ピピピ、ピピピ
うぅん……
ピピピ、ピピピ
少し…… 静かにして、彼女が起きちゃうでしょう?
元スレ
まつりのあと【ミリマス】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492603723/
わたしはベッドから手を伸ばし、うるさい目覚ましの声を止めて部屋に静寂を取り戻す
今日のお仕事は午後から、もう一度寝よう……
そう思ったけど、隣で眠っている彼女の顔を見たら気が変わった
「ふふ、可愛いよ 美也ちゃん」
わたしの隣で眠っているのは同じ事務所のアイドルの宮尾美也ちゃん
おっとりとした、ゆるふわな雰囲気を持った子で、この子の寝顔があれば今すぐにでも世界は平和に出来そうなほど
美也ちゃんのブラウンの髪を軽くすいて撫でる
指に触れるふわふわとして心地いい感触、1日中触っていても飽きないんじゃないかな
シーツの上に散らばる彼女の髪を整えるように束ねていく うん、綺麗になった
髪を撫でながら美也ちゃんの頬に触り、手のひらを重ねる
そのまま顔を近付けて、彼女の吐息が感じられる距離
そのままゆっくり、ゆっくり、眠り姫を起こさないよう慎重に……
大好きだよ、美也ちゃん
「うう~ん……」
あ、起きた?
「ふわぁ…… まつりちゃん?」
「おはようなのです、美也ちゃん」
「おはようございます~」
「……」
「ん~?」
美也ちゃんはわたしを見ながら徐々に頭の上にハテナマークを増やし始めた 彼女の目覚めきっていない頭がぐるぐる回転している
「どうしてまつりちゃんが居るのですか~?」
そうか、美也ちゃんにとって朝起きたら同じベッドに誰か他の人が居る、っていうのは信じられないことなんだね
ふふ、素肌をシーツで隠してる今の状況を考えたらわかりそうだけどなぁ
「ここは姫のお城なのです」
「なんと~」
「美也ちゃん、昨日はまつりと一緒におやすみしたのですよ?」
「そうでしたか~」
「思い出せたのです?」
「う~ん…… 思い出せないですね~」
「そっか……」
少し…… 悲しいな……
昨日の、あの気持ちは一方通行だったのかな
「ねぇ美也ちゃん」
「なんですか?」
「ぎゅー って、していい?」
「はい、いいですよ~」
美也ちゃんは開け広げに手を広げ、人を向かい入れる体勢になる
わたしは躊躇なく美也ちゃんに体を投げ出して、彼女に体を預ける
ぎゅー ってして、くんくん
彼女の肩に頭を乗せてふわふわの中に顔を埋める
美也ちゃんのにおいが好き、美也ちゃんのふわふわには女の子の素敵が詰まってる
こうしてずっとふわふわのにおいをかいで、美也ちゃんに包まれていたい
美也ちゃんのなかはとっても暖かくて、優しくて
一度それを知ったなら、もうずっとそれが欲しくなる、美也ちゃん無しじゃいられなくなる
ずっと側に居たくて、居てほしくて、少しだけ弱い女の子になっちゃったかもしれない
美也ちゃん……
「まつりちゃん」
「なに?」
「まつりちゃんの髪の毛、とてもきれいですね~」
「綺麗…… あっ」
そう言えば…… 今は『姫』じゃなかったんだ……
「あ、ありがとう……」
『姫』じゃないのに姫の喋りをしていたこと思い出したら少し恥ずかしくなっちゃった……
「さらさらして、ぴかぴかして」
「きらきらで、つやつやです」
「どうしていつもは見せてくれないんですか~?」
「どうして……」
それは……
「…… 徳川まつりは、『姫』だから」
子どもの頃、女の子の髪の毛は宝物って教わった
だから髪の毛はいつも綺麗に整えて、大事にしてきた
でも、アイドルになる時にこの髪の毛は隠そうって決めた、宝物を色んな人に見せびらかしたら危ないから
宝物は本当に大切な人のために
だからいつもは翠になって『姫』を、『徳川まつり』を着てる
わたしの『ほんとう』を教えるのは、貴女にだけ
「…… 美也ちゃん?」
……寝ちゃった?
ぎゅってしたまま美也ちゃんは眠っちゃって、少し重い
楽にするために美也ちゃんを抱えたままベッドに横になった
目の前にまた可愛い寝顔
ふわふわの髪の毛を少しかき分けて、おでこに
「んっ」
「はいほー!」
「おはようございます~」
「あっ、おはようございまーす!」
「おはようございます~♪」
「二人一緒に来たんですか?」
「はい、ここに来る途中偶然会ったのです」
「ふふっ、仲良しなんですね~」
「はい~」
「…… あらぁ?」
「どうしたのです?」
「まつりさんから美也さんのにおいがしますね~?」
「一緒に来たから美也ちゃんのいいにおいが移ったのです?」
「ふぅん…………」
「未来ちゃんに迷惑をかけてはいけませんよ~?」
「ほ? 姫には朋花ちゃんが何を言ってるのかわからないのです、よ?」
おしまい
14 : ◆KakafR9KkQ - 2017/04/19 21:24:12.39 p9vze/+c0 14/14読んでくれた人ありがとうございました。