ドアノブに掛けた手をゆっくりと回して、私は扉をひら――開かないわね? 壊れてるのかしら?
「伊織くん、その扉は手前に引くんだよ」
後ろから、声を掛けられる。
「あ、当たり前じゃない! 言われなくても分かってるわよ!」
慌てた私に引っ張られた扉の、備え付けの鈴がぐわらぐわらと音をたてる。
一瞬、何事かと店内の人々がこちらに目を向けたが、すぐに何事もなかったように視線を戻す。
のっけからとんだ失態を犯してしまった。気恥ずかしさを誤魔化すために、私は店内を見渡した。
落ち着いた明るさの照明、クリーム色を基調とした家具で店内は彩られ、
ポップなBGMが申し訳程度に場を和ましている――いかにも『ファミレス』って感じ。
元スレ
P「伊織と貴音を連れて,食事に行く」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453801820/