ダイヤ「心にも あらでうき世に 水面夢」【前編】
ダイヤ「心にも あらでうき世に 水面夢」【中編】
ーー広間
ザワザワ…
黒狐『静粛に』
白狐『皆さん、遅ればせながらおはようございます。さっそく、今回の内裏歌合の主要行事…競技かるた大会を行いたいと思いますが…』
『ちょっと狐のお二人はん。その前にハッキリさせとくことあるんでおまへん?』
『ええ。先日の会合で仰っていた例の神隠しとやらの犯人、黒澤家の娘はまだ見つかっていないのですか?』
『黒澤家の娘だと判明したにも関わらず、毎晩毎晩人の部屋の前に誰か居られると思うと気遣わしくて眠れないのであります。どうかご説明を』
『このまま我々の信頼を欠くような案件が続発するようなら来年以降、この内裏歌合の主催自体が脅かされる。まずは信頼の証としてそのお面を外していただきたい所存だ』
ザワザワ…
黒狐『静粛に!その件は私が説明する!』ズイッ!
『『『!!!!!』』』
白狐『黒、お願い致します』
黒狐『御意』
『『『………』』』
黒狐『…コホン。最後まで静かに聞いて欲しい』
黒狐『昨日昼過ぎ、我々は黒澤ダイヤを捕らえた。皆が広間に集い歌合を行っている最中、警備が薄くなったこの時雨亭から脱け出そうとしているところを屋敷の者が捕らえたのだ』
黒狐『奴は今一族と共に別の場所で拘束しており今宵、我々が黒澤家を全員処刑する。悪夢の源を根絶やしにするのだ』
黒狐『奴は口を割らないが、恐らく黒澤の家系には下二桁十五の年にその代となった人物が何かしら呪術的な方法で八人を監禁して殺害する習慣があったと踏んでいる。今屋敷の者が引き続き尋問を続けている。御一同はもう安心してくれて構わない』
黒狐『…そして、彼女が歌合に潜り込んでいた四十六家目であると判明したにも関わらず御一同への警戒を解かなかった理由。これは単にまだ奴が屋敷内を逃げ回っており、誰かがそれを匿っている可能性を気宇しての判断だ。ご了承願いたい』
黒狐『そして、昨晩の時点では既に彼女を拘束していたが、それを御一同に伝えることが出来なかったのはこちらの不手際だ。色々立て込んでいたのもそうだが、何百年と続いた悪夢が今我々の代で絶える喜びに浸っていたが故、そこまで頭が回らなかったのもまた事実。それに関しては申し訳なかった』ペコリ
白狐『……』ペコリ
『へ、へぇそうなんや…えらい苦労されとったんやなぁ』
『成る程。我々を不安にさせないよう秘密裏に調査なさってくださっとったのに、逆に我々はそれを不審に感じてしてしまっていた。互いの思惑に行き違いがあったのでありますね』
『末代までの安寧が守られるのも時雨亭の方々の永きに渡る奮闘のお陰…ということですか』
『…ならそれこそ、そのお面は外してもいいのでは?』
黒狐『それはできない』
『どうして…』
黒狐『これは余興だからだ』
『『『余興???』』』
黒狐『御一同はこの内裏歌合に参加されてからずっと疑問に思っていたはず。例年の幹事様に代わって突如現れた代理を名乗る謎の二人。狐のお面を被った絵に描いたような怪しい人物の正体は果たして誰なのか?』
黒狐『この競技かるた大会の優勝者には特別にその正体を明かしてやろう』
『『『おおおおおお!!!』
黒狐『四十五名を各部屋に二名ずつ振り分け対戦を行ってもらう。組合せとシードはくじ引き。読手は屋敷の者に任せる。対戦に勝った者は読手に報告して隣の部屋の勝者と対戦
。それを繰り返して勝ち残った者は、23時より、私達と最終決戦に挑んでもらう。それまでに広間へ来て欲しい…この』スッ
黒狐『紅の狐の面を被ってな』
『『『!!!!!!』』』
黒狐『広間の前に掛けておく。敗れた者は22:30以降、決して部屋を出ないこと』
黒澤『白』
白狐『…ここまでご説明ありがとうございます』
白狐『そして更に優勝者には…』スッ
白狐『こちらの石を差し上げます。如何なる物か存じ上げておりますでしょうか?』
『なんやろ?随分うつやかな石やけぇ…』
白狐『これは最近、この屋敷の庭園の池から見つかった石です』
白狐『調べるとどうやら…菖蒲御前という人物の持ち物だということが分かりました』
『あやめごぜん?』
『どなたでしょう?』
白狐『彼女はどうやら平安末期から鎌倉初期に生きていた人物らしいのですが、何故ここの屋敷から見つかったかは判然としません』
白狐『しかし、約八百年間この国宝と謳われる月の光を浴びてきた悠久の歴史が染み込んだ美しい石…価値は保証できます』
『『『おおおおおおお!!!』』』
黒狐『それでは只今を持って競技かるた大会を開始する。組合せのくじは……』
?『……』
ダイヤ「成る程…かつて九人目として紋章の呪いをかけたアヤメが持っていたとされる石、神隠しの年に現れた謎の二人組の正体…四十六家目が喉から手の出る程欲しがる代物ですわ!!」
海未「四十六家目は妖の類、必ず何かしらの力を使って競技かるたを勝ち上がって来ます」
ダイヤ「つまり、広間に現れた紅狐がその四十六家目…ということですわね」
海未「ええ。それまでに奴に抗う方法、及び神隠しを解く方法を見つけ出さなければいけません」
ダイヤ「タイムリミットは今日の23:00…」
海未「…それで、解読の方の進行具合は如何程ですか?」
ダイヤ「いえ…今まで慣れ親しんで来た和歌であるが故、その内容に疑問を抱く事さえままならず、皆目見当も付かない状況ですが…」
海未「そうですか…」
ダイヤ「一つ気になることがありますの」
海未「??」
ダイヤ「ルビィと会った時、あの子は石を嵌めこんだ瞬間に起こった事としてサヌキの和歌の発見…そして」
ダイヤ「時計の四つの窪みの出現について話していましたの」
海未「!!!!!!!」
ダイヤ「その時計の窪みなのですが…」スッ
ダイヤ「この百人一首かるたをぴったり嵌め込むことができますわ」
海未「あの窪み…元々あったものだとばかり思い込んでいましたが…」
海未「つまり百の和歌から、ある適切な四首を選んで嵌め込むことでまた何かが起こるということですか!?」
ダイヤ「いえ」
海未「?」
ダイヤ「あちらの柱時計とこちらの柱時計は二つで一つ。つまり八首です。合計八首の和歌を必要としてますの」
海未「八首…」
ダイヤ「ただ適切な和歌というのが一体どれなのかは皆目見当も付かない状況でして…」
海未「そうですか…」
ダイヤ「お力に添えず申し訳ございません…」
海未「いいえ、謝らないでください。ダイヤさん。あなた本当に強いと思います。遠く離れた場所で恐怖に震える仲間のため、一人見知らぬ地で奮闘されてきたのですから…」
ダイヤ「一人だなんてとんでもありませんわ…私一人ではとても抗えなかったでしょう。本当に感謝していますわ」
海未「ふふっ…」
海未「…ダイヤさんはどの歌がお好きですか?」
ダイヤ「え?」
海未「私はこの七十七番目の歌です」
~瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ~
ダイヤ「この歌は…」
海未「ええ。これは崇徳院の詠んだ歌で
【川の流れが速く、岩にせき止められた急流が幾つに割れてしまおうと、それがいずれ一つになるように、私達もいつか逢いたいと思います】
という意味が込められています」
海未「私達μ'sは音ノ木坂を卒業した後、それぞれ別の道を歩みました」
海未「穂乃果は穂むらで働いているため頻繁に顔を合わせますが…ことりはデザイナーの勉強のためフランスへ留学、絵里は亜里沙とロシアへ帰国しスクールアイドルを主としたダンス教室の開講、花陽は稲の品種改良のため研究室に籠る日々、凛は駅近のラーメン屋に弟子入りしたそうで…かなりしごかれているみたいです」
海未「真姫は医大へ入るため二浪するも叶わず、お父様の知り合いの医薬品の研究機関に勤めることになったのですが、浪人時代の知識が功を成し今まで不治とされていた病の治療方法を発見し今、若きエリートとして注目されているそうです。希は一般企業で事務の仕事をしていますが、夜は街で占いの館を開いていると……にこはアイドルオーディションに何十通もエントリーしてやっと事務所に所属。近々新曲を出すそうでμ's時代からのファンも注目しています」
海未「皆、それぞれの道を選んで進みましたが、今はその道なき道につまずき、悩み、苦労する日々を送っていると思います。しかしどんな人生を歩もうとも、やがてその九人がまた揃う日が来れば…それはかつてスクールアイドルとして活動していたμ'sとして一つになります」
海未「この歌はそんな私達のことを示しているようでならないのです」
ダイヤ「皆さん…それぞれ素敵な人生を歩まれておられるのですわね…」
ダイヤ「私達Aqoursは一度、音ノ木坂学院を訪れました。その時出会った生徒の方は、μ'sはここに何も残さずに卒業されたとおっしゃっていましたがそれも…」
海未「ええ」
海未「立つ鳥跡を濁さず。心はずっと繋がっていますから…」
ダイヤ「本当に素敵な方々です。μ'sに出逢えて…そしてファンになれたことを心から幸せだと思いますわ」
ダイヤ「…私も、ずっと憧れていたんですの。μ'sという伝説に」
ダイヤ「一年生の頃、果南さんと鞠莉さんと組んだスクールアイドルAqoursは…想いの行違いにより実質失敗に終わり…一度はバラバラになってしまったんですの」
海未「今の九人Aqoursの前にも一度…」
ダイヤ「はい。しかし二年の時を経てそのわだかまりは解けました。最初千歌さんと曜さんがスクールアイドルをやりたいと申請しに来た時は豆鉄砲食らいましたが、それが梨子さん…ルビィ…花丸さん…善子さんと繋がっていくうちにかつての日々が思い起こされ…自分でもよく分からない感情が押し寄せてきましたの」
ダイヤ「それは憧れだとか…嫉妬だとか…心配だとか…一言で表せるものではなくて…」
海未「……」
ダイヤ「この渦巻いた感情の原因…それは互いの本音に霧がかかっていたこと。それを全て打ち解け霧が晴れた瞬間…目の前にはかつて夢見るも航海には至らなかった大海原が広がっていましたの」
ダイヤ「今度は三人では無く九人…肩を組んで足並み揃えて光り輝く海へとオールを漕ぎ出さんとしていました」
ダイヤ「そんな最中でした…この神隠しに襲われたのは」
海未「本当に残酷です…」
ダイヤ「皆さんがどこにいるかも分からない。どんな状況なのかも分からない。ただ死…という現実を突きつけられどうしたらいいのか分かりませんでした」
ダイヤ「様々な険しい道のりと葛藤の果てに結ばれたAqoursという存在は切っても切り離せない存在…もし皆さんが死んでしまうのなら自分も皆さんと運命を共にする。一度はそう決めました」
ダイヤ「しかしルビィ達は諦めていなかったのです。限られた手段…和歌で私にメッセージを送っていましたの。そして…遂には会うことができた。諦めかけていた…もう二度と会えないのではないかと思っていたルビィに。そして気付きました。皆さんが必死に前を向いているのに私がこんなところで諦めてしまってはいけません。再び九人が集えるその日まで…」
ダイヤ「長くなりましたが、これが私の好きな歌です。五十番目、藤原義孝の…」
~君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと おもひけるかな~
【あなたのためには例え捨ててしまっても惜しくは無いと思っていたこの命、しかしあなたと会ってしまった今、いつまでも生きていたいと思っています】
ダイヤ「海未さん」
海未「はい」
ダイヤ「私達Aqoursが生まれた根源にはμ'sの存在があり、今もそれを追い続けていますわ」
ダイヤ「必ず九人揃って再びステージに立ち、感謝の意を示してみせます!」
海未「ふふっ…私も、ダイヤさんのように強くたくましい若葉に出会えて本当に嬉しく思います。これからのAqoursの皆さんのご活躍、ずっと期待しております!」
海未「隠された暗号を解きましょう…想いを一つにして!」
ダイヤ「はい!!」
コチッコチッコチッ…
曜「…」
千歌「……」
ルビィ「曜さん…」
ルビィ「みんなの部屋に移して…」スッ
千歌「ダメ!!!!!!!!」
ルビィ「!!!!」
千歌「最後に曜ちゃんがお願いしてくれた…だから守らないと…」
ルビィ「う、うん…」
ルビィ「そう…だよね…」
千歌「曜ちゃん……」
千歌「なんであんなこと…」
【渡辺曜 死亡】
ーー残り2人
……
ルビィ「昔の時間の表し方?」
千歌「うん。昨日ルビィちゃんが鵺のお話してくれた時、『丑三つ時』って言ってたでしょ?あれって時間を表す言葉なんだよね?」
ルビィ「う、うん…」
千歌「詳しく教えて」
ルビィ「分かった…ちょびっと難しいかもしれないけど…説明がんばるびぃ!」
ルビィ「昔の人は時間を十二支、子(ね)丑(うし) 寅(とら) 卯(う) 辰(たつ) 巳(み) 午(うま) 未(ひつじ) 申(さる) 酉(とり) 戌(いぬ) 亥(い)で表していたんだよ」
ルビィ「それでその十二の干支はそれぞれ二時間ぶんの時間帯を言っててね?例えばルビィの話した『丑』は午前1時~午前3時の二時間ぶん」
ルビィ「更にその二時間を三十分ごと四つに分けてたんだよ。午前1時~1時30分が『丑一つ時』、1時30分~2時が『丑二つ時』、2時~2時30分が『丑三つ時』、2時30~3時までを『丑四つ時』って言うの」
千歌「じゃあ鵺のお話に出てきた時間は2時~2時30分のことを言うんだね」
ルビィ「この時間は一番お化けが出やすいなんて言われ方もするんだけどね…」
ルビィ「こういう時間の表し方を《十二時辰(じゅうにじしん)》って言うんだけど…」
千歌「これって方角も表せるの?」
ルビィ「う、うん!」
ルビィ「確か花丸ちゃんの本の中に…」ガサゴソ
ルビィ「あった!!」
ルビィ「表にするとこんな感じかな?分かりにくかったらごめんね…」
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子(ね)《23~1時》~北~【11月】
牛(うし)《1~3》~北北東~【12月】
寅(とら)《3~5》~東北東~【1月】
卯(う)《5~7》~東~【2月】
辰(たつ)《7~9》~東南東~【3月】
巳(み)《9~11》~南南東~【4月】
午(うま)《11~13》~南~【5月】
未(ひつじ)《13~15》~南南西~【6月】
申(さる)《15~17》~西南西~【7月】
酉(とり)《17~19》~西~【8月】
戌(いぬ)《19~21》~西北西~【9月】
亥(い)《21~23》~北北西~【10月】
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千歌「おお……」
ルビィ「ちなみによく聞く《黄昏(たそがれ)》って言葉は元々戌の刻の事を言ってて、季節差はあるけど日没前~日没後の約二時間、空が赤い時間のことを指してたみたい」
ルビィ「あとはお姉ちゃんが言ってた夜半の間の《夜半(よわ)》って言葉も23時~1時を…ってあれ?」
千歌「……」
ルビィ「千歌ちゃん?」
千歌「昨日曜ちゃんがさ、浜辺で西南西16時の方向に大雨が降っているって言ってたじゃん?」
千歌「私多分、七番目の水面夢でそこにいた」
ルビィ「え!?」
千歌「それでこの十二時辰を見ると…
●申(さる)《15~17》~西南西~【7月】
16時の方向…西南西…
それが当てはまるんだよ」
ルビィ「それじゃあ…」
千歌「うん。他の水面夢も…そしてそれが全部、四の夢と五の夢みたいに水面と水中で繋がっているんだったら…」
千歌「他にも三箇所、水面夢の地点があるはず!」
ルビィ「だったらやっぱりこうなるけど…」
ーーーーーーーーーーーーー
一…血染めの水中
二…生暖かくて濁った水中
三…真っ暗で冷たい水中
四…水底に沖の石がある美しい水中
五…綺麗な月明かりと星空の水面
六…新月の冷たい水面
七…雨に晒される水面
八…死の夢
~左:水中 真ん中:水面 右:方角~
一・八・?
二・七・西南西
三・六・?
四・五・?
ーーーーーーーーーーーーー
ルビィ「で、でも…四と五の水面夢が昼と夜で別だったし…」
千歌「思ったんだけどさ、この水面夢って方角以外の十二時辰も全て反映されているんじゃないかな?」
ルビィ「え?」
千歌「私ね。今日豪雨に晒された時感じたの。確かに水は荒れ狂って容赦無く襲い掛かってきてすっごく怖かった。でも…」
千歌「温かかった」
千歌「この水面夢はさ、その七の夢や二の夢みたいに水が温かかったり、三の夢や六の夢みたいに冷たかったりもする。そして四と五で明るかったり暗かったりもする」
千歌「これって季節や時間帯も反映されてるってことだよ」
ルビィ「あ!!!!」
千歌「そしてこれが鵺の方角なのなら…」
ルビィ「頭が《申(さる)》、体が《寅(とら)》、尻尾が《巳(へび)》…」
千歌「全部干支だよ。私がいた七の水面夢は申の方角。繋がっている二の水面夢もそう。水が温かかったのは7月だから。
●申(さる)《15~17》~西南西~【7月】」
ルビィ「じゃあ三と六の水面夢は冷たい…冬ってことは
●寅(とら)《3~5》~東北東~【1月】」
千歌「そして、四と五の水面夢は残った
●巳(み)《9~11》~南南東~【4月】
この流れだと一、八の夢は…
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子(ね)《23~1時》~北~【11月】
牛(うし)《1~3》~北北東~【12月】
●寅(とら)《3~5》~東北東~【1月】
卯(う)《5~7》~東~【2月】
辰(たつ)《7~9》~東南東~【3月】
●巳(み)《9~11》~南南東~【4月】
午(うま)《11~13》~南~【5月】
未(ひつじ)《13~15》~南南西~【6月】
●申(さる)《15~17》~西南西~【7月】
酉(とり)《17~19》~西~【8月】
戌(いぬ)《19~21》~西北西~【9月】
★亥(い)《21~23》~北北西~【10月】
一、八…亥 ★
二、七…申
三、六…寅
四、五…巳
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千歌「亥…ってことになるよ」
ルビィ「でも…やっぱり四と五の水面夢で昼と夜が違うのが分からない…」
千歌「逆にさ、五~七の水面夢は全部夜だよね?夜の豪雨、新月の夜、ダイヤさんと繋がった綺麗な月と星が浮かぶ夜空。恐らく八の水面夢も夜」
千歌「それこそがあの暗号
【四人の王に陽は昇らず、ただ月が浮かぶのみ】
なんじゃないかな?」
ルビィ「あ!!!!!」
ルビィ「四人の王は果南さんが言ってたように水面に浮かんでる五~八の夢の人…『琵琶湖』って漢字も上に四つ王がある。これは水面に浮かんでいる四人を表していて…その四人は時間が夜に固定されるんだ!!!」
千歌「うん。でも今日ルビィちゃんの見た六の夢は冷たいし私の見た七の夢は温かい。
つまり一日の『時間帯』は夜に固定されるけど、『季節』は十二時辰通りに変化するんだよ。これが
【四人の王に『陽』は昇らずただ『月』が浮かぶのみ】の意味」
ルビィ「水面はdayは固定。monthは変動するってことだね」
千歌「だから四の夢と五の夢で昼と夜が別々になるって不思議なことが起きたんだよ。
本当なら
●巳(み)《9~11》~南南東~【4月】
だから朝からお昼前のはず。実際四の夢の水中はそう。水中に陽の光が射してて沖の石を発見できた。でも、五の夢は水面。時間帯が無視されて夜になるんだよ」
ルビィ「三の夢と六の夢がどっちも真っ暗で冷たいのは
●寅(とら)《3~5》~東北東~【1月】
六の夢は夜に固定されるからともかく、時間の反映される三の夢も朝の3時~5時だから真っ暗だったんだ!」
千歌「そして、二の夢と七の夢」
ーー
ーーーー
果南『そう…じゃあ今日は?』
ルビィ『今日は血じゃなかったけど…生暖かい水の中は酷く濁ってて分かりにくかった…』
…
善子『で、ルビィが見た夢…見たの?』
千歌『うん…昨日ね。なんだかよく分からなかったけど、ルビィちゃんの見た夢で間違い無いと思う。生暖かくて濁って分かりにくい水の中を泳いでた』
ーーーー
ーー
千歌「二の水面夢は私とルビィちゃんしか見てない。水の中は生暖かくて濁ってる」
千歌「生暖かいのは7月だから。濁っているのはその二の夢の真上にあたる七の夢で雨が降っていたから」
●申(さる)《15~17》~西南西~【7月】
千歌「だから濁って分かりにくくてお昼だって上手く認識できなかったんだよ」
ルビィ「それじゃあルビィの見た一の夢は…」
★亥(い)《21~23》~北北西~【10月】
千歌「赤くてドス黒い血みたいな液体はまだよく分からない…でも、水中の時間帯も夜。真っ暗なはずなのにルビィちゃんはその液体の色を認識できた…ってことは、その真上の八の夢は…」
ルビィ「五の夢の月にも負けない程綺麗で明るい月が海を照らしている…」
千歌「そうだと思う」
千歌「季節も時間もバラバラのこの水面夢…その十二時辰に当てはまる八つの時を示すのが…」
ルビィ「小倉百人一首の和歌!」
千歌「水面夢に適した和歌がこの中にあるんだ。それを探さないと…」
ルビィ「ねえ千歌ちゃん!この百人一首かるたの形!柱時計の台座の窪みにぴったりじゃない!?」
千歌「!!!!」
千歌「見つけるべき和歌は四首…窪みも四つ…間違いないよ!何かが起こるんだ!!」
千歌「この四つの窪みは水面夢の方角!その中心がこの島なんだよ!!」
ルビィ「お姉ちゃんのところにも窪みがあるはず!全部で八首だよ!」
ルビィ「でも何が起こるんだろう…」
千歌「……」
ルビィ「千歌ちゃん…?」
千歌「今日だ」
ルビィ「え?」
千歌「多分私が死んだらルビィちゃんはもう助からない」
ルビィ「えっ!?」
千歌「曜ちゃんが最期に言ったあの言葉…」
ーー
ーーーー
曜『そう…じゃあ、しっかり聞いててね』
千歌ルビィ『うん!!!!』
曜『……』
曜『私達の死体には二度と触らないで』
ーーーー
ーー
ルビィ「!!!!!!」
ルビィ「まさか…」
千歌「まだ分からない…」
ルビィ「……」
千歌「でも、多分その可能性が高い。だから準備しよう」
千歌「今夜の最終決戦に向けて」
ルビィ「……」
ルビィ「うん、分かった」
ーー時雨亭 廊下
?「……」ギシギシ
?「……」
?「……」スチャ
紅狐「……」
ススススススッ……
紅狐「……」
白狐「おめでとうございます。あなたが見事、2015年時雨亭主催内裏歌合の目玉、競技かるた大会を勝ち抜き栄えある勝利を手にされたのですね」
白狐「どうぞ部屋の中へ。並べてある札の前にお座りください」
紅狐「……」スッスッスッ
紅狐「……」スッ…
黒狐「ここからは余興だ。肩の力を抜いてくれ」
白狐「本来なら私達が対局するべきなのですが…」
ススススススッ…
紅狐「!!!!!!!!!!」
ダイヤ「その役は私が買って出ますわ」
紅狐「……」
白狐「騙すような真似をして申し訳ございません」
黒狐「だが…分かっているよな?」
ダイヤ「この対局は悠久の歴史が紡いだ人々の想いの集大成…絶対に負けるわけにはいきませんわ!」
紅狐「……」
コチッコチッコチッ…
千歌「……」
ルビィ「夜半…時計が23時30分を指したら向こうの世界の23時だよ。そこから時計が0:00を指すまでに決着を…」
千歌「……」
ルビィ「千歌ちゃん」
千歌「…え!?…あ、うん!」
ルビィ「大丈夫?やっぱり私が…」
千歌「ううん。私にやらせて。ダイヤさんと約束したから。次会うまでに百人一首できるようにするって…」
ルビィ「千歌ちゃん…」
千歌「だからルビィちゃん。読み手…お願いね」
ルビィ「う、うん!分かった!」
千歌「……」
コチッコチッコチッ…
ーー
ーーーー
……
海未『そういうことだったんですね…』
ダイヤ『そんな秘密がこの百人一首に…』
英玲奈『ああ…謎は解けた』
英玲奈『23:00…これは予選が長引くことを考慮し思い付きで口にした時間だったが…』
海未『直感が冴えていましたね。むしろこの時間にこそ私達の戦いは始まるのですから』
ダイヤ『夜半の間…定家が名付け隠した部屋。ちゃんとその名にも意味があったんですのね』
英玲奈『夜半は23:00~1時を指すが、恐らく向こうで高海千歌が死ぬ0:00までには決着を付けねばならない。向こうの二人もそれは分かっているはず。何故なら…」
海未『和歌の読み手がいなくなってしまうから…ですね』
英玲奈『ああ。そして向こうとは時差がある。こちらの世界とあちらの世界…その歩みを揃えて競技かるたを同時進行する』
ダイヤ『大丈夫です。私達は繋がっていますわ』
英玲奈『しかし、手順を踏んだ末に何が起きるのは全く分からない』
海未『はい…それに、相手も人間ではありません。まず奴から全てを聞き出せるかすら怪しいですが…最悪何もできずに奴にたちまち殺されて終わりでしょう』
ダイヤ『一かバチか…ですか』
海未『ここまで来たら信じるしかありません』
英玲奈『ああ。大丈夫だ。必ず成功する。我々は一つだ!』
ダイヤ『海未さん…英玲奈さん…』
ダイヤ『はい!!』
英玲奈『さあ、時計を広間へ運ぶぞ』
ーーーー
ーー
コチッコチッコチッ…
白狐「……」
黒狐「……」
ダイヤ(大丈夫ですわ…落ち着いて…)ドキドキ
紅狐「……」
白狐「まだ対局の23時まで少し時間があります。何か言いたいことはありますか?」
黒狐「…と言っても、こちらとしては洗いざらい話してもらいたいのだが…」
紅狐「……」
黒狐「……」
黒狐「そうだな。仮面を外す約束だった」スチャ
白狐「……」スチャ
紅狐「……」
英玲奈「これが私達の正体だ」
海未「思うところはあると思います。しかし、これであなーー」
紅狐「裏切られたのか」
三人「!!!!!!!!!!!」
紅狐「鵺様の生贄という分際で醜い愚行に走り、その血を引く我を欺くとは…やはりどの時代も変わらぬのだな。薄汚れた魂胆を胸に宿し、粗末に塗りたくったペルソナで見苦しく取り繕おうとするその情け無い様は…」
紅狐「…なあ?生きとし生きる人間共よ」
海未「……」ゾクッ
英玲奈「こいつ……」
ダイヤ(ぬ、鵺の血を引いている!?)
紅狐「そろそろあちらでも我の分身が目を覚ます頃か…まだ不完全ではあるが致し方無い」
海未「あなたは一体何者ですか!!!」
英玲奈「その面を外せ!!!」
紅狐「最初に泣き付いてきた時はいささか心が揺れ、ならば我の策に利用してやろうと意企していたが…」
ダイヤ(……)ゴクリ
紅狐「期待外れ?失望?どの道我らが一族の糧となるには相応しく無い憐れな存在だったというのだな…」スチャ
ダイヤ「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
聖良「なあ黒澤ダイヤよ?貴様にはほとほと愛想が尽きた」
コチッコチッコチッ…
千歌「……」
ルビィ「……」
梨子「…」
鞠莉「…」
善子「…」
花丸「…」
果南「…」
曜「…」
千歌「みんな綺麗だよ…あんなに辛かったのに…生きたいって願っていたのに…必死で抗って…でも最後は受け入れて…」
千歌「そんな辛いことがあったとは思えない程…綺麗で静かに横たわってる…」
千歌「でもおかしいよね?」
千歌「初日、鞠莉さんは裏の森に入って切り傷だらけになって帰って来たはずなのに死体には傷一つ無い。綺麗」
千歌「二日目、花丸ちゃんは果南ちゃんから私を庇って殴られて口元を切っていたはずなのに死体には傷一つ無い。綺麗」
千歌「昨日、曜ちゃんは釣り上げたゲンゴロウブナにほっぺたをはたかれて切り傷を作ってバンソコウを貼っていたはずなのに…」
千歌「死体には傷一つ無い。バンソコウも無い。すっっごく綺麗」
梨子「…」
鞠莉「…」
善子「…」
花丸「…」
果南「…」
曜「…」
千歌「水面夢には四つの地点があるんだよ。一つは鵺の尻尾、一つは鵺の体、一つは鵺の頭…そしてもう一つは…」
千歌「鵺のお皿」
千歌「つまり八番目の水面夢で起きていたことは…その日浮かんでいた死体を食べること。ルビィちゃんが水面下で見た赤くてドス黒いあの液体は…やっぱり梨子ちゃんの血だったんだね」
千歌「私が七の夢の途中で見た月…あれは月なんかじゃ無かった。曜ちゃんを食べ終えて本来の頭の部分に戻って来た…」
千歌「鵺の目玉だったんだ」
千歌「ここには毎日毎日全く傷一つ無い死体が増えていく。それは鵺の食い散らかしじゃない。でも元々付いていた傷も無い。死体はどれも死後硬直がストップしてるなんて言ったけどさ…そもそもどの死体も私達が目覚めた時から全く状態が変わってないんだよ」
千歌「あなた達は誰?」
曜「…」ピクッ
ルビィ「!?!?」
千歌「曜ちゃんは薄々気付いてたんだね…だからあんな事言ったんだ…」
千歌「中学の時の鵺ばらい祭…あの時とおんなじ役になっちゃうなんてね…」
千歌「私が頼政で…」
梨子「…」ピクピク
鞠莉「…」ピクピク
善子「…」ピクピク
花丸「…」ピクピク
果南「…」ピクピク
曜「…」ピクピク
ルビィ「あ…ああ……」ガクガク
千歌「みんなが鵺」
梨#p/@鞠$子「ゴボボボボボボ…」ベチョ
k>°#善花j@l「グゴゴゴゴゴゴ…」ベチョ
果p#●〆:曜※「ギギギギギギギ…」ベチョ
ルビィ「み…みんなの死体がくっついて……」ガクガク
千歌「……」ゴクリ
#p/●@$:k>°@
「ギョゴゴキバキゴキゴゴキバキバキバキ…」
千歌「来るよ」
ルビィ「うぅ…」ビクビク
スッ…
千歌ルビィ「!?!?!?」
聖良『ふゥ"…まさカ"不完全なマ"ま呼びダザレ"るとは…』
千歌「聖良さん…まさかあなたが…」
ルビィ「……」ギュッ
聖良『……』ゴキッゴキッ
聖良『お久しぶりです千歌さん。そして…』
聖良『お悔やみ申し上げます』ニヤッ
聖良「……」ゴキッゴキッ
英玲奈「北海道の鹿角家…そうかお前たち家系が四十六家目だったのか」
海未「確かに気付いてしまえばこっちのものです…当時の北海道…蝦夷地はまだ完全に朝廷の支配下にありませんでした…ましてやその地に幹事様の家系の者が住んでおられるはずがありません!」
ダイヤ「どうして……」
聖良「ふう…成る程。μ'sの園田海未さん、A-RISEの統堂英玲奈さん。名簿にはあなた方の名前が刻まれていたのですね。故に公開することが出来なかった…」
聖良「あなたがそれさえ見つけて持って来てくれれば粗方の合点がいきましたし、本当の推理状況を把握してこの屋敷の者を殺めていたのですが…」
聖良「残念です」
ダイヤ「それはこちらの台詞ですわ。ずっと信じていましたのに…今日まで同じスクールアイドルとして高みに登ろうと、それを妨げる障壁を打ち破ろうと共に誓ったあなたが…」
聖良「そこまで信頼されていたのですか。照れますね」
ダイヤ「ふざけないでください!!!!!」
聖良「ふざけてませんよ」
聖良「あなた達のようにバカ正直で希望を真っ直ぐ見つめている人間がそれに裏切られ、絶望へと叩き落とされる様…」
聖良「大好物なんです。鵺様も我々も…」ペロッ
ダイヤ「くっ……」ゾクッ
英玲奈「コイツ……」プルプル
海未「英玲奈さん…抑えてください…」
聖良「……」
聖良「…分かりました。どうせあなた達の命も今宵で散ります。せっかくなので冥土の土産に全てお話しましょう」
聖良「…1153年。当時源頼政は平家物語に語り継がれる鵺退治にあるよう、私達の祖先である鵺様を倒し淀川へと流しました」
聖良「しかし鵺様は滅びてなどおらず、そのまま上流へ上流へと昇られ、着いた場所は現在の滋賀県の琵琶湖。そこの多景島に辿り着かれました。ですが傷は深く、それを癒すため深い眠りにつかれていました」
聖良「中々癒えなかった傷ですが1180年。それは急激に治癒しました。そう、頼政は鵺様に封印術を掛けていた。彼が死んだことで鵺様の封印は解かれて傷も癒えた」
聖良「鵺様の怒りは収まらず、頼政の大切な人物を末代まで呪うことを誓われました。そして、手始めに襲ったのが彼の側室であるアヤメ。彼女は平氏から逃れるためたまたまこの時雨亭に潜んでいましたから。そして彼女に掛けた呪いというものが…」
英玲奈「八人の神隠し」
聖良「御名答。更に鵺様は頼政と血の繋がりが強い人物八人を当時御所に仕えていた中から選び、自らの傷を癒すために滞在されていた多景島、その砂浜に連れ去りました。そして毎晩、一人ずつ水面で食い殺していく…」
海未「それが水面夢…」
ダイヤ「その中にサヌキも…」
聖良「そちらでは七日ですが時雨亭のアヤメにとっては三日半…半日ごとに犠牲者が出る度に首の紋章が刻まれ続け、痛みと孤独と恐怖に震えていたでしょう」
聖良「そして八人目が死ぬ時、同時に紋章が全て刻まれアヤメも死ぬはずでした。しかしどういうわけか死ななかった」
聖良「アヤメは平氏の追っ手もあり直ぐ様時雨亭を後にしてしまいました。鵺様もアヤメにかけた呪いが発動せず、直接殺めようとされたが彼女を見つけるには至りませんでした。本来頼政の死んだ1180年から百年ごとにその家系を襲い続ける神隠しとして掛けた呪い…しかしその紋章が役目を終えない限り永遠にその百年後は来ない…」
聖良「…と思われていた矢先、1215年の1月2日。鵺様はその紋章が不自然に発動した事を察知されました。それが表すのは菖蒲御前がどこかで死んだということ。それにより呪いは1215年から百年ごとに発動するようになったのです」
英玲奈「……」
聖良「この百年…いえ、鵺様の住まれるあちらの世界では倍の二百年。それは鵺様が眠りにつかれる時間。その間、次の神隠しの標的を鵺様のいる異世界に送り込む役目。そしてアヤメの果てた地を探し、彼女が残したであろう鵺様の存在を示す何かを掴み抹消する役目を託され生み出されたのが…」
ダイヤ「あなた達鹿角家」
聖良「そうです。先祖様は当時あまり管轄の行き届いていない蝦夷にて住を成し、密かにそれを探っていましたが…」
聖良「1236年1月2日より、この時雨亭にて全国の名家を揃えた内裏歌合の催しを行うことを知りました。それは翌年も翌々年も…毎年のように行う恒例行事と化しました」
聖良「その時雨亭はかつてアヤメが神隠しの間過ごしていた邸宅。日にちもアヤメの死と同じ。偶然とは考えにくい。ひょっとしたら内裏歌合はその前の1235年、時雨亭でアヤメの残した鵺様の手掛かりを発見したことがきっかけで催されるようになったのではないか?」
聖良「そう踏んだ先祖様は当時時雨亭を訪れていた藤原定家を怪しみ、捕らえようと計画していましたが束の間の1241年…彼は亡くなってしまい、真相は闇に葬られてしまいました…」
聖良「しかし内裏歌合の様子は至って普通で、ただ単に定家が小倉百人一首を定めたことで翌年の正月より催されるようになっただけ…そう考えました」
聖良「さて…しかしここに集まる名家は皆アヤメと血縁のある者。次の1315年の歌合から密かに紛れ込み、その中から鵺様の生贄を決めれば何かと都合が良い。そうすれば屋敷の者は1180年に御所で起きた神隠しを想起し調査に動き出すはず。そこからアヤメの情報を引き出せれば御の字だろうと踏んだのです」
聖良「しかし1315年までの調査でアヤメの果てた地の伝説が残り、その寺や石塔、墳墓までもがある地は全国津々浦々だと判明。どれが本物なのかは見当も付きません。当時情報網も発達していませんでしたから。故にそれを発見する度にその近辺に住まう血縁の者を神隠しの標的にすれば、それがアヤメの果てた本当の地なのか否かまで判明すると踏んだ先祖様」
聖良「最初にアヤメの情報が見つかったのは現在の東広島の福成寺。よって1315年の歌合ではその近辺に住まう家系の八名を神隠しし、参加者に紋章を刻みました。当然屋敷は騒ぎになりますがアヤメの事は見えてこない…ハズレです」
ダイヤ「ハズレ…人の命をなんだと…」
聖良「百年後の1415年。次の代がアヤメの情報を見つけたのは現在の新潟にある金仙寺。裏には『菖蒲塚』だなんて名の付いた古墳もありますから間違いないと思い、歌合にて新潟の家系を神隠ししました。更にその年から砂浜に家を複製し、八人をそこに置きました。時雨亭を訪れている九人目にあたる人物の家です。アヤメの家系であるが故、もしかしたら八人がその家から彼女に関する情報を探し出すと踏んだのですが…やはり何も見えてこない…」
ダイヤ「私の家が異世界にも存在するのはそういうことでしたのね…」
聖良「そうしてアヤメが果てた本当の地について全く見えて来ないまま百年…また百年と月日が流れて行きました」
聖良「しかし、ある年に新たな動きがありました。それは当時私の曽祖母が神隠しを行った1915年から二十年後…1935年」
ダイヤ「!!!!!!!」
ダイヤ「伊豆長岡温泉源氏あやめ祭り!!」
聖良「そうです。現在の静岡県伊豆の国市で毎年夏に行われている催し…これがかつて頼政とアヤメに関係しているのは明白。直ぐにその地へ焦点を絞り調査していくとアヤメが頼政の菩提を弔った西琳寺、そして余生を過ごした西浦の禅長寺の存在が浮き彫りになりました。その二つの寺院から鵺様に関する決定的な証拠を掴むことはできませんでしたが、アヤメの果てた地で間違いないでしょう」
ダイヤ(つまり禅長寺に鹿角家の調査が入る前に間一髪で私の家に柱時計が移されていたのですね…仮にそれを鹿角家が見たとして気付いたかどうかはともかく、見つからないに越したことはありませんわ…)
聖良「ご丁寧に1965年からは鵺ばらい祭まで開催してくださって…それが確信を強める要因になりました。当然次の2015年の神隠しの標的はそのすぐ近くに住を成すアヤメと血縁にある家系、黒澤家に決まりました。それを執り行うのが1996年、鹿角家に生まれ落ちた私の役割…」
聖良「そして…」
聖良「出会ってしまったんですよ…素敵な素敵な九人に…」ニヤッ
ダイヤ「どうして…どうして関係のない皆さんを…」
聖良「対象の決定権は私にありますから。本来なら歌合を訪れるであろうあなたを九人目として、残り八人も黒澤家から選ぶつもりでした」
聖良「…私は以前から黒澤ダイヤについて調べていました。すると2012年の夏、東京で行われたスクールアイドルの大会にあなたの所属するAqoursという名の三人組のグループが出場していたことが判明しました」
聖良「…それを知った私はあなたに接近するため理亜と共にスクールアイドル、Saint Snowを結成しその機会を伺っていました。そして去年、あなたが出場した同じ東京の大会で会えることを信じていました」
聖良「…しかし去年の夏、神田明神を訪れたそのAqoursのメンバーにあなたの姿は無かった…」
聖良「最初はもう引退してその後輩に身を譲ったのだと思いました。しかし実際はそんな単純なことではなかったんですね。複雑な糸が絡んで…或いは解けて…その後あなた達の言う奇跡のように想いが繋がった結果生まれたのが現在のAqours…」
聖良「だからUTXへその九人を呼び出したのです。それは皆希望に満ち溢れていた。嬉しかったですよ…あなたが命よりも大切なものを提げていたのですから。それに……」
ダイヤ「……」
聖良「ふふふっ…奪いがいがあるなぁって思って…」
……
……
千歌「…そういうことだったんですね」
聖良『はい』
千歌「神隠しにあったのは…ルビィちゃんの家に時計とかるたが揃ったからじゃないんだね…」
聖良「私がこの目で選びましたから。あなた方を」
ルビィ「Saint Snowが…そんな……」
千歌「ひょっとしたらみんなは助からないんじゃないかって思ったりもした…でも、やっぱりみんなを救える。辛くて苦しくて…折れちゃいそうな今を乗り越えたらまたいつもの生活が待っている…」
千歌「そう信じてたのに…」
聖良『今までもそうでした。その年の神隠しを実行し終えた者は最終的にこの地の鵺様に報告も兼ねてその生贄となる運命。しかし、あちらの世界から本人が消えてしまえば鹿角家は代々行方不明云々と、また別の神隠しとして騒ぎになってしまいますから。それに私も鵺様の血縁にはありますが異世界を自由に行き来出来る程の力はありません。故に鵺様の力を借りながら少しずつ自身の分身となる器を送り、とある形に留めておく必要がありました。代理…ではありませんがそれを鵺様の生贄に捧ぐのです。こちらで生き残る者に怪しまれず最も都合のいい形。それは…』
千歌「みんなの死体」
聖良『悲し過ぎますね。朝起きて涙を捧げていた死体が皆さんでは無くそれに化けた私の分身の一部だったなんて…』
ルビィ「酷い……」ポロポロ
聖良『本当はもう一日…千歌さん。あなたの死体ができた後に私は完全な形でこちらに現れ、最後の一人…つまりルビィさんと共に鵺様の生贄となるはずでした。しかし現実の世界ではもう決着を付けなければいけない状況。故に不完全なままこうして現れたのです』
聖良『故に私はあなた達が今日まで何を調べ、何を知り、何を企んで来たのか皆目検討も付かない所存です』
聖良『しかし目の前にあるのは並べられた競技かるた…これはどういう意味ですか?』
千歌「そのままです」
聖良『?』
ダイヤ「全部…全部神隠しのためだったんですのね…」フルフル
聖良「ええそうです。いい品定めになりました。グループにはあなたの妹…つまりアヤメと血縁のある黒澤ルビィという人物がいましたから。血縁にある彼女を一人異世界に放り込んでおけば後の七人くらい違ってもいいだろうと…」
聖良「まあ、それよりもあなたのその顔を見たかったんですよ。大切な人が見知らぬ地で見知らぬ力により死んでいく…絶望の淵に立たされ、唯一知り合いである私に縋り付いてくるその情けない顔がーー」
ダイヤ「こんのっ!!!!!」ブンッ
パシッ!!
ダイヤ「!!!!!」
海未「ダメです。言わせておけばいいのです」
聖良「ふふっ…」
ダイヤ「くっ…」ポロポロ
英玲奈「鹿角聖良」
聖良「はい?」
英玲奈「我々A-RISEやμ'sは今日のスクールアイドル文化の第一人者だと自負している。…スクールアイドルとはな?今までごく普通の…なんの変哲も無い人生を送ってきた人物が集い、限られた時間の中でメンバーと…そして自分自身と向き合い精進していくために設けられた掛け替えのない宝なのだ。そしてそれはそう上手くいくものでは無い。どこかで歯車が欠けたり…立ち止まったり…打ちのめされたり…バラバラになりかけたり…」
英玲奈「しかしな?そんな辛いことを尻目にアイドルがステージで笑顔を振り撒くのは何故か分かるか?それを乗り越えた時の奇跡のような喜びを皆に分け与えたいからだ」
英玲奈「それを正に体現しているのがAqoursだ。こうして死に直面してもそれに負けじと限られた手段で戦ってきた誇り高き戦士達だ。彼女達こそ我々の思う最もスクールアイドルらしいスクールアイドル。そちらの事情は知らないが…」
英玲奈「貴様等にその領分を汚す権利など無い!!!」
ダイヤ「英玲奈さん…」ポロポロ
聖良「おや…残念です。私達一応もA-RISEを見ながらアイドルとして育ったのですから…」
英玲奈「不名誉だな。そんな名乗る資格もないアイドル擬きの手本となっていたとは…」
聖良「……」
千歌「私と競技かるたで対局してください。あなたが勝ったら望み通り。いつもの神隠しと同じ…いえ、もう誰もあなた達の邪魔はしなくなります」
千歌「そして私が勝ったら…今日をもって神隠しはおしまい。鹿角家も滅びます」
聖良『……』
聖良『ふふっ…面白いです』
聖良『あなた達は真実に辿り着いた。そして、この競技かるたにも意味がある…』
聖良『ならそれに勝ってアヤメ達が残し、紡いできた厄介な証拠を消し去るのみです!』
千歌「……」
聖良『さっきからやけに冷静ですね』
千歌「本当はすっごく怒ってますよ。すっごく悲しいですよ。背負ったものは大きくて重くて…今にも涙になって零れ落ちてきそうです。思いっきり怒鳴りたい。思いっきり泣きたい。それでも足りない。私の感情では表しきれない程の気持ちです」
千歌「でもそれを全部ぶつけるのはこの小倉百人一首競技かるた!!!!」
聖良「ほう…」
聖良「面白いです…」
千歌「絶対に負けない!!!!!!」
海未「ダイヤさん。まもなく23時…夜半を迎えます」
ダイヤ「!!!」
海未「八百年間の歴史に紡がれた無念の想い、そしてそれ以上に固く繋がったあなた達の絆…この競技かるたで見せてください」
海未「あなた達は最高です」ニコッ
ダイヤ「海未さん…」ボロボロ
ダイヤ「……」ゴシゴシ
ダイヤ「聖良さん」
聖良「ええ」
ダイヤ「《ライバルとは共に戦うだけでなく共に戦う仲》…あなたの言葉です。よく覚えてますわ」
聖良「ええ。それはどうも」
ダイヤ「あの時とは逆の意味になってしまいましたわね」
聖良「そもそもライバルと見なしてくださるのですか?」
ダイヤ「ええ。私はこの最後の戦い…鵺の血を継ぐ者ではなく、Saint Snowの鹿角聖良と対局しますわ」
聖良「ほう」
ダイヤ「Aqoursの…スクールアイドルの底力、思い知らせてやりますわ!!」
聖良「…まあいいでしょう。言うまでもなくあなた方はアヤメについて何かを突き止めた。その石も…それが嵌め込まれている柱時計も…そしてこの対局にも、鵺様の神隠しに対抗する何かしらの算段があるのは明白…」
聖良「…しかし勝てばいい」
ダイヤ「……」スッ
聖良「……」スッ
…
千歌「……」スッ
聖良『……」スッ
ルビィ(お姉ちゃん…千歌ちゃん…みんな…)
ルビィ「よし!」グッ
…
英玲奈「……」コクッ
海未「……」スッ
海未 ルビィ
「「~世も泣かせ 紅の京の 夜桜や
水面散るらむ 三津の思ひで~」」
【23:00 対局開始】
持ち札
ダイヤ25 聖良25
持ち札
千歌25 聖良25
コチッコチッコチッ…
英玲奈(本来競技かるたは持ち札…つまり自陣に敷いてある札を0にすれば勝ち)
英玲奈(しかし…)
海未
「~あしひきの…」
パァン!!!
三人「!!!」
英玲奈「なっ…」
聖良「ダイヤさんの目の前にありましたよ。油断しないでください?」スッ
ダイヤ「くっ……」
海未(速い…やはり妖の力ですか)
聖良「送り札です」スッ
持ち札
ダイヤ:25
聖良:24
ルビィ
「~ちはやぶる…」
パッァァァン!
ルビィ「ぴぎっ!?」
千歌「くっ……」
聖良『構えが素人ですよ』
持ち札
千歌:25
聖良:24
海未
「~人はいさ…
パッ
ダイヤ「あっ…」
パァン!!!
聖良「こっちですよ」スッ
英玲奈(今黒澤ダイヤは他の札に触れたが、それは今詠まれた句と同じ陣にあった別の札。ルール上お手つきにはならない)
英玲奈(しかし全く違う札に手を伸ばしていた…それも奴の妖の力か?)
英玲奈(いや…)
ダイヤ「……」ドキドキ
英玲奈(そうではないか…)
聖良「もっとリラックスしてくださいよ。このままじゃ楽しめませんから」
ダイヤ「……」
英玲奈(肩の力など抜けないだろうな。どんな大会やステージをも凌ぐプレッシャーは相当なものだろう)
持ち札
聖良:23
ダイヤ:25
ーー第七首目
ルビィ
「~奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の
声聞くときぞ 秋は悲しき~」
聖良『空札ですか…』
千歌「……」
聖良『もうここまで七首詠まれていますが…空札三回、詠まれた四枚の札も全て私が取りました』
聖良『負けますよ。このままだと』ニヤッ
千歌「……」
持ち札
聖良:21
千歌:25
ーー第八首目
ダイヤ「……」
聖良「……」
英玲奈(もう七首読み終え差は四枚…)
聖良「ふふっ」
ダイヤ「……」
英玲奈(だが…)
海未
「~きりぎりす…」
パチィィィィィィィン
聖良「!?!?!?」
ダイヤ 「まずは一枚」シュッ!
英玲奈「……」パシィッ!
ーーーーーーーーーーーーーーー
《九十一 後京極摂政前太政大臣 》
~きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき ひとりかも寝む~
●亥(い)《21~23》~北北西~【神無月】
水面夢 其ノ一
【血染めの水面下】
旧暦十月・宵の歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
英玲奈「北北西…左上だ」カチャ
《第一封印解除》
ドクン…
聖良「『ぐっ……』」パラパラ
五人「!?!?!?!?」
英玲奈「か…顔が…」
ルビィ「崩れた……」
聖良「気にしない…で…ください……」
聖良『続けて和歌を……』
千歌「ダイヤさん…やってくれたんだね」
千歌「次は私の番だ」
持ち札
聖良 21
ダイヤ 24
ーー第十二首目
コチッコチッコチッ…
ルビィ「~住の江の…
パチィィィィィィィィン!!!
千歌「……」
聖良『また知らない札でしたか?』
千歌「……」
聖良『ふふっ…』
ルビィ
「~むらさ…」
パッァァァァァァァァァァン!!!!
聖良『なっ…!?』
千歌「《む》で始まる和歌はこれしかありません」スッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
《八十七 寂蓮法師 》
~村雨の 露もまだ干ぬ まきの葉に
霧立ち上る 秋の夕暮~
●申(さる)《15~17》~西南西~【文月】
水面夢其ノ弐
【生暖かき濁りの水面下】
旧暦七月・降雨の影響・夕暮の歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
ルビィ「西南西…左下の窪み!」カチリ
《第二封印解除》
聖良『何故また時計に…』
ドクン…
聖良「『ぐあっ…!?』」パラパラパラ…
千歌「また…」
ダイヤ(千歌さん…ルビィ…やはりそちらでも動いているのですわね)
ダイヤ「どんどん行きますわよ」
聖良「『何故だ…』」
持ち札
聖良20:千歌24
ーー第二十首目
海未
「~花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに~」
聖良「ちっ…また空札ですか」
ダイヤ「今のは小野小町の歌…色褪せた桜を、衰えた自分の容姿に当てはめていますが…」
ダイヤ「先程までの余裕とアイドルとしてのご自慢の美貌…剥がれ落ちていますわよ」
聖良「くっ…」
海未
「~かささぎの…」
パァァァァァァァン!!
聖良「!!!」
ダイヤ「よそ見厳禁ですわ」シュッ!
英玲奈「……」パシィッ!
聖良「……」
ーーーーーーーーーーーーーーー
《六 中納言定持》
~かささぎの 渡せる橋に おく霜の
白きを見れば 夜ぞ更けにける~
●寅(とら)《3~5》~東北東~【睦月】
水面夢其ノ三
【漆黒と低温の水面下】
旧暦一月・未明の歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
英玲奈(そう。こちらのアヤメの時計に一、三、五、七の和歌。あちらのサヌキの時計に二、四、六、八の和歌の札を順番に嵌めていくのだ!)
英玲奈(三つ目の札。東北東だから右上の窪み!!これで台座の和歌は二つ…!)カチリ
《第三封印解除》
ドクン…
聖良「『ぐああああああっ!!!』」バラバラボロボロボロ
ルビィ「ひぃぃっ!!」
千歌(次は私…)
聖良『はははっ…そう"か…そ"ういう"こト"か…』ゴキッ
聖良『端から勝ツ気なド"更々無かっダのダナ?』
聖良『ソノ時計に嵌め込ム"和歌ダゲを手ニ"入レレば…』
千歌(バレた…)
ルビィ「……」ゴクリ
ルビィ
「~吹くか…」
ズバァァァァァァァン!!!
千歌ルビィ「!?!?」
聖良『ア"ハハハハ"ハハ"ハハ』グシャ
ルビィ(は…速い……それに…取った和歌を潰した…)
千歌(あの力…手がぶつかったら終わりかもしれない…)
聖良『面白い"!いいタ"ロ"ウ"!!全テ"ノ札ヲ掻っ攫ッ"テ"やル"!!!
聖良『さア"…次ノ和歌ダァァ"ァ"ァ"ァ!!』
千歌(でも…)
ルビィ「……」スゥッ
千歌(それでも…)
聖良『来イ"ッ"!!!!!』ズォッ
ルビィ
「~春過…」
パァァァァァァァァァァァァァン!!!
聖良『!?!?!?!?』
千歌「勝たなきゃいけないんだよ」スッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
《ニ 持統天皇》
~春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山~
●巳(み)《9~11》~南南東~【卯月】
水面夢其ノ四
【陽光の照す優美なる水面下】
旧暦四月・亭午前の歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
ルビィ「南南東は右下!えいっ!」カチリ
《第四封印解除》
ズズズズズズズズズ…
ガタガタガタガタ
海未 英玲奈 ダイヤ
「!?!?!?!?!?」
英玲奈「なんだ!?周りの空間が歪んで…」
海未「それに柱時計が揺れています!!」
聖良「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ブンブン
海未「まさか…千歌さん達が!!」
ダイヤ「はい!恐らく四首目の和歌を取りサヌキの時計に嵌め込んだのだと思います!」
ダイヤ「しかしこれは…」
ズズズズズズズズ…
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ガタガタガタガタ…
千歌「何!?」
ルビィ「わ、分かんない!!和歌を嵌め込んだら…!!」
聖良『グォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!』
ルビィ「時計が…家が揺れて…」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……
聖良「ぐぁぁぁぁぁぁ」ドサッ
ダイヤ「きゃっ!?」ドサッ
海未「くっ…」ドサッ
英玲奈「ここはっ!?」ドサッ
千歌ルビィ「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
千歌「ダイヤさん!!!!!!!!」
ルビィ「お姉ちゃん!!!!!!!!!」
ダイヤ「ルビィ!!!千歌さん!!!!!!」
ギュッ…
ダイヤ「繋がっていましたよ…」
千歌「うん…ずっと…」
ダイヤ「信じていましたよ…」
千歌「うん…ずっと…」
千歌「だからこうして今があるんだね…」
ダイヤ「ええ」
千歌「向こうで…一人で…私達の…Aqoursのために頑張ってくれて…」
ダイヤ「突然こんなわけの分からない場所に幽閉され…皆さんが次々いなくなって…恐怖と哀しみに苛まれながらも戦い続けてくださって…」
千歌ダイヤ「「ありがとう…」」
ルビィ「うぅ……」ポロポロ
ダイヤ「ルビィ…」
ルビィ「ルビィ…泣かないって…ぐずっ…もう泣かないって…そう決めたのに……」ボロボロ
ダイヤ「あなたは本当によく頑張りました…強かった…自慢の妹です…」
ルビィ「うん…ううっ…えぐっ……」ボロボロ
千歌「ふふっ…」ギュッ
海未「ここが異世界…神隠しの大元、鵺の住む世界…ですか」
海未「柱時計が導いたんですね」
ルビィ「!!!!!」
ルビィ「μ'sの海未さん…それに…」
英玲奈「離れ離れだったアヤメとサヌキ…その時計が今ここに揃った!!」
千歌「A-RISEの英玲奈さん!」
英玲奈「お取り込み中済まないが、まだ戦いは終わっていない」
ルビィ「は、はい!」
英玲奈「ふふっ…話は後だ。全て終わればサインでも握手でもなんでもねだってくれ」
聖良「………」シュゥゥゥゥゥゥ
聖良『グゴゴゴゴゴゴゴ』ゴキゴキ
英玲奈「鹿角聖良が二人…」
ダイヤ「こちらの世界にいた者は分身でしょう。しかし、もう鹿角聖良の面影はありません」
ダイヤ「崩れかけた顔から覗く悪意に満ちた眼光、人体の限界を超え今にもはち切れんばかりの筋肉、自ら意思を持つかのように自由に動き回る尻尾…」
ダイヤ「あれは間違いなく鵺の子ですわ」
鵺ノ子『グォォォォォォ!!!!!』ダッ
ルビィ「時計を狙ってる!!!」
英玲奈「しまった!!!!」
ドゴォッ!!!!
鵺ノ子『グォォォッ!!』ズザザザザザ
千歌「あ!!」
海未「……」スッ
海未「それはさせません」
千歌 ルビィ ダイヤ
「「「海未さん!!!」」」
海未「園田流武術…それはかつて幹事様のご先祖様から授けられ今日までその歴史が紡いだ賜物」
海未「表に出なさい。あなたの相手は私です」ダッ
鵺ノ子『オ"モシ"ロ"イ!!食イ"殺シ"テヤ"ル!!!!!』ダッ
英玲奈「おい!!!!」
海未「こちらはお任せください。皆さんは本体と決着をつけてください!お願いします!!」タッタッタッタッタッタ…
聖良「成る程…」パラパラ
ルビィ「か、顔が…」
聖良「安心してください。鵺様の神聖なる地にて暴れ回るなど無礼千万…あなた達が欲しがっている和歌の札、正々堂々勝ち取って全員鵺様の生贄に捧げますので」
聖良「二人まとめてかかってきなさい」
千歌ダイヤ「……」ゴクリ
英玲奈「今更何が正々堂々か分からんが…そっちの方が都合がいい」
ダイヤ「ええ。必ずこの悪夢に終止符を打ち…」
千歌「元の生活を取り戻す!!!」
英玲奈「……」チラッ
英玲奈(現実世界からかるたまでは持って来れなかったか…だがどちらも形は同じ。こちらのかるたでもアヤメの時計の台座に嵌まるだろう。代用は効くはず…)
英玲奈「今からの対局はこちらの世界で進行していたかるたを使う。対局は先程の途中から。読み手は私ーー」
ルビィ「ルビィがやる!!!!!!」
英玲奈「!!!」
ルビィ「ルビィに…ルビィにやらせてください…お願いします!!!」バッ
英玲奈「……」
英玲奈「ふふっ…分かった。頼んだぞ」ポンッ
ルビィ「はい!!!」
千歌「任せたよルビィちゃん!!」
ダイヤ「お願いしますわ!ルビィ!!」
英玲奈「取った札は私に渡せ。時計に嵌め込む」
千歌「お願いします!!!」
コチッコチッコチッ…
コチッコチッコチッ…
聖良「……」
英玲奈「……」
ルビィ「……」
千歌(ダイヤさん達と一緒に移動して来たアヤメさんの時計。こっちの異世界標準になってる)
千歌(ふふっ…嬉しいのかな?揃う事ができたのが…)
千歌(……)
千歌(あと約三十分…それまでに決着を付けないと…)
ダイヤ「……」ゴクリ
千歌(ダイヤさんがいる)
ルビィ「……」ドキドキ
千歌(ルビィちゃんがいる)
海未「はぁっ!!!」ドゴッ
千歌(海未さんがいる)
英玲奈「……」
千歌(英玲奈さんがいる)
千歌(サヌキさんもいる)
千歌(アヤメさんもいる)
千歌(頼政さんもいる)
千歌(定家さんもいる)
千歌(Aqoursのみんなだってここにいるんだ)
千歌(過去と現在を繋いだ今…)
千歌(次に繋ぐのは未来への切符であるこの栞…裏表紙はまだ見たくない…だから…!!)
千歌(その想いよ一つになれ!永遠に!!)
ルビィ「すぅぅ…」
ルビィ「はぁぁ…」
ルビィ「よし!」
ルビィ「先程の競技かるたを続行致します。第二十三首目より…」
ルビィ「始め!!!」
持ち札
聖良:19
千歌&ダイヤ:23
ーー第二十三首目
ルビィ
「~百敷や…
パァァァァァァァン!!!
千歌ダイヤ「!!!」
聖良「ふふっ…」スッ
ダイヤ(やはり速いですわね)
持ち札
聖良:18
千歌&ダイヤ:23
ーー第二十四首目
ルビィ
「~今来むと 言ひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな~」
シーン…
ダイヤ「空札…」
千歌「……」
聖良「……」
持ち札
聖良:18
千歌&ダイヤ:23
ーー第二十五首目
ルビィ「すぅっ…」
ルビィ
「~ほ…
千歌「はぁぁぁぁっ!!」パチィィィィィィィィン!
聖良「!!!!!」
ダイヤ「ナイスですわ千歌さん!」
千歌「《ほ》で始まる句は…」
千歌「これしか無いよ!」シュバッ
英玲奈「……」パシッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
《八十一 後徳大寺左大臣》
~ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる~
●巳(み)《9~11》~南南東~【卯月】
水面夢其ノ五
【煌々たる望月と満天の星空の水面】
旧暦四月・初夏・月の和歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
英玲奈
(【四人の王に陽は昇らずただ月が浮かぶのみ】)
英玲奈(これは五~八番目の水面夢に対応する和歌に全て月が含まれていることも表している)
英玲奈「どうだ!」カチリッ!
シーン…
英玲奈「なっ!?」
千歌「英玲奈さん!?」
ダイヤ「どうされました!?」
聖良「おや?何か不都合でもありましたか?」
英玲奈「……」
英玲奈「いや…何でも無い…」
聖良「ふふっ…そうですか。なら続けましょう」
英玲奈(何故だ…何故何も起きない…)
英玲奈(この和歌で合っているはずなのに…)
英玲奈(このかるたでは代用が効かないのか?いやそんなはずは…)
持ち札
聖良:18
千歌&ダイヤ:22
ーー第二十五首目
ルビィ「すぅっ…」
千歌「……」ピクッ
聖良「……」ニヤッ
ルビィ
「~朝ぼらけ…
千歌「目のまーー」スッ
聖良「遅い!!」バッ
パチィィィィィィィン!!!!
千歌「あ……」
聖良「残念」スッ
ルビィ
「~朝ぼらけ ありあけのつきと…」
聖良「!?!?!?」
ダイヤ「……」ヒョイ
ダイヤ「ありましたよ。あなたの目の前に」クスッ
聖良「何故……」
ダイヤ「百人一首の中に《朝ぼらけ》で始まる歌は二首ありますの。千歌さん。ナイスフェイントです」
千歌「うん!」
聖良「小賢しい真似を…」
ルビィ「聖良さんは取札のない相手陣の別の札を触ったのでお手つきになります。更に二人は相手陣にある正しい札を取ったので…合計二枚の送り札をお願いします」
ダイヤ「ええ」スススッ
聖良「チッ…」
千歌「あと二枚だよ!!」
持ち札
聖良:19
千歌&ダイヤ:20
ダイヤ「英玲奈さん!!」シュバッ
英玲奈「ああ」パシッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
《三十一 坂上是則》
~朝ぼらけ ありあけのつきと みるまでに
吉野の里に ふれる白雪~
●寅(とら)《3~5》~東北東~【睦月】
水面夢其ノ六
【漆黒と冷水に苛まれし新月の水面】
旧暦一月・月の和歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
英玲奈(六番目…今度はサヌキの時計の右上に!)カチリッ
シーン…
英玲奈「何故……」
ダイヤ「?」
千歌「英玲奈…さん?」
英玲奈「……」
英玲奈「何も起きないんだ…」
三人「!?!?!?!?」
英玲奈「こっちに来てからの水面の二首…それを嵌めても全く何も起きない…」
ダイヤ「そんな…」
英玲奈「アヤメの時計はともかくサヌキの時計まで反応しないなんてあり得ない…」
聖良「なぁる程…読めてきましたよ」
四人「!!!!」
聖良「アヤメは夢で会ったんですね。現在百人一首にある沖の石の和歌を詠った腹違いの娘にあたるサヌキと。そこでどうにかして鵺様を記す暗号を作りあの時雨亭に隠した。それを見つけた定家が暗号を隠した二つの柱時計を作り時雨亭と…そしてアヤメが亡くなった本当の地、西浦の禅長寺に送ったんでしょう」
聖良「その柱時計があなたの家に移されたのです」黒澤ダイヤさん」
聖良「禅長寺に鹿角家の調査が入る前に」
ダイヤ「……」ゴクリ
聖良「やはり去年時雨亭から新たな序歌が提出されたのは偶然では無かったのですね。それで時雨亭にあったアヤメの石がサヌキの沖の石とやらと繋がっていたと?」
聖良「ふう…先代ももう少し頭が回っていればワリと簡単にアヤメの尻尾を掴めたかもしれないのに…」
聖良「まあいいです。しかしその柱時計がなんだと言うのですか?こちらの世界とあちらの世界を結んだ時は驚きましたが…所詮それだけの事だったんですよ。むしろ好都合でしたね」
聖良「真実を知る皆さんだけが誰にも見つからないここに来て…更に鵺様の生贄まで増えたんですから」ニヤッ
英玲奈「……」
千歌「英玲奈さん…」
ルビィ「うぅ……」
英玲奈(黒澤ルビィ)サッサッ
ルビィ(ぴぎっ!?)ビクッ
英玲奈(もしかしたらこの札には謎が隠されているかもしれん。それを解くまで空札や別の札で時間を稼いでくれ)サッサッサササッ!
ルビィ(わ、分かりました!)コクコクッ
聖良「さて…続けましょうか」スッ
聖良「持ち札0を目指す…何の変哲もない競技かるたをね?」クスッ
ダイヤ「ええ…」スッ
千歌「そうですね…」スッ
持ち札
聖良:19
千歌&ダイヤ:20
ザバァァァァァァァン…
ザバァァァァァァァン…
鵺ノ子『グォォ"ォ"ォ"ォォ"!!!』ダッ
ブンッ!!
海未「……」サッ
海未「せいっ!!」ドゴッ!
鵺ノ子『ゴボァ"ァ"ァァ"ァ"』ボタタ
海未「重心が不安定。呼吸も乱れていますし腕に自分が振り回されています。いくら強靭な筋肉でも使いこなせなければただの肉の塊です」
鵺ノ子『貴様ァァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!」
海未「大人しく散りなさい!」
海未(……)
海未(波が激しい…)
海未(それに空気も不穏です…)
海未(何か良からぬことが…)
鵺ノ子『グォォ"ォ"ォ"ォォ"!!!』ダッ
海未「!!!」
海未「はぁああああ!!!」ダッ
ーー第三十首目
ルビィ
「~浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど
あまりてなどか 人の恋しき~」
聖良「また空札…これで四連続…」
ダイヤ「……」
千歌「……」
千歌(空札はここに並んでない札で全部で五十枚…)
千歌(今が三十首目だから、つまり空札は十九枚詠まれたことになるね)
千歌(これで適度に時間稼ぎをして残りの二首を確実に取らないとだけど…)チラッ
コチッコチッコチッ…
千歌(時間もあんまりない…)
パァァァァァァン!!!
千歌「!!!!」
聖良「ぼーっとしないでください」スッ
ダイヤ「千歌さん。大丈夫ですか?」
千歌「う、うん…!大丈夫!!」
聖良「では…送り札です」ススッ
千歌「!!!!」
ダイヤ「この札は…」
聖良「どういうわけか真っ赤っかですね。これがサヌキの和歌なのは偶然なのか…」
聖良「それとも?」ニヤッ
持ち札
聖良:18
千歌&ダイヤ:20
……
英玲奈(落ち着け。落ち着いて考えるんだ)
英玲奈(五番目と六番目の和歌はこれで間違いないはず…)
~ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる~
~朝ぼらけ 有明の月と みるまでに
吉野の里に ふれる白雪~
英玲奈(月の和歌という解釈が間違っているのか?)
英玲奈(特殊な和歌で普通に嵌め込んだだけではーー)
英玲奈(月……特殊な和歌……)
英玲奈(!!!!!!)
英玲奈(そうか!有明の月!!!!!)
英玲奈(ありあけ…夜明けに空に浮かんでいる月のこと…)
英玲奈(月というのは満月の日を境に段々出るのが遅くなる。欠けて下弦の月になった状態だと朝になっても消えないのだ)
英玲奈(成る程…確かに、本来月は夜の帳を照らすもの。それが夜明けに出ているというのなら《特殊な月》という解釈になるだろうな)
英玲奈(つまりこの二つの有明の月の札は特殊な嵌め方をしなければいけない)
英玲奈(まずはこちら…)
~ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
ただ有明の 月ぞ残れる~
英玲奈(この札は五番目の札で
●巳(み)《9~11》~南南東~【4月】
…だからアヤメの時計の右下に嵌めるものだな)
英玲奈(この《ほととぎすの鳴きつる方)に答えがあるのだとしたら…)
英玲奈(何かの音……)
ーー第三十二首目
ダイヤ「もう残りの二首だけに手を出すのはやめましょう。分かる札はどんどん取って構いませんわ」
千歌「分かったよ…!」
ルビィ
「~陸奥の…
ダイヤ「よし!」バッ
パァァァァァァァン!!!
ダイヤ「なっ…」
聖良「残念」スッ
千歌「今ダイヤさんが札を払ったように見えたのに…」
聖良「ふふっ…歌合の名簿を弄れる私ですから。このくらい造作もありません」
千歌「そんな…」
ダイヤ「その名簿の中身に辿り着けなかったくせに少々口が達者でよ?」
聖良「なんですって?」
ダイヤ「本当は先代の誰かがその名簿に百年ごと、鹿角家が怪しまれないように錯覚させるまやかしをかけたのでしょう。あなたは何もしていないませんわ。鵺の血縁とは言え所詮その端くれ。今宵、あなたが末代となるんですわ!」
千歌「ちょ、ちょっとダイヤさん!そんなに挑発したら…」
聖良「言ってくれますね。ええ、分かりました。その端くれに完膚なきまでに叩きのめされ鵺様の糧となる絶望…」
聖良「その身で味わいなさい」ズォッ!
千歌「うっ……」ビリビリ
ダイヤ「……」ビリビリ
ルビィ「うゆ……」ビリビリ
持ち札
聖良:17
千歌&ダイヤ:20
ーー第三十三首目
ルビィ
「~め…」
パァァァァァァァァァァン!!!!
ルビィ「ぴぎっ!?」
千歌「速い…!!」
聖良「千歌さ~ん。《め》で始まる歌はこの紫式部の和歌しかありませんよ?」クスッ
千歌「……」
聖良「自陣の札を取ったので送り札はありませんね」
ダイヤ「本当にそんな力が…」
聖良「当たり前です。言ったじゃないですか。じゃなければ神隠しや紋章の対象をどうやって定めるのです?」
ダイヤ「くっ…」
持ち札
聖良:16
千歌&ダイヤ:20
……
英玲奈(この《ほととぎすの鳴きつる方)に答えがあるのだとしたら…)
英玲奈(何かの音……)
コチッコチッコチッ…
英玲奈(!!!!!!!!)
英玲奈(そうか…秒針の刻む音!)
英玲奈(ほととぎすの鳴きつる方とは秒針の示す方向を表していたのか…!)
英玲奈(この札はアヤメの時計の右下…つまり南南東の方向に嵌める札…)
英玲奈(時計の数字で言う南南東は……)
英玲奈(『5』!!!)
英玲奈(黒澤ルビィ!!!)ギロッ
ルビィ(ぴぎっ!?)ビクッ
ーー第三十四首目
聖良「ふふっ…」
ダイヤ「……」
千歌「……」
ルビィ「すうっ…」
コチッコチッコチッ…
英玲奈(秒針が5の数字を指すタイミング!)
英玲奈(今だ!!!!!!!!)カチリッ!
《第五封印解除》
ドクン…
聖良「『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』」
ルビィ
「~夏の夜は…
ダイヤ「はいっ!!」バッ
パァァァァァァァン!!!
千歌「やった!」
ダイヤ「お願いします!」バッ
英玲奈「ああ!」ガシッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
《三十六 清原深養父》
~夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ~
●申(さる)《15~17》~西南西~【文月】
水面夢其ノ七
【豪雨と荒波の洗礼の水面】
文月・雲・月を探す(見失う)和歌に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
千歌(鵺が食事で頭の部分からいなくなる時のことを、月(眼)が雲から消えたってところに掛けてるんだ)
英玲奈(これで二人が取るべき和歌は残り一首となった)
英玲奈(順番通りなら…この七番目の和歌を嵌め込む前に六番目の和歌について推理しなければな)
持ち札
聖良:16
千歌&ダイヤ:19
ザバァァァァァァァァァァン
ドクン…
鵺ノ子「グォ"ォ"ォ"…」
海未「どうしました?もう終わりですか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
海未「!?!?!?!?」
海未「なんですかこの揺れは!?」
鵺ノ子「鵺様ダァァ"ァァ"ァァ!!鵺
様カ"降臨サレ"ルゾォォ"ォォ!!!」
海未「なっ!?」
海未「どうして鵺がここに!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
千歌「な…何!?」
ルビィ「家が揺れてる!」
ダイヤ「地震ですわ!」
聖良「ははははっ…鵺様……自ら赴いてくださるとは…今回の生贄が相当極上だということですね!!あはははははははははははははははははははははっ!!!」
英玲奈「狂ってやがる…」
聖良「…」スッ
英玲奈「!!」
聖良「さっさと終わらせましょうか」
ダイヤ「そ、そのつもりですわ」
千歌「うん…こっちが狙ってるのはあと一首…!!」
聖良「ふふっ…」
英玲奈「……」
英玲奈(この有明の月の和歌…)
~朝ぼらけ 有明の月と みるまでに
吉野の里に ふれる白雪~
英玲奈(これは六番目の和歌…
●寅(とら)《3~5》~東北東~【1月】
つまりサヌキの時計の右上に嵌める札だ)
英玲奈(厳密にはこの和歌は月の和歌ではない。吉野の里に積もっている雪に朝陽が当たり、その様子がまるで有明の月ように光り輝いている様を詠ったのだ)
英玲奈(五番目の札の要点がほととぎすの鳴き声…今回注目すべきは…)
英玲奈(下の句の《吉野の里に ふれる白雪》の部分…)
英玲奈(先程は音に関するトリックだったが、この札はそうではない)
英玲奈(吉野の里とは今の奈良県の吉野山とその一帯のことを言う。平安当時は桜よりもそこに積もった雪景色の方が美しいとまで言われていた程…その堂々たる静寂の中にある趣が詠われているのだ)
英玲奈(しかし…だからなんだと言うのだ?それとこの札の嵌め方になんの関係が…)
ーー第三十五首
グラグラグラ…
ルビィ「……」ゴクリ
ルビィ
「~これやこの…
千歌「はいっ!!!」
パシィィィィィィィィィン!!!
千歌「よし…」
千歌「あれ!?」
聖良「ふふっ…ここですよ」スッ
千歌「また!どこが正々堂々だよ!!」
聖良「ふふっ…怒らないでください。これだって私自身の能力なんですから。持てる力を使って何が悪いんです?」
聖良「むしろ、あなた達の言う暗号とやらの和歌が全て…空札に含まれずここに並んでいること自体が…」
聖良「卑怯ですよ?」フフッ
千歌「うるさい!」
ダイヤ「千歌さん」
千歌「!!!」
ダイヤ「落ち着いてください。対局で心を乱してはいけませんわ」
千歌「ダイヤさん…」
ダイヤ「家を出る前…私はあなたと善子さんに言いましたわよね?百人一首を覚えなさいと…」
千歌「……」
ダイヤ「しかしあなたは今のように…この短期間で私より早く取れるまでに成長していますわ」
千歌「命がけだから…初心者って理由付けて負けるわけにはいかないよ」
ダイヤ「ふふっ…そうですわね」
千歌「でも、戻ったら…」
ダイヤ「?」
千歌「戻ったら百人一首…しっかり教えてね。私と…」
千歌「善子ちゃんに」
ダイヤ「千歌さん…」
ダイヤ「ええ」ニコッ
千歌「……」
聖良「そんな悠長にしていていいのですか?」
千歌ダイヤ「!!!」
コチッコチッコチッ……
聖良「23時57分…つまりあと六分ですよ」
聖良「そして…」
ヒョオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……
英玲奈「なっ……」ビリビリ
ダイヤ「この鳴き声…」ビリビリ
千歌「鵺だ!!!」ビリビリ
ルビィ「ひぃぃっ!!!」ビリビリ
海未「皆さん!!」バッ
千歌「海未さん!!!」
英玲奈「奴はどうした!?」
海未「あそこです!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
英玲奈「おいおいなんだこの黒雲は…」
ルビィ「いつの間にこの島の上に…」
ダイヤ「平家物語の記述と同じ…鵺と共に現れる暗雲ですわ!」
千歌「もう待ちきれなくて直接襲いに来たんだよ…」
海未「恐らくあの暗雲の中に鵺が…」
鵺ノ子『鵺様ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!』
バッ
ダイヤ「あんな高いところに…」
ルビィ「ま、まさかあの雲を目指してるんじゃ…」
ズボボボボボボボボボボッ!!!
五人「!?!?!?!?」
英玲奈「雲に吸われたぞ!!」
ヒュン……
バチャバチャビチャドボボボバタタ…
ルビィ「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
英玲奈「なっ!?」
千歌「血…血だ……」
海未「食らったんです…分身を…」
聖良「そうです」
五人「!!!!」
聖良「やはり不完全な我が分身は少々コントロールが効きませんでしたね」
聖良「しかし、次はあなた達の番ですよ」バラバラバラ…
ダイヤ「顔が…」
聖良「こうなってしまった以上、もう私も人間界では生活できません。しかし鵺様の糧となれるのなら本望…」
千歌「続きをやるよ!!」
聖良「無駄です。0時…鵺様が襲ってくるまであと数分。それまでに対局は終わりません。それに、あなた達の求めている和歌だって私がこの力で取りーー」
千歌「やってみなきゃ分かんないよ!!!」
ダイヤ「そうですわ!!私達は最後まで戦います!!!」
ルビィ「そ、そうだよ!ルビィだって!!」
聖良「はあ。仕方がありませんねぇ…その命、最後の一滴まで届かぬ希望に捧げていなさい」
聖良「さぞ旨味のある絶望と化しますから。鵺様もお喜びでしょう」
英玲奈「上等だ」
海未「ええ。そのつもりです」
ヒョォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ…
ルビィ(大丈夫…)グッ
ルビィ「対局を再開します!!」
持ち札
聖良:15
千歌&ダイヤ:19
ーー第三十六首目
コチッコチッコチッ…
ルビィ
「~玉の緒よ…
パチィィィィィィィィィィィン!!!
聖良「ふふふ…」スッ
千歌「くっ…」ダンッ!
千歌「ここまで来たら絶対取らなきゃなのに…」
ダイヤ「奴の力がある限り対局の流れは崩せませんわ…」
海未「一体どうしたら…」
英玲奈「園田海未」ヒソッ
海未「!!!」
英玲奈「恐らくだが、時計に全ての和歌を嵌め込んだ時何が起きるか判明した」ヒソッ
海未「誠ですか…!?」ボソッ
英玲奈「それはな?」
英玲奈「……」ボソッ
海未「!?!?!?」
英玲奈「…だから準備を頼む。私が必ず六番目の和歌の暗号を解く」
海未「……」
海未「承知しました」スッ
ーー第三十七首目
ルビィ
「~恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋にくちなむ 名こそ惜しけれ~」
聖良「空札…」
ダイヤ「……」
千歌「……」
英玲奈(奴の隙を作るには先程と同じく正しい方法で札を嵌め込めば良い。奴が怯んだその瞬間、黒澤ルビィに八番目の和歌を詠んでもらうのだ。そうすれば六、七、八の和歌の札を一度に嵌め込むことができる)
英玲奈(しかしその正しい方法と言うのが分からない…)
~朝ぼらけ 有明の月と みるまでに
吉野の里に ふれる白雪~
英玲奈(里……白雪……これは一体……)
パァァァァァァァン!!!
英玲奈「!!!」
スルスルスルスル…コツン
英玲奈「……」
聖良「あはははははは!!すみません。飛んで行ってしまいましたね」
千歌「英玲奈さん…!」
ダイヤ「大丈夫ですか!?」
英玲奈「構わない」スッ
英玲奈(ん?)
聖良「ふふっ」スッ
聖良「すみません。さあ、時間まで最高に楽しみましょう♪」
英玲奈(この札…)スッ
英玲奈(裏側と縁が真っ黒になっているのか。珍しい)
英玲奈(かるたとは本来、字の書いてある生地を緑や紺色の和紙で包み込むように作るのだが…その製法は江戸時代から始まったものだ)
英玲奈(平安時代当時、そのような技術は無かった。これは単に厚紙に字を書き縁と裏を黒く染色しただけだな)
英玲奈(……)
ーー
ーーーー
鵺ノ子『鵺様ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!』
バッ
ダイヤ『あんな高いところに…』
ルビィ『ま、まさかあの雲を目指してるんじゃ…』
ズボボボボボボボボボボッ!!!
五人『!?!?!?!?』
英玲奈『吸われたぞ!!』
ヒュン……
バチャバチャビチャドボボボバタタ…
ーーーー
ーー
英玲奈(血が地面を染めた…)
英玲奈(白雪が里を染める…)
英玲奈(白雪が里に積もる)
英玲奈(里の地面に雪の結晶が積もる…)
英玲奈(!!!!!!!!!!)
ヒョォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
ガタガタガタガタ…
聖良「あと一分!あはははは!!鵺様がこちらに向かっています!!!」ビリビリ…
千歌「そんな…」ビリビリ…
ダイヤ「くっ…時間がありませんわ…!」ビリビリ…
ルビィ「ぴぎぃぃ!!」ビリビリ…
英玲奈「黒澤ルビィ!!!詠めぇぇ!!!!!」
ルビィ「!!!!」
ルビィ「分かりました!!!」
聖良「無駄です!!!どう足掻こうと私には勝てない!!!!」
千歌「そんなことない!!!!」
ダイヤ「この一手で必ず勝ちますわ!!!」
ルビィ「すぅっ……」
英玲奈「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」
カチリ!
《第六封印解除》
ドクン…
聖良「あがっ……」ピクッ
英玲奈「雪の結晶が里の地に積もる…」
英玲奈
「それは 里→黒 という事だ。裏の黒い面を表にして嵌め込む…これが答え!!」
ルビィ
「~秋風に…
千歌「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ
ダイヤ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ
聖良「負ケ"ル"カ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ!!!」
英玲奈「なっ!?」
バチィィィィィィィィィン!!!!!
ダイヤ「ぐっ…」ピシッ
ダイヤ「!!!!」
千歌「ぐぬぬぬぬ…」ギリギリギリ
聖良「離セ"ェ"ェ"ェ"ェ"ェ"ェ"!!!」ズォォォォォォ!
千歌「くっ……」ギリギリギリ
ダイヤ「千歌さん!!!」
ヒョォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
英玲奈「降りて来たぞ!!」
ルビィ「千歌ちゃん!!!」
聖良「ヒャハハハハ"ハハハハハハハ"ハハハハハハハ"ハ"ハハハ"ハ!!!」ズォォォォォォ!
千歌「おまえなんかに…」
聖良「!!!!!」ズォォォォォォ!
千歌「おまえなんかに…」ズォォォォォォ!
聖良「なっ!?」ズォォォォォォ!
千歌「私達の未来を奪われてたまるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ゴォォォォォォォォォォォォ!!!!
ズバァァァァァァァァァァァァン!!!
聖良「かはっ…」ビュン
ダイヤ「英玲奈さん!」シュバッ
英玲奈「任せろ!!!!」
ヒョォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
バリバリバリバリバリバリ…
ギシギシギシギシ…
ズズズズズズズズズズズズズズズ…
ルビィ「も、もうそこまで来てるよ!森を食べながらこっちに向かってる!!!」
英玲奈「はぁぁぁぁぁ!!!」カチリッカチリッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
《七十九 左京大夫顕輔》
~秋風に たなびく雲の 絶え間より
もれ出づる月の 影のさやけさ ~
●亥(い)《21~23》~北北西~【神無月】
水面夢其ノ八
【鵺の供物】
旧暦十月・暗雲より覗く鵺の目玉に一致
ーーーーーーーーーーーーーーー
《第七封印解除》《第八封印解除》
《全封印解除》
ガタガタガタガタガタガタガタガタ…
ガタガタガタガタガタガタガタガタ…
ダイヤ「サヌキとアヤメの二つの時計が共鳴してますわ…」
バラバラバラバラバラバラバラバラ…
バラバラバラバラバラバラバラバラ…
三人「!!!!!!!」
千歌「こ、壊れちゃった!!!」
ルビィ「待って!!でもこれは!!!」
ダイヤ「《雷上動》!!!それにこっちは《骨食》!!!!
ダイヤ「そういうことでしたのね!!定家がこの柱時計に隠していたのは、かつて頼政と猪早太が鵺退治に使った弓矢と刀!!!!」
英玲奈「…」パシッ!
英玲奈「頼んだぞ園田海未!!!!!!」ビュン!!
海未「お任せください!!!」パシッ!
聖良「サ"セ"ル"カ"ァァ"ァ"ァァァァァァ!!!!」ダダダダッ
千歌ルビィ「!?!?」
ダイヤ「くっ…最後まで邪魔を!!」
英玲奈「……」サッ
ダイヤ「英玲奈さん!!」
聖良「グォォォ"ォォォォ"ォォ"ォ"ォォ"ォォ!!!!!!!!!」ダダダダッ
英玲奈「破邪を纏いて悪を断つ…骨食よ」シャキッ
英玲奈「骨の髄までしゃぶり尽くせ」ヒュッ
ズバッ!!!!
聖良「カ"ッ……」ボタタッ
英玲奈「悪く思うな」スチャ
ドサッ…
ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
ズガガガガガガガガガガガガガ…
バキバキバキバキバキバキバキバキ…
海未「食らいなさい!!!!!」
三人「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!!」
海未「ラブアローシュートォォォォォォォォォ!!!!!!!」ズバァァァァァァ!!
ズガァァァァァァァァァァァァァン!!!
ヒョォオォォォォォ"ォォオ"ォォォ"ォォォォ"ォォォォォ"ォォォォ"ォ"ォォォ"!!!!!!!
英玲奈「命中した!!!!!」
ヒョォォォオォォオオオォォ………
ズズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン………
ダイヤ「やった…倒しましたわ!!」
ビュォッ!!
バキバキバキバキバキバキ!!
五人「!!!!!!!」
海未「くっ…!?」
英玲奈「浜辺へ逃げろ!!奴が落ちた衝撃で家が崩れる!!!」ダッ
千歌「はい!!!」ダッダッダッ…
ダイヤ「分かりましたわ!!!!」ダッダッダッ…
ルビィ「はぁ…はぁ…」ダッダッダッ
ルビィ「あっ…!」ツルッ
ドサッ!
四人「!!!!」
ダイヤ「ルビィ!!!」ダッ
千歌「ダイヤさん!ルビィちゃん!!」
海未「いけません!!」グイッ
英玲奈「死ぬぞ!!!」グイッ
千歌「でも…!!!!!」
ガラガラガラガラガラガラ…
バキバキバキバキバキバキ…
英玲奈「急げ!!!!!!!」ダッ
海未「来てください!!!!!」グイッ
千歌「嫌だ!!!嫌!!!!」
ルビィ「うゆ……」ズズッ
ダイヤ「大丈夫ですかルビィ」
ルビィ「あっ…」
ダイヤ「えっ?」クルッ
千歌「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
ガラガラガラガラガラガラガラガラ…
ズズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…
ザザーン…
ザザーン…
海未「あ…ああ…」ガクッ
英玲奈「くっ……」ドサッ
千歌「……」ザッザッザッ
千歌「……」ピタッ
ガラガラガラガラ……
パラパラパラ……
千歌「ダイヤさん…ルビィちゃん…」ガクッ
千歌「うっ……うぅ……」ポタポタ
英玲奈「すまない…もっと早く謎が解けていれば…」
海未「英玲奈さんは悪くありません…いえ、誰も……」
千歌「そんな……なんで………」ボロボロ
海未「……」
英玲奈「……」
ポクポクポクポク…
英玲奈「ん?」
海未「英玲奈さーー」
英玲奈「しっ何か聞こえる」
千歌「え…?」
ポクポクポクポク…
海未「これは…木魚の音ですか?」
千歌「!!!!!!!」
ーー
ーーーー
花丸『まあ、おかげでお菓子とかお餅とかたくさんもらったけどね』ドッサリ
曜『うわ…難しそうな本とかお経まで…』
梨子『これ木魚だよね?なんで全部風呂敷に詰めようとするの?』ポクポク
果南『あははは…』
ーーーー
ーー
千歌「花丸ちゃん…花丸ちゃんがお寺から貰ってきたやつだ!!!」
海未「音の出どころを探しましょう!!!二人が助けを求めているんです!!!」ダッ
千歌「ダイヤさん!!!ルビィちゃん!!!」ガラガラ
英玲奈「木魚は響く。だがかなり音が小さい。深いところに埋まっている可能性が高いから慎重に探せ!闇雲に?き分けると一気に崩れて潰されるぞ!!」ダッ
千歌「……」スッ
ポクポクポクポク…
千歌「あっちだ!!」ガラガラ
海未「気をつけて下さい!!」ガラガラ
英玲奈「ん?」
英玲奈「これは…」スッ
海未「どうされました?」
英玲奈「サヌキの札だ」
海未「!!!」
英玲奈「さっまで真っ赤だったのに…少しずつ元に戻っている」
千歌「ここです!!!」
英玲奈海未「!!!!」
ポクポクポクポク…
海未「真下です!!」
千歌「ダイヤさん!!ルビィちゃん!!!」
ポクポクポクポク…
千歌「声が返ってこない…どうしよう……」
海未「……」
英玲奈「体力の消耗を抑えているのかもしれない。崩さないように上の瓦礫から慎重にどかすぞ」
千歌「はい!!」
海未「待ってください」
千歌英玲奈「!!!!」
千歌「なんでですか!!!」
英玲奈「あまり長時間圧迫されていると危険だ!慎重に…だが迅速に救助をーー」
海未「おかしくありませんか?」
英玲奈「何?」
海未「体力の消耗を抑えるなら木魚を叩くよりも叫んだ方がよっぽど楽です」
海未「それに、木魚を叩ける程隙間があるなら瓦礫に圧迫されているのも考えにくいです」
海未「わざわざ木魚を叩いて知らせているのは…声を聞かれて自身の正体がバレてしまうのを防ぐためでは無いですか?」
千歌「そんな…」
英玲奈「じゃああの音は…」
?「全ク"…勘ノ"イイ奴タ"…」
三人「!!!!!」
海未「離れてください!!!!」
ガラガラガラガラ…
ドゴッ!!!
海未「かはっ…」ビュン…
千歌「海未さん!!!」
聖良「鵺様ノ"…鵺様ノ"生贄ニ"…」ボタタ…
英玲奈「死に損ないめ…」
英玲奈「鵺は死んだ!!見ろ!!あの森で朽ちている!!!!」
聖良「!?!?」クルッ
ヒュォォォォ…
パラパラパラ……
聖良「ヌ"…鵺様……」ボタタタタ
英玲奈「もう終わったんだ。お前達鹿角家の役目も終わりだ!共に朽ち果ーー」
ドガッ!
英玲奈「かはっ…」ビュン
ドゴッ!!
英玲奈「……」ズズッ
聖良「嘘タ"…鵺様ハ…我ラ"ハ永久ニ"不滅…」
聖良「!!!」
千歌「……」
聖良「貴様モ"鵺様ノ"ーー」
パチィィン!!
聖良「……」
千歌「返して」グッ
聖良「貴様ーー」
パチィィィィィン!!!!
聖良「!!!!!!」
千歌「みんなを……」グッ
千歌「みんなを返して!!!!!!!!!!!!!!!!!」ブンッ!
聖良「黙レ"ェ"ェ"ェ"ェ"ェ"ェ"ェェ"!!!!!」ズォッ!
ザシュッ!!!!!
千歌「……」ボロボロ
千歌「え……?」ボロボロ
聖良「カ"……ク"カ"カ"………」ドボボボボ…
ズブブ…
千歌「骨食……」
千歌「!!!!!!!!!」
ダイヤ「何をしているんですの?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
千歌「ダイヤさん!!!!!!」
ダイヤ「一体どれだけ仲間を傷付ければ気が済むのやら…」グッ
ダイヤ「この腐れ外道がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」ズブブブッ!!
聖良「カ"ア"ア"@ア"ア/&#"ア"d〆?ア"!!!!」ドボボボボボ…
「離れてください!!!」
千歌ダイヤ「!!!!」バッ
ヒュォォォォッ…
ドスッ!!!
聖良「カ"…」ピクッ
海未「はぁっ……はぁっ……」スッ
千歌「海未さん!!!」
タッタッタッタッタッタッ
ルビィ「……」バッ
千歌「ルビィちゃん!!!」
ルビィ「こ…これで終わりです…全ての悪夢を終える歌…」
聖良「ヤ"……メ"ロ"…………」
ルビィ「……」スゥッ
聖良「ヤ"メ"ロ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ'!!!!!!!!!!!」
……
梨子『これ木魚だよね?なんで全部風呂敷に詰めようとするの?』ポクポク
……
ルビィ
「比ぶれど…」
……
鞠莉『ダイヤ!!曜がまだ詠んでる途中でしょう!?人の話は最後まで聞いてから取らないとダメよ!!』
……
ルビィ
「うちつけなりや…」
……
善子『…みんな、今まで本当にありがとう!』
善子『そして、こんな私だけどこれからもよろしくね!』ニコッ
……
ルビィ
「巴ぐさ…」
……
花丸『マルを素敵な世界に導いてくれてありがとう。マルの心を開いてくれてありがとう。今日まで一緒に旅をしてくれてありがとう。今まで読んだどんな一冊よりも素敵な素敵な物語だった。大好きなルビィちゃんと出逢えて本当に良かった』
花丸『ありがとう……ルビィちゃん』ポロッ
……
ルビィ
「気なつかし夜は…」
……
果南『一つだよ…ずっとずっと…』ボロボロ
……
ルビィ「……」ポロッ
……
曜『私達の死体には二度と触らないで』
……
ルビィ
「いろはの…ごとく……」ポロポロ
聖良「!!!!!!!」パラパラ…
聖良「我ガ身ガ…滅ビテ行ク…」パラパラ…
スッ…
聖良「鵺様…先代様…そして理亜……ごめんなさい……鹿角家は……もう終わりです……」パラパラパラ…
聖良「本当に…ごめんなさい……」ポロッ
スゥゥゥゥッ…
千歌「終わった……」
ルビィ「ほっ……」ドサッ
ダイヤ「あっけない最後でしたわね…」ドサッ
海未「大丈夫ですか!?」バッ
ルビィ「海未さん!」
ダイヤ「ええ…なんとか。私達のいた場所は奇跡的に空洞となり潰されずに済みましたの」
英玲奈「よかった…皆無事だったんだな…」
ヨロヨロ
海未「英玲奈さん!!!御無事でしたか!?」バッ!
英玲奈「ああすまない…骨の二、三本がやられているのは間違いないが…辛うじて助かったようだ…」
英玲奈「ん?」
ダイヤ「?」
英玲奈「首の紋章が消えているぞ!!」
ダイヤ「!!」
海未「ええ、本当です!!何も残っていません!!!」
ダイヤ「やった…やりましたわ…」
ダイヤ「これで鵺の呪いは終わりましたわ!!」
海未「ええ…長い…本当に長い戦いでした」
ダイヤ「これでAqoursの皆さんも戻ってーー」
千歌「来ないよ」
三人「!!!!」
ルビィ「……」
ダイヤ「な…何を言っているのですの千歌さん?」
千歌「みんな水面夢であの鵺に食べられちゃった…梨子ちゃんも鞠莉さんも善子ちゃんも花丸ちゃんも果南ちゃんも曜ちゃんも…」
海未「そんな…」
英玲奈「…薄々そんな気はしていたが」
ルビィ「……」ギュッ
ダイヤ「あ…ああ……」ガクッ
ダイヤ「では一体…私はどうすれば…」ボロボロ
ダイヤ「何の為に頑張って来たと言うのですか…」ボロボロ
ダイヤ「約束を忘れたんですの…?向こうに戻ったら千歌さんと…それから善子さんに百人一首を教えると…」ボロボロ
千歌「……」
ダイヤ「み…みなさんに出した和歌の宿題は…わ、私が悪かったですわ。提出は晴れてからでも構いませんから…ですから……」ボロボロ
ルビィ「……」ギュッ
ダイヤ「ずっと繋がっていると…一つだと…そう信じ続けて…希望が垣間見えて…必死に必死に戦った結果がこれですの?」ボロボロ
ダイヤ「…こんなの」ボロボロ
ダイヤ「こんなの綺麗事ですわ!!!会えないのならもう繋がりもクソもありませんわよ!!!!!!!!!!!!」ダンッ!
海未「……」
英玲奈「残酷過ぎる……」
千歌「ごめん…ダイヤさん……」
ダイヤ「うぅっ…うう……」ボロボロ
ルビィ「お姉ちゃん…」スッ
コロコロコロ…
ルビィ「あ…」
英玲奈「これは…」スッ
千歌「柱時計の石…」スッ
ルビィ「さっき…壊れた時計の中から見つかって…」
英玲奈「そうか…」
千歌「……」ギュッ
ブゥゥゥゥゥゥゥゥン…
五人「!!!!」
海未「石が反応しています!!!」
ズォォォォォォォォォ…!!
ダイヤ「なっ……!?」ズズッ
海未「空間が裂けた!?」ズズッ
英玲奈「どうやら現実世界への扉だ…」ズズッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ルビィ「じ…地震!?」ヨロッ
海未「マズいです…鵺がいなくなったことでこの世界が崩壊しているんです!早く戻らないと二度と帰れなくなります!!!」ズズッ
ダイヤ「そんな……」ズズッ
千歌「私は残る」
四人「!?!?!?!?」
海未「な、何を言っているんですか千歌さん!?」ズズッ
千歌「私はここに残って…みんなを助けます」
ルビィ「ち、千歌ちゃん!!」ズズッ
英玲奈「バカ言うな!!この世界は崩壊している!!そんな所にしたらどうなるか分からないんだぞ!!!早くこっちに来い!!!」ズズズズッ
ダイヤ「嫌…嫌です千歌さん…あなたまで行ってしまわないで…!だったら私も残ります!!」ズズズズッ
ルビィ「嫌お姉ちゃん!!だったら私も!!!!」ズズズズッ
千歌「ダメ!!!!!」
ダイヤルビィ「!!!!!」
千歌「ダイヤさんが来ちゃったらルビィちゃんはどうするの?そのルビィちゃんも来ちゃったらAqoursはどうするの?」
ダイヤ「でも!!!!!」ズズズズッ
千歌「これ」ヒュォッ
ダイヤ「……!」パシッ
ダイヤ「これは…」ズズズズッ
千歌「栞だよ。花丸ちゃんが託してくれた…Aqoursを紡ぐ大切な大切な栞」
ルビィ「どうして……」ボロボロ
千歌「私はね。この世界の成り行きに全てを賭けてみる。もしかしたらみんなを救えるかもしれない。またAqours九人が揃えるかもしれない…」
千歌「だから待ってて…それまでそれを預かってて…」
ダイヤ「そんな…」ボロボロ
英玲奈「……」
英玲奈「…分かった。信じよう」
ダイヤルビィ「!!!!!」
英玲奈「高海千歌がいなければ決して揃うことは無かったAqours…例えそれがバラバラになっても、再び一つにできる力があるのは彼女だけだ」ズズズズッ
ルビィ「英玲奈さん…」ボロボロ
海未「そうですね…」ズズズズッ
ダイヤ「海未さん…」ボロボロ
海未「奇跡によって生まれたAqoursなんです。そして、こうして奇跡を紡いで鵺の悪夢を終わらせました。例えそれが時を越えようと世界を越えようと…また奇跡で元に戻ります」ズズズズッ
海未「いつかμ'sが集まれるその日のように…」
ルビィ「うぅ…うう…ぐずっ…」ボロボロ
ダイヤ「くっ……」ボロボロ
千歌「ダイヤさん…ルビィちゃん…今日まで本当にありがとう。二人のおかげですっごく楽しかったよ。いつになるか分からないけど、絶対にみんなと一緒に戻ってくる。だから泣かないで…」
千歌「ほんの…ほんのちょっとの……」ポロッ
千歌「お別れだから…」ボロボロ
ダイヤ「くっ……」ボロボロ
ダイヤ「待っています…ずっとずっと!!どんな時も絶対に忘れません!!!」ボロボロ
ダイヤ「このアヤメとサヌキの《通ひのいし》…二人が繋がったように私達もまた出会えます!!!!」ボロボロ
千歌「絶対に無くさない!ずっとずっと持ってる!!!」ボロボロ
ルビィ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」ブワッ
海未「頼みましたよ千歌さん…」ポロッ
英玲奈「達者でな…」
英玲奈「くっ……」ポロッ
ブゥゥゥゥゥゥゥゥン…
千歌「じゃあね……」ニコッ
フッ……
ダイヤ「!!!!!」
千歌さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!
……
……
……
あれ?
真っ暗だ…
えっと…
私どうなっちゃったんだろう?
死んじゃったのかな?
そんなはずないよね?
ちゃんと私だって分かるもん
えっと…私の名前は高海千歌!
浦の星女学院の二年生で
家は十千万っていう旅館なんだよ!
お姉ちゃんには志満ねえと美渡ねえ…
それからしいたけっていうおっきい犬を飼ってる!
学校ではAqoursっていうスクールアイドルのリーダーをやってるんだ!!
えっとメンバーは…
大人しくてピアノが上手くて変な本が好きで…怒るとすっごく怖いけど大切な梨子ちゃん!
ものすっごくお金持ちで理事長権限連発して私もいっつも振り回されちゃうんだけど、本当はみーんなのこと全部分かってて見守ってて元気をくれる大切な鞠莉さん!
自分のことを堕天使だと思ってる…ちょっと変わってて…不思議で…でもそれが大好き!!羽を広げて飛び立つことを恐れないチャレンジャー、大切な善子ちゃん!
色んなこといっぱい知ってて、頭の中が図書館みたい!かけがえのない光の物語の大賢者のような主人公、大切な花丸ちゃん!
海みたいに大らかで、波みたいに優しくて、泡みたいに繊細で…ずっとずっと私たちを包み込んでくれるお姉ちゃん、大切な果南ちゃん!
嵐にあっても座礁しても…霧の海域に迷い込んでも…ずっとずっと一緒に水平線に向かって直進してきた永遠の大親友!大切な曜ちゃん!
ちょびっと泣き虫だけど、いくつもいくつも辛いことを乗り越えて…強くてたくましくて勇気のある女の子!私を信じて全てを託してくれた大切なルビィちゃん!
何でもできて完璧…かと思ったらちょいちょい抜けてて…でも、本当に大事なことや譲れないことは命に代えてでも貫き通そうとして…ずっと私達を信じて戦ってくれてた。諦めないで戦ってくれてた…全てを託してくれた大切な大切な大切なダイヤさん!
なーんだ。ちゃんと覚えてるじゃん!
じゃあ大丈夫!
どこにいても
どんな時でも
同じ空見上げていれば…
繋がっているから…
ーーいつか必ず
ーー三週間後
『…昨年末、新たに小倉百人一首の序歌を選定したとされる時雨亭の……』
ポチッ
『…亡くなったことが公表され、日本かるた協会は、序歌を元の《なにわづの歌》に戻すことを決め、今年をもって時雨亭での内裏歌合を中止…』
ポチッ
『今月5日未明、琵琶湖の多景島にて堕天使の形をした凧を揚げ助けを求めていた高校生四人を保護した件を受け、滋賀県警は…』
プツッ…
ダイヤ「……」
…私達はあの後多景島で救助され、事の経緯を話しましたが誰も信じてはくれませんでしたわ。
海未さんは行方不明がμ'sの皆さんに知れ渡り、とても不本意な形で九人が揃われたそうですの。でも、その旨を連絡してくださった際は凄く幸せそうでしたわ。
英玲奈さんは事務所から一時的に謹慎処分を言い渡されたそうですが、幸いにもライブを終えた後でしたので活動に大きな影響は無かったそうです。むしろ未だにツバサさんやあんじゅさんがからかってくる方が辛いと仰っていましたわ。
家ではルビィが突然消えた事でパニックになっていたらしく、パトカーで二人揃って帰宅した際はかつてないくらいこっぴどく叱られてしまいましたわ。
そして、Aqoursの皆さんのことを聞くと…皆口を揃えてこう言うんですの…
そんな人知らないって。
あれから三週間
未だに千歌さん達は帰ってきません。
ルビィ「お姉ちゃん!!」
ダイヤ「!!!」
ルビィ「そろそろ行こっ!」
『ただいまをもちまして、第50回、伊豆長岡温泉 鵺ばらい祭り 夜の部を終了致します。おかえりの際はお足元に…』
ダイヤ「さあ、行きましょうルビィ」スッ
ルビィ「うん!」パタパタ
テクテクテク…
ルビィ「すごかったね鵺踊り!」
ダイヤ「ええ。中学生とは思えない程キレがありましたわ」
ルビィ「それにあんな重そうな鎧着てよく動き回れるよね」
ダイヤ「あれはニセモノではないんですの?」
ルビィ「でも千歌ちゃん、昔頼政役やった時重たくて全然動けなかったって」
ダイヤ「ふふっ…そうですか」
ルビィ「……」
ダイヤ「……」
ダイヤ「月が綺麗ですわ。海岸に寄って行きましょう」
ザザーン…
ダイヤ「……」
ルビィ「……」
ダイヤ「鹿角家…あれからどんなに調べても一切の情報が出てきませんでしたわ。恐らく、完全に消えてしまったのでしょう」
ダイヤ「Saint Snowも…」
ルビィ「うん…」
ダイヤ「それに…私達はスクールアイドルですら無い…もう皆さんがいた痕跡が跡形も無くーー」
ルビィ「ルビィ達がいる!!」
ダイヤ「!!!」
ルビィ「それに、海未さんや英玲奈さんも…」
ダイヤ「ルビィ…」
ルビィ「《通ひのいし》だって片方ずつ持ってる。それに栞だって……」
ポンッ
ルビィ「!!!」
ダイヤ「ありがとうルビィ」ナデナデ
ルビィ「うん…」
ダイヤ「皆さんが戻ってくるまでの刹那…栞は挟んで閉じておきましょう」
ルビィ「…うん。いつか千歌ちゃんが戻ってくれば全部全部…元通りになるから……」
ダイヤ「ええ。そうですわね…」
ダイヤ「きっと…今もどこかであの夜半の月を眺めているのでしょうね…」
ルビィ「絶対そうだよ…絶対に…」
ダイヤ「次に眺める時は…」
ダイヤ「是非九人で……」
ダイヤ「……」スゥッ
ザザーン…
ザザーン…
ーーさても静かなる宵の更け。
風はとうに眠りにつき、こだますはただ遠くでさざ波が寝返りをうつのみ。
我が現前に広がりたるは、うたかたの如くおのづを主張しては消ゆる数多の星々。
さては更けるに連れ、我が心をわづらはしく惑はす煌々たる月。
いとをかし。
千歌「……zzz」プカプカ
………
…汝は誰そ?
!?!?!?!?
その手にとらへし石は…
今しがた母アヤメから給い、湖の深きところに沈めたるもの…
何ぞ汝がーー
ドクン……
~皆人は 何ぞ定むるや 憂し時が
兎輪の契りに 流るると知らで~
【人は何故虚しく悲しいだけの時間という概念を定め、別れや離れを憂うのか。兎輪(永遠)(月)の約束を交わし、ずっとその変わらぬ輝きを眺めて想い続けているのなら、これもまた変わらず打ち寄せる波の前では意味を成さず流れてしまうものだということも知らないで】
!?!?!?
今の歌は……
千歌「むにゃむにゃ……」プカプカ
…………
汝、うつせみにあらずか。
此の鵺の巣窟に迷ひぬるとはいと哀れなり…
汝にもまた、想い想はるる人がいるらむ。
今しがた終の別れを告げた、石を賜うびける母、アヤメのやうな…
そして今の歌も…
千歌「……ん……みんな……」プカプカ
……
何処に生きとし生ける詠み人よ。
汝に歌を返そう。
その契りが確かなら
何時か必ず巡り逢わん。
我が名はサヌキ。
此の乙女にかはって歌を詠む者。
行く先を照らす乙女にかはって…
……
~しののめに 移りにければ うら然り
しるべは高み 誓ひ永遠にあれ~
【昔から変わらぬその眺めに想いを委ねているのも悪く無いが、東の空が明るくなってきたのなら心も同じ。新たな光に向かってその高みを目指し歩き出しなさい。ずっと信じ合っている『彼女』がそう望んでいるのだから…】
ーー字余り。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
455 : 以下、名... - 2017/02/22 19:25:35.87 H71/+Fhm0 453/454
追記:1
このssはμ'sが卒業してAqoursの代の時系列ですが、何故か2015年となっています。この理由はストーリーの関係上、菖蒲御前という人物が実際に亡くなった1215年から800年後という設定にする必要があったためです。
混乱された方も多いと思います。申し訳ありません。
457 : 以下、名... - 2017/02/22 19:28:54.90 H71/+Fhm0 454/454
追記:2
SSに出てきた「鵺ばらい祭」及び「源氏あやめ祭」は、実際に催されている行事です。前者は1月末、後者は7月の頭に開催されているので是非足を運んでみてください!