1 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:29:47.03 O2BhniSDO 1/26


ジリジリ


「…暑いな」

「(今日に限ってみると、梅雨も明けたんじゃないかって日和だ…)」

「ぐへぇ」

「…大丈夫ですか?」ピト

ヒヤッ

「うおう!」

「あ、ごめんなさい…そんなにびっくりされるとは思わなくて」クス

「あ、い、いえ…こちらこそ」

「……でもわざとでしょ?」

「もちろん♪」ニコ

「…」ハア

「はい。水分補給は、ちゃんとしなきゃだめですよー?」ハイ

「……」

「…ありがとう、ございます」

「いえ」


2 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:30:57.21 TYk5A0HQo 2/26


パキ


「…」ゴク

「…」コクコク

「…」プハ

「…」

「…ねっちゅー症には、ね、注意しよー…」ボソ

「」ブッ

「!」

3 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:32:05.32 O2BhniSDO 3/26


「い、いまの面白かったですか?」キラキラ

「……いや…ち、ちょっと強引ですかね…」ボタボタ

「そうですかー…」シュン

「あ、えと…」ゴソ

「ハンカチ。どうぞ」

「あ、どうも…」フキフキ

「…」

「? どうかなさいましたか?」

「…いえ」

「(楓さんに笑わされて、楓さんにハンカチを借りるのって――)」

「(なぜか物凄く釈然としない!)」

「?」キョトン

4 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:33:48.49 TYk5A0HQo 4/26


カンカン…


「楓さんは――今日はレッスンでしたね」

「はい。まだ時間があるので…」ガサ

「お弁当買って来たんです。しばらくのんびりしてようかなって」

「そうですか」


ガチャ


「おはようございまーす」

「おはようございます」

「……、!?」

小梅「あっ……お、おはよう…ございます」

5 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:36:07.61 O2BhniSDO 5/26


「……うん、おはよう。えっと…小梅さん?」

小梅「? な、なん…ですか?」サン?


「……」「……」「……」「……」


「…この大量のてるてる坊主は一体…?」

小梅「あ、えと…こ、これは…」

「なにか呼ぶところですか?」

小梅「? な、なんで…ぷ、プロデューサーさん、さっきから敬語なんです…?」

「べつに怖くなんてないからな」

「わー。どれもちゃんとデザインがあるんですねー」スゴイ

「! か、楓さん! 迂闊に近寄るとまずいですよ!」

小梅「??」

6 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:37:46.76 TYk5A0HQo 6/26


「?」

「あ! Pサンおはよー」フリフリ

「お、柚か。おはよう」

「うん」グリグリ

「…」

「?」キュ

「……まさか、この大量のてるてる坊主は――柚が作ったのか?」

「う? うん。小梅チャンに手伝ってもらったんだー」

小梅「て、……て、手伝い、ました」フンス


「……」「……」「……」「……」


「…そうですか」

「うんっ」ニパッ

「(笑顔が眩しい)」

7 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:38:34.66 O2BhniSDO 7/26


「……えっと、まあ」

「ほどほどにな」ハハ…

「はーい」

小梅「は、はい」

仁奈「仁奈を呼びやがりましたか!?」

「お、おはよう仁奈」

仁奈「はいっ。おはようごぜーます!」ニパッ

「ぷっ」

「そこー許可なく笑うのは禁止ですよー」

仁奈「??」

8 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:39:44.66 TYk5A0HQo 8/26


「……」「……」「……」「……」


ヒョイ


「…これは……ずいぶん裾の長い服を来たてるてる坊主だな」

小梅「あ、そ、それ……あ、あの子が手伝ってくれた――やつ、です…」

「……」ゾゾッ

「ほ、ほぉお」

「Pサン震えてるよ? エアコン効き過ぎかなー」

「お、おぉ…」

小梅「?」

9 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:41:05.47 O2BhniSDO 9/26


小梅「……昔…お世話になった、人、だって…」

「そうなんだー」ヘー

「(なぜ思い出の人を模したてるてる坊主を作ろうと思ったんだ、その子は)」ワカラン

小梅「え、えへへ……あの子も、けっこう…手伝って、くれました…」

「……」チラ


「……」「……」「……」「……」


「…」

「(いよいよ、最初に言った台詞が妙な現実味を…)」ブル

「Pサントイレ行くー?」

「余計なお世話だい」

「てへ?」

10 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:41:36.18 TYk5A0HQo 10/26


「でーきた!」モサ

「…」

「なあ」

「ん?」

「今日はいい天気だけど――明日も晴れて欲しいとか、そういうことか?」

「…あー」

「ううん。違う違う」フルフル

「?」

11 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:42:06.31 O2BhniSDO 11/26


「これはこうするんだー」クル

「?」


「……」「……」「……」「……」


「…? ひっくり返すのか」

「うん。とーりつさせておくと、逆に雨が降るようになるんだって!」

「とーりつ?」

小梅「と、…倒立、ですね。……そ、そんな風に、言われている地方も…あ、あるみたい、です」ハイ

「ああ、倒立ね。なるほど」

「うん」

「……」

「…」ニコニコ

「え? 雨降って欲しいの?」

「? うん、そうだよ?」

「……あ、そう」

「うんっ」

12 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:44:26.05 TYk5A0HQo 12/26


「……まあたしかに」

「…少しくら雨が降った方が、涼しいかもしれないけど…」

「うー…そういうことじゃないカモ…」

「あれ?」

「もう。Pサンってば分かってないなー。分かってないったら分かってないよー」ペチペチ

「いたい」

「てへ♪」ペチペチ

「(…うちのアイドルは俺の頭を叩くのが好きだな)」コドモカ

「…」ペチペチ

「楓さん。せめて真顔はやめてください」

「…」ニヤ

「(こわっ)」

13 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:45:13.63 O2BhniSDO 13/26


「♪」ペチペチ

「♪」ペチペチ

小梅「……」

「…どうでもいいけど」

小梅「?」

「小梅は叩かないんだな。届くようにしゃがんでやろうか」

比奈「どんな配慮ッスか」

「いたのか比奈」オハヨウ

比奈「いま来たところでス」ウス

小梅「あ、…えへ。ぷ、プロデューサーさん…あ、ありがとう。でも、大丈夫」

「そうか?」

小梅「う、うん」コクン

小梅「…だ、だって……わ、私の代わりに、あの子が……」//

「……」

「(なぜそこで照れる)」

比奈「プロデューサー」

「うむ」

比奈「いままでお世話になりました」

「いやいや! 冗談でもやめて!」

小梅「??」

14 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:47:04.42 TYk5A0HQo 14/26


比奈「てるてる坊主ッスか」

「ああ」

「見てみてー。あれ、アタシが作ったPサン坊主!」ピッ

「……意外と似てる。でもその呼び方はやめて」

比奈「スーツを模してあるだけにも見えまスけど」

「PサンはそれだけでPサンだって分かるからすごいよね!」

「ちょっと傷つくぞ、それ」グサ

「…? あれはキノコの形…?」

「……」ヒョイ モゾ…

「…ガチでキノコ入ってんじゃねーか!」バシッ

輝子「あ、あ…き、キノコをいじめないで…」

「お前もいたのか!」

輝子「い、いましたよー。…どうせぼっちですけど…」フヒ

輝子「フヒ、さ、さり気ないキノコアピールだよ……こ、これでプロデューサーの脳裏にはキノコの残像が刷り込まれ…」ブツブツ

「こえぇよ」

比奈「じゃ、私らも一緒にてるてるキノコ作るッス」

輝子「……」

比奈「う、うん」コクン

「てるてるキノコて」

15 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:47:55.70 O2BhniSDO 15/26


シュッ


「プロデューサーさんも、お一つどうですか?」

「…………」

「?」

比奈「まあたしかに、そんな台詞と一緒に、楓さんティッシュを渡されるのはある意味――」

「それ以上は言わんでいい」

比奈「ッス」

「??」

「…そうですね。じゃあ一個、俺も作ろうかな」

「はい」ニコ



「よーし」パンパン

「あーしたあーめになーれ♪」

「でもやっぱお願いするのは雨なんだ」グリグリ

「てへ!」

「(なんか勢いでごまかされた)」

16 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:49:47.06 TYk5A0HQo 16/26







ザー…


「……」

「…お、恐るべしあの子……そして、てるてるキノコ…。まさか本当に雨になるとは…」

「…まあ、梅雨だしな。そりゃ雨くらい、いくらでも降るか…」ハア

「さて。じゃあ傘持ってと」

17 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:50:49.93 O2BhniSDO 17/26


バシャバシャ


「……まあ、涼しげなのは悪くないな」

「そうだね」

「……」

「びっくりした」

「えー。そうでもなさそうだけど」ケラケラ

「いつからそこに?」

「さー?」

「…傘は?」

「ん? 持ってない。パーカー着てるし、大丈夫かなって!」

「大丈夫じゃないだろ」

「…。てへ」

「……ったく」


ギュ


「…」

「梅雨なんだから。傘はちゃんと持ち歩くんだぞ」

「…うん。ごめんなさい」

「いや、べつに怒ってるわけじゃないけど」

18 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:51:28.86 TYk5A0HQo 18/26



ギュ


「…」

「くっつかないと濡れちゃうからね」

「そうだな」

「うん」

19 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:52:04.01 O2BhniSDO 19/26


ザー…


「…ちょっと…雨が弱くなるまで、そこで雨宿りして行くか」

「あ、うん。いいと思う」

「そっか」

「うん」

20 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:52:53.04 TYk5A0HQo 20/26


ザアアアアア…


「ふにゃー。びしょびしょだよー…」フルフル

「猫みたいだな。ほら、タオル」ポイ

「ありがとっ」ワシワシ

「…ん」ブル

「寒いか?」

「…ん、ちょっと…」

「俺の上着も濡れちゃってるからな…」

「また、くっつけばいいと思う」

「…そうだな」

「うん」

21 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:53:42.05 O2BhniSDO 21/26


ザアアアアア…


「……雨、強いなぁ」

「強いねぇ」

「梅雨だな」

「梅雨だね」

「…この前楓さんとも、こんな風に雨宿りしたよ」

「ほう」

「へ?」

「Pサン。女の子といるときに、べつの女の子の話はしちゃだめだよ! 習わなかったの?」ペチ

「いて」

「…すいません」

「えへへ。いいよー」

「…いまは、アタシとお話してくれてるし」

「うん」

22 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:54:12.27 TYk5A0HQo 22/26


ザアアアアア…


「…」

「…」

「…」

「…雨ってさ」

「ん?」

「…黙ってても、話してなくても、音があって……静かにならなくて、いいよね」

「アタシの代わりに喋ってくれてるみたいで」

「……そうかもな」

「…なあ」

「ん?」

「…すごく柚らしくない台詞だと思ったって言ったら、怒るか?」

「…へへ。ううん。自覚あるし」

「はは。そっか」

「うん」

23 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:54:41.74 O2BhniSDO 23/26


「でも、ま」

「ん?」

「たまには、こんなアタシもいいんじゃないかと」

「…ね?」ニコ

「…うん。いいと思う」

「…そっか。ありがと」

「いえいえ」

「……」エヘヘ…

24 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:55:09.66 TYk5A0HQo 24/26


サアアア…


「そろそろ弱くなって来たな…行くか」

「あ、うん」

「…」

「柚?」

「…Pサン、ごめんね…」ボソ

「…」

「…あ、えと…な、なんでもないよ! 行こっか!」パッ

「…」

「うん」

25 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:55:38.46 O2BhniSDO 25/26


「なあ柚」

「うん?」

ポン

「わぷ」

「…また来年、一緒に雨宿りでもしようか」

「…」

「…へへ。なにその約束…」クス

「……でも、うん。喜んで!」

「おう」

「てへへ。…ありがとーPサン」ニヘラ

「どういたしまして」

26 : ◆qEJgO2U6bM - 2013/06/16 14:56:29.37 TYk5A0HQo 26/26

書き溜めがあるとはいえ物凄くさくさく投下しちゃいました。

終わりです。
読んでくれた方には感謝です。ありがとうございました。

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