちは誰も俺に惚れているらしい。
 役得だと、俺は思っている。

「ねえねえプロデューサー、これ、食べてみてよ」

 学校の調理実習で作ったというケーキを未央が持ってきた。

「ドーナツの方が良いよね」

 反対側から法子が差し出すドーナツは、焼きたてなのか香ばしい匂いを放っている。

3 : 以下、名... - 2017/07/15 22:36:16.78 iDAVZdURo 3/20


 おいおい、そんなに沢山食えねえよ。
 落ちつけって。
 うお、みちるはパンか。こっちも焼き立てかい。

 美味いのは確かに美味いんだが、どうにも口の中がパサつくのがうぜえ。そう思っているといいタイミングでちひろさんがドリンクを差し出した。
 この千川ちひろという女は割とレベルが高いが、アイドルではない。自分では事務員だとか世話係だとか言っているが、要は俺と会社の間の調整役や連絡係みたいなものだ。

「これ飲んで、そろそろお仕事ですよ」

 ああ、そうだそうだ。なんだっけか。

「はいこれ、次のライブのステージ見取り図です」

4 : 以下、名... - 2017/07/15 22:36:45.10 iDAVZdURo 4/20


 そうだっけ? バックダンサーは? 

「今のところ未定ですね」

 まあいいや、晶葉にダンサーロボ出させよう。

「またですか?」

 そんなに使ったか?
 さて……

「Pチャン、Pチャン、みくの出番増やすにゃ」

「前川下がれ、次ははぁとの番だから。おい、下ーがーれーよ☆」

「前川言うな」

「にょわ~」

「物理的に下げるにゃ~!」

「いいぞ☆ きらりん。待って、はぁとまで下げちゃダメ。こら、やめろや」

 うるせえなぁおまえら、次のトップは柑奈って決めてんだから、諦めろ。

5 : 以下、名... - 2017/07/15 22:37:14.69 iDAVZdURo 5/20

 
 
 ※
 
 
「最近、動員数が減ってないかね?」

「演出がワンパターン気味ですからねえ」

「出てくるアイドルも固定されてきたし、潮時かい?」

「とりあえず、ドリンクの濃度あげてみようか」

「まあ、潰れて元々だしなあ、連中は」

「一応、新人募集かけます?」

「うむ、それはやっておくが、それだけじゃあ辛いぞ」

「とにかく、千川くん、そういう方向で頼むよ」

「はい」
 
 
 ※
 
 

6 : 以下、名... - 2017/07/15 22:37:44.71 iDAVZdURo 6/20


 目を覚ますといつものように頭痛と眩暈。
 気のせいか、こいつらは日に日にきつくなる。
 あ? 待て待て。
 そもそも、いつから……
 
「おはようございます」

 おう、美波。アーニャも一緒か。
 いい格好だねえ。

「Pさんが昨日、夜はこの服がいい、って言ったんじゃないですか」

 ああ、昨日はお前らとだったか。

「あの、次のライブ……」

7 : 以下、名... - 2017/07/15 22:38:13.59 iDAVZdURo 7/20


 バックコーラスの中に入れてやるよ。
 あ?
 なに、その顔。嫌なの? じゃあ全部なかったことに。
 やるの? バック?
 そうかい、なら最初からそう言えよ。
 おう、頑張れよ。なーに、いつかはチャンスも来るさ。多分。

「プロデューサー、朝御飯の準備できてます」

 はいはい。……誰だっけ。
 あ、そうそう、そんな名前だった。思い出した思い出した。
 うんうん、覚えとく覚えとく。

 美味いな、これ。だれが作ったの?
 あ、お前か、え、さっき? 知るかよ。はいはい、覚えた覚えた。

 うるせえな、明日から一か月、毎朝朝飯作り続けたら覚えてやるよ。

8 : 以下、名... - 2017/07/15 22:38:43.05 iDAVZdURo 8/20


 ん、朝飯にもこのドリンクつくんですか、ちひろさん。
 いや、飲みますよ、そういう約束でしょ?

「おはよーございます!!」

 うるせ……茜か、じゃあしょうがねえな。
 お前も食う?
 ああ、食え食え。朝からこんなに食えねえよ。
 あ、明日は朝飯いらねえから。
 茜はドリンクいらねえの? あ、そう。

 そういやあ、アイドル連中はこのドリンク飲まねえな。

 ん、ちひろさんこれ、次回のセトリとプロモーションコンテ。あと、新企画のデータ送ってあるから。

9 : 以下、名... - 2017/07/15 22:39:20.89 iDAVZdURo 9/20



 ※


「いいね、これ。彼、久しぶりのヒット企画じゃないか?」

「確かに、なかなかいいね。ドリンク濃度増し増しが効いたか?」

「いえ、これ以上の濃度は危険ですから、別のアプローチでやってみました」

「別の……ああ、これか……新人アイドル日野茜」

「ふーん、彼、こういうタイプのイベントのほうがいいのかい? 夜伽相手だけじゃダメなのかい。贅沢だねえ」

「まあまあ、予算に関してはそれに見合った成果出してますよ、今のところは」

「だな。しかし、アイドルのキャパを接待だけに振っていると、いずれ破綻しかねない」

「その辺りは考えてるんだろう?」

「はい。やってみますか?」

「そうだな、試してみよう」

「千川くん、そのように頼むよ」

「はい」


 ※
 

10 : 以下、名... - 2017/07/15 22:40:11.80 iDAVZdURo 10/20


「島村卯月、がんばります!」

「おはよーございまーす。今日も元気に、ウッサミーン!」

「あ痛」

「ひ、ひどいですよ、プロデューサー。卯月ちゃんもなんとか言ってくださいよぉ!」

「プロデューサー、お魚れすよ!」

 なんだこの三人。なんか今日はうるせえな。

「いいじゃないですか、元気があって」

 あのね、ちひろさん。物事には限度というものが……

11 : 以下、名... - 2017/07/15 22:40:56.50 iDAVZdURo 11/20


「あれ、プロデューサーさんこういうのお嫌いでした?」

 客じゃなくて俺の好み探ってどうす……
 あ、あれ? なんかおかしくねえか?

「どうしました?」

 いや、別に。

 ……なんか、最近おかしくねえか?

 アイドルは俺を好いてくれてるから色々サービスしてくれるんだよな? 俺の魅力だよな?
 
 ちひろさん、なんか知ってる?

 いや、俺が連中にどう思われてるか。
 仕事ゲットのために嫌々サービスしてんのかね?
 違うって言われるといい気分だけどなぁ……あー、どうなんですかね、実際。

12 : 以下、名... - 2017/07/15 22:41:49.56 iDAVZdURo 12/20



  ※


「千川くん、困るよ」

「彼にヒントでも与えたつもりかい?」

「申し訳ありません、勇み足でした」

「君の先代……音無くんがどうなったか、知らんわけでもあるまい?」

「はい、肝に命じます」

「動員数が下がってきた。君の手腕、見せてもらおうか」

「はい」


  ※

 

13 : 以下、名... - 2017/07/15 22:42:17.52 iDAVZdURo 13/20


 は? 何がダメなんすか。俺の企画のどのあたりが……
 なんですこれ、動員数?
 ……ええ、減ってますね、右下がりですね。

 待ってくださいよ、あ、そうだ、こいつだ、こいつ、人気ないのに出しちゃったから、あーこいつのせいかー、しゃーねーなー。
 次は大丈夫ですよ、ほら、この子、今売れてるこの子をメインに、そうそう。

 あれ、ちひろさん、今日はドリンクは、は? 金? 今までただで……
 天引きだったの?
 じゃあ払いますよ。
 あ、手持ちが、えーと……財布……あれ、そういやぁ、財布なんてしばらく見てねえな。

 おーい、凛、ちょっと金貸して……あ、どこ行きやがった。
 幸子、蘭子、おい、おいって、無視するんじゃねえよ!

14 : 以下、名... - 2017/07/15 22:42:45.06 iDAVZdURo 14/20


 ちょっと、ちひろさん、あいつらおかしいと思いませんか?

 ムカつくなぁ。

「せんせー、お小遣いないの?」

 あ、いや、薫。ちょっとな、財布忘れたみたいで。

「私、お金持ってるよ!」

 待て、さすがにな、うん。

 あの、ちひろさん、なんとかツケでお願い出来ませんか?
 え? 薫に免じて? ありがてぇ。すんません、次の給料で返しますから。

15 : 以下、名... - 2017/07/15 22:43:12.14 iDAVZdURo 15/20



  ※


「思い切ったことするねぇ」

「古株にそっぽ向かせて新人投入か」

「いやいや、まさに一か八かじゃないかね」

「まあ、出し殻ですからね、それくらいしないと使えない男でしょ」 

「最後まで使い切ろうじゃないの、エコだよエコ」

「それもそうですな」

「見直したよ。この調子で続けてくれたまえ、千川くん」

「はい」


  ※


16 : 以下、名... - 2017/07/15 22:43:38.43 iDAVZdURo 16/20


 ごめんなぁ、薫。ごめんなぁ、駄目な男で。

「せんせー、大丈夫。薫がついてるよ!」

 薫、お前だけだよ。こんな俺についてきてくれるの。
 ほんっと……

 ……可愛いな。お前。

 あいつらとは比べものにならねえけどさ……でもあいつらは俺を裏切って……

「せんせー?」

 薫、俺にはもう、俺には……

 薫!

17 : 以下、名... - 2017/07/15 22:44:06.37 iDAVZdURo 17/20


  ※


「ちひろさん、ごめんなさい」

「……うーん。しょーがないですね、薫ちゃんにあんなことまでフォローしてもらうのはちょっと無理でしたね」

「ごめんなさい」

「気にしないでくださいね。ちゃんと次のお仕事のチャンスも回しますから」

「ありがとうございます」

「確認するわね、薫ちゃん、アイツにビンタしたのね」

「はい……だって、いきなり服を脱がせようと……あんなことするタイプだなんて聞いてなくて」

「それはこっちのミスよ。まさか子供趣味があったとはね。他の人で発散してると思ってたのに」

「あのー、もしかして、ストレスとかで新しく趣味が出来たとか」

「……あ、それもあるか。だとしたらなおさらこっちのミスね。薫ちゃんは悪くないわ」
 
 
  ※
 
 

18 : 以下、名... - 2017/07/15 22:44:36.81 iDAVZdURo 18/20


 ……ここ、どこですか?

「小学生アイドルに手を出そうとした人……あ、いえ、才能使い切った人の末路ですよ」

 ……あのさ、ちひろさん。俺聞いちゃったんだけど。

「なんでしょう」

 薫、なんて言ったと思う?
 こんなタイプなんて聞いてないって、泣きながら言ってたんだよ。
 どういう意味だよ。タイプってなんだよ。誰に何を聞いてたんだよ。

「いいじゃないですか。そんなことどうでも。元プロデューサー」

 ははっ、やっぱり、そうなんだ。
 あんたか、それともあんたたちか。なんで、こんな

「出し殻は出し殻らしく、捨てられてくださいな」

 待ってよ。俺、頑張ったよね? まだまだ行けるよ。簡単に捨てて……

「今の貴方の代わりくらい、探せばそれなりにいますよ」

19 : 以下、名... - 2017/07/15 22:45:11.63 iDAVZdURo 19/20

 
  ※


「新人の様子はどうだい?」

「メインは諸星きらりと双葉杏か」

「次はどれくらい保ちますかね」

「経費分と我々の取り分が出るくらい儲けてくれればいいけどね」

「そうですね」

「じゃあ、頼むよ、千川くん」

「はい」

20 : ◆NOC.S1z/i2 - 2017/07/15 22:48:05.22 iDAVZdURo 20/20





以上、お粗末様でした


元ネタ:筒井康隆氏の「養豚の実際」を書いてみたかったんよ。

うん、似ても似つかぬ物になったね、あかん。


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